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メキシコのカントレル油田がピーク/ Cantarell peaks. »

逆巻く嵐は悪魔の爪/As happy as?

「風の爪痕もやがて消えるだろう魔の風は...」

ハリケーンだとか、サイクロン。名前は違っても、大きなのがニュースになるとつい口ずさんでしまうのは、「颱風歌」(作詞:松山猛)。

先週サイクロン・ラリーがクイーンズランド北部を直撃した時も、ニュースの合間に、昔よく聞いたアルバム、「黒船」を引っ張り出して大音量でかけてしまった。

「本日(3/20)早朝、ケアンズ付近にオーストラリア観測史上最大級のサイクロン「ラリー」が上陸!」シドニーの平野美紀さんのサイトが伝えています。まるでゴジラ来襲のような勢いですが、サイクロンは瞬間風速290メートルってなくらい、風が強かったようです。どちらかというと空の大怪獣ラドン、ですね。

この風でなぎ倒されずたずたになったのは家屋や建物やインフラだけでなく、農作物ももちろん、ばたばたと根こそぎにされ大きな被害を出しました。地元選出の代議士によれば、サイクロンの直撃にあったイニスフェイルとタリーで全国の9割近いバナナを生産しているのだそうで、それが壊滅。すでにその影響は全国に波及していて、近所の店でもバナナの値段は倍以上にはね上がっています。これを受け、これまで禁止されているバナナの輸入の是非を巡る議論も再燃しています。

サイクロンの通過したあたりはサトウキビの産地でもあり、そちらの被害もかなりなようで、すでに急騰している砂糖の国際価格をさらに押し上げそうです。オーストラリアでもサトウキビから醸造されるエタノールをブレンドしたガソリンがぼちぼちと出回っていて、いまはガソリンより安く売られていますが、こちらもサイクロンの影響で値上がりは必至でしょう。

ちなみに3月20日付けのブルームバーグは、「オイルより、金より、今、値上がりが見込まれるのは砂糖だ!」と砂糖の国際価格の急騰を取り上げています。急騰の理由は中国の需要増加に加え、市場に出回る砂糖が減ったため。世界第二の砂糖輸出国のタイが旱魃で生産が減ったこと、最大の生産国であるブラジルが4年以内にガソリン車の撤廃を掲げ、年産の半分以上をエタノール生産に振り向けたためだそうです。つまり、砂糖市場は温暖化による異常気象とオイル・ピーク対策のダブルパンチに見回れたということになり、当然ながら、現代社会を反映しています。

エタノールに関しては今日、ふたつおもしろい記事に遭遇。ひとつは、エタノールは持続可能でクリーンな燃料として代用油のひとつに掲げられているが、それを精製するために石炭をじゃんじゃん燃やしたエネルギーが使われていると暴露する記事、Carbon cloud over a green fuelが3月24日付けのクリスチャン・サイエンス・モニター誌に載っています。もうひとつは、シュピーゲル誌の記事で、森林資源からエタノールを精製し、2020年の脱石油化に向けて、国をあげて着々とまい進するスウェーデンの話。(Sweden Plans Wood-fueled Future)。どちらも時間があれば、御一読下さい。

エタノールは植物から作られるという理由だけで、クリーンで持続可能だというわけではなく、逆に温暖化ガスの製造に手を貸すこともある。でも、ちゃんとした文脈で、地元の持続可能な素材を利用すれば代用にはなる。ということです。アブラのように世界中どこでも同じように使える燃料は他に存在せず、そんなものを期待する方が間違い。これまでのような大量生産/大量消費式な考え方はオイル・ピーク後には通用しません。それぞれの場所で、使えるものを使っていく、ということになるでしょう。

今回のサイクロンで大きな被害を受けた地域も、単一作物を大規模な農場で栽培し、何千キロも離れたに大規模流通させるという近代農業生産システムの一部です。このシステムには経済的なメリットはありますが、単一な品種を数少ない場所で生産することを前提とするシステムはひよわでもあります。バナナもサトウキビもいろいろな場所で少しずつ作っていれば、一ケ所がサイクロンなどの被害を受けてもうろたえることはありません。クイーンズランド北部で作られたバナナを国中どこでも、いつでも安い値段で食べられる、そういう便利さは、どんどん高くつくようになります。特にこれから、こんな規模のサイクロン(北半球の人は颱風とかハリケーンと読み替え下さい)がごろごろやってくるようになるんだから、これまでの常識は通用しないでしょう。気候変動を引き起こした張本人である人間は、そのつけは覚悟しておかなければなりません。

そして、ポスト・オイルの文脈から見ると、やはり、石油の代替燃料を大規模生産によるバイオフュールに求めるならば、同じようにひ弱です。食用でもクルマ用でも、植物の生産はすべからく自然に曝されます。もちろん、砂糖やキクイモ、とうもろこしのように人間が食べられる作物をクルマを走らせる燃料に代えてしまうことの是非は問われなければなりませんが、それ以上に、それに頼ろうとすることは、きわめて危険です。

サイクロン襲来のなかにもオイル・ピーク、そして温暖化による異常気象の時代を過ごす現代社会が透けて見えます。

ちなみに前述の平野さんのサイトに次のような警告が載っていて、不謹慎にも笑ってしまいました。ケアンズのメイン・ストリートをワニや毒蛇がしゅるしゅる!したんでしょうか。後日談を聞いてみたい!

「猛烈な強風を伴ったサイクロン・ラリーの上陸で、ケアンズ近郊の河川が氾濫。これにより、川に生息しているクロコダイル(ワニ)や毒蛇などが流出した恐れが!川に近い場所や海辺、洪水被害地域には近づかないようにしてください。」

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Profile

リック・タナカ(Rick Tanaka)

-----<経歴>-----

信州松本出身。
1980年、シドニーに漂着。
大学中退後、ラジオやテレビ、ウエッブ、雑誌、ニューズレターなどで執筆、制作、コンテンツ制作、翻訳/通訳、音楽マネージメントなどで活動。
1997年、それまで15年暮らしたシドニーから標高千メートルの高原の町カトゥーンバに引っ越し、執筆・メディア活動と並行しながら、消費を抑え生産する楽農生活に突入する。
2007年、大陸の東南に浮かぶ島にある人口300人の村に移住、オイル・ピークと環境ゲテモノ化時代に備える暮らし、近隣社会の構築を模索中。

BookMarks

-----<訳書>-----


『未来のシナリオ』
2010年12月、農文協

-----<著書>-----


『人工社会』
2006年3月、幻冬舎


『楽農パラダイス』
2003年、東京書籍


『おもしろ大陸オーストラリア』
2000年、光文社知恵の森文庫

-----<共著>-----


『Okinawa Dreams Ok』
1997年、Die Gestalten Verlag


『Higher than Heaven:Japan, war and everything』
1995年、Private Guy International

-----<訳書>-----


『沖縄ポップカルチャー』
2000年7月、東京書籍

『首相暗殺』
ロバート・カッツ著、集英社

→ブック・こもんず←

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