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田代まさしさんと薬物依存について

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審判:田代まさし著 創出版 1470円

 私は死刑囚とのつきあいも多いけれど、一方で芸能人の薬物依存にも、三田佳子さんの息子、田代まさしさんのケースなど深く関わってきた。田代さんは昨年6月、3年半の服役を終えて出所したのだけれど、彼が逮捕当時『創』で連載を執筆していた関係で、私は裁判にも情状証人として出廷するなど、4年前の覚せい剤事件にはかなり関わった。その田代さんが、薬物依存から家庭崩壊、刑務所での生活や出所後の状況などをまとめた著書『審判』をこのほど、創出版から出した。

 最近、大学生の大麻汚染が問題になっているが、実は薬物汚染というのは、一般に思われている以上に日本社会を蝕んでいる。留置場や拘置所では、石を投げると薬物依存者にあたると言われるほどだ。日本の薬物依存対策は、欧米に比べるとひどく遅れていて、逮捕した者を刑務所に送って痛い目にあわせるという原始的な考え方だ。依存症なのだから治療という側面がないと解決にならないのだが、その機能が日本では全くない。だから出所しても原因が除去されていないのだからまた薬物に走ることになる。

 そもそも家族に薬物使用している者がいることがわかったという場合、いったいどこに相談すべきかといった情報が全くない。警察に通報すれば逮捕されるし、医者に相談するといっても何科に行くべきかわからない。大体、薬物依存に走る者の家庭自体が壊れているケースも多く、誰もケアする人がいないまま、結局は刑務所へ放り込まれることになる。刑務所でも更生教育などはほぼ皆無で、何年かして出所した人は、以前よりも一層精神的に追い詰められた状態に放り出されるわけだから、また薬物に手を出すことになる。犯罪者というのは、服役させて痛い目にあわせるだけでなく、出所して社会に復帰した後、どういう状況に置かれるかというのが大切なのだけれど、そこへの認識が日本社会にはほとんどない。というか、そもそも死刑囚でない限りいつかは犯罪者は社会に戻ってくるのだという認識が、社会にもマスコミにもほとんどないのが実情だ。

 犯罪報道にしても、刑事ドラマにしても、容疑者逮捕で完結。判決が出ればジ・エンド。本当はその後が大事なのだが、そこへの想像力が全く働いていない。そういう犯罪に対する社会システムの遅れを象徴しているのが、薬物依存のケースだ。再犯率が極めて高いのだ。田代さんの場合は、服役中に離婚をつきつけられ、戻る家庭もない。幸運にも実の妹が2人いて、そのおかげで何とかなっているのだが、そうでなければ出所したその日から住む家もない状況に放り出されていた(実際にはそういうケースのための施設もあるが、それも一時的なものだ)。ほとんどの服役経験者は前科を隠して社会復帰を図るのだが、田代さんのように実名報道された人は前科を隠しようがないから、家も借りられない。就職先などあるはずもない。
刑務所見学をした人なら知っているだろうが、今日本の刑務所はどこも収容オーバーで、しかも外国人、老齢者、障害者といった、社会から疎外された人たちの集合所になっているのが実態だ。この現実をどうするか、社会全体が考えないと犯罪は減っていかない。犯罪を犯したやつは刑務所にぶちこんで痛い目にあわせろ、凶悪なやつは処刑して抹殺しろ、というのでは解決にならないことは冷静に考えてみればわかることだ。

 「刑務所は地獄だった。しかし出所後の現実もまた地獄だった」というのが田代さんの述懐だ。

 1日も早く自由の身になりたい、とそれだけを考えて服役したのだが、いざ出所してみるとそこは自由な社会でも何でもなかった、というわけだ。

 でも、今回、本を出版して書店などに営業をしていて「ええっ」と驚いたのは、書店でも前科者への偏見というか、ためらいが予想外にあることだ。犯罪者の本はあまり置きたくないという書店が1軒や2軒ではないのである。表現や出版に関わる世界はそういう世間の常識とは別かと思っていたら意外とそうでもない。こういう社会的感情というのは理屈ではないのである。

 話は変わるが、今週発売の『週刊新潮』が、田代さんの出版記念イベントを潜入取材して、記事を書いている。田代さんの手が震えていたからまだ薬物依存が直っていないのだ、という記事なのだが、こういう偏見を煽るだけの報道を、いったいどういう見識でやっているのか、編集者に聞いてみたいものだ。

 あ、ことわっておきますが、私は薬物依存や犯罪を許容しているわけではないですから、誤解なきように。逆に、犯罪をなくすためには、社会的偏見を煽るだけの報道はマイナスだと言っているのです。

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コメント (6)

初めまして。
篠田さんは以前「ジャーナルしちゃうぞ」に出演されていたでしょうか?

私は子供の頃から岡村ちゃん(靖幸)のファンなのですが、岡村ちゃんについても取り上げていただきたいです。

犯罪は孤独に起因すると思うので、その孤独をどうにかしないと、犯罪はなくならない。

「薬物依存」というと、規制されているドラッグの依存症や親和性をイメージすることが多いが、アルコール依存などは、覚せい剤などのハードドラッグ同様、深刻であり「薬物依存」と同じに考える事ができます。

薬物犯罪は「被害者無き犯罪」と呼ばれ、規制理由は「薬物のもたらす健康被害から国民を守るため」と認識されています。しかしそうなると、薬物を所持し使用した人間は、本来守られるべきだったのに守れなかったことになります。
「危ないから触っちゃダメだよ」と言っているのに反した。それは自業自得、とは言えません。それを罰するにしても、牢屋に入れたところで何も解決しません。法を優先しただけです。
ヨーロッパやアメリカ、その他の国でも、ドラッグの使用者を犯罪者とは扱わず、「(薬物依存症)患者」として扱いケア施設に送ったり、犯罪を裁く法廷とは違う「ドラッグ・コート」で判断したりしています。
日本では、理由も教育も無くダメゼッタイで威嚇することしかしておらず、国はその問題にはほとんどタッチしていません。今までのやり方では、警察統計を見ても分かるように、ドラッグ事犯は抑止できていません。
アメリカのオバマ大統領も、ドラッグの問題について、ブッシュ政権のときの WAR ON DRAG(ドラッグ戦争)という方針を改めようとしています。それはドラッグを広めても構わないとか、ドラッグを使用できるようになる、ということではなく、いかにドラッグ使用者を減らすか、という考え方に基づいています。

日本でも、もっとこの問題について議論するべき時代が来たように思います。

何度地獄を味わっても手をだしてしまうとは、それをうわまわるほどの薬効世界があるとおもわれますね

薬物依存の問題って、薬物使用人口の拡大を防ぐことが第一義となるのでしょうが、
薬物依存となってしまった人々のケアとパッケージで考えないと無理ですよね。
彼等の心の闇を理解することが出来る専門家を育成してネットワークを構築してほしいです。暗い闇の中から抜け出せない人達を、単に心が弱いやつと断ち切ってはいけない。
追い詰められた生活環境のせいで薬に手を出す人が多いのでしょうが、増え続ける鬱病と薬物がリンクしていくのではと、心配です。
なんか反ドラッグ教育だけじゃダメなような気がして。
薬依存←弱いヤツ
という図式で見限る限り無理なような。弱いと思うんだったら助けなきゃダメですよね。

最近ドラッグ使用者と「心の闇」「絶望感」などの負の側面と結びつける話しを聞きます。しかし、あまり関連づけようとすると本質を見失うようにも思います。

アルコールを飲む人たちは、心の闇や絶望を抱えているのでしょうか。確かにやけ酒やキッチンドランカーのような自虐的な飲み方もありますが、たいていは呑んで騒いで憂さを晴らすためにアルコールを飲むのではないでしょうか。
「ストレス解消」という効果がアルコールにはあります。同様、ドラッグにもあるのです。というか、アルコールを含めたドラッグには、ストレスを解消する効果がある、と言って良いでしょう。

規制されたドラッグを使用するほどのストレスがあるから、ドラッグを使用する人がいるのでしょうか。それはそうだと思います。つまり、現在の社会はそれだけストレス過多なのです。
ドラッグを使用する人だけが「心の闇」をもったり「絶望」しているという、特別な存在というわけではないでしょう。ただ、ストレス過多なのだと思います。

なるほど深い 的を得た考察ですね 週刊誌の 売らんかなの無責任には 手だてがいりそうですね!!  犯罪者も刑務所内で内職くらいで せめて自活程度は稼いで欲しいものです

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Profile

篠田博之(しのだ・ひろゆき)

-----<経歴>-----

1951年茨城県生まれ。
一橋大卒。
1979年より月刊『創』編集者。
81年より編集長。 82年同誌休刊に伴い、創出版を設立して雑誌発行を続ける。
現在は編集長兼経営者。
日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長、東京経済大学大学院講師など兼務。
東京新聞、北海道新聞などにコラム「週刊誌を読む」連載。
メディア批評のほかに、犯罪、死刑問題などについても新聞・テレビでしばしば発言。
著書『生涯編集者』(創出版)、『ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)。共著は多数

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創出版
http://www.tsukuru.co.jp/

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-----<著書>-----


『生涯編集者──月刊「創」奮戦記』
2012年6月、創出版



『ドキュメント死刑囚』
2008年8月、筑摩書房

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