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北朝鮮・韓国 アーカイブ

2010年11月24日

まさか、島を攻撃するとは!

 なんともめちゃくちゃに忙しかった。夕方からテレビ局を梯子し、移動車の中で新聞や週刊誌等にコメント。帰宅したのは午前0時を回った。海上での南北砲撃戦のためだ。

 韓国哨戒艦が沈没した黄海(西海)上で韓国軍単独による朝鮮戦争以来最大規模の軍事演習を今年8月に韓国軍が「我が領海内で行なわれる防御訓練である」として実施した際、北朝鮮人民軍は「単純な訓練ではなく、われわれに対する露骨な軍事的侵攻行為である」とみなし、韓国が「不法、無法のNLL(北方限界線)」をあくまで固守しようとするなら「強力な物理的対応打撃で鎮圧する」と警告を発していた。が、現実には北朝鮮は手を出さず、傍観した。

 しかし、そのうち必ず行動に移すだろうとは予想していたものの韓国艦船への攻撃はあってもまさか延坪島(ヨンピョンド)を砲撃をするとは思ってもみなかった。北朝鮮最高司令部は韓国側が先に発砲し、砲撃したと説明しているが、それが事実であっても、だからと言っていきなり民間人が暮らす島を直接狙うとは信じられないことだ。無謀極まりない。

 韓国の哨戒艦事件に続き、またもや一方的にやられた韓国側の怒りは半端ではないだろう。まして、一般人が犠牲になったことは憤りを通り越し、北朝鮮に懲罰を求める雰囲気が高まるかもしれない。軍人にいたっては、再び報復を叫ぶ者も出てくることだろう。軍の士気にかかわるからだ。

 韓国国防部は3月の哨戒艦沈没事件後「やるならやってみろ。一発撃ったら、10発、100発でお返しする」と「報復」を誓っていた。北朝鮮がちょっとでも手を出せば、哨戒艦沈没の敵を打つ気構えでいた。

 李明博大統領は事態をエスカレートさせず、冷静に対応するよう訓令しているが、その一方で、今度挑発があったら容認せず断固対処し、砲撃基地をミサイルで叩いても良いと軍を鼓舞したそうだ。

 韓国がミサイルを使用すれば、北朝鮮もミサイルで応戦することは間違いない。大砲の打ち合いからミサイルの応酬ということになれば、局地戦争では済まなくなる。

 今回の南北交戦がこれで終息するのか、それとも拡大するかは、今日、韓国軍が計画通り軍事演習を再開するかどうかにかかっている。仮に中止ということになれば、北朝鮮の軍事的威嚇に屈したとの誤ったメッセージを与えかねないだけにイージス艦や駆逐艦を動員しても今日含めて予定とおり30日まで軍事演習を継続するのではないだろうか。

 そうなると、問題は北朝鮮の対応だ。「領土侵犯は容認せず、無慈悲な報復」を加えると言っている手前、韓国軍が北朝鮮が自らの領海と主張している現場で軍事演習を継続した場合、再び、砲撃することも考えられなくもない。南北双方にとって、これは言わば度胸ためしのようなものだ。ロシアンルーレットか、チキンレースか、とにかく、先に譲歩したほうが負けと考えているならば、再び衝突することは十分に考えられる。

 仮に、今回はこれ以上、衝突が起きなかったとしても、韓国軍がこれまで自制していた拡声器による対北非難宣伝放送を再開することになれば、北朝鮮は即座に軍事的対応をすると公言しているだけに海上から今度は陸上で交戦が発生する可能性も十分に考えられる。

 仮に、お互いがミサイルによる報復合戦となった場合、どうなるのだろうか。万一の場合に備えて、シミュレーションをしてみた。

 まず、北朝鮮側の戦法だが、韓国軍がミサイルを使用した場合は、西海岸沿いに配備してあるシルク地対艦ミサイル(10基以上)とSA5地対空ミサイル(数十基)で攻撃するだろう。シルクワームの射程距離は90km。SA5ミサイルは、射程距離250km。韓国の空軍力に致命的な打撃を与えることができる。

 
 北の西海艦隊所属の6戦隊が保有する艦艇は420余隻。SO1級警備艇は18隻。潜水艦は40隻。西海岸の3つの空軍基地には150余機の戦闘機が配備。離陸後5分でNLLに到着するとみられる。

 これに対して韓国側はどうか。

 北朝鮮のミサイル発射と同時にF-16(2個編隊)を出撃させ、ミサイル基地を爆撃する。続いて、韓国が実効支配している延坪島などに配置されてある射程距離130kmのハープーン・ミサイルで北朝鮮の海岸砲と地上砲基地を攻撃する。さらにNLL以南20kmに待機している駆逐艦に搭載されているハープーン・ミサイルで叩くことになるだろう。至近距離では哨戒艦の76mm砲で遠距離では65kmのミサイルで応戦する作戦だ。

 韓国は西海岸に2艦隊所属の戦闘艦160余隻を保有。潜水艦10余隻。射程距離130kmハ−プンミサイルを保有している。艦船の数では韓国が劣っているが、500トン以上の大型艦艇など性能で上回っている。

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2009年9月10日

相変わらずの日本の新聞の「北朝鮮論調」

 民主党政権に北朝鮮が対話攻勢をかけてくるのではとの記事が産経新聞(5日付)と毎日新聞(6日付)、そして朝日新聞(8日付)にそれぞれ掲載されていた。

 「北朝鮮が朝鮮総連を通じて民主党を攻略するよう指示を出した」との「産経」の記事は良くも悪くもいかにも「産経」らしい。

 北朝鮮=朝鮮総連=民主党というトライアングルの図式を浮かび上がらせることで国民の反北感情に訴え、「産経」が論陣を張ってきた圧力重視の政策を変更しないよう巧みに民主党を牽制しているところが実にうまい。北朝鮮が狂牛病牛肉の輸入問題で高まった反米感情を巧妙に利用し「李明博政権は親米政権」「李明博政権の背後には米国がいる」と煽り立て、李政権を孤立させようとした手法と酷似しているので、さすが北朝鮮に精通している「産経」ならではと感心した。

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2009年8月24日

北朝鮮はなぜ豹変した

 テポドン・ミサイル発射(4月5日)、核実験(5月25日)、そして7月のミサイルの連射(11発)と、北朝鮮の対米姿勢は強硬一辺倒でしたが、8月になって北朝鮮が態度を豹変させました。

 北朝鮮は、国連安保理の議長声明(4月13日)には「自衛的核抑止力の強化」で対抗するとして、凍結していた核施設を稼動させ、国連の制裁決議(6月13日)にはウラン濃縮作業とプルトニウムの兵器化着手を宣言し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射も辞さないと米国を挑発していました。

 北朝鮮の一連の強硬措置は「オバマ政権はブッシュ前政権と何一つ変わってない」(5月4日の外務省代弁人声明)との認識に基づくものでした。ヒラリー国務長官から「北朝鮮は関心を引こうとする駄々っ子のようだ」と揶揄された際には「彼女は小学校の女子児童のようでもあり、時に、市場に出かける年金受給者のようにも見える」と応酬し、対抗意識を露にしていました。

 韓国に対しても昨年12月1日の開城観光中断と陸路及び鉄道の通過制限に続き、今年1月には過去の政治・軍事関連合意の無効化宣言、そして3月には民間機の北朝鮮上空飛行禁止、軍の通信遮断、開城工業団地訪問の禁止など相次いで強硬な措置を取りました。李明博大統領に対しては昨年4月1日に「李明博逆徒」と罵倒して以来、人身攻撃の手を休めることは一度たりともありませんでした。

 それが、8月になると突如一転し、柔軟な姿勢に転じました。「全面対決も辞さない」としていた米国に対して金正日総書記は、クリントン元大統領の訪朝(8月6日)と引き換えに長期間身柄を拘束していた米人ジャーナリストを解放し、オバマ大統領に対話再開へのメッセージを発信しました。

 また、韓国に対しても、現代グループの玄貞恩会長の訪朝(8月10日)を受け入れ、米人ジャーナリストと同じ時期に身柄を拘束していた現代グループの社員を韓国側に引き渡しました。同時に軍事境界線の陸路及び鉄道通行禁止などの一連の規制措置を一方的に解除し、韓国政府待望の離散家族の再会にも同意しました。

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2009年8月 7日

日本に必要な国益重視の太っ腹外交

 日本の外交懸案は山積している。イラク、アフガン支援をめぐる米国との関係、尖閣諸島の領有権及びガス田開発をめぐる中国との関係、北方領土問題が焦点のロシアとの関係、さらには竹島問題や歴史認識問題でもめる隣国・韓国との関係など、日本を取り巻くこれら国々との将来にわたる良好な関係の維持は日本の平和、安全・繁栄にとって不可欠である。

 無論、これら4か国以外にも原油の15%前後を輸入しているイランやパレスチナ・イスラエル問題なども日本の外交にとって重要なウエイトを占めているが、最も身近な北朝鮮との問題が戦後から64年経っても、未解決のままにあることは汚点である。

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2009年7月22日

北朝鮮はなぜ、沈黙するのか

 北朝鮮が不気味なほど静かです。まるで「借りてきた猫」のようにおとなしいです。

 国連安保理制裁委員会が7月16日に北朝鮮の核とミサイルに深く関与してきた李済善原子力総局長ら5人に対し渡航禁止、海外資産凍結などの制裁を科し、さらに「南川江貿易会社」など5企業・団体にも制裁を適用したにもかかわらず沈黙を保ったままです。4月のテポドン発射、5月の核実験の際に猛反発したのとは対照的です。

 人工衛星(テポドン・ミサイル)発射を国連安保理の議長声明(4月13日)で「二度と発射するな」と批判された際には即日、外務省が「自衛的抑止力を強化する」との声明を発表し、①6か国協議には絶対に出ない②自衛的核抑止力を強化する③核燃料棒を完全に再処理すると宣言し、核無能力化作業を監督していた国際原子力機関の監視団と米国務省の職員を追い出してしまいました。

 また、3年前の安保理決議(1718号)に違反したため安保理制裁委員会が4月24日に国連加盟国に資産凍結を義務付ける北朝鮮企業3社を指定した際にも北朝鮮外務省は即刻、対抗手段として使用済み核燃料棒の再処理開始を宣言しました。

 さらに、国連安保理が核実験への懲罰として制裁決議を採択(6月12日)した時も翌日には①新たに抽出されるプルトニウムをすべて武器化する(使用済燃料棒は総量の3分の1以上が再処理されていた)②ウラニウム濃縮作業に着手する③封鎖(貨物検査)には軍事的に対応するとの強硬な方針を打ち出しました。

 一連の対抗措置について、北朝鮮外務省は「制裁には報復で、対決には全面対決で応じるのが我々の先軍思想の対応方式である」と宣言していました。ならば、今回の国連制裁委員会による原子力関係者らに対する渡航禁止措置を含む追加制裁についても断固たる対抗措置を取らなくてはなりません。韓国の柳明桓外交通商相が制裁委員会の追加制裁を「非常に意味がある」と高く評価していただけに北朝鮮としては本来ならば黙っていられないはずです。しかし、7月21日現在、外務省も、今年になって頻繁に登場する朝鮮人民軍代弁人も、また労働新聞や朝鮮中央通信などのメディアも国連制裁委員会による追加制裁については不思議なことに一言も言及していません。

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2009年6月30日

北朝鮮は日本の早期警戒管制機を撃墜できるか

 北朝鮮空軍司令部は6月27日に報道文を発表し、日本の偵察機が北朝鮮に対して空中偵察を行なっていると非難しました。

 偵察行為を行なっていると問題にされた日本の偵察機は航空自衛隊の早期警戒管制機「E-767」で、北朝鮮の発表では、6月24日、25日と二日間にわたって「元山(ウォンサン)東側海上上空から舞水端里(ムスタンリ)側上空まで長期間往復飛行し、北朝鮮の海岸と周辺地域への空中監視と電波探知を行なった」とのことです。

 その上で北朝鮮は「偵察行為」を「許しがたい軍事挑発である」とし「われわれの領空を0.001ミリでも侵犯すれば、容赦なく撃ち落す」と警告を発していました。

 「偵察行為を行なった」とされる南東部に位置する江原道の元山には旗対嶺(キッテリョン)ミサイル基地があり、5月25日には地対艦ミサイル2発が発射されています。また北東部の咸鏡北道の舞水端里基地からも4月5日にテポドンⅡが、また5月29日には地対空ミサイルが発射されています。いずれの基地も日本海(東海)を挟んで日本に面しているので、日本としては無関心ではいられません。

 特に北朝鮮は元山海域一帯を6月25日から7月10日まで航行禁止地域に設定し、軍事射撃訓練を予告してており、また舞水端里基地でもテポドンⅡか、その改良型の長距離ミサイルの再発射の動きが取り沙汰されているだけに安全保障上、日本が警戒するのは当然のことです。

 しかし、北朝鮮は日本国内で「敵基地攻撃能力保有」「核及びミサイル基地への先制攻撃」の議論が起きている最中に空中偵察行為が繰り広げられていることに神経を尖らし、「看過できない」として「迎撃する」と脅しています。

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2009年6月12日

北朝鮮は3度目の核実験をできるのか

 国連で北朝鮮に対する新たな制裁決議が採択されれば、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射するのではと、警戒している最中、米CNNテレビは昨日、米政府筋の話として、北朝鮮が新たな核実験を準備している可能性を示す兆候があると報じていました。

 フォックスニュースも、北朝鮮が国連安保理の決議案採択に対抗して3度目の核実験を強行するとの情報を米情報当局が把握し、オバマ大統領に報告したと、伝えていました。

 フォックスニュースは、CIAが北朝鮮は対抗措置として4つの行動に出る可能性があるとして、その4つの行動を、①核燃料棒再処理によるプルトニウム生産②ウラン濃縮への動き③西側軍事基地からの大陸間弾道ミサイル追加発射、そして④3度目の核実験を上げていました。

 フォックスニュースは「世界で最も情報が取りにくい北朝鮮についてCIAがどのようにして情報を把握したのかについては触れていなかった」と報じていましたが、どのようにもなにも、CIAでなくても、誰でも簡単に予想、把握できることです。

 北朝鮮の対抗措置がICBMなのか、3度目の核実験なのか、どちらが先になるのかだが、順当ならば、ICBMでしょう。ICBMを発射すれば、国連安保理が再び召集され、今度は軍事的手段を含む臨検など強硬な制裁が科せられます。北朝鮮がまたそれに対抗して、核実験に踏み切るでしょう。

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2009年6月 2日

北朝鮮にICBMはあるのか?

 北朝鮮は4月29日に国連が制裁決議をすれば、自衛的措置として、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射すると予告していましたが、どうやら本気のようです。

 米韓メディアは、それぞれ情報当局の話として、平壌近郊のサヌン洞兵器工場で製作された長距離弾道ミサイルが列車で一昨日、平壌から2百km、寧辺(ヨンビョン)核基地から70km離れた北西部の平安北道東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射基地に運搬されたと伝えていました。

 これが事実ならば、発射台の組み立て、ミサイルの装着、燃料注入まで2週間程度もあれば十分なことから国連が制裁次第では、米韓首脳会談が開かれる17日前後に発射されるかもしれません。北朝鮮が13-14日の間、平壌の北西部約45kmの西海(黄海)の一部海域を航行禁止にしたこともその関連と見られています。17日まで無理なら、遅くとも朝鮮戦争勃発日の25日までには発射される可能性が大です。ちなみに舞水端(ムスタン)基地からは3年前のテポドンは発射台に上がってから17日後に、先の4月5日のテポドン2は12日後に発射されています。

 運搬されたミサイルは、形状などから、テポドン2か、その改良型と推定されています。4月5日に発射されたテポドン2号は、最終的に射程距離が3千2百~8百km程度にとどまり、失敗に終わったと言われています。距離が伸びなかったことからICBMはまだ完成していないとの見方が有力でした。

 北朝鮮が4月に発射実験するまではテポドン2は射程距離が6千kmと見られていました。しかし、実際に5千5百kmにも満たなかったということは現段階では中距離ミサイルということになります。米ロ戦略兵器削減協定(START-1)に基づけば、ICBMは射程距離5千5百km以上のミサイルを指すからです。従って、仮に今回も同型のミサイルを使用するなら、射程距離を倍近く伸ばさなければ、ICBMとは認められません。

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2009年5月28日

北朝鮮核実験の全容

 1.核実験予告

 北朝鮮はミサイル発射を非難する国連安保理議長声明に反発し、4月14日の外務省声明で「自衛的核抑止力を強化する」と宣言。さらに、国連制裁委員会が北朝鮮の三つの企業を制裁企業対象に指定するや、29日に外務省スポークスマンを通じて「対抗措置」として「核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験を含む自衛的措置を講じる」と発表した。

 韓国の朝鮮日報紙は5月7日付で韓国政府筋の話として北朝鮮が3年前に核実験を行った咸鏡北道吉州郡・豊渓里の核実験場で「2度目の核実験を準備している兆候がある」と報じていた。

 2.核実験の場所

 咸鏡北道吉州郡豊渓里。気象庁によると、震源の場所は北緯41.2度、東経129.2度と、3年前の核実験時とほぼ同じ。震源の深さはごく浅い。

 豊渓里は北部には海抜2205メートル、1,874メートルの山々があり、南部の最も低いところでも海抜は600メートルである。

 3.核実験の時刻

 気象庁によると、地震発生時刻は午前9時54分40秒頃。

 気象庁によると、体に感じない微弱な揺れは、日本全国で9時56分から57分台にかけて、30秒から1分程度続いたという。

 朝鮮中央通信は実験から2時間後の11時50分、「2度目の地下核実験を実施し、成功した」と伝えたが、発射場所及び時刻については触れなかった。

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2009年5月19日

防衛省の「ミサイル報告書」を検証する

 防衛省は5月15日、「北朝鮮ミサイル」に関する調査分析結果を発表しました。そこで、米国及び韓国の発表、及び発射当事国の北朝鮮との違いを幾つか列挙してみることにします。

 1.何時に発射されたのか?

 防衛省は発射時刻については「4月5日11時30分頃に発射した」と判断しています。北朝鮮はそれよりも10分早い「11時20分頃に発射され、11時29分2秒は軌道に正確に進入させた」と発表しています。韓国は日本とほぼ同じで「11時30分15秒」とみています。

 日韓と北朝鮮の発表では10分~10分15秒のギャップが生じています。時差が生じたのは、北朝鮮の発射基準が異なるからかもしれません。あるいは衛星やレーダーの探知による誤差かもしれません。北朝鮮が「11時20分に発射」という予定原稿を発表してしまった可能性も考えられます。一部には「米国や日本を混乱させるための意図的に誤報を流した」との見方も出ています。

 

 2.北朝鮮が4月5日に発射したものは何か?

 防衛省は「北朝鮮の弾道ミサイル計画に関する活動である」ことを鑑み、「北朝鮮によるミサイル発射」と呼称しました。日本政府は当初は中立的な用語である「飛翔体」と呼んでいましたが、河村官房長官は10日の記者会見から「ミサイル」に改めました。北朝鮮はあくまで「人工衛星」と主張しています。韓国はミサイルでも、人工衛星でもない「長距離ロケット」という表現を使っていますが、米国は当初は「人工衛星運搬体」と「長距離ミサイル」との見方で揺れていましたが、最終的にはオバマ大統領が「テポドン2号ミサイル」と表現しました。中国とロシアの両国は公式見解を出していません。結局、国連安保理は4月14日の議長声明で飛翔体については特定せず単に「4月5日の発射」と表現していました。

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2009年5月 6日

「ミサイル発射」から1ヶ月、これからの展開は?

 あの4月5日の「ミサイル発射」から1ヶ月が経過しました。

 北朝鮮が国際社会による再三にわたる勧告、警告を無視し、「ミサイル発射」を強行したことに国連安保理は議長の名で北朝鮮を非難する声明を出し、有名無実化していた3年前の国連制裁決議(1718号)を復活させ、複数の北朝鮮企業に制裁を科しました。懲らしめたうえで休会中の6か国協議を再開させ、懸案の核問題を進展させるのが米国の狙いでした。しかし、国連安保理の懲罰に北朝鮮が激しく反発、抵抗したことで、情勢は逆行し、核をめぐる交渉は冷却状態に置かれました。

 安保理議長声明採択直後の6か国協議からの脱退及び核開発再開宣言(4月14日)と国際原子力機関(IAEA)監視団及び米国職員の国外追放(4月17日)、そして使用済み燃料棒の再処理開始宣言(4月25日)に続いて、4月29日には安保理に対して「直ちに謝罪しなければ核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を行う」と威嚇しました。

 北朝鮮は日米が主導した国連安保理議長声明と北朝鮮企業に対する制裁措置を「不法で非道な挑発行為である」と決め付け、「その責任は米国にある」(労働新聞)と糾弾しました。また、大統領就任以来直接的な批判を控えていたオバマ政権に対して「ブッシュ政権と変わりがない」(外務省スポークスマン)と非難し始めました。また、日本に対しても「6者会談破綻の主犯」(民主朝鮮紙)との烙印を押し、今後6者会談に代替する多国間会談が開かれた場合でも「日本は排除する」と対日嫌悪感を露にしました。

 北朝鮮の猛反発に「6か国協協議再開は不可欠である」との立場を取っていたクリントン国務長官はここにきて「6か国協議再開の可能性は少ない」との悲観的な見方を示しました。4月に訪朝し、金永南最高人民会議常任委員長や朴宜春外相らに6か国協議への復帰を働きかけたロシアのラブロフ外相も「6か国協議に向けて)突破口が見えない」と落胆していました。中国も同様で胡錦濤国家主席は6か国協議再開に向け協力を要請した麻生太郎首相に「当面開催は困難」と半ばさじを投げていました。米中ロ両国とも現状では完全にお手上げ状態のようです。

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2009年4月27日

二度目の核実験に突き進む北朝鮮

 国連安保理議長声明への北朝鮮の反発は、大方の予想を上回る速さで、収まる気配がありません。

 「北朝鮮の発射」を非難する安保理議長声明が4月14日に採択されるや間髪を入れず、北朝鮮は6か国協議からの脱退と核開発の再開を宣言しました。2日後の16日には早くも国際原子力機関(IAEA)の監視チームに核施設の封印と監視カメラを撤去させたうえで国外退去させ、同時に核無能力化作業を監督していた米国の専門家らも寧辺から追放しました。

 濃縮ウラン疑惑が浮上したブッシュ政権下の2002年の時も、同様のことがありましたが、それでも一気にではなく、監視カメラ撤去まで10日間、IAEA職員の追放まで15日間かけて順次行ないました。また、昨年もテロ支援国指定を解除しないことに苛立ち、一時期核施設の無能力作業を中断させたことがありましたが、それでも封印と監視カメラの撤去及び3人のIAEA監視要員の追放までに1ヶ月近く間を置きました。過去のケースと比べようもないほど今回の北朝鮮の行動は迅速で、尋常ではありません。

 極め付きは、「使用済み核燃料棒の再処理を開始した」と25日に発表したことです。北朝鮮が現在保有している8千本の使用済み燃料棒を再処理するには再処理施設を修復しなければなりません。無能力化の段階にあった再処理施設の修復には1~2ヶ月、そして貯蔵プールに保管されてある使用済み燃料棒を取り出し、再処理するまでには3ヶ月間は要すると見られていました。従って、「核開発再開宣言」から僅か10日後の再処理着手には「本当だろうか?」との疑問の声がIAEAなど関係者の間で上がっていますが、いずれにせよ仮に8千本の使用済み燃料棒が完全に再処理されるようなことになれば、北朝鮮は秋までに新たに核爆弾5個分のプルトニウム25~30kgを手にすることとなります。

 ウォルター・シャープ駐韓米軍司令官は4月22日、韓国商工会議所での講演で「北朝鮮は少なくとも核兵器を6個製造できるプルトニウムをすでに保有している」と言っていました。また、オバマ大統領は昨年7月23日、大統領選挙遊説で北朝鮮は「核兵器を8個持っている」と公言していました。

 北朝鮮がプルトニウムとして保有しているのか、あるいはすでに核爆弾化させたのか、正確なことは米国にもわからないようです。また、保有数についても駐韓米軍司令官と最高司令官の見解は分かれています。しかし、プルトニウムにせよ、核爆弾にせよ、北朝鮮が新たに再処理して、プルトニウムを抽出すれば、二桁にのることだけは間違いありません。さらに北朝鮮には未使用の燃料棒が貯蔵所に1万5千本程度保管されたままにあります。破壊された冷却塔など原子炉の施設が復旧されれば、来年にはさらに10個分の量のプルトニウムが追加されることになります。

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2009年4月13日

国連安保理「議長声明」の次は

 北朝鮮の「ミサイル発射」を非難する国連安保理議長声明が15か国の国連理事国による全会一致で採択されます。安保理議長声明は、今回の発射が3年前の国連安保理決議1718号に「違反している」と規定しました。また、北朝鮮にさらなる発射を行わないよう強い警告を発しました。国連安保理の非難が決議ではなく、拘束力のない議長声明に格下げされたとしても、北朝鮮にとっては非常に厳しい内容となっています。

 何よりも、北朝鮮の友好国である中国とロシアの両国が、今回の発射を仮に人工衛星であったとしても「国連決議に違反している」と非難し、「宇宙の平和利用のための人工衛星の発射は自主権に属する」との北朝鮮の主張を退けたばかりか「二度と発射してはならない」と日米の主張に賛同した意味は大きいです。北朝鮮を非難し、再度の発射を禁じたということは中国もロシアも今回の発射が実質的にミサイルであったことを認めたに等しいです。

 北朝鮮は人工衛星発射後、朝鮮中央通信が今回の発射を「気象衛星をはじめとする実用衛星を打ち上げる前段階である」として、今後も人工衛星を打ち上げる方針を明らかにしていますが、国連安保理の議長声明は、ミサイルに続き人工衛星発射の権利を北朝鮮から取り上げたことにもなります。

 また、議長声明は3年前の国連決議(1718号)に基づき、制裁委員会に対して大量破壊兵器関連団体や個人の直接的、間接的な資金や金融資産を直ちに凍結するためのリストと、大量破壊兵器関連の計画にかかわる政策に、支持または宣伝を含め、責任があると認定した人物及びその家族の入国や通過を阻止するのに必要な措置を講じるためのリストを作成し、今月24日まで提出するよう求めています。制裁委員会が作成できない場合は、国連安保理が独自に作成し、国連加盟国に徹底させるとしています。

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2009年4月 1日

北朝鮮に報復能力はあるのか?

 北朝鮮が打ち上げた「人工衛星」を日本が長距離弾道ミサイルと称して迎撃した場合果たして北朝鮮は報復するのでしょうか?

 朝鮮中央通信は昨日の論評で、北朝鮮が「人工衛星」と称して発射の準備を進めている長距離弾道ミサイルを日本が迎撃した場合、戦争行為とみなし、「最も強力な軍事的手段によってすべての迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕する」と反発していました。3月9日にも陸海空を束ねる朝鮮人民軍総参謀部が同様の内容の声明を発表していました。

 人民軍総参謀部は声明の中では「平和的衛星に対する迎撃行為に対しては最も威力のある軍事手段により即時に対応打撃で応える」「我が革命武力は躊躇なく投入されたすべての迎撃手段だけでなく、迎撃陰謀を企てた日米侵略者と南朝鮮(韓国)の本拠地に対して正義の報復打撃戦を開始する」と迎撃を「宣戦布告」とみなし、攻撃を加えることを宣言していました。

 北朝鮮の威嚇が単なるハッタリか、実際に行動に移すのか、予測するのは難しいです。ただ気になるのは、米韓合同軍事演習を理由に全軍に発令した「戦闘動員態勢」を演習が3月20日に終了したにもかかわらず今なお解除されていないことです。迎撃に報復すれば、北朝鮮ミサイル基地への米国による猛烈な反撃は避けられず、それに応戦すれば、局地戦争、全面戦争に発展するとの想定しているからでしょう。

 しかし、日本による迎撃は、切り離されたブースターが誤って日本の領土、領海に落下する場合に備えての、国民の生命と安全を守ることを目的とした自衛隊法82条に基づくものです。「飛翔体」の落下は、厳密に言えば、領土、領海、領空侵犯に該当するので、迎撃は国際法的にも許されます。北朝鮮も、そのことは十分に認識しているはずで、従って北朝鮮による報復は、日本が検討している落下物への迎撃を指しているものではなさそうです。

 北朝鮮が言う報復とは、「人工衛星」が宇宙空間に向かって上昇中に迎撃された場合を指します。例えば、第一段のブースターが切り離される前後にイージス艦のSM-3で「人工衛星」が撃ち落された場合は、報復の可能性は極めて高いと思われます。

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2009年3月26日

「人工衛星」を発射する朝鮮宇宙空間技術委員会とは?

 北朝鮮が公言したとおり、独自開発したロケット「銀河2号」で試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げに成功した場合、運搬ロケットの性能と、推進燃料の開発、衛星に使用される部品及び衛星管制能力などが改めて注目されることになります。人工衛星の打ち上げには、多段式(三段式)ロケットのブースター分離技術、固体(固形)燃料をエネルギーにしたロケットエンジン、数千度の高熱に耐えられる特殊金属やセラミック素材の製造技術等先端技術を要するからです。実際に人工衛星を独自開発できる技術を保有している国は世界には20数カ国しかありません。

 運搬ロケットの推進には固形燃料と液体燃料が使用されますが、前回の「光明星1号」の時は、第一、第二段には液体燃料が、そして最後の3段目には固形燃料が使われていました。液体燃料と違い、固形燃料を使用する場合は、ロケットを発射台に立てる必要がなく、移動も可能で、発射までの時間も大幅に短縮されます。そのため大陸弾道弾ミサイルなど軍事用には多くは固形燃料が使われています。今回、発射台に燃料を積んだタンクローリが見られないことから、独自に開発してきた固形燃料を使用するのではとの観測も出ています。

 また、人工衛星に使用される部品は極限の温度差や無重力状態に耐えられる精密性と強度が求められますが、現在の北朝鮮の軍事化学技術ではこうした部品の独自開発には限界があるとみられています。

 さらに、地球軌道を旋回している様々な人工衛星と軌道が重複しないよう固有の軌道を探す技術力も人工衛星開発に必要な分野ですが、北朝鮮がこうした技術を保有しているのかも疑問視されています。

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2009年3月23日

北朝鮮のミサイルは33分で米本土に着弾

 北朝鮮が発射するミサイルもしくは人工衛星を発射した場合、一段目のブースターは発射地点の舞水端発射場から650km(秋田沖130km)、二段目は3,600km(銚子沖2,500キロ)に落下すると、北朝鮮は通告してきました。米国の保守系シンクタンクとして知られるヘリテージ財団は今年3月にワシントンで記者会見を開き、ミサイルならば米本土に到着する時間が33分とみなし、この間に迎撃に備えなくてはならないと警告しています。

 迎撃については、米太平洋司令官が「オバマ大統領の許可があれば、いつでも迎撃の準備が出来ている」と語っていました。2月26日、ハワイ真珠湾で米国のABC放送とのインタビューに応じたカーチン司令官は「もし北朝鮮がミサイルを発射すれば、米軍は駆逐艦、イージス巡洋艦、レーザー、ミサイル防御システム、地上発射迎撃ミサイルなど5つのシステムで対応する」と語っていました。

 テポドン2号が発射されれば、米国は①高度30~40kmの上昇段階ではボーイング航空機に搭載したレーザー(ABL)で打ち落とす②大気圏を突破する高度100kmの中間段階ではイージス艦隊に装着された迎撃ミサイルSM―3(射程距離3百km)で迎撃する。仮に失敗した場合は、③地上からのパトリオット(PAC3)(射程距離15km)で迎撃することになっています。パトリオットは目標物に一定距離まで近づくと弾頭に装着された近接電波送信管が作動し、目標物を破壊します。また、大気圏外から進入する長距離ミサイルには地上発射型中間段階防御ミサイル(GMD=射程距離2,500km)で打ち落とす作戦のようです。

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2009年3月 2日

人工衛星でも国連決議違反の理由

 北朝鮮がテポドン・ミサイルではなく、試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げを示唆していることについて米国務省は2月24日、「宇宙発射体であれミサイルであれ、宇宙発射体開発や長距離ミサイルの生産に向けた一部段階は似通っている」として、衛星打ち上げであっても、国連決議に違反するとの見解を示しています。

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2009年1月15日

いよいよオバマ政権が誕生する

 オバマ政権が1月20日に正式に発足します。世界中の耳目がワシントンでの就任式に集まるものと思われますが、北朝鮮も例外ではありません。オバマ政権は北朝鮮にとっては待ちに待った政権であるが故です。

 米大統領選挙の結果が出るまで平壌を訪問(10月28-11月1日)し、北朝鮮の高官らと意見を交換していた米ジョージア大のパク・ハンシク教授は「北朝鮮はオバマ政権発足を機に米国の関係改善を切に願っていた」と、平壌の雰囲気を伝えていました。

 パク教授が占うように「オバマ政権が発足すれば、半年から1年の間に朝鮮半島に大きな転機が訪れる」のかどうかは未知数ですが、金正日政権からすれば、チャンス到来とばかり対米外交を積極的に展開することになるでしょう。オバマ大統領就任式に金桂寛外務次官を出席させたいと打診したことでも並々ならぬ意気込みが感じられます。

 8年前のクリントン政権最後の年の2000年11月の大統領選挙で、仮に後継者のゴア副大統領が歴史的僅差で負けなかったら、あるいは中東問題が再燃しなかったならば、当時クリントン大統領が訪朝し、米朝首脳会談が実現したと金総書記は残念がっていました。この年の10月23日、オルブライト国務長官が米国の現職閣僚としては初めて訪朝し、金正日総書記とクリントン大統領の訪朝を協議したことは周知の事実です。

 オルブライト氏は「安保と経済支援が保障されれば、金総書記が軍事的に譲歩する準備ができていることが分かった」と断言したうえで、「米国には人命損失の負担を抱えてまで北朝鮮を攻撃できる力がない」とし「結局(交渉を通じ)北朝鮮を『以前よりは脅迫的でない存在』に作るのが最善である」との考えを表明していました。

 しかし、クリントン前大統領は中東問題に追われていたため米大統領としては史上初の訪朝を断念せざるを得ませんでした。クリントン前大統領は、機会ある度に「(オルブライト訪朝結果を基に)北朝鮮に行けば、ミサイル協定を締結できると確信していた」として、「任期中にそれが実現できなかったことが最も悔やまれる」と語っていました。

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2009年1月11日

2009年 拉致問題の行方

 オバマ政権が発足すれば、核問題は解決に向かい、それに伴い米朝関係も進展すると予測されている。
 米朝が仮に国交正常化に動き出せば、日本の外交懸案である拉致問題や日朝関係はどうなるのだろうか?

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2008年12月30日

2008年を回顧する

 今年(2008年)1年、朝鮮半島を振り返ると、前進したかと思うと、後退するという「一進一退の年」だったというのが正直な印象です。

 昨年(2007年)は、7年ぶりの南北首脳会談の開催、6か国核合意、53年ぶりの南北鉄道連結などの明るいニュースが相次ぎましたが、今年は、韓国の政権交代を機に南北関係が冷え、また、核問題も、6か国で合意した核無能力化が完了しませんでした。

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2008年12月15日

オバマ政権は「6か国」よりも米朝「2か国」を優先

 ブッシュ政権下最後の6カ国協議首席代表会合は、中国までが同意した5か国の核検証文書化に北朝鮮が最後まで抵抗し、応じなかったため合意に至りませんでした。予想とおり、金正日総書記は結局、来月20日にホワイトハウスを去るブッシュ大統領に花をもたせるような「寛大さ」を示しませんでした。「悪の枢軸国」「ならず者」「取るに足りない男」「食卓で行儀なく振舞うガキ」と罵倒され続けてきたことへの「鬱憤払い」かもしれません。もはやクリスマス・プレゼント(今後の譲歩)も「選別」(土壇場の劇的な進展)も期待できそうにもありません。

 北京を舞台にした米朝の最後の交渉は、交渉に臨んだ二人の首席代表の帰国の際の対照的なコメントを聞けば、どちらに軍配が上がったかは、一目瞭然です。ブッシュ大統領に有終の美を飾らせようと最後まで粘り強く交渉したヒル米国務次官補は最後は力尽きたのか、最終日の議長声明の場にも立ち会わず落胆の表情を浮かべながら「もう北朝鮮と2国間協議を行う考えはない」と一言述べ、一足先に北京空港を後にしました。ボスニア、コソボ紛争を調停したタフなネゴシエーターも、北朝鮮の厚い殻をとうとうこじ開けることができませんでした。

 一方の金桂寛外務次官は2日遅れで帰国の途に着きましたが、二度と会うことのないヒル次官補について「精力的で立派な外交官だった」とねぎらいの言葉をかけるほど余裕綽々でした。検証に応じないまま「参加国は10.3合意に明記された通り、寧辺核施設の無力化と重油100万トンに相当する経済、エネルギーの提供を並列的に履行することに同意する」との議長声明を取り付けたわけですから御の字だったのでしょう。

 北朝鮮の対応に失望した米国務省のマコーマック報道官は「検証の枠組みを欠く状況では今後、重油の輸送は継続できない」と述べ、「制裁」として重油支援停止の意向を表明し、この支援停止については「北朝鮮を除く5カ国が一致している」と、北朝鮮への揺さぶりに出ましたが、金桂寛次官から「米国の重油支援は終わっているわけだから、腹いせで言ったのだろう」とあしらわれる始末でした。

 中国首席代表が閉会の際に発表した議長声明には拘束力はないものの、ヒル次官補も同意し、かつ議長声明の発表の場に代理としてソン・キム国務省核担当特使が同席していたわけですから、これを反故にすることは、米国の国際的な信義にかかわるだけに容易ではありません。中国の顔を潰し、かつ北朝鮮が警告しているように無能力化の停滞を招きかねないだけに実行に移せるかどうかは甚だ疑問です。

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2008年12月 8日

ブッシュ政権下最後の6か国協議

 今日(8日)から10日まで北京で6か国協議首席代表会議が開かれ、核検証に関する合意文書の作成を目指します。核検証方法をめぐる米朝の溝が深いだけに合意が得られるかどうか微妙です。

 第4回6か国協議共同声明(05年9月15日)では「朝鮮半島の検証可能な非核化である」「北朝鮮はすべての核兵器と既存の核兵器を放棄する」ことが盛り込まれています。また、検証のメカニズムについては08年7月10日~12日に開催された首席代表者協議では以下のようなコンセンサスをとりまとめた成果文書が発表されています。

①朝鮮半島の非核化を検証するため、6か国協議の枠組みの中に、検証メカニズムを設置する。

②検証メカニズムは6者の専門家により構成され非核化作業部会に対し責任を負う

③検証メカニズムの検証措置には、施設への訪問、文書の検討、技術者との面談、及び6者が合意するその他の措置が含まれる。

④必要な場合には、検証メカニズムは、IAEAより助言及び支援を受けることができる

⑤検証の具体的な計画及び実施は、非核化作業部会により決定される。

 ここで問題になるのが、検証方法の扱いです。

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2008年12月 1日

オールストップの南北関係

 北朝鮮は11月24日の通告とおり、12月1日から軍事境界線での陸路・鉄道の通行を制限、遮断しました。この結果、金剛山観光に続き、開城観光も中断し、南北の列車往来も全面ストップしました。12月1日からは1日19回あった南北出入りも3回に制限され、1回の通行人員と車両も500人から250人に、200台から150台に制限されることになりました。南北の経済協力の象徴である開城工業団地でも韓国側常駐員は半減し、前途が不安視されています。

 北朝鮮の一連の強硬措置は「核の解決なくして開城工団事業の拡大は困難」との金夏中統一部長官の3月19日の発言に端を発し、金泰栄合参議長の「先制攻撃発言」(3月27日)でピークに達しました。4月1日には李明博大統領の「非核・開放・3000」政策を猛烈に批判し、李大統領への個人攻撃を始めました4月3日には韓国軍の38度線通過を不許可という実力行使に出ました。

 その後、韓国の歴史教科書の「北朝鮮主敵論」の復活、前政権が調印した南北共同宣言の否定や金剛山観光客射殺事件の発生、女スパイ事件の摘発、金正日政権打倒ビラ等を問題視し、南北の交流・協力の中断を予告していました。そして、11月6日の「自由民主主義体制で統一するのが最終目標である」との李大統領の発言で、怒りは頂点に達し、今回の措置となったようです。

 北朝鮮の「南北関係遮断措置」によって、中断に追い込まれた金剛山観光と開城観光、操業の危機に瀕している開城工業団地の現状、中断した南北往来鉄道の状況や南北の経済交流の現状を整理してみることにします。

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2008年11月20日

オバマ政権の外交ブレーン、オルブライト元国務長官の「北朝鮮観」

 クリントン政権下で国務長官を務めたマデレーン・オルブライト・ジョージタウン大教授が先にワシントンで開かれた金融サミットではオバマ次期大統領の外交代理を務めていました。と同時にオルブライト氏は民主党大統領候補予備選の際にヒラリー・クリントン候補の外交顧問を担っていたほど次期国務長官が有力視されているヒラリー上院議員とも非常に緊密な関係にあります。

 そのオルブライト氏は今年1月に出版した著書「大統領当選者宛に送るメモ」の中で北朝鮮問題について触れ「ブッシュ政権は北朝鮮との対話を拒否しつづけ、北朝鮮の核実験に衝撃を受けた後、外交を再開し、ようやくクリントン前政権が成し遂げた核凍結に戻ってきた」と米朝直接交渉に消極的だったブッシュ政権の対応を批判していました。 その上で「次期大統領は、北朝鮮との交渉を断れば、米国の安全保障と北朝鮮の人権改善いずれも逃してしまうとの点を肝に銘じるべきである」と米朝対話の必要性を強調していました。

 オルブライト氏は2000年10月23日に平壌を米国の現職閣僚としては初めて訪問し、金総書記と会談。その結果として「安保と経済支援が保障されれば、金総書記が軍事的に譲歩する準備ができていることが分かった」と断言していました。また「米国には人命損失の負担を抱えてまで北朝鮮を攻撃できる力がない」とし「結局(交渉を通じ)北朝鮮を『以前よりは脅迫的でない存在』に作るのが最善」との考えを表明していました。

 金総書記個人についても「合理的かつ知的で、情報を熟知している人物である」と評価していました。さらに「金委員長は晩さん会の途中、ワインをつぐウエーターに出て行くよう注文し、酒を競争的に飲む北朝鮮の風俗から私を保護してくれた思いやりのある人」とまで持ち上げていました。

 以下は、米朝関係のキーマンと目されるオルブライト元国務長官の訪朝後に出演したABC放送とPBS(2000年10月30日)での発言です。

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2008年11月 8日

オバマ当選で米朝はどうなる

 オバマ候補が次期大統領に当選したことで核問題と米朝関係は新たな局面を迎えそうです。米民主党の大統領選挙公約には北朝鮮の非核化、南北関係改善支持、そして北朝鮮人権などが「米国の新たな約束」として盛り込まれています。中でも最優先課題は、核問題です。オバマ次期大統領自身も選挙期間中に核問題を重視する発言を繰り返してきました。

 北朝鮮のシリアへの核拡散疑惑が浮上した際には「北朝鮮と直接対話しないブッシュ政権下で進行した出来事」(4月25日)とブッシュ大統領の失態と批判しました。北朝鮮が核施設の無能力化作業を始めた時は「我々が対話しない間、北朝鮮は核を8個持ってしまった。対話を開始すると、核兵器システム解体の可能性に到達した」(7月23日)と対話の重要性を強調していました。そして先のテロ支援国指定の解除についても「核兵器計画放棄に向けたステップである」(10月13日)と評価していました。

 オバマ氏は昨年7月、「大統領になれば、最初の年にイラン、シリア、キューバ、ベネズエラらの指導者と会う用意があるか」との質問に「会う用意がある」と語っていました。大統領に当選すれば、「首脳間の対話にも積極的に、かつ無条件応じる」と、核問題の早期解決のために金正日総書記と会談する用意があることを何度も鮮明にしています。

 オバマ氏の判断は「2000年に平壌を訪問し、金正日と会談した結果、北朝鮮の安保と経済支援が保障されれば、金正日が軍事的に譲歩する準備ができていることがわかった」とのクリントン政権の外交政策推進者だったオルブライト元国務長官の進言に基づいています。このようにオバマ次期大統領は対話重視の穏健路線を取っていますが、それでも今年2月、上院外交委員会の場で「北朝鮮に幻想は抱いていない。我々は朝鮮半島の非核化を守るため断固でなければならないし、そのためには譲歩してはならない」とも語っています。

 「オバマ外交」の政策を立案し、推進するのは副大統領となるジョセフ・バイデン上院議員です。ブッシュ大統領の右腕であるチェイニー副大統領が圧力政策を主導してきたとすれば、バイデン次期副大統領もオバマ氏同様に対話重視派です。

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2008年10月31日

日朝、再び「持久戦」か

 漆間巌官房副長官は10月29日の拉致問題対策本部関係省庁対策会議で拉致問題解決の手段として行なっている経済制裁について「今の北朝鮮への制裁を検証した結果、北朝鮮が痛痒を感じないものであって、圧力にはならない」と自省したうえで、「大事なのは北朝鮮が本当に困る圧力をかけられるかどうかだ。今後、工夫する必要がある」と発言していました。

 漆間巌副長官は04年8月から07年8月まで警察庁長官のポストにありましたが、「北朝鮮への圧力を担うのが警察。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている」と述べるなど圧力路線の陣頭指揮を取ってきたことで知られています。

 小泉訪朝で拉致問題がクローズアップされた過去6年間、日本政府はこれまで北朝鮮に対して様々な経済制裁法案を成立させました。

 キャッチーオール規制と改正外国為替法(北朝鮮への送金を規制する法律)を2002年に成立させたのを皮切りに2003年には外国船舶安全性検査(PSC)を実施しました。また、2004年には特定船舶入港禁止法(万景峰号の入港などを禁止する法律)を成立させ、2005年には改正油濁損害賠償法(保険会社に未加盟の船の入港を禁止する法律)を通しました。保険付き郵便物(限度額48万円)の検査を強化し、郵便窓口で送金主への金額の確認。郵便物の開封を義務付けました。また、外国為替及び外国貿易法に基づき、国内の輸出関連企業100社を対象に軍事転用されていないか、抜き打ち検査なども行なってきました。

 そしてこれらの規制法案とは別途に、2004年12月には食糧支援など人道支援の凍結を決め、さらに2006年7月には万景峰号の入港を禁止しました。2ヶ月後の9月には資金の移転防止措置も講じました。そして、10月には北朝鮮の核実験との関連で全ての船舶の入港禁止と北朝鮮製品の輸入禁止、北朝鮮からのチャーター便の乗り入れ禁止などの制裁措置を発動しました。朝鮮総連に対しても締め付け、規制を強めてきました。

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2008年10月20日

米朝はこれで終わりか

 核検証で対立していた米国と北朝鮮はヒル米国務次官補の訪朝(10月1-3日)の結果、北朝鮮の検証受け入れと米国のテロ支援国指定解除で妥協しました。

 北朝鮮が「10.3合意」と呼ぶ「平壌合意」を検討した結果、ブッシュ大統領は10月11日に日本の反対を押し切り、テロ支援国指定を解除しました。これを受け北朝鮮も14日から核施設の無能力化作業を再開させました。追放されていたIAEA要員も現場に復帰し、再処理施設への封印と監視カメラを再設置しました。米国務省のマコーマック報道官によると、寧辺での無能力化作業は中断前よりも前進しているようです。

 無能力化は、5メガワット実験用原子炉、放射化学実験室(再処理施設)、核燃料棒製造施設など寧辺にある施設が対象で、11の無能力化工程のうち8工程がすでに終了しています。残りは原子炉内の使用済み燃料棒の取り出しと未使用燃料棒の処理(海外搬出)など3工程で、9工程目の使用済み核燃料棒の抜き作業は、8千本のうち60%にあたる4,800本がすでに取り除かれています。取り抜き作業は1日に200本のペースでやれば今月中に終了します。しかし、北朝鮮の処理能力は1日80本が限界との説もあります。そうだとすれば、40日はかかり、完了は11月下旬にまで延びます。

 今回の「平壌合意」は任期中の外交成果を焦るブッシュ大統領の「一方的な譲歩」の賜物というのが大方の見方です。一部には「ブッシュ大統領は北朝鮮の脅しに屈した」との批判の声もあります。米紙ワシントン・ポストが再度の核実験を阻止するため妥協を受け入れざるを得なかったと書いているからです。

 ブッシュ政権はこれまで①申告以外の施設への検証②事前通告なしの施設への接近③サンプル採取④濃縮ウラン疑惑への検証⑤シリアなどへの核拡散疑惑の検証を強く要求し、完全で透明性のある検証を受け入れなければ、テロ支援国指定を外さないと言っていました。

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2008年10月 5日

ブッシュ政権最後の米朝交渉は妥結か、決裂か

 ヒル次官補の訪朝(10月1-3日)で米朝協議が妥結したのか、それとも決裂したのか、依然として不透明のままです。平壌から戻ったヒル次官補は韓国では「(金桂寛外務次官ら北朝鮮側と)実質的で長時間、詳細な議論をした」とだけ述べ、具体的内容については「帰国してライス国務長官らに報告するのが先決だ」として詳細を明らかにしませんでした。

 ヒル次官補自身から直接報告を受けた韓国の6か国協議首席代表である金塾朝鮮半島平和交渉本部長は「(核計画申告の)検証について妥結が成立したのか」との質問に「そうは言えない」と語り、検証問題で合意が見られなかったことを暗に示唆していました。しかし、同じくヒル氏から報告を受けた斎木外務省アジア太平洋州局長は「(米朝協議は)決裂したわけではない」と含みのある発言をしていました。

 一説では、ヒル次官補は難航している検証問題では検証対象を、北朝鮮がすでに申告している施設(寧辺の核施設など)に限定し、核兵器や濃縮ウラン計画、拡散活動などの未申告の施設・活動については次の段階で検証を行なうという「二段階案」を提示したと言われています。「先寧辺のプルトニウムの検証、後濃縮ウランの検証」というこの「新提案」は、検証内容を6月の申告の範囲内に限定することで北朝鮮の面子も、同時に未申告の問題を「検証パッケージ」に含めることで米国の顔も一応保てる「折衷案」と言えます。この提案を北朝鮮が受け入れ、検証計画を6か国協議議長国の中国に提出すれば、米国は直ぐにでも北朝鮮が求めているテロ支援国指定解除に応じる考えのようです。

 検証に関する米国の妥協案についての北朝鮮からの回答は明らかにされていませんが、韓国の聯合ニュースが4日伝えたところによると、北朝鮮はヒル次官補に対して米国の提案を受け入れる条件として在韓米軍を含む韓国側の査察を要求したとのことです。北朝鮮は核無能力化作業中断を表明した8月26日の外務省声明で検証問題について「南朝鮮(韓国)とその周辺に米国の核兵器がなく、新たに搬入されたり、通過していないということを確認する検証が、われわれの義務履行に対する検証と同時に進められるべきだ」とすでに南北同時査察を主張していました。

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2008年9月24日

麻生政権で日韓、日朝は?

 自民党総裁の麻生太郎氏が24日総理に選出され、麻生政権がスタートしました。

 中国、韓国は歴史認識問題や領土問題ではタカ派の麻生政権になっても日中、日韓関係が後戻りすることはないと期待を寄せていますが、その一方で麻生総理の言動を相当警戒しているのも事実のようです。

 両国が麻生総理に不安を抱いているのは歯に衣を着せないこれまでの大胆不敵の言動が原因のようです。とりわけ韓国では麻生総理は「韓国人の記憶に残る妄言を口にする政治家として認識される人物」とのレッテルを貼るほど嫌っています。韓国メディアの中には「彼は韓国の歴史を否定する妄言を繰り返しながら、心から謝罪をしたことのない人物だ」と痛烈な批判を展開するメディアもあるほどです。

 2003年5月の東京大学での講演で「創氏改名は朝鮮人が求めたもの、ハングルは日本人が朝鮮人に教えてあげたものであり、義務教育も日本が始めた。正しいことは歴史的事実として認めたほうが良い」と言い放ったことをどうやら問題にしているようです。

 また、中韓両国とも靖国参拝問題では相当ピリピリしています。

 麻生総理は自民党総裁選の最中に行われた外国特派員協会での会見で「総理になったら靖国を参拝するのか」と外国人記者から聞かれた際に他の4候補は「現状では行かない」と慎重な発言をしていましたが、麻生さんだけは「そのことについては『中央公論』に書いてあるので読んでもらいたい」と即答を避けていました。

 しかし、中国も韓国も麻生さんが2005年5月に英国を訪問し、オックスフォード大で講演した際「靖国神社参拝は正しく、今後も続けなければならない。靖国神社の軍人がA級戦犯と決定したのは、日本ではなく、占領軍が決定したものだ。靖国神社参拝を問題にする国は世界で韓国と中国だけだ』と中韓両国を強烈に批判していたことを忘れてはいないようです。靖国問題への麻生総理のスタンスはどちらかと言うと、小泉元総理に近いような気がします。従って、麻生政権になれば福田政権下で沈静化した靖国参拝問題が再燃するのではと中韓両国とも憂慮しています。

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2008年9月20日

いつまで続く金総書記の「消息不明」

 「金正日総書記が朝鮮人民軍1319部隊を視察した」と、朝鮮中央通信社によって8月14日に視察写真が公開されたのを最後に金総書記はぷっつりと消息を絶っています。姿を現さなくなって昨日(19日)で35日目となりました。

 8月中旬までは猛暑の中、ほぼ連日軍部隊を視察するなど精力的に動き回っていただけに突然の「消息不明」は理解しがたいです。避暑やバカンスが理由だとしても、昨年の場合9月は1日からは部隊視察を始めていました。昨年は、9月1ヶ月の間に部隊視察、工場視察、公演鑑賞さらには訪朝したベトナム、中国要人らとの会談など延べ10回は表に出てきています。それだけに今年は9月になっても、全くといっていいほど音沙汰がないのは極めて不自然です。まして、何の理由もなく年初から準備してきた建国60周年の一大行事を欠席するとはとても理解しがたいです。

 金総書記が1994年に金日成主席死去により権力を継承して以来14年間、長期間にわたって姿を見せなかったケースは過去17回あります。ここ4~5年では、米国によるイラク攻撃開始時の2003年5月からの50日間、ミサイル発射実験があった2006年7月からの40日間、3ヶ月後の核実験の際の25日間という「記録」があります。この場合はいずれもそれなりの理由というか大義名分がありました。例えば、これまでの最長記録は、1994年7月の金主席死去後の87日間ですが、これは喪に伏せていたからだと理解されていました。

 肝心要の建国式典に欠席したことから金総書記の現状について「健在説」「重病説」「回復説」まで様々な憶測が流れていますが、正確なことは何一つ分からないのが実情です。長男の金正男氏が建国記念日の二日後に北朝鮮を出国し、生活拠点のある中国に戻ったことから「回復している」との見方が有力ですが、「重病をカモフラージュするための工作」との冷やかな見方もあります。いずれにしても本人が表に出て、健在ぶりを示さない限り、いつまで経っても「重病説」はついて回ることになります。

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2008年9月15日

病状次第で「ポスト金正日」は決まる

 動静が注目されていた「秋夕(チュソク)」と呼ばれる9月14日の旧盆行事に「重病説」が取り沙汰されている金正日総書記は結局姿を現しませんでした。

 労働新聞が14日付けに長文の「正論」を載せ、その中で「私も疲れ、名節の日ぐらいは家族と一緒に休みたいと思うこともあるが、人民や将兵らのことを考えると…….」と思わせぶりの文言があったので、「もしかしたら」と思いましたが、やはり出るに出られない状況にあるのは間違いないようです。脳卒中にせよ、心臓発作にせよ、倒れたのが事実ならば金総書記の病状は予想外に重いということかもしれません。

 これにより「自分で歯を磨ける程度回復した」「手を貸せば立ち上がれる程度。急速に回復している」「言語にはまったく障害がなく、動くことは可能だと把握している」との一連の韓国筋の情報も「三男の正雲が重病に陥ったそのショックで建国記念日は欠席した」などの「怪情報」も単なる「推測」や「ガセ」に過ぎなかったことがわかります。

 平壌に支局を置いている共同通信社は14日の北京発の記事で中国筋の話として①金総書記は8月14日に脳卒中で倒れた②北朝鮮の要請を受け、中国政府が人民解放軍の軍医5人を派遣し、手術を行なった③脳卒中は回復に向かっているが、手足に障害が残っており、相当期間の静養とリハビリ治療が必要であると、伝えていました。

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2008年9月12日

14日の「秋夕」に出てくるのか

 建国60周年観閲式への金正日総書記の欠席の予兆は、この日、故金日成主席の遺体が安置されている錦寿山記念宮殿(主席宮殿)への参拝を取り止めたことからありました。党・軍幹部らを引き連れての金総書記の言わば父親への「墓参り」は50周年の時も、55周年の時も、建国記念日の9月9日0時を期して行なわれてきました。これ一つとっても、金総書記に「異変」が生じていたことは十分に推測がつきます。

 金総書記の「異変」について、韓国の情報機関、国家情報院(国情院)は10日の国会情報委員会で①先月14日以降に循環器系に異常が生じ倒れ、手術を受けた。②集中治療の結果、病状はかなり好転している。③意識もあり、意思疎通もできるし、動くこともできる。④一部言語障害と体の一部に麻痺の症状はあるが、半身不随の状態ではない。⑤病名については、脳卒中または脳いっ血、脳出血なのか特定できない。⑥中国とフランスなど外国の医師が治療にあたっている、と報告していました。

 韓国政府は10日夜に緊急安保関係閣僚会議で金総書記は「脳血管疾患による発作から回復中であり、現在は深刻な状況ではない」と結論付けました。北朝鮮のNO.2の金永南最高人民会議常任委員長も訪朝中の共同通信社社長との会見の席で「問題はない」と語ったそうです。朝鮮語の「問題はない」という意味は「たいしたことではない」あるいは「心配はいらない」というふうに受け止められますが、国情院の情報と金委員長の発言とおりならば、現在は重体ではなく、回復に向かっているということになります。

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2008年9月 7日

核封印解除した北朝鮮の「本気度」を占う

 北朝鮮は米国が8月11日に履行すべきテロ支援国指定解除を先送りしたことに反発して、3日後の14日に対抗措置として核施設の無能力化作業を中断しました。「核計画の検証に応じるまでは解除しない」との米国に対して「解除しなければ、無能力化はやらない」と、北朝鮮が応酬したわけです。2年前の金融制裁解除をめぐるパターンの再現です。

 無能力化作業の中断は米国に事前通告されていましたが、米国や日本、韓国など6か国関係国は事態を静観することを申し合わせ、この事実を伏せていました。圧力をかけているはずの米国が逆に圧力をかけられているというのでは様にならないからでしょう。

 北朝鮮もまだブッシュ政権に未練があるのでしょうか、北朝鮮もまた、22日からのニューヨークでの米朝実務者協議での米国の譲歩に一抹の望みを託し、26日まで公表を控えていました。ところが、米国が検証問題で譲歩しなかったことから堪忍袋の尾が切れたのか26日に外務省報道官を通じて無能力化作業中断の事実を公表してしまいました。それどころか、「寧辺核施設などを近く原状回復する措置を考慮することになる」と、さらなる「脅し」をかけました。

 この北朝鮮の対応を米国務省のウッド副報道官は検証手順をめぐる交渉を有利に運ぶための「いつもの駆け引き」とみなし、韓国もまた、「米国をはじめ他の当事国を圧迫し、核検証体系交渉で譲歩を得ようという典型的な戦術」(6か国首席代表の金塾朝鮮半島平和交渉本部長)と、この時点ではまだまだ余裕のあるところを見せていました。

 ところが、9月に入ると、米FOXテレビ(電子版)は2日、複数の米政府当局者の話として、「北朝鮮が寧辺の核施設の原状回復作業に乗り出した」と伝えました。米国務省のマコーマック報道官は9月3日、北朝鮮が寧辺の核施設の無能力化措置に伴い取り外した設備類を「保管施設から移動させた」事実を認めながらも、「核施設の再建に着手したとはまだ即断できない」との見解を示しました。この時点でも米国は抗議の意を表すための「象徴的なジェスチャー」との見方を変えていませんでした。

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2008年9月 2日

福田総理辞任で再調査の行方は?

 福田康夫総理が突如辞意を表明しました。「私の手で拉致問題を解決する」との決意を表明していた福田総理の辞任は拉致問題に少なからぬ影響を与えそうです。当面、8月の北京での日朝協議で拉致被害者の再調査を約束した北朝鮮がどう出るのか、担当部署の外務省も拉致被害者家族も気がきではないでしょう。

 米国がテロ支援国指定を解除しなかったことに反発して、北朝鮮が8月26日に核無能力化作業の中断を発表した際には、日本政府は「直接的にリンクする話ではない」(町村信孝官房長官)と冷静さを装ったものの、北朝鮮が日本との協議再開に応じ、再調査で承諾したのは、米国との関係を進展させることにあっただけに米朝関係の悪化は、本来ならば日朝関係にも悪影響を及ぼす恐れがありました。

 しかし、現実にはこの問題だけで北朝鮮が日朝合意を反故にすることはできません。約束を破ったのは米国であって、日本ではないからです。テロ支援国指定解除問題は米国と北朝鮮の約束事で、日朝間の約束事項ではありません。従って、北朝鮮が米国の約束不履行を口実に日朝合意をキャンセルというわけにはいきません。

 但し、北朝鮮にその気がなければ、日朝合意をサボタージュできる格好の口実はあります。例えば、中山恭子拉致担当相の発言です。

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2008年8月26日

一連の新聞報道と「再調査」をめぐる日本の見解不一致

 拉致被害者の再調査と制裁の一部解除で合意した日朝北京協議(8月11-12日)から2週間経過しましたが、毎日新聞(8月23日付)は北朝鮮が約束した再調査について「月内にも開始される見通しが強まった」と伝えています。ところが、町村信孝官房長官は2日後の25日の記者会見で再調査開始時期について「今のところ、(北朝鮮からは)連絡はない」とコメントしていました。

 「月内開始説」の理由については「毎日」は「米国のテロ支援国指定解除を実現させるため」と米国絡みを挙げていますが、9月9日の建国60周年に渡航を規制されていた朝鮮総連の幹部を招くためには北朝鮮としても今月中には再調査委員会を立ち上げ、日本側に通告する必要があります。従って、おそらく近々北朝鮮から連絡があるものと推察されます。

 今回の再調査は「生存者発見」を前提としているというのが拉致被害者家族会への日本政府の説明でした。日朝協議終了後、斎木昭隆外務省アジア太平洋州局長は「生きている方たちを探し出して帰国につなげていくための調査だ。それについては先方も一致した認識だ」と言っていました。外務省の公式サイトにも「北朝鮮が行う調査は、拉致問題の解決に向けた具体的行動をとるため、すなわち生存者を発見し帰国させるための、拉致被害者に関する全面的な調査となる」と明記されています。

 ところが、東京新聞(8月24日付)によると、日朝協議の場で過去に行った「8人死亡、4人未入国」の再調査内容を白紙に戻すよう求めたのに対し北朝鮮側はこれを拒否したとのことです。同紙は、それにもかわらず日本側は「首相官邸の意向で合意を優先させた」と、日朝関係筋の言葉を引用して伝えていました。これが事実ならば、政府は嘘をついていたことになります。

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2008年8月19日

中山拉致担当大臣は訪朝して、「拉致」を解決できるか

 拉致被害者の家族会と支援組織の「救う会」は、日本政府が6月の北京での日朝協議で再調査を条件に経済制裁の一部解除を表明した際に「今後は政府と一定の距離を取る」との運動方針を決定したうえで「制裁が解除されれば、反対運動を行う」と決議しました。そして、7月30日からは「全被害者の帰国なしに制裁解除をするな」との運動を展開しました。再調査を条件とした制裁解除反対の理由は「北朝鮮は拉致被害者の所在を全て把握しているはずで、再調査の必要はない」(横田早紀江さん)というものから「何度も騙されてきたので、再調査は信用できない」(飯塚繁雄代表)ことに尽きます。

 北朝鮮に再調査を促すためには「行動対行動」の原則上、制裁の一部解除は止むを得ないと政府の立場に一定の理解を示した関係者ですら「制裁解除は、再調査の結果(進展)を見るまでは一部であっても先に解除してはならない」との立場でした。民主党拉致問題対策本部(中井洽本部長)にいたっては、制裁の一部解除を決めたことについて「拉致被害者の家族を見捨てるものだ。拉致事件の調査で具体的な進展がないかぎり、制裁解除を行うべきではない」と批判していました。

 しかし、政府は、8月11日に瀋陽で行われた日朝実務者協議の結果、再調査の開始(調査委員会の設置)と同時に3枚の制裁カードのうち、人的往来とチャーター便の乗り入れの規制解除を北朝鮮に約束しました。残り一枚の人道支援に限定した船舶の入港は持ち越しとなりましたが、これもいずれ日航機「よど号」乗っ取り犯らの帰国が実現すれば解禁となるようです。

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2008年8月14日

日朝協議に「秘密合意」はないのか

 中国・瀋陽での日朝協議は、拉致問題に関する再調査での日本の要求がほぼ受け入れられ、合意に達しました。

 外務省の発表では、今回実施される再調査は、①生存者を発見し、帰国させるための、拉致被害者に関する全面調査となる②調査対象は、政府認定の12人の拉致被害者と「その他に提起された行方不明者」を含むすべての拉致被害者とする③調査は、権限が与えられた調査委員会によって迅速に行なわれ、可能な限り秋には終了する④調査の進捗過程を随時日本側に通報し、協議を行い、生存者が発見される場合には知らせる⑤日本側が関係者との面談、関係資料の共有、関係場所への訪問などを行い、調査結果を直接確認できるの5項目から成っています。

 砕いて言うならば、①これまでの「8人死亡、4人未入国」という調査結果を白紙に戻して、再調査を行ない、必ず拉致被害者を探し出す②発見された「特定失踪者」やその他の行方不明者はいずれも拉致被害者である③調査委員会は人民保安省(日本の警察)よりも権威ある機関(党の機関か国家安全保衛部など)が行い、2~3ヶ月で終え、核合意の第2段階終了時の10月30日までに間に合わせる④生存者は、最終調査結果として発表するのではなく、見つかればその都度日本側に知らせる⑤調査の結果、死亡ということならば、日本側に検証、確認させるというふうに解釈できます。

 北朝鮮が再調査の前提(生存者の発見)と方式を受け入れたことへの見返りとして日本は制裁の一部解除を前倒しして、再調査の開始(調査委員会の立ち上げ)と同時に3枚ある制裁カードのうちの二枚(人的往来の規制とチャーター便の乗り入れ規制の解除)を切ることにしました。

 日本政府は当初、再調査開始時に人的往来の規制だけを解除し、チャーター便は再調査で進展があった場合に許可し、日本の納得する形で再調査が終了した暁に人道支援物資輸送に限定した船舶の入港規制を解除する方針でした。3段階解除方式から2段階に変えただけで北朝鮮が上記のような再調査の実施に同意したわけですから御の字です。高村外相が「前進」と評価し、拉致被害者家族会の前代表の横田滋さんも前倒しの制裁解除には異議を唱えたものの「具体的な方法が決まったのは良かった」と感想を述べたのもある意味では当然だと思います。

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2008年8月11日

どうなる?日朝「瀋陽協議」の行方

 今日(11日)から中国・瀋陽で日朝公式協議が2ヶ月ぶりに再開されます。6月の北京での協議では、注目の拉致問題で北朝鮮は「拉致問題は解決済み」との従来の立場を変更し、拉致問題解決に向けた具体的行動を取るための再調査の実施を約束しました。その再調査も、交渉人の斎木昭隆外務省アジア太平洋州局長によると、「生存者を発見し、帰国させるための調査」となります。北朝鮮はまた、日航機「よど号」ハイジャック犯らの引き渡しにも協力の用意があることを表明しました。

 一方の日本は「北朝鮮が拉致被害者の帰国を含め、拉致問題の最終的な解決に向け、早期に具体的な結果が得られることが重要である」(斎木局長)との日本側の主張に同意し、再調査に応じたこと、また「よど号」容疑者らの引き渡し協議に応じる意向を表明したことにより北朝鮮に対する制裁の一部解除を約束しました。具体的には1)人的往来の規制解除、2)航空チャーター便の規制解除、3)民間の人道支援物資に限っての北朝鮮船舶の入港解禁を約束しました。

 従って、今度の瀋陽協議は、北京協議での双方の約束事項を履行するための詰めの協議となります。高村正彦外相の言葉を借りるならば、「行動対行動」に移すための実務協議となります。

 報道によると、日本政府は瀋陽協議に先立ち、拉致被害者家族会が「再調査の結果が有効なものになるまで、一部であろうと制裁を解除してはならない」(飯塚繁雄代表)と、猛反発している制裁解除について拉致被害者の再調査などに対応して段階的に緩和・解除する方針を決めたようです。まず、北朝鮮が再調査に着手した段階で、人的往来の規制を解除する。続いて調査が進展すれば航空チャーター便を容認する。最後に日本の納得する形で再調査が終了し、併せて「よど号」犯の引き渡しが完了すれば人道支援に限った北朝鮮船舶の入港を認めるとの3段階方式です。

 そして、再調査の方法については、一時検討された日朝共同調査は①日本が主導権を握れない②北朝鮮では自由な捜査はできない③へたをすると、北朝鮮の捜査結果を正当化させるアリバイつくりに利用されかねない等の理由から見送られ、その代わりに北朝鮮の再調査を日本が検証する方法を検討しています。具体的には、日本政府関係者が北朝鮮に入り、1)調査状況を聴取できるようにする、2)途中経過の報告を求める、3)関係者からの聞き取りができるようにすることを申し入れるようです。

 どうやら拉致問題も核問題と同様に検証方法が焦点となりそうです。北朝鮮は核申告の検証には原則的に同意していることから、拉致問題でも拒む理由はないと思います。唯一問題があるとすれば、聞き取り対象の関係者として辛光洙(シン・グァンス)容疑者ら拉致実行犯や拉致を指令・実行した特殊機関の責任者や拉致被害者を隔離していた招待所の関係者らへの聞き取り(事情聴取)を求めた場合でしょう。

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2008年8月 7日

北京五輪での南北の金メダル予想

 北京五輪が8月8日から開幕する。韓国からは389人、北朝鮮からは134人から成る選手団が北京に派遣される。南北の金メダル獲得種目及び選手を予想する。
 
韓国:金メダル10個、総合10位が目標

 韓国の五輪出場は1948年のロンドン大会から。金メダルを初めて獲得したのは1976年のカナダ・モントリオール。レスリングで1個(総合で19位)を獲得した。1980年のモスクワ大会はボイコットし、84年のロサンゼルス大会で金メダル6個(総合10位)を獲得して量産体制に入る。1988年の地元ソウル大会では倍の12個(4位)を獲得。92年のバルセロナでも12個(7位)。96年のアトランタからは7個(10位)、2000年のシドニー8個(12位)、そして前回2004年のアテネで9個(9位)と、10個を割っていた。 今回の北京大会では選手団389人(選手267人、役員112人)が出場する。選手267人の内訳は男子160人、女子107人である。金メダルの獲得目標は10個以上。総合10位内を目指す。金メダル有望種目はアーチェリー、テコンド、柔道、バドミントン、重量挙げ、水泳、レスリング、体操、射撃の9種目である。

 ●アーチェリー(2~3個)

 前回のアテネでも金3個、銀1個を獲得したことから今回も最低でも2個は確実視されている。男子では世界選手権覇者のイム・ドンヒョン選手(22歳)が、女子ではアテネ五輪個人と団体の優勝者パク・ソンヒョン選手(25歳)と過去W杯2回優勝のユン・オッキ選手(23歳)の金メダル獲得が有力視されている。

 ●テコンド(2個)

 正式種目となった2000年のシドニーでは金3、銀1個。前回のアテネでも金2、銀2個と、2回連続して4つのメダルを獲得した。韓国の国技だけに今回も金メダル2個は間違いないとみられている金メダル候補は男子では68キロ級のソン・テジン(20歳)、80級以上のチャ・ドンミン(22歳)の二人。女子では57級のイム・スジョン(22歳)と67級のファン・ギョンソン(22歳)の二人。ファン選手は2006年アジア大会金メダリストで、05年、07年の世界選手権大会での金メダリストでもある。

 ●柔道(1個)

 シドニーを除いて1984年のロサンゼルス大会から五輪では金を獲得している種目である。アテネでも金、銀、銅それぞれ1個メダルを獲得するほどのメダル獲得種目である。 北京では2人の男子選手に期待が集まっている。60キロ級に出場するチェ・ミンホ選手(28歳)と73キロ級のワン・ギチュン(20歳)選手。アテネ銅メダリストのチェ選手は韓国で「小さな巨人」と称されている。日本からは60キロ級には平岡拓晃選手が、73キロ級には世界選手権銀メダリストの金丸雄介選手が出場する

 ●バドミントン(1個)

 1992年のバルセロナで五輪種目に採用されて以来2000年のシドニーで金メダル獲得に失敗した以外は、4つの大会で延べ金5個、銀6個、銅3個を獲得してきた、韓国得意の種目である。前回のアテネでも金1、銀2、銅1個を獲得している。今回も男子ダブルス、女子ダブルス、男女混合ダブルスで金メダルを狙っているが、前回のアテネで金メダルを獲得した男女混合ダブルスでイ・ヨンテ、イ・ヒョジョン組での獲得が有力視されている。個人では男子エースのイ・ヒョンイル選手(28歳)に期待が集まっている。

 ●重量挙げ(1個)

 アテネでは金が取れず、銀2個に終わったが、今回は、昨年の世界重量挙げ選手権女子75キロ級で優勝したチャン・ミラン選手(25歳)に金メダルの期待がかかっている。

 ●水泳(1個)

 前回のアテネではメダルゼロだった水泳では男子400メートル自由形で今年最高記録を出したパク・テファン選手(19歳)が水泳陣の中では金メダルに最も近い選手として注目されている。

 ●レスリング(1個)   

 アテネ金メダリストのチョン・ジヒョン(25歳)がグレコローマン60キロ級で連覇を狙う。日本からは60キロ級には06年のアジア大会優勝者の笹本睦選手が出場する。

 ●体操(1個)  

 体操では男子の平行棒に期待がかかっている。アテネ銀メダリストのキム・デウン(24歳)と銅メダリストのヤン・テヨン(28歳)の両選手が金メダルに挑戦する。キム選手は第40回機械体操選手権大会平行棒金メダリストでもある。

 ●射撃(1個)

 1992年のバルセロナでは女子の10mエアライフルと男子の50mピストルで金メダルを獲得した韓国だが、以後の大会では金メダルに縁がなかった。今回は、男子のチン・ジョンホ選手(29歳)がエアライフル10mと50mピストルで16年ぶりに金メダルを狙う。

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2008年8月 4日

中山恭子拉致担当相起用の狙いは何か

 福田康夫総理は1日の内閣改造で、官房長官が兼務していた拉致問題担当相を独立させ、参議院議員の中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)を任命しました。

 拉致問題担当相が新設され、中山恭子氏が首相補佐官よりも権限のある閣僚に起用されたことで拉致被害者家族会では「補佐官と大臣では情報量や発言力が全然違う。非常にうれしい」(飯塚繁雄会長)「北朝鮮に強いメッセージを伝えることができる」(増元照明事務局長)と熱烈歓迎し、拉致担当大臣としての中山氏に大いに期待を寄せています。

 今回の内閣改造は、安倍政権の色を払拭させ、自前の政権をつくることが主な目的でした。だからこそ、官房長官と外相、厚生労働相と総務相以外は総入れ替えしたわけです。ところが、安倍政権のシンボル的存在であった中山さんは残留させただけでなく大臣に昇格させました。それも、自民党参議院側からの要請ではなく、福田総理の一本釣りによるものです。これを拉致問題解決に向けた意欲の表れとみるべきか、それとも、支持率アップのための単なる「客寄せパンダ」なのか、あるいは自分の手による解決を断念したことへの「保険」とみるべきか、評価は分かれるところです。

 福田政権になって北朝鮮外交は安倍前政権の圧力から対話重視にウェイトが置かれています。対話による事態打開を目指すならば安倍政権の圧力政策の旗手でもあった中山さんを更迭して、対話重視派の山崎拓自民党副総裁の派閥に属する平沢勝栄議員か、福田総理に近い衛藤征士郎議員のいずれかを起用するという奇策もあったはずです。

 平沢議員は拉致議員連盟の前事務局長や衆議院拉致問題特別委員会委員長の座にありましたし、また、福田政権誕生の功労者でもある衛藤議員も今春結成された自民党朝鮮問題小委員会委員長に就いており、キャリアにおいても両人とも拉致担当大臣としての資格は十分でした。しかし、福田総理は最初から中山さんしか頭になかったように思われます。

 平沢議員の場合は、2004年に派閥領主の山崎副総裁の訪中に同行し、北朝鮮側と極秘接触したことで「家族会」や「救う会」、「拉致議連」から反発を買ったことや、衛藤議員の場合も、自民党朝鮮問題小委員会が拉致問題よりも日朝国交正常化を優先させていると「家族会」から懐疑的にみられていることがネックにはなっていますが、それが理由ではないように思われます。

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2008年8月 1日

「二人三脚」の米朝の目の先は8月11日ではなく、10月30日!

 北朝鮮のテロ支援国家指定解除まで残り10日となりました。完全にカウント・ダウンに入りました。

 ブッシュ政権が6月26日に指定解除を米議会に通告してから45日間、議会には賛否を審議する猶予が与えられていましたが、下院では下院外交委員会傘下のテロ・非拡散・貿易小委員会委員長で民主党所属のシャーマン議員が7月3日に共和党の議員と共同で提出した決議案(検証可能な核申告書提出以前のテロ支援国指定解除に反対する法案)が、民主党のペロシー下院議長が同じ民主党のハワード・バーモン下院外交委員会委員長に対して「議題にして審議しないよう」指示したことで事実上霧散してしまいました。

 上院では昨日(7月31日)から上院軍事委員会主催の「北朝鮮聴聞会」が開かれ、6カ国協議の米首席代表のヒル国務次官補が出席し、核施設の不能化作業の進展状況と核計画申告書の検証問題について報告しました。この公聴会を最後に議会は4日から休会に入りますので議会によるテロ支援国指定解除阻止はもはや不可能です。逆に米議会は、北朝鮮の使用済み燃料棒の除去費用として新たに5千万ドルの予算追加を承認するなどブッシュ政権の対北朝鮮核交渉を後押ししています。

 しかし、ブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)のワイルダー・アジア上級部長は7月30日、北朝鮮が核計画申告内容を検証する作業に早期に協力しなければ指定解除を延期すると警告していました。ワイルダー部長は、北朝鮮が米国の要求に同意しなければ、11日の時点で「解除は起きない」と明言しました。

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2008年7月25日

8月11日はテロ支援国指定解除と制裁解除の日?

 日本政府が期待していたシンガポールでの日朝外相会談は不発に終わりました。北朝鮮は非公式、公式に関わらず日本との会談を一切拒みました。それでも、朴宜春外相は6か国外相会談の場で隣席の高村正彦外相から「諸懸案を解決して日朝関係を進めよう」と声を掛けたところ「そうしよう」と答えたようです。

 また、朴外相はASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議で高村外相が「拉致問題を含めた日朝関係の進展が必要だ」と訴えたのに対して「日朝では話し合いが行われている。協議が再開されたのは良いことだ」と発言したそうです。6月の日朝公式協議及び合意を少なくとも肯定的に捉えています。

 それにもかかわらず、北朝鮮は再調査の方法を話し合うための日朝協議に応じようとはしません。また、応じない理由についても一切明らかにせず、沈黙を守ったままです。従来ならば「金剛山観光客射殺事件」で態度を硬化させている韓国を孤立、揺さぶるためにも日本に秋波を送ってくるのですが、今回に限っては今のところ慎重です。

 しかし、よく考えてみると、拉致問題だけでなく、核問題でも、北朝鮮は米国が6月に提出した核申告検証手続きの草案に対して回答を保留したままです。検証作業を早期に開始するための非核化作業部会の日程についても回答しません。常識に考えて、現状のままだと議会通告から45日目の8月11日に発効するはずのテロ支援国家指定解除は見送りとなります。現にライス米国務長官はシンガポールで「45日経過時に必ずしも解除を決める必要はない」と述べ、北朝鮮が検証計画に合意しない場合、テロ支援国指定の解除を遅らせる可能性を示唆していました。

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2008年7月22日

「金剛山射殺事件」の謎

 北朝鮮の観光名勝地、金剛山で起きた韓国人女性観光客射殺事件は発生(7月11日)から10日過ぎても、真相は藪の中です。北朝鮮が韓国側の調査団派遣や南北合同調査による真相究明を拒んでいることが原因です。事件発生から現在まで解明された疑問と今なお、未解明の問題には以下のようなものがあります。

 ▲解明された疑問

 ①被害者のパク・ワンジャさんが午前4時半ごろ1人で散歩に出た謎

 当日は日の出の時間が早朝5時~5時10分頃でした。おそらく日の出を見るために海辺に散歩に出たのではないかと推測されます。

 ②立ち入り禁止地域の北朝鮮側軍事保護施設地域に入った謎

 観光統制区域と軍事保護施設区域を仕切っている緑色の鉄製フェンスに「立ち入り禁止」の看板がなかったこと、被害者が韓国の観光会社から事前レクチャーを受けていなかったこと、さらには早朝時間帯に監視員が不在であったことから、知らないまま、あるいは好奇心から日の出がよく見られる穴場を求め入った可能性が考えられます。

 ③3メートルの高さの鉄製フェンスを50代中年の女性が越えるのは無理との謎

 フェンスは海岸まで張られてはおらず、海岸から30メートル手前の所で途切れていました。フェンスの横は高さ約1メートルぐらいの上りの砂丘になっており、被害者がここを上がって、立ち入り禁止地域に入ってしまったようです。

 ④宿舎を出て、射殺されるまでの3.3kmを50代の女性が20分で歩行できるかとの謎。

 当初、ホテルに備え付けられていた監視カメラで確認されたところ被害者のホテル出発時刻は午前4時30分でした。ホテルからフェンスまでの距離は1.1kmです。北朝鮮側の当初の説明ですと、「女性はフェンスから1.2kmまで入ってきたので、制止を命じたが、1kmほど逃亡したため発砲した」そうです。その結果「4時50分頃、フェンスから200メートル手前で銃撃した」とのことです。

 「20分の短い時間で足を取られやすい砂浜を3.3キロも進んだことになる。移動速度は時速9.9キロということだ。健康な若者が平地で非常に速いペースでジョギングを行ったとしても時速8キロから9キロだから、北朝鮮の言い分は話にならない」(朝鮮日報)というのが、韓国側の見方でした。

 しかし、その後、韓国側がホテル内監視カメラの映像を確認した結果、カメラの時間設定ミスにより時計が13分進んでいたことがわかりました。被害者が宿泊先のホテルを出た時刻は、当初伝えられた時刻よりも13分早い午前4時18分と確認されました。20分でなく、33分ならば、移動可能な距離です。

 加えて、北朝鮮側は「朝鮮人民軍の調査報告」として北朝鮮側警備兵が被害者を最初に目撃した地点をフェンスから1.2kmではなく、800メートル、倒れた地点もフェンスから300メートルと修正しました。北朝鮮の発表とおりならば、被害者は33分で約2.4kmを歩いた計算になります。

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2008年7月18日

シンガポールでの日朝外相会談に注目

 ブッシュ政権による米議会への対北朝鮮テロ支援国指定解除通告から発効(8月11日)まで「45日間」あった猶予期間が残り3週間近くとなりました。

 この間、核問題では6か国首席代表会議で懸案の核検証で一定の合意をみたことで、テロ支援国指定解除に向けての障害が取り除かれつつあります。米議会では16日から上下外交委員会で核申告及び検証に関する非公開の聴聞会が開かれ、6か国協議の首席代表であるヒル次官補が報告を行なっています。共和及び民主党の一部議員らが、申告が不十分だとして、テロ支援国指定解除に反対する動きがありますが、議会の大勢は、解除を容認する方向にあります。

 日本の意向に関係なく、米中を軸に6か国外相会談も非公式ながら23日にシンガポールで開催されるようです。外相会談は本来、非核化の第2段階が完了し、核放棄に向けての第3段階への移行を前提に開かれる予定でした。それが非公式とはいえ、前倒しになったことは核合意を進めたいとするブッシュ政権の焦りといえなくもありません。

 この期間、核問題での進展状況に比べて、拉致問題では全く動きがありませんでした。町村信孝官房長官が6月29日に民放に出演して、拉致被害者の再調査について「どういう形で調査するのか、その結果をどう検証するのか。その方法を日本政府も決めつつある。近々、日朝間で調査、検証の具体化を図っていく」と述べてから3週間が経過しました。しかし、再調査のための日朝協議は一向に開かれません。一週間前の7月11日には6か国協議の首席代表会合の場で斎木昭隆外務相アジア・太平洋州局長が金桂寛次官に催促しましたが、金次官からはこの件では回答がありませんでした。

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2008年7月15日

反米は百万人、反日デモは数十人の現実

 日本政府は14日、中学校社会科の新学習指導要領解説書の中に竹島(韓国名・独島)を「領土問題」として明記しました。この日本政府の発表に李明博大統領は直ちに「深い失望と遺憾」を表明し、政府に「断固として厳重な対応」を取るよう指示しました。その第一弾が、権哲賢駐日大使の事実上の召還のようです。李大統領自身が「深い失望と遺憾」を表明したのにはそれなりの訳があります。

 李大統領は対日外交を重視していました。そのことは、大統領就任(2月25日)後の最初の首脳会談の相手に福田康夫総理を選んだことにも現れています。国民から低迷する経済の再建を託された李大統領とすれば、日本の経済協力を得るためにも対日関係の修復が最優先課題でした。それが故に4月に初来日した際にも「日本にもう謝罪を要求しない。これからは日本の政治家の言葉にいちいち敏感に反応することもない」と、過去や歴史認識に関する日本の言動を言わば黙認するような趣旨の発言をしていました。

 さらに在日韓国人の歓迎式典では一歩踏み込んで「過去を忘れられないが、過去だけにこだわって今を、そして未来を生きられるのか。私は未来に向かい日本と手をつなぐ」と語り、今後日本とは未来志向の関係を築いていくと公言しました。李大統領なりに日本との関係にはそれなり自信と確信があったようです。ところが、1か月後の5月中旬、日本が中学校社会科の新学習指導要領の解説書に竹島を明記するとの方針が伝わるや心中穏やかでなくなりました。

 洞爺湖でのサミット出席のため訪日した李大統領は福田康夫総理に対して竹島の領有権明記問題で「日本にとっては3年前に決定した事項であっても認めるわけにはいかない」と強い懸念を表明し、再考を促しました。帰国後の先週(7月11日)党役員らとの会合で「どうなるかわからないが、日本はやならい可能性もある」と福田総理の決断に期待をかけていました。それが、意に反する結果となったわけですから「深い失望と遺憾」の表明は当然かもしれません。

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2008年7月13日

「金剛山射殺事件」をどうみるか

 北朝鮮の金剛山で韓国人女性が北朝鮮兵士に射殺された事件は改めて北朝鮮に「異常なし」との印象を与えました。「異常なし」という意味は、韓国人は北朝鮮に対して精神的に武装解除してるが、北朝鮮は韓国に対して依然として警戒心を解いていないという意味です。

 韓国側は女性が観光統制区域から外れ、北朝鮮の軍事保護区域に誤って入ってしまった落ち度があったにせよ、「射殺することはない」と北朝鮮警備兵の過剰反応を批判しています。

 過剰反応の根拠としては、北朝鮮の発表通り、被害者が警備兵の制止を聞かず、逃走したとしても視界的に韓国人観光客であることが明白であった、それも武装していない普通の女性であることが目視できたはずで、従って発砲せずに身柄を拘束するとか、あるいは軍事保護施設から追い出すような措置を取って然るべきであったというものです。

 また、北朝鮮の発表では、警備兵は、警告射撃を空に向かって一発発射したうえで、女性を撃ったと言っていますが、被害者の遺体からは背後から背中と足を撃たれたことが検視の結果、確認されています。ということは、威嚇射撃を含め3発撃ったことになります。しかし、その時間帯に現場近くにいた他の韓国人旅行者は「銃声は2発しか聞こえなかった」と韓国のマスコミに証言しています。これが事実ならば、警告射撃をしたという北朝鮮の発表は嘘で、明らかに「非道な行為」というのが韓国側の主張です。まして、2発とも命中していることから、至近距離から撃った可能性も取り沙汰されています。

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2008年7月10日

すべては米朝首席代表会合で決まる

 北朝鮮の核問題を討議するための6か国協議首席代表会合が今日(10日)から北京で開かれます。昨年9月以来、約10か月ぶりの会合です。今回の首席代表会合では前回の第2セッションでの合意事項の履行状況が検証され、次の第3段階に向けてのロードマップについて話し合いが行なわれる見通しです。

 第2セッションでは北朝鮮の核無能力化(寧辺にある5千kw原子炉、再処理工場、核燃料棒製造施設の無能力化)及び核計画の「完全かつ正確な申告」と他の5か国による重油90万トンに相当する規模の経済、エネルギー支援及び人道支援、それに米国によるテロ支援国指定解除が「交換条件」となっていました。

 核施設の無能力化は核燃料棒の原子炉からの取出しが遅れているもののその他の施設の無能力化は80%近くまで進行しています。また核計画の申告については核兵器の数や貯蔵施設、核実験場などが含まれておらず、「完全かつ正確な申告」とは言えませんが、米国が今回の申告からの除外に同意し、加えて問題の濃縮ウラン開発についても別紙での「釈明」を了承していたことから、申告も不十分ながら形の上では一応履行されたことになります。

 一方、5か国によるエネルギー支援は北朝鮮の主張によると「40%しか履行されていない」ようですが、それでも米国はエネルギー支援とは別途に50万トンの食糧支援を約束し、すでにその一部は北朝鮮国内に配給されています。また、最大の見返りであるテロ支援国家指定解除も日本の反対を押し切って踏み切りました。すでに北朝鮮を対敵通商法の適用から除外しています。

 従って、今回の首席代表会合では北朝鮮が申告した核開発計画の検証作業(検証対象物と方法と検証の主体とその評価)を中心に未使用核燃料棒の第三国への搬出など施設の解体、破棄に向けての最終ゴールについても話し合われる公算は大です。

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2008年7月 4日

再調査の4つの難問

 米国の協力を得てテロ支援国指定解除と交換に拉致問題を進展させようとした安倍政権からの日本政府の戦術は核問題の解決を最優先するブッシュ政権のお家事情によって狂わされています。米国に加えて、他の6か国メンバーからの協力もほぼ絶望的です。

 中国の武大衛外務次官は7月2日、訪中した自民党の二階敏博総務会長が拉致問題で協力を要請したところ、「(日本の立場を)理解している」と応えたと、朝日新聞が「中国外務次官 拉致問題に理解」との見出しを掲げて、報じていましたが、同じ日、国連安保理事会では拉致問題の早期解決を促す声明案が中国の反対で採決されませんでした。

 中国は、日本の要請を受けて「日本人拉致問題の早期解決を北朝鮮に強く促す」ことを盛り込んだ米国の修正案に猛烈に反対したそうです。確か、昨年の温家宝総理も、今年の胡錦涛主席も訪日した際には拉致問題について「理解し、協力する」と約束していた筈ですが、所詮リップサービスに過ぎなかったことは、今回の中国の非協力を見れば、一目瞭然です。

 ブッシュ大統領もサミット直前に日本のメディアとのインタビューで「拉致は決して忘れない」「置き去りにしない」と、今後も6か国協議の場で日本側に協力していくと弁明していました。日本側にとっての協力とは、拉致問題で進展がない場合のテロ支援国指定解除の中止を指しますが、任期中の核問題解決に心血を注いでいるブッシュ大統領の発言を精査する限り、核申告が不十分ならば、解除の凍結も考えられますが、他国の問題(拉致問題)で再考するとはとても考えられません。

 肝心の北朝鮮の核申告についてですが、「北朝鮮は少なくとも6者協議で核計画を申告するという決断を下した」「確かなのは、北朝鮮がプルトニウム製造に使われた冷却塔を破壊したことだ」「北朝鮮の指導者(金正日総書記)は国際的孤立に疲れ、国民が良い生活をしやすくなるように動こうとしているのかもしれない」と、金正日政権の一連の対応を肯定的に捉え、「願わくば、次期大統領が就任するまでに(さらなる)進展があって欲しい。次のステージでは、全員が納得できるように検証体勢を整えるだろう」と、今後の展開に期待を寄せています。冷却塔の爆破を参観するため6月末に訪朝したソン・キム米国務省韓国部長が「最後の段階である非核化は、ブッシュ政権内で完遂することが可能である」と報告していただけに北朝鮮の協力次第では核問題をめぐる米朝関係はさらに進展することが予想されます。

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2008年6月28日

冷却塔爆破はNYフィル平壌公演の「恩返し」

 北朝鮮核開発の象徴である原子炉の冷却塔が爆破されました。冷却塔爆破の北朝鮮の狙いについていろいろ憶測されていますが、この爆破は、北朝鮮が米国に打診したのもではなく、逆に米国の働きかけが功を奏して実現したものです。従って、北朝鮮のイニシアチブによるものではなく、米国による演出と言えます。北朝鮮国内では知らせず、米国、日本、韓国のテレビを招いて、爆破シーンを世界に向けて放映させたことからもそのことは明らかです。

 消息筋によると、核問題での成果を急ぐヒル次官補が米国民や議会を宥めるために「目に見える形の進展」として冷却塔の爆破を要望したところ金正日総書記が決断したそうです。米国との関係をさらに進めるうえで、又、北朝鮮の「本気度」をアピールするうえで老朽化し、ほぼ使い道のなくなった冷却塔の爆破が「格好の具」として選択されたようです。

 核施設の解体の一環である冷却塔の爆破は、元来第二段階での約束事項ではなく、次の段階(第三段階)での北朝鮮の義務事項でした。金総書記がそれを早めて承諾したのは、どうやら今年2月にニューヨーク・フィルハーモニックの平壌公演を実現させてくれたことへの「恩返し」のようです。

 金総書記が米国のオーケストラーのピョンヤン公演で「米朝和解」を演出したとすれば、今度はブッシュ大統領が冷却塔の爆破で「核問題の進展」を派手に演出したと言えます。米朝の関係はブッシュ大統領の任期切れが近づけば近づくほどハイペースで進んでいます。

 ブッシュ大統領が米議会に通告したテロ支援国指定解除は北朝鮮の核計画申告に問題がなければ45日後の8月11日には正式に発効されますが、検証の結果、偽りが判明すれば、指定解除は撤回され、北朝鮮に対する制裁は継続されるどころかさらに強化されます。そのようなことから拉致問題の進展なくして、指定解除に反対する人々にとっては「申告の欠陥」が指定解除阻止の唯一の拠り所になっていようです。

 しかし、「同床異夢」にせよ米朝の「共通の思惑」と「あうんの呼吸」を見る限り、申告が米議会によって「不合格」の烙印を押され、不承認となる可能性は低いように思われます。なんと言っても、その最大の理由は、北朝鮮の「申告」が米朝間の度重なる事前協議の末、出されてきたからです。

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2008年6月23日

再調査はまた「ゼロ回答」?

 先の北京での日朝公式協議は北朝鮮による拉致問題の再調査と日本による制裁の一部解除で合意していますが、再調査の開始時期と制裁解除のタイミング、そして再調査結果が今後の焦点となりそうです。

 高村正彦外相は20日の記者会見では再調査開始での制裁の一部解除を示唆していましたが、昨日(22日)のテレビ番組では「北朝鮮が調査したものを日本の専門機関を含め、検証できるような対応は作りたい。そこが進まない限り、解除はない」と述べていました。 再調査は日本による検証が前提で、これに北朝鮮が同意しない限り、制裁の一部解除は行わないという意味です。

 次回の日朝協議で再調査のやり方と検証方法について突っ込んだ話し合いが行なわれる見込みですが、その結果、日本側が納得し、北朝鮮が再調査の開始を日本に通告すれば、人的往来の規制、チャーター便の規制、人道的支援関連物資の輸送に限った船舶の入港規制の一部解除が実施されます。

 検証の方法については日本から注文を出すとのことですが、一部で検討されていた日本からの捜査陣の派遣には慎重のようです。主権の届かない、権限も、行動も限られた北朝鮮では十分な調査ができないこと、逆に北朝鮮側に「日本も捜査した結果、拉致被害者は存在しなかったので、これで終わり」と「幕引き」に利用されかねないからです。

 そうなると、現状のままでは再調査は北朝鮮単独となりますが、斎木昭隆アジア大洋州局長は「前回(2004年)のような調査結果を出すならば一部解除の約束は当然キャンセルされる、と北朝鮮側に伝えている」と拉致議連の緊急役員会に出席して説明していました。拉致被害者家族会に対しても「前回とは違う」ことを強調していたところをみると、北朝鮮側が拉致被害者の存在を認め、帰国させることにつながるような再調査結果になるとの期待と感触を持っているようです。

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2008年6月20日

日本の時間的猶予は45日間

 ライス米国務長官は18日、北朝鮮が近々核計画関連申告書を6か国協議議長国である中国に提出すると語っています。韓国の首席代表である金塾朝鮮半島平和交渉本部長が「今月末までに申告書が提出されるものと期待している」と言っているところをみると、米韓とも今月中の申告提出があるとみているようです。

 ライス長官によると、申告書の提出とほぼ同時にブッシュ大統領による米議会へのテロ支援国指定解除と敵国通商法による貿易規制措置(経済制裁)解除通達が予想されます。寧辺核施設への現場検証など申告内容を精査・検証した結果、偽りがないと判断されれば通達から45日後には自動的に効力が発生します。申告書に問題があれば、制裁解除はストップします。

 斎木昭隆外務省アジア大洋州局長は19日夜、日米韓3か国首席米首席代表会議出席のため来日中のヒル国務次官補との会談で日本人拉致問題が進展しない限り解除しないよう求めました。しかし、ヒル次官補は「北朝鮮の行動に従って我々も行動する義務を負っている」と述べ、北朝鮮からの申告があれば、米国はテロ支援国家指定を解除する方針を改めて示しました。ということは、日本に残された時間的猶予は45日間ということになります。それまでの間に北朝鮮に拉致被害者の再調査を実施させ、進展とみなすことのできる答えを引き出したいところです。再調査を早期に実施させるには北朝鮮に約束した制裁の一部解除を実行に移さなければなりません。

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2008年6月16日

日朝協議で「裏取引」はなかったのか?

 今回の日朝公式協議の「合意」には腑に落ちないことだらけです。
 交渉人の斎木昭隆外務省アジア太平洋州局長は北朝鮮側と制裁の一部解除で妥協したことについて「止まっていたプロセスをもう一度前に進めねばならない。交渉しないことには拉致問題も一歩も前に動かない」とこの妥協に不満な拉致被害者家族会に釈明していました。

 日本政府は「制裁は効いている」「日朝交渉が進展しないで困るのは北朝鮮だ」「日本は焦る必要はない」「日本として焦って(日朝協議)を懇願することはしない」(原口幸市前日朝国交正常化担当大使)と言い続けていただけに制裁強化を期待していた「家族会」は失望を禁じえなかったようです。

 斎木局長は「このままでは日朝は厳しい状況になると(北朝鮮の)上層部が思い、また(北朝鮮への)アメリカの圧力もあった」と説明していましたが、それならば日本側があえて譲歩までして妥協する必要はなかった筈です。よく言われるように北朝鮮側が追い詰められて苦し紛れに出てきたなら今こそ「毅然たる態度」でさらなる譲歩を引き出すのが外交の常道ではないのでしょうか。どう考えても不可解です。

 拉致問題の「解決」という「合言葉」がいつの間にか「進展」「前進」「一歩」とすりかえられ、後退しているのをみると、もしかして追い込まれていたのは北朝鮮ではなく、日本のほうかもしれません。というのも、拉致問題の進展なくしてテロ支援国の指定を解除しないよう訴えてきた日本とすれば米国が北朝鮮に対するテロ支援国の指定を外しても今回の北朝鮮との妥協で少なくとも外交的孤立を回避でき、面目が保たれたからです。

 斎木局長は「北朝鮮は、現在『拉致問題は解決済み』という立場をとっているが、今回はその言葉は出なかった。別室で、『解決済み』を変更し、改めて調査するところまでとりつけた。さらに、再調査ということで、『解決済み』の立場を変えたことでいいかと問い、『いい』という確認をとった」ことを「手柄」として自画自賛していました。

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2008年6月12日

「よど号」ハイジャック犯らの引き渡しは実現するか

 日朝実務者による公式協議では日航機「よど号」ハイジャック犯の引き渡しも焦点の一つになっています。

 日本政府は1970年の事件発生から今日まで「よど号」乗っ取り犯らの日本への引き渡しを求めてきました。しかし、日朝には国交がなく、外交関係がありません。犯人引き渡し協定も存在しません。日本からすると、「よど号」犯らは犯罪人であり逃亡者ですが、北朝鮮からすると、政治亡命者です。従って、日本の引き渡し要求は正当なものであっても現実には実現乏しい要求でした。日本に政治亡命したフジモリ元ペルー大統領を日本政府が「日本国籍を有する日本人」であることを建前にペール政府の引き渡し要求に応じなかったことと変わりありません。

 北朝鮮は当初は「よど号」犯らを北朝鮮が幻想を抱いていた「世界同時革命」の道具として利用してきましたが、今ではテロ支援国指定解除の阻害要因となっていることから重荷となり、むしろ日本への「送還」に積極的です。北朝鮮を3月下旬に訪れた欧州連合(EU)欧州議会のグリン・フォード議員(英労働党)や彼らに同情的な日本の右翼に合わせたりしているのはそのあらわれです。フォード氏をして「日本政府はよど号メンバーとの話し合いに応じるべきだ」と言わしめました。

 望郷の念に駆られたのか「よど号」犯らも真剣に帰国を決意し、帰国の道を模索していますが、問題は、無条件帰国でなく、日本政府との合意に基づく帰国を主張していることにあります。聞くところによると、彼らは、曽我ひとみさんの夫、ジェンキンスさんにとったのと同様の対応を日本政府に望んでいるらしいです。

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2008年6月 8日

斎木さん、北朝鮮は何を言ったのですか?

 日朝非公式協議が6月7日、北京で約2時間40分開かれ、11、12日に再度協議を行なうことであっけなく終了しました。次回は公式協議となりますが、今回同様に斎木昭隆外務省アジア大洋州局長と宋日昊国交正常化交渉担当大使が出席するようです。同じ顔ぶれならば北京に残ってそのまま協議を継続すればよいものを、仕切りなおしとは、おかしな話です。双方とも相手の提案を一旦持ち帰って、政府の判断を仰がなければならない事情があるならばいざしらず、そうでないならば、公式協議が開かれてもあまり期待できそうにもありません。

 協議終了後、斎木局長は「率直で真剣な協議ができた。次につながる意味で良かったと思う」と公式協議再開を「成果」と強調していましたが、公式協議の再開は既定事実だったわけですからたいした成果でもありません。むしろほとんど「中身」がなかったことは、別れ際の斎木局長の無愛想な表情からも読み取れます。

 会談時間は2時間40分とのことですが、双方の通訳の時間を省くとたったの1時間20分です。7か月ぶりの非公式協議の割には1時間20分のやりとりは短すぎます。通常ならばこの種の外交交渉は2回、双方の大使館で交互に行なわれるものです。それが、今回は日本大使館での1回で終了してしまいました。二日間の協議を想定していた日本側は肩透かしを食らった感があります。このことは、北朝鮮が日朝協議に多くの期待を掛けていないことへの裏返しともいえなくもありません。

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2008年6月 6日

日朝協議再開へ、それで制裁は?

 予想したとおり、どうやら北朝鮮は米国の顔を立てて、日本との協議に応じるようです。早ければ、明日の土曜日(7日)にも第3国で非公式協議が行なわれます。ところが、今朝の「朝日」によると、非公式協議ではなく、昨年9月以来中断していた日朝作業部会が開かれるとのことです。

 聞くところによると、日本側は6か国協議首席代表の斎木昭隆外務省アジア大洋州局長が出席するようですが、北朝鮮側は、首席代表の金桂寛外務次官でなく、日朝作業部会代表の宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使が出席するようです。日朝作業部会ならば、同格の日本側のパートナ、美根慶樹・日朝国交正常化交渉担当大使を派遣するのが筋ではないでしょうか。先に非公式協議、後に日朝作業部会開催ならば、わかりますが、いずれにしても、非公式であれ、作業部会であれ、北朝鮮は宋日昊大使が出てくるわけです。

 米国のテロ支援国家指定解除が避けられない状況にあって日本とすれば、今回の日朝協議で安否不明の拉致被害者の調査再開の道筋を付けたいところです。一方の北朝鮮は再調査の前提条件として①経済制裁の撤回②朝鮮総連中央本部の競売中止③過去の清算の開始の3点を求めています。これに対して日本は北朝鮮が拉致問題で「進展」がない限り、制裁解除には応じられないとしています。進展とは、中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)の言葉を借りるならば「日朝双方が拉致被害者を帰国させるという認識を共有し具体的なステップを踏み始めること」です。仮に「よど号」ハイジャック犯の日本への引導話があったとしても、「進展」とみなさないというのが日本政府の立場です。

 ところが、驚いたことに、町村信孝官房長官は5月4日の参院拉致問題等特別委員会で核問題の進展によっては、制裁解除もありうるとの認識を示したそうです。町村長官が4月11日の制裁延長の閣議決定の際に「北朝鮮側が拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決に向けた具体的な行動を取る場合にはいつでも、諸般の情勢を総合的に勘案して、その一部又は全部を終了することができる」と発言したことに関する共産党の山下芳生議員の質問への返答で曖昧な認識を示したようです。

 山下議員が制裁解除の具体的判断条件を質した際に核・拉致・ミサイルの三つの問題について触れた町村長官は「一つだけが大きく進んで、一つが残った場合とか、あるいは三つが少しずつ進んだ場合」など、「いろんな組み合わせがあると思う」と発言したようです。このことを捉え、共産党機関紙「赤旗」は「必ずしも拉致を含むすべての問題での進展を制裁解除の条件としているわけではないことを示唆した」と伝えたわけです。

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2008年6月 2日

「日本受け」の李大統領は四面楚歌

 「経済大統領」「最高経営者」として華々しく政権をスターとさせた李明博大統領が大統領就任から3ヶ月そこそこしか経ってないのにはや政権末期のような症状に陥っています。訪中を終え、30日に帰国した李明博大統領を国民は大規模の集会、デモで「熱烈歓迎」しました。

 米国産牛肉輸入に反対して5月中旬から始まったソウル市民の「キャンドル集会」は31日には警察の統計で5~7万人が参加し、かつてない大規模の反政府集会に発展しました。「キャンドル集会」は地方にも拡散し、31日には全国主要都市100ヶ所で行なわれました。今月27日からの4日連続の数万人に上る抗議集会は、全斗煥政権の退陣を求めたあの1987年の「民主化抗争」以来の出来事です。

 訪米(4月)の際にブッシュ政権に約束した米国産牛肉輸入解禁の決定に端を発した国民の怒りは、李大統領が5月22日に国民向けに謝罪をしたにもかかわらず沈静化するどころか、原油の高騰、物価上昇への不満も加わって「米国産牛肉輸入反対」「米国と再交渉」という要求から「李明博は退陣せよ」にエスカレートし、「反政府集会」の性格を帯びてきました。ヒトラーに真似た李大統領の絵が「独裁打倒!」のスローガンと共に描かれたプラカードが登場したことがそのことを物語っています。

 今の李大統領には48.7の高い得票率と530万票という圧倒的な票差で当選した当時の面影も威信もありません。政権発足時にあった75.2%の支持率はこの3ヶ月間で50%以上も減らし、20%台まで落ち込んでしまったわけですから当然と言えば当然です。「京郷新聞」が世論調査機関の現代リサーチに委託し、5月31日にアンケート調査を実施したところ国民の李大統領への評価は19.8%しかありませんでした。鳴り物入りの朝鮮半島運河構想も公共機関の民営化も不思議なことに支持が得られていませんでした。

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2008年5月29日

「毎日」の「怪情報」は誰が流しているのか

 韓国の連合通信(5月28日)は、米国がテロ支援国指定解除に着手した場合、北朝鮮が日航機「よど号」ハイジャック事件実行犯の元赤軍派3人を国外追放にし、日本側が北朝鮮領土外で3人を引き取る形で帰国させる案を進めていると伝えていました。また、北朝鮮は日本人拉致問題を含む日朝間懸案を話し合うため、早期に第三国で日朝協議を行い、再調査について話し合うことも検討しているとのことです。テロ支援国指定解除をめぐる米朝協議は昨年11月10日のこの欄に書いた以下の方向に向かっているようです。

 「米国内法に基づく解除の条件とは、①過去6か月間、国際テロ支援活動をしなかった②国際テロ支援活動をしないことを宣言する③『よど号』犯を日本に引き渡すとの三つの条件を北朝鮮がクリアすることです。拉致問題は条件ではなく、『テークノート』(留意)のようです。①も②もすでにクリアされており、問題は③の『よど号』犯の日本への送還です。想定される米朝間での『よど号』の解決策は、日本政府関係者が訪朝し、『よど号』犯を説得し、日本に連行してくるか、北朝鮮が一方的に国外退去させるかのどちらかです。日本政府が第一案を拒んでいることからどうやら第二案になりそうです」

 米国は日米同盟重視の観点からまた、「拉致問題を置き去りにしない」とブッシュ大統領が日本に約束していることもあって、日本の面子が立つよう何らかの誠意を示すよう北朝鮮に働きかけています。米国が要請している「誠意」の中身は日朝協議再開と日本が求める再調査への意思表明のようです。北朝鮮もまた、テロ支援国指定解除を容易にするため、また米国の顔を立てる必要性から最終的には米国の要請に応じるようです。

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2008年5月27日

「読売」に続き今度は「毎日」が

 読売新聞(5月9日付)に続いて今度は毎日新聞が拉害被害者の横田めぐみさんの記事を同じように朝刊一面トップに掲載しました。

 昨日(5月26日)付の毎日新聞は、横田めぐみさんについて帰国した拉致被害者の地村富貴恵さんが昨年末に日本の当局に対して「『94年6月に自分たちの隣に引っ越してきた』」と証言していた」と伝えました。これが事実ならば「94年4月に死亡した」との北朝鮮側の説明は完全に覆りますので、スクープとして一面トップは頷けます。

 同紙によると、めぐみさんは94年6月、地村夫妻が住む招待所の隣に「1人で引っ越してきて、数カ月そこに暮らしていたが、その後の行方は分からなった」(地村富貴恵さん)とのことです。また、当時のめぐみさんの状況について富貴恵さんは「かなりうつ状態が激しく、精神的に不安定な状態だった。北朝鮮の対外情報調査部幹部が看病していた」と証言したそうです。

 ところが、この「毎日」の報道について町村信孝官房長官は「政府として本人(地村富貴恵さん)から聴取をした事実はない。地村富貴恵さん本人にも確認したが、否定された。相当の意図をもって記事を作っているとしか思えないので、まことに不愉快であり、遺憾だ」と全面否定しました。「拉致問題担当の中山恭子首相補佐官が先月(4月)25日、ソウルを訪問した際に拉致被害者の横田めぐみさんの両親が孫のヘギョンさんとめぐみさんの夫と韓国内で対面できるよう韓国政府に仲介を要請した」との「読売」の報道(5月9日)の時と同じように全面否定に出ました。

 「横田めぐみさん生存」の立場に立つ政府とすれば、「生存説」の裏づけとなる「毎日」の報道は本来ならば「援護射撃」になるわけで、仮に誤報であったとしても目くじらを立てて反発する性質のものではないはずです。にもかかわらず町村長官が「読売」の時と同様に「毎日」に噛み付いたのは、おそらく二つの理由からだと推測されます。

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2008年5月24日

福田vs安倍の代理戦争

 日朝関係、拉致問題への対応をめぐって22日に対照的な動きが表面化しました。一つは、与野超党派による「日朝国交正常化推進議員連盟」の設立です。自民党の実力者、山崎拓元副総裁が会長に就任し、顧問には自民党の加藤紘一元幹事長、民主党の菅直人代表代行、公明党の東順治副代表、社民党の福島みずほ党首、それに国民新党の亀井静香代表代行と5人の幹部が名前を連ねました。強力な布陣です。

 この日の設立総会には賛同者70人のうち筆頭副会長に就任した自民党の衛藤征士郎、民主党の岩国哲人、公明党の遠藤乙彦、共産党の笠井亮、社民党の又市征治、国民新党の自見庄三郎ら各議員、それに事務総長に起用された民主党の川上義博議員ら総勢40人が出席しましたが、メンバーは当面100人が目標のようです。「皆で渡れば怖くない」ということなのでしょうか。

 連盟の規約をみると、設立の目的について「『平壌宣言』に基づき、核・ミサイル・拉致問題等の、日本と北朝鮮両国に横たわる諸懸案の包括的解決を図り、国交正常化と地域安全保障の確立を目指す」としています。小泉政権以来の政府の基本方針を踏襲しており、全く問題のないところです。

 ところが、同じ日に自民党の下村博文前官房副長官や山本一太参院議員ら若手・中堅議員6人が「北朝鮮外交を慎重に進める会」を発足させました。「国交正常化を急速に進めようという動きがあり懸念する」との山本議員の発言でも明らかなように日朝国交正常化推進議連の動きを牽制するのが目的のようです。山崎氏らが「日朝間の直接的な対話と交流が途絶えた現在の状態をこのまま放置しておくことは決して好ましいことではない。このまま日朝関係の対立が続けば、肝心の拉致問題の解決が更に遠のくことになる」(設立趣旨書)と対話と交流による現状打破の動きを見せたことに安倍政権下で対北朝鮮制裁を主導してきた下村、山本議員らが反発したようです。

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2008年5月19日

李明博政権の不人気は福田政権並み

 韓国国民だけでなく日本政府も国民も待望した韓国の李明博政権は政権発足から2ヶ月25日経ちましたが、支持率は驚いたことに急落一途を辿り、韓国の世論調査機関アルメーターの調査では5月9日の時点で過去最低の25.4%まで落ち込みました。なんと盧武鉉政権末期の27.9%を2.5%も下回る結果となり、福田政権並みの不人気です。

 支持率低下の原因は、公約である経済再建の見通しが立たないことへの国民の苛立ちもありますが、米国産牛の輸入解禁、竹島問題、そして南北関係への李政権のずさんな対応が問題となっているようです。

 訪米(4月)の際にブッシュ政権に約束した米国産牛肉の輸入決定は国民の反発を買い、ソウルでは今月大規模の抗議集会が開かれたばかりです。インターネット上でも若者を中心に「李政権は米国の言いなりになっている」と批判する動きが広まり、李大統領の弾劾を求める署名運動にまで発展しました。

 野党陣営からは撤回を求められ、与党ハンナラ党の中でも朴槿恵前代表ら有力議員らから再交渉を求められる始末です。李政権は米国産牛肉の安全性を国民にアピールし、理解を得ようと努めていますが、現状では米国と国民の板挟みにあって、苦しい立場に立たされています。

 対日問題でも、苦境に追いやられています。訪日(4月)し、福田総理との首脳会談で李大統領は「今後は過去にこだわることなく、日本とは未来志向の関係を進めたい」と述べ、また信任の駐日韓国大使も「これからは日本が何を言ってきても独島(竹島)は黙っておこう」と発言しました。これらの発言は日本では好感を持って受け止められ、日本での李明博政権の評判はとても良いです。

 ところが、一連の対日発言が「李大統領は独島(竹島)を放棄した」と拡大解釈され、激しい批判を浴びる結果となりました。加えて、日本の文部科学省が2日前(5月17日)、中学校社会科の新学習指導要領の解説書に、韓国と領有権を巡って争いのある竹島を「我が国固有の領土」として新たに明記する方針を固めたことで、李大統領はこれまた苦しい立場に立たされてしまいました。

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2008年5月15日

駐韓米大使の発言は日本への「最後通牒」か

 米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除問題でバーシュボウ駐韓米大使は、韓国紙とのインタビューで「日本人拉致問題の解決はテロ支援国家指定解除の前提条件ではない」と発言しました。同大使は「テロ支援国指定解除の前提条件は6カ国協議共同声明の履行と協議の合意に基づく寧辺核施設の解体だという点を米国は明確にしてきた」とその理由を語っています。

 藪中三十二外務次官は4月21日、テロ支援国指定解除について聞かれた際に「これまで、米国側は我々に常に説明をしてくれている。非常に高いレベルでの確認が行われている。(核計画の)申告の内容、また拉致問題を含んだ日朝関係についての進展ぶりを考慮して考えると、米国側は日本に言ってきている。それを踏まえた対応になることを我々は確信している」と答えていました。

 「拉致被害者が帰ってこない以上、テロは継続していると私は思っている。私個人は、拉致は国家テロだ、しかも、現在進行形という言葉は使わなかったけれども、それは継続中のテロである」(高村外相)との日本の立場も、また「抑留されている被害者が帰ってきていないのに指定解除がなされることは、多くの日本国民を落胆させ、日米同盟に重大な影響を及ぼすことを懸念するものである」との日本の「警告」も、昨年12月に衆議院拉致問題特別委員会で採択された「テロ支援国指定解除反対決議」も無視されるという最悪の事態を迎えようとしています。

 「日本人拉致問題に進展がなければ北朝鮮をテロ支援国リストから削除すべきでない」と日本政府も拉致議員連盟も拉致被害者家族の会や救う会も一体となって対米ロビー外交を展開してきましたが、「日本人拉致問題も重要だが、これを非核化より優先することはできない」というのがどうやら米国の立場のようです。2週間前に拉致被害者家族会のメンバーらが訪米し、テロ支援国家指定を解除しないよう働きかけ「米国が前のめりに解除する疑念を払拭(ふっしょく)できた」(増元照明事務局長)と訪米成果を報告した直後の駐韓米大使の発言だけに日本にとっては辛いところです。

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2008年5月13日

日中共同声明にやはり「拉致」の言葉はなかった

 胡錦濤国家主席は5日間の訪日を終え、5月10日帰国しましたが、日中共同声明には「拉致」という文言が入っていませんでした。ただ単に「双方は、日朝国交正常化が北東アジア地域の平和と安定にとって重要な意義を有しているとの認識を共有した。中国側は、日朝が諸懸案を解決し国交正常化を実現することを歓迎し、支持する」と書かれているだけです。日中共同記者会見でも「拉致」についての言及はありませんでした。

 日中共同声明の3週間前に発表された李明博大統領との日韓共同プレスでは「福田総理より、日朝平壌宣言に則って、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を早期に実現するとの方針を説明し、これに対し、李大統領は理解と支持を表明した」という一項がありました。

 昨年4月に温家宝首相が来日した際に発表された日中共同プレス(07年4月11日)でも「中国側は日本国民の人道主義的関心に対して理解と同情を示し、この問題の早期解決を希望するとともに、日朝関係が進展することへの期待を表明し、必要な協力を提供したいと表明した」と記されていました。随分と後退したものです。

 一応首脳会談の場では福田総理から「拉致問題に対する中国の立場を心強く思っており、引き続き中国の理解と協力をお願いしたい」旨の発言がありました。これに対して胡主席は「中国は日朝国交正常化を一貫して支持してきた、日朝関係が進展することを強く期待、諸懸案について、対話と協議を通じて、適切に問題が解決されると信じている」とむしろ日朝国交正常化や日朝関係の進展を強調していました。

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2008年5月10日

あり得ない「読売」の「横田夫妻と孫の韓国での対面説」

 拉致問題担当の中山恭子首相補佐官が先月25日、ソウルを訪問した際に拉致被害者の横田めぐみさんの両親(横田滋・早紀江夫妻)が孫のヘギョンさんとめぐみさんの夫である金英男さんと韓国内で実現できるよう韓国政府に仲介を要請していたとの読売新聞(5月9日付)の記事には驚かされました。あり得ない話が1面トップ記事になっていたからです。

 「読売」の記事によると、面会が実現すれば、「返せ」「返さない」で対立しているめぐみさんのものと出された「遺骨」を北朝鮮側に返還する考えも示したとのことです。「現状を打破するには、日本側から踏み込んだ提案をする必要があると判断した」ことによると「読売」は書いていましたが、とても信じがたい話です。

 これが事実ならば、中山恭子補佐官はとんでもない勘違いをしています。第一に、仲介相手を間違えています。盧武鉉政権ならばいざ知らず、北朝鮮から「逆従」と名指し攻撃され、相手にされていない李明博政権に仲介を頼むということは愚の骨頂です。米国や中国に「仲人」を頼むならばまだしも、北朝鮮と最悪の関係にある李明博政権をあてにするというのでは、「政治音痴」「外交無知」と言わざるを得ません。

 第二に、面会場所が「韓国」というのも非現実的です。韓国から拉致してきた、ましてや今も特殊機関に勤務している金英男さんを北朝鮮がすんなりと韓国に出す筈はありません。「読売」の記事には「南北離散家族再会事業の場を借り、面会させる案を提示した」と書かれていますが、もし再会の場が「金剛山」ならば、北朝鮮が拒む筈はありません。韓国を通さず、時下に打診すれば事は簡単に済む話です。

 「読売」の報道を拉致問題の最高責任者である町村信孝官房長官は「事実に基づかない報道で、横田夫妻の気持ちを考えると大変遺憾な記事だ」と言下に否定していました。当事者の中山恭子首相補佐官も「まさに作り事の記事。びっくりするとともに残念だ」として読売新聞社に対し文書で抗議したそうです。また、「要請された」とされる韓国側も外交通商省スポークスマンを通じて正式に「読売」の報道を否定していました。ということは、「読売」の記事は大いなる誤報と言わざるを得ません。

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2008年5月 7日

日朝の持久戦を米国が調停か

 明後日(9日)からシンガポールで予定されていたヒル米国務次官補と金桂寛次官による再協議は、ヒル次官補がシンガポールで開かれるASEAN地域フォーラム(ARF)への出席を急遽取り止めたことで流れてしまいました。その代わりというか、現在マイケル・メイガン米大統領特別補佐官兼国家安全保障会議(NSC)専任局長とカート・トンNSCアジア経済担当局長、それにジョン・ブラウス国際開発庁(USAID)北朝鮮担当官の3人が平壌入りしています。ソン・キム国務省朝鮮部長が近日中にも再度平壌を訪問し、金桂寛次官らと会談するとの情報は事前に流れていましたが、メイガン米大統領特別補佐官一行の訪朝は唐突の感があります。

 核問題担当のソン・キム部長の再訪朝は、核計画申告及び検証をめぐる詰めの協議にあることは十分察しがつきますが、二人のNSC局長から成る米代表団の訪朝はその露払いなのか、それとも別の使命を持ったものなのか定かではありません。しかし、USAIDの北朝鮮担当官を随行させたことからテロ支援国指定解除に伴う一連の経済制裁緩和措置や食糧支援などを含めた北朝鮮への「見返り」が話し合われるのは確実です。

 ブッシュ政権は、前回のシンガポール協議で北朝鮮が完全で透明性のある核申告を行なうことを条件にその見返りとして50万トン相当の食糧援助を示唆していました。コメの価格は現在、1トン=1千ドルと跳ね上がっていることから金額にして5億ドル相当となります。ブッシュ大統領は5月1日に世界的な食糧危機に対処するため7億7千万ドルの援助資金を議会に要請したばかりです。主にアフリカ諸国向けで、北朝鮮は対象に含まれていませんでした。北朝鮮への食糧援助のため別途予算計上ということになれば、北朝鮮の核計画申告が議会を納得させるものでなければ同意を取り付けることは不可能です。

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2008年5月 4日

米朝の「デキレース」?

 北朝鮮はブッシュ政権が米議会に北朝鮮とイラクとの核協力の証拠を提示し、米大統領報道官までが「間違いないと確信している」と発言したにもかかわらず、外務省もメディアも沈黙を保ったままです。シリアとの関係については3月28日に外務省が「いかなる国に対しても核協力をしたことはない」と否定の談話を発表したのが最後で、それ以来音無しの構えです。一日も休むことなく李明博政権批判に熱を上げているのとは対照的です。

 北朝鮮のこの異例ともいえる沈黙は、「米国が議会に証拠を提示しても、北朝鮮は反発しない」との米朝間の事前合意なくしてはとても考えられません。議会への開示は4月8日のシンガポールでの米朝協議の際に北朝鮮側に事前通告されていたそうです。また、今回CIAが提示した証拠についても、すでに北朝鮮側に伝達済みとも言われています。

 ブッシュ政権は、ヒル次官補も認めているように北朝鮮とシリアの問題は「過去の問題」と処理し、今後二度と北朝鮮が核拡散をしないよう米朝及び6か国協議の場で誓約とその防止を講じることに重点を置いているとも言われていますが、この問題がウラン濃縮計画問題と並んで非公開の覚書の中で処理されるかどうかは、5月9-10日の間にシンガポールで予定されている米朝再協議次第です。

 いずれにしても北朝鮮は早ければ2週間以内にも6か国協議議長国の中国に核計画申告書を提出するようです。それを受けて今月末にも6か国協議が再開される見通しです。その申告の中身ですが、プルトニウム生産関連施設と抽出されたプルトニウムの総量、さらには5千キロワット原子炉の稼動日誌などの関連資料が含まれるとのことです。活動日誌は、1990年にまで遡る膨大なもので、その通りにならば、問題とされるクリントン政権下でのプルトニウム抽出有無も判明します。

 核弾頭については、今回は除外されるようです。その理由は、北朝鮮が核弾頭の数を申告しなくても、原子炉の稼動日誌と関連ファイルがあれば、核爆弾が幾つ製造可能か、正確に測定することができるからです。

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2008年4月28日

「北の核」で米議会にねじれ現象

 ブッシュ政権が議会に北朝鮮のシリアへの核拡散に関する情報を開示し、北朝鮮とシリアの核協力を「間違いない」と断定したうえで「この問題を6か国協議の中で解決する」との方針を打ち出したことに共和党と民主党内では対照的な反応を示しています。

 ブッシュ政権を支える立場にある共和党の一部議員らは核申告をめぐるシンガポールでの米朝合意を含め、ブッシュ政権の北朝鮮への対応を「生ぬるい」「譲歩しすぎ」と不満を露にしています。これに対して民主党は「6か国協議の枠の中で解決すべきだ」と政府の対応に理解を示しています。面白いことに、北朝鮮の核問題をめぐって米議会でねじれ現象が起きています。

 共和党の米下院情報委員会理事であるビート・ホエクストラ議員は「北朝鮮が完全で検証可能な申告をしない限り、テロ支援国指定を解除すべきではない」とブッシュ政権に厳しい注文を付けていますが、下院ではすでに外交委員会のロスレイティネン共和党筆頭理事らが北朝鮮による核・ミサイル技術のイラン、シリアなどへの拡散停止や、日本人拉致被害者の解放など、一定条件を満たすまでは、解除を差し止める法案を提出しています。

 また、ブランバック議員らは政府が核施設の不能化に伴う予算支援のため核実験を行なった国への財政支援を禁じた「グレーン修正法」から北朝鮮を免除することに反対しています。さらに、次期駐韓大使に任命されたキャスリン・スチーブンソン女史が北朝鮮に妥協的なヒル次官補の顧問をしていたことから議会での認証を保留している始末です。

 これに対して、ブッシュ政権と対峙している筈の民主党は、下院外交委員会のバーマン委員長が「北朝鮮とシリアとの核協力は、北朝鮮との交渉を中止する理由にはならない。むしろ、北朝鮮に核兵器を作る手段を拡散するのを中断させ、核計画を永久にさせないことを保障するための検証可能なメカニズムを引き続き要求することの重要性を立証したことになる」とブッシュ政権の方針を擁護していました。

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2008年4月21日

李明博大統領は「朴正熙」になれるか

 李明博(イ・ミョンパク)大統領が昨日(20日)来日しました。韓国大統領の来日は、2004年12月の盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の訪日以来、3年4か月ぶりということで「日韓シャトル外交の復活」とか「日韓修復」とか「日韓関係の再構築」との言葉が使われています。

 李大統領は、日本生まれであることから「リ・アキヒロ大統領」と揶揄されるほど「親日的」であるとみられがちですが、日本植民地統治時代の戦前生まれであることや、学生時代に日韓条約(65年)反対デモを主導した闘士であったことや、ソウル市長時代に歴史教科書問題や竹島問題で市民らの抗議運動を奨励した「過去」を考えると、必ずしも「親日的」だとか「日本ひいき」とは言えません。

 日本の新聞は確か盧武鉉大統領が誕生した時も、日本の文化を開放した金大中(キム・デジュン)大統領の後継者であったことから盧政権下でも対日政策は継承されるとの短絡的な楽観論を流していましたが、それから5年経った今、現実には「修復」という言葉が使われるほど、悪化したのは周知の事実です。

 自画自賛になりますが、バックナンバー(2002年12月号)を読んでもらえばわかりますが、筆者は2002年に盧武鉉大統領が誕生した時点で日韓関係の展望を次のように予測しました。
 「日本の親韓派の中には金大中大統領の後継者であることから盧政権下になっても対日政策はさほど変わらないだろうとの楽観論がありますが、誤った評価です。盧氏は韓国の政治家の中では生粋の民族派で、日本に対する視点も厳しいものがあります。金大中大統領が前任者の金泳三氏よりも親日派であったことから日韓関係は日本文化開放にみられるように前進しましたが、若手民族派、それも人権弁護士出身の盧政権に変われば歴史認識問題など諸懸案をめぐって日韓関係は再び「未来志向」から逆戻りするかもしれません」

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2008年4月14日

経済制裁延長と小泉オフレコ発言

 日本政府による対北朝鮮経済制裁が今年10月まで継続されることとなりました。北朝鮮による核計画の申告が期限切れの4月13日までに行なわれなかったことや、拉致問題が進展しなかったことがその理由です。

 町村信孝官房長官は記者会見で「(北朝鮮が)拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決に向けた具体的な行動を取る場合はいつでも、一部または全部を終了することができる」と表明していましたが、聞き方次第では「解除したいのに解除できない。なんとかしてもらいたい」と聞こえてなりません。

 制裁措置の効果については聞かれた福田康夫首相は「北朝鮮が解除を望んでいるなら、効果があるということだ」(11日)と言っていましたが、拉致問題の進展を促すのが制裁の目的なわけですから結果が出なかったということは逆に言うと、効果がないということではないでしょうか。結果が出なかったから延長せざるを得なかったのでしょう。国際社会にも協調を呼びかけている手前、日本政府としては口が裂けても「効果がない」とは言えないでしょう。「効果がない」と言えば、経済制裁の延長を正当化することもできません。

 効果が上がるまで制裁を続けるならば、ついでに拉致被害者家族の会が求めるように輸出の全面禁止、北朝鮮の港に寄航する第三国の船舶の入港禁止措置を加えたらどうでしょうか。確か、日本政府は中山恭子首相補佐官をはじめ「北朝鮮が誠意を示さなければ、進展がなければ、新たな追加も辞さない」と何度も北朝鮮に警告を発してきたはずです。どうして、制裁を追加しないのでしょうか。制裁に効果があると信じているなら、この機会に断固踏み切ったらどうでしょうか。

 そう考えると、小泉元純一郎元総理は実に正直な人です。2006年3月6日の参議院予算委員会で「私が訪朝した2002年時とは随分違う。韓国や中国が経済的に支援しているなかにあって日本だけが経済制裁して効果があるとは思えない」とすでに予告していました。現実には、小泉さんの予想とおりで、北朝鮮は音を上げていません。本当に制裁が効いているならば、もうとっくにギブアップしてもよさそうなものです。

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2008年4月 6日

いよいよ最終局面か

 米国のヒル国務次官補と北朝鮮の金桂冠外務次官が4月8日、シンガポールで会談することになりました。米朝は先月中旬のジュネーブでの会談以後、ニューヨーク・チャンネル(双方の国連代表部)を通じて膠着状態にある核申告問題で協議を重ねてきました。今回の会談で最終的な合意に達するかどうか、金桂寛次官のかばんの中身が注目されます。

 米国が求める申告内容は、プルトニウムを含む既存の核関連と、ウラン濃縮計画及びシリアへの核協力の3本柱となっていますが、最大の対立点であるウラン濃縮計画とシリアへの核協力疑惑がどう処理、解決されるのかに最大の関心が集まっています。

 米朝間では幾つかの妥協案が検討されていたようです。
 一つは、北朝鮮が二つの疑惑を間接的に是認することでの決着です。
 公式文書とは別途に非公開を前提とした秘密文書を作成し、その中に「北朝鮮がウラン活動と核拡散活動に介入したということが米国の理解事項であり、北朝鮮側はこれに反論しない」ことを明記するとの案です。

 しかし、「過去も、現在もやっていない」(北朝鮮外務省)と否認してきた以上、北朝鮮が間接的であれ、認めるとは考えられません。
 その理由は、第一に、仮に認めれば、検証の対象となり、今後査察を受け入れなくてはなりません。第二に、94年のジュネーブ合意に違反したことになるからです。第三に、非公開、極秘扱いの約束は守らないとのブッシュ政権への根強い不信があります。仮に守ったとしても、政権が変われば、次期政権によって暴露される恐れもあります。第四に、裏目に出た拉致問題の二の舞になるとの懸念もあります。そして、最も恐れるのは、嘘をついてきたことによる国際的イメージの失墜です。

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2008年4月 1日

ボールはどっちにある?

 6カ国協議で米首席代表を務めるヒル国務次官補が今日(4月1日)訪韓します。アジアソサエティ・コリアセンターの創立記念行事に出席するのが目的ですが、3日までソウルに滞在する予定で、今夜6カ国協議韓国側首席代表の千英宇・朝鮮半島平和交渉本部長と、2日には、権鍾洛外務第1次官と相次いで会談します。

 ヒル次官補の訪韓について、韓国の連合通信(3月31日)は、「ヒル次官補がソウルに滞在中、北朝鮮側が何らかの提案をしてくる可能性があるとの見方も出ている」と伝えています。

 北朝鮮に詳しい高官筋が同通信に明らかにしたところでは、3月13日にジュネーブで開かれた会談で米朝双方はウラン濃縮計画(UEP)とシリア核協力疑惑などでほぼすべての内容に合意しており、1つの文案をめぐり上部の指針を受けている状況だとのことです。

 また同通信は、別の外交消息筋の話として、その合意内容は「北朝鮮がウラン活動と核拡散活動に介入したというのは米国の理解事項だとする内容を核計画申告書に明示し、北朝鮮はこれに反発しないという立場を盛り込むことを骨子としている」とのことです。

 ヒル次官補は、こうした案に対し北朝鮮側が「合意直前」の関心を示したことを考慮し、申告書提出時期に合わせテロ支援国指定を解除するため、議会関係者らとの接触を強めるなど積極的に動いていたとしています。

 ところが、北朝鮮側は3週間以上、ヒル次官補の望む回答を示さなかったことから、また、北朝鮮外務省報道官が3月28日に米国の要求を拒否する姿勢を示す談話を発表したことから、ヒル次官補は今回の訪韓を機に、北朝鮮に「最後通告」を送り、決断を改めて求めたのではないかというのが、連合通信の記事の結論です。言わんとするところは、ボールは北朝鮮側にあり、ヒル次官補は訪韓中に北朝鮮から「ボールバック」(返事)があるのを待っているということです。

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2008年3月28日

「圧力」をかけているのはどっち?

 「韓国の新政府は、南北関係の後退、あるいは悪化を憂慮し、北朝鮮を刺激しないような慎重になった感がある」と、前回伝えましたが、韓国閣僚のちょっとした発言が、北朝鮮の反発を買い、韓国の投資で建設され、現在69社の韓国企業が入居し、新たに今後38社が入居を予定している開城工業団地から11人の韓国の職員が27日、追い出されてしまいました。

 「ちょっとした発言」というのは、統一部長官に就任したばかりの金夏中前駐中大使が開城工団の入居者及び入居予定者らとの懇談会での席で「北朝鮮の核問題が妥結しなければ、開城工団の拡大はむずかしい」と述べたことです。韓国政府の立場からすれば極めて当たり前のことを話したまでのことですが、これに北朝鮮側はカチンときたようで、「拡大するつもりがないならば、政府職員を常駐させる必要はない。直ちに出て行ってもらいたい」と対応したということです。

 新聞の見出しでは「韓国が撤収」となっていたので、北朝鮮が核計画の申告をしないことに苛立った李明博政権が実力行使に出たと思いきや、そうではなく、逆に北朝鮮のほうが強硬手段に出たということです。韓国は言葉で「圧力」を加えたのに対して北朝鮮は行動で「圧力」を加えたということです。

 この北朝鮮の突発的な通告に韓国政府が「ならば結構だ。全員引き上げることにしよう。我々の職員を追放して困るのはそっちだ」と毅然と出ると思いきや、そうではありませんでした。当の金夏中長官は「北朝鮮は当局者だけに撤収を要求しただけで開城工団管理委員会など他の部門に足しては一切の言及がなかったので開城工団内の生産の支障はないものと思う」と釈明に追われていました。開城工団の稼動がストップして困るのは、韓国も同じです。なにしろ、2012年に完成すれば、最終的に2千万坪の工業団地となり、韓国経済に年間2、440億円の付加価値をもたらす事業ですから、そう簡単に誤破産とするわけにはいかない事情があります。

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2008年3月24日

李明博政権発足1ヶ月

 明日(25日)で李明博政権発足からちょうど1ヶ月です。大統領選挙で圧勝した李明博大統領への支持率はスタート当初は「期待している」が85%ありました。しかし、その後は下落し、「中央日報」の最新世論調査(3月22日付)では、「よくやっている」と答えた人は60.2%と、なんと25%も大幅減少しました。

 支持率が下がった理由については、3人の辞退に繋がった閣僚人事の人選ミス、4月総選挙に向けての党公認をめぐるハンナラ党の内紛、経済成長率を公約の7%から5%台への下方修正、ウォン安によるインフレなどが災いしています。さらに、総理、外相、国防相、統一相の主要ポストに金大中政権―盧武鉉政権に仕えていた人物らを再起用したことへの保守派の不満や、大統領就任から1ヶ月間、南北対話が全く稼動しないことへの革新系の批判なども支持率下落の要因となっているようです。

 当選前と当選後の李大統領の言動から保守派の中には「李大統領は豹変した」と公然と批判する声も聞かれます。特に、日本が熱い関心を寄せている対北朝鮮政策ではそれが顕著に現れています。

 李大統領は選挙期間中、「太陽政策の再検討」を強調していました。核問題が解決しない限り、盧武鉉―金正日首脳会談で合意した南北協力事業への本格的な参入は困難との立場を表明しました。核問題の解決なくして、「開城工業団地も金剛山観光も、拡大するのは難しい」と述べていました。また、前政権下では捕虜・拉致問題で大きな成果を上げられなかったとし、新政権下では人道・経済支援と引き換えに捕虜などの送還を要請すると言っていました。

 特に印象深かったのは、「一方的な譲歩はない。無条件の支援はない」「これからは人権も取り上げる。北朝鮮に対して厳しいことも言う」と発言したことです。この発言で太陽政策の変更を願う韓国内の保守派や日米の太陽政策批判派から拍手喝采を浴びました。

 しかし、この1ヶ月で随分様相が変わりました。外相に起用した柳明恒氏は2月27日、国会外交通商委員会人事公聴会で「南北和解と緊張緩和を追求することは、絶対命題だと考えている」と述べ、「北朝鮮に対する和解協力政策(太陽政策)の基調は変えられない。李明博政権でも和解協力政策は継続しなければならない」と発言しました。太陽政策の根本的な路線修正はないと発言したのです。

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2008年3月17日

米朝ジュネーブ協議は、不調?進展?

 先週(13日)ジュネーブで開かれたヒル国務次官補と金桂寛次官による米朝協議の結果を伝えた日韓のメディア論調は実にコントラストでした。

 日本のメディアは「溝埋まらず」「合意得られず」との見出しに見られるようにほとんどが冷めていました。それに比べて、韓国のメディアは「米朝核交渉は有益だった」(ソウル経済新聞)、「ヒル、『核交渉は進展』」(毎日経済新聞)、「金桂寛、『核協議は満足』」(ハンギョレ新聞)、「速度早めた協議、合意はまだ」(東亜日報)、「ヒル『6者協議膠着解決のアイデア提示』」(連合通信)と、近い将来の妥協、合意を暗示していました。

 誤解を恐れずあえて極論を言うならば、北朝鮮への不信が根強い日本のメディアの論調には「絶対うまくいくはずがない」との確信のようなものがあるようです。また、穿った見方ですが、「できたら、交渉が決裂し、米国も日本と一緒に北朝鮮に圧力をかけてもらいたい」との願望も込められているかのようでもあります。

 逆に、韓国のメディアは、その逆で、南北関係を進展させるためにも、また李明博物政権の公約である「非核・開放・3000」の対北政策(核問題が進展すれば、積極的な経済協力を行なう政策)を進める上でも「米朝交渉がまとまってもらいたい」との期待を反映させています。単純な疑問ですが、ジュネーブ協議は失敗したのか、それとも進展したのでしょうか。

 ヒル国務次官補は会談後の会見で「北朝鮮と非常に実質的で有用な協議を行った」「解決できたとは言えないが、一定の進展はあった」と述べています。また6者協議開催についても「含めるべき議題への理解が深まりつつある」と述べています。一方の金次官も「見解の差は狭まった」ことで「(会談には)満足している」と語っていました。両者の発言を接合しますと、妥協、合意に向けて接近しつつあるのではないでしょうか。

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2008年3月11日

「拉致工作幹部浮上」が意味するもの

 拉致問題が久しぶりにマスコミの俎上に載りました。朝日新聞が11日の一面トップで地村保志夫妻と蓮池薫夫妻の拉致を北朝鮮の工作機関「対外情報調査部」の当時のトップ二人が指示していたとの警察の捜査結果を記事にしたからです。名前も、当時部長だった李完基(イ・ワンギ)と副部長の姜海竜(カン・ヘリョン)と特定されていました。

 日本人拉致にはこれまでにキム・セホ、キム・ナムジン、ハン・グムミョン、チェ・スンチョル、キム・ミョンスク、ユ・スンチョル、シン・グァンスら7人の工作員が関与、もしくは実行したことが明らかにされています。

 金正日総書記は2002年9月17日の日朝首脳会談の席で小泉総理(当時)に「特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走って行なった」と釈明していましたが、対外情報調査部のNo..1とNo.2が直接指示し、調査部に所属する7人の工作員が実行したということは、日本人拉致は必然的に対外情報調査部の組織ぐるみの犯行という結論に達します。

 しかし、唯一指導体制、体系下の北朝鮮にあって対外情報調査部もまた上層部からの指令、許可なく勝手なことはできません。対外情報調査部を直轄しているのは労働党で、担当者は対南書記です。従って、対外情報調査部を指導する対南担当書記も、少なくとも日本人拉致を承知、もしくは指示していた疑いが浮上してきます。当時、対南担当は空席で、金正日組織・宣伝担当書記が兼ねていたと取り沙汰されています。そうなると、金総書記にも責任が及ぶ可能性が出てくると、韓国のマスコミは指摘しております。

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2008年3月 6日

「テロ指定」と「経済制裁」解除の行方

 核問題は膠着状態に陥り、6か国協議再開の見通しも立っていません。今月中に6か国協議が再開され、核計画の全面申告問題で進展、もしくは何らかの合意が見られなければ4月に発表される米国務省国際テロ活動報告書で北朝鮮は引き続きテロ支援国に指定されることになります。ケーシー米国務省副報道官は3日の記者会見で現時点では北朝鮮の同指定解除はないとの見通しを示していました。

 北朝鮮に対する日本の経済制裁も4月13日に見直しの期限を迎えます。それまでに日朝協議が再開され、北朝鮮が再調査に応じるなど、何らかの進展がなければ、これまた日本の経済制裁も解除されず、さらに半年間延長されることになります。

 米国も、日本も「解除」をちらつかせながら、北朝鮮に譲歩を、あるいは誠意を迫っていますが、思うようにいきません。北朝鮮が乗ってこないためいつまでたっても解除できないでいます。ある意味では、一種のジレンマに陥っています。

 それでも、米国にはまだチャンスがあります。ケーシー報道官は北朝鮮が核計画の申告など米国の要求に応じた場合、テロ報告書と関係なく解除に踏み切ることもあり得るとの認識を示していました。

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2008年2月21日

「韓国の統一部長官がライス長官になる日」

 韓国の政権交代により、外交通商部への統廃合を検討されていた統一部の存続が決まったようです。とは言うものの、統一部の組織と機能は大幅に縮小されるのは間違いありません。また、長官には南柱洪(ナム・ジュホン)京畿大学教授が就任するようです。

 今年56歳の南長官は英国(ロンドン大学)、米国(ハーバード大)で学び、帰国後韓国国防大学院で教鞭を取りました。金泳三政権で国家安全企画部安保統一補佐官を務めた後、民主平和統一諮問会議事務処長、統一部の統一教育審議委員などを歴任するなど自他共に認める北朝鮮通です。但し、対北強硬派として知られ、一部では「韓国のネオコン」と称されています。このため統一民主党や親北団体からは「南長官になれば、南北関係が再び緊張し、朝鮮半島の平和定着に影響を及ぼす」と、長官就任に反対しています。

 当の南柱洪氏は対北強硬論者とみなされていることを意識してか「多くの人が私のことをネオコンと呼んでいるようだが、そのような理念的な用語は使うべきではない。理論と実体、理想と現実はバランスを取らなくてはならない」と不快感を露にしていました。また、「私は、太陽政策の精神を批判したことはない。国益を守る上では最善を尽くすという次元から太陽政策の方法論を批判したに過ぎない。金剛山観光開発、開城工団の開発には反対しない。但し、核問題が解決しない状態で先行すべきではないというのが私の立場だ」と防戦に大わらわです。

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2008年2月 7日

米情報長官の発言を読む

 米CIAなどあらゆる情報機関を統括しているマコネル米国家情報長官が上院特別委員会に提出した北朝鮮関連報告書と同委員会の聴聞会(5日)で行なった「北朝鮮発言」は解釈の仕方によってはどのようにも受け止めることができます。

 まず、問題の高濃縮ウランによる核開発と核拡散活動について同長官は「我々は北朝鮮がどちらにも関与を続けていると信じている」(朝日新聞)と述べています。また、北朝鮮の核放棄有無については「金正日総書記が6カ国協議で合意した完全非核化の責務を果たすかどうかは依然、不透明だ」(産経新聞)あるいは「「確信が持てない」(読売新聞)と語っています。さらに報告書では「情報機関は北朝鮮が少なくとも過去にウラン濃縮能力を追求したと見ており、その努力が今も続いているという中程度の確信を持っている」(朝日新聞)と指摘していました。

 ウラン濃縮疑惑については「中程度の確信」に基づいて「信じている」ということのようです。韓国の連合通信はこの「中程度の確信」を「ある程度の確信」と訳していました。「確固たる確信」も「絶対的な確信」もまだ持っていないようです。
 また、核拡散については連合通信によると、同長官は「北朝鮮はすでに幾つかの中東諸国やイランに弾道ミサイルを売却したので我々は北朝鮮が核兵器も海外に拡散したかもしれないと憂慮している」と言ったそうです。

 「拡散したかもしれない」が日本のメディアでは「拡散する可能性を懸念している」と伝えられていました。ミサイルを売却しているわけですから、核を移転したとしても不自然でもないし、また、これからやるかもしれないとの不信を米国が抱くのは当然でしょう。しかし、どちらにしても仮定の話か、将来の話であって、現在「核拡散をやっている」と断定しているわけではありません。ですから「~と信じている」との表現を使ったのでしょう。換言するならば、北朝鮮に対して「疑惑を解明しなければならない」あるいは「これからは拡散させてはならない」という風にも聞こえます。

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2008年1月27日

政権交代で活気付く脱北者

 李明博大統領誕生による韓国の政権交代で誰よりも活気付いているのは脱北者のようです。金大中―盧武鉉政権下で10年続いた北朝鮮への太陽政策によって長い間日陰に追いやられていた脱北者らがやっと韓国で「我が春」を迎えようとしています。

 年末の12月27日にはソウル市内で「北朝鮮民主化ネットワーク」の忘年会が開かれました。挨拶に立った委員長の黄長燁元朝鮮労働党書記は「政権交代はまだ半分の勝利に過ぎない。北朝鮮の民主化のためにさらに戦わなければならない」と忘年会に出席した元タイ駐在参事官の洪淳京会長率いる「脱北者同志会」のメンバーや横田めぐみさんの夫が韓国から拉致された金英男氏であることを突き止めた崔成龍・拉致家族会代表ら100人を前に気勢をあげていました。

 韓国に脱北してきた人の数は昨年2月で1万人を超しましたが、その多くがこの10年間にやってきました。そして「左派政権」(黄長燁氏)下であったがゆえに北朝鮮に関する発言を封じ込められたと、不満を表しています。特に、黄氏ら党、軍、政府の要職に着いていた「大物」らは海外渡航も制限されていました。韓国の情報機関である国家情報院は脱北者らから重要な情報、証言を得ても、「北朝鮮を刺激してはならない」との政府方針に従い、情報を隠匿、隠蔽してきたそうです。

 しかし、李次期大統領は北朝鮮の人権問題について「批判のための批判はしないが、言うべきことは言う」と、前任者とは違い、北朝鮮の人権状況については黙認しないことを約束しています。政府内に「北朝鮮人権局」を作るかどうかは別にして、北朝鮮情報を一括する国家情報院は一変し、10年前に回帰するものと思われます。マスコミによる脱北者へのアプローチも解禁され、北朝鮮に関する秘密情報、スクープがかつてのように新聞紙上を賑わすことになるでしょう。

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2008年1月17日

「北の遅延」に米大統領予備選が影響

 北朝鮮は約束した核計画の全面申告を履行しませんでした。昨年12月のヒル米国務次官補の2度目の訪朝の際に口頭で申告したそうですが、中身は米国が期待していた完全で全面的申告とはほど遠かったようです。肝心の核施設の無能力化作業もまだ終了していません。北朝鮮が無能力化の作業ペースを遅らせていることが原因です。

 核計画の申告や核施設の無能力化と同時に6か国協議再開の見通しも立っていません。遅くとも年明けには再開できるのではと囁かれていましたが、どうやら2月に延びそうです。米国は韓国の李明博大統領就任式にライス国務長官が出席するため就任式の2月25日までには開きたいと打診していますが、北朝鮮が早期開催に難色を示し、まだ日取りは決まっていません。

 北朝鮮は重油提供の遅れとテロ支援国指定の解除を米国が躊躇っていることを遅延理由に上げていますが、それは表向きの理由であって、本当のところは、大統領予備選挙の成り行きを見守っているものと思われます。おそらく、共和・民主両党の大統領候補が正式に指名されるまでは、当分の間時間稼ぎに出るのではと危惧されます。時間の引き延ばしは、同時に後一年で任期切れとなるブッシュ大統領の焦りを誘うこともできるからです。遅延戦術で「一石二鳥」を狙う魂胆のようです。

 北朝鮮が次期大統領に民主党大統領を望んでいるのは自明です。ヒラリー、オバマ両候補とも北朝鮮との直接対話を重視しているからです。と言って、どちらでも良いというわけではないようです。どうやら本音ではヒラリー候補よりもオバマ候補を待望しているようです。その理由は、簡単です。ヒラリー氏が「当選しても直ぐには北朝鮮との首脳会談は行なわない」としているのに対して、オバマ氏は「当選すればワシントンでも、どこでも無条件で直ぐにやる」と断言しているからです。

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2008年1月 7日

拉致」の日朝対立に似てきた米朝対立

 ヒル米国務次官補が今日から韓国、日本、中国、ロシアの4カ国を歴訪します。6か国協議の合意事項であった北朝鮮の核施設の無能力化と核計画の申告が年内までに完了しなかったことへの対応協議が目的です。

 ところが、約束不履行を問われていた北朝鮮は4日、突如外務省スポークスマン談話を発表し、昨年末までに核計画を作成し、米国にすでに通報していると反論してきました。また、無能力化作業が遅れたことについては重油供与が遅延しているためその対抗措置として作業を遅らせていると釈明しています。北朝鮮は「行動対行動」の原則に基づき、米国によるテロ支援国指定解除や対敵国通商法の適用終了が必要との立場を重ねて強調していました。「後出しジャンケンは許さない」というのが北朝鮮の立場のようです。

 北朝鮮の唐突の発表に対してヒル次官補は昨年12月の訪朝の際に一部口頭による通報を受けたことは認めたものの、「公式な文書ではなかった」と説明しています。「申告内容をめぐって非公式な論議を行なったにすぎない」というのがヒル次官補の認識です。そのうえで、ヒル次官補は「北朝鮮は完全かつ正確な申告を行わなければならない」とし、完全かつ正確な申告とは「すべての物質や施設、計画を網羅することである」と釘を刺しています。

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2007年12月31日

今年1年を回顧する

 今年最後の更新となります。今年1年、朝鮮半島を振り返ると、昨年よりは情勢は全般的に好転したのではないかと思われます。

 昨年は北朝鮮の核実験、ミサイル発射実験、国連の制裁決議が10大ニュースの上位を占めましたが、今年は、7年ぶりの南北首脳会談の開催、6か国核合意、53年ぶりの南北鉄道連結などの明るいニュースが相次ぎました。

 こうしたことから南北と米朝、及び国際社会にとっては、「1歩前進の年」と評価できますが、日朝にとっては拉致問題が全く進展しなかったことや経済制裁が緩和されなかったことから今年も「不幸な1年」であったと言えます。それでも政府間交渉が3月にベトナム、9月にモンゴルと、2度開かれた分、昨年よりはましかと思います。

 来年は2月にニューヨークフィルハーモニの平壌公演が予定されております。この公演を機に米朝間に信頼関係が醸成されれば、核問題の進展→テロ支援国指定の解除→日朝交渉で北朝鮮の再調査表明→ライス国務長官の平壌訪問→金永南最高人民会議委員長の訪韓→南北米中の4か国外相会談→4か国による戦争終結宣言→米朝首脳会談→米朝国交正常化というシナリオも全くあり得ないとは言えません。

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2007年12月28日

外務省「「新トリオ」は拉致を解決できるか

 「日本国民の最大関心事」と騒がれた、あるいは「日本外交の最大課題」と位置づけられた拉致問題は、今年も解決をみないまま終わろうとしています。昨年9月に拉致被害者家族会や「救う会」が待望した対北朝鮮強硬派の安倍晋三政権が発足した時は、「拉致問題解決内閣」と称されるほど期待が高まりましたが、結局のところ拉致問題では何の成果も挙げられないまま、政権の座から去ってしまいました。

 その安倍政権の外交を支えてきた谷内正太郎外務次官も今度の人事で退任します。安倍さんと同じく対北朝鮮強硬派で知られる谷内次官は内閣官房副長官補から05年1月に事務方トップの外務次官に就任して以来、拉致問題では陣頭指揮を執ってきましたが、これまた拉致問題では何の業績も残せないまま、外務省を去ることになります。

 谷内次官の後任には藪中三十二外務審議官が就任するそうです。小泉政権下でのアジア太平洋州局長の頃に6カ国協議の首席代表を務めたことで知られています。また、外務審議官のポストには現在6か国協議の首席代表を務めている佐々江賢一郎アジア大洋州局長が、そして佐々江氏の後任には過去に日朝交渉で日本側代表を務めたこともある斎木昭隆駐米公使が昇格、昇進するそうです。

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2007年12月22日

李明博圧勝で「BBK疑惑」の行方は?

 韓国大統領選挙は野党・ハンンラの李明博候補が当選したことで、国民の次の関心は李次期大統領の「BBK嫌疑」(株価操作疑惑)との関連で与党が17日に強行採決して可決した特別検事法を盧武鉉大統領が受け入れるのか、拒否権を発動するのかにあるようです。

 ハンナラ党は与党の鄭東泳候補に得票率でほぼダブルスコアの差(48.7%対26.1%)(530万票差)を付けて大勝したことで国民の審判は下ったとして、盧大統領に拒否権の行使を求めていますが、盧大統領はどうやら特別検察官による疑惑追及を黙認するようです。

 特別検事導入法の公布期限は来年1月1日で、特別検事任命期限は1月11日までです。準備期間は7日で、捜査期間は本捜査30日と1次延長10日を合わせ最長40日間となるので延長期間を入れても捜査は遅くても2月27日までには終了します。

 最高裁長官から推薦される3人の候補から大統領が指名する特別検察官は検察から独立して捜査を行います。5人の検察官と40人の捜査員を使って、調査を行います。捜査の結果、疑惑が深まれば、召還もあり得ます。

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2007年12月17日

政権交代で歴史は繰り返されるのか

 日曜のサンデープロジェクトが新聞のテレビ欄で「韓国燃ゆ!大統領選で政権交代か」との予告を出していましたが、これほど盛り上がらない韓国の大統領選挙はかつてありませんでした。少なくとも、国民投票による直接選挙に移行した1987年から2002年までの過去4回の選挙に比べると、内外の関心度は比べものにならないほど低いです。それも当然で、投票を待たずして、ハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)候補に決まったも同然だからです。

 直前の各紙の世論調査を見ますと、朝鮮日報では李明博候補の支持率が45.4%。2位の与党=大統合民主新党の鄭東泳(チョン・ドンヨン)候補が17.5%、続いて無所属の李会昌(イ・フェチャン)候補の13.6%となっています。中央日報では、李明博候補が44.7%、鄭東泳候補が15.7%、李会昌候補が13,1%で、中道候補の李明博候補が圧倒的に有利です。絶対にあり得ないシナリオですが、仮に2位の左派候補と3位の右派候補が連合したとしても、ほど遠く、追いつきません。

 李明博氏への支持は、選挙前、それも昨年から続いています。慶尚道出身候補としては全羅道でも過去最高の支持を得ており、また、今回は最大の労働組合の韓国労組からも支持を取り付けています。日本に例えますと、民主党支持母体の連合が自民党支持に回るようなもので、これでは鄭候補に勝ち目はありません。前回、与党候補の盧武鉉大統領を支持した20~30代も今回は野党候補の李明博候補支持に回っています。

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2007年12月11日

ブッシュの「ラブレター」に金正日は?

 ブッシュ大統領が訪朝したヒル国務次官補を通じて金正日総書記に親書を送ったとのニュースは大きな波紋を呼んでいます。

 米国の大統領が、北朝鮮の最高指導者に公式に親書を伝達したのは、前任者のクリントン大統領に続き、これが2度目です。いや、正確に言うと、3度目となります。

 1度目は、1994年10月20日です。ジュネーブでの米朝核合意前日、金総書記に「私はすべての職権を行使し、DPRK(朝鮮民主主義人民共和国)に提供される軽水炉発電所対象の資金保障と建設のための措置を推進し、1号基軽水炉発電所が完成するまでDPRKに提供される代替エネルギー保障に必要な資金造成とその履行のための措置を推進することを貴殿に確認する」という内容の書簡を出していました。

 2度目は、2000年10月23日で、今回のヒル次官補同様に訪朝したオルブライト国務長官を通じて伝達されています。米閣僚として史上初めて訪朝したオルブライト国務長官が持参した大統領親書についてパウチャー国務省報道官(当時)は「米朝関係のさらなる発展を期待するもの」と説明し、今回同様に中身は公開しませんでした。

 このクリントン大統領からの2度目の手紙については、金総書記が手放しで喜んでいたそうです。その時までお抱え料理人として仕えていた藤本健二氏は「将軍は、幹部たちを集めて大宴会を催し、『クリントンから手紙をもらったぞ!』と言って、何度も乾杯を繰り返していた」と証言しています。

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2007年12月 6日

6か国協議延期の原因

 数日前、あるテレビ番組の取材で、朝鮮半島の今年を象徴する一字をフリップに書くように言われた時、迷わず「六」と、書きました。「六カ国協議」を指してのことです。朝鮮半島の今年は、6か国協議で始まり、6か国協議で終わると思ったからです。

 2月に再開され、米国の金融制裁の解除→北朝鮮の核施設の封印と凍結→5か国の重油支援→核施設の無能力化と進み、今日から再会される6か国協議で第2段階の最後の核計画申告が行なわれるはずでした。

 しかし、本日から開催予定の6か国協議は延期されることになりました。ケーシー米国務省副報道官は4日の記者会見で、年内開催に向けて「中国が日程調整に努めている」と述べていましたが、年内に開催されるかどうかは微妙な情勢となりました。

 その原因は、核計画の申告をめぐる米朝間の対立があったようです。訪朝(12月3-5日)を終え北京に戻ったヒル次官補は5日、金桂寛次官との会談で核計画申告の内容をめぐって相違が残り、合意が得られなかったことを明らかにしていました。ということは、米国がウラン濃縮計画や核拡散活動、抽出プルトニウムの量、核爆弾、起爆装置などすべての申告、即ち「完全な申告」を求めたことに北朝鮮が強く反発していると読み取れます。

 これまでの北朝鮮側の主張を検証する限り、北朝鮮が難色を示しているのはおそらく一般的に言われるようなウラン濃縮計画やシリアへの核協力ではなく、使用済核燃料棒から抽出したプルトニウムの量及び核爆弾の正確な申告ではないでしょうか。

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2007年11月19日

米国が日本の訴えを「却下」する理由

 北朝鮮に対するテロ支援国指定の解除を取りやめるよう米国に働きかけてきた日本の外交努力はどうやら無に終わったようです。福田総理よりも先に訪米し、指定解除反対のロビー活動を展開していた拉致被害者家族会などは、首脳会談の場で福田総理が自らブッシュ大統領に直訴しなかったことをその原因の一つに挙げていましたが、強く要求したとしても結果は同じかもしれません。

 総理が誰であったとしても、ブッシュ大統領を再考させることはできなかったと思われます。現に、前任者の安倍さんでさえもブッシュ大統領を翻意させることができませんでした。町村官房長官が外相時の5月に訪米した際、「米国が北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除するようなことがあれば、日本の人々は米国に見捨てられたと感じるだろう」と訴え、加藤駐米大使が「解除すれば、日米関係を損なうことになるだろう」と牽制してみても、どうにもなりませんでした。

 米国が耳を貸さないのは、一つは、グローバルな核問題に対して拉致は日朝間の地域問題であるとみなしていることです。実際には拉致は日朝間の二国間だけの問題ではありません。というのも、北朝鮮による拉致被害国は、日本以外にも韓国、タイ、ルーマニアを含め世界12か国(523人)に上ります。

 しかし、日本以外はどこもテロ支援国解除には反対していません。北朝鮮と国交を断絶した国は一カ国もありませんし、日本のように経済制裁を科している国もありません。タイにいたっては、前年よりも、北朝鮮との貿易を1億ドル増やし、気がつけば、4億ドルと、経済制裁の結果2001年の4億7千万ドルから1億2千万ドルに大幅減少した日朝貿易とは好対照です。

 次に、米国の安全保障上、国益上、核問題を優先させなければならないことです。将来、米本土に届くかもしれない北の核及びテポドン・ミサイルの開発・実験をこれ以上放置させるわけにはいきません。また、北の核問題の解決方式は、次に控えるイランの核問題を解決するうえでのモデルになると捉えています。

 さらに、指摘されていることですが、ブッシュ大統領が来年の任期中までに北朝鮮の核問題を解決することで外交成果を挙げたいとの個人的な野心もあります。まさかとは思いますが、北朝鮮の核放棄と米朝平和条約の締結をもって前任者のクリントン氏のようにノーベル平和賞を夢見ているのかもしれません。

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2007年11月10日

「よど号」犯出国でテロ支援国指定解除へ

 拉致問題の解決を優先する日本政府と、核問題の解決を急務とする韓国政府の立場の違いがテロ支援国解除問題をめぐって鮮明となりました。

 高村外相は8日、来日したゲーツ米国防長官と会談した際に拉致問題が進展しない限り、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除しないよう要請していました。ところが、現在訪米中の韓国の宋旻淳外交通商相はその翌日(9日)、北朝鮮の核無能力化への見返りとして、テロ支援国指定を解除する米政府に求めました。

 米国の右袖を日本が、左袖を韓国が引っ張る格好となっていますが、「ハムレットの心境」の米国は、「日本の立場を理解している」(ゲーツ長官)としつつも、「削除するかはわれわれの法に基づいて行う」(ヒル国務次官補)との立場です。

 米国内法に基づく解除の条件とは、①過去6か月間、国際テロ支援活動をしなかった②国際テロ支援活動をしないことを宣言する③「よど号」犯を日本に引き渡すの三つの条件を北朝鮮がクリアすることです。拉致問題は条件ではなく、「テイクノート」(留意)のようです。①も②もすでにクリアされており、問題は③の「よど号」犯の日本への送還です。

 ③ついては今月上旬来日したヒル国務次官補が、3日の都内での記者会見で「この問題で北朝鮮と協議中である」ことを明らかにしたうえで「我々は満足のいくような結果を得ることができる」と、極めて楽観していました。北朝鮮との交渉で何らかの手ごたえを得ているようです。

 想定される米朝間での「よど号」の解決策は、日本政府関係者が訪朝し、「よど号」犯を説得し、日本に連行してくるか、北朝鮮が一方的に国外退去させるかのどちらかです。日本政府が第一案を拒んでいることからどうやら第二案になりそうです。但し、出国策は日本ではなく、第三国、それも日本との間で犯人引渡し協定のない国が想定されます。直接日本に引き渡さなくても、北朝鮮から出国させれば、米国は③をクリアしたと解釈するようです。

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2007年10月27日

「北方領土交渉」に似てきた「拉致問題」?

 高村外相の発言が波紋を呼んでいます。何人かが帰国すれば、拉致問題に進展があったとみなし、6か国協議での重油支援や人道支援を再開するという趣旨の発言ですが、この発言に町村官房長官が次のように噛みついていました。

 「今ここで何人とか言うのは誤った印象を与える。あたかも何人かが帰ってきそうだとか、あるいは何っていう名前が出ているのではないかとか、そういう事実は全くない。あらぬ誤解を招く。やっぱりすべての拉致被害者の一刻も早い帰国を求めていく、その一点に尽きる。(高村発言は)なんの意味もない」

 町村官房長官の発言が正論です。しかし、進展がなければ、解決には繋がらないのも至極当然のことです。進展は解決に向けての前段階だからです。そこで、何をもって進展とするかとの定義もまた必要となってくるわけです。

 家族会の意向を代表している中山恭子総理補佐官(拉致担当)は「北朝鮮が拉致問題は解決していないとの共通の認識に立ち、拉致被害者全員を帰国する協議に入って初めて進展とみなすことができる」と言っておりました。従って「数人では話にはならない」との立場です。

 外相と官邸サイドのやりとりを聞いていると、先2島返還か、あるいは4島一括返還かの北方領土返還問題と似ているような気がしてなりません。但し、北方領土の問題では、ロシア側が2島ならば、返還に応じても良いと表明している分、まだましですが、北朝鮮は「何人かは返す」とは言ってないわけですから、日本のコップの中の議論は独りよがりの議論ということになります。

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2007年10月15日

今こそ「蓮池・地村証言」の公表を!

 先の南北首脳会談で金正日総書記が「拉致日本人はもうこれ以上いない」と語ったと報じられています。また、2日前に共同通信社社長と会見したNo.2の金英南最高人民会議常任委員長も「拉致問題はすでに解決した問題である」と語っていました。二人の発言はこれまでの北朝鮮の公式見解、立場を繰り返したに過ぎません。しかし、トップツーがここまで「断言」したとなると、日本が求めるような形の拉致問題の解決は容易ではありません。

 「拉致問題は未解決」との立場の日本が求める拉致問題の解決とは、ずばり「死亡した」と発表された8人を含む12人の政府認定の拉致被害者の生存と、拉致された疑いの高い特定失踪者らの存在を北朝鮮が認め、日本に帰国させることです。

 問題は、「拉致問題は未解決」の根拠が「8人は死亡していない」と確信しているからなのか、それとも「8人以外に他に生存者がいる」ためなのかは、不明です。ただ、日本政府が一貫して「拉致問題を解決しなければ国交正常化はやらない」とまで言い切るのはそれなりの「確証」があってのことのようです。その「確証」とは、帰国した拉致被害者らがもたらした「証言」ではないでしょうか。

 本日は、5人の拉致被害者が帰国してまる5年目となる日です。蓮池薫・祐木子夫妻は、3日前の12日、「未帰還者の帰国なくしては、私たちの拉致事件は終わらない」とのコメントを発表していました。地村保志・富貴恵夫妻も「拉致問題の早期解決のためできる限りの協力をしていきたい」とするコメントを出しています。蓮池夫妻は確か、子供らの北朝鮮からの帰国3周年を前にした5月21日にも「勉学に励んでいる子供らの姿を見ると、帰国していない被害者とその家族に思いをはせずにいられない」と述べていました。

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2007年10月 6日

核合意・南北共同宣言の後に日本は対北制裁延長?

 「やはり」と思っていましたが、盧武鉉大統領は福田総理から金正日総書記宛のメッセージを託されていました。盧大統領は金総書記に福田政権で対北朝鮮政策が変わる可能性について言及し、遠まわしながら拉致問題の解決を促したようですが、これに対して金総書記は「福田政権に代わったので日本の状況を見守っている」と答えたようです。

 福田政権になって、北朝鮮への政策がどう変わるのか、出方を注視してから対応するということらしいですが、政権与党の自民党は早々と10月4日、13日で期限切れとなる北朝鮮制裁措置の半年間延長を了承しました。政府もまた9日の閣議で再延長を正式決定するようです。安倍政権が取ってきた制裁措置はこのまま継続する方針のようです。

 日本としては、今後北朝鮮が拉致問題で少しでも誠意を示せば、人道支援の実施や制裁の一部解除など柔軟に対応する構えのようです。拉致問題解決のための「交渉カード」あるいは「取引材料」として温存しておきたいのかもしれません。
 但し、北朝鮮の核問題で一歩前進した6か国協議の合意文と朝鮮半島の緊張緩和と和平に向けた南北首脳会談の共同宣言が出た直後に経済制裁の延長発表というのでは、あまりにもタイミングが悪く、対外的印象もよくありません。

 自民党が制裁延長を了承した4日に発表された第6回6か国協議の合意文には「北朝鮮と日本は不幸な過去と未決の関心事案の解決を基盤に、日朝平壌宣言に基づき両国関係を速やかに正常化させるための真摯な努力をする。北朝鮮と日本は両国間の集中的な協議を通じこうした目的の達成に向けた具体的な措置を取っていくことを公約した」ことが記されています。

 極端な話が、日本の「真摯な努力」と「具体的な措置」が経済制裁の再延長か、と受け取られる恐れもあります。福田総理から直接協力を依頼され、「日本も福田政権になって変わるから、何とか」と金総書記を翻意させようとした韓国政府の面目は丸つぶれです。北朝鮮から「何も変わってないではないか」と言われれば、反論のしようがありません。

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2007年9月26日

北朝鮮のシリア核移転疑惑の推移

 北京で明日(27日)から再開される6か国協議を前に新たな難問が持ち上がりました。北朝鮮のシリアへの核拡散疑惑です。

 北朝鮮のシリアへの核協力疑惑を最初に伝えたのは、ニューヨーク・タイムズで、9月12日付に「イスラエル官吏らは北朝鮮が核物質の一部をシリアに販売していると考えているとみなしている」と報じました。

 これまでの米英の報道を整理すると、

 ①北朝鮮の貨物船が9月3日、シリア北部のタルトゥース港に韓国籍を装って入港した。

 ②貨物船から降ろされた荷物には「セメント」と書かれていたが、中身は核物質と設備である。

 ③イスラエル戦闘機が3日後の6日、貨物が移されたシリア北部の施設を空爆した。

 ④空爆前にイスラエルの先鋭部隊が、施設に侵入し、核物質を確保した。精密検査の結果、「北朝鮮産」であることが確認された。

 ⑤イスラエル政府はこの事実をブッシュ大統領に伝え、事前に空爆の了承を得ていた。

 あり得るかもしれない話です。ところが、米国務省のアンドリュー・センメル国務省核拡散防止担当副次官補が9月14日、「シリアは秘密供給者から核装備を獲得したようだ」とコメントしているにもかかわらず、ホワイトハウスはブッシュ大統領も、ライス国務長官も、ゲーツ国防長官も事実確認をしておりません。

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2007年9月17日

「拉致成果ゼロ」の安倍政権

 小泉訪朝、金正日総書記との日朝首脳会談からまる5年経ちました。この間、小泉さんの2度目の訪朝(2004年5月)で5人の拉致被害者の家族の帰国が相次いで実現したものの、横田めぐみさんや有本恵子さんら残り12人については依然として「消息不明」のままで、拉致問題は停滞したままです。

 昨日、拉致被害者家族や救う会などが決起集会を開き、拉致問題解決のため北朝鮮への制裁をさらに強化するよう求めていましたが、これは、当然の要求だと思います。というのも、安倍政権は「北朝鮮が誠意を示さなければ、制裁を強める」「拉致問題で進展がなければ、制裁を追加する」と何度も公言していたわけですから、「公約」である以上、約束はきちっと守らなければなりません。

 家族会らが信頼を寄せている中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)も確か昨年12月、拉致問題に進展がない場合の経済制裁強化について「そういうことも考えるのが、自然な流れだ」と述べ、検討に前向きな姿勢を示していました。今年3月の日朝作業部会に続き、今度の作業部会でも全く進展がなかったわけですから制裁を強化してしかるべきです。ところが、どういう訳か、肝心の中山さんの口からも「制裁強化」という言葉は聞かれません。

 「拉致問題」が看板の安倍政権が発足して、ちょうど1年。家族会の期待とは裏腹に安倍政権は何ら結果を出せないまま退陣することになりました。それでも、家族会や救う会からは安倍さんへの批判の声は一切聞かれません。むしろ同情的です。北朝鮮に拉致を認めさせ、被害者とその家族の帰国を実現させ、大きな成果を挙げて退場した小泉さんへの過小評価に比べるとあまりにもコントラストで、理解に苦しみます。自らが担いだ安倍さんを批判することは自己批判につながるという矛盾もあって庇うほかないのかもしれません。

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2007年9月13日

「安倍辞任」で拉致問題は動くか

 安倍総理の辞任は、順番からすると、韓国の盧武鉉大統領、ロシアのプーチン大統領、米国のブッシュ大統領の後の筈だったのですが、他の誰よりも真っ先に辞めてしまいました。

 「安倍辞任」には米国、中国、韓国をはじめ各国が素早い反応を示しましたが、北朝鮮は今も沈黙したままです。朝鮮中央テレビの放送を待つまでもなく、おそらく北朝鮮は諸手を挙げて「大歓迎」でしょう。拉致問題との関連で、北朝鮮に対しては「強攻策」で対抗してきた「憎き安倍」が辞めたわけですから当然かもしれません。

 安倍さんは各国の支持を取り付け、国際包囲網を築き、北朝鮮を孤立させ、経済制裁で干し上げ、譲歩を引き出す、という戦法をとってきました。世界各国に拉致問題を訴え、あさりも松茸も、船も止め、そして朝鮮総連も締め上げてきました。それでも音を上げなければ金正日政権のレジーム・チェンジも辞さないと、強気一辺倒でした。

 小泉政権の官房長官の頃から北朝鮮に妥協なき戦いを挑み、総理になった今は、まさに金正日政権とのチキンレースの真只中にありました。直前の所信演説でも「すべての拉致被害者が帰国を果たすまで、鉄の意志で取り組む」と、一歩も引き下がらないとの決意まで表明していました。それが、決着を見ないまま、レース途中で下りてしまったわけですから、これでは「敵前逃亡」と言われても仕方がないかもしれません。拉致被害者の家族が落胆、失望する気持ちもわかります。

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2007年9月11日

例の「スパイ事件」は米国!!

 北朝鮮の治安機関である国家安全保衛部は9月5日、北朝鮮国内で外国情報機関によるスパイを摘発したと発表しましたが、外国情報機関の国名や「経済人を装って潜入した」スパイの名前は今も伏せられたままです。そのため、日韓のマスコミの間ではこの「外国情報機関」がどこの国を指すのかに多くの関心が集まっています。

 日本では、逮捕されたのはもしかして日本人ではないかとの観測も流れました。日朝作業部会の当日に発表されたこともあって「日本を牽制するため意図的に仕組んだ」というのが根拠の一つにされました。一部では「中国説」も出回っていました。「相手が友好国の中国なので名前を公表できなかったのは」と。

 しかし、日本でも、中国でも、韓国でもありません。「スパイ事件」を発表した国家安全保衛部広報官が「帝国主義諜報謀略機関」とか「敵対勢力」という表現を使っていたことから当初から「米国」ではないかと睨んでいましたが、やはり米国の公算が高いです。と言うのも、北朝鮮の金英逸総理が8日の建国記念報告大会で「米国は対話の裏で我が国を内部から瓦解させる心理謀略戦を行なっている」と米国を批判していたからです。

 国家安全保衛部広報官の会見でも「敵対勢力は我が国を対象に心理謀略戦を行なっている」という文言がありました。広報官の発言と李総理の演説を照合すると、「外国」が「米国」を示唆していることがわかります。逮捕されたのは、おそらくCIAか、DIAのエージェントで、中国系朝鮮族か、米国籍を持った在米韓国人ではないでしょうか。「青い目」の外国人には北朝鮮で人目に付かず活動するのは不可能だからです。

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2007年9月 5日

日本の交渉担当大使はまた、「素人」

 「米国が北朝鮮をテロ支援国家指定から解除へ」との北朝鮮からの一報は、日本政府をパニック状態に陥れました。安倍政権は「そんなことはない」と平常心を装っていますが、内心穏やかではありません。
 
 昨晩、TBSのラジオ番組「アクセス」に出演し、この問題についてリスナーと議論しましたが、番組が本番直前にテロ支援国家指定解除の賛否をめぐる「世論調査」(電話とインターネットと街頭での聞き取り)をしたところ、電話では70%、インターネットでは68%、聞き取りでは64%が解除には反対でした。予想したとおりです。一般国民のおよそ3人に2人は「NO」ということではないでしょうか。

 米国が先の米朝作業部会で指定解除の手形を北朝鮮に渡したことは間違いありません。米朝間で「暗黙の了解」があったと見るべきでしょう。というのも、ブッシュ大統領が直前にはっきりと「私の任期中に核問題を解決する。私は決断した。北朝鮮も決断して欲しい」と言明していたからです。「北朝鮮とは交渉しない」「金融制裁は解除しない」「核問題には見返りを与えない」と言ってきたことを全部反故にし、北朝鮮との和睦に動き出したのは、すべてブッシュ大統領の「決断」によるものです。

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2007年8月30日

予想どおり、人道支援へ

 前回、「膠着した拉致問題打開の突破口のため、安倍政権が(人道支援という)「切り札」を切るのかどうか、注目される」と書いたところ、新任の町村外相は28日夜、各紙とのインタビューで、北朝人道支援を念頭に入れていることを明らかにしていました。

 「拉致問題と全部くっつけて考えるべきなのか。(豪雨被害は)基本的には天災で、そういう時は今までも主義・主張や社会体制を超えて緊急被害対策ということで(支援)してきたこともある。今、急遽検討している」と、その理由を語っています。

 「米国が緊急支援に踏み切ったから」「EU諸国も支援を表明したことで国際社会から孤立したくなかったから」「日朝作業部会で進展を図りたいから」と、動機については様々な見方がありますが、人道支援を行なうのは良いことで、その結果として、孤立が回避され、かつ日朝交渉が再開され、拉致問題の進展が図れれば、それはそれで良いことです。それが外交というものです。

 ただ、一つ、理に合わないというか、合点がいかないことがあります。10日前まではその気がなかったのに、なぜ急遽態度を変更したのか、腑に落ちません。確か、8月中旬の中国瀋陽での非核化作業部会に出席した佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長は「同情はしているけど、日本としては支援する計画はない」と語っていた筈です。外相が交代したからでは説明にはなりません。なぜならば、安部政権は経済制裁を対北朝鮮外交の柱としているからです。外相の「独断」が許されるならば、閣内不一致となります。その理由は以下のとおりです。

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2007年8月18日

安倍政権がまさか北に「人道支援」?

 中国瀋陽での「非核化作業部会」に出席した日本首席代表の佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長は16日、北朝鮮の豪雨被害に米韓両国が支援を表明したことの関連質問に「同情はしているけど、日本としては支援する計画はない」と語ったそうです。拉致問題で進展がないことや、日朝作業部会の日程が決まらないことへの苛立ちが、こうした「冷めた返事」となったようです。

 拉致問題を抱える日本の立場に同情、配慮したとしても、北朝鮮とは異なり、人権や人道問題を優先する国としての「回答」としては何か物足りなさを感じます。ペルーの震災には支援をするが、北朝鮮の被災には支援しないというのでは、「ダブルスタンダード」ということになります。北朝鮮大嫌いのブッシュ政権ですら、人道問題を政治問題と切り離し、北朝鮮に10万ドル(約1億1千500万円)の人道支援を決定したわけですから「坊主憎けりゃ~」の日本の対応は他の国々にはなかなか理解されないでしょう。

 隣人ですから、本来ならばお互い困ったときには助け合うのがあるべき姿です。日本は、飢餓が発生した95年の北朝鮮の大水害の際にはコメ50万トン(無償15万、有償35万トン)と医療品50万ドルの緊急支援を行ないました。また、翌年の96~97年にかけて合計で8万2千トンのコメを援助しました。2000年にも3月、10月とそれぞれコメ10万トン、50万トンの支援を行ないました。金額にすると、300億円は軽く超えています。その結果、北朝鮮の対日姿勢に大きな変化が生じ、2002年9月の日朝首脳会談に繋がり、金正日総書記がついに拉致を認め、小泉総理に謝罪しました。

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2007年8月 9日

南北首脳会談と拉致

 南北首脳会談が8月28日から3日間、平壌で開催されることが南北から同時発表されました。盧武鉉大統領の4年越しのラブコールに金正日総書記が応える形となりました。国内では安倍総理以上に不人気で、3,4月か月後に行なわれる大統領選で事実上終わる「死に体」の盧大統領からすると、誰もが無理と思っていただけに「してやったり」の心境しょう。前回の首脳会談での約束事であったソウル開催にこだわるどころの話ではなかったはずです。

 駆け込み的な首脳会談の開催は、南北双方にそれぞれの思惑があるものと思われます。盧大統領にとっては、レイムダック阻止し、大統領としての求心力を取り戻し、国内政局での主導権を握りたいとの考えがあります。特に、野党・ハンナラ党候補にリードされている大統領選挙の流れを変えたいとの狙いもあるとみられます。政権交代を阻止するための「強力なカード」に使う考えです。

 一方の、金総書記はどうかというと、「一石二鳥」どころか、様々な狙いが隠されています。第一に、韓国からの経済協力です。何しろ、会わなくても良いのものを、会ってあげるわけですから、相当な「土産」を期待しているものと思われます。7年前の金大中大統領の時は5億ドルを「献上」したわけですから、今回もそれ相応のものをあてにしているはずです。次に、大統領選挙に影響を与え、野党ハンナラ党候補の当選を阻止し、与党候補を当選させ、金大中―盧武鉉と2代続いた太陽政策を継承させることにあります。

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2007年8月 3日

妥協案のない拉致問題

 米下院が従軍慰安婦問題で日本政府に公式に謝罪するよう決議しました。2年前には北朝鮮に拉致問題など人権問題を改善するよう決議しています。第三者からみると、日朝双方とも人権問題には誠意を示していないと映るのでしょう。米下院の決議案は拉致問題を国際化し、北朝鮮に外交的圧力をかける安倍政権の対北政策に早くも影響を及ぼしております。

 マニラで開かれたASEAN地域フォーラムでの議長声明に拉致問題を盛り込むことに失敗しました。北朝鮮が従軍慰安婦問題をぶつけてきたからです。中国や韓国、東南アジア諸国との「共通の問題」を持ち出したため日本は正面から反撃できなかったようです。結局、喧嘩両成敗に立つ議長国のフィリピンが特定の国を名指しせず「人道上の懸念」という表現で折り合いを付けました。日朝双方の主張を採りいれた妥協案とのことです。今後国連人権委員会での決議を含め、連鎖反応が出てくることも考えられます。

 こうした雰囲気を察知したのか、麻生外相はフォーラムで拉致と過去の清算問題を一緒に議論する用意があることを表明していました。これに対して北朝鮮側は「日本の外相が過去の問題を関係正常化の中で論議しようと語ったのは、最近では少し異例のことではないか」(チョン・ソンイル外務省副局長)と前向きに評価したようですが、麻生外相の発言は日本にとって最優先課題である拉致問題解決に向けての呼び水であることは明白です。

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2007年7月26日

ボルドン前国連大使の「二重発言」

 ボルドン前国連米大使は北朝鮮に対して「圧力」から「対話」にシフトしたブッシュ政権の「路線転換」を酷評しています。最近も産経新聞(20日)に登場し、ブッシュ政権の対北政策が軟弱となった理由について「国務省の官僚が以前から求めてきた融和策にライス国務長官が乗り、大統領にも同意させたのだ」と不満をぶつけていました。

 また、朝日新聞(1月18日)とのインタビューでは6か国協議について「当初から6者協議に疑念を持っていた。交渉継続は代償を伴う」と批判し、ブッシュ政権が追求する解決策としての「リビア方式」についても「リビアと北朝鮮とは大きく違う。北朝鮮は94年の米朝枠組み合意でごまかしをした。満足できる検証の仕組みなしに合意はできない」と、北朝鮮とリビアの違いを強調していました。

 しかし、ブッシュ政権下で国務次官として北朝鮮外交を担っていたボルトン氏は当時、他の誰よりも6か国協議を重視していました。それを示す資料として2004年7月21日にソウル延世大学大学院での講演内容(概要)を紹介します。ボルドン氏の発言が終始一貫していないことがわかります。

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2007年7月21日

「久間発言」と「北の核」への日本人のギャップ

 北京での6か国協議は次のステップ(第二段階措置:核施設の無能力化とすべての核計画の申告)の完了期限を明記できずに終了しました。8月中開催予定の作業部会で実務的な話を詰めたうえで期限を設定するとのことです。期限を定めたほうが良いのは当然ですが、期限を決めてもそれを守らなければ意味がありません。

 初期段階(核施設の停止と封印)も「60日以内」で合意したにもかかわらず遵守されませんでした。期日を守らなかったからといってペナルティが科せられているわけでもないし、結局のところ、事を進めるためには相手を信用し、相手の「善意」にすがるほかありません。これが今の米国の立場でしょう。要は,期限が多少遅れても、北朝鮮に二度と核を使用できないようにさせることです。

 完了期限が決まらなかったことでブッシュ政権には焦りがあるかもしれませんが、安倍政権は逆に、ホットしているのではないでしょうか。完了期限の設定は自動的に、日本が核問題で協力(重油支援)するのかどうかの回答期限となるからです。拉致問題の進展がなければ協力できない日本にとってはこれで時間稼ぎができます。

 「拉致問題が解決しなければ」との日本政府の立場は、日本国内では「正論」かもしれませんが、6か国参加国を含め国際社会にとても通用するとは思えません。おそらく交渉人の日本首席代表を務める佐々江賢一郎外務省アジア大洋州局長も相当苦慮していることと推察されます。 

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2007年7月16日

北朝鮮が米国に「遺骨」の鑑定を要請

 昨日(15日)、都内のホテルで国際女性ビジネス会議が開かれました。「特ダネ」のコメンテーターとしても知られるイー・ウーマン代表の佐々木かをりさんが主催している働く女性のための国際会議で、今年はその12回目にあたります。筆者も友人の朝日新聞の高成田亨さん、ニューズ・ウィーク日本版前編集長の藤田正美さんと午後からの分科会に出席し、「アジアの中での日本」について語ってきました。

 あいにくの悪天候にもかかわらず、企業、団体、社会の様々な分野で活躍されている方々が多数出席され、1時間30分という短い時間ながらも、日本はアジアの中でリーダーになれるのか、日中を中心とした東アジア共同体の創設は可能か、日本は中国、韓国などアジアの国にどう向き合うべきか、さらには、米国との関係は将来どうあるべきか等等活発な意見交換が行なわれました。

 筆者もこれまで講演を含め多様な場で発言をしてきましたが、会場からこれほど多くの意見、質問が出されるとは予想もしていませんでしたので、正直参加者の真剣なまなざし、質問のレベルの高さにたじたじでした。今年3月にイー・ウーマン・サーベイで「拉致問題と核問題、どちらが優先課題だと思いますか」との問いかけをしたところ、数千件の回答があり、驚きましたが、今回出席して改めてキャリア・ウーマンの政治意識、問題意識の高さに感嘆した次第です。

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2007年7月10日

「安明進逮捕」の衝撃

 日本人拉致事件の「証言者」として知られる安明進が覚せい剤密売容疑で逮捕されるというニュースは日本のマスコミを震撼させました。拉致問題では日本のメディアのほとんどが安明進にお世話になっていたわけですから当然でしょう。安明進から情報を貰ったり、中にはタッグを組んで、中国で「北朝鮮取材」をしていたメディアもあったほどで、日本ではまさに「安明進様様」でした。

 仮に有罪となれば、安明進は日本への入国ができなくなります。となると、マスコミだけでなく、安明進の証言を拠り所にしていた拉致被害者家族会や「救う会」にとっては痛手でしょう。これまでのように「証言者」として集会に呼ぶことができなくなるからです。逆に言うと、「煙たい存在」だった安明進の逮捕は韓国政府にとっては願ったり、叶ったりでしょう。こうしたことから関係者の間ではもしかしたら「安明進ははめられたのでは」との声も出ています。

 いずれにしても、北朝鮮の麻薬の実態を暴露、告発していた当人が麻薬に手を染めていたというのでは話になりません。よほど金に困っていたのでしょう。安明進は定職には付いていませんでした。昨年は一時期、日雇い労働者をしなければならないほど困窮しておりました。

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2007年7月 5日

ヘギョンさんに横田滋さんのお見舞いを!

 拉致被害者家族会代表の横田滋さんが背中やお腹の痛みを訴え、先月26日から都内の病院に入院しています。実は、昨日(4日)は私の秘書(演劇役者)の舞台公演を観に来ることになっておりました。2年前に横浜での公演会場で鉢合わせして、初めて横田滋さんが私の秘書を応援していることを知りました。幸い、順調に回復しているとのことでなによりです。

 しかし、74歳という高齢に加え、2年前にも「血栓性血小板減少性紫斑病」という難病にかかり、長期間入院していたことを考えると、いつまで頑張れるか、気が気でなりません。代表を辞められるのも、体力的に限界を感じているからでしょう。おそらく気力だけで、持っているのかもしれません。それだけに早く拉致問題を解決しなければなりません。

 しかし、現状はどうかと言うと、残念ながら拉致問題は予想通り長期戦、持久戦となってしまいました。日朝両国とも解決に向けての突破口を見出せぬまま、相手の譲歩、屈服あるいはレジームチェンジ(政権交代)をひたすら待っているだけです。「制裁」と「非難」、「圧力」と「威嚇」という不毛の対立を繰り返すだけで、進展に向けて現実的、効果的な策を講じようとはしません。愚かなことです。

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2007年7月 3日

参議院選前に拉致被害者帰国の「仰天情報」

 「参議院選挙一週間前に拉致被害者を乗せた万景峰号が日本に入港する案が日朝間で台頭している」とのソウル発の「びっくり仰天情報」が飛び込んできました。発信源は脱北者らが運営する韓国インターネット新聞「ザ・デイリーNK(ノースコリア)」で、「日本の外交消息筋」の話として伝えています。

 同紙は、「現在、日朝両国は拉致問題を解決すべきであるという点で意見の一致をみている」とし、「どのような方法で解決するかが首相官邸及び金正日委員長の関心事である」と伝え「万景峰号入港案もその論議の中で出てきた」と書いています。日本のメディアには全く伝えられていないことが書かれているから奇妙です。

 一言で言って、荒唐無稽と言わざるを得ません。「ネタ元」の「日本の外交消息筋」は架空で、おそらく記者の自作による作文でしょう。記事を書いた記者は、経済制裁が解かれない限り、万景峰号が入港できない事実さえわかっていません。

 第二に、二日前に出された北朝鮮外務省スポークスマンの声明を読めば一目瞭然です。朝鮮総連本部売却問題との関連で「朝鮮総連弾圧策動を決して傍観しない。当該部門で必要な措置を講じる」と日本政府を非難していましたが、安倍政権のことを「安倍一党」と称していました。「一党」という表現は日本的に言うと「一派」あるいは「一味」という意味です。この敵意丸出しの呼称からも北朝鮮にその気がないことは明白です。

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2007年6月28日

「第二の平島筆子事件」の余波

 4年前に北朝鮮から日本に脱北してきた石川一二三(朝鮮名:ト・チュジ)さん突然北京を経由して平壌に帰ってしまいました。2年前に北朝鮮に戻った平島筆子さんと同じケースです。

 石川さんは北京の北朝鮮大使館で「悪い人間にだまされ(日本に)誘拐された」「日本は氷のように冷たかった」と語っていましたが、「悪い人間にだまされた」というのは、北朝鮮当局からそう述べるように言われたか、あるいは保身上そう言わざるを得なかったのかどちらかでしょう。北京の北朝鮮大使館で「金正日将軍万歳!」叫んだ平島さんを連想してしまいました。

 国から生活保護を受けながら、人道団体からサポートされながら「日本は氷のように冷たかった」と言うのは言い過ぎだとは思いますが、政府の場合、彼女から「冷たかった」と言われてもある意味で仕方のない面もあります。

 日本人妻や在日朝鮮人脱北者は法的には「不法入国者」あるいは「難民」扱いとなっているので、国籍を含め身分が定まっていません。このため就職もままならず落ち着いた生活ができません。また飢えた貧困の、怖い国から来たということで周辺から色眼鏡で見られ、疎外感を感じる脱北者もいます。

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2007年6月26日

IAEA査察への日米のギャップ

 国際原子力機構(IAEA)の代表団が今日、北朝鮮入りします。30日まで滞在し、凍結・封印対象の方法、手順について話し合います。合意すれば、査察団が訪朝します。ジュネーブ合意(1994年)に基づき北朝鮮に常駐していた査察官が追放(2002年12月)されて以来4年半ぶりの査察となります。査察は2週間で終わるようですから、7月中旬までには核施設は閉鎖されます。

 米国は核施設の閉鎖を待たずに6か国協議を再開し、また8月初旬にマニラで開かれる東南アジア諸国連合地域フォーラムで6か国外相会談の開催を検討しています。ヒル次官補の訪朝で米朝はこのタイムスケジュールでほぼ合意をみたようです。第二段階(無能化と核計画の全面申告)についても北朝鮮は「準備ができている」と語ったようです。ライス長官は、こうしたことから「北朝鮮には6カ国協議合意の義務を履行しようとする意志がある」北朝鮮の姿勢を評価する発言をしております。

 ところが、日本では安倍総理や麻生外相の発言からも「北朝鮮が初期段階を速やかに履行するかどうかわからない」と懐疑的な見方が支配的です。仮に初期段階が履行されたとしても次の第二段階では「もめてうまくいかない」と冷ややかです。北朝鮮に対する根強い不信感の表れとも言えます。

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2007年6月22日

「ヒル訪朝」と日本

 ヒル米次官補が急遽ピョンヤンを訪問しました。北朝鮮の首席代表である金桂寛次官に会い、来月に再開する6か国協議に向けての打ち合わせが目的ならば、中国で会えば済む話です。わざわざピョンヤンまで足を運ぶとは、よほど重大な使命を帯びているのでしょう。

 北朝鮮からの1年越しのラブレターに応じたのは、間違いなくライス国務長官やブッシュ大統領の意向でしょう。任期中に核問題を決着付けたいブッシュ政権とすれば、米朝国交正常化などに応じれば、本当に核を放棄するのか、北朝鮮から再度確約を取り付けたいのでしょう。一方の北朝鮮も同じで、核を放棄すれば、平和協定や国交正常化に応じるのか、ブッシュ政権の本心をヒル次官補から聞き出したいのでしょう。言わば、今回の「ヒル訪朝」は2月13日の「核合意」の基礎となった1月の米朝ベルリン合意の再確認にあると思われます。  

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2007年6月16日

次は、総連の許宗万副議長か

 島根、大分での講演のため二日間、東京を留守にしている間、朝鮮総連中央本部の土地・建物売却問題をめぐる幾つかの謎が徐々に解き明かされつつあります。

 これまでの報道を整理しますと、①売主の朝鮮総連の許宗万責任副議長と買主の緒方重威元公安調査庁長官の仲介者は元日弁連会長土屋公献弁護士ではなく、都内在住の不動産会社元社長であった②元社長はかつて住宅金融債権管理機構の債権回収を逃れようとしたとして強制執行妨害容疑などで逮捕された経歴がある③元社長は度々訪朝し、朝鮮総連とは深いかかわりがあった③35億円の出資者も元社長が斡旋し、緒方氏に紹介した④出資者は新宿にある経営コンサルタント会社の代表である。

 要は、許責任副議長が元不動産会社社長に売却先を依頼し、元社長が買主を見つけたうえで緒方氏に売買取引の受け皿になることを要請し、緒方氏が承諾したので朝鮮総連側から代理人の元日弁連会長土屋公献弁護士が出てきたというストーリーになります。

 単純に考えてみると、元社長が出資者の経営コンサルタント会社代表をダイレクトに総連側に紹介し、売買契約を交わせば済む話です。普通の売買契約ならば、わざわざ緒方氏のペーパーカンパニー(ハーベスト投資顧問会社)を経由させる必要はありません。理解に苦しみます。やはり朝鮮総連を提訴している整理回収機構(RCC)への対策上、緒方氏の名前、元肩書きが必要だったのではないでしょうか。それで緒方氏を間に挟んだのでしょう。

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2007年6月13日

「青天の霹靂」の朝鮮総連本部売却

 千代田区富士見町に本部のある朝鮮総連の土地と建物が売却されたと聞いて、驚きました。それも、売却先が元公安調査庁長官の緒方重威氏が代表取締役となっている会社と知って二重に驚きました。

 総連中央本部の売却により、東京都本部、機関紙の朝鮮新報社を含め飯田橋にあった「御三家」は全て人の手に渡るところになりました。朝鮮総連の牙城であり。総本山でもある中央本部の売却はまさに朝鮮総連の弱体化・衰退化を象徴しています。

 周知のように朝鮮総連は1998年以降に破綻した朝鮮信用組合(16組合)から引き継いだ不良債権(約2千億円)のうち628億円が総連向け融資だったとしてその返還を整理回収機構(RCC)から求められていました。総連は一部返還には応じるとしたものの、総額があまりにも大きすぎるとして、「値下げ」を要望していましたが、「値下げ交渉」は決裂し、結局RCCによる提訴となりました。判決は来月18日に下りますが、総連の敗訴は確実で、中央本部の差し押さえという事態が想定されていました。 朝鮮総連は判決を前に不動産を手放したということになります。

 こうしたことから関係者の間では差し押さえの前に先手を打って、不動産を処分したとの見方から、RCCに返済するため売却したとの見方まで様々です。問題は売却先です。元公安調査庁長官の会社「ハーベスト投資顧問株式会社」(資本金88万8888円)は昨年9月に設立されたばかりです。定款には投資顧問業や貸金業、経営コンサルタント業、不動産の売買・仲介・管理業が会社成立目的として書かれていますが、ほとんど営業実績のない会社です。

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2007年6月 7日

「脱北家族」への過保護

 日本政府は脱北家族に対してあまりにも過保護です。氏名も履歴も顔写真も公開しようとしません。二年前に日本人妻の平島筆子さんが帰国した時の対応も同じでしたが、その時はやむを得ませんでした。平島さんには北朝鮮に残してきた子供と孫がいたからです。

 ところが、今回の脱北家族には北朝鮮に残してきた家族は一人もいないということです。それが本当ならば、神経を使う必要性はありません。6年前に偽造パスポートを使って不法入国者した金正日総書記の長男、金正男のときはマスコミに好きなだけ撮らしたわけですから。

 今回一つわかったことは、夫婦は、56歳の元漁師と62歳の妻とのことです。姉さん女房は北朝鮮では本当に珍しいです。妻の家柄が良いから年下の男性でも結婚ができたのでしょう。妻の家系が気になります。

 また、専門学校生の長男は30歳で、たこでなく、いかの漁師の次男は26歳とのことですが、長男と次男は独身だったのでしょうか。年齢的には結婚しても、また子供がいても不思議ではありません。過去の脱北者のケースからしてこの場合は、リスクが伴うので残してきたか、離婚してきたかのどちらかです。もし、そうならば北朝鮮に残してきた家族がいるということになります。

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2007年6月 5日

「ボートピープル」の謎

 青森県深浦町で保護された脱北者家族の次男が微量ながら覚せい剤を所持していました。次男は「眠気覚ましのため持っていた」と警察当局に語っているようです。覚せい剤の「効能」を知っているということはおそらく初心者ではないでしょう。常用者の可能性も考えられます。密売者かどうかも含めて調べる必要はあるようです。

 家族は「新潟を目指して来た」と語っていますが、なぜ新潟にそこまでこだわる必要性があるのでしょうか。最初から韓国に亡命するのが目的ならば、日本の陸地ならばどこでもよかったはずです。日本にたどり着けば、新潟でなくても、青森からでも韓国には行けるわけですから。新潟に定住したいというなら話は別ですが、新潟に行かなければならない事情でもあったのでしょうか。

 家族は「(北朝鮮では)生活が苦しく、1日おきにパンを食べるのがやっとだった」と語っているようですが、事実ならば、栄養失調にかかり、脱北する体力も気力もなかったはずです。おそらくもやしのように痩せこけていてしかるべきなのにどういうわけか全員健康というから不思議です。

 また、家族は、次男がタコ漁をして一家の生計を支えていたようですが、本当に苦しければ、専門学校に通っている30代の長男は学校を辞めて働いてしかるべきなのにこれまた不思議です。

 陸路からの中国亡命にせよ、資金がなければ、脱北はできません。船も、エンジンも、燃料も、食糧も調達したようですが、「1日おきにパンを食べるのがやっと」の経済事情で、どうやってその資金を調達したのでしょうか。謎です。

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2007年6月 2日

中山訪米は成果があったのか

 ちゃちを入れるつもりはさらさらありませんが、拉致問題担当の中山恭子首相補佐官の発言を額面どおり受け止めてもよいのでしょうか。5月31日にホワイトハウスで会談した米国家安全保障会議(NSC)のワイルダー上級部長が「拉致問題に関して米国の立場は日本と完全に一致している。一体となっている」と言ってくれたと、中山さんは語っていました。 

 「完全に一致、一体」ということは、拉致問題が解決しない限り北朝鮮に対するテロ支援国指定を解除しないようにとの日本の要望を受け入れたということなのでしょうか。それならばよろしいのですが、できることならば、中山さんからではなく、ワイルダー部長の口から直接聞きたいものです。

 ワシントン駐在特派員はワイルダー部長にインタビューを申請し、是非そのことを直接質すべきでしょう。それがメディアの役割だと思います。というのも、参院選挙の出馬説が取り沙汰されている人の発言だけに訪米成果がやや誇張されているのではとの疑念がつきまとうからです。

 考えてみれば、中山さんの訪米目的は、米国を説得し、北朝鮮をテロ支援国指定から解除しないとの確約を取り付けることにありました。ところが、ワイルダー部長は肝心の点については何の確約もしませんでした。

 中山さんは前日には米国務省でスティーブンス筆頭国務次官補代理と会談し、同じように「拉致問題が解決しない限り、指定リストから解除しないでほしい」と要請していましたが、これまた「解除しない」との言質を取ることができませんでした。 ということは、訪米は空振りに終わったということではないでしょうか。

 先月の訪中もそうでした。6か国協議の中国首席代表である武大衛外務次官と会談した後、中山補佐官は「中国の皆さんが拉致問題をしっかり受け止め、日本の現状に理解が深まったと感じている。今後、どんな形で(中国が日本に)協力できるか、話ができる環境ができた」と報告していましたが、実際は中国政府が、予想以上に拉致問題への関心が低いとの心証を得たため、再度の訪中も検討しているとのことです。本当に理解が深まったならば、何も再度足を運ぶ必要はありません。本当のところ、中国から「もう少し柔軟に対応しなさい」と逆に説得されたのではないでしょうか。

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2007年5月29日

中国の「拉致問題」協力の深層

 中国当局が拉致問題の解決に向けて安否不明の日本人拉致被害者や特定失踪者に関する情報を独自に収集することで日本への協力を検討しているとの読売新聞(28日付)の記事をご覧になって、「中国も本腰を入れて日本にいよいよ協力する気になったか」と多くの方々は受け止めたのではないでしょうか。温家宝首相が4月に訪日した際に「必要な協力」を約束していただけにそう考えても不思議ではありません。

 肝心の協力の中身ですが、金日成総合大学に在学中の横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんを北京大学に留学させることで、横田夫妻との面会を可能にさせ、さらに、めぐみさんの「遺骨」として日本側に渡された骨を、中国の専門家が再度DNA鑑定をやるとのことです。一見、中国が日本側の立場に立って動いているかのようにみえますが、必ずしもそうとは言えません。

 第一に、キム・ヘギョンさんを中国に留学させ、横田夫妻と会わせるということは、はっきり言ってめぐみさんの死を受け入れさせることに目的があります。中国留学は、北朝鮮の同意なくして不可能だからです。「めぐみさんは死亡した」と主張する北朝鮮がヘギョンさんにその逆のことを言わすために出国させるはずはありません。
 
 ヘギョンさんは北京留学が終われば、父親のいるピョンヤンに再び戻ります。横田夫妻には親権がなく、引き取ることもできません。従って、北京で会えたとしても、夫妻が期待しているような「吉報」はほとんど期待できないということです。そのことを誰よりも熟知しているからこそ、横田夫妻はこれまで第三国でのヘギョンさんとの対面に難色を示していたのでしょう。

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2007年5月21日

「カンヌ映画祭」と「パッチギ!」

 カンヌ映画祭が話題となっています。SMAPの香取慎吾主演の「孫悟空」や木村拓哉主演の「ヒーロー」が、さらにダウンタウンの松本人志が監督した「大日本人」が出品されたことでワイド番組を賑わせています。驚いたことに北朝鮮からも金正日総書記が直接指導したと言われている話題作「ある女学生の日記」が出品されています。「800万人の観客が見た北朝鮮映画」がキャッチフレーズです。今のところ賞とは無縁ですが、フランスの配給会社が買い付けたようで、11月にフランスで上映されるとのことです。

 日本国内では在日の家族愛をテーマにした「パッチギ!」パートⅡが公開されました。2年前に公開されたパートⅠも絶賛されましたが、続編も早くから話題を呼んでいます。この映画を製作したのは、シネカノンで、昨年上映し、大ヒットした「フラガール」の製作会社です。「フラガール」は今年4月の日本アカデミー賞選考会で06年度最優秀作品賞を受賞しました。

 最優秀作品賞を受賞した時には、テレビの前で思わず拍手してしまいました。というのも、何を隠そうシネカノン代表の李鳳宇さんとは20年来の付き合いなのです。

 李さんは、日本映画文化の発展に功績のあった人(団体)に贈られる「淀川長治賞」も合わせて受賞しています。早速、ヴェルディ川崎の李国秀元監督や読売ジャイアンツの元エース、新浦さんら在日の仲間と共に内輪で祝賀会をやりましたが、それにしても、大手でない、独立プロが、それも新興の製作・配給会社が、日本映画の頂点に立ったわけですからたいしたものです。

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2007年5月20日

中韓が「拉致」で日本を支持?

 北京で行なわれた日中韓外務当局による初の高級実務レベル協議で中韓両国が、拉致問題の早期解決に支持を表明した、と出席した藪中三十二外務審議官が「成果」を強調していました。また、前日まで中国に滞在し、6か国協議の中国首席代表である武大衛外務次官と会談した中山恭子首相補佐官は「中国の皆さんが拉致問題をしっかり受け止め、日本の現状に理解が深まったと感じている。今後、どんな形で(中国が日本に)協力できるか、話ができる環境ができた」と、これまた自画自賛していました。

 中韓両国は具体的にどのような支持を表明したのでしょうか。ひょっとして「早期解決を願っている」と言ったことを、支持とみなしたのか、あるいは、日本政府が早期解決の手段としている「経済制裁」に支持を表明したのか、肝心のところが全く不明です。また、中国が拉致問題をしっかり受け止めたことで、理解が深まったとのことですが、何をどうしっかり受け止め、理解が深まったというのでしょうか。またその結果、今後どういうことが期待されるのか、あまりにも抽象的でわかりません。

 仮に両国が本当に日本の立場を支持するならば、北朝鮮との貿易量を少しは減らしてもよさそうなものですが、日朝貿易は相次ぐ経済制裁措置で2001年の4億7千5百万ドルから4分の1の1億2千万ドルにまで減少したのに、中朝は7億3千7百万ドルから2.3倍の16億9千万ドルに、南北は2億6千7百万ドルから約5倍の13億4千9百万ドルに急増しています。ミサイル発射と核実験があった昨年1年だけをみても、日朝は7千万ドルの減なのに、中国は約2億、ドル、韓国は約3億ドルも増やしています。日本にとって支持どころの話ではありません。藪中さんも、中山さんもこのことについて中国側に一言物を申したのでしょうか。

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2007年5月11日

駐韓米大使発言と中山訪中

 アレクサンダー・バーシュボウ駐韓米大使が9日、驚くべき発言をしていました。

 ピョンヤンを訪問し、帰国した韓国の政権党、ウリ党訪朝団と会った席で「今年9月までに朝鮮戦争終結宣言を行い、来年5月までに米朝国交正常化ができるようになればよい」と、米高位当局者として初めて米朝関係修復に向けてのロードマップを示しました。

 今年9月というと、オーストラリアでAPEC(アジア太平洋首脳会議)があります。また、北朝鮮にとっては9日が建国記念日にあたります。バーシュボウ大使は、「APECを前に戦争終結宣言を行い、平和協定を結びたい」と言っています。

 平和協定と米朝国交正常化は北朝鮮の長年の夢です。バーシュボウ大使は当然、「非核化と平和体制交渉は同時に進めなければならない」と、北朝鮮が非核化措置を履行することを条件としています。

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2007年5月 1日

テロ支援国指定継続へ

 米国は4月30日、2006年版のテロに関する国務省報告書を発表し、北朝鮮を引き続きテロ支援国に指定しました。米国がテロ支援国リストから解除しなかった理由として、報告書は二つの理由を挙げていました。

 一つは、拉致問題で「日本政府は北朝鮮の国家機関によって拉致されたとみられる日本人12人の消息の全面的解明を求め続けている」と指摘しました。
 もう一つは、「よど号」問題で「北朝鮮が1970年に日航機よど号乗っ取り事件を起こした元赤軍派メンバー4人をかくまっている」と非難していました。

 ブッシュ政権は、北朝鮮側のテロ支援国指定解除の要求を拒否し、拉致問題が進展しない限り、外さないでもらいたいとの日本側の要求を受け入れた格好となりました。訪米し、ブッシュ大統領に働きかけたばかりの安倍総理はホットしたことでしょう。

 しかし、気になることがあります。今回の報告書では日本人拉致以外韓国人拉致も含め他の外国人拉致については全部削除してしまったことです。また、昨年の報告書に比べて、日本人拉致に関する記述も著しく短縮していました。

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2007年4月26日

朝鮮総連への「ガサ入れ」

 渡辺秀子幼児拉致事件の捜査は、朝鮮総連関連施設への捜索から総連最高幹部らの参考人として事情聴取要請にまで発展しました。過去に総連中央本部を含め総連施設への強制調査や家宅捜索は何度かありましたが、国外移送目的略取容疑、即ち拉致事件との関連での「ガサ入れ」は今回が初めてです。

 呼び出しを受けている総連最高幹部とは、徐万述議長、許宗萬責任副議長、そして次期議長と目されている南昇佑副議長の3人のようです。疑惑の貿易会社「ユニバース・トレイディング」社を設立した金炳植第一副議長(当時)の下で当時、組織局長、国際局部長、そして総連系貿易会社を統括する「朝日輸出入商社」の主要ポストにあったことから「疑惑の対象」とされたようです。

 警察の捜索を「謀略的国策調査」と激しく反発している朝鮮総連が警察の事情聴取に協力するとは思えません。仮に警察が総連本部に赴いたとしても捜査に協力するとは考えられません。そうなると、令状を取っての連行ということになりますが、徐議長と許責任副議長のトップ二人は日本の国会議員にあたる北朝鮮の最高人民会議代議員です。果たして警察が証拠を固めて、あるいは別件で逮捕に踏み切れるかどうか、今後この「綱引き」が焦点となるでしょう。

 今回の警察の手入れで朝鮮総連に激震が走ったのは疑いの余地もありません。というのも、5月25日に結成52周年を迎える総連は現在、第21次全体大会準備の真只中にあるからです。まして、先の日朝作業部会で北朝鮮の宋日昊国交交渉担当大使が拉致被害者の再調査条件として「総連への弾圧中止」を強く求めたいただけに「まさか」という思いかもしれません。拉致問題では安倍政権が一切妥協も、譲歩もしないことを改めて思い知らされたでしょう。

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2007年4月23日

中山発言と「デッドライン」

 中山恭子首相補佐官(拉致問題担当)が18日、青森市での講演で北朝鮮に拉致された被害者のほとんどが生存しているとの見解を明らかにしたそうです。政府認定の拉致被害者のうち安否不明者は13人。このうち8人については「死亡」、残り5人が「北朝鮮に入国した事実はない」というのが北朝鮮側の回答でした。

 「ほとんど」ということは最低でも10人は生存している計算になります。立場上、いいかげんなことや、無責任なことを言えるはずがないだけに、これは極めて重大な発言であり、吉報です。どのような根拠、確証から断言されたのか、是非知りたいところです。

 中山さんの講演内容を聞いていつも思うのですが、拉致被害者家族会の信頼も厚く、曽我ひとみさんの家族を「奪還」した実績もある彼女を安倍総理がどうして北朝鮮との交渉に当たらせないのか不思議です。拉致問題の早期解決のためには専門外の外交官を再び日朝交渉担当大使に起用するよりも手っ取り早く、有効的だと思います。中山さんも外野で発言するよりも、自ら日本通で手強い宋日昊大使との交渉に乗り出したらどうでしょうか。

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2007年4月16日

ドタキャンされたマスコミの訪朝

 北朝鮮の名物出し物「アリラン祭典」が始まりました。2年ぶりの開催です。当初は外国メディアの取材も許可されていたのですが、土壇場になって不許可となりました。日本からも朝鮮総連のアレンジにより朝日、毎日、読売、東京の新聞4社とTBS、日本テレビ、関西テレビのTV3社が入る予定になっていましたが、これまたドタキャンとなりました。

 取材ではなく、祭典観覧など観光目的ならば、記者であっても限定的に受け入れるようですが、日本政府は現在、北朝鮮への制裁の一環として北朝鮮に渡航しないよう要請しています。制裁への北朝鮮の報復措置として現地で不測の事態やトラブルが起こりえる可能性が高いことや、その場合の身の安全が担保できないからです。

 今月10日に制裁をさらに半年間継続する閣議決定をしたばかりでした。1月の山崎拓前自民党副総裁の訪朝には不快感を示したのに、仮にマスコミの訪朝を止めようとしないならば、「ダブル・スタンダード」です。国家公務員だけでなく、一般国民も自粛の対象となっているわけですから、マスコミも例外ではないはずです。

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2007年4月 5日

8日の米知事の訪朝に注目を

 「BDA問題」が解決されないことから6者協議再開のめどが立たず、4月13日までの「核合意」初期段階措置の履行が危ぶまれていますが、時期が多少ずれることはあっても、合意が反故にされることはないと思います。6者協議は停滞したままですが、米朝の意思疎通は相当進んでいるようです。中でも注目されるのは8日のビル・リチャードソン・ニューメキシコ知事一行の訪朝です。 
 リチャードソン知事は民主党ですが、一行には共和党所属のアンソニー・プリンシピ前保勲庁長官が含まれています。ブッシュ政権になって中断した朝鮮戦争失踪米兵の遺骨捜索再開について話し合うことになっています。北朝鮮が同意すれば、ブッシュ政権への「プレゼント」となります。また、驚いたことにビクトル・チャー国家安全保障会議補佐官(日韓担当)も含まれています。チャー氏は6者協議の次席です。民主党知事の訪朝に共和党の元・現職の要人が同行するわけですからこれは只事ではありません。

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2007年3月28日

米朝外相会談で日朝は?

 バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮口座預金の返還遅滞で休会した6か国協議はライス国務長官の発言とおり、「BDA問題」が今月中に解決されれば初期段階措置の期限である4月13日までには仕切り直しされます。最短で4月初旬にも6者首席代表が北京に舞い戻り、協議を再開する可能性も考えられます。
 北朝鮮は送金が確認され次第、核施設の凍結と封印に着手すると公言し、すでにIAEAとの間でも「査察」の受け入れで合意していますので期限までの約束履行の可能性はまだ残されています。その見返りとしての5万トンの重油もIAEA査察官が北朝鮮に入国するのとほぼ同時に供給される見込みなので、仮に期限が多少遅れたとしても「核施設の凍結・封印対5万トン重油提供」のバーター取引は成立するものと思われます。
 初期段階が履行されれば、6か国による外相会談が日程に上ります。これまた、早ければ4月中にも開かれるかもしれません。現在のところ、開催日については4月18日、4月25日、5月2日の三つの説が囁かれています。北朝鮮では4月は11日に最高人民会議、15日に金日成主席生誕95周年、25日に人民軍創建75周年と、国内行事が目白押しです。

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2007年3月15日

日朝作業部会は再開されるのか

 今日、15日から北京で連続して作業部会が開かれます。「経済及びエネルギー協力部会」を皮切りに、16日には「北東アジアの平和と安全部会」、17日には「朝鮮半島の非核化部会」が相次いで開催されます。米朝の2度目の作業部会も6者協議が再開される19日までに行われます。ところが、米朝作業部会とタイミングを合わせて行われるはずの日朝作業部会は再開のめどが全く立っていません。ベトナムでの協議では作業部会の継続で合意をしていますが、日程については決まっていませんでした。
 原口幸市日朝国交正常化交渉担当大使は拉致被害者家族会への報告の中で「6カ国協議の枠組みの中で北朝鮮は拉致から逃れられない。日本としてはあせって(日朝協議を)懇願することはしない」と豪語したそうです。ベトナムでは「協議を続けても意味がない」と北朝鮮から協議打ち切りの通告を受け、慌てふためき、北朝鮮の大使館にまで出向き、協議再開を要請するというぶざまなところを見せただけに今度こそは「不動の姿勢」を示そうということなのでしょう。家族会にとっては何とも心強い決意表明です。
 原口大使はまた、家族会に対して「北朝鮮を犯罪国であることを踏まえて要求していく」と語ったそうです。被害国の立場から加害国を裁くということのようですが、1990年代の日朝交渉の場で北朝鮮が過去の清算問題をめぐって取っていた立場です。2002年の小泉総理との会談で金正日総書記が拉致を認めたことで立場が逆転したようです。日朝交渉を北朝鮮の国家犯罪を追及する場として捉えている日本側から協議開催を要請しないということは、追及される側の北朝鮮の方から交渉を「懇願」してくると原口大使は考えているのでしょうか。大変な自信です。

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2007年3月 9日

北の出方は本当に「想定内」?

 日朝作業部会は予想とおり何の進展もなく終わりました。日本側は作業部会での北朝鮮側の対応を「想定内」とみなしていたとのことですが、初日の午後の協議を一方的にドタキャンされ、仕切り直しの二日目の協議も僅か45分で打ち切られたことも果たして想定内だったのでしょうか。作業部会を前に外務省に対して「拉致問題の完全解決を目指して全力を尽くせ」と指示していた安部総理は成果が得られなかったのに「不動の立場を示すことができた」と述べていましたが、これまでの日本の立場は不動ではなかったということでしょうか。いや、ひょっとしてむしろ「不動の立場」を示したのは「拉致問題は解決済」と、頑として態度を変えなかった北朝鮮のほうかもしれません。「拉致問題をこれ以上持ち出すなら、協議を続けても仕方ない」とタンカを切って、初日の協議を午前で打ち切った北朝鮮に困惑して北朝鮮大使館にまで出向き、協議継続の説得したことは果たして「不動の立場」と言えるのでしょうか。 
 「毅然たる外交」を云々するならば、北朝鮮の「不誠実な対応」に怒り、席を立つべきは日本の方ではないでしょうか。北朝鮮が午後の協議をやらないと言うなら、「翌日の国交正常化交渉を拒否する」と、どうして強気に出られなかったのか理解に苦しみます。日朝協議が進展しないで困るのは、北朝鮮の筈ではなかったのでしょうか。塩崎官房長官にいたっては「具体的成果は得られなかったが、最低限、互いの立場を確認しあったことは一定の意味があった」と、自己満足していましたが、昨年2月に北京で開かれた日朝並行協議で互いの立場は確認されていなかったのでしょうか。確認されたから、平行線をたどり、物別れに終わったのではないでしょうか。なにをいまさらという感じです。日本政府は今回の作業部会で進展がなければ、「さらなる制裁」を口にしていました。であれば、北朝鮮からの回答はまさに「ゼロ回答」でしたので、当然追加制裁があってしかるべきだと思います。やるのかではなく、やれるのか、注視したいと思います。

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2007年3月 5日

「進展」とはまさかの合同捜索?

 日朝作業部会で拉致問題が進展するかどうかは、北朝鮮の対応いかんにかかっていますが、何をもって「進展」とみなすか、判断基準は難しいです。日本側としては、北朝鮮側が「拉致は解決済み」の主張を撤回し、「未解決」であるとの認識に立てば「1歩前進」とみなすかもしれません。「未解決」ということは、生存者及び特定失踪者がいるとの日本の主張が通ったことになるからです。また、これにより、「拉致問題の解決なくして、国交正常化はない」との日本の立場を内外に正当化することもできます。
 問題は北朝鮮がこれまでの主張を撤回するかどうかです。その可能性は極めて少ないと思います。仮に譲歩があるとすれば、「未解決との日本の立場は理解できないわけでもない」というのが精一杯でしょう。「死亡の事実を受け入れたくないとの気持ちはわかる」という程度のものでしょう。従って、北朝鮮が「未解決」に同意、もしくは拉致に関する協議に応じたからと言って、「進展」とみなすのは錯覚です。北朝鮮からすれば、そうした場はこれまでの主張を日本に受け入れさせる場としか考えておりません。

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2007年3月 2日

特定失踪者の娘が脱北?

 日朝作業部会の日程と場所、そして双方の責任者も決まりました。米朝作業部会(5―6日)直後の7日からベトナムで開かれます。双方の代表は案の定、昨年2月に決裂した日朝並行協議時の原口幸市日朝国交交渉担当大使と宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化担当大使です。1年以上も何の接触もないままのぶっつけ本番です。日本政府は当初、北朝鮮が調査の継続と情報提供を約束すれば「進展」とみなし、エネルギー支援に加わることを検討するとみられていましたが、1日に行われた安倍首相と麻生外相らの協議の結果、「調査の継続と情報提供を約束しただけで進展があったとは考えていない」(塩崎官房長官)と、「進展」のハードルを上げることにしました。
 一方、日朝作業部会の行方を案じる6か国協議首席代表のヒル米国務次官補は28日、下院外交委員会の公聴会で証言し、「解決のロードマップ(行程表)見出して欲しい」と期待を表明していました。と同時に「解決は、愛する者を失った家族にとって幸せでないケースもあるだろうが、家族は何があったのか説明を受ける権利がある」と発言していました。「幸せでないケース」とは穏やかではありません。思えば、ブッシュ大統領は昨年面会した横田早紀江さんに「娘さんはまだ生きていると思うか」と、ぶしつけな質問をしていましたが、今回のヒル発言といい、拉致被害者は生存していないとでも米国は思っているのでしょうか。

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2007年2月27日

日朝と米朝作業部会の行方

 安倍総理は25日、帰国した拉致被害者との面談の席で拉致問題の全面解決を誓いました。そのためにも日朝作業部会で成果が上がるよう努力するつもりだと語っていました。ところが、21日の衆議院外務委員会で麻生外相は「なにをもって拉致問題の解決といえるのか」との野党議員の質問に「何をもって解決かと言われれば我々にもわからない」と答弁していました。無理もありません。拉致問題解決の定義が誰にも分からないわけですから当然です。
 安倍総理が言う全面解決は、政府が拉致と認定した13件17人と特定失踪者30数人含めてのことだと思われますが、麻生外相曰く、「すべて生存しているとの前提に立ってすべての人々の全員帰国というのが我々の最終目標である。それが果たして可能なのか、できる状態にあるのか、正直言ってわからない」と、安倍総理の決意と異なり、弱音を吐いていました。
 この他にも「もしや」と家族から警察に捜索願いが出されている特定失踪者の件数だけでも9百件もあります。昨年末に政府が追加認定した鳥取の松本京子さんの拉致さえも宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交交渉担大使は今年1月に訪朝した山崎拓元議員に「知らぬ存ぜぬ」と否定したばかりですから、作業部会が開かれたからと言って、直ちに北朝鮮の「誠意」を期待するのは所詮無理かもしれません。

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2007年2月21日

拉致問題の「進展」とよど号

 6か国協議の合意に基づき遅くとも3月13日までには日朝作業部会が開かれます。日本は当然、懸案事項の解決、即ち拉致問題を話し合うことを最優先として臨み、一方の北朝鮮は、「拉致問題は解決済み」との態度を変えておらず、過去の清算と国交正常化交渉を前提に出てきます。早くも双方は入り口の段階で食い違っています。それだけではありません。開催場所もまだ決まっていません。米朝作業部会は米国と北朝鮮、ニューヨークと平壌で首席代表のヒル米国務次官補と金桂寛外務次官が相互訪問しながら、開催することで合意しています。日朝は、日本政府が経済制裁の一環として北朝鮮からの入国禁止と国家公務員の北朝鮮渡航自粛措置を取っている関係上、東京―平壌は不可能で、第三国の中国か、シンガポール、あるいはマレーシアあたりに決まりそうです。
 日朝作業部会の代表の顔ぶれが誰になるのかも、注目されます。6か国のうち中国の武大偉、ロシアのロシュコフ、韓国の千英宇の3人の首席代表はそれぞれ朝鮮半島の非核化部会、北東アジアの安全保障部会、経済・エネルギー支援作業部会の責任者に決まりました。米朝作業部会の共同責任者となった米朝首席代表を除くと、一人決まっていなのが、日本の佐々江賢一郎首席代表だけです。日朝作業部会を受け持つことになるとみられますが、北朝鮮側のパートナーは、金桂寛次官よりも格下のあの宋日昊(ソン・イルホ)日朝担当大使が出てくるでしょう。宋大使は、昨年2月に決裂した日朝平行協議の代表で、日本が偽者と鑑定した遺骨を返さない限り、交渉再開には応じないと、終始強気の姿勢を崩さなかった人物です。日朝作業部会が開かれても堂々巡りになる公算が高いです。
 日朝と米朝作業部会は平行して開かれますが、6か国合意では「ある作業部会における作業の進捗は、他の作業部会における作業の進捗に影響を及ぼしてはならない」と定められています。日朝作業部会が進展しないからといって、米朝作業部会の進展を妨げてはならないというふうにも解釈できます。米朝作業部会の議題は、テロ支援国家指定の解除と国交正常化です。日本政府は、拉致問題を盾に米国にテロ支援国リストから外さないよう米国の袖を引っ張っています。しかし、リストから解除しなければ、核問題は進みません。ブッシュ政権が拉致問題のため自国の国益である核問題を犠牲にするとは考えられませんが、日米同盟関係重視から簡単には解除に踏み切れないのもまた事実です。そこで、注目すべきは、最近日本政府が使い始めた拉致問題の「進展」という言葉です。

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2007年2月16日

6か国協議の「もしや」

 6か国協議は予想したとおり、米朝双方の歩み寄りの結果、合意しました。「歴史は夜につくられる」との「古言」がありますが、まさに会議を一日延長しての、それも徹夜の結果、深夜に電撃決着しました。「朝鮮半島の非核化への良い一歩」(ブッシュ米大統領)と、米国やEU諸国、タイ、インドなどアジア諸国、そして国連もIAEA(国際原子力機構)も世界中が歓迎のコメントを発表しています。東北アジアの、また世界の平和と安定を脅かす北の核脅威が平和的に除去される可能性が出てきたわけですから当然といえば当然のことです。父親が政権の座にあった1989年からクリントン政権、そして今のブッシュ政権と、3代にまたがり18年間も米国を悩ましてきた北の核問題が解決への一歩を踏み出したわけですから、ブッシュ大統領が今回の合意を「悪い妥協だ」と酷評したボルドン前国連大使を「彼は間違っている」と批判したのは頷けます。
 ブッシュ大統領は今回の合意についてかつての部下だったアミテージ国務副長官ら共和党内部から批判を受けていますが、面白いことに民主党からは批判の声はあまり聞こえません。今回の「核合意が」が13年前のクリントン政権の「ジュネーブ合意」に回帰したせいかもしれませんが、民主党が公然と反発しなければ、議会の抵抗を受けずに北朝鮮に約束した見返りを履行できるでしょう。一方、北朝鮮がジュネーブ合意を守らなかったように今回も約束を反故にするとの見方が支配的ですが、北朝鮮の今年の目標が「経済大国」「国民生活の向上」にあるならば、米国の経済制裁解除のため核施設の無力化(解体)までは100万トンの重油と経済制裁の解除を勝ち取るため約束を果たすものと推察されます。テロ支援国リストからの解除や米国の金融・経済制裁の解除、国連の経済制裁の解除なくして、経済再建も国民生活の向上も「絵に描いた餅」だからです。

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2007年2月 7日

金正男のマル秘情報

 金正日総書記の長男、正男氏が30歳の誕生日を日本で過ごすため妻と息子と女性の付き人を連れて、シンガポール経由で日本に入国しようとしたのが今から6年前の2001年5月。「パン・シオン」名義の偽造ドミニカ・パスポートが発覚し、成田から中国へ強制送還。それ以後、正男の消息については断片的な情報が流れていたが、後にも先にも日本のマスコミの映像にキャッチされたのは、3年前に北京空港に現れた時と、今度のマカオの2回だけである。奇遇なことに、いずれも6か国協議開催直前に忽然と現れている。それも、日韓の報道陣が多数押し寄せている時にである。
 日本で身柄を拘束され、無様な姿をさらけ出したことで、父親に勘当され、本国に帰れず、風来坊のように外国を放浪しているとの見方が日本では定着しているが、日本から国外追放された正男は、しばらく北京で静養した後、秘かに帰国している。翌年の5月には朝鮮コンピューター委員会委員長としてIT関連を統括する立場にある正男は北京で初めて開かれた北朝鮮ソフトウェア展示会を影で指揮した。1ヶ月後の6月には夫人と子供連れてロシアを訪問。モスクワで闘病生活中の母親(成恵淋=ソン・ヘリン)を見舞った。モスクワ郊外のシェレメチイエフ空港の貴賓室に家族と一緒にいるところを韓国の政府高官に目撃されている。20代~30代の女性2人とロシア大使館の男性一人が同行していた。一行は北京行きの便を待っていた。3か月後の9月には死去した母親の葬儀に出席するため夫人を連れて再度、モスクワを訪れている。

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2007年1月26日

急転直下の米朝妥協で日本は?

 米朝が核合意を目指して動き出しました。金融制裁問題では「金融制裁と6か国協議は別問題」「違法行為を中止するまで金融制裁を解除しない」との強硬策を貫き、核問題では「悪行には報酬を与えるつもりはない」「検証可能で可逆的な方法で核放棄しない限り、見返りは与えない」」と言明していたブッシュ大統領は「公約」をあっさりと撤回してしまいました。核施設の凍結とIAEAの査察受け入れを条件に金融制裁の一部解除とエネルギー、食糧支援を北朝鮮に約束するようです。ブッシュ大統領は北朝鮮がジュネーブ合意に反して濃縮ウラン核開発を秘かに進めていたことに激怒し、2002年12月重油と食糧を止めましたが、結局は現状復帰ということになります。換言すれば、ブッシュ政権もクリントン前政権と同じ道を歩み始めたということです。
 一方の北朝鮮も「制裁の帽子を被せられたままでは6か国協議には出られない」とか「核問題を話し合うには金融制裁の解除が先決」と強気一辺倒でしたが、これまた手のひらを返してしまいました。金桂寛外務次官は「なにごとも変化するもの」と「その理由」を語っていましたが、その通りで、結局、外交交渉というのは「妥協」がつきものだということです。ブッシュ大統領は23日の一般教書演説で北朝鮮の核問題ではたった一言、「6か国協議の場で解決する」と「決意表明」をしていましたが、ブッシュ大統領がその気ならば、金正日総書記にとっても異論のないところで、とんとん拍子に進めば、近い将来ブッシュ・金正日トップ会談もあり得るかもしれません。

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2007年1月15日

山崎訪朝の結果は

 山崎拓議員が4泊5日の訪朝を終え、13日の土曜日に帰国しました。平壌滞在中に宋日昊(ソン・イルホ)国交交渉担当大使と延べ5回、計15時間にわたって会談した結果が、「日朝平壌宣言は今なお有効であることを確認した」だけならば話になりません。平壌宣言については日朝双方とも無効だとは一言も言ってないし、6か国共同声明の中にも「日朝は平壌宣言に従って」という文言が盛り込まれているわけですからそれを確認するためわざわざ平壌に行く必要はないわけです。今回の訪朝目的だった核放棄の説得にも失敗し、ミサイルや拉致問題でも何の進展も得られず、肝心の日朝交渉再開の同意も取り付けられなかったばかりか、注目された小泉前総理の再訪朝については「話をしなかった」というならば、「何のために行ったのか」との批判が出るのは当然です。しかし、すべては予想された通りです。党3役でもなければ、閣僚でもない、まして政府特使でもない一介の政治家に多くを望むのは所詮無理な話です。
 山崎氏は宋大使以外にも複数の政府要人や労働党幹部と会ったが、先方の強い希望で名前を公表できないと帰国後語っていました。山崎氏とコンタクトを取っている平沢勝栄議員によると、宋大使よりもランク上の人物とのことのようですが、ランク上ならばあえて秘密に伏せる必要はなく、むしろ成果を強調したいならば、実名を公表してもよさそうなものです。そもそも、訪朝前から宋大使よりも格上の姜錫柱(カン・ソクチュ)外務第一次官(党序列41位)か、金養健(キム・ヤングォン)国防委員会参事(序列38位)らに会わなければ平壌に行く意味はないと言われていただけに公表しないのは不自然極まりありません。  

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2007年1月 9日

「山拓訪朝」に成果はあるか

 山崎拓議員が今日にも北朝鮮を訪問します。どうやら、今回は、米保守系メディア社長のC氏のルートのようです。訪朝目的について「核放棄を説得するため」とのことですが、それだけならば、北朝鮮が受け入れるはずはありません。一銭の得にもならないからです。北朝鮮が受け入れる理由のひとつは、この機会に言いたいことを言うつもりのようです。北朝鮮は拉致問題で日本の外務省は本当のことを日本国民に伝えていないと不満を持っていました。外務省への不信は半端ではありません。もうひとつは、山崎氏の盟友・小泉前総理の3度目の訪朝に期待を寄せているからです。山崎氏が再三にわたって小泉前総理に平壌訪問を促していたのは周知の事実です。山崎訪朝はその「前座」と捉えているのでしょう。「政治利用の相手」は山崎氏ではなく、安倍総理の後見人である小泉前総理です。小泉さんを通じて安倍総理を動かす、これが、北朝鮮側の狙いです。「小泉訪朝」という点で両者の思惑は一致したようですが、肝心の小泉さんは、その気がなさそうです。
 山崎訪朝については「二元外交は許されない」との批判的な声も上がっていますが、肝心要の外務省による外交交渉は、昨年2月以来、途絶えたままで、「二元外交」がどうのこうのどころの話ではありません。安倍総理は年頭記者会見で圧力、即ち、制裁の効果については「出てきていると感じている」と自慰的な発言をしていますが、制裁の効果とは、北朝鮮が交渉の場に出てきて、拉致問題で誠意を示してはじめて「効果があった」と言えるのです。換言すれば、北朝鮮が生存者の存在を、特定失踪者の存在を認め、日本に返してこそ「効果があった」と評価できるのです。北朝鮮経済に打撃を与えるのが制裁の本来の目的ではないからです。「制裁すれば、日本の思いとおり行くわけではない」と小泉さんが言っている通り、制裁一辺倒では拉致問題は解決できません。

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2007年1月 6日

再度の核実験はあるか

 北朝鮮が再度核実験を行うのではとの情報が駆け巡っています。情報の出所が昨年の核実験の動きをスクープした米ABC放送だけに無視できないのは当然かもしれません。根拠の一つとして、前回同様に実験場付近での人と車両の出入りが活発化していることを挙げていますが、北朝鮮は再実験をやらないとの約束もしてなければ、核実験場を閉鎖したわけでもないのでこうした動きがあったとしても驚くことではありません。衛星で撮られているのを承知のうえで行動しているわけですから、再実験の準備をしているのは十分に考えられます。但し、仮に再実験の準備に入ったとしても、実際に決行するかどうかは別の次元の話です。
 一番の問題は動機です。再実験を正当化するための口実がなければできません。その動機、口実とはずばり、米国が制裁を解かず、さらに強化した場合に限ります。金正日総書記が昨年訪朝した中国の唐家セン国務委員に対して米国が制裁を解除しなければ、再実験もあり得ることを示唆していました。また、金英春人民軍総参謀長が金正日最高司令官15周年記念祝賀大会で「米国が制裁と圧力を強めるならば、より強力な対応措置を断固として取る」と演説していました。従って、米国による金融制裁が解かれず、国連による経済制裁が強まった場合は必ず強行するでしょう。何度も強調してきましたが、北朝鮮が核に関しては「有言実行」の国であることを忘れてはなりません。

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2006年12月28日

米朝金融協議の行方

 6か国協議は何ら成果もなく、再び休会となりました。1回の協議で所詮成果を期待するのはやぼな話で、言わば予想通りの結果と言えます。考えようによっては13か月ぶりに再開されたこと、また決裂を意味する閉会ではなく、継続を指す休会となったことがささやかな「成果」と言えなくもありません。だが、米首席代表のヒル次官補が北朝鮮からクリスマス・プレゼントを期待して北京に乗り込んだのは間違いありません。それが、手ぶらで帰らざるを得なかったわけですから落胆するのは当然です。
 それもこれも、調停役の中国に責任の一端があります。米国に対しては「金融制裁の交渉に応じれば、6か国協議は進展する」といい加減なことを言い、北朝鮮に対しては「6か国協議に復帰すれば、金融制裁が解除される」とあてもない約束したことによります。中国の言葉を信じて、6か国協議に出てきてみたら、「全く話が違っていた」というのが米朝の感想でしょう。米朝両方にいい顔を見せようとした中国の「二面外交」はこの核問題での中国の限界、無力をはからずも露呈してしまいました。
 それでも、先行きをそれほど心配する必要はないと思います。6か国協議は物別れとなったものの、ヒル次官補は「解決への励ましになる前兆はあった」と、次回の協議に意欲を示しています。ライス国務長官も「1回の協議で結論を出すのは早すぎる。解決するまで協議を継続する」と、希望を捨てていません。米朝双方ともお互いに「政治決断を期待する」と、ボールを投げ合っていますが、いずれにしても、1月に再開される金融制裁協議が6か国協議の行方を左右することになります。

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2006年12月 3日

高英姫伝記からの真実

 金正日総書記の3番目の妻と称される、高英姫(コ・ヨンヒ)氏が本名(コ・チュンヘン)で柔道家の父親、高太文の生涯を綴った自叙伝「柔術愛国者」を7月20日に出版しました。全文227ページにわたる伝記は韓国の済州島から渡日した父親が1961年に北朝鮮に一家を連れて、帰国し、生涯を終えるまでの回想で終始していますが、興味深い、新たな事実が判明しました。第一に、正確な年齢がわかったことです。日本では「1953年生」が定説とされていましたが、正確には、1950年生まれでした。「11歳の1961年5月18日に帰国した」と書かれてありました。従って、生年月日は1950年6月16日ということになります。兄弟は、兄と二人の弟がいて、名前まで明記されていましたが、妹については一言も触れられていませんでした。妹夫婦が4~5年前に米国に亡命したため、彼女の存在を抹消したのかもしれません。
 次に経歴もわかりました。高英姫さんは、大阪の生野区で生まれ、生野区北鶴橋小学校に通っていました。朝鮮学校に通っていたというのは誤りでした。北朝鮮に渡ってからは5年後の1966年(16歳)で平壌芸術大学に入学、70年(20歳)に卒業後、国立民族歌舞団に入団しております。この年、映画「金剛山の処女」に踊り子として出演し、金正日総書記の目にとまったようです。71年には万寿台芸術団に入団、73年に退団し、平壌外国語大学に入学しています。大学卒業後は、朝鮮民俗博物館外国語講師として、また、その後は朝鮮芸術交流協会会員として訪朝する外国の芸術家らとの仕事にあたったとされています。

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2006年11月29日

6か国協議の前哨戦

 核実験を強行した北朝鮮に対する国連の制裁決議が採択されたものの国連加盟国の動きが鈍いです。制裁決議では、北朝鮮向け及び同国からの貨物検査を含む協調行動を必要に応じて取ることを全加盟国に要求したものの、実際に行動した国はインドや香港など数カ国しかありません。公海上で貨物検査された北朝鮮船舶はまだ1隻もありません。イランなど反米国家に至っては決議には従わないとまで宣言しています。核実験直後から制裁決議にいたるまでは臨検やらPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)の実施やら、さらには海上封鎖まで声高に叫ばれましたが、現状では掛け声倒れに終わった感は否めません。また、制裁決議には「大量破壊兵器関連の計画にかかわる政策に、人物や支持または宣伝を含め、責任があると認定した人物の入国や通過を阻止するのに必要な措置を講じる」と定められているのに制裁委員会は、制裁対象者名簿を今もって作成、発表しておりません。

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2006年11月11日

松本京子拉致関連証言

 6か国協議再開を前に「拉致問題を忘れてもらっては困る」とばかり、曽我ひとみさん親子の拉致実行犯の特定、指名手配に続いて、1977年(昭和52年)に鳥取県米子市で失踪した松本京子さん(当時29歳)を政府は近々、拉致被害者として認定する方針です。正式に被害者認定されれば、昨年4月に認定された田中実さん(当時28歳)に次ぎ17人目となります。政府が認定に傾いたのは、これまで行方がわからなかった親族から新たな核心に迫る証言を得られたこと、松本さんの失踪直前に現場付近の海上で北朝鮮工作船とみられる不審船が確認されていたこと、そして、脱北者による北朝鮮での目撃証言が決めてとなったようです。この脱北者の証言とは、実は、筆者が今から3年前にインタビューした元朝鮮人民軍偵察局大尉、金国石(キム・グッソク)氏を指します。彼とは現在でもコンタクトを取っていますが、当時の彼の証言を一部再現しますので、関心のある方は参考にしてください。

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2006年10月31日

ボールは北朝鮮に

 ブッシュ大統領も強気です。北の核実験はブッシュ政権に逆風どころかむしろ追い風になっているからでしょうか。核実験後に行われたある世論調査では北朝鮮の核実験後の支持率は僅かながら上昇したようです。安倍政権も補欠選挙を二つとも取りましたが、北朝鮮が挑発すればするほど、「なめられるな」「脅しに屈するな」との世論が高まり、支持を高めているのが実情です。北朝鮮は日米から譲歩を引き出すための脅し、あるいは圧力としてミサイル実験や核実験を強行しているようですが、今のところはすべて裏目に出ているようです。
 北朝鮮は中国を介して、「圧力を加えるなら、2度目の核実験も辞さない」と、米国を牽制していましたが、ブッシュ政権には全く効き目がないようです。逆に、米国は北朝鮮が6か国協議に戻ったとしても、核兵器を破棄しない限り、国連の制裁を解除しないとさらにハードルを上げてしまいました。ある意味では、全面降伏しないかぎり6か国協議に戻れないよう外堀を埋めてしまいました。さらに、北朝鮮によるドルの偽造を「国家ぐるみの犯罪」と断定する一方で、国連の経済制裁とは別に近々、新たな追加制裁を発表することにしています。禁輸制裁解除どころか、さらなる制裁を加えるわけですから、北朝鮮封じ込み政策に相当な自信を持っているのでしょう。

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2006年10月24日

ブッシュVS金正日

 北朝鮮の再度の核実験有無に関する「金正日発言」が注目を浴びています。当初は「2度目の核実験の計画はない」と言ったと伝えられていましたが、実際には「米国が金融制裁を解除すれば」「米国が我々に圧力を加えないならば」との前提条件付でした。裏を返せば、米国が禁輸制裁を解除しないので実験を続けるということになります。言わば、北朝鮮は2度目の実験の大義名分を得ようとしています。その通りならば、中国の説得は失敗に終わったことになります。それでも、中国が「幸いにも(訪朝は)無駄ではなかった」(唐特使)と手前勝手な評価をしたのは、カウントダウンに入っていた2度目の核実験をとりあえずストップさせたからではないでしょうか。北朝鮮とすれば説得のため平壌詣でした中国側の顔を立て、実験を猶予したまでのことで、中国が「核実験猶予」を手土産に米国説得に失敗すれば、金総書記は再び核実験のボタンに手を掛けることになるでしょう。
 国際社会は中国による北朝鮮説得に相当期待を寄せていたようですが、北朝鮮は鼻から中国の説得に聞く耳を持っていませんでした。そのことは、唐一行が帰国した直後の21日と22日の労働新聞の記事からも明らかです。21日の「先軍は自主政治実現の生命線」という論評に「大国の顔をうかがったり、大国の圧力や干渉を受け入れるのは時代主義の表れである。時代主義は支配主義の案内人で、その棲息の土壌となる」「干渉を受け入れ、他人の指揮棒によって動けば、自主権を持った国とは言えない。真の独立国家とは言えない」こと等が言及されていました。明らかにこれは、中国を指しています。

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2006年9月29日

6週間がタイムリミット?

 6か国協議の無条件復帰を迫る米国と、金融制裁解除が先だとする北朝鮮の綱引きは、米国による「国際包囲網」対「ミサイル発射」という双方の圧力の掛け合いがあったものの1年近くも膠着状態に陥ったままです。しかし、ここにきて、米国の方に若干変化が見られます。「米朝直接対話には応じない。米朝対話はあくまで6か国協議の枠の中で」「6か国協議と金融制裁は別問題」との立場を貫いていた米国が「6か国協議参加の意思さえ表明すれば、6か国協議前でも米朝直接会談を開くことができる」(バーシュボウ駐韓米大使)「6か国協議復帰を条件に米朝の間で作業部会を設置し、金融制裁問題を協議する用意がある」(ヒル米国務次官補)「6か国協議復帰の意思を示す場合、ヒル次官補の平壌訪問の可能性も排除しない」(バーシュボウ大使)と、6か国協議復帰を前提にしているものの軟化の姿勢を見せています。
 
 金融制裁討議のための米朝作業部会設置も、ヒル次官補訪朝もこれまで米国が拒んできたのは周知の事実です。また、日本とオーストラリアが経済制裁を発動したにも関わらず、米国がいまだ追加制裁に踏み切らないのも気になります。もちろん、ブッシュ大統領が弱気になったとは考えられません。おそらく、北朝鮮を6か国協議の場に引っ張り出すための誘引策と見るべきでしょう。だが、その一方で、米国が国連総会の場で計画していた10か国協議が中国の不参加で不完全燃焼に終わったことや、北朝鮮が核実験を示唆したり、原子炉から新たに使用済燃料棒を取り出し、年内まで再処理して、プルトニウムを抽出するとの「脅し」も影響しているのかもしれません。まして、金桂寛外務次官が「核物質が第3国に移転されないよう米国は憂慮したほうがよい」と牽制したようですが、米国がデッドラインとしている核物質の海外流出まで仄めかしたとなると只事ではありません。

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2006年9月21日

安倍政権下で拉致問題は解決!?

 安倍晋三官房長官は拉致問題で自民党総裁(総理)になったと言っても過言ではありません。それだけに拉致問題解決に向けた政治手腕に拉致被害者の家族だけでなく国民の多くが期待を寄せています。安倍官房長官が拉致問題で人気を博したのは、一貫して「毅然たる姿勢」を示したことに尽きます。「拉致をしたり、核を開発したり、偽札をつくったり、麻薬の密輸をやったりする北朝鮮に対話だけで、あるいは話せばわかると考えている人は能天気だ」「北朝鮮に一切の代償を与える考えはない」「落しどころもなければ、一切妥協するつもりもない」と、強気一辺倒の対北政策を取ってきました。拉致問題での安倍氏の発言には全くブレがありません。
 
 発言が終始一貫しているのは何も拉致問題だけではありません。歴史認識の問題でも同様です。実は、安倍氏は初当選した翌年の94年に今は袂を分かったかつての盟友・荒井広幸議員と共にソウルで韓国若手政治家らとの座談会に臨みました。その際、司会を担当したのが筆者でしたが、安倍氏が韓国の若手論客らと真っ向から遣り合い、一歩も引かなかったのを覚えています。12年経った今日でも安倍氏のこの問題での発言は変わっていません。良くも、悪くもそれが「安倍カラー」なのでしょう。安倍長官は拉致問題では「先を読めば、結果を追求できる」と言っています。圧力を加えれば、制裁を加えれば、北朝鮮は必ず折れてくるとの確信があるのでしょう。

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2006年8月25日

核実験はあるか

 北朝鮮が脅威と危機を意図的に煽っています。ミサイル発射で期待したほどの外交成果をあげられなかったどころか、逆に中国の離反で思わぬ国際包囲網に直面したためその打開策として切り札である「核カード」を今まさに切ろうとしています。そればかりではありません。軍部は8月21日から始まった米韓合同軍事演習を「休戦協定の無効化を宣言する戦争行為とみなす」と決め付け、「朝鮮人民軍は休戦協定の拘束を受けない」と宣言しました。朝鮮中央通信(KCNA)にいたっては何と「自衛のために必要と考えた時点で、先制措置を取る権利を有する」と発表しました。「先制措置」とは「先制攻撃」を指すことは言うまでもありません。

 相も変わらず工作員を送り込むなど韓国に対して挑発的な言動を繰り返しながら、その一方で、水害被害のための復旧支援や食糧援助を要請しています。韓国政府は人道的な観点と同胞愛から北朝鮮の求めに応じてセメント10万トン、コメ10万トンを含む総額で267億円相当の支援を決めました。戦争の危機を高めることで戦争を恐れる韓国や周辺国から譲歩を引き出すという北朝鮮による毎度お馴染みの戦術とも言えます。但し今回、軽視できないのは単に言葉の遊びに止まらず、核実験という不気味な動きを見せていることです。

 本来ならば、北朝鮮は昨年2月に核保有宣言をしたわけですから、失敗するかもしれない実験をあえて強行する必要はないわけです。すでに伝えられているように1998年にパキスタンで「代理実験」をやっているならば、なおさらです。放射能汚染があるかもしれない狭い国土で再度実験を強行する意味はないはずです。まして、核実験を実施すれば、今度こそ国連の経済制裁を免れないでしょう。そのようなリスクを犯す理由も見当たりません。前回最後まで国連安保理での制裁に反対した中国も今度は、黙ってはいないでしょう。

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2006年8月 1日

安倍VS金正日

 本格的な夏の到来とは逆に日朝関係は早くも「冬の時代」に突入してしまいました。拉致問題は「膠着」ではなく、完全に「凍結」してしまいました。日本はミサイル発射への制裁措置として万景峰号の入港を年内一杯止めましたが、この間は少なくとも拉致問題のための日朝政府間交渉は開かれそうにもありません。半年の間に北朝鮮が拉致問題で誠意を示し、6カ国協議に復帰すれば「凍結」氷解の可能性も考えられますが、北朝鮮は「拉致問題は解決済み」のスタンスを変えそうにもありません。また、ブッシュ政権が「金融制裁解除の交渉に応じない限り6カ国協議には戻らない」との頑な立場を貫いていることもあって事はそう簡単ではありません。と言って、「クリントン政権の過ちは繰り返さない」とするブッシュ政権も一歩も譲らない構えで、北朝鮮が譲歩しなければ、今後金正日体制の「レジムチェンジ」に向けて圧力を強める方針のようです。

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2006年7月17日

金正日の「チキンゲーム」

 本誌が予想したとおり、ミサイルは発射されました。そして、日本の必死の外交努力にもかかわらず予想されたように国連安保理での制裁決議は通りませんでした。しかし、日本にとっては、中ロ両国を含む全会一致で非難決議が採択されたことは大きな外交成果といえます。最も大きな成果は、「平壌宣言」という2国間の合意ではなく、「国連決議」でミサイルに歯止めをかけたことです。これにより仮に、北朝鮮が再発射を強行した場合経済制裁にとどまらず国連による軍事制裁の道が開かれました。そして何よりも北朝鮮の友好国である中国とロシアの両国が非難決議に加わったことは、北朝鮮の手足を縛る上で大きな効果を持ちます。

 決議に従うか、それとも逆らうのか、北朝鮮にとっては二者択一しかありませんが、これまた予想されたように受け入れを全面的に拒否し、今後とも発射実験を続けると表明しました。しかし、北朝鮮にとっての誤算は、中国とロシアがまさか、非難決議に同調するとは予想していなかったことでしょう。「大国は自らの国益のため同盟国も犠牲にする」との歴史的教訓を北朝鮮は自ら体験したことになりました。中国もロシアも北朝鮮との関係が悪化しないようあの手この手を使ってなだめにかかることが予想されますが、北朝鮮の反発はそう簡単には収まらないでしょう。仮にこれで、北朝鮮が手も足も出せないようだと、金正日総書記がブッシュ大統領に仕掛けた「チキンレース」は北朝鮮の「敗北」に終わるからです。

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2006年6月26日

テポドンと「金英男」

 日韓とも枕を並べてW杯一次リーグで敗退したことからマスコミのフィーバーも収まり、ワールドカップへの熱が冷めた感もあります。そうなると、再び、北朝鮮に関心の目が向けられるかもしれません。テポドン発射の動きに続いて28日からは北朝鮮の金剛山で横田めぐみさんの夫とされる金英男さんの親子対面があります。29日には日米首脳会談が開かれ、核・ミサイル・拉致に対する北朝鮮への共同対応が表明される予定です。すべては北朝鮮が鍵を握っています。まずはテポドンの動きですが、ミサイルは発射台に載ったままです。燃料の注入が本当に完了しているならばいつでも発射可能とみられるのですが、天候の問題以外にも米軍による軍事デモンストレーションも北朝鮮にとっては気になるところのようです。太平洋グアム周辺での空母3隻、艦艇30隻、軍用機280機を動員した最大規模の海上訓練が終わったと思ったら今度は2日後の6月25日から環太平洋でリムバックが始まります。北朝鮮の「反米月間」(6月25日―7月27日)にまるで合わせるかのように7月29日まで太平洋上で第3艦隊を含め50隻の艦艇、百数十機種の航空機、2万人以上の兵力が動員されるようです。米国のイージス艦「シャイロ」からのスタンダードミサイル(SM-3)によるミサイル迎撃実験成功のニュースも無視はできないでしょう。それでも、発射を強行するとすれば、よほどの決意と、自信があるのでしょう。軍事衝突にまでエスカレートするのは困りますが、米国が迎撃できるのかどうか、また北朝鮮が米国の迎撃を交わせるのか、「勝負」させてみたらどうでしょうか。米国のMD(ミサイル防御システム)には配備を検討している日本や同盟国が、また北朝鮮のミサイルにはイランなど中東諸国や南米の反米諸国が関心を寄せているだけになおさらです。お互いに「やるぞ、やるぞ」と牽制、威嚇しあっていますが、この「ミサイルゲーム」は降りたほうが負けです。国家の威信と面子をかけた「心理戦」の戦いは日米首脳会談が終了するのを待って決着が着くのではないでしょうか。

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2006年6月21日

テポドン・ミサイルは発射されるか

 発射するのか、しないのか、北朝鮮によるテポドン・ミサイル発射の動きに世界の耳目が集まっています。舞水端(ムスタン)基地へのミサイルの移動が米国の偵察衛星によってキャッチされたのが、5月10日前後。それから1ヶ月と10日以上経ちましたが、まだ発射にはいたっていません。発射しないのは、①燃料の注入がまだ完了していない②発射基地周辺で悪天候が続き、気象状況が悪い③着弾予定地としている太平洋沖で米軍が19日から空母3隻、艦艇30隻、軍用機280機、兵力2万2千人を動員して大規模の軍事訓練を行っているとの3つの理由が考えられますが、だとすると、燃料注入には3日もあれば十分なので仮に19日から始めたとしても明日までには完了します。米軍の軍事訓練も23日には終了するので、天候さえ回復すれば最短で24日の土曜ないしは25日の日曜日には発射されることになります。ちなみに25日は朝鮮戦争(1950-53年)勃発日で北朝鮮では「反米月間」のスタートの日にあたります。仮にテポドンを米国による金融制裁の解除を狙った交渉カードとして使っているならば、発射を遅らせているのは、ブッシュ政権からの「最終回答」を待っていると言えます。前回(1998年8月31日)のテポドン1号の時も状況は今と同じで、北朝鮮はクリントン政権による経済制裁に直面していました。事態を打開するためテポドンを太平洋に向けて発射したところ、クリントン政権は交渉に応じ、翌年の5月にペリー元国防長官を平壌に派遣し、経済制裁の一部を解除しました。続いて、2000年6月にはミサイル発射留保の見返りに大幅な制裁措置の緩和を発表しました。この年の10月には北朝鮮制服組トップの趙明禄(チョ・ミョンノク)国防委員会副委員長(次帥)とオルブライト国務長官による相互訪問も実現しました。クリントン大統領の平壌訪問と金正日総書記との首脳会談も後一歩というところまでいきました。結局、11月の大統領選挙で後継者のゴア副大統領が共和党のブッシュ候補に敗れ、米朝首脳会談は頓挫しましたが、金総書記とすれば、「夢をもう一度」と、一か八かの賭けに打って出たのかもしれません。

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2006年6月 6日

「金正日料理人」がまた「暴露本」

 2001年に北朝鮮から「脱北」するまでまる13年間も金正日総書記のお抱え料理人を勤めた寿司職人、藤本健二氏が再び「暴露本」を出版するようです。1作目の「金正日の料理人」(2003年6月)、2作目の「金正日の私生活」(2004年7月)はいずれも扶桑社から出版されましたが、今度の3冊目は小学館から出るようで、表題は「核と女を愛した将軍様」。早ければ、今月中旬には書店に並ぶようです。本誌が得た情報では、今回の本には著者自身が「将軍様は私を生かしておいたことを後悔するでしょう」と言うほど、これまで口が裂けても言うまいと「封印」してきた「最後の秘密」が明らかにされているようです。著者からすれば「今度こそ、やられるかもしれない」との覚悟の上で書いた「最後の告白」のようです。
 金大中・金正日トップ会談、鄭周永現代財閥名誉会長やプーチン大統領の訪朝など2000年に連鎖して起きた出来事に関する知られざるエピソードから始まり、金総書記がサングラスをかける理由から健康法、趣味にいたるまであらゆるプロフィーリングが書かれているみたいです。また、今もって死亡が確認されていない高英姫(コ・ヨンフィ)夫人の「死亡説」については巷間言われているような「乳がん説」ではなく、他に原因があると、その真相を初めて明らかにしたようです。また、高英姫夫人との間に生まれた二人の「王子」、正哲(ジョンチョル)と正雄(ジョンウン)、愛娘のヨジョンら秘密のベールに包まれたロイヤルファミリーのプライバシーもこと細かく描写されているようです。いま「テポドン2の発射」の動きが取り沙汰されているミサイルについてもすでに1995年の段階でインド洋まで飛ぶミサイルを手にしていることが、金総書記が召集した同年12月30日の党・軍幹部らの宴会でのやりとりの中で明らかにされているようです。この他にも、ピョンヤン郊外の22号招待所に最高司令部の核シェルターが存在すること、「金正男不法入国事件」で問題となった偽造パスポートが第三国で入手されていること、それら偽造パスポートを利用して、高英姫夫人や軍・党幹部らが夫婦同伴でお忍び外遊している事実が書かれているとのことです。

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2006年6月 3日

「金英男家族」の来日をめぐる「不協和音」

 横田めぐみさんの夫、金英男(キム・ヨンナム)さんの母(崔桂月=チェ・ゲウォル)と姉(金英子=キム・ヨンジャ)の来日で「日韓提携」が期待されていた日韓両国の拉致被害者家族及び支援団体の関係は「協調」どころか、残念ながら逆に「不協和音」を曝け出す結果となってしまいました。「週刊新潮」(6月8日号)が「『横田さん夫妻』も嘆く日韓支援団体の『内輪もめ』」という見出しの記事の中で書いているように、日韓の支援団体同士の「いざこざ」が原因です。今回、韓国からは「拉北家族協議会」の崔祐英(チェ・ウヨン)代表と「金英男家族」を引率してきた「拉北者家族会」の崔成龍(チェ・ソンヨン)代表が来日しました。崔祐英代表は女性です。「週刊新潮」にも触れられているように実は「家族協議会」と「家族会」は犬猿の関係にあります。元来は、一つの組織でしたが、4年前に内紛が起きて、分裂してしまいました。日本側はこれまで、崔祐英さんと横田夫妻が「義理の親子」関係を結んだことでもわかるように「家族協議会」を精神物心両面で支えてきました。そうした関係から招請側の「救う会」が崔祐英さんを窓口に「金英男家族」の日本招請も含めすべての事を進めようとしたことに崔成龍代表が反発したようです。結局、それが原因で、5月27日の「日韓連帯東京集会」と翌日28日の「国民大集会」また最終日(30日)のめぐみさんの拉致現場への視察も「母親の体調不良」を理由にすべてキャンセルしてしまいました。
 
 実は、その予兆は、横田早紀江さんらが4月に訪米した際にありました。ブッシュ大統領との面会のあと満面の表情で帰国した早紀江さんら拉致被害者家族会や「救う会」メンバーでしたが、5月に予定されていた横田滋さんの訪韓と「金英男家族」の訪日をめぐってはその段取りを任されていた「救う会」と「金英男家族」の代理人である崔成龍代表とはこの時点でギクシャクしていました。崔成英代表が当時ワシントンで日韓の友人に次のように語っています。「4月20日、私たちはワシントンでの北朝鮮への抗議集会に参加するためにこちらにやってきましたが、日本のテレビ局のアレンジで横田滋氏と生中継で話をしました。横田さんからワシントンを訪れる『救う会』の西岡氏と話し合って金英男さんの母と姉の訪日スケジュールを相談して欲しいと依頼を受けました。しかし、西岡氏からは一度電話連絡があり、『いま忙しいので、ブッシュ大統領と横田さんとの面会後に連絡する』と言ってきました。その後は夜中の2時まで連絡を待っていたのに結局なしのつぶてでした。日本側からは以前、5月10日前後にソウルへ横田夫妻を連れて行きたいという打診はありました。さらに金英男家族を6月10日頃に日本に招待したいという内々の打診もありました。ところが日本で国民大集会が6月11日から5月28日に変更になったので、5月末に来てくれと一方的な打診があっただけで正式な話し合いはしていないのです。日本側は日本側が言えば、韓国側がハイハイとおとなしくついてくると思っているのでしょうかね?金英男さんの母も80歳近い老齢で、関節炎に悩まされており、歩行も困難な状況です。そういう事情も知らずに一方的に『招待するから来てくれ』と言う態度はクビをかしげます。このままでは5月28日の日本の拉致大集会などには我々は行きません。我々が日本側に先に連絡する必要はないです。日本も韓国も同じ東洋の美徳を重んじる儒教の影響のある国です。本来なら妻の実家が夫の実家に挨拶にやってくるというのが、一般的ですから、その慣例に従って妻の両親である横田夫妻が韓国を訪問するのを待っているのですが、訪問時期に関しては相互で話し合わなければならないのに、西岡氏は一方的に通告してくるというやり方です。これでは気分いいはずはありません。日本での国民大集会はあちらで勝手にやればいいんです」

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2006年5月26日

南北鉄道と竹島

 ドタキャンとはまさにこのことを指します。北朝鮮は5月24日、翌日の25日に予定されていた南北鉄道連結による列車の試験運行を一方的にキャンセルしました。これにより遮断されていた55年ぶりの歴史的な列車運行は頓挫してしまいました。それにしても理解に苦しみます。4月の南北長官級会談で合意を見て、5月13日の鉄道・道路連結に関する実務協議で合意していたものをわずか、11日で「破棄」するとは誰が予想したでしょうか。これで、大韓民国民団と朝鮮総連の「歴史的和解」も一気に吹っ飛んでしまいました。直前になって北朝鮮の軍部が同意しなかったことが真相のようですが、一般に言われるように軍部の反発が米韓が定めた海上の北方限界線(NLL)をめぐる不満からくるものでなく、また、盧武鉉政権の足元を見ての援助の上積みでもなく、純粋に安全保障上の理由からのものであれば、6月下旬に予定されている金大中前大統領の列車による訪朝も実現は難しいでしょう。軍部にとっては核問題をめぐって米国の「脅威 」「圧力」が日増しに強まっている時に軍事要塞化された38度線周辺の「武装解除」はできないということなのでしょう。困ったのは、盧武鉉政権です。5月31日が投票日の全国地方自治体選挙ではそれでなくても与党・ウリ党が苦戦を強いられているのに北朝鮮による今回のドタキャンですからもはや敗北は必至です。野党・ハンナラ党は逆に勢いづいて、北朝鮮に対する政府の「太陽政策」を激しく批判しています。北朝鮮は盧武鉉政権の維持、継承を望んでいないのでしょうか。デタント、和解にに向かったかと思ったら、一転して緊張状態、対立に逆戻りする昔の悪い癖が出たようです。

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2006年5月12日

金英男を知る人物

 警察庁の拉致担当部長らが現在、訪韓中です。10日にソウル入りし、12日までの間、韓国側のパートナーと協議を行います。事は極秘裏に進められていますが、横田めぐみさんの夫、金英男(キム・ヨンナム)さんに関する情報交換がメインとなりそうです。日本側は金英男さんの拉致(1978年)に関わったとされる元工作員、金光賢(キム・グァンヒョン)氏の事情聴取を希望しているようですが、金光賢氏は1980年6月に韓国の西海岸に工作船で潜入したところ、韓国の警備艇に身柄を拘束された「北の人間」であることには変わりがありませんが、本人曰く、「当時、工作船で韓国に浸透したのは間違いない。しかし、自分は工作員を安全に送迎する戦闘員で、拉致などに直接関わる工作員ではなかった。従って、工作員が何をやったのか知らされてないし、従って、金英男さんの顔も知らない」と、拉致の事実を否認しております。日本では工作員と戦闘員を混同しています。金光賢氏の言うように双方の任務は明らかに異なります。1997年に韓国の東海岸、江凌に北朝鮮の潜水艦が浸透し、韓国軍に掃討された事件がありましたが、唯一生け捕りされた乗組員もやはり戦闘員で、工作員ではありませんでした。当時筆者へのインタビューでこの乗組員は「潜水艦には3人の工作員を送迎するため戦闘員のほか、船長や機関長ら乗務員が20人近くが乗船していた」と語っていました。もちろん、工作員のほうが戦闘員よりも格上です。ちなみに、拉致問題で日本のマスコミに登場している安明進氏も正確に言えば、工作員ではなく、戦闘員です。それを日本では勘違いされています。

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2006年4月25日

竹島と金英男

 「竹島」(独島=韓国名)海域をめぐる「日韓のチキンレース」は、中国のメディアが「日本に有利に終わった」と報じているようにどう見ても日本の勝利に終わりました。「拿捕など実力行使も辞さない」と強気一辺倒だった韓国政府は「6月の国際会議に韓国が海底地形の韓国名称申請を断念しなければ我々としても海洋調査を実施せざるを得ない」との日本の「毅然たる外交」の前にあっさりと「降伏」(ノ・フェチャン韓国民主労働党議員)してしまいました。韓国の野党はこぞって、日韓の妥協を「韓国の完敗」と称し、また日韓合意文については「韓国の実質的降伏宣言に等しい」と盧武鉉政権の対応を激しく批判しています。日本の海洋調査を中止させたことで「韓国が勝利した」と伝える韓国外交通商部のホームページには国民から非難のメールが殺到し、一様に「屈辱外交」「弱腰外交」「売国外国」と罵倒しています。日本のマスコミの一部には支持率急落の盧武鉉政権は「竹島を利用して、国民の反日感情を煽ろうとしている」と評したところがありましたが、実際は逆で、日韓の紛争に冷静に対応し、事態の悪化を防ぎました。煽るどころか、むしろ事態を沈静化させたのです。それが理由で野党やマスコミ、国民に袋叩きにあっているわけですから、あまり物事をステレオタイプ的に見ないほうがよいのではないでしょうか。

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2006年4月13日

「韓国人夫」で「日韓提携」は可能か

 横田めぐみさんの夫が1978年8月に拉致された韓国人(金英南さん)であることがDNA鑑定の結果、判明したことで日本国内では拉致問題解決に向けた「日韓協調」「日韓共闘」への声が上がっています。北朝鮮による韓国人拉致が初めて立証されたことで韓国メディアは拉致問題の解決を迫らなかったどころか南北関係改善という大儀名分のため「拉致」という言葉さえ避けてきた韓国政府への批判を強めています。特に、先頃北朝鮮の金剛山で行われた南北離散家族再会の取材の際、「拉致」という言葉を使った韓国のTV関係者が北朝鮮当局から追放処分にあったことに抗議し、韓国側取材陣全員が金剛山から総引き揚するという事件があったばかりなので、韓国マスコミは今回の件については敏感に反応し、大書特筆しています。今後の関心は、日韓が連帯できるのかどうか、拉致問題で共同歩調が取れるのかどうかにあります。拉致被害者家族の方々、また拉致問題に関心を持つ団体やNGOなどの組織は当然提携を強めていくものと思われます。また、これを機に双方の警察と司法当局間の情報交換も行われるものと推察されます。問題は、政府間による「協調体制」です。ズバリ言って、現状では困難なように思われます。第一に、協調できるような日韓関係ではないということです。小泉総理の靖国参拝問題で、両首脳は今も会談できない状態が続いています。また、教科書問題や歴史認識問題、さらには竹島(独島)問題をめぐって外交摩擦も続いたままです。北朝鮮の核問題への対応をめぐっても北朝鮮の核(軽水炉)の平和利用をめぐっても日韓の足並みは揃っていません。このような状況にあって拉致問題での「共闘」は韓国側からすると考えられません。

 第二に、拉致問題解決をめぐる手法が異なるということです。日本は「圧力」(制裁)を手段に用いていますが、韓国は対話一本槍です。「拉致問題の解決なくして食糧援助も国交正常化もない」という強気な姿勢は、今の韓国政府には取れそうにもありません。「拉致問題の解決なくして、経済援助はない」とのスタンスに立てば、日本と一枚岩になって北朝鮮にプレッシャーをかけることができるのですが、韓国政府は逆に北朝鮮に経済援助を行い、南北関係を改善することによって解決の道を考えています。韓国は来年12月に大統領選挙があります。現状のままだと、野党(ハンナラ党)に政権が交代する可能性が極めて高いです。今のノ・ムヒョン政権の人気が低落しているのが原因です。そのため起死回生の手段として、キム・デジュン前大統領の訪朝や2度目の南北首脳会談の開催を画策しています。キム前大統領の訪朝は早ければ6月に、また南北首脳会談も早ければ10月にも開かれるのではとささやかれています。こうした現状にあって、韓国政府が日本のように「拉致問題」で毅然たる態度が取れるかどうか甚だ疑問です。

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2006年4月 7日

金桂寛来日とDNAとNHKスペシャル

 横田めぐみさんの夫ではないかと取り沙汰されている韓国人拉致被害者のDNA鑑定結果がまだ出ません。日本政府が2月中旬に韓国に調査団を派遣し、1977-78年に韓国から拉致された5人の韓国人(当時高校生)家族のDNA(血液、唾液、髪の毛)採取を終えたのが2月16日。過去2度の鑑定(ヘギョンさんのDNA鑑定とめぐみさんのものとされた「遺骨」のDNA)が3週間もかからなかったことから3月8日までには発表があるものと期待されていましたが、それから1ヶ月経った今日に至っても発表がありません。しびれを切らした横田夫妻が3月29日に外務省に赴き「どうなっているのか」と問合せたところ中山政務官は「近いうちに発表する」と答えていました。それで、今週中には発表があるだろうと待機していたところ、昨日になって「発表は11日以降になる」と、また遅らせてしまいました。DNA鑑定に手間取っているとはにわかに信じられません。というのも、5人のうちヘギョンさんと同じ血液型は2人だけなので簡単に絞られるはずです。ということは、鑑定は終わっているのに発表を意図的に遅らせているのではないでしょうか。おそらく今日到着する金桂寛外務次官一行の来日と無縁ではないでしょう。9日から始まる民間主催のセミナーには米国のヒル外務次官補ら6か国協議の各国首席代表らが全員揃い、6か国協議再開に向けた公式、非公式の接触が行われます。また、日朝間の非公式折衝も予定されています。政府はこのタイミングでの発表はまずいと判断したのかもしれません。ということは、発表はセミナーが終わり、北朝鮮代表団が帰国した直後ということになりそうです。しかし、韓国政府が今月に入って独自にDNA鑑定を行うため日本側に協力を要請してきたところをみると、どうやら、韓国政府に対して日本からDNA鑑定結果の事前通告があったものと推測されます。韓国の一部メディアが「横田めぐみの夫は韓国人拉致被害者」と報道したことからも推察できます。

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2006年3月28日

日朝協議と偽ビラ

 核問題の6か国協議も、拉致問題の日朝協議も完全にストップしました。米国は北朝鮮が再開拒否の理由にしている米国の金融制裁について「6か国協議の枠の中で協議しよう」と新たな提案をしていますが、北朝鮮は「金融制裁の解除が先だ」として、米国の提案に応じていません。一方、日朝協議については最近になって日本側が北京の大使館ルートを通じて再開を打診していますが、これまた北朝鮮が難色を示しています。北朝鮮が拒んでいる理由は、北朝鮮が生存を否定している安否不明者について 日本側が「生存者」という言葉を使うのを黙認してもらいたい、安否不明者及び特定失踪者に関して「再調査を行う」と一言発してもらいたいとの要請があったからだとも言われています。拉致被害者の家族や国民世論の手前、何もなしでは交渉したくても交渉できないというのが外務省の言い分のようです。北朝鮮側は二つの要求とも拒否したようですが、当時、日本側が問い合わせた特定失踪者について「資料を提供すれば検討してもよい」と報道されたことについては「日本側が協議の場で34人の名前を書いた紙切れを出してきたので『外交交渉の場で人物照会を求めるならばはっきりとした履歴書を出すべきだ。そうすれば、調査することはやぶさかではない』」と答えたまでのことのようです。ところが、外務省はまだ資料を提出しておりません。公開した場合のリスク、例えば、特定失踪者の身の安全の問題とか、あるいはどこかで生存、あるいは死亡していた場合のリスクとか、様々な理由があって慎重を期しているようです。日朝協議再開のボールは北朝鮮のコートにあると思っていましたが、どうやら、日本のコートにもなく、ネットに挟まったままです。さて、どちらが拾いに行くやら、注目されます。

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2006年3月15日

DNA鑑定が遅れている謎

 横田めぐみさんの夫とされる「キム・チョルジュン」なる人物が韓国から1977-78年に拉致された5人の韓国人男性のうち一人かどうか、日本政府のDNA鑑定結果が注目されているところですが、結果発表までに時間がかかっています。日本政府による韓国人拉致被害者家族へのDNA採取(体細胞や血液など)は2月16日までには終えていたことから当初は、遅くとも3月8日前後には判明するのではと伝えられていました。韓国人拉致被害者家族の会の崔成龍代表によると、「DNA鑑定結果が判明するのになお時間を要する」との連絡が日本政府からあったそうです。それにしても、おかしいです。確か、めぐみさんの娘であるヘギョンちゃんのDNA鑑定にはそれほど時間がかからなかったはずです。また、「めぐみさんのもの」とされたあの「遺骨」の困難なDNA鑑定も鑑定開始から19日後には結果が発表されていました。このように考えると、すでに1ヶ月も経つのにあまりにも時間がかかりすぎです。本当に鑑定に時間がかかっているのか、発表のタイミングを考えているのか、それとも、北朝鮮との交渉カードに使おうとしているのか、あるいは夫が韓国人拉致被害者の場合の対応、対策を検討しているのか、いろいろな理由が考えられます。

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2006年3月13日

北朝鮮ミサイル報道の虚実

 北朝鮮が3月8日に発射した短距離ミサイルに関するマスコミの第一報を読む限り、何発発射されたのか、どこから発射されたのか、どこに着弾したのか、ミサイルの種類は何か、発射実験は成功したのかどうか、何一つわかりません。「ミサイルを1発発射した」というメディアもあれば、「2発発射した」というのもありました。ファロン米太平洋軍司令官によると、3発の実験でした。また、ミサイルの種類については読売新聞が「防衛庁筋」の話として「地対艦ミサイルの可能性が高い」と報じたかと思えば、毎日新聞は「政府関係者」の話として「地対地ミサイルを発射した」と伝えました。そうかと思えば、共同通信は「北朝鮮に詳しい複数の情報筋」の話として「地対空ミサイル2発が発射された」と北京から打電しました。韓国では昨年5月に発射実験を行った新型ミサイル「KN−2」と「類似したミサイル」であると発表しています。このミサイルはソ連製の「SS−21」地対地ミサイルを改良したもので、射程距離は100から〜120kmと推定されています。「類似したミサイル」という意外はわかっていません。日本のメディアの中には「発射から5km飛行後に北朝鮮領土に落ちた」と前回の時と同様に「失敗説」を伝えたところもありました。おそらく二度発射されたことから「最初は失敗に終わったのでは」との単純な推理に基づいたのでしょう。

 しかし、その後、ベル在韓米軍司令官やファロン米太平洋司令官らの米議会での一連の証言で実験は失敗どころから、固形(固体)燃料ミサイルで、これまで生産してきた形式に比べてはるかに高性能のものである(ベル司令官)ことが判明しました。日本の専門家の間では「北朝鮮のレベルでは固体燃料はまだ無理」というのが一般常識でした。固体燃料ならば、ミサイルの移動は容易で、発射時間も大幅に短縮されるため日本の国会で議論されている北朝鮮ミサイル基地への先制攻撃は実質的に困難となります。さらに、ベル司令官は3月9日の米下院軍事委員会で「北朝鮮は大陸間弾道ミサイル『テポドン3』の開発を継続している」と証言していました。「テポドン3」は3段式で射程距離は1万2千kmと推定されています。これが事実ならば、米本土が射程圏内に入ります。日本の軍事専門家の間では「3段式はまだまだ」とみられていただけに一連の米制服組らの発言にはさぞかし驚かされたことでしょう。それでも、日本の「楽観論者」の中には「長距離ミサイルを持ったとしても、また仮に核を何発持ったとしても、ミサイルの弾頭に搭載できるほどの技術はまだまだ」と「自慰」しています。ミサイルの弾頭に装着するには核爆弾を最低でも1000kg以下に小型化しなくてはならないからです。ところが、米DIAのジャコビー局長は昨年米議会で「北朝鮮のミサイルは核弾頭を搭載できる」と証言していました。日本よりも、米国のほうがはるかに北朝鮮の大量殺傷兵器については深刻に捉え、また正確に分析していました。

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2006年3月 6日

布告なき経済制裁へ

 拉致問題は再び膠着状態に陥ってしまいました。先の日朝政府間並行協議は次回の日程も決められず2月8日に終了しましたが、双方は協議の再開には同意したもののやる気が全く感じられません。日本側は「現状のままで再開させても進展は望めない」と、再開打診もしていません。一方の北朝鮮側も「こちらから再開を働きかけるつもりはない」とこれまた傍観する構えです。昨年12月から続いていた水面下の接触も不発に終わり、自民党のある高官は「(北朝鮮問題で)5月、6月のサプライズ外交はない」と断言していました。また、ある政府高官も「総理が今度、平壌を訪問する時は国交調印の時だ」と述べ、取沙汰されていた拉致問題解決のための小泉総理の3度目の訪朝を完全否定しました。北朝鮮もまた、「小泉政権下での国交正常化は無理。期待していない」と、さじを投げてしまいました。拉致問題では「なんと言われようが、いない者はいない。生き返らして帰すことはできない。それが現実だ。誠意の示しようがない。日本の要求は無理難題かつ非現実的だ」と、「妥協の余地は全くない」としています。ならばと、日本政府は、首相官邸の拉致問題専門幹事会に「厳格な法執行分科会」を設置し、北朝鮮への圧力を一段と強める方針を固めました。

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2006年2月25日

DNA鑑定

 日本政府は横田めぐみさんの夫とされる「キム・チョルジュン」なる人物を特定するため1978年8月に韓国から拉致された5人の男性(当時高校生)の家族からDNAを採取しました。5人の中でも「キム・ヨンナム」(当時16歳=現在44歳)氏が有力視されています。2週間ぐらいで、DNA鑑定の結果が判明するとも言われていますが、日本政府にとっては「諸刃の剣」になるかもしれません。日本政府は夫が提出したDNA鑑定の結果、遺骨を「偽物」と断定しました。遺骨が「偽物」であるから「めぐみさんは生きている」とめぐみさんのご両親をはじめ多くの国民が信じています。「偽物」を出さざるを得なかった理由については「キム・チョルジュンは本当の夫ではないから」「本当の夫でないから、写真も撮らさず、指紋採取などDNAを拒んだ」とみなしています。北朝鮮がDNA鑑定を拒否したことから「キム・チョルジュンは新たな日本人拉致被害者ではないか。だからDNA鑑定を認めなかったのでは」との見方も浮上していました。そうした謎が、今回の日本政府のDNA鑑定で解明されます。「キム・チョルジュン」が本当の夫かどうかの、白黒がつきます。

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マネーロンダリング

 北朝鮮の李根外務省米州局長(6か国協議の次席代表)が3月4日に訪米するのを機にニューヨークで米朝実務レベルの協議が行われます。米国は金融制裁に関する説明を、また北朝鮮はその解除を求めて突っ込んだ協議が予想されますが、6か国協議が開かれるかどうかは、米国が金融制裁を解除するかどうかではなく、北朝鮮が偽ドル製造やマネーロンダリングなどの不法行為を止めるかどうかにかかっています。23日付のモンゴル紙「ズーニ・メデー」は、複数の北朝鮮の外交官が100万ドルの米ドルと2億円分の日本円を密かに持ち込もうとしてモンゴル当局に摘発されたと報じていました。「モンゴルの銀行口座に預けるため」と釈明したそうですが、送金すれば済むものを、今時、現金を持ち運ぶのは、闇組織やマフィアしかありません。外交官がやることではありません。このような非常識な行為を続けるから、北朝鮮は何を言っても信用されないのです。「言葉よりも行動で示せ」とのバーシュボワ駐韓米大使の発言は正しいです。

2006年2月20日

美女応援団が収容所入り?

 今朝のスーパーモーニングでもコメントしましたが、「北朝鮮の美女応援団21人強制収容所」という「朝鮮日報」の記事を見て、正直「またか」と思いました。例のごとく、証言者(脱北者)は仮名です。これでは直接確かめようがありません。「美女応援団」は2002年にアジア大会で釜山に、03年にユニバーシアードで大邸に、05年にはアジア陸上選手権大会で仁川に派遣されています。この記事からは収容所に入れられたとされる女性らがどの応援団を指すのかも明らかではありません。収容所送りも「韓国で見聞きしたことをしゃべってはならない」との誓約書に従わず、洩らしたことが理由として挙げられています。彼女らは家系が良く、ほとんどが幹部らの娘です。国家に最も忠実で、思想的に鍛錬された女性らで選抜されています。まして、北朝鮮のテレビでは「統一の使者」として彼女らの韓国での活躍ぶりを大々的に紹介していました。昨年秋にドキュメント映像を見ましたが、そこには彼女らが北朝鮮選手だけでなく、韓国の選手を熱心に応援する場面、スタンドで観客と一体となって声援する場面、さらには野外で市民や若者と踊ったり、交流する場面などが映っていました。バカでない限り、北朝鮮の人民がこれをみれば、韓国の町並みが北朝鮮よりもはるかに発展していることがわかります。韓国の人々が着ているもの、ネックレスや指輪、時計など身に着けているものをみれば、韓国人の生活がはるかに良いことに気づきます。映像は言葉よりもはるかにインパクトがあります。

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2006年2月16日

日朝並行協議の結果

 北京での日朝政府間並行協議の結果について日本側では「何の進展もなかった」と失望感が漂っています。当初から予想していたとおりの結果となりました。日本ではこのまま協議を継続しても、同じ結果になるとして、次回協議の日取りを決めないまま帰国しました。とは言うものの、今回の平行協議は日本側から提案して実現しただけに、自ら引っ込めるわけにもいかず、協議は一応継続することにはしたようです。この種の協議は何度やっても同じです。「8人死亡、3人未入国」という再調査結果が「最終回答である」とする北朝鮮側に確証はないものの「拉致被害者は生存している」との前提に立つ日本側がいくら「誠意」を求めても所詮、「水と油」で溶け合うはずはありません。交渉の前提、入り口が決定的に異なるわけですから話がまとまるはずがありません。そこで、国内では再び経済制裁という声が持ち上がっていますが、小泉総理は13日「日朝貿易は1977年以来、最低にある。日本との交流が減っている分、中国・韓国とが増えている」と効果に疑問を呈し、慎重な姿勢を示しました。強硬派とされる安倍官房長官も「対話を閉ざすことは考えていないが、圧力が必要だとの認識は一層強くなった。どのような圧力をかけるか検討していきたい。最終的な圧力は経済制裁だ」と言ってみたものの直ちに経済制裁を発動する気はないようです。小泉総理の指摘は正しいです。2002年の「キャッチオール規制」、2003年の「外国船舶安全性検査=PSC」、2005年の「改正油濁損害賠償法」やあさり不買運動など日本が制裁を小出しに実施してきた結果、2001年に4億7千万ドル以上あった貿易量は昨年2億ドルを割り、1億8千万前後にまで落ち込みました。 

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2006年2月 8日

日朝協議で見えてきたこと

 日朝政府間協議は5日の日程を終え、終了します。拉致問題でも、過去の清算問題でも、核やミサイルなどの安全保障問題でも予想されたように何一つ具体的な進展は見られませんでした。落胆した「拉致被害者家族の会」では、「もうこれ以上協議をやっても、無意味だ」と政府に経済制裁を発動するよう求めています。しかし、それでも、小泉総理は「全体的に考えなくてはならない」と経済制裁には依然として慎重な姿勢を崩していません。「家族の会」が頼りにしている安部官房長官は安全保障問題でも進展がなかったことについて「日本の懸念を直接伝えることができたことは有益だった」と評価していました。昨年の6か国協議の際に日朝間では核問題などで何度か個別協議が開かれています。その際に、日本側の懸念を伝えていなかったのでしょうか。今後も政府間協議を継続するための苦し紛れの「言い訳」のように聞こえます。

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2006年2月 3日

明日から日朝協議

 いよいよ明日から日朝政府間交渉が始まります。拉致被害者家族の間では「今度こそ」と拉致問題解決への期待が高まっています。しかし、どういう訳か強気で知られる小泉総理自身は「難しいだろう」と弱音を吐いていました。今回の日朝協議を段取りした斉木昭隆外務省アジア太平洋州局前審議官は確か、昨年12月26日に行われた「拉致被害者家族会」への報告で「北朝鮮が拉致問題でどういう回答をするかは、一、二回やればすぐわかる。これ以上は国交正常化交渉をしても無意味だとの結論も引き出せる」と、拉致問題への北朝鮮の対応次第では交渉打ち切りも辞さないと威勢のいいことを言っていました。ところが、交渉再開前から早くも担当の外務省内からは「今回は顔合わせ程度」「実質的進展は困難」との冷めた声が聞こえています。「北朝鮮の引き延ばしは絶対に許さない」「次回の協議で誠意を示さなければ、厳しい対応を取る」と言明していた安部晋三官房長官も先手を打って「(今回が北朝鮮への)ラストチャンスとはとらえていない」(2月1日)と、一歩後退してしまいました。

 先月でも指摘しましたが、日本では①拉致問題②核とミサイル問題③国交正常化問題の三部会の設置で合意したと発表されたこともあって、当然のこと拉致問題が最優先議題と認識されていますが、北朝鮮側の発表では優先順位は全く逆になっています。2月1日の朝鮮中央通信は「国交正常化のための朝日両国間会談が2月4日から北京で開かれる」との報道で過去の清算と関連した諸般問題をトップに挙げていました。続いて安全保障問題、そして拉致問題を含む互いに関心のある懸案問題の順になっていました。ここで北朝鮮が言及している「拉致問題」とは、横田めぐみさんのものとされた「遺骨問題」と日本のNGOなどの支援による日本人妻や在日朝鮮人帰国者の「脱北」を指しているようです。日本に逃げてきた日本人妻、平島筆子さんの「Uターン亡命」(日本から北朝鮮への逆戻り)で威勢を得て、「脱北」を「拉致」とみなし追及する構えのようです。明らかに拉致問題議論の相殺を狙っています。また「遺骨問題」を正面から取り上げ、協議を引き延ばす考えのようです。

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2006年2月 2日

金正男が訪中に同行?

 「北朝鮮情報」の発信源である韓国メディアの悪癖が依然是正されていません。未確認のまま情報を流しています。情報の多くは「誰が、いつ、どこで、なぜ、どうやって」という最低のことが欠落しています。それが、韓国国内だけならば「仕方がない」で済む話となりますが、日本のマスコミがそれに便乗して、独自取材、検証もせずに垂れ流しているとなると、話は別です。いつの間にか既成事実化してしまう恐れがあるからです。
 
 先日も「後継者報道」で韓国メディアの相反する報道を伝えましたが、今度もまた、同様の情報が流れてきました。韓国のソウル新聞は1月31日付で「長男の金正男が金正日総書記の先の訪中に同行していた」と報じました。確か、その4日前の韓国日報(1月27日付)では「金総書記が訪中した際に中国指導部と後継者問題を協議し、中国首脳は次男の金正哲の後継を了承した」と伝えたばかりでした。金総書記の側近、カン・サンチュン秘書室長の「マカオ逮捕説」を伝えたインターネット新聞「デイリーNK」に至っては金総書記の訪中期間中の1月17日の時点で「ワシントン外交筋の話として次男の正哲が金正日の訪中に同行している」と書いていました。2人の息子が一緒にお供したとしてもおかしくはありませんが、二つの記事とも一人だけしか把握できないというのは解せない話です。おそらく、どっちかが正しいか、あるいは両方とも間違っているかのどちらかです。
 
 そう言えば、1月下旬に2年半ぶりに公の前に姿を現した義弟、張成沢党第一副部長についても朝鮮日報は昨年9月27日付で「張成沢は再起不可能」と断じていました。「北の事情に詳しい人間」の話として「第一副部長の側近だけでなく、彼に一度でも会ったとか、写真を撮った者はすべて調査され、地方に追放されている」と、権力抗争による「完全失脚」を伝えていました。朝鮮日報はこの記事の3ヶ月前に訪朝した鄭東泳統一部長官に金総書記が「金第一副部長は酒を飲みすぎて、健康を損ねているので、治るまで休ませている」と、健康が回復次第に復帰をさせることを示唆していた事実を知らなかったわけです。いつものように「誰にもわからない」「誰も検証できない」「確認のしようがない」「抗議、訴えられる心配もない」ので書き放題というわけです。

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2006年1月26日

6か国協議と日朝協議

 6か国協議の日程が決まりません。米国の金融制裁に北朝鮮が反発していることが原因です。米国と韓国などは北朝鮮に対して協議に無条件復帰するよう求めていますが、北朝鮮は首を縦に振りません。中国が仲裁に入り、24日に訪中したゼーリック米国務副長官に対して北朝鮮の不法活動と資金洗浄(マネーロンダリング)の停止確約とを引き換えに金融制裁の解除を要請していますが、米国は「偽ドルを造られて黙って見逃すわけにはいかない」と妥協の素振りも見せませんでした。むしろ、中国や韓国に対して米国の金融制裁に同調するよう求めていました。北朝鮮の中には拉致事件同様に個人もしくは、特殊機関による犯罪にすることで切り抜けようとの動きもあるようですが、米国は偽ドルの製造元が北朝鮮であり、言わば、偽ドルは「北朝鮮の国家犯罪」とみなしているだけに6か国協議に影響があったとしてもそう簡単には引き下がりそうにもありません。むしろ、今後、さらに制裁を強めていく気配です。6か国協議の2月初旬開催論が中国や韓国で取り沙汰されていますが、どのような根拠なのか、知りたいところです。 

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また後継報道

 北朝鮮と言えば、また、後継問題で新たな情報が韓国から流れてきました。朝鮮日報(1月17日)が伝えたもので、北朝鮮を脱出して韓国に亡命した人物の話として、昨年10月10日の労働党創建60周年行事以後、党高官らの事務所に次男の金正哲の写真が金日成主席、金正日総書記と一緒に掲げられたとのことです。また、正哲は労働党組織指導部副部長に任命されたとのことです。証言者が写真を見たわけでなくあくまで「耳にした」話とのことです。昨年暮れには金総書記が「今後、後継問題は一切口にするな」「正哲と取った写真を全部回収せよ」とのお達しを出したとの報道も韓国で流れましたが、このように矛盾するような情報が流れてくるとは、困ったものです。

2006年1月16日

金正日訪中第3報

 金正日総書記の滞中期間はどうやら過去最長となりそうです。これまでは通常は3泊4日(2004年4月)で、どんなに長くても5泊6日(2001年1月)どまりだったのですが、今回はすでに1週間(1月10日中国入り)経ちました。訪中の目的については「北京の病院で健康診断を受けるため」との「入院説」から「後継者を中国首脳に紹介するため」との「後継者紹介説」まで奇奇怪怪な情報が乱れ飛びました。しかし、いずれも的外れでした。「後継者紹介説」についてはもう論外です。というのも、昨年10月下旬の胡錦涛主席訪朝の際日本のメディアは「金総書記は胡主席に後継者を紹介した」とのドイツ誌「シュピーゲル」の記事を伝えたばかりでした。今回の目的が後継者の紹介にあるならば、ドイツ誌の報道と矛盾します。おそらく、後継者のお披露目は平壌でも、中国でもなかったものと推察されます。どさくさに紛れて、様々な情報が流れてくるのは仕方ないことですが、過去のデータを参照し、情報を識別してもらいたいものです。それにしても、1週間も経済特区地域を中心に視察したところをみると、北朝鮮は本気で経済開放を考えているのかもしれません。その豹変ぶりは、7年前の発言からはとても考えられません。というのも、金総書記が1999年の元旦に労働党中央委員会責任者(副部長以上の党幹部)らを前に改革、開放をきっぱり否定する次のような内部演説を行っていたからです。「帝国主義者らが騒いでいる『改革』、『開放』風に引きずられてはだめだ。『改革』、『開放』は亡国の道だ。『改革』や『開放』を一寸も許してはならない。我々の強盛大国は自力更生の強盛大国だ」と、金総書記自らが改革、開放を拒んでいたわけです。

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2006年1月12日

金正日訪中説続報

 金正日総書記の訪中はまだ確認されていません。訪ロ説まで流れるなど混沌としています。韓国からも様々な情報が流れています。中国訪問の目的が、健康不安にあるとして、健康診断=入院説を伝えています。毎度の「健康不安説」ですが、調べてみると、1月は大学や幼稚園の視察から公演の観覧まで新年早々から活発に活動しています。また、北朝鮮のナンバー2が外国の病院で治療を受けた話は過去にもありますが、トップが入院したというのはかつてありません。トップの健康状態は最高の国家機密ですから、外国から医者を呼んで治療させることはあっても、外国で治療を受けることはありません。金日成主席の場合も当時ソ連から医者を呼んで、何年に一度健康チェックをさせていました。これは、1994年にロシアに取材に行ったときにカピッツァ外務次官から直接聞いた話です。金正日書記(当時)がカピッツァ外務次官に直接頼んだそうです。訪中説が事実ならば、今日にも北京で胡錦涛主席との首脳会談があるのではと推測されますが、6か国協議と米国の金融制裁への対応を話し合うための訪中なのか、あるいは対抗措置を取るための訪中なのか、いずれにしても重大な決定を伴う訪中であることは間違いありません。米国の経済制裁は偽札、麻薬、武器売却のいわゆる「裏金」の回収だけでなく、正規の貿易代金の回収にまで影響を及ぼしているだけに北朝鮮にとって事態は極めて深刻です。従って、窮地打開のための対応ということならば、訪中は6か国協議再開に向けての前向きのシグナルとして受け止めることができます。6か国協議の米国代表であるヒル国務次官補が12日に訪中していることはある意味で期待をもたせます。しかし、その一方でワシントン・ポストが伝えているように「対抗」ならば、6か国協議での共同声明の破棄など強硬措置も考えられます。どちらなのか、訪中後にその答えは判明するでしょう。

2006年1月11日

金正日訪中説

 金正日総書記の訪中説が流れています。中朝は前例からして、金総書記が帰国するまで正式発表は控えるでしょう。一昨年の訪中(4月)では、帰途新義州近くの駅(竜川)で金総書記の乗った専用列車が通過した後、貨物列車による爆破事故が起こり、一部では金総書記の暗殺を企てたとの情報も流れました。身辺保護を徹底しているものと思われます。金総書記の専用列車が丹東駅を通過したとの情報や天津駅のものものしい警戒ぶりからして訪中は間違いないようです。単なる視察にしては、時期的には寒すぎます。これまでの外遊は、ほとんど春から夏にかけてです。昨年10月の胡錦涛主席の訪朝への答礼にしてはまだ3ヶ月も経っていないわけですからあまりにも早すぎます。中朝首脳会談から3ヶ月も経たない間に再度首脳会談に臨むわけですから緊急事態が発生したということでしょう。言うなれば、金総書記自らが、この寒い時期に中国に赴かなければならないほどの重要な課題があるということです。当然、膠着状態に陥った6か国協議への事態打開や米国の金融制裁への対応も重要課題の一つでありますが、実務的な交渉ならば、カン・ソクチュ外務第一次官らの特使派遣で済むわけです。自ら直接出向くということは、何か重大な決定を下そうとしているのではないかと推察されます。また、そのための中国トップとの事前協議を必要としているものと思われます。その重要な決定が何かは計り知れませんが、過去のケースからして様々なことが考えられます。

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2006年1月 6日

「辛光洙実行犯説」について

 年初から「横田めぐみさんを拉致したのは辛光洙容疑者」との報道が駆け巡りました。曽我ひとみさんから直接聞いた話として横田早紀江さんが伝えたものですが、昨年末には「辛光洙に拉致された」との地村夫妻の証言も流れていました。これが事実ならば、辛容疑者は78年の6月の原敕晃さんを含め政府認定の拉致被害者(16人)のうち4分の1にあたる4人(3件)の拉致を自ら実行したことになります。実行犯ということは、自ら手を下して、拉致を行った。即ち、拉致の現場にいたことを意味します。しかし、一つだけ腑に落ちないことがあります。スパイ容疑で1985年に逮捕した辛容疑者に死刑を宣告した韓国最高裁の判決文(同年11月30日)によると、辛容疑者はめぐみさんが拉致された77年11月当時は「平壌市万景台にある万景台4号招待所で工作員のための密封教育を受けていた」と記されています。また、地村夫妻が拉致された78年7月当時は「平壌市龍城区域にある龍城5号招待所で(日本に浸透するための)日本人化教育を受けていた」と書かれています。一言で言うと、その頃は平壌にいて、日本にはいなかったということになります。辛容疑者が韓国で逮捕された当時は全斗煥軍事政権時代で、北朝鮮スパイに対する尋問は拷問を伴うほど過酷を極めていました。そうした尋問により、辛容疑者はすべてを自白し、その結果、原敕晃さんの拉致が判明したわけです。日本に来て、拉致したということになると、韓国の判決文との食い違いが生じます。

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2006年1月 5日

金総書記への年賀状

 「サンデー毎日」(1月8-15日、新春合併号)の誌面を借りて、金正日総書記への公開年賀状を出し、拉致問題での政治決断を迫りました。その拉致問題ですが、いよいよ今月に日朝政府間交渉がスタートします。何とか、うまくいって、今年こそ、拉致被害者の家族に「吉報」が届くことを願って止みません。しかし、現実には全面解決への道のりは相当険しいです。その理由は、昨年12月の北京接触での日朝双方の解釈、優先順位が全く異なることにあります。還元するならば「同床異夢」で、果たして折り合いが付くのかどうか、噛み合うのかどうか心配です。というのも、昨年12月26日のホームページで、日朝接触の場で北朝鮮のソン・イルホ代表(外務省副局長)が斉木昭隆代表(外務省アジア太平洋州審議官)に対して本当に「拉致は未解決」と認めたのかどうか、「拉致問題を含め未解決の問題に誠意を持って努力する」と言ったのかどうか、疑問を呈しましたが、やはり不安は的中していました。12月28日付の朝鮮中央通信によると、「未解決」という言葉はどこにもありませんでした。日本側の発表では、①拉致問題②核とミサイル問題③国交正常化問題の三部会の設置で合意したとされていますが、北朝鮮側の発表では優先順位は全く逆で①は大使級による国交正常化会談になっていました。また②についても核とミサイル問題ではなく、「互いの安全保障と関連した問題」となっていました。言うならば、周辺事態法など北朝鮮に狙いを定めた一連の法整備や自衛隊の戦力増強、さらには在日米軍基地等の問題も北朝鮮側から持ち出されるということです。

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2005年12月26日

デキレースの日朝協議

 北京で開かれた日朝政府間協議の結果、国交正常化交渉再開で合意しました。外務省は、日本側が11月に要求した拉致、安全保障、国交正常化の三つのテーマの同時協議案を北朝鮮が受け入れたと「成果」を強調しています。「拉致問題は解決済み」との立場を取ってきた北朝鮮が「拉致問題を含め、未解決の懸案を誠意持って努力する」と言ったと、朝刊各紙には書かれています。本当にこのようなことを先方は言ったのでしょうか。本当に「未解決」と認めたのでしょうか。ひょっとすると、日本側の勝手な解釈ではないでしょうか。ソン・イルホ外務省副局長は「我々は解決したと言い、日本は解決していないと言っている。何が解決なのか、一度すりあわせなくてはならない」と言ったそうですが、換言するならば、「日本にとっての未解決の問題」というのが先方の解釈ではないでしょうか。「拉致を未解決の問題として認めさせた」ことを「手柄」であるかのように吹聴していますが、残念ながら今回の合意にもまた「拉致」という言葉は一言も盛り込まれませんでした。合意は正確に表現すると、「不幸な過去を清算し、懸案事項の解決を図る」「双方が関心を持つ懸案事項に向け誠意を持って努力し、具体的措置を講じる」。それ以下でも、以上でもありません。読売新聞によると、斉木昭隆外務省アジア太平洋審議官が「横田めぐみさんの偽遺骨問題から1年間、あなた方はなにをしてきたのか。誠意を見せて欲しい」と声を張り上げたとのことですが、北朝鮮はそれにどう対応したのか、何一つ明らかにされていません。「子供を帰せば、国交交渉に応じる」との約束を反故にしたことやジェンキンス氏への日本の対応を問題にしてきた北朝鮮側は果たして声を張り上げなかったのでしょうか。

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2005年12月21日

日朝協議再開へ

 日朝政府間対話が12月24-25日の2日間、北京で開かれることになりました。土壇場での開催となりました。朝鮮総連のホ・ジョンマン責任副議長が昨日帰国し、そして今日安倍官房長官による政府間対話の発表です。予想した通りです。日本側は拉致問題で北朝鮮から何とか、色好い返事を取り付け、進展を計りたいところですが、肝心の北朝鮮がまだ腹を決めかねています。ハムレットの心境と同じで今後の交渉で拉致被害者を出そうかどうか、相当迷っているようです。日朝国交正常化のためには拉致問題は避けては通れないことを承知しながら、どこまで歩み寄れば、日本が納得するのか、小泉総理の意中を、日本の世論の動向を読み切れないでいるようです。「死亡した」と発表した被害者の中から数人を返した場合、また新たな被害者(特定失踪者)を追加した場合、「他にも生存者はいる筈だ。拉致されている人はもっといる筈だ」と逆に硬化させ、そうなると「2002年9月ショック」の再来になると怯えています。その通りで、小手先のやり方では日本の世論は納得しないでしょう。

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国連決議

 国連総会で北朝鮮の人権決議案が採択されました。賛成86、反対21、棄権60でした。北朝鮮にとっては外交的プレッシャーになっていることは間違いありません。それでも朴吉淵駐国連大使は「全く意に介さない。無視する」と、素っ気なかったです。それもその筈で、国連総会の決議には何の法的拘束力もないからです。考えてみると、国連総会は、これに先立つ12月8日に日本政府が提出していた核軍縮を訴える決議案を賛成168、反対2、棄権7の圧倒的多数で採決しました。反対した2か国のうち1か国が何と同盟国の米国です。94年以来12年連続して決議が成立しているのに米国は無視し続けています。北朝鮮もおそらく米国の真似をするのでしょう。米国が北朝鮮の「悪いお手本」となっています。米国も北朝鮮も本当に困ったものです。

2005年12月19日

日朝協議とDNA

 今年も残り2週間を切りましたが、日本政府はまだ日朝政府間対話の年内再開に望みを抱いているようです。谷内正太郎外務次官が12日に「年内再開の可能性は残っている」と言ったかと思えば、「年内可能性は無理だろう」と言っていた麻生太朗外相も16日に「年内開催で調整中である」と前向きの発言をしていました。強硬派の安倍晋三官房長官にいたっては「年内に是非開催していただきたい」(15日)と北朝鮮に「懇願」していました。12月1日に単独訪朝した川上義明前衆議員に応対したキム・テジョン党国際部副部長が「年内にも受託の回答をする」と「約束」したことや交渉責任者の斉木昭隆アジア太平洋州局審議官が12月7日に中国瀋陽で北朝鮮側パートナーであるソン・イルホ外務省副局長と極秘接触していたことから何か手ごたえを感じているのかもしれません。しかし、日本政府が日朝対話の年内再開に最後まで期待を寄せているのは、外務省ルートによる接触だけでなく、「官邸ルート」による「秘密接触」が作動しているからではないでしょうか。

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2005年12月12日

人権国際大会の報告

 10日に閉幕した「北朝鮮人権国際大会」は韓国政府が憂慮したように「金正日政権打倒集会」一色となりました。政府与党のウリ党は「大会は政治目的に利用される」「米国の政治的意図を汲んだ大会だ」「北朝鮮を刺激し、南北融和ムード、6か国協議をぶち壊すべきではない」との「消極論」から大会をボイコットしましたが、野党ハンナラ党は朴謹恵代表が来賓として出席し、また、次期大統領有力候補の一人である李明博ソウル市長も挨拶をしました。2人とも、与党の批判を意識してか、「人権改善なくして、北朝鮮の改革、開放はない」「衣食の支援も大事だが、人権はより重要である」と、当たり障りのない「一般論」に終始していました。李ソウル市長にいたっては「いかなる場合があっても人権問題論議を国際的な利害関係や政治目的に利用してはならない」と釘を刺していましたが、日米など外国からの代表は一切お構いなしで激しい「金正日批判」を展開してました。大会の実質的仕掛け人であるショルティー・スーザン「ディフェンス・フォーラム財団」会長は「韓国政府が支援しなければ、金正日政権はとっくに潰れていた」と、金正日政権打倒の必要性を強調していました。また、同じく仕掛け人の一人であるホロウィッツ「ハドソン研究所」首席研究員は「我々は政権転換を望んでいる。金正日政権は究極的には崩壊は免れないだろう」と気勢を上げていました。
 一方、日本も、「日本人拉致被害者家族の会」の増元照明事務局長が拉致問題の現状を報告し、その中で「金正日政権がいる限り、北朝鮮の人権、拉致問題の解決は不可能だ」と述べ、「世界が連帯し、金正日と対決すべきだ」と呼びかけていました。国際大会には在日朝鮮人帰国者の脱北問題に取り組んでいるNGO団体「脱北帰国者支援の会」の代表である阪中英徳元法務省東京入管管理局長も出席していましたが、同代表もまた、韓国メディアとのインタビューの中で「金正日政権が崩壊しない限り、この問題の根本的な解決は難しい」と、金正日政権打倒の必要性について言及していました。今回の国際大会が6か国協議、日朝協議、そして南北会談にどのような影響を及ぼすのか、北朝鮮の出方が注目されます。今大会の「番外編」というか、思わぬハプニングがありました。8日のオープニングの日、「救う会」の西岡力副会長に対して会場にいた高麗大学客員教授でもあるヤン・グァンス東アジア平和発展フォーラム代表が「西岡氏は新しい歴史教科書をつくる会の中心人物である。裏では日帝による朝鮮人に対する人権弾圧を否定しながら表では北朝鮮の人権問題を非難する人物に普遍的な人権問題を語る資格があるのか」と、「口撃」したことです。西岡氏は「私は、中心人物ではない。私なりに客観的に歴史をみている」と反論しましたが、ヤン氏は日本に留学し、日韓関係を調べているかなりの「日本通」らしいです。今後、拉致問題をさらに国際世論化するうえでも、また韓国のNGO団体との連帯を強めるためにも韓国世論から「救う会」=「右翼」とのレッテルを貼られないよう(もう貼られているのかもしれませんが)心がけておく必要性があるかもしれません。

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2005年12月 8日

北朝鮮人権国際大会

 今日から10日までソウルの新羅ホテルで「北朝鮮人権国際大会」が開かれます。国際大会は7月にワシントンで開かれたのが最初で、今回は2度目となります。ソウル大会が成功すれば、次回はブリュッセルか、ジュネーブで来春に計画されています。本日は、北朝鮮の人権状況に関する団体、個人による報告がありますが、注目は11月22日に記者会見を開き、予告していた「キム・スチョル」という名(仮名)の脱北者による「耀徳収容所」(15管理所)の収容者リストの公表です。どれだけの大物が収容されているのか興味津々です。また、明日(9日)は、人権改善のための戦略会議があり、そして最終日の10日には「北朝鮮人権宣言」が発表される予定です。40余りの国際、国内団体が集うこの大会には着任したばかりのアレキサンダー・バーシュボワ駐韓米大使のほか米国務省のレフコウィッツ人権大使が、さらには日本からも「人権大使」に任命されたばかりの斉賀冨美子駐ノルウェー大使が出席します。大会を主催するのはポーランドの労組「連帯」を支援したことで知られる米国のNGO団体「フリードム・ハウス」です。同団体の年間予算は1、600万ドルと潤沢で、また昨年10月に米議会で可決された「北朝鮮人権法案」に基づき、ブッシュ政権は北朝鮮の人権問題に関わる団体への資金援助を行っております(年間200万ドル予算)のでこのような国際大会が開けます。「米国の存在」がいかに大きいかがわかります。だからこそ、「北朝鮮を刺激する」としてこの種の大会開催を嫌うノ・ムヒョン政権下の韓国でも開催を強行できるのでしょう。その一方で、韓国政府の庇護を受けているのかどうかは定かではありませんが、これに対抗する動きも一部にあります。「6.15南北共同宣言の実践と韓半島平和統一連帯」の傘下団体らが同期間中に「南北和解・統一」や「米国の人権弾圧」をテーマにした各種討論会、集会を予定しています。米大使館前では「反北政治攻勢糾弾大会」まで計画しています。「親北・反米色」の強い行事です。ソウルはこの3日間、「反北・親米勢力」と「親北・反米勢力」が激突する騒々しい日々となりそうです。

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2005年12月 5日

日朝協議と朝鮮総連

 日朝協議が来週中にも再開されるとの情報が流れています。核問題をめぐる6か国協議の第2ラウンド交渉の年内開催が流れたことでその影響が心配されただけにこれが事実ならば何よりです。警視庁による在日朝鮮人言論出版会館と在日の最大の功労者である金満有院長が経営する西新井病院へのガサ入れ、国連総会で日本が音頭を取った「北朝鮮人権決議案」の採決、谷内外務次官の「北朝鮮人権担当大使設置発言」、日本から発信された「タイ人女性拉致報道」等、昨今の動きに北朝鮮側が反発し、年内開催に応じない可能性も一部では取り沙汰されていただけになおさらです。そこで気になるのは、北朝鮮が意外とおとなしいというか、すなおに交渉に応じてきていることです。北朝鮮が求めていた過去の清算と日朝国交に関する交渉を日本政府が打診したことが最大の理由かもしれませんが、その一方で、日本当局による朝鮮総連への締め付けも大きく作用しているようです。聞くところによると、朝鮮総連は金正日総書記に対して総連が置かれている苦しい立場、厳しい現状を訴え、小泉政権下での日朝関係の打開を強く訴えたそうです。周知のように、整理回収機構(RCC)は1998年以降に破綻した朝鮮信用組合(16)から引き継いだ不良債権(約2千億円)のうち628億円が総連向け融資だったとしてその返還を総連本部と幹部に求め、東京地裁に提訴しました。総連は一部返還には応じるとしたものの、総額があまりにも大きすぎるとして、「値下げ」を要望していたようです。最終的に「値下げ交渉」は決裂し、RCCによる提訴となりました。このままでは総連の敗訴は確実で、最悪の場合、飯田橋にある中央会館の差し押さえという事態も想定されます。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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