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英国ピーク事情/Teqs rules UK?

超党派の議員で作られる「ピークオイルに関するグループ(APPGOPO)」がTeqsというエネルギー配給制度の導入を提案する報告書を提出しました。

TEQs (Tradable Energy Quotas)は「取引可能なエネルギー割当」のことで、テックスと発音するそうです(ニュージーランド人が発音すると「ダニ」のように聞こえちゃう。)

この報告書をまとめたのは無駄のない経済関係(The lean economy connection)というロンドンにある研究機関です。これは昨年11月に他界したデビッド・フレミングが立ち上げた機関で、テックス自体もフレミングが1996年に最初に提唱したものです。

フレミングは環境運動やエネルギー運動の活動家で、英国の緑の党の創設にも寄与し、1990年代からピークについての対策を講じるよう呼びかけた人です。ピークへの対応のひとつとして日本でも広がりつつあるトランジション・タウン運動の生みの親、ロブ・ホプキンスは「ハインバーグのピ−クオイルに関する考察、ホルムグレンのパーマカルチャー、そしてフレミングのたくましい地域社会という考えをまとめたものだ」とフレミングの影響の大きさを語っています。だから、関係者のなかには、フレミングをトランジション・タウン運動の祖父と呼ぶ人もいます。
英国におけるオイルピークが活発化するひとつの契機は1999年4月、プロスペクト誌に掲載されたフレミングの「次の石油ショック?」という記事でした。
この記事で、フレミングは前年の『世界エネルギー展望』には暗号が含まれている。大きな影響をもたらすであろうエネルギー危機が近いことを示唆しているのではないかと国際エネルギー機関(IEA)の発表をいぶかりました。こんな記事をそれから5年とか10年後に書いたならともかく、1999年に書いているところがフレミングのすごいところです。なにしろ、その年の1月には石油価格は最近では最低のバレルあたり17ドル(現在の1/5)をつけたのですから。
これを読んだIEAの主任エコノミスト、ファティ・ビロールはフレミングに会いたいとコンタクトをとってきたそうで、「あなたの読みは正しい。世界でもこれが分かったのは6人くらいじゃないか」とフレミングに言ったとされています。フレミングが1996年にはじめて言及したエネネルギー配給制度の確立に全力を注ぐようになったのはビロールと会ったあとだといわれています。
さて、英国議会のなかに2007年の7月に設置された「ピークオイルに関するグループ(APPGOPO)」はピークオイルの経済や国民生活への影響を図り、適切な政策を進言することを目的とする超党派の議員からなるグループのことです。ジョン・ヘミング下院議員(自民党)が座長で、保守党、自民党、野党の労働党、緑の党など、国会に議席を持つすべての政党の議員が参加しています。
イギリスではすでに2008年の11月に「気候変動法The Climate Change Act」が発効しており、法的には、個人にそれぞれ大気汚染の許容範囲を認め、使わなかった汚染権を取引したり、足りなくなれば買い取ることができるようになっています。まだ導入はされていませんが、オーストラリア領のノーフォーク島で排出権個人取引の世界最初の導入実験が今年早々にもはじまることになっています。
テックスはそれと似たような形で、それぞれの大人にこれだけのエネルギー(ガソリンと電力)を使っていいよという形で、毎週エネルギーの使用権が配給されます。エネルギーの1ユニットはそれぞれの燃料の生産から消費の過程で生産される二酸化炭素1キロに相当すると定義されています。したがって、テックスはエネルギー配給制度という側面と同時に気候変動対策でもあります。
テックスは個人あてに電子的に配給され、実際にガソリンや電力を購入する際には割当枠とカネを支払います。個人の消費が割り当てられたエネルギー枠を下回れば、あまりは市場で取引することができ、足りなくなればエネルギー割当を他の人から買わなければなりません。それが省エネを促す、温暖化ガス生産を抑えることになるという目論見です。公共機関や企業は毎週、必要なエネルギー割当を購入しなければなりません。
全国的に出回るエネルギー総量は政府が決定します。出回るエネルギーの量を毎年落としていけば、エネルギー減耗対策にもなり、気候変動対策になるという仕組みです。

法的には前述の「気候変動法」に基づき、テックスは今すぐにでも導入することができますが、この報告書を発表したAPPGOPOの座長、ヘミング議員は明日導入するというわけではないと述べています。まだまだ、議論が必要になるはずです。
テックスの導入がいつになるのかはともかく、実効はどうでしょう。果たして英国一国における導入がどれほどの効果を生むのでしょうか。英国が節約した分は「これまで通り」を決め込む別な国で消費されてしまうのではないか。そういう心配があります。また、それを防止するために国際的な枠組みを作ろうとすれば、京都議定書のように延々と時間がかかり、しかも合意ができても、誰も真剣にならないという弱点があります。
エネルギー減耗議定書をつくろう、国際的な枠組みをつくろうという提案はリチャード・ハインバーグなどによって繰り返されていますが、なかなか前に進んでいません。APPGOPOにも関わってきたジェレミー・レゲットは「京都」や気候変動の国際会議にも自ら関わった経験から、国際減耗議定書は時間のむだだと著作『ピークオイルパニック』で言っています。
導入がいつになるにせよ、こういう大事なことを国会議員が真剣に議論し、研究している、導入へ現実的な道筋も考えているということはうらやましい限りです。
些細なことにばかり終始するどこかの国の議員は爪のあかでも煎じて飲んでほしいものです。英国の同僚に見えることがあなた方にはなぜ見えないのですか。どんな時代に生きているのか、その時代はどんな問題を抱えているのか、真正面から見てください。ピークと気候変動の複合作用がどんな影響をもたらすのか、そしてどんなシナリオが可能なのか、それを考える格好の入門書はホルムグレンの近刊、『未来のシナリオ』です。何人かの議員には本が送られているはずです。ただつんどかないで、ぜひ、ページをめくってみてください。

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>英国におけるオイルピークが活発化するひとつの契機は1999年4月、プロスペクト誌に掲載されたフレミングの「次の石油ショック?」という記事でした。<

99年といえば北海油田での生産量がピークに達していた時期では?
確かにこの時期での発言は凄い。

TEQsも確かにご指摘のとおり、排出権取引やらビジネスモデルとしての検証やら、利害関係も複雑そうで果たしてうまくいくのか?という気はします。
まぁ日本では電力会社によるスマートグリッド網の検証があたかも顔見せ興行的にほそぼそと実施されているに過ぎないし、電力買取制度も太陽光にだけ偏っていて、ローコストのミニ風力や太陽熱などベンチャー企業に対する支援もほとんど無視されているような状態だし。
もったいないし個人的にはTPPやら言う前にこっち先にやってくれよ!と思っています。

さてぜんぜん話は違いますが、私サッカー好きでして。
先日のカタール戦、あんな石油成金どもに雇われたプロ応援団にサポートされた代表チームには絶対負けるな!と思っていましたが、まぁ何とか勝ってくれてホッとしました。
カタールもどうするんですかね?2022年W杯開催に向けて日本円で約3,000億投入してスタジアムやら何やら整備すると言ってますが、果たして原資となる石油やら天然ガスやらどうなるのかしら?てなことをついつい考えちゃいました。

というわけで今夜は韓国戦。お互い守備面で穴だらけなんですが、攻撃面では韓国に一歩安定感があるか?とか思いつつ呑みながらわが代表チームの応援です。
それではまた。

screamerさん、コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、北海油田は99年にピークに達しました。恐ろしいのはその後の減耗率が予想以上に急激だということです。技術やテクノロジーの進歩でしゃぶり穫れるところまでしゃぶり尽くしてしまったため、いったんピークに達したあとはこういう風にガクーンと落ちます。世界的にも北海油田の例が繰り返される可能性が大いにあります。
自分はソッカーにはまったく関心がないのですが、どうやら日本はソッカールーズと決勝戦で対戦するようですね。まあ、どちらが勝っても負けても、はい、どうでもいい気がします。何しろ、どこが面白いやら、まったく分からないので。
自分はオーストラリアで一番人気な「本物のフッティ」が好きで、来月の12日に開幕する前哨戦トーナメントを待ち望んでいます。Carn the Piesって叫びながら。

Profile

リック・タナカ(Rick Tanaka)

-----<経歴>-----

信州松本出身。
1980年、シドニーに漂着。
大学中退後、ラジオやテレビ、ウエッブ、雑誌、ニューズレターなどで執筆、制作、コンテンツ制作、翻訳/通訳、音楽マネージメントなどで活動。
1997年、それまで15年暮らしたシドニーから標高千メートルの高原の町カトゥーンバに引っ越し、執筆・メディア活動と並行しながら、消費を抑え生産する楽農生活に突入する。
2007年、大陸の東南に浮かぶ島にある人口300人の村に移住、オイル・ピークと環境ゲテモノ化時代に備える暮らし、近隣社会の構築を模索中。

BookMarks

-----<訳書>-----


『未来のシナリオ』
2010年12月、農文協

-----<著書>-----


『人工社会』
2006年3月、幻冬舎


『楽農パラダイス』
2003年、東京書籍


『おもしろ大陸オーストラリア』
2000年、光文社知恵の森文庫

-----<共著>-----


『Okinawa Dreams Ok』
1997年、Die Gestalten Verlag


『Higher than Heaven:Japan, war and everything』
1995年、Private Guy International

-----<訳書>-----


『沖縄ポップカルチャー』
2000年7月、東京書籍

『首相暗殺』
ロバート・カッツ著、集英社

→ブック・こもんず←

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