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出版界を揺さぶるグーグル問題

 先週は『創』の校了の時期で忙しくて他のことは何もできなかったのですが、先週の「週刊誌を読む」がきょうアップされたのですか。すみませんねえ。東京新聞には月曜に載るのですが、北海道新聞は水曜なので、創ブログには水曜にアップしてるのですが、今後は不定期でなくこちらにも水曜にアップするようにします(でも今回の「週刊誌を読む」はあまりこういう場で議論になるような話でないので掲載期間短くていいです)。それから足利事件の報道検証についてもフォロー記事を書くべしとのご意見があったので、近々やりましょう。

 さて、きょう書くのは、グーグル騒動についてです。えーっと、誰かこの問題について書いてないのかと思ったら、先週、マル激で神保さんが解説してたんですね。わかりやすい解説だと思います。ただ出版界が「蜂の巣をつついたような騒ぎ」になっているというのは少しオーバーですが。

 この騒動、深刻に受け止められているのは確かです。6月21日の毎日新聞で作家の桐野夏生さんが「グーグル問題に思う 小説断片化への不安」と題して書いていました。文学者らしい視点で、感心しました。本当はこの問題、こんなふうにいろいろな作家の方々が自分の意見を表明していくと、もっと面白い議論になると思うのですが、現実はというと、なかなかそうでもありません。きょうも勉強会に参加して、今帰ったところなのですが、参加している顔ぶれが大体決まってるんですね。業界団体関係者です。

 そもそも、何がどうなっているのかよくわからないという人がほとんどです。私も驚いたんですが、まずアメリカでグーグルが著作物を無断で全部スキャンしていたというのでアメリカの作家組合や出版社が提訴して、今和解手続きに入っているのですが、これ、日本にはない集団訴訟(クラスアクション)という仕組みで、その和解が裁判の直接の当事者だけでなく他の利害関係者にも適用される。ベルヌ条約に加盟している全世界の国に適用されてしまうとかいう、とんでもない話なんですね。つまり日本の著作者や出版社も、拒否手続きをしない限り、この和解案に巻き込まれるというのです。そこから離脱するにはオプトアウトという手続きが必要で、しかもその期限が最初は5月5日と勝手に設定されていたんです。しかもオプトアウトしようにも、まずネット上の手続きが難しくて、意思がありながらできない人も大勢いるというのです。

 これはあんまりだというので結局、期限が9月4日まで延長されたのですが、それまでにオプトアウトしないと、へたをすると日本の著作物もグーグルによってデジタル化され、場合によっては公開されるというわけです。しかも、グーグルは当面公開するのは絶版になっている著作物だけと言っているのですが、ある出版社が調べたら、今でも売っている本も絶版とみなされていたというのです。つまり著作物が絶版か市場流通してるかどうかはグーグルが一方的に判断することになっているのです。

 そもそも著作物の流通というのは国によってシステムが違うし、出版文化それぞれが違うわけです。だからグーグルという私企業によって、全世界の著作物が管理されていくというのはどう考えても乱暴なんですが、そこはあのストリートビューなんて無茶苦茶なものを強引にやってしまうグーグルですから。

 で、日本の著作権者や出版社も否応なく、この騒動に巻き込まれ、いったいどう対応すべきかカンカンがくがくの議論になっているのです。といっても議論をしているのは日本文藝家協会とか日本ペンクラブ、それに書協といった業界団体で、多くの著作者は、何がどうなっているのかわからずただあっけにとられているだけ、というのが実情のようです。

 業界団体の対応もまた千差万別というほど分裂しています。文藝家協会は、和解案を受け入れた上でデータ削除も含む権利主張をしていこうという考えですが、中小出版社の団体である流通対策協議会などは「まずオプトアウトすべき」という意見です。

 そんなふうに分裂した著作権者を見て、こいつらは何もわかっていない、と罵倒するネット社会の事情通もいたりして、とにかく百家争鳴状態。

 アメリカの裁判にどうして日本が自動的に巻き込まれるの!とその点には多くが反発しているのですが、でもこんなふうに国境を超えて世界中がいきなりつながってしまうのが、ネット社会の特性なんでしょうね。しかも、著作物が紙中心からデジタル中心の時代に移行するというのは、いずれやってくるわけで、日本の出版界でも、拒否をするだけでなく、グーグルの案に代わる対策を考えるべきだという意見も出ています。つまりいずれグーグルが世界中の「知」や「情報」を管理しようとしてくるのは明らかだから、それに対抗しうるシステムを作るべきではないか、というわけです。

 いや、私も専門家というわけでなく、研究会に行くたびに、「え、そうなの?」と驚くことばかりです。我々の親しんできた著作物、「本」がこれからどうなるのか、これは決して出版業界団体だけの問題ではありません。

 で、私の所属する(というか一応、言論表現委員会副委員長という立場なんですが)日本ペンクラブでも明日、この問題でシンポジウムを行います。ぜひ多くの人が来て下さい。今、何が起ころうとしているのか知るだけでも大切なことです。予約不要、誰でも参加できます。ということで最後は告知をしてきょうのところはおしまいに。

■日本出版学会/日本ペンクラブ 合同シンポジウム
グーグルブック検索和解協定を検証する
~出版流通・表現の自由・国際比較の観点から~

【開催主旨】
 米国でのグーグルブック検索訴訟の和解案が,世界中の著作権者や出版社の間で大きな議論を巻き起こしています。日本でも出版社や著作権者が早急な判断を迫られたことから,さまざまな見解や態度表明がなされ,日本ペンクラブでも4月24日付で和解案に対して懸念する主旨の声明を発表しました。過熱的状況を背景に国内外での混乱や対応に食い違いが生じた理由として,米国内での著作権訴訟が日本に影響及ぼす法的背景,「フェアユース」概念,日本にはない「集団訴訟」,ネットビジネスで採用されている「オブトアウト方式」による許諾,言論表現や出版商習慣の違いなど,国際間での理解や知識・情報不足があげられます。
 日本ペンクラブと日本出版学会は共同で,グーグルブック検索和解協定を検証するパネルディスカッションを開催します。そこでは出版流通・表現の自由・国際比較の観点から討議し,今後の議論のための知識と理解を深める機会になればと考えます。

パネリスト:
 三浦 正広(国士舘大学)
  「日米における著作権法の違い・フェアユースについて」
 原 若葉(弁護士)
  「集団訴訟・ベルヌ条約について」
 植村 八潮(東京電機大学出版局 日本出版学会副会長)
  「日米における出版流通や出版契約慣行の違いについて」
 山田 健太(専修大学 日本ペンクラブ言論表現委員会委員長)=司会
  「グーグル協定概要・表現の自由の立場からの問題提起」
(今後の状況次第で変更する場合もあります)

日 時:平成21年6月30日(火) 午後6時-8時30分
参加費:会員(ペン・出版学会)/学生 500円  非会員/その他 1000円
会 場:東京電機大学(神田キャンパス) 7号館 丹羽ホール
    101-8457 東京都千代田区神田錦町2-2
    http://atom.dendai.ac.jp:80/info/access/kanda_map.html
交 通:JR 御茶ノ水駅・神田各駅より徒歩10分
    地下鉄 新御茶ノ水駅・小川駅・淡路町各駅より徒歩3~5分
問合せ:日本ペンクラブ事務局
Tel.(03)5614-5391  Fax.(03)5695-7686  http://www.japanpen.or.jp
日本出版学会事務局
    info@shuppan.jp  Tel.(03)5684-8891  Fax.(03)5684-8892

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以上になりますが、ご理解・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

平成21年6月30日(月)??

30日は火曜日ですが。

《THE JOURNAL》編集外部さま

ご指摘ありがとうございます。下記の通り、変更いたしました。

告知文の日程に下記の通り誤記がありました。

日時:平成21年6月30日(月)
 ↓
日時:平成21年6月30日(火)

お詫びして、訂正いたします。

グーグルの「ブック検索」には、反対です。絶版のものだけという話だったのに、今、販売されている本もデータ化しているというのは、著作権侵害であり、犯罪行為です。絶版になった本でも、インターネットの膨大な利用者を考えれば、著作権者に、莫大な使用料を支払うべきであり、著作権者と合意しなければ、データ化できないように、するべきです。私個人としては、書籍というのは、装丁、製本、活字、紙質、栞、すべてが、「書籍」であり、だからこそ、「行間を読む」「想像する」「紙背を読み取る」ことがしやすく、電子画面に出たものは、単なる「情報」になってしまいます。最近のベストセラーの一部のように、深みのない世界と感じられます。グーグルの「ブック検索」と同じようなことが、あの「国営漫画喫茶」で始まるのではないか、と危惧しています。「安部総理の時に計画され、この補正予算で、実行し、経営は、民間に任せる」と、麻生総理が、発言したことで、「日本文化収奪計画では?」と、感じました。与党のこれまでの政策で、日本の良さ、日本人の文化が、かなり失われてきましたが、比較的、新しい、アニメなどの文化まで、外資に取られてしまうのでしょうか?お金も取られ、文化も奪われてしまうのか、と、心配しています。

 Google を敵視するんじゃなくて、日本も Google のような企業を育成すべきじゃないでしょうか

 少なくとも、これまでの日本は、あのような会社ができるのを阻止するような法整備を行ってきました。

 著作権法上の無断複製(営利目的)に問われるので、未だに検索エンジンのサーバーを国内に配置できないんですよ。

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篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

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2008年8月、筑摩書房

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