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2009年9月16日

旧オウム教団訪問。麻原元教祖の娘の事件を思い出した。

 今年もマスコミ志望の学生を連れて千歳烏山の旧オウム教団、現「ひかりの輪」(正確に言えば旧オウムを離脱した集団)を訪れた。いまだにマスコミで非国民扱いされている側に直接会って話を聞き、いつもテレビ画面を通して見ている現実を反対側から見るとどう見えるか考えるという、メディアリテラシーの実践だ(『創』はこのメディアリテラシーを毎号誌面でやっている雑誌なのだが)。
 本部前に常駐している公安とも詳しく話をしたりと、なかなか刺激的な取材だったが、学生たちとその事前学習をする過程で、『創』に掲載した麻原元教祖の娘たちのインタビュー記事を読み直し、懐かしく感じた。

 私が麻原元教祖の三女に初めて長時間インタビューを行ったのは、彼女が13歳の時だった。麻原の後継者と目されていた彼女はどこに行くにも公安の尾行がつく状態だったが、第一印象はあどけない普通の女の子だった。その後彼女には何度もインタビューしたが、感心したのは小学校にも通ったことのない彼女が、独学で通信高校まで出、大学にも合格したことだった。大変な努力だったと思う。
 ところがその合格の年は、不運にも父親の1審の死刑判決の出た時期で、大報道が行われ、入学願書に父親の名前を伏せていた彼女の書類に不審感を抱いた和光大学が彼女の身元をつきとめた。そして合格を取り消してしまったのだった。その年、彼女は他の大学にも受かっていたが、和光大学の例が報道されたせいで、そちらの大学でも身元が発覚。合格を取り消された。
 三女は裁判所に仮処分を申請し、裁判所の命令で何とか合格した大学のひとつに入学したが、一番ショックを受けた和光大学をその後訴えた。和光大学は全人教育を唱え、学長は差別反対の著書もある人だったから、彼女はこの大学なら自分を受け入れてくれるだろうと期待した。それが入学拒否と聞かされ、大きなショックを受けたのだった。
 
 裁判も私は傍聴したが、大学側の主張は、彼女を受け入れれば警備態勢も必要になるし、他の父母や理事会の反発も必至で、混乱は避けられないというものだった。確かに大学側の負担が増えた可能性はあろう。でも、それでも受け入れるというのが教育者のとるべき態度だと思う。親が犯罪を犯したからと娘の入学を取り消すというのでは、出自による差別と同じことだ。
 当時、大学側の措置に抗議して私は朝日新聞の「私の視点」に投稿し、和光大で教師や学生が開いた学内集会にも足を運んだ。和光大は、大塚英志さんや森達也さんらが講師を務めるユニークな大学で、彼らはもちろん大学の措置に反対、何度も抗議集会が開かれた。その経緯は当時、『創』に何度かレポートしたが、驚いたのは、大手マスコミがこうした集会にも裁判にもほとんど取材に来なかったことだ。
 めんどうなことは排除するという大学の姿勢と、発表もの以外足で歩いて取材を行うことをあまりしなくなったマスコミと、この現実にはいつもながら暗澹とせざるをえない。私は全共闘運動の末裔で、大学には右翼も左翼も宗教団体もいたし、左翼も諸党派がいつも激論を交わしていた。大学の授業よりも、そういう空気の中からずっと多くのことを学んだと思う。もしオウムの娘が大学に入って混乱が起きるというなら、それを素材に大議論を起こそうというくらいの構えをどうして持てないのか。大学って本来はそういう場のはずだと思う。
 ビラも立て看も禁止して無菌状態のような環境を作るのは、管理する側は楽でいいかもしれないが、大事なものが失われてしまう。この10年ほど、大学がやたら建物ばかり立派になっていく様子を見て、根本的な疑問を感じるのである。

PS 私は例年、マスコミ志望の学生と数多く接するのだが、先頃、そういう人たちと意見交換する場としてmixiに「マスコミ就職フォーラム」というコミュニティを立ち上げた。ここにアップした文章も、そこへのトピとして書いたもの。もし関心ある人は、そのコミュニティにアクセスして登録してほしい。マスコミをめざす人たちに知ってほしいメディア界内部の格差拡大とかの問題を今後、議論していこうと思っている。

2009年9月11日

週刊誌を読む:ワンフレーズ大勝再び 総選挙で異例の一斉発売

 総合週刊誌は、月曜発売から木曜発売のものまでが九月二日水曜日に一斉に発売されるという異例の事態となった。各誌が総選挙の結果を受けて発行しようとしたからだ。

 確かに政権交代という事態の持つ歴史的意義は絶大だ。しかし、同時に多くの人が今回の結果に不安を感じているのも確かだ。

 『週刊朝日』9月11日号のコラムで田原総一朗さんがこう書いている。「前回の選挙は『郵政』、今回は『政権交代』というキーワードで完全に"一色主義"に染まった。そこまで極端に振れる日本人に、言葉は悪いが、私は気持ち悪ささえ感じた」

 『週刊金曜日』9月4日号で雨宮処凛さんもこう書いている。「今回の選挙は『政権交代か否か』というワンフレーズで、『郵政民営化か否か』のワンフレーズだった四年前が蘇り、そしてその結果も四年前を彷彿とさせるものだった。自民と民主が入れ替わっただけ、という構図だ」

 さらに『週刊文春』9月10日号での立花隆さんの見解も引用しよう。「『政権交代』を叫ぶだけの党派がランドスライド的大勝をしてしまうのは、政治がコンテンツ抜きのパフォーマンスだけで評価されてしまう国ということでもある。この選挙、思い返せば返すほどその中味のなさに唖然としてしまう」 

 大勝と言えば、その選挙特番の視聴率競争で日本テレビが、NHKの24・7%をしのぐ26・4%でぶっちぎりトップになったことも話題になった。前の時間に放送していた「24時間テレビ」で、「珍獣ハンター」イモトのゴールが時間内に間に合わず、「ゴールの模様はこの後の番組で」とされたことが勝利の要因だった。

 中身や実力と別の要因で圧勝という、この現実には脱力感を覚えざるをえない。そして、民主党の圧勝にも同じ思いを感じてしまうのだ。

 その民主党新人女性議員の「コスプレ風俗ライター」の過去をすっぱ抜いたのは『フライデー』9月18日号。どうということのない中味だが、週刊誌らしい切り口で面白い。

 のりピー騒動絡みでは『週刊ポスト』9月11日号「酒井法子実弟獄中告白!」が、実にいい記事だった。

*  *  *  *  *

※『週刊誌を読む』は「創」編集長・篠田が毎週、東京新聞に連載(北海道新聞・中国新聞も転載)しているコラムです。
【バックナンバー】 http://www.tsukuru.co.jp/shukanshi_blog/

2009年9月 4日

選挙特番で日テレの視聴率大勝利に脱力。民主党の勝ちすぎにも...

 8月30日夜の選挙特番で日本テレビが歴史的高視聴率を記録した。たけしの出演したTBSが平均9.5%、テレビ朝日が12.0%、NHKが24.7%なのに対して、何と日テレは26.4%だった。

 理由は明らかで、8時台まで放送していた「24時間テレビ」で珍獣ハンター「イモト」が放送時間内にゴールできず、「ゴールの模様はこの後の番組で」とやったために、視聴者がそのまま日テレを見続けたというわけだ。日テレはわざとイモトのゴールを引っ張ったのではないかといううがった見方までなされている。当初は、全局が選挙特番をやるなかでギリギリまで24時間テレビをやっている日テレは大丈夫か、と言われたのだが、現実はその逆だったわけだ。

 これは、テレビっていったい何なの?と考えさせる現実だ。選挙特番の速報性や中身の濃さが勝敗を分けるならともかく、実際に視聴者の行動を左右したのは上記のような事情だった。思わず脱力。でも、それがテレビの本質かもしれない。

 で、今回の選挙の結果についてだが、確かに政権交代が実現して、国民の1票が政治を動かしたという意義は認めるが、誰もが感じたであろう不安は、4年前の小泉選挙とよく似た光景だ。民主党が300議席を突破。しかも4年前の小泉チルドレンと今回の小沢チルドレンのよく似ていること。こんなに激しく振り子がふれてしまって大丈夫か?と多くの人が感じたに違いない。政権交代を促進するという小選挙区制の特徴なのだろうが、これが本当に民意をきちんと反映したことになっているのかどうか。

 私個人としては保坂展人さんが落選したのは残念で、あれだけ善戦して得票数をとったのに、落選になってしまうのか、と思った次第。法務委員会などでの彼の活躍を見ていたら、国会に必要な人だと思うのだが、一方でよくわからない人が民主党候補というだけで当選してしまっているような光景を見て、うーんこれでいいのかと。4年前にも、小泉チルドレンというだけで当選してしまったような人が多かったのを見て同じ印象を受けたが、これでいいのか。こういうあり方って政治の劣化や政治不信につながっていくような気がしてならない。

 政権交代自体はいいことで民主党政権がちゃんとやってくれることを期待するしかないのだが、でも手放しで快挙だと言えない、日テレの視聴率トップに対すると同じような脱力感を感じてしまうのはどうして?

2009年9月 3日

週刊誌を読む:薬物汚染、本質に切り込め 防止システムもっと議論を

 次々と新たな展開で芸能マスコミを賑わせている酒井法子被告の薬物事件だが、最近の主役は建設会社の「会長」だろう。逃亡中の酒井被告のめんどうを見ていた人物だ。

 八月二十七日発売の『女性セブン』と『週刊新潮』に登場したのを機に、連日ワイドショーに出ずっぱりとなった。週刊誌などの報道で犯人隠匿を疑われたことから、むしろ取材に応じた方がよいと判断したのだろう。

 この会長の話で気になったのは、酒井被告の証拠隠滅疑惑を否定した部分だ。逃走中に酒井被告が髪を切ったという報道に対して、例えば『女性セブン』9月10日号では「100%ないよ」と否定した。酒井被告が髪を切ったというのは、ほとんど確定的に報道されていたのだが、あの報道はいったい何だったの?という感じだ。

 この会長の話とともに、酒井被告の二番目の母親のインタビューをとったのは『週刊新潮』9月3日号だ。酒井被告の幼少時の話が具体的で興味深い。例えば彼女が生まれた時、暴力団組長だった父親は刑務所におり、実の母親は娘を置いたまま別の男と駆け落ちしてしまったという。

 こうした酒井被告の不幸な生い立ちは、今回の騒動が関心を持たれているひとつの要因だろう。事件の陰に涙ありというドラマチックな物語である。

 もう一カ月近く、この薬物事件は社会的関心を呼んでいる。だからこそ提案したいのだが、テレビの情報番組などはもう少し工夫して、薬物汚染の本質に切り込むような報道ができないものか。例えば防止のために量刑を重くしろといったコメントが多いのだが、それでは単純すぎる。

 アメリカでは1980年代に厳罰化で薬物汚染に対処しようとしたが、効果がないことがわかり、今では治療プログラムを取り入れたドラッグコートという司法システムを導入しているという。日本ではそういう薬物汚染防止のための社会システムについて議論すら起きていないのが現実だ。一番の原因は政府の怠慢だろう。

 この九月三日、私は都内で田代まさしさんを呼んで、薬物問題についての討論会を開くことにした。興味のある人は創出版のHPにアクセスしてほしい。

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※『週刊誌を読む』は「創」編集長・篠田が毎週、東京新聞に連載(北海道新聞・中国新聞も転載)しているコラムです。

【バックナンバー】 http://www.tsukuru.co.jp/shukanshi_blog/

Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

最新号
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詳細はコチラ

-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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