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2006年8月29日

ハリケーン来襲/Ernesto watch.

カトリーナがメキシコ湾岸を直撃してから一周年。
幸いにも,今シーズンはこれまでのところ,ハリケーンはひとつだけで、第1号のアーネストも湾岸地帯をはずれ、勢力を弱め熱帯暴風雨になりフロリダ半島を駆け抜け,北に向かっています。

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直接の被害も大変なものですが,メキシコ湾岸地域には石油採掘施設や製油所があり、ハリケーンがくるたびに石油生産が大きなダメージを受けます。下記のグラフは1995年から昨年まで,ハリケーンや熱帯暴風雨による生産への影響を示すものです(データ:EIA(pdf))。オレンジ色の線は原油生産の推移で左軸(百万バレル/日産)に対応、緑の線は天然ガスで右軸(10億立方フィート/日産)。
GoM.png

グラフはtheoildrumより。

グーグルマップを使って,ハリケーンの進行具合とアブラ施設の位置関係を示すハリケーントラッカーという地図ソフトも作らています。上記のグラフを頭に入れたうえで、ハリケーンの進行を刻一刻、地球の反対側から眺めていると,まるで東京湾に近づくゴジラのようで、ひやひやどきどき、参考になります。

メキシコ湾というのは、日本近辺で例えれば台風銀座の沖縄あたりのようなもので,シーズンになればハリケーンがやってくるのが毎年恒例、当たり前のことなのです。そういう場所で原油を生産しなければならない、それは大変なリスクを読み込まなければなりません。

オイル・ピークを迎えても、地球上にアブラはまだまだたくさん残っているのですが、これからはハリケーン常襲地やアラスカなどの極地,深海など,自然環境の厳しい場所での生産がほとんどになります。供給が不安定になり,生産コストが上昇するのは,いかんともしがたい自然の成り行きでしょう。

2006年8月26日

ノルウェーのアブラ/Norwegian oil.

民間最大の石油会社のエクソンの社のCEO(最高経営責任者)、レックス・ティラーソンが23日にノルウェーの会議で行った発言があちこちで報道されています。(日本語ではライブドアニュース
など。)


「技術の進歩が生産性向上や新油田の発見をもたらし、必要な原油供給に貢献する」(上記,ライブドアニュースより)ということで、相変わらず楽観的な見方を披露しています。まあ、民間企業の人間が好き勝手に何を言おうとかまわないのですが,それを真に受けてたら大変なことになります。

彼の楽観論を支える証拠としてあげられるのは会議開催地のノルウェーです。
「現在、ノルウェーの原油輸出量はサウジアラビア、ロシアに次いで世界3位。ただ、40年前は同国が原油を産出するとは考えられていなかった」。たしかに、北海油田が発見され,1971年にエコフィスク油田で生産が始まるまで,ノルウェーが産油国になることは考えられていなかったのは事実です。しかし、ここで言及されていないのは、ノルウェーの原油生産がすでに2001年には頭打ちになり,激しい勢いで減耗を始めていることです。

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(グラフ:Graphoilogyより)

ノルウェー(と英国)はサウジやロシアなどと違い,アブラ生産に関するデータがそれぞれの油田ごとにちゃんと発表されているので,ピーク研究者にはありがたい国です。発表される数字をもとにしたグラフはあちこちで目にすることができます。グラフィオイロジーという研究者のサイトには、上記以外にも、各種のグラフが掲載されています。

発表されている数字によれば,ノルウェーの究極可採埋蔵量は320億バレルと見積もられています。このうち、今日までに生産された原油はトータルで185億バレルですから、まだ未発見のものを含め,135億バレルのアブラが残っていることになります。2004年の年間生産量が10.7億バレルなので減耗率(10.7億/135億)は8%近くなります。つまり,現在のレベルで生産を続けていけば,12年ほどでノルウェーのアブラは底をつくということです。

まだ見つかっていない油田がどこかにあるのではないかと期待を持つことも可能ですが、現実には世界の油田発見のピークは1965年のことであり,現在,世界の石油生産の半分以上を賄う油田のほとんどはそれまでに発見されたものです。それ以降に発見されたものは規模の小さいものがほとんどであり,数少ない例外がノルウェーと英国の北海油田だったのです。そして,その北海油田にしても発見からわずか40年でピークを迎え,急激に減耗しており、これから10年かそこらで底をついてしまうのです。

これでは、石油会社のトップから「安心しろ」といわれても安心できるはずがありません。

2006年8月15日

パティ・スミスのカナ/the dead lay in strange shapes.

1946年生まれだというからもうすぐ60になるパティ・スミスの新曲を第二次世界大戦が終わってから61年目の日に聞く。
新曲はつい数週間前にイスラエル軍に爆撃されたレバノンの村のことを歌っている(mp3)。
まったく便利な世の中になったもので、うちに居ながらにしてダウンロードできてしまう。

75年だっけ,「ホーシズ」が出たのは。
スミスの声を久しぶりに聞いた。
ラフなギターに独特のざらつく声は相変わらず。
スミスはパンクな表現者の一人で,スタイルや形式、手法、道具にとらわれず,いまを鋭く切り取るひとだ。

死者はおかしな格好で横たわる。

シンプルなメロディが耳に残響する。
この終戦記念日にカナの悲劇が残響する。

以下に歌詞をスミスのログから転載(歌ってるのとはちょいと違う箇所がある)。

Qana

There's no one
in the village
not a human
nor a stone
there's no one
in the village
children are gone
and a mother rocks
herself to sleep
let it come down
let her weep

the dead lay in strange shapes

Some stay buried
others crawl free
baby didn't make it
screaming debris
and a mother rocks
herself to sleep
let it come down
let her weep

the dead lay in strange shapes

Limp little dolls
caked in mud
small, small hands
found in the road
their talking about
war aims
what a phrase
bombs that fall
American made
the new Middle East
the Rice woman squeaks

the dead lay in strange shapes

little bodies
little bodies
tied head and feet
wrapped in plastic
laid out in the street
the new Middle East
the Rice woman squeaks

the dead lay in strange shapes

Water to wine
wine to blood
ahh Qana
the miracle
is love

2006年8月14日

成長の限界/limit of growth.

経済成長が安いアブラに依存していること、そしてアブラは有限な資源であり、やがて枯渇するものだということ、有限な地球環境のなかで無限な経済成長はあり得ない。それらのことをはっきり宣告されたのは1972年6月にローマで開かれた初めての地球環境会議のことでした。そして、この開催にあわせて出版されたのが、MIT工科大学のデニス・メドウズなどの手になる「成長の限界」という本でした。

それから30年以上を経て,「成長の限界」で予示された生態系の崩壊が現実化する中,ASPO第5回大会で演説したデニス・メドウズは、人類は「すでに行き過ぎてしまった」と結論しています。下記にメドウズの発言を抄訳で紹介します。

●現代文明が必ず崩壊するとは言えないが,崩壊を避けるのは非常に困難だ。
●代替エネルギー源がアブラの減耗を相殺する早さで生産される可能性は全くない。一方で世界の人口は急上昇中だ。世界は、発展ではなく,超過と崩壊によって地球の限界に適応するだろう。
●崩壊の徴候はそこらじゅうにある。天然資源の劣化,環境汚染、頻繁で猛烈な自然災害、政治不安の増大、債務負担の増加,エネルギー源確保のために要求される資源需要の増加。一人当たりのGNPという重要な指標を見れば,50カ国以上で、すでに、下降が始まっている。
●人類はたくさんのピークに直面しており,石油もその一つ。肥沃な土地、地下水、森林ストックなども減少している。これらの問題に取り組もうとしても,政府には手に負えないだろう。
●予想されていたことだが、オイル・ピークを含め,物理的な限界を批判するものたちは、しぶしぶとではあるが、否定することをやめ,条件つきの受理へと変遷を遂げている。批判的な人間は、まず、『心配はいらない、限界なんかない』という。ピークについても、アブラが有限であることを直観的に退ける。
●人々はピークのもたらす影響を心配し始めているが、政治制度は本質的にピークに反応することができない。現行の政治システムや市場メカニズムは、これらの状況では機能しないからだ。
●ピーク以降、状況が好転するまでどん底を通過しないとならないが、政治は選挙から選挙へと短いサイクルで運営されるため,短期窮乏を強いらなければならないような事態を扱う能力はない。
●崩壊が起こるのはこのような理由からだ。崩壊を避けるためにしなければならないことには手が付けられないだろう。持続可能な発展は可能ではあるが、実現にはほど遠く,手遅れになるだろう。

メドウズのピークに対する考え方はチェンジ・エージェントに詳しく紹介されています。

左うでの夢/left-handed dream.

なんぼかちゃくちゃねえ。
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うちではたいてい、朝ご飯のあと,皿洗いをします。一日一回。毎食ごとに洗うより,水の使用量が少なくてすむし,湯気で曇った流しの上の窓から,裏手のブッシュを眺め,今日は何をやろうか,一日の予定を考えるのにちょうどいいからです。今日は天気がよさそうだから,これを終えたら一服し,外で焚き付けにする枯れ枝集めかな。あそこの柵の補修もやってなかったな。風が強い日は,洗濯日和。なので、早速,洗濯に取りかかります。鉛色の空、雨が降っていれば、これ幸いの読書日和。読みかけの本に戻ります。

うちの皿洗いの流儀は2つの流しに栓をして,お湯をはり,一つに洗剤を入れ,もう一つですすぐというパターンです。お湯は60度くらいなのでゴム手袋をはめます。今日も早速,なんて,ゴム手袋をはめたら,右手の方に小さな穴があいてます。あらあら。これは困ったぞ。買い置きはあるかな。と見ると,未使用のゴム手袋が束になってます。ほいほい,これはいいぞ。中に一つくらい,右手用(大)があるのではないか。期待は無惨に裏切られます。右手用は5つ,あるにはありますが,すべてサイズが(小)ばかりです。(大)は5つありますが,すべてが左手用です。ふむ。なぜ,(小)は右手ばかり,(大)は左手用ばかりなのでしょう。

男女,性別によるものでしょうか。背景となる洗い物文化の差なのでしょうか。それとも、もっとほかに深遠な理由があるのでしょうか。

なんぼかちゃくちゃねえ。

ゴム手袋をいくつも床の上に広げて思案顔でいると、「ばかねえ、私は左利き,あんたは右利き、単にその違いでしょ」と通りかかった相棒。

「じゃあ,スポンジとかブラシとか左手で使うんだ」とおばかな私は、右手用(小)に無理矢理,右手を押し込むか、それとも左手用(大)を無理矢理右手にはめるかだな、なんて短期的解決策を考えながら聞き返します。
「当たり前じゃん」。

はやぐとろげでえ。

今朝は封を切ってない(大)が一つあり、とりあえずは、どちらの策も試さなくてすみましたが,新しいパッケージから右手用をはめ,あらさて、左手(大)はこれで6つ、たまってしまったぞ。これ、どうしよう。あんまり他人に尋ねたことはありませんが,どうしているんでしょう。それぞれ、利き手でない側のゴム手袋をどう処理しているのだろうか。皿洗いをしながら考えます。

中期的な解決策としては、これから新しいのを買うとき、サイズを(中)で統一する。そういうことも考えられます。長期的には、対ではなくバラ売りするようメーカーに働きかける、なんてことも可能です。右利きの人口が多いんで,需要は右手用が圧倒的になり,営利目的の企業にはあまりありがた味はなさそう。

なんて,いろいろ考えた末,とりあえず,しばらくの間,洗い物をする時は左利きになることにしました。洗い物を左でやれば、ゴム手袋のアンバランスが改善されるのではないか。そう思って,さっそく左手にスポンジやたわしを持ち変えることにしました。フットボールの選手はたいてい右でも左でもボールを蹴れるし,クリケットや野球の選手には両刀使いがいる。自分自身でも、整体師かなんかの助言を入れて,もう10数年前から、ピュータのマウスを使うのは左です。右うでが手首から二の腕三の腕、肩にかけて上がらないようになってしまったからで、最初はぎこちなかったけど,今は十分,右と遜色なく操作できる。

だから、たかが洗い物くらい。なんて思ったら、これが意外に大変です。これまで皿洗いをやったことのない手に、右うでのような活躍はすぐには期待しませんが,ぎこちないったらありゃしない。じれったくなって,右が手を出そうとするのをきつく押さえ,左手は修業中。さっさとこなせるようになるにはまだ、当分時間がかかりそう。皿とか、何枚も割るだろうなあ。

左手で洗い物を始めると,台所のデザインが右利き用にできていることがよくわかります。作業の流れ、シンクの配置だとかも左利きには使いにくい。にわか左利きは得意そうに「これって,とても使いにくいデザインだよね」と相棒に言います。「そんなことも知らなかったの?」と、これだから右利きは困るってな顔。はいはい、これからは、もっと理解するようにします。

なんぼかちゃくちゃねえ。
はやぐとろげでえ。

2006年8月 9日

プルドー・ベイ・ブルーズ/Prudhoe Bay blues.

プルドーベイ油田のパイプライン腐食による操業停止が大きなニュースになっています。

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(腐食パイプラインを伝えるcbsnews.comより)

数ヶ月にわたり40万バレルの減産ということで、ウォール・ストリート・ジャーナルにはいったい、40万バレルがどれくらいになるのか、グラフが出ています。個人的にはジャンボ機123機が満タンってのが一番わかりやすいです。

(ウォール・ストリート・ジャーナルより)

この油田では今年3月と4月にもパイプラインが破断し、原油が大量に流出する事故が起きており,今回の措置はそれを契機に行われた調査の結果だそうで、油田の操業を停止し、パイプライン22マイルのうち16マイルを取り替えるとbpは発表しています。

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(3月の原油流出事故を報ずるhttp://www.msnbc.msn.com/id/11958571/)

パイプの腐食が確認され,取り替えられるのはプルドーベイ油田の坑井からのフロー・ラインと呼ばれる部分で,万里の長城に匹敵する(笑)と言われる全長1300キロのアラスカ・パイプラインの本線(TAPS)ではありません。今回見つかった腐食がプルドーベイ地区のパイプだけのものなのか、それとも,他の地区のパイプや本線にまで広がっているのか,腐食が広がっているとすればどの程度なのか,bpはまだ発表していません。

アブラというのはガソリンや灯油のような形で油田から噴出するわけではなく,プルドーベイで生産されるのは重質ではないもののミディアム・ヘビー、かなり精製の必要なアブラです。硫黄もかなり混じっています。フロー・ラインは「液体と気体との二相混合流となり,また水分も混入していて」(石油/天然ガス用語辞典)特に腐食がおこりやすい部分だと言われていますが,硫黄まじり,しかも油田の圧をあげるため油層に水を圧入しているので、どろりとした泥のようなアブラじゃないかと推測されます。この泥が腐食の原因であることも考えられますが,3月の事故を分析する5月14日付けのペトロリウム・ニュースによれば、パイプラインを腐食したのはバクテリアだと言うことです。生産減にともない,パイプの流れも滞り,バクテリア繁殖の温床になったことが考えられます。

2005年に発表された報告書を見れば、ここ5年間、この油田では激しい減耗がすすんでいることがわかります。その年の末現在,1111の油井があり、油井あたりの平均日産は2001年には546バレルだったのが,2002年には375,2003年には350,2004年に317と減り,2005年には293バレルと報告されています。4年間で46%も生産が減っています。(ただし,この数字が正しいとすると,293バレルX1111=32.5万バレル程度になり,発表されている40万バレルには7.5万バレル足りなくなる。しかも,293バレルは昨年の数字であり,この率で減耗がすすんでいるとすれば,今年の生産はもっと落ちているはずです。)
プルドーベイ油田はここ何年か,減耗を続けています。儲からなくなったので、補修もいい加減になったということも考えられます。この線でいけば,ほとぼりが冷めた頃,これだけのパイプラインを取り替えるのは経済的ではないとか何とか,油田自体をお釈迦にすることもありえます。

プルドーベイ操業停止のニュースに、OPECは久しぶりに「増産宣言」をしましたが,市場は全く気にもかけません。その数日前、ブルームバーグは,OPEC諸国の7月期生産が前月に比べ0.8 %減と報告しているので、当たり前な反応でしょう。7月期、唯一イラクが前月比べ4万バレル増産したのを除けば,OPEC諸国は軒並み減産です。OPECは「需要がない」ことを減産の理由にあげています。このアブラ高に需要がないってのも不思議に聞こえますが,OPECのアブラは精油に手間のかかる重質原油が多くなっていることを示しています。

ピークの症状はいろいろな形で現れます。オイル・ピークに到達しても,まだまだ,アブラはこれまで使った量と同じ位残っています。しかし、これから採掘されるのは精製に手間のかかるアブラであり、深海や極地にアブラが見つかったとしても,生産や補修コストがかさんでいきます。

世界中で余剰生産能力というクッションがなくなった今,これからの道のりはショックアブソーバーの壊れたクルマで穴ぼこだらけの道を行くようなもので、些細な出来事に大騒ぎをすることになるでしょう。

一番上に上げたウォール・ストリート・ジャーナルの図をもう一度見てください。40万バレルは国内消費の2.6%に相当するというところに注意してください。おもしろいことに、この2.6%という数字は、ピーク以後に予想される石油減耗率と同じです。先日紹介した「ピーク議定書」は、この減耗率と同じだけ,毎年毎年、油の使用を減らしていくことをそれぞれの国に義務づけること,それが根幹です。アメリカは偶然,「議定書」に踏み出すきっかけを得たことになりますが、この機会を積極的に捉え、消費を削ろうと言う声は聞こえません。結局,戦略石油備蓄の放出で「急場」をしのぐことになりそうですが、7億バレル近い備蓄とはいえ、「急場」が一時的なものではないだけに先が思いやられます。

2006年8月 8日

エクソンは温暖化が嫌い/some like it hot.

お隣のマッド・アマノさんとフォトモンタージュやパロディ談義に花が咲き,またひとつ、パロの話題です。今回取り上げるのはアル・ゴアの主演するドキュメンタリー映画「An Inconvenient Truth(都合の悪い真実)」をネタにしたパロディです。

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アル・ゴアについては以前にも触れました。2000年の大統領選でブッシュに敗北した後、ゴアは声がかかれば手弁当でどこへでも出かけていき,少ない観客を相手にスライドを見せ,温暖化について話して回っており、こうして温暖化の伝道師が訪ねた場所は1000以上にもなるそうです。

inconvenient_truth.jpg

映画はそれらの講演をもとにしたものです。(この映画について、温暖化いろいろが詳しい)

映画はまだ未見ですが,上映された世界各地ではおおむね好評です。

さて,その映画をおちょくるパロは「アル・ゴアのペンギン軍団」というタイトル,2分ほどのアニメーションで、youtubeというアマチュア・ビデオ掲載サイトで3ヶ月くらい前から公開されています。

映画の予告編の体裁ですが,ゴアの映画を見に来るペンギンたちが退屈して寝てしまうシーンがあったり,かと思えば,ゴアがペンギンたちに催眠術をかける、というシーンがあったり、温暖化をまともに取り上げることを嘲笑する,ひねりのない作品です。youtubeの情報によれば,この作品は29歳のアマチュアが自宅でしこしこ作ったことになっています。ゴアは元副大統領で,しかも次回の候補にも名前の上がる人だけに、それなりに政敵がいても不思議ではありません。

しかし、8月3日付けのウォール・ストリート・ジャーナルによれば、この作品を作ったのは29歳のアマチュアではなく,DCIグループという広告会社だということがわかりました。メディアと民主主義センターの「情報源ウォッチ」によれば、この会社は共和党の広告会社で、顧客には世界最大の民間石油企業、エクソン社も含まれるそうです。DCIはパロを作ったことはしぶしぶ認めているようですが,誰の依頼だったのか,そして、なぜ,アマチュアのサイトに投稿したのか,そのあたりは明らかにしていません。

エクソン社をはじめとする石油や石炭業界、そして自動車企業が「温暖化」を認めようとせず,京都議定書を妨害するため、ありとあらゆる汚い手を使ったことはよく知られています。そのうちのひとつはメディアを使った情報錯乱でした。この連中の姑息なメディア工作にはまだまだ目を光らせる必要がありそうです。

2006年8月 7日

ガワール減耗?/ missing millions.

日経が伝えるように,「BPは6日、アラスカ油田から原油を送り出すパイプラインで数カ所の腐食と原油の漏出が見つかり、パイプラインの操業と原油生産を停止する作業に入ったと発表した。完全に停止するまで数日かかるとみられる。最終的に日量40万バレルの減産に追い込まれる見通しで、復旧にかかる日数は不明」。

40万バレルは全米消費の2.6%に相当,価格高騰に拍車がかかるのは間違いないと予測されています。

サウジアラビアは、今回のような事故がおこり、人類が危機になると,ウルトラマンのように現れて「xx万バレル、増産する」といって、アブラ供給の安全弁の役割を果たしてくれたものですが,このごろはすっかり耳にしなくなりました。これだけアブラの値段が上がり、ぼろ儲けの機会なのにサウジにはまったく増産の気配もなく,それどころか,生産量は前年比7%減です。余剰生産能力がなくなったことは間違いありません。

サウジ・アラビアの生産について,リチャード・ハインバーグがASPO第5回大会での業界人からの情報としてエネルギー・ブレティンで下記のように伝えています。(なお、全文は「Searching for Hassan(ハッサンを探して)」の著者、テレンス・ウォード(Terence Ward)の講演要旨を軸に,興味深い洞察あふれる中東情報分析です。)

「サウジアラビアからの内部情報として、業界の人間からガワール油田の生産が日産3百万バレル以下に落ちており,サウジは他の油田の生産を最大にあげることで,ようやく微減状態を保っていると聞かされた」

ガワール(Ghawar)油田は,たくさんある油田のひとつではありません。世界中で未だにこれをしのぐ油田は発見されておらず、1948年の発見(生産開始は1951年)以来,半世紀以上にもわたり石油文明を支えてきた屋台骨です。現在も,公式には日産550万バレルと言われています。

つまり,これがこけたら皆こける、というくらい、オイル・ピークの一大焦点です。1970年には日産200万バレル、そして1990年にこれまでで最高の650万バレルに達しました。この時の無理な増産がたたったのか、それ以後、これを上回る生産はあげていません。もしハインバーグの情報が正しいとすれば,1990年以来,年率約5%の減耗ということになります。あり得る数字ではあります。

サウジは減産の理由を「需要がないからだ」と説明します。もちろん、現在サウジの掘り出すアブラが精製に手間のかかる重質原油ばかりであり買い手がつかない、ということはあり得ないことではないにしても、アブラ高のご時勢に説得力に欠けます。理由が何であれ,サウジ自身,減産を認めていることは特筆しておくべきです。

ただし、ガワールの生産がそこまで落ちているとすると,いったい,どうやって穴を埋めているのだ,という疑問がわいてきます。サウジは昨年(960万バレル)に比べ7%減とはいえ,現在でも890万バレルの生産をあげています。ガワールの日産が現実に300万バレルを割っているなら、その差,600万バレルほどを残りの油田で補わなければなりません。サウジは各油田のデータを公開していないので,すべて推定になりますが,10万バレル以上を生産する油田をマット・シモンズなどの資料からまとめると以下のようになります。

●アブカイク油田  Abqaiq
すでに1973年にピークに達し,2004年現在の生産量は50万バレル以下。
●サファニア油田  Safania
生産ピークに達したのは1970年で,現在は50万バレル/日程度の生産。重質原油がほとんど。60万バレルの余剰能力があるとされる。
●ベリ油田Berri
1974年に80万バレル/日がこれまでの生産ピーク。現在は20万バレル程度の生産量。
●ズルフ油田 Zuluf
40万から50万バレル/日。
●マージャン油田 Marjan
10万バレル。
●シャイバー油田 Shaybah
50万バレル。
●カティフ油田 Qatif
50万バレル。

これらを全部、サファニアの余剰能力を加えても350万バレルというところです。250万バレルほど足りません。もし,ハインバーグの情報が正しければ,サウジ全体の日産は650万まで落ちるはずです。サウジ(やOPEC諸国)の数字は国際的に検証されたものではないだけに,実際に900万バレルを現在生産しているのか,そういう、疑問はあります。

ガワールがこれまで通り,500万バレルを生産している可能性はありますが、稼ぎ時に微減という傾向がどうにも腑に落ちません。

貯蔵タンクの備蓄を切り崩しているという可能性もありますが,そうだとすると,それが底をついたときサウジの生産量は急激に落ちることになります。アメリカと同じほど(7億バレル)の備蓄だとすると,250万バレルの切り崩しは1年くらいはできます。

それと関係あるのか,それとももっとほかのグローバル経済とやらの影響なのか,サウジの株式市場、今年はじめ以来
35%以上の暴落で、下げ基調が続いています
。グラフはこちら

アブラが最高値をつけているというのに,世界最大の石油会社アラムコのリーダー(サウジ王室)たちは,何か,私たちの知らないことを知っているのか、株を売り払っているようです。同じ頃,ブラジルやタイでも株式市場が暴落していることから、これが世界的な要因による,と指摘する声もあります。しかし、もしかすると、話が逆で,世界最大のガワールの生産が急激に減耗していることに、世界のマーケットが反応し始めたのかもしれません。

2006年8月 4日

オーストラリア人はクルマ好き/We love our cars, we Australians.

オーストラリアの中央銀行、連邦準備銀行(RBA)は2日、公定歩合を年率0.25%引き上げた。引き上げも、引き上げ率も大方の人間が予想していただけに,イスラエルのレバノンでの蛮行を伝えるニュースより大きな取り扱いをされたことが少し不思議ではあります。

この引き上げで公定歩合は年6%になり、それが住宅ローンやクレジットカードの率を押し上げ,借金漬けの人に打撃になるだろうというのが大方のメディアの論点だ。大騒ぎするのは、6%という区切りのいい数字であり,また、それを越すのが5年半ぶりという心理的な要因が大きい。

金利引き上げの理由として、消費者物価の上昇が挙げられている。消費者物価指数は4月から6月にかけ、1.6%(年率換算4%)上昇し、これはオ版消費税(GST)の導入された2001年以来の上昇で、それをのぞけば1995年3月以来の上昇になる。インフレ抑制が使命の連邦準備銀行は、金利を上げるしかない。

消費者物価のなかでも特に高騰したのが食品価格。この3ヶ月で食品価格は全体で4.1%、果物の価格は52%もあがっている。果物価格高騰の主犯と目されるのはバナナ。かつては安くて手軽に食べられたバナナも、3月にサイクロン・ラリーが、全国の8割から9割近くを生産するクイーンズランド北部を直撃して以来,簡単には口にすることのできない高級果実になってしまった。

バナナを筆頭とする食品と並び,物価高騰の原因となっているのはガソリン価格。ガソリンの値段は今年にはいってから20%近くあがり、シドニーのドライバーは週に200ドル以上もクルマを運転するだけに支払っているという統計もある。

これについて、ハワード首相は「ガソリン価格は私の政治生活の中でも一番大きな悩みの種だ。普通のオーストラリア人に大きなインパクトをもたらすからだ」と発言していいる。ようやく、ハワード首相もオイルピークが生活全般にもたらす影響にようやっと気づいたか。と思いきや。
「だって、オーストラリア人はクルマが好きだから」。
Adelaide Advertiserより。

やれやれ。
クルマを使う必要がなければ運転しないという人はたくさんいるでしょうが,それが個人の選択,し好にすり替えられ、「国民性」にまで昇華されるとは。

それだけでなく、ハワード首相はバナナやガソリンの「価格上昇は、どんな政府にもいかんともしがたい不可抗力である」と発言している。

あらあら。
サイクロンやハリケーン、台風がますます凶暴になり、しかもその頻度が増す,ってのは温暖化の兆候だと言われていますが,そうだとすれば温暖化を認めることを拒否し、アメリカと並び京都議定書への署名を拒んできたハワード政権には、バナナ価格の高騰の責任の一端がないとはとても言えません。

ガソリン価格の高騰そのものは国際市場が決めることであり,確かにそれぞれの政府にはいかんともしがたいことかもしれない。しかし、ガソリンがどんなに高騰しても,それが「中毒」と自嘲的に形容されるほど必要でなければ生活への影響は少ないだろう。例えば,通勤のためにクルマを運転しなくていい、買い物に出かけるのにもクルマを使わなくていい,食料を手に入れるのにもガソリンを消費しなくていいとしたらどうだろう。ちょっとやそっと,ガソリンの価格が上がったってへっちゃらだろう。政府にはいくらでもできることがあるのです。ガソリン価格の高騰そのものが問題なのではなく,それに首根っこをつかまれた経済,暮らし方、社会のあり方が問題なのだ。

ガソリンがなければ暮らしは立ち行かない,しかも,自分たちではどうすることもできない,ハワード首相の発言は典型的な中毒者の独白だ。

それもあってか、消費者物価指数からガソリンと食物を除こうとする動きがある。あたかも,ガソリンや食物の高騰が一時的なものであり、それらを除外すれば決して物価は上がっていない、とでもいうかのように。アブラ中毒ではオーストラリアに勝るアメリカでも同様な手段がとられ,経済の「真の」状態を示す指数が発表されている。しかし、これはインフレの現状を覆い隠すだけで、小手先の数字いじりにすぎない。ヤクが切れればブルブルと震える手で,盗みでも詐欺でも何でもあり、藁にもすがる中毒患者が、ヤク代さえ除けば家計は健全だというようなものだ。

食料ピーク!?/peak food?

国連食料農業機関(FAO)から先月,ぎょっとするようなレポートが発表されています。2006年の穀物生産予想に基づく「穀物見通しと食料情勢(Crop Prospects and Food Situation)」報告書ですが,これを見ると,穀物生産もアブラ同様ピークに達したのかもしれません。

もちろん,有限なアブラとは違い、穀物は消費しても毎年毎年、再び生産することができます。なので「再生可能」であり,ピークになることはあり得ないと考えがちです。

が、よくよく考えてみれば、当たり前のことですが,耕作可能な土地や水,肥料など,生産の条件には限りがあり、どれだけ反収をあげようと、無限に生産を伸ばすことはできません。しかも,食料の生産は気候変動の影響をもろに受けます。アフリカ、北米、オセアニアで軒並み,収穫が減っているのは不気味です。しかも今年にはいり,これまでの半年,アメリカは観測史上の暖かさを記録しており,収穫予想も大きく減る可能性があります。アジアの米作地帯はまだ大きな打撃を受けていないようですが,天候不順,大雨、洪水、干ばつなど,不吉な予兆はあります。

2006年度、全世界の穀物収穫は20億2000万トン、前年の2 億3800万トンと比べると微減(0.9%減)ですが、それでも史上3番目の収穫量、ここ5年の平均を上回る豊作が予想されています。

しかし報告書は、史上3番目の豊作であるにもかかわらず,備蓄の切り崩しが急速に進行していることを伝えています。期末備蓄量、つまり次の収穫までの備蓄は昨年の4億6100万トンから4億1600万トン、1割近く減ることが予想されています。これは生産が頭打ちであるにも関わらず,消費需要が急増しているからです。

需要を押し上げているのはエタノール生産です。エタノールはオイル・ピークの深刻化とともに、代用アブラの旗頭としてバイオディーゼルとともに期待されています。ブラジルなどではサトウキビからエタノールが作られ,砂糖の価格が急騰していることはl以前指摘しました。穀物では,トウモロコシがエタノール原料として使われており,それがトウモロコシへの需要が急激に伸びた原因だと報告書は指摘しています。

オイル・ピーク問題の本質は食料問題だと言われていますが,じわじわとその全貌が出現し始めています。生産がピークに達した穀物をめぐり、それを直接食料にするのか、それとも家畜、家禽の飼料にするのか,代用アブラにするのか、競争はますます激しくなることは明らかです。価格の高騰は避けられません。貧しい国や貧しい人にとっては死活問題になり、社会不安の増大にもつながります。

オイル・ピークと食料ピーク,人間社会には対応の用意ができているのでしょうか。

(なお,レスター・ブラウンによるエタノール生産に関するより詳しい論考の翻訳は農業情報研究所のサイトで読むことができます。)

2006年8月 1日

余剰能力はもうどこにもない/no spare capacity.

国連の安全保障理事会は7月31日、ウラン濃縮関連活動の全面停止を求め、8月31日までに従わない場合には経済制裁を発動することをイランに警告する決議を採択しました。

経済制裁が発動されれば、イランは石油の輸出もできなくなり、たしかに、イランにとっても打撃になるでしょうが,この決議に賛成した石油消費国の方への影響はどうなのでしょうか。そのあたり、あまり報道されていません。

たしかに、毎日毎日,世界中で消費される8100万バレルのうち、イラン産のアブラは200万バレル、量的にはそれほど大きくありません。アメリカには7億バレル近い備蓄があり,日本やヨーロッパにも1億バレル以上の備蓄があるので,イランへの経済制裁がアブラの供給を直接、脅かすことはないだろうと見られています。為政者や巷のメディアがあまり話題にしないのも、これを頼りにしているからでしょう。

しかし、オイルピークに直面する現代,ことはそれほど簡単ではありません。

元国営イラン石油会社副社長でありイラン史講師(テヘラン大学)のアリ・サムサム・バクティアリは、7月11日、オーストラリア国会の上院調査会に招かれ証言したなかで、この時代に「地政学的な事件」がもたらす影響を次のように述べています。(全文は国会議事録

「ペルシャ湾であれ,東南アジアであれ,地政学的な事件がもたらす心理的なインパクトが石油価格に大きく跳ね返ります。オイル・ピーク直後の時代,需要と供給の差は拮抗しており,地政学上のちょっとした事件でも大きな影響になります。
たとえば、サウジアラビアでもどこでもかまいませんが,かつてのように、200万から300万バレルの石油を増産できる余剰能力があれば、事件にもおろおろすることはないでしょう。しかし、余剰能力はもうどこにもないのです。サウジは100万から150万を増産できる余剰能力があると言っていますが,私は信じません。サウジには余剰能力は全くありません。それどころか,余剰能力は,OPECにも非OPEC諸国,ロシアにもサウジにも全くないと思います。大きなインパクトになり,石油価格がどこまであがるのか,わかりません」

アブラがふんだんにあっても,小さなことで価格が不安定になることはピークの兆候として,ピーク論者がずっと指摘していることです。アブラの需要と供給が逼迫し,余剰生産能力がどこにもないこの時代には「これまでどおりが通用しない(バクティアリ)」ことを肝に銘じておかなければならないでしょう。

Profile

リック・タナカ(Rick Tanaka)

-----<経歴>-----

信州松本出身。
1980年、シドニーに漂着。
大学中退後、ラジオやテレビ、ウエッブ、雑誌、ニューズレターなどで執筆、制作、コンテンツ制作、翻訳/通訳、音楽マネージメントなどで活動。
1997年、それまで15年暮らしたシドニーから標高千メートルの高原の町カトゥーンバに引っ越し、執筆・メディア活動と並行しながら、消費を抑え生産する楽農生活に突入する。
2007年、大陸の東南に浮かぶ島にある人口300人の村に移住、オイル・ピークと環境ゲテモノ化時代に備える暮らし、近隣社会の構築を模索中。

BookMarks

-----<訳書>-----


『未来のシナリオ』
2010年12月、農文協

-----<著書>-----


『人工社会』
2006年3月、幻冬舎


『楽農パラダイス』
2003年、東京書籍


『おもしろ大陸オーストラリア』
2000年、光文社知恵の森文庫

-----<共著>-----


『Okinawa Dreams Ok』
1997年、Die Gestalten Verlag


『Higher than Heaven:Japan, war and everything』
1995年、Private Guy International

-----<訳書>-----


『沖縄ポップカルチャー』
2000年7月、東京書籍

『首相暗殺』
ロバート・カッツ著、集英社

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