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「婚カツ」詐欺事件をめぐる新聞と週刊誌の報道

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 「新聞・TVが報じない~」というのは週刊誌のキャッチフレーズだ。速報性ではかなわないから内容で差別化を図らないといけない。その意味では、今話題の「婚カツ詐欺」事件は、新聞・テレビと週刊誌の違いを際立たせた事例だ。

 新聞・テレビは容疑者女性を匿名で報道しているが、週刊誌は実名・顔写真を大々的に掲げている。もともとこの事件は読売新聞の10月27日付朝刊一面記事で火がついた。9月25日に結婚詐欺容疑で逮捕されていた34歳女性に、新たに殺人の疑いが浮上したという報道だった。

 殺人容疑が浮上したことで事件は大きくクローズアップされることになったのだが、逮捕されたのは詐欺容疑だからという判断で、新聞は匿名報道となった。それに対して週刊誌は実名はもちろん、女性の写真をグラビアで大々的に取り上げた。

 新聞と週刊誌の基準の違いを象徴的に示したのは『週刊文春』11月12日号の広告だ。その号が発売された11月5日に新聞に掲載された同誌の広告を見て驚いた人も多かったのではないだろうか。特集の見出しが「○○○○34歳の『正体』」とあり、この○○4文字が白抜きになっていたのだ。

 これまでも週刊誌の見出しで新聞の基準からそのまま掲載できない場合は、見出しの一部が黒や白に塗りつぶされてきたのだが、今回はトップ記事で大きな見出しだったためにやたら異様で目立った。それを予測して見出しにわざと実名を入れたのではないか、とうがった見方をしてしまうほどだ。

 新聞における出版広告は、原稿を作るのは出版社だが、掲載にあたっては新聞の基準が適用される。その結果、異様な広告が掲載されることになるのだ。

 週刊誌のなかでも興味深いのは新聞系週刊誌の対応が分かれたことだ。現在のところ『サンデー毎日』と『アエラ』は匿名だが『週刊朝日』は実名。ところが『サンデー毎日』11月22日号では同誌元編集長の牧太郎氏がコラムで「実名にすべきではないのか?」と問題提起し、こう書いている。

 「日本人が今、最も関心を寄せている女性であり、その顔写真は誰でも見たい。そんなに読者のニーズがハッキリしているのに......テレビ、新聞は及び腰だ」。

 匿名報道を「及び腰」と評する牧さんの見方への賛否はおくとして、この一文は匿名報道を続ける『サンデー毎日』をも批判したもので、元編集長と現編集長の対立が誌面に反映されたものといえる。

 この事件に関心が集まっているのは、まず背景にあるのが「婚カツ」という流行のテーマであるためだろう。詐欺を働いたのは女性側で、男の側が次々と騙されたというのも新しい。そして何といっても世俗的な関心を呼んだのは、この女性が、スリムな美人顔ではなかったことだ。

 『週刊文春』11月12日のコラムで作家の林真理子さんが「最近この事件ぐらい私の心に突き刺さったものはない」と書いている。あの女性にどうして男たちが次々と騙されたのか「驚きを通り越して怒りがわく」という。

 前述したように週刊誌が大々的に女性の顔をグラビアに掲げているのは、この世俗的関心を受けたものだ。『週刊新潮』11月12日号の見出しは何と「誰も『美人結婚詐欺師』と書けなかった『毒婦』のグロテスク人生」だった。容疑者女性の容姿がこんなふうに話題のネタにされることも恐らく今後、議論の対象となるだろう。

 『サンデー毎日』11月22日号によると、婚カツに励む独身男性は、地味な女性であろうと家庭的で料理が得意という「癒し」系に弱いのだそうだ。記事の中に紹介されている作家の佐木隆三さんのコメントの中見出しが「不美人でも、34歳が尽くしてくれたら私も...」というこれまた身も蓋もないあけすけなものだった。

 『アエラ』11月16日号の「婚活」特集によると、「婚カツ」ブームを受けてネットの結婚紹介サイトは活況を呈しているとTVドラマのタイトルにもなった「婚カツ」ブームは、いわばメディアが作り上げたものだ。そのブームに今回の事件は冷水を浴びせたわけだが、ブームの火付け役ともいうべき『アエラ』は事件を受けてさらに大きな「婚活」特集を組んでいる。

 この事件、いろいろな意味を含めて、メディアのありようをも照射していると思う。

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>『週刊新潮』11月12日号の見出しは何と「誰も『美人結婚詐欺師』と書けなかった『毒婦』のグロテスク人生」だった。

本来なら「グロテスク女の毒(薬)殺結婚詐欺人生」なのだろうが、逆によりインパクトが増した週刊新潮としての、この見出しを捻り出した記者に賛辞を送りたい。

論点が微妙にずれています。実名報道は問題です。その理由は推定無罪の原則から来るものです。この女性は逮捕されただけで、まだ有罪も確定していない。逮捕されただけで名前や写真まで出す先進国は日本くらいのものではないか。裁判院制度も始まったにもかかわらず、国民に偏見を与えるようなリーク情報を流す警察もひどいが、それを垂れ流しにするメディアはもっとひどい。The journalは既存メディアに一線を画すべきAlternative mediaだと思うが、こうした狭い視野でしか事件を論じることが出来ないのではつまらない。

はらさんの意見に賛成です。顔を晒せ、名前を晒せ!と騒ぐのは2ちゃんのようです。顔や名前を知ったからどうなるのでしょう。一時のデバ亀根性を満足させるだけ、マスコミの商売のネタにされるだけではないでしょうか。そうして警察権力に国民生活がコントロールされ、重要なことははぐらかされてしまうのでしょう。マスコミは権力の腐敗を知っていて報道せず、国民生活に関係のない事件を大々的に延々と続ける。このような権力とマスコミの馴れ合いをブチ壊してこそのThe Journalと期待しています。

実名報道が問題、というのであれば、同じく死体遺棄容疑で指名手配、大阪で逮捕された容疑者についてはどうでしょうか。ここ数日、彼の氏名と実名が、あらゆるマスコミで踊りまくっています。逮捕の容疑は死体遺棄であり、殺人ではありません。婚活詐欺の女性も詐欺容疑で逮捕され、殺人容疑ではないことは同じですが、多くのマスコミで実名は隠され、素顔も晒されていません。同じ容疑者でありながら、この差は不思議でなりません。

週刊誌と実名・顔写真報道に関して、あまり広げてしまうと論点がぼやけてしまうので少しだけ広げて考えてみると、週刊誌・雑誌は新聞に掲載出来ない事を記事にして意味を持つ。
しかし、この事件もそうだったかと思うが問題提起云々以前にインターネットに公開され、また最近の裁判に至ってみても既存の週刊誌の存在・存続自体が問われている。

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篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

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