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旧オウム教団訪問。麻原元教祖の娘の事件を思い出した。

 今年もマスコミ志望の学生を連れて千歳烏山の旧オウム教団、現「ひかりの輪」(正確に言えば旧オウムを離脱した集団)を訪れた。いまだにマスコミで非国民扱いされている側に直接会って話を聞き、いつもテレビ画面を通して見ている現実を反対側から見るとどう見えるか考えるという、メディアリテラシーの実践だ(『創』はこのメディアリテラシーを毎号誌面でやっている雑誌なのだが)。
 本部前に常駐している公安とも詳しく話をしたりと、なかなか刺激的な取材だったが、学生たちとその事前学習をする過程で、『創』に掲載した麻原元教祖の娘たちのインタビュー記事を読み直し、懐かしく感じた。

 私が麻原元教祖の三女に初めて長時間インタビューを行ったのは、彼女が13歳の時だった。麻原の後継者と目されていた彼女はどこに行くにも公安の尾行がつく状態だったが、第一印象はあどけない普通の女の子だった。その後彼女には何度もインタビューしたが、感心したのは小学校にも通ったことのない彼女が、独学で通信高校まで出、大学にも合格したことだった。大変な努力だったと思う。
 ところがその合格の年は、不運にも父親の1審の死刑判決の出た時期で、大報道が行われ、入学願書に父親の名前を伏せていた彼女の書類に不審感を抱いた和光大学が彼女の身元をつきとめた。そして合格を取り消してしまったのだった。その年、彼女は他の大学にも受かっていたが、和光大学の例が報道されたせいで、そちらの大学でも身元が発覚。合格を取り消された。
 三女は裁判所に仮処分を申請し、裁判所の命令で何とか合格した大学のひとつに入学したが、一番ショックを受けた和光大学をその後訴えた。和光大学は全人教育を唱え、学長は差別反対の著書もある人だったから、彼女はこの大学なら自分を受け入れてくれるだろうと期待した。それが入学拒否と聞かされ、大きなショックを受けたのだった。
 
 裁判も私は傍聴したが、大学側の主張は、彼女を受け入れれば警備態勢も必要になるし、他の父母や理事会の反発も必至で、混乱は避けられないというものだった。確かに大学側の負担が増えた可能性はあろう。でも、それでも受け入れるというのが教育者のとるべき態度だと思う。親が犯罪を犯したからと娘の入学を取り消すというのでは、出自による差別と同じことだ。
 当時、大学側の措置に抗議して私は朝日新聞の「私の視点」に投稿し、和光大で教師や学生が開いた学内集会にも足を運んだ。和光大は、大塚英志さんや森達也さんらが講師を務めるユニークな大学で、彼らはもちろん大学の措置に反対、何度も抗議集会が開かれた。その経緯は当時、『創』に何度かレポートしたが、驚いたのは、大手マスコミがこうした集会にも裁判にもほとんど取材に来なかったことだ。
 めんどうなことは排除するという大学の姿勢と、発表もの以外足で歩いて取材を行うことをあまりしなくなったマスコミと、この現実にはいつもながら暗澹とせざるをえない。私は全共闘運動の末裔で、大学には右翼も左翼も宗教団体もいたし、左翼も諸党派がいつも激論を交わしていた。大学の授業よりも、そういう空気の中からずっと多くのことを学んだと思う。もしオウムの娘が大学に入って混乱が起きるというなら、それを素材に大議論を起こそうというくらいの構えをどうして持てないのか。大学って本来はそういう場のはずだと思う。
 ビラも立て看も禁止して無菌状態のような環境を作るのは、管理する側は楽でいいかもしれないが、大事なものが失われてしまう。この10年ほど、大学がやたら建物ばかり立派になっていく様子を見て、根本的な疑問を感じるのである。

PS 私は例年、マスコミ志望の学生と数多く接するのだが、先頃、そういう人たちと意見交換する場としてmixiに「マスコミ就職フォーラム」というコミュニティを立ち上げた。ここにアップした文章も、そこへのトピとして書いたもの。もし関心ある人は、そのコミュニティにアクセスして登録してほしい。マスコミをめざす人たちに知ってほしいメディア界内部の格差拡大とかの問題を今後、議論していこうと思っている。

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親の不始末で子供が不利益を受けるのは当然反対です。大学側の措置は不当だと思います。
が、しかしそれとは別に松本智津夫受刑者の家族は一体どうやって生計を立てているのでしょうか? 一連のオウム事件での補償は滞ったままではないですか。まさか教団から家族に生活費が送られてはいないでしょうね?篠田さんは当然そのことにつて取材済みなんでしょうね? 

麻原の子供は被害者でもあるんですよね。何の責任も罪もないのに非難をする人がいる。生活費にまでいちゃもんをつける人がいるし(笑)

篠田さん
前回のご寄稿、そして反論の嵐。次のご寄稿注目しておりました。で、今回。
 題材を変えて、前回の言い訳をなさっておられるように感じました。「私は、メディアリテラシーを実践している。」のだ、と。それを、マスコミ志望の学生たちに伝えたいのだ、と。
 であれば、取材対象が何であろうと「メディアリテラシーの実践」は揺らぐべきではないでしょう。掲げていらっしゃるものが取材対象によって出たり引っ込んだりしていては、学生たちに伝わるのは「マスコミの処世術」だけになってしまうのでは・・・。
 次回、自らが身を置かれて居られるメディア、マスコミを対象とした「メディアリテラシーの実践」を期待しております。前回の反論の嵐は、篠田さんにそれを期待するが故のものであったと感じておりますので。
 

「親が犯罪を犯したからと娘の入学を取り消す」と書いておられるが、それが事実なら長女や次女も、大学を受験したかは知らないが、同じ目にあっているはず。
3女だけなら、「親が犯罪を犯したから」ではなく別の理由が考えられる。今も教団に深く関わっているとか、関わってなくても、そう思われているとか。
このへんは、取材すれば比較的簡単にわかるんじゃないの?なぜ取材して書かないのか?失礼だが、最初から結論ありきで書かれているように見えました。

元幹部クラスの上祐氏や野田氏、そして教団関係者で事件を認め賠償を行うようになっている人は皆松本家と特に三女の教団への関与、その影響の大きさを語っています。

大学側に教団との関係はまったくないという嘘を言って勝訴してお金をもらったようですが、それは嘘であって詐欺行為なのではないですか?

また、実際なら教団内で大変優遇されて生きてきた(今も優遇されている)家族は、被害者賠償を継続して行うべきだと思いますが、していない。そればかりか、教団からは内緒で布施を受け取ったり、お世話がかりの弟子たちに身の回りの世話や生活費を稼がせているわけで、四女の告発に耳を傾けるべきではないでしょうか?

子供は被害者という側面もあると思います。
しかし、あの三女が今のAleph教団で一番権力を持っているのは周知の事実です。

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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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