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2008年1月25日

山頂の警告/a peek from the peak.

「2015年以降,簡単に手に入れられるアブラやガスの供給は需要を満たしていくことができないだろう」

「これ以上市場に出せるアブラがあんまりなければ,できないことをやれってのは難しいじゃないか」


これはどちらもピーク論者の発言ではない。

ひとつめはシェルの最高経営責任者,イェルーン・ヴァン・デル・ヴェールが1月22日付けですべての社員に向けた社内メッセージの中の一文。

「シェルのエネルギーシナリオ」というタイトルの文章は二つのシナリオを検討している。ひとつは「駆け込み」であり,もう一つは「青写真」。駆け込みシナリオはそれぞれの国がエネルギーを巡る競争を繰り広げ,温暖化を悪化させ,国と国が対立するシナリオ。「青写真」のほうは、国際的な炭素取引が設立され,国際協調のもとでエネルギー問題に取り組むというもの。この二つのシナリオについては 19日付、ダボスでの世界経済フォーラムでのインタビューという形でニュー・ヨーク・タイムズでも報道されている。

メジャーの一角を占めるアブラ会社のトップが2015年までにピークが訪れることを認めている。

ふたつめはちょいと古くなるが,16日付,アメリカのABC放送のインタビューで、サウジ訪問について聞かれたブッシュ米大統領の発言だ。

サウジの国王になんとかしてくれと言ったのか,と問われ,これ以上のアブラがないってのに,ない袖を振れって言っても仕方がないじゃないか。

公式には認めていないが大統領はピークをご存知のはずで,こんな形で潜在意識がぽろりと顔を出す。

今月のこの二つの発言だけを見ても,世界の経済のトップ,政治のトップはピークを認識している。

気候ゲテモノ化同様,ピークがくるかこないかなどと議論する段階は既に超えており、政府、自治体、企業,そしてひとりひとりが社会や生活から積極的、急速にアブラを抜いてかないと大変なことになる。

2008年1月16日

捕鯨関係短信/how low must you go?

共同船舶社の捕鯨活動に直接行動で抵抗するグリーンピースとシーシェパードの船が日の丸捕鯨団を捕捉し、 南氷洋で小競り合が始まった。陸の上ではオーストラリア人が日本の捕鯨に反対するのは人種差別が根底にあるとするユーチューブに投稿された「有志」制作のビデオを巡り緊張が高まっているところへ,オーストラリア連邦裁判所が「捕鯨違法」判決を出し,森本稔鯨類研究所理事長の火に油を注ぐような投稿が掲載されている。

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●15日にはシーシェパードのメンバー2人が,第二勇新丸に乗り込み,拘束されている。日本の報道では「妨害・破壊活動を展開する恐れがあったため、乗組員が取り押さえた」と水産庁の発表だけを引用している。

シーシェパードは2人の乗船の目的は捕鯨が違法であることを訴える手紙を渡すことだと発表している。手紙には「この乗船が犯罪を犯すつもりはなく,窃盗や乗組員に危害を加えたり、船の破壊を意図するものではない」とはっきり書かれている。

英国籍とオーストラリア籍のシーシェパードのメンバー二人が乗船するところ,そして取り押さえられる光景はビデオで見ることはできる。

(これらの写真やビデオはシーシェパードの撮影)

当時17ノット(時速30キロ)で航行する船から,「乗組員は二人を海に突き落とそうとし,それから隔壁甲板に縛り付けた。二人は暴行を受けた後,レールに縛られ,一時は腰まで水に浸かったほどだ。それから上部甲板に移され,レーダーマストに2時間ほど縛りつけられた」とシーシェパードの抗議船、スティーブ・アーウィン号からシドニーモーニングヘラルド紙に説明している。

最新報道によれば「日本政府は二人の釈放に合意」したといわれているが、具体的な内容は明らかにされていない。

このシーシェパード、日本のクジラロビーは「テロリスト」だ「海賊」だと罵声を浴びせるが,1月10日,この団体の顧問にイアン・キャンベル元上院議員が就任した。昨年の総選挙で敗北したハワード政権で2004年から2007年まで環境大臣をつとめた人。昨年5月に政界引退を発表した。環境大臣時代はは温暖化への取り組みなどにはあまり熱心ではなかったが、クジラとなると目の色が変わっていた人だけにあり得る動きだ。

日本のクジラロビーも、友好国の元大臣が参加する団体をいつまでも「海賊」呼ばわりすることはできないだろう。

●15日付けのフェアファックス系新聞に森本稔が寄稿し,「調査捕鯨」の正当性を主張している。

森本はいつものパターンをヒステリックな調子で繰り返すだけで、クジラを屠殺するのが野蛮だというが「オーストラリアの原住民だってジュゴンを捕獲しているじゃないか」と言い出す始末。「オーストラリアの人間が「かわいい」理由で捕鯨に反対する権利は認めるが,他の国が合法的に行う捕鯨をやめさせる権利はない」と結んでいる。

●同じ15日,オーストラリアの連邦裁判所は日本の捕鯨が同国の法律に違反するとの判決を下した。オーストラリアは2001年から自国の排他的経済水域で「クジラの聖域」を設置しており、日の丸捕鯨船団(共同船舶)のクジラ屠殺行為はそれに違反するとの判断。

これは、南極沿岸がオーストラリアの領有であるという主張に基づいており、だから、そこに自国の法律や司法が適用されるという判断。しかし,南極の領有そのものが国際的に認められておらず、領有は隣国のニュージーランド、チリやアルゼンチンなども主張しており、オーストラリアの主張する「クジラの聖域」も国際的に認知されたものではない。

裁判所は判決に実効力はないとしているが,訴えを起こした動物保護団体ヒューメイン・ソサエティ・インターナショナルは連邦政府が共同船舶の捕鯨監視目的で派遣しているオセアニック・バイキング号にこの判決を実効に移すよう求めている。

2008年1月15日

ガソリン車時代の終わり/the end of petrol driven cars.

「アブラの需要が供給を急激に上回っていることは疑いがないことで、ここしばらく,そういう状況が続いている。企業としては、これに代わる駆動力源を開発する社会的義務がある。電気自動車が中期から長期的な答えであろうか。確かにそうだ。しかし、アブラへの依存を大幅に減らすため、そのほかのことにも取り組んでいかなくてはならない」

確信犯のオイル・ピーク論者の発言かと思えば,他ならぬGM社のリック・ワゴナー会長兼最高経営責任者の発言。デトロイトで開かれているモーターショーの記者会見における発言をフェアファックス系の各紙が報道している。

世界最大のクルマメーカーのトップがピークを認め,ガソリン車の時代は終わりで、これからは電気自動車だ,そう発言する意味は大きい。

GMがピークを認めることができるのは,ピークの認識が「技術的に解決可能な輸送に関する問題」としてとらえており、それを解決する策として,既に2010年の販売をめどにvoltという電気自動車の開発に取りかかっていることがあるだろう。

それにしても、同じ記者会見がソースだと思われるが,日本の報道機関は「景気低迷が懸念」というようなレベルの報道しかしていない。

ことの重大さがわからないようだ。

2008年1月14日

輸出ピーク/peak export

現時点では90ドル台に戻っているが、原油価格は新春早々,瞬間風速で1バレル100ドルを超した。これを契機に、これまで以上の主流メディアも(懐疑的にせよ)ピークを取り上げつつある。

アブラの価格についてはこれが天井であり,これからは下がり続けるという楽観的な見通しもあれば、まだまだあがり続ける,今年末までには150ドル、いや200ドルだなんて予測もある。

昨年10月に亡くなったアリ・サムサム・バクティアリによれば「不確実さ」はピーク直後の転換期の一つの特徴であり、今年もアブラの価格は安定しないだろう。バクティアリの2003年に発表したアブラの生産動向予測は,これまでのところ誰の予測よりも正確である。今年もアブラの価格は流動的に推移することは間違いなく、それはとりもなおさず,我々の呼吸する時代がピーク以降の転換期であることを証明している。

アブラの価格は今年末に60ドルくらいに下がる可能性もあるが,来年には200ドルに跳ね上がっていても少しもおかしくない。

エコノミスト誌は「ピーク・ナショナリズム」というタイトルでアブラの価格が100ドルを超した理由を説明している。

エコノミスト誌は地質学的な理由によるオイル・ピークには懐疑的で,アブラの価格上昇を地政学的、政治的な理由に求めている。エコノミスト誌は「ナショナリズム」と呼んでいるが、基本の論調は、以前ここでも触れたウォール・ストリート・ジャーナルやニュー・ヨーク・タイムスの記事と同じで、産油国がアブラの売り上げで潤い、消費が増加することにより,輸出に回るアブラが減るということだ。

これはやはり、以前に指摘したが、石油地質学者のジェフリー・ブラウン(ちまたではウエステキサスのハンドルで知られている)が2年ほど前から言い続けていることであり、目新しい内容ではない。

そのブラウンが、国際市場に出回るアブラの量について、サミュエル ・フーシェ(ケバブのハンドルで知られている)との共同研究を先週発表した。国際市場に出るアブラの半分をまかなう輸出5大国について,それぞれ生産量の減耗と国内消費の増大の傾向、それに伴う輸出量の減耗を調査したものだ。

オイル・ピークというと識者のあいだでも、生産に話が集中しがちだが,日本やアメリカ,ニュージーランドなどの輸入国にとって気がかりなのは市場に出回るアブラの量だ。生産量そのものも問題には違いないが,極端な話,どれだけ生産が増えても、輸出市場に出てこないことには輸入することはできないからだ。
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メディアを含め,ピーク論者の多くはグラフの赤い線ばかりに集中しがちだが、下の方からじわじわと忍び寄る緑の線が輸入国にとっては深刻な問題になる。

「2000年から05年にかけ,これら5カ国の需要は年率3.7%で伸びている。2005年から2006年にかけては5.3%に跳ね上がった。2005年から2006年,これら5カ国からの輸出総量は年率3.3%で減少している。06年から07年にかけて減少がさらに加速されるのは間違いない」

生産減耗と消費増加の結果,世界市場に出回るアブラの量は激減していく。

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二人は次のように結論している。

●2005年にこれら5カ国から輸出されたアブラは2300万バレル。それ以後の2年間,これらの国からの輸出は毎年100万バレル減っている。この率で「輸出減耗」が続けば,5大国から国際市場に出回るアブラの量は2031年前後にはゼロになる。アブラの世界市場はますます薄くなる。

●個々の油田同様に、小さな産油国がこれら5大国の穴を埋めることはむずかしい。小さな産油国は生産ピークに到達するのが早く,ピーク以降の減耗率も大きいからだ。

●アメリカにとり二番目に大きなアブラの供給国であるメキシコからのアブラ輸出は2014年にはゼロになる。

●この結果,消費国における消費の激減がない限り,アブラの値段は上昇し続ける。産油国は次第に薄くなるアブラの国際市場で競い合い,価格を押し上げる。

二人がことわっているように,この研究はあくまでもモデルであり,シュミレーションにすぎない。この研究は生産減耗や消費の増加が一律であり,しかも、まず、国内での消費の増加が最初にまかなわれ、その余剰が輸出にまわされるという「国民経済」の前提に立っている。極端な例では「飢餓輸出」にみられるように、国民のことなんかおかまいなし,高い国際価格で売ろうという「企業努力」がなされるはずであり,ことはそう単純ではないだろう。

しかし,アブラのほとんどを輸入に頼る国にとって深刻さはかわらない。近代経済、現代社会のの血液であるアブラの国際市場が薄くなる前に,将来に向けた恒久的な投資を行わないと、大変なことになる。

日本やアメリカではこの冬「灯油券」が発行されているが,そんな付け焼き刃の応急措置はきわめて近い将来に用をなさなくなる。まだ,手元に資源があるうちに,灯油がなくても過ごせるような家作りというような、より恒久的な措置に取り組むべきだ。

Profile

リック・タナカ(Rick Tanaka)

-----<経歴>-----

信州松本出身。
1980年、シドニーに漂着。
大学中退後、ラジオやテレビ、ウエッブ、雑誌、ニューズレターなどで執筆、制作、コンテンツ制作、翻訳/通訳、音楽マネージメントなどで活動。
1997年、それまで15年暮らしたシドニーから標高千メートルの高原の町カトゥーンバに引っ越し、執筆・メディア活動と並行しながら、消費を抑え生産する楽農生活に突入する。
2007年、大陸の東南に浮かぶ島にある人口300人の村に移住、オイル・ピークと環境ゲテモノ化時代に備える暮らし、近隣社会の構築を模索中。

BookMarks

-----<訳書>-----


『未来のシナリオ』
2010年12月、農文協

-----<著書>-----


『人工社会』
2006年3月、幻冬舎


『楽農パラダイス』
2003年、東京書籍


『おもしろ大陸オーストラリア』
2000年、光文社知恵の森文庫

-----<共著>-----


『Okinawa Dreams Ok』
1997年、Die Gestalten Verlag


『Higher than Heaven:Japan, war and everything』
1995年、Private Guy International

-----<訳書>-----


『沖縄ポップカルチャー』
2000年7月、東京書籍

『首相暗殺』
ロバート・カッツ著、集英社

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