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2010年12月30日

29日夜のTBS系番組での鳩山邦夫元法相の宮崎勤死刑執行についての放言

 今朝の朝刊で一部新聞もフォローしているが、12月29日夜のTBS系たけしの番組での鳩山邦夫元法相の死刑をめぐる発言には驚いた。番組自体は死刑制度の賛成反対両派3人ずつのディベートで、「テレビ討論では声のでかい者が勝つ」という定説通り、存置論の方が優勢に見えたのだが、それはともかく、驚いたのはVTR出演した鳩山元法相の放言だ。「本当なら30人~40人は執行したかった」などと言いたい放題だった。そのなかで「新事実」として明かしたのが、「宮崎勤死刑囚の執行は、凶悪事件なので自分の方から指示して検討させた」という発言だった。

 2008年6月の宮崎死刑囚への執行は、私も驚いた。死刑確定から2年余という速さでの執行だったからだ。当時100人前後いた死刑囚のうちで、なぜ順番が繰り上がって彼の執行がなされたのか謎だった。再審請求の準備が動き出していたから、その機先を制して急きょ執行したのではないかとも言われたのだが、何のことはない。当時の法相の思いつきで決まったというわけだ。特に凶悪だからというが、鳩山元法相が他の死刑事件も含めて資料を精査してそう判断したわけでなく、ただ報道で知っていたからという程度のことのようだ。この宮崎死刑囚の執行によって、早期化に向けての大きなアピールがなされたのだが、いわば法相のパフォーマンスだったわけだ。

 私は宮崎死刑囚と12年間つきあって、どちらかが死ぬまでつきあおうと決めてもいたので、その最期があんなに早く訪れたことに当時ショックを受けた(それについては当時出版したちくま新書『ドキュメント死刑囚』に書いた)。まだほとんど事件そのものが解明されておらず、宮崎死刑囚の心情を少しずつ聞きだしていた私には、「今執行することに何の意味があるのか」と当時憤りを覚えたのだが、その理由がこんなに軽いものだったとは。この鳩山という人には、他人に死を強いることに伴うべき苦渋も苦悩も感じられない。

 死刑に向き合おうとしていないように見えた宮崎死刑囚だが、確定後はさすがに幾分か身近に死を意識するようになったようで、私への手紙にも死刑について言及することが多くなった。そして自ら、多くの弁護士に再審請求を頼めないかと手紙を出していた。さらに、私は、執行後、宮崎死刑囚が遺書のようなものを残していたことを知ってさらに驚いた。面会していても全く表情を変えず、死の恐怖など感じないかのような印象の強い宮崎死刑囚だったが、死刑については本などを読んでいたから、執行の状況も、そして自分の順番がどのくらいかもある程度知っていたと思う。だから逆に、思いがけない早期執行に、宣告された瞬間、驚愕したはずだ。

 執行翌日に宮崎死刑囚の母親から電話をもらい、「長い間お世話になりました」と言われた。その時母親と交わした会話を、先日も『週刊新潮』記者から電話があって少し話したら、何やら違うニュアンスで記事にされたのだが(匿名の知人になっていたが)、宮崎死刑囚の関係者にとっては、この事件及び本人の存在はいまだに重たい影を残したままだ。鳩山元法相の軽い発言を聞いていて思うのは、法相という死刑執行を決定する立場にある者は、執行に立ち会うなり、死刑囚と向き合うなりしてもう少しその重さを感じてもらいたいということだ。そのうえで、「だが法にのっとって自分は執行命令を出す」というなら理解もできるが、昨夜の元法相の発言には改めて落胆した。

 それと話は違うが、TBSの番組がVTRの中で宮崎勤死刑囚が著書『夢のなか』に載せた自筆のネズミ人間のイラストを出典も明記せず、無断で使用していたのにも驚いた。私が担当編集者として著作権についても管理を任されていたから、たぶん了解を求められれば、「出典を明記すればいいですよ」と言ったと思うが、連絡もしてこなかった。ちょっとひどすぎると思う。

 ちなみに宮崎死刑囚はそのあたりについては細かい人物で、例えば佐木隆三さんも朝日新聞社から宮崎事件の傍聴記を出す時、イラストを転載させてほしいと言ってきたのだが、宮崎本人に確認したら「断る」と言ってきた。佐木さんが、宮崎死刑囚については詐病説をとっていたから、本人は反発していたのだろう。宮崎勤という人物は、何も考えない人間だと世間から思われているが、実はそうでもない。彼について論者が論評した記事なども、きちんと読んでいたのである。

2010年12月28日

公安情報流出騒動と第三書館の本をめぐる異様な事態

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↑ 第三版表紙

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↑ 削除だらけの第3版の中身

 公安情報が大量にネットに流出した事件をめぐっては、ようやく警察がそれを認めて謝罪した。イスラム教徒そのものをテロリストとみなして捜査の対象にしていた日本の公安警察の内部事情を明らかにしたこれらの文書は、今後、イスラム社会にも波紋を投げるのは必至で、深刻な影響はむしろこれから世界的に拡大していくはずだ。

 そして、もうひとつ。ここで紹介したいのは、その内容をそのまま本にした第三書館『流出「公安テロ情報」全データ』の問題だ。これも極めて異例の事態に至っている。

 周知のように、この本についてはプライバシー侵害を理由に、そこに自分の情報が載っているイスラム教徒らが出版差し止めの仮処分を申し出、裁判所に認められている。ところが今回、異例なのは、その決定を受けた第三書館側が、その訴えられた人の情報だけを削除して第2版を発売するという行為に出たからだ。しかも、それが発売されるのと同時に、掲載された他の人が同じ申し立て行い、その第2版も差し止め命令。本に掲載された人たちは他の人も次々と弁護士に相談し、弁護団も結成された。

 結局、出版差し止めの仮処分申し立ては3次にわたってなされ、3次とも認められた。ところが第三書館はさらに、ほとんど削除だらけの第3版を25日に出版した。削除といってもそれを落とすのでなく、問題部分を網伏せにして、そこに情報があったことはわかるようにしてあるから、網伏せだらけの本なのだ(写真参照)。しかも、この間、第1・2版については、トーハン・日販は取扱拒否を決めたが、他の取次は注文だけには応じたため、いずれも完売。それ以降も書店からの注文が出版社にはたくさん届いているという。

 弁護団はこうした第三書館の出版行為に対しても抗議し、損害賠償請求訴訟を起こした。この第3版については全取次が扱いを拒否したため、書店によっては既に客注を受けているところもあるのだが、本は流れないという事態になった。一部の書店では混乱も起きているようだ。

 極めて異例の事態というほかないが、問題は、第三書館がどういう理由で本を出し続けているのか、弁護団がどういう主張をしているのか、詳細が報じられていないことだ。

 そこで、ここで比較的基本的な資料に限定して双方の主張を紹介することにした。というのも、弁護団の方は昨日付で専用のサイトを立ち上げたようで、これを見ると経緯がよくわかるからだ。ただ当然のことながら、非難している第三書館の生の資料はそこでは紹介していない。そこで弁護団のサイトのアドレスを紹介するとともに、ここでこの間、第三書館が関係者に発した文書を2つ紹介する。ひとつは12月2日付の「『自殺』を迫られている、出版メディア」、もうひとつは12月9日付で裁判所に提出した陳述書だ。これを紹介するのは、別に私が第三書館の立場を代弁するためではもちろんない。この異常ともいうべき事態について議論するのに、第一次資料がやはりきちんと公開された方がよいのではないかと思うからだ。ついでに言えば、弁護団の方は、よく知っている梓澤和幸弁護士が弁護団長、また一方の第三書館の北川社長も面識のある人でもある。対立している両方が一応知り合いだ。さらに、第三書館も加盟している中小出版社の団体「流対協」もこの件で見解を公表している。それも紹介しておこう。

■出版差し止めを求めたイスラム教徒らの弁護団のサイト
http://k-bengodan.jugem.jp/

■第三書館が公表した文書2つ
・12月2日
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/shinoda101227_3.jpg

・12月9日
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/shinoda101227_2.jpg

■流通対策協議会の見解
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/shinoda101227_1.jpg

2010年12月19日

12月15日、性表現規制強化の都条例改定案が可決成立してしまいました。

 11月末に東京都議会に提出された性表現規制強化の都条例改定案ですが、12月13日の都議会総務委員会、15日の本会議と、あっという間に改定案成立まで突き進んでしまいました。

 この間、反対運動も盛り上がりました。前回春に反対声明を出している日本ペンクラブを始め多くの団体が改めて反対を表明しました。中野で開催された6日の集会は会場に入れない人が多数出るなど千人を超える規模となったのみならず、会場には漫画家はもちろん国会議員や都議会議員も参集。「春の段階では反対しながら今回はこの時点で賛成に傾いていた民主党都議からは、今回は賛成に回らざるをえない、などと率直な発言も。改定反対集会に参加してこの発言をするというのも異例のことですが、会場からは野次を飛ばすでもなく、みんな真剣に聞き入っていました。何せ、都議会の力関係が刻一刻と変化していくという流れに、誰もがこれからどうなるのか、と見守っているという切迫した状況。会場にも緊張感がみなぎっていました。

 その後、大きなニュースになったのが、石原都知事が実行委員長を務める東京国際アニメフェアに、マンガを発行している大手出版社で構成するコミック10社会がボイコットを表明したことでした。最初にその態度を表明した角川書店を始め、集英社、講談社、小学館など漫画出版界を代表する会社によるこの反対行動のアピール度は大きなものでした。新聞報道もこの前後から一気に大きな扱いになりました。その中で、紙面で読売・産経が規制は必要だとのキャンペーンを展開するなど、報道機関も二分されました。

 そして改定案が可決成立してからも、出版労連や劇作家協会などが抗議声明を発表するなど、動きは続いています。

 何といっても残念なのは、春には少なくとも3カ月様々な議論が行われ、結局否決された改定が、今回2週間ほどで成立してしまったことです。提出前に民主党への根回しが行われていたとも言われていますが、あっという間に通ってしまったという印象です。反対運動が拡大しないうちに短期決戦で可決をという戦略は明らかでした。表現に関する大事な問題をこんなふうに片づけてしまってよいのかと思います。

 表現に関わる人たちの間では改定が誤りなのは自明という雰囲気でしたが、考えてみるべきことは、一部PTAなど規制推進の人たちも同時期、陳情に動いていたことです。

 私も東京新聞でもこの問題について書いたりしましたが、翌日、それを読んだ母親らしい女性が反論の電話をかけてきました。本当は表現の自由を主張する側と、子どもを守るために規制は必要だと主張する側とで、もう少しきちんとした議論が行われるべきなのですが、それは今回皆無でした。

 私が今回の改定に反対したのは、表現に関わる社会的ルール作りが必要だとしても、それは行政や警察の介入を可能な限り少なくする形で行うべきだという理由からでした。お上からの規制という点では、現行条例で十分です。

 今回、見直したのは角川書店など大手出版社が石原知事という権力に明らかな形で叛旗を翻したことでした。これだけ鮮明にお上にたてつくということを大手マスコミはあまりしないという印象を持っていたものですから。

 表現規制をめぐる問題、これで終わったわけではなく、大阪など他の条例改定の動きもあるし、国レベルでの児童ポルノ法をめぐる動きもあります。やるべき議論もせずに議会の多数派工作で物事が決まっていくというあり方はやめるべきだと思います。

2010年12月 6日

5日の検察告発デモお疲れ様。その勢いを7日のロフトへ!

 12月5日、日比谷野音での三井環さんを実行委員長とする検察告発の集会とデモ、たくさん集まってよかったですね。権力の中枢というべき検察庁を市民がこんなふうに直接行動で批判告発するというのはこれまでなかったことです。ぜひこの熱い思いを継続していけたらと思います。個人的には、日比谷野音の集会は久しぶりだという感慨と、デモの先頭でスピーカーを持った堀田さんの奥さんの迫力がすごかったなという感想を持ちましたが、まそれは余談です。6日に収監される鈴木宗男さんのスピーチ(テープでしたが)もよかったですね。集会でも告知されていた鈴木さんの収監ですが、午後1時頃、東京高検正面玄関(日比谷公演側)で簡単な囲み取材を受け、それからとのことです。

 かつてない検察批判の空気を今後どんなふうに形にしていくかについては、いろいろな動きがありますが、集会で保坂展人さんが紹介していた検察官適格審査会もそのひとつです。その内部の様子や、取り調べ可視化へ向けた動きあgどうなっているかなど、12月7日の『創』主催のロフトプラスワンでのトークイベントでは詳しく議論したいと思っています。三井さんのほかに、検察官適格審査会の委員でもあり、可視化議員連盟のメンバーでもある辻恵議員、それに安田好弘弁護士らが登壇します。ぜひ足を運んでください。

 Ustreamにも上げる予定と以前書きましたが、ロフトに確認したら、ネットに上げるとお店に来るお客が少なくなってしまうのでアップはしない方針のようです。すみません、訂正します。そういうことなのでできるだけお店に直接おいでください。ロフトプラスワンは入場料のほかに1ドリンクのみでOKです。

 7日の詳細は以下の通りです。

●12月7日(火)夜、新宿ロフトプラスワントークイベント「視点が変われば世界が変わる」
会場:新宿ロフトプラスワン TEL 03-3205-6864
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/

Open18:30/Start19:30
前売¥1500/当日¥1800(飲食別)

※前売はローソンチケットにて発売中! 【Lコード:33926】

●第1部 検察腐敗と死刑制度  19:30~21:00

かつては正義の味方と思われていた検察庁ですが、いわゆる小沢問題や大阪地検の証拠改竄事件などを機に批判が噴出しました。聖域とされてきた検察庁をどうすべきなのか。取り調べ可視化などの問題も含めて議論します。検察裏金告発を一貫して続けてきた元大阪高検公安部長の三井環さん、可視化議員連盟や検察官適格審査会で活躍している辻恵衆院議員、小沢問題での焦点となった石川議員の弁護人を務めた安田好弘弁護士など、検察批判の中心部分に関わってきた人たちが登場し、市民の立場から検察問題をどう考えるべきなのか討論します。また安田弁護士始め、登壇するのは死刑問題とも関わりのある論者ですので、死刑制度についても話しあいます。

【出演】三井環(元大阪高検公安部長)、安田好弘(弁護士)、鈴木邦男(一水会顧問)、辻恵(衆院議院/検察官適格審査会委員)、森達也(映画監督、作家)、篠田博之(月刊『創』編集長/司会)、他

●第2部 イルカ漁騒動とドキュメンタリー  21:10~22:30

アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したイルカ漁告発の映画「ザ・コーヴ」が今年の夏、全国で右翼団体などの上映中止行動にあい、社会問題になりました。上映中止騒動は鎮静化しましたが、映画の舞台となった和歌山県太地町ではいまも海外からの捕鯨反対運動団体と政治団体が抗議行動を展開するなど、激しい対立が続いています。いったいこの事態は日本人にどういう問題を提起したのか、表現の問題との関わりをどう考えるべきなのか。上映中止騒動の当事者が一堂に会し総括します。最近の太地町の状況を伝える綿井さんの映像も会場にて公開。和歌山現地から中日新聞記者の吉岡逸夫さんも議論に加わります。

【出演】鈴木邦男(一水会顧問)、綿井健陽(ジャーナリスト)、吉岡逸夫(中日新聞新宮支局長)、加藤武史(映画「ザ・コーヴ」配給会社アンプラグド代表)、山上徹二郎(映画プロデューサー/シグロ代表)、森達也(作家、監督)、篠田博之(月刊『創』編集長/司会)

※森達也氏(at NewYork)と吉岡逸夫氏(at 和歌山)はSkype(ネット中継)や電話での出演となります。

2010年12月 3日

12月5日に三井環さんらが検察批判の集会とデモ

 このところ検察批判の急先鋒となっている元大阪高検公安部長・三井環さんだが、12月5日に集会とデモを行う。会場が何と日比谷野音だから千人規模で人が集まらないといけない。お〜そんな強気で大丈夫かと思い、告知で協力させていただくことにした。私も呼び掛け人の一人だが、当日、保坂展人さんや魚住昭さんらが呼びかけ人代表として発言を行うらしい。13時から集会で14時45分からデモ行進。主催者に聞いたら2000人くらい集まる予定とか言っていたが、検察批判のデモでこの規模は初めてでは? 雨が降らないことを祈ろう。で、内容については、チラシをそのまま紹介することにする。このチラシのPDFが、三井さんの奥さん経由で届いた。不慣れなパソコンを駆使して三井さんもがんばっているようなので、ぜひ応援しよう。

※クリックすると拡大します
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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

最新号
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詳細はコチラ

-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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