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NHK受信料裁判で札幌地裁の判決を入手しました。

 インターネットのすごさに驚くことはしばしばなのですが、今回もそうでした。先日、3月19日に出たNHK受信料裁判の札幌地裁の判決を画期的だと評価し、できれば被告の方は連絡下さい、とネットで呼びかけたところ、来たんですね。その被告の代理人である弁護士からメールが。

 こういうことって既存のメディアだと、よほど影響力の大きい媒体でない限り、ありえないことですよ。ネットの場合は検索機能がついているので、被告側が関心を持ってネットを見ていればこの呼びかけに気づくんですね。本当にすごいことだ。

 と感心してばかりいないで本題に入ります(笑)。

 判決文を仔細に検討し、その内容については追って詳しく紹介しようと思いますが、まず今回は、この札幌判決がどういうものだったかだけ書いておきましょう。同じようにNHKの法的督促を受けている人にとっては、これは本当にすごい判決で、NHKの弁護団が顔面蒼白になったであろうことは確かです。東京の裁判では地裁が被告側の主張をほぼ全面的に退けたのですが、では札幌地裁はどうして被告側の主張を認めたのか。これは裁判の争点の組み立て方が違うからなんですね。本当は判決文を個人が識別できる部分を伏せて全文公開するのがよいのですが、被告の主張自体が個人情報とも関わっているので、それは今回は保留して、中村弁護士のコメントと、判決の末尾の裁判所の考えを示した部分のみ原文を公開することにします。

 なお、この受信料拒否裁判自体の意義については前回3月31日のトピに書いたのでそちらを参照下さい。一連の裁判は大手マスコミがほとんど報道してないのですが、公共放送のあり方を考えるうえで重要な素材で、経緯についてはずっと特設ブログでフォローしています。興味のある人はぜひそちらをご覧ください。
http://www.tsukuru.co.jp/nhk_blog/

 まず弁護士のコメントですが、メールの、参考になりそうな部分を紹介しましょう。

────────────────────

 私は札幌の弁護士○○と申します。「NHK受信料裁判を考える」のページで札幌地裁の3月19日判決が取り上げられていたのを拝見しましたのでメールします。

 私はこの裁判で被告の代理人をしていた弁護士です。

 この判決は,法律論の上で大きな影響があると思います(翌3月20日の北海道新聞の「全国の訴訟に影響も」の記事がもっとも正鵠を得ています。判決当日,(おそらく)東京の弁護団の弁護士の方からも連絡をいただき当方から電話もしたのですがつながらず,その後忙しさにかまけてそのままになってしまいました)。

 また,放送受信契約とは何か,受信料とは何かについて法律的にきわめて掘り下げて言及した判決と考えています。

 私は,比較的消費者事件等を取り扱うことが多いのですが,依頼者(被告)がこの裁判を戦うことにした大きな動機のひとつは,「受信料を支払っていない人は,確信的な人も含めたくさんいるのに,なぜ自分のように契約してしまった人だけ,しかも本件のように自分が不在中に妻が軽い気持ちでハンコを押してしまったような人を相手に裁判をするのか」という点でした。あまり大裁判にするという気持ちはありませんでした。

 あらかじめ申しておきますとこの裁判では,東京訴訟のように憲法問題は主張していません。論点はただひとつ「NHK放送受信契約に,民法761条(日常家事債務の連帯責任)の適用はあるか」と言っても過言ではありません。したがって,細かい事実はあまり問題ではなく,法律解釈の問題です。

 法律論となって恐縮ですが,「NHK受信料は,食料品の購入や電気ガス等の公共料金と同じように『日常家事債務』というものの範疇に入るかどうか」ということも,(もちろん一応「入らない」という主張はしましたが),問題ではありませんでした。

 「そもそも,761条の趣旨からみてNHK受信料契約は適用されるべきではない」という結論です。その理由は,受信料契約は「片務契約」であり,受信料は「いわば国民の特殊は負担金」であるので,「双務契約における(夫婦と取引した)相手方の保護のための規定である民法761条は,適用がない」という論理です。

 私も,「761条は『原則として』双務契約に適用がある。過去の判例,裁判例の事例もすべて双務契約であり,受信料には適用はない」と主張していたのですが,判決の方が私の主張よりも明快でした。

 受信料契約が「片務契約である」というのは,裁判官の釈明に対しNHK側が明確に述べています(「双務契約」となると,放送と受信料との対価関係の問題が出てくるので,NHKは口が裂けてもそうは言えない)。また,受信料が「いわば国民の特殊な負担金」というのも,NHK側が提出した書証(国会答弁や,放送法逐条解説)から認定されています。

 NHKは,「(昨年の)東京地裁を含め,裁判例は,受信契約に761条の適用を認めている」と主張しましたが,判決は,「それらの裁判例は,放送受信契約の性質が争点とはなっていなかった」と退けました。また,NHK側は,きわめて著名な民法学者3名の意見書(761条適用肯定)を証拠として提出してきましたが,これも,「片務契約であること,特殊な負担金であることに言及されていない」として採用しない,と述べました。

 ところで,NHKは,この判決についてのニュースで,「判決は,国民の大多数が契約を締結することが望まれる,と述べた」と言っています。たしかにそのとおりなのですが,これは,裁判所が和解勧告をした経緯に関しての記載であり(裁判所は,裁判の途中,二度に渡り「今までの分はチャラにして,今後,きちんと被告(夫)との間で契約する」,という和解を勧告した。当方(被告)は応じるつもりでいたが,NHK側が拒否),NHKの報道の仕方は,ちょっとニュアンスが違います。

 以上長くなって申し訳ありませんでした。ただ,民法の適用という専門的な判決だったために,あまり正確に伝えられていず,しかし,前述したとおり,「受信契約」「受信料の支払い」という点について,深く掘り下げて考察した判決であることは間違いないと思います。

────────────────────

 論点がどういうものだったか、大体わかったでしょうか。詳細については追って説明するとして、次に判決文の末尾の部分、裁判所の見解を示したところは、こちらをご覧下さい。ファックスをスキャンしたので読みにくいと思いますがご容赦下さい。

shinoda100416.jpg

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

貴サイトにおいて、重要な問題について扱っておられることに敬意を表します。

九条の会「公平な放送を!」http://koheina-hoso.blogspot.com 管理人の ささき のぶひこ と申します。

当サイトで、ちょうど以下の記事を掲載し、中央・地方選管に申し入れをおこなうタイミングでした。

(引用)

NHK受信契約は、 NHKの放送が前提! 
受信契約は双務契約!
 
中央・地方選管御中

放送の「政治的公平」に関する申し入れ

NHKの報道番組などについては、以下の問題があります。

1.「政治的に公平」ではなく、世論・選挙をゆがめている放送がある。
2.例: 2009年5月31日・2010年5月2日「日曜討論」、2010年2月12日・自衛隊の海外派遣関連のニュ-ス番組(与党・多数党などの論点に偏り、対立する論点の軽視・無視が見られる)
3.これは、放送法・公職選挙法の目的に反する。
4.NHKの放送は、放送の目的に合致した放送も、上記のようにそれに反する放送もある。
「放送法・公職選挙法などの目的に合致したNHKの放送部分については、受信料の支払いを積極的におこなうべきであるが、合致しない部分相当の受信料支払いは、民法533条・双務契約における同時履行の抗弁権による『支払いを拒む権利』を利用して、放送の改善を求める立場」も成立する。
5.NHKには一部に「受信契約は、片務契約であり、双務契約ではない」と説明している部分もある。しかし、「送信」が前提で「受信契約」があるのであり、NHKの「放送法にもとづいた番組の送信」はNHKの義務で、受信契約の前提である。「受信契約は、片務契約」との説明は成立しない。
いずれにしても、放送の「政治的公平」は放送法・公職選挙法の目的と一体であり、世論・選挙をゆがめる放送は許されません。

中央・地方選管は、放送の「政治的公平」にも一定の責任があることを申し入れます。

2010年5月7日
九条の会「公平な放送を!」管理人
(住所・氏名)

(引用終了)

「判決」が「双務契約」を認めたのかどうかが、はっきりわからなかったのですが、結論はどうなのですか?

今後、よろしくお願いします。

ささき のぶひこ

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篠田博之(しのだ・ひろゆき)

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1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

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