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北朝鮮制裁や新型インフルエンザ対策など日本国の最近の危機管理策は疑問だらけだ

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『創』2009年8月号

 東京税関から文書が届いた。創出版から北朝鮮に送った郵便物が制裁措置にひっかかって送れないとの文面だった。これは平壌にいる「よど号」グループが毎月購読している「創」のことらしい。「創」は獄中とか北朝鮮とか、特別なところに読者のいる雑誌なのだが(笑)、何と制裁措置の発動で、その「創」が平壌に入らなくなったらしい。「よど号」グループは「創」以外にも日本の雑誌などをたくさん取りよせて読んでいるはずだが、それらもダメになってしまうのか。でも、こんなふうに情報までもシャットアウトしてしまうのって、本当に北朝鮮への制裁になっているのだろうか。むしろ北朝鮮にいる人たちにこそ、国家からの一方的な情報に偏らぬよう日本の情報を送り込んでやるべきだと思うのだが。

 危機管理で思うのだが、最近、おかしいのは、東京拘置所へ面会に行くと、全員がマスクを着用させられることだ。面会室はアクリル板で隔てられているのに、そこでマスクつけて話すのだから、話は聞こえにくいし、しかも奇妙なことにマスクをつけるのは外から面会に行った側だけで収容されてる獄中者はつけていない。つまりこれは、拘置所の「水際作戦」というわけだ。外部から新型インフルエンザのウイルスが侵入するのを面会室で阻止しようということらしい。でも本当にこんなことで対策になっているのかどうか。そもそも今や外界では一時期のように皆がマスクをつけるのもやられていないのに、拘置所だけこんなふうにしていること自体がすごく奇妙な感じがする。

 一連の新型インフルエンザ対策のおかしさについては、厚生労働省の現役検疫官である木村盛世さんに詳しく話を聞いて、発売中の「創」8月号に載せた。木村さんの主張はテレビなどでも報道されているが、こんなふうに8ページもの分量でまとまって彼女の主張を展開したのは初めてだ。で、体系的に聞いてみると、木村さんの主張はいろいろなことを考えさせてくれる。4月28日からしばらく続いた「水際作戦」なるものの馬鹿馬鹿しさは後に明らかになるのだが、どうして政府がこういう時代遅れの危機管理対策をとったのか。しかもそれに対してどうして疑問の声がきちんと上がらなかったのか。木村さんは一連の政府の対策は、日本がいかに危機管理ができていないかを世界中に示したもので、逆に非常に危険なことだと指摘している。

 木村さんのこうした内部告発ともいうべき発言に対しては、当然ながら厚生労働省から圧力がかかっており、今はまだマスコミが注目しているので露骨なことはやりにくいだろうが、今後なんらかの力が彼女に加わる可能性は大といえる。本人もそのくらいは覚悟で内部告発に踏み切ったのだろうが、本当はこういう内部からの批判がきちんと受け止められるくらいでないと危機管理というのは機能しない気もする。

 秋からは新型インフルエンザの第2波が襲来すると言われる。春の大騒動がどの程度正しく教訓化されたのかが試されるわけだが、木村さんの話を聞いていると、この国の政治家や官僚たちに危機管理を任せておいて大丈夫なのかと思ってしまう。怖いのは、北朝鮮の制裁にしても、インフルエンザ水際作戦にしても、よくわからぬうちに国家が方策を打ち出し、しかも本当にそれが効果的なのか検証や議論が十分になされている感じがしないことだ。非常時といった言い方のもとに国家が有無を言わさず強権的にふるまう最近の日本のありようには空恐ろしいものを感じざるをえない。

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今度の新型インフルエンザの話に絞れば、そもそも起こりえるもっとも困難な状況に備えるよりは、神学的な対応で何かをしたつもりになるという構えの愚かしさだといえます。所詮侵入も拡大も防げるはずのないものを防ぐという発想は愚かで、間違いなく拡大するときのもっとも困難な課題への準備はかすんでいく、ということです。演劇的な対応であることはインフルエンザ診療を行っているむしろ現場の末端こそが知っている事実なのですが、それにともなう現実性が発動されない。危機管理としての問題はとても単純な問題指向型解決法すらとれないことにあるのです。それはまさに官僚体制とマスコミの神学的誤謬です。

自己責任論のバックラッシュが起こりつつあるのでは?

何でもかんでも「お上」のせいにする風潮が戻りつつある。
そういう空気を読んで、後の批判を受けないようにと先回りして考えるから、「万全の対策」という言い訳を用意し、証拠を残しておこうとする。
さらに、「お上」の側にも「脅威」を利用して支持を得ようとするスケベ根性があるため、その相乗効果で騒ぎが拡大する。

マスクをしていない人が白眼視され、修学旅行を中止しなかった校長が涙の会見でお詫び、経済制裁の実効性に疑問を唱えただけで売国奴呼ばわり、といった異様な状況。

少し冷静に考える癖をつけておかないと、肝心なときにパニックに陥る。
最近、地面を見ていて感じるのは、歪みの蓄積が進んでいるのではないかという疑いだ。
イザというとき、「お上」などは頼りにならないものと考えていた方がいい。

以前のコメントにも書いたのですが、篠田さんにはぜひ、岡村ちゃんの活動も取り上げていただきたいです。

岡村ちゃんみたいな人は、呪いとか孤独を俯瞰し、超越した文章を書いていただきたいです。

官僚や政治家だけでなく、もともと我々が危機管理という事がどういうものか解っていないと思います。以前、関東地方に大地震が来ると言った時の、防災グッズをみて、本当にこんなものそろえて助かるのだろうかと、いつも思っていました。考えれば、いざ地震が起こったとき、あの防災袋を倒壊した家屋から引きずり出すような余裕がどこに有るんでしょうか?そんな事なら、食べられる野草を調べ、転がった鍋で煮炊きする訓練をし、水を濾過する方法を小学校や、地域で教えといた方がましだと思いました。日本人はわざと危険を考えないようにする癖でもあるんでしょうか?考えたら現在の東京は地震の際の危機管理すら出来ていないのでは。元々の発想が貧困では、どんな対策を「お上が」しても所詮は無駄な事だと思います。元来、いつやってくるか解らない、天変地異やパンデミックが起こらないように防ごうとするから危機管理の発想が貧困になると思います。起こるものだと思って、起こった時の対処を起点として、遡って、水際の対策をすれば答えは出るはずです。限界の見える予防よりも、広く民間薬の知識、消毒剤がなくなった時の対処法。起きてしまったとき、クスリは品薄になる事を想定して、少しでも助かる道を模索するべきです。また、基礎的な、衛生や保険の知識の蓄積をもつことも大切なのではないでしょうか。その上で行政のすべき一番大事なことは、非常時の指揮系統の確立と責任の所在の明確化であると思います。特に責任の所在が明確でないから、常に、全ての事案について過剰な反応になるのではないでしょうか。
日本人ながら、なにか事件が起きるたびに、繰り返される、日本人のばか騒ぎを見て、正直いつも恥ずかしく思っています。

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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

BookMarks

創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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