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2007年5月30日

霧の中で立ち尽くす/lost in the bush.

売りに出した家がなんとか売れそうな気配で、うまくすすめば3ヶ月もしないうちにニュージーランドの南島へ向け、引っ越しってな感じになってきました。でもまだ、はっきりしたわけじゃなく、相変わらず、まったく落ち着きません。

この大陸には、かれこれ25年以上も暮らしたんですが、もう再び帰ってくることがあるのかどうか。そう思うと、会える人には会い、見納めかも知れないと、バンドもあれこれ見に出かけたり。いつか行こうと思いながら、ずっとのばしのばしにしてきた場所へもこれが最後の機会かもしれない、どしどし出かけるようにしています。

先週末はしばらくご無沙汰の友人と、ここから西へ80キロほど行ったところにある森の中へキャンプに行きました。その森の向こうには去年まで所有していた農場があり、よく通ったエリアです。最近降った雨のためか、思いのほか、潤って見えました。もっと枯れているのかと思ったのに、緑の牧草が広がるのを目にして、あらあら、決断を誤ったかしら,なんて思ったりしました。ハワード首相が常々口にするように、「雨は降る。必ず降る」。雨さえ降れば、オーストラリアは大丈夫なのかもしれないなあ。そんな気もしてきます。

それもこれも含めて、後ろ髪を引かれる気持ちがあることは間違いありません。住むところはいくつも転々としましたが、こんな気持ち、初めてです。

たぶん、ここ10年間、自分はこの環境に生かされてきたからでしょう。庭で育った野菜や果物を食べ、周りの薮の作り出す空気を吸い、景観に息をのみながら暮らしてきたからでしょう。

うちの庭なら、目をつぶっても,どこに何が育っているのか、すっかり頭にはいっています。次の春どころか、3ヶ月後にはここにいるのかどうかもわからないのに、レタスや水菜の種を撒き、雑草をむしったり、庭いじりをやめられません。

となりの薮も、道路を通す計画から守るため、市議会に出かけたこともあるし、雑草を取り除き、植樹をしたり、かなり濃密に関わってきた空間です。迷路のようなブッシュに迷うこともないし、どこにどんな植物が生えているのか、こちらもたいてい頭にはいっています。

IMG_0032.JPG

庭も薮も、今日は一面、濃い霧に覆われています。霧の中をふわふわと歩いていると、周りの自然が、自分たちを引き止めようと、精一杯の景観を作り出しているんじゃないか、そんな気さえしてきます。耳を澄ませばブッシュに暮らす植物や動物や昆虫などが口をそろえて文句を言っているようです。知人や隣人のつまらない戯れ言はまったく気にならないのに、木々のざわめきに立ち尽くしてしまいます。

清浄でおいしい空気を作り出してやったじゃないか。 はっとするような光景をいくつも見せてやったのに。 冬には枯れ枝で暖をとったじゃないか。 植物や動物や鳥もさんざ、見せてやったというのに。

お前は俺たちを見捨てていくのか。

もしかしたら、自分たちが引っ越したあとには「開発」がやってきて、ブッシュが切り払われ、蛇やワラビなども住処を奪われてしまうかもしれません。だから、言い分ももっともな気がします。

まあ、オイルピーク以後の時代、これまでのような「開発」なんか、やろうと思ってもできなくなるし、それに新しい住人は自分たちなんかよりも、ずっとましな人人間で、あれやこれや取り越し苦労かも知れない。

所詮、なるようにしかならないんだから、お互い様。 こっちはこっちでがんばるから、そっちもがんばれよ。

文句と言えば、家だってぶつぶつと言ってます。
これほどゆったりとした住み心地のいい豪邸にはそうそう住めるものじゃないぞって。

だろうね。気候がゲテモノ化したり、オイルピーク以後の時代って、そういう時代じゃなけりゃ、ずーっとここで安穏と暮らしていたかもしれない。

自分を育んでくれた家や庭やブッシュのぶつぶつ言う声が聞こえてくるのは、これからの暮らしは、いまよりもひどいものになるかもしれない、と不安があるからでしょう。

引っ越した先で、いまよりも大きな食物生産システムを作るつもりではいますが、それには時間もかかるし、もしかしたら、まったくポシャるかもしれない。どれだけ作りたいと思っても、種や苗木が手に入らないかもしれないし、気候があわないかもしれません。いま、ここで育ててる植物があちらでもうまく育つ、そういう保障はありません。この数ヶ月で食べ納めになる野菜や果物もあるでしょう。大豆は気候的にまったく無理みたいだし、柿の木なんてどうなんだろう。熟した柿を庭で収穫しながら、考えてしまいます。

引っ越していく先は南緯45度。日本近辺で比較すると北海道の北、稚内のまだ北あたりに相当します。さいはてな感じは否めません。どこでも、その地で育つものをありがたくいただく、それは承知しているつもりなのに、不安は尽きません。

2007年5月28日

ご飯、それともクルマ?/Think global, eat local.

日本のメディアによれば、2006年度の農業白書が閣議決定されたそうです。
農水省のウエッブに原文はまだ上がっていないようなので、ネット報道からの判断になりますが、食料自給率の向上を目指すと言う結論は当然としても、「バイオ燃料向け需要」がなぜ増大しているのか、あまり、踏み込んでいないようです。

産經新聞にいたってはレスター・ブラウンの「人類は穀物を燃料に使うか、食糧に使うかを争う時代に入った」という言説を紹介しながらも、バイオ燃料の需要増大が「温暖化対策」の一環であるかのように報道しています。

それが「代替燃料」によるしわ寄せであることを指摘するのは読売です。

ガソリンの代替燃料として需要が増しているバイオエタノールの原料となるトウモロコシなどの需要増などで、深刻な影響を受ける可能性があると白書は指摘した


ん!」「持続可能な社会を目指して」「バイオマス燃料情報局」などのブログを読んでいる人はすでに先刻ご承知だと思いますが、バイオ燃料への穀物振り向けはとりもなおさず、オイル・ピークが原因です。

当ブログでもバイオ燃料の矛盾についてはこちらですこし、書きました。


報道によれば、白書は食料の外国からの輸入依存は、生産地における気象異変などで安定供給がおぼつかなくなる恐れを指摘しています。

オーストラリアは日本に食料を輸出する数少ない国で、経済連携協定(EPA)もしばしば俎上に上がっていますが、すでにこの国は「千年来の干ばつ」という気象異変にとっ捕まったままで、自国で食べるものを輸入しなければならない状態にあります。気象変動はすでに現実であり、日本に輸出することなど、とてもかなわなくなるかもしれません。

よその国から食物という形で水やエネルギーを収奪する形の暮らし方はとても脆弱で、長続きするわけがありません。白書は自給率の向上を呼びかけていますが、自分の食べる物は自分で作る、それが人間としての基本であることをあらためて思い起こし、さあ、新緑の季節(北半球)、ベランダや庭、共同菜園などに出て、野菜の種を撒きませんか。

2007年5月27日

市民査察者を解放せよ/Free Pine Gap 4.

平和活動家4人が大陸の中央、エアーズ・ロック(ウルル)の近くにあるパイン・ギャップという世界でもっとも秘密のベールに包まれた米軍軍事施設をテロ容疑で「市民査察」しようとして逮捕されたことは以前、ここで取り上げたが、その裁判がアリス・スプリングスにある北部特別州最高裁判所で明日から始まる。

b7f4.jpg
<http://groups.yahoo.com/group/pinegap4supporters/より>

米軍イラク侵攻前に「人間の盾」となり、その後、占領後のイラクに復興支援に入り、ファルージャで人質になったこともあるドナ・マルハーンも4人の被告の一人だ。

この裁判に検察側(連邦政府)が持ち出すのは、冷戦さなかの1952年に制定された防衛(特例)法。この法律によれば、法務大臣はどこでも「立ち入り禁止」に指定することができ、それを犯した人間は最高7年間の刑に処せられる。これまで55年間、一度も使われたことのない法律を持ち出すなんて、ほとほと、あきれるしかない。

心ある人にはオーストラリア産品のボイコット、観光旅行の取りやめを呼びかけます。

踊れ、グローズヌイ!/Dans, Grozny, dans.

もう10年以上も前になりますが、作家のセーノとハンブルグをふらふらしてた時に行こうか、なんて話した町のドキュメンタリー映画の上映の知らせを下記に切り張り転載。
ご近所の方はぜひ、お出かけください。

***以下、転送・転載歓迎***

『踊れ、グローズヌイ!』 京都初上映 6月17日(日)

2001年、ロシア占領下のチェチェンから
子どもたちの民族舞踏団がやって来た
熱狂のヨーロッパ公演と
瓦礫の故郷での練習風景を追う
パワフルなドキュメンタリー

日時:2007年6月17日(日) 15:00〜上映
場所:京都大学文学部 新館第一講義室
(出町柳駅より徒歩15分、吉田キャンパス内)
http://www.kyoto-u.ac.jp/access/kmap/map6r_y.htm

資料代:一般500円、学生・低所得者300円(相談に応じます)
主催:さぼてん企画
協力:アムネスティ・インターナショナル日本、チェチェンニュース
問い合わせ:Tel: 080-6208-3488 (さぼてん企画)
/メール:saboten1948[atmark*]mail.goo.ne.jp
([atmark*]に半角の@をお入れください)

*****

ドキュメンタリー映画
『踊れ、グローズヌイ!』

第1回シカゴ国際ドキュメンタリー映画祭グランプリ(2003年)
コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭CPH:DOX:2003大賞
トリノ・シネマビエンナーレ最優秀作品賞
モントリオール「芸術」映画祭最優秀作品賞

ヨス・デ・プッター監督 2002年作品 75分

*****

あらすじ

ロシア占領下のチェチェン共和国。首都グローズヌィにあって、チェチェン民族舞踊の名手、ラムザン・アフマードフは、戦火に追われて、散り散りになった子ども達を集めて、自らの児童民族舞踊団「ダイモーク(我が祖国の意)」を再組織した。そして、夏休みに一台のバスに全員が乗り込んで、西欧諸国への資金稼ぎを兼ねた公演旅行にでる。公演にはもう一つ、「チェチェン人はテロリストではなく、普通の人間だ」ということを西側の人びとに伝える目的もあった・・・。

このドキュメンタリーは、グローズヌイでの緊張した廃墟の中での暮らしと、公演旅行中の華やかな舞台シーンを交錯させながら、いかなる逆境が訪れようとも、絶望することなく、生き続けようとする「屈せざる民族」の気概を伝統的な民族舞踊に託して描き上げた。

[映画レビュー]

「華やかな舞台と音楽、それとは対照的な戦争で荒廃したチェチェンの風景、子どもたちのクローズアップが織り成す映像を見ていると、少数民族の苦難と人間性が伝わってくる」
(林克明さん、ジャーナリスト。以下より抜粋)
http://www.actiblog.com/hayashi/34143

*****

監督のヨス・デ・プッターは、1959年生まれのオランダ人。「オランダの光」のピーター・リム・デ・クローンと並ぶ世界的に知られたオランダを代表する記録映像作家。

[アムネスティ・インターナショナル日本より]
数々の賞を受賞した本作品は、残念ながら日本で公開される機会がこれまでなかった。しかし、チェチェン紛争下における人権問題を告発したり、難民となった人びとを支援したりする市民グループがその評判を聞き、わずかながら紹介する機会を作ってきた。日本語字幕がないため、英語の字幕での上映で、さらに日本語の吹き替えをその場で行うというやり方での上映だった。それでも本作品は、観た人びとの心に強烈な印象を残した。

今回、アムネスティ・インターナショナル日本が1月27、28日のアムネスティ・フィルム・フェスティバルを開催するにあたり、本作品に日本語字幕をつけ、公開することとなった。

●6/17 京都:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://0000000000.net/p-navi/info/info/200705220102.htm

●6/24 茨城: 世界の現在を映すドキュメンタリー(『踊れ、グローズヌイ!』上映)
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070519/1179586537

●7/1 大阪:『踊れ、グローズヌイ!』上映会
http://d.hatena.ne.jp/ootomi/20070418/1176870879

2007年5月25日

怠惰有理!/less is more.

からだの調子が百パーセントではないことも手伝って、毎日毎日、かなりぐうたらな暮らしをしてます。それなりに人並みな後ろめたさも感じますが、下記のようなマンガを見かけると積極的に「怠惰有理!」と叫んでしまいたくなります。

963.gif

「お昼過ぎだってのにあなた、まだ寝てるの」
「寝てるわけじゃないよ、今日は環境にやさしく過ごすことにしたんだ」

これはマック愛好家(といっても、マクドやマカスとしても知られるバーガーチェーンではありません,念のため)のページ、the joy of tech comicで見かけましたが、「勤勉」に馬車馬のようにあくせく働くってのは社会のためにも惑星のためにもならない。怠惰に怠けるのがいいんだという考え方が、とっても現代的。また、個人がその気になりゃ、「環境にいいこと」や「低エネな暮らし」が簡単にできるってところも重要です。

右肩あがりの時代ならともかく、オイル・ピーク以後のエネルギー下降時代,環境ゲテモノ化時代、主流になるのはこういう価値観でしょう。エネルギーをばんばん消費し、二酸化炭素をじゃかすか生産し、なにがなんでも経済成長ってのは、もう時代遅れで何の役にも立たないのです。頭を右膝下がりに切り替えなくてはなりません。カナダには,週32時間労働を公約に掲げる「あんまり働かない党」というのもあります。

でも、働かなければ食っていけないじゃないか、ホームレスになっちまうじゃないか。そういう心配が怠け者志願者の頭をよぎります。それがこのマンガの最後のコマでも取り上げられています。

「働かないでどうやって食べていくつもり?」
「自分のサイトで炭素クレジットを売るんだ。ヒコーキやでかいクルマに乗り、二酸化炭素をばんばん消費する連中がカネを払ってくれるんだ」

夢のような話で、そこがこのマンガの落ちなのですが、周りを見回してみれば、現実はそこに限りなく近づいているようです。炭素取引というと企業単位の話ばかりのようですが、個人にそれぞれ、取引可能な炭素クレジットを与えるという案はアル・ゴア元米副大統領だけでなく、イギリスの環境/食料/農村地域担当のデビッド・ミリバンド大臣も言及しています。野宿者やホームレスの人たちを迫害する日本の役所はかなり時代遅れで、反地球的ってことになります。

頼むから動き回らないでくれ。ヒコーキに乗ったり、休みもとらず一目散に働く人は、それ相応の金を払え。そういう時代がぼちぼちやってきそうです。

2007年5月24日

今年の夏は.../This summer I hear the drumming.

今年の夏(北半球)は、緊迫した状況になりそうです。アブラに頼る現代文明はこれまでになく流動的ですが、そんな状態をグラフで簡単に把握できるオイル・ウォッチ・マンスリーがRembrandt Koppelaar(ASPOオランダ)の手で発行されました。

これから毎月月刊で出るそうですが、今月号を見ると石油社会はもう、崖っぷちですね。

アメリカの原油備蓄は戦略備蓄(SPR)の7億バレル以外に3億3千万バレル以上と例年並みですが、なぜか、ガソリンが足りない。いわゆる「ドライブの季節」を前に、4月末のガソリン備蓄はここ50年間で最低の1億9千3百万バレル。価格は1981年の最高値を26年ぶりに更新しています。

メキシコ湾にハリケーンがひとつきただけで,世界中がぐらぐらになりそうな、紙一重のすれすれ状態です。

石油会社が不当にもうけているのではないかという疑惑もありますが、製油施設はフル回転しているのに追いつかないのだそうです。精製されたガソリンを輸入していますが、それでも需要に追いつかない。

製油施設をフル稼働してもガソリンの生産が追いつかないのは、原油の質が変化してきたからではないでしょうか。ガソリンなどの用途にあまり手間や時間をかけずに精製できる、甘くて軽いアブラが減り、精製に手間も暇も金もよけいにかかる酸っぱくて重たいアブラが多くなっているからではないでしょうか。

アメリカにおけるガソリン価格の高騰に連動するように、小康状態だったアブラの価格もじりじりと上昇しています。その一方、世界の原油生産は、EIAによれば2月の生産は日産7千3百万バレル。2005年の12月の史上最高生産を77万バレル下回っています。

というわけで、まだ5月だというのに、メキシコ湾のお天気が気にかかって仕方がありません。アブラまみれの便利で快適な暮らし、石油文明は今年の夏を乗り切れるのでしょうか。ハリケーンがひとつかふたつ、やってくるだけで簡単にぶっ飛んでしまうかもしれません。明日も明後日もいまと同じ快適な暮らしが続けられるかどうか、それはお天気しだいであり、それなりの覚悟をしておいた方がいいでしょう

2007年5月13日

ブレアと石油/so long Mr Blair, so long oil.

トニー・ブレア英首相が退陣を発表しました。
ブレア首相の功罪についてはメディアでいろいろ論じられていますが、あまり取り上げられないことをひとつだけ。

ブレア首相在任中の1999年、イギリスはイランやクゥエートなどと肩を並べる世界でも有数の産油国でした。しかし、この年に日産300万バレル近くを生産したのを最後に、それ以降、年率平均8%近い減耗を続けており、現在ではピーク時の半分以下、130万バレルに落ちています。ブレア首相の退陣が既定となった昨年、イギリスは1980年以来はじめてアブラの輸入国に転じました。

UK_oil_import_export_model.png

オイルドラム(ヨーロッパ)より
2005年までは実際の数字、それ以降は予想。

ブレア首相のもとで、イギリスはオイルピークを迎え、アブラの輸入国になったことは記憶しておくべきで、中東への積極的な軍事介入政策もその関連で解釈されるべきでしょう。将来の世代は、北海油田の貴重な資源がイギリスや世界の将来のため、どんな使われ方をしたのかと問うのではないでしょうか。

2007年5月 9日

現状と見通し/a peek from the peak.

4日付けのlivemintはリャド発で、アリ・ナイミ石油大臣の発言として、サウジ・アラビアが原油埋蔵量の76%増加を目指していると伝えています。現在は確認原油埋蔵量が2642億バレルと発表されていますが、さらに2000億バレル、上乗せする計画だということです。

いやあ、ものすごい数字で目がくらみそうですが、サウジがこの「埋蔵量(ほぼ)倍増計画」を口にするのは,この記事でも言及されていますが、これが初めてではありません。ナイミ石油大臣は2005年9月に南アフリカで開かれた世界石油会議でも同じような発言をしています。

「最新技術の適用により、確認埋蔵量は近く2000億bblの上乗せが行われる見込みである」

Jogmecのまとめた「増産計画と現状と見通し」(5ページ)より。

Jogmecというのは独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構のことで、「増産計画と現状と見通し」は「ピークオイル論」を否定するという立場で書かれています。

サウジのアブラ事情は「砂のベール」に包まれており、正確な情報を得ることは難しいのですが、「安定的かつ低廉な供給を資する」ことを目的のひとつに掲げる行政法人がサウジ政府=アラムコの「大本営発表」を鵜呑みにしているようではちょっと心配です。

そもそも、Jogmecに「現状と見通し」を書かせる契機となったのは、エネルギー投資銀行家のマシュー・シモンズが2005年5月に発行した「砂漠の黄昏」という本でした。ピークの古典ともいえるシモンズの著書の邦訳が「投資銀行家が見たサウジ石油の真実」というタイトルで出版されたそうです。

原本「砂漠の黄昏」の紹介

1982年にOPECは石油生産データの公開をやめ、それ以来、サウジの油田の状態についてはサウジ政府=アラムコの発表以外頼るものがないという情報統制が続いています。2005年10月に発行されたJogmecの「現状と見通し」もサウジの発表をそのまま繰り返しているにすぎません(Jogmecの「現状と見通し」はシモンズの心配をあまり真剣にとられていませんが、それが発表されて以降のサウジのアブラ生産はむしろ、シモンズの懸念を裏付けるものばかりです)。

シモンズが本書で指摘するように、それぞれの油田の状態はいまだに明らかにされていません。1990年、サウジは「埋蔵量」を前年の1700億バレルから一挙に2580億バレルに引き上げました。まったく第三者の検証を得た数字ではないにも関わらず、あたかもそれがそこにあるかのように、「確認埋蔵量」として一人歩きしているのです。現代石油文明はサウジのアブラに頼っていながら、それがどんな状態であるのかまったく知らされていないのです。

シモンズは情報統制を切り崩し、油田の状態を知るため、SPE( Society of Petroleum Engineers石油技術者協会)の発行する膨大な技術レポートなどを読み解いていきます。

たとえば、生産開始から50年以上をへてなお、世界需要の6%を供給する「石油文明の屋台骨」、ガワール油田の状態はどうなのでしょう。シモンズはひとつの章を「油田の王者」ガワールの分析に費やします。「最新技術」を駆使されて、骨の髄までしゃぶられてしまった油田は、ものすごい勢いで減耗します。北海油田やメキシコのカントレル油田は現実に、目の前で恐ろしい勢いで減耗しています。「油田の王者」、ガワールだけが自然の摂理を逃れられるとは考えられません。そして、石油文明にとっては恐ろしいことに、この巨大油田が急激な減耗を始めたとき、その穴を埋める油田はない。それがシモンズの主張の核心です。

本書の出版以来、世界各地のピーク研究者はシモンズの示した手法を用い、技術レポートの行間を読み、データをグラフで解析する作業を続けています。例えば、オイルドラムではガワールの「現状と見通し」について、技術レポートを引用した議論が続いており、サウジの埋蔵量は「1600億〜1800億バレル」という共通認識に達しつつあります。最近のオイルドラムにはSPEのレポートからガワール油田のウトマニヤ地区、アインダール地区の断面図が掲載されています。

8_uth_cross.jpg
Oil saturation profiles in Uthmaniyah. Image source: Water in the gas tank by SS, original source is: Water Production Management Strategies in North Uthmaniyah Area, Saudi Arabia, SPE 98847, June 2006.

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Oil saturation profiles from the flank of N ‘Ain Dar. Image source: Water in the gas tank by SS, original source is: Water Management in North 'Ain Dar, Saudi Arabia, SPE 93439, March 2005.. These profiles are believed to lie just to the N of the small crest illustrated in Figure 5 of this SPE paper. They are therefore believed to mount the ridge well below the crest area of N Ain Dar.

残るアブラの層がかなり薄くなっていることもわかります。また、圧力を高めるため、長年にわたり水やガスを注入してきたため、採掘される水の比率(ウォーターカット)が増加し、現在では「アブラが浮いた水」が出てくるだけだとシモンズは指摘していますが、この断面図でもそれがわかります。

これが石油文明の屋台骨であるガワール油田の主力、北部の実情です。

まあ、はい、時間があれば石油文明の脆弱さを満天下に示した本書、手に取ってみてください。

2007年5月 5日

今世紀最大の油田/Bohai Bay bonanza.

中国の渤海湾で見つかった油田が話題になっています。

中国石油天然ガス集団(CNPC)の3日付けの発表によれば、油田は「冀東南堡油田」と名付けられたそうですが、埋蔵量に関しては30億という報道もあれば、75億バレルという報道もあります。大きな差がありますが、まあ、5億バレル以上の埋蔵量を持つ油田が「大油田」と呼ばれていますから、どちらにしてもこの新油田の規模は相当なものです。

石油漬け社会にとってこの油田の発見は「朗報」ではありますが、埋蔵量の見積もりが正しいにしても、これだけのアブラ、全部が採掘可能なわけではありません。実際に可採できる量は発表されている数字より、ずっと小さくなります。アブラの質については発表されていませんが、重質ならば精製がたいへんです。油田の場所は「近海」ということですが、採掘に必要なエネルギー収支も考慮しなければなりません。

そして、まあ、「今世紀最大」とはいうものの、それがどのくらいの規模かというと、仮に発表された埋蔵量全部が採掘されたにしても、現在、全世界の消費量の1ヶ月半から3ヶ月分をまかなうにすぎません。「今世紀最大」の油田にしても所詮この程度のもので、石油にどっぷりと浸かったコンビニ文明を維持していくためには、この規模の油田が毎月毎月、じゃかすかと見つからないと、とても心配になります。

2007年5月 3日

五十肩/frozen shoulder.

なんだ、おい、どうしたんだ。友人、知人、読者の皆さんからいろいろ、心配のメールをいただいています。ご無沙汰、どうもすみません。

昨年末からの肩の痛み、いろいろな方から指摘いただきましたが、どうやら「五十肩」のようで、整体のおばさんから言われて、ピュータにもなるべく触れないようにしています。今日はちょっと調子がいいんですが、普段はメールもろくに返事ができないほどです。(ちなみに「五十肩」のこと、エーゴではフローズン・ショルダーと言います。なんか、豚か牛の冷凍した肩肉って感じですが「凍肩」。)

んで、この凍った肩を解凍するため、整体から教わった運動をしたり、マッサージに通っています。マッサージのあとは右肩が軽くなったような気がして、調子に乗り何か書き出すんですが、10分もすると腕が上がらなくなる。左手だけで操作することも実験してみましたが、今度は左腕が痛くなってきます。あらあら。このまま痛みが長引けば、足の指を動員することも真剣に考えていますが、あんまり焦らないようにしています。

そうはいっても、やることはたくさんあります。

ニュー・ジーランドへ移住するためにはまず、現在暮らしている家を売らなければなりません。あれやこれや片付け、庭もそれなりの見栄えのするようにと、まあしょせんは付け焼き刃作業なんですが、うちは「楽パラ」にも書きましたが、あんまり石油を使わないような経営をしてきたんで、使える道具も限られています。自分で着替えも満足にできないからだでは、何か持ち上げるだけでも難儀なのに、芝刈りは手押しの芝刈りと鎌に頼らなければならず、あらあら、大変な作業です。

庭仕事も急いでやろうとすると、それなりに大変な作業であり、しかも、からだの具合の悪い時には大変なんだなあとあらためて実感しています。

そんなこんな、時間はかかりましたが、何はともあれ、ようやく、家を売りに出すことができました。「楽パラ」にはこの家のこと、ぼろくそに書いてますが、それは最初の観察の結果であり、その分析をもとに数年間、かなり住みやすい家になっています。不動産屋の広告にもありますが、ゆったり4部屋の家屋に果物、ナッツ、野菜にハーブありの庭、そして、雨水タンクが売りです。

と、気負っていたものの、すでに何人か見に来てますが、なんか動きが鈍いですねえ。

そういう過程で、あきれるほどの量の本やレコード、CD、その他諸々はすでに倉庫に入れてしまい、家の中はあっけらかんとする広さ。しかも、隅々まで埃をはらった家はまるで他人の家にお邪魔しているような気分です。中途半端で、とっても宙ぶらりんな生活です。 

気になることもたくさんあり、いろいろ書きたいことがたまっているので、この宙ぶらりん状態はちょうどいい機会なのですが、肩の痛みで思うようにいかず、歯ぎしり、ぎりぎり(と言っても、ぎりぎりするほどの歯も、若い頃の不養生がたたり、あんまり残ってませんが)。からだに無理がない範囲で、短いもの、少しずつあげるようにしていきます。

Profile

リック・タナカ(Rick Tanaka)

-----<経歴>-----

信州松本出身。
1980年、シドニーに漂着。
大学中退後、ラジオやテレビ、ウエッブ、雑誌、ニューズレターなどで執筆、制作、コンテンツ制作、翻訳/通訳、音楽マネージメントなどで活動。
1997年、それまで15年暮らしたシドニーから標高千メートルの高原の町カトゥーンバに引っ越し、執筆・メディア活動と並行しながら、消費を抑え生産する楽農生活に突入する。
2007年、大陸の東南に浮かぶ島にある人口300人の村に移住、オイル・ピークと環境ゲテモノ化時代に備える暮らし、近隣社会の構築を模索中。

BookMarks

-----<訳書>-----


『未来のシナリオ』
2010年12月、農文協

-----<著書>-----


『人工社会』
2006年3月、幻冬舎


『楽農パラダイス』
2003年、東京書籍


『おもしろ大陸オーストラリア』
2000年、光文社知恵の森文庫

-----<共著>-----


『Okinawa Dreams Ok』
1997年、Die Gestalten Verlag


『Higher than Heaven:Japan, war and everything』
1995年、Private Guy International

-----<訳書>-----


『沖縄ポップカルチャー』
2000年7月、東京書籍

『首相暗殺』
ロバート・カッツ著、集英社

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