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ボールはどっちにある?6か国協議の行方


 ボズワース北朝鮮担当特別代表の訪朝(12月8-10日)から1ヶ月半が過ぎたが、未だに6か国協議再開のめどが立っていない。

 米朝両国は、ボズワース帰国後、「解決すべきことが残っている」(ローリー米国務次官補)、「残る相違がある」(北朝鮮外務省報道官)ことを認めていたが、予想したとおり、その相違とは、6か国協議復帰への北朝鮮の前提条件にあることが明白となった。また、その前提条件が、1月11日の北朝鮮外務省の声明によって、平和協定会談と国連の制裁解除であることもわかった。

 北朝鮮はこの二つの条件をすでにボズワース訪朝時に米国に示していたが、ボズワース氏は当時、「6か国協議関係国と協議しなければならない」と返答していたが、韓国政府は北朝鮮の「先平和協定、後非核化論議」主張に対し、非核化論議優先の原則を示し、拒否の姿勢を公式に明示した。

 日本政府も岡田克也外相がクリントン米国務長官との日米外相会談(12日)で、北朝鮮の提案について「平和協定の交渉を6カ国協議と違う場でするとすれば、遅延工作の口実にされかねない。気をつけなければいけない」と反対の意向を表明した。日韓両国は韓国の柳明桓外交通商相が来日(16日)した際の外相会談で制裁解除についても「認められない」との点で一致した。制裁解除については「非核化の進展が条件である」と釘を刺した。

 米国もまた、ホワイトハウスのギブズ報道官が11日、6カ国協議再開前には協定交渉に応じない立場を表明し、制裁解除についても「数ヶ月前から6か国協議復帰だけで報酬は与えないことを明白にしてきた」と、断固拒否する考えを明らかにした。

 鍵を握る中国も、姜瑜副報道局長が12日、「現状では6カ国協議の早期再開を望む」と述べ、日米韓3か国と同様に6カ国協議再開を重視する立場を明らかにした。

 中国は、北朝鮮の提案内容が2005年の6か国共同声明に含まれているとの立場から、北朝鮮に6カ国協議に復帰してから同協議の枠内で提案するよう促したが、北朝鮮は11日の声明を撤回するどころか、1週間後の18日に外務省スポークスマンを通じて反論し、再度前提条件の受け入れを迫った。

 北朝鮮の反論は主に3点に集約される。

 ①6か国共同声明には、非核化と関係正常化、エネルギー補償、平和体制樹立の問題が「調和」のもとで実現されなければならないと明示されている。非核化が進捗してこそ、平和体制樹立の問題を議論できるとの合意事項はない。

 ②米国側の事情を考慮して、6か国協議で平和協定締結の論議に先立って非核化の論議を6年以上も優先させた。非核化は前進したが、平和協定締結の論議は開始すらせず、結果的に非核化プロセスは逆転してしまった。平和体制の論議に先立って非核化を進める方式は、失敗に終わった。信頼なくして非核化を推し進めるというのは、基礎なしに家を建てるのと同じである。

 ③制裁の帽子を被ったまま6か国協議に臨むなら、その会談は共同声明に明示されている平等な会談ではなく、「被告」と「判事」の会談になってしまう。これは、われわれの自尊心が絶対に許さない。

 現状のままでの6か国協議への復帰は、10月に訪朝した温家宝首相に対して金正日総書記が示した「米朝関係が敵対関係から平和的関係へと移行することを条件とする」原則に反し、事実上の外交的な屈服を意味することから、北朝鮮としては無条件復帰は国家の体面上、許されないこととみなしている。

 北朝鮮以外の5か国は6カ国協議が再開され、北朝鮮が可視的な非核化措置を取れば、国連安全保障理事会の決議に従い、安保理で制裁の緩和・解除の検討が可能との考えを伝え、また平和協定に関する議論も6カ国協議が再開され非核化プロセスに進展があれば、関係当事国が別途の適切なフォーラムを通じ平和体制の交渉を行えると説得しているが、北朝鮮に応じる気配はない。

 このように「6か国協議復帰と非核化の進捗」を優先とする5か国と「制裁解除と平和協定の論議」を最優先とする北朝鮮との溝は一見深いようにみえるが、決して埋められないものでもない。

 ●平和協定問題の落し所

 北朝鮮の平和協定会談要求については、韓国の柳外交通商部長官は「非核化協議を後回しにする意図がある」と警戒しているが、平和協定が締結されるまでは、非核化を一歩も進めないとの出口論を北朝鮮が展開するならば、妥協は難しいが、北朝鮮の主張は「各当事国が平和協定締結のための交渉に臨み、対座するだけでも信頼の出発点はつくられるであろう」と、6か国協議で、非核化議論と平行して平和協定を論議する場を設けてもらいたいとの入り口論に留めているので、まだ妥協の余地は残されているようだ。

 また、また会談の形式についても、「6者会談の枠内で行うこともできる」と譲歩しており、かつてのように米朝間に拘っていない。従って、この問題は、非核化協議と並行する形で平和協定に関する関係国の議論を開始することで最終的に折り合いがつく可能性は十分に考えられる。

 問題は制裁解除だ。平和協定の問題よりも難しい。

 北朝鮮は「制裁の帽子を被ったまま6か国会談に臨むなら、その会談は『被告』と『判事』の会談になってしまう。これは、われわれの自尊心が絶対に許さない」と「先制裁解除」を求めている。

 北朝鮮の要求に対してキャンベル米次官補(東アジア・太平洋担当)は19日の会見で、「現時点で制裁を解除したり、国連安全保障理事会決議1874(制裁決議)を再検討するのは望ましくない」と述べ、北朝鮮との間で協議復帰と引き換えに制裁を解除する考えがないことを明らかにした。

 また、ボズワース特別代表は「国連安全保障理事会決議1874はそうした要求に対する答えを盛り込んでいる。北朝鮮が6カ国協議に復帰し、非核化に向けた進展があれば、安保理は制裁内容を変更するための妥当性を検討することになるだろう」と述べ、北朝鮮に対してまずは6か国協議に出て、非核化を履行するよう促した。

 日米韓とも制裁解除の要求については「国連安全保障理事会の決議で定められているように、非核化の進展があってこそ、安保理で(制裁解除を)検討することができる」(柳外交通商部長官)との立場である。

 対北朝鮮制裁は国連が採択、発動したわけだから、制裁解除は国連安保理の同意なくしては不可能だ。

 国連は制裁解除の条件として①これ以上の核実験や弾道ミサイル技術を使用した発射を実施しない②弾道ミサイル計画に関するすべての活動を停止し、この文脈で、ミサイル発射モラトリアム(猶予)に関する既存の約束を再度確認する③安保理の諸決議、特に1718の義務に直ちに全面に従う④NPT脱退宣言を撤回する⑤すべての核兵器と既存の核計画を完全で検証可能かつ後戻りできない形で放棄し、関連する活動を停止する⑥IAEA加盟国の義務とIAEA保障措置協定の条件に従って、行動することを北朝鮮に求めている。

 ところが、北朝鮮は①から⑥まで何一つ順守、履行していない。逆に国連決議に反してミサイルや兵器をコンゴやミャンマー、イランなど国連が制裁を科している国々に輸出しているのが実情である。このような状態での制裁解除は容易ではない。最近も北朝鮮の兵器を積んだグルジア国籍輸送機がタイで「摘発」され、兵器が押収されたばかりだ。この事件一つとっても、制裁は本来強化されることはあっても、解除される状況にはない。

 どう考えても、6か国協議復帰前の制裁解除の可能性は極めて低い。とは言え、北朝鮮が被告人として出るわけにはいかないと「自尊心」にこだわっている以上、また、「制裁という差別と不信の障壁が除去されれば、6者会談そのものも直ちに開かれるだろう」と6か国協議への即復帰を表明している以上、6か国協議再開に向けて何らかの歩みよりも必要なのも事実である。

 ●制裁に関するクリントン長官の発言の変化 
 
 興味深いのは、制裁解除に関するクリントン米国務長官の発言である。クリントン長官は昨年6月13日に国連安保理で制裁決議が採択されたことについて「我々は北朝鮮がテーブルに出ただけで補償は与えない」(7月22日)と言明していた。また、「検証可能で後戻りできない形での完全な非核化に向けた措置をとらない限り制裁は緩めない」(10月21日)と強調していた。

 しかし、今回の条件付きの6か国協議復帰提案については「北朝鮮が6か国協議に復帰すれば適切な制裁の緩和を検討する案が生まれるかもしれない」(7月12日)と微妙な言い回しをしていた。即解除はできないが、復帰すれば緩和には応じても良いと受け止められる発言だ。制裁緩和の範囲にもよるが、北朝鮮が条件のハードルを下げれば、この問題もクリアすることができる。

 北朝鮮の提案を含め6か国協議再開の方策を協議するためキャンベル次官補は2月初旬、日韓中を相次いで訪問することにしているが、21日に米上院で開かれた聴聞会に出席し、北朝鮮の提案に関して「6か国協議復帰が優先」と答えた上で「6か国協議の中で米朝会談を含むすべてのことを議論する準備ができている」と語っていた。

 オバマ政権になって6カ国協議は一度も開催されておらず、核安全保障サミットを4月に、核拡散防止条約(NPT)再検討会議を5月に控え、米国としても北朝鮮核問題をこのまま放置できないのが実情である。

 加えて、北朝鮮は昨年4月25日に使用済み核燃料棒の再処理を開始し、6月13日にはプルトニウムの兵器化とウラン濃縮作業に着手し、9月3日には「抽出したプルトニウムの武器化とウラン濃縮試験が最終段階に入った」と宣言した。そして2ヶ月後の11月3日には抽出したプルトニウムの兵器化で「注目に値する成果があった」と発表している。制裁を加えても、北朝鮮の核開発を止められないどころか、逆に拍車をかけているのが現状である。

 北朝鮮は19日の外務省スポークスマンの声明の中で「我々は6か国協議に反対せず、それを遅延させる何の理由もない」と述べる一方で、「各当事国が我々の現実的な提案を受け入れるよう説得するための努力する」と言っている。

 聞き方次第では、時間がかかっても米国など関係諸国が要求を受け入れるまで待つという意味にも受け取れ、逆の意味で核開発の時間稼ぎに使われる恐れもある。

 韓国の柳外交通商部長官は22日定例会見で、6カ国協議について、「旧正月連休(2月13~15日)を前後し再開されるものと期待する。そうした方向で関係国が意見調整を続けている」と述べていたが、ネット上にあるボールを米朝のどちらが先に拾いに行くのか、2月を待ちたい。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

いつもながら、それぞれの視点に立った論説と貴重な情報をありがとうございます。

政権交代以後の6ヶ国、特に年末からの日米朝3国の動きが、どうしても気になっています。
その動きの中心は、前コラムでもある「普天間」にあるような気がしてなりません。

思いすぎかもしれませんが、これの迷走に合わせたかのような情報が次々と報道される。

しばらく、アメリカ本土のテロ活動がなかった。
これまでもあったのかもしれないが、単純な情報連絡ミスによる、事前に防げなかった報道。
おそらく、事前に防いでいれば、これほどの報道にはならないであろう。
台湾を挟んでのアメリカー中国の地対空ミサイル配備報道。
本文でも取り上げている北朝鮮の武器密輸摘発。
米朝会議の進展の遅れ等など。

ことさら、東アジアには、未だ緊張感があるように私には受け取れる。
その中で、北朝鮮の突然の平和協定宣言。
間髪入れず、日米韓の対応。

これは、私の推論ですが、どの国も「普天間」の落し所を睨んでいる気がする。
普天間の機能が、どこに移転されるのか?
それが決まらない限り、6カ国協議が進まない気がしてならない。
つまりは、ボールは日本にあるとさえ思えるのは、考えすぎだろうか。

とは言え、「普天間」を早急に進めるのは、問題です。
夏までの間、まだ色々な波がある気がする。
現政権にはふんばって、これらの波を乗り越えていって欲しい。

国連の制裁に対して北朝鮮が反発しているのは理解できます。
発端となった光明星2号の衛星発射について、事前に国際機関に申告して行ったわけです。
予想される1段目、2段目の落下地点及び衛星軌道まで公開したのです。
ところが、日本も米国も頭からミサイルの発射だと決め付け、強引に制裁へ持ち込んだわけです。
その前にイランは衛星を打ち上げ、最近もさらに大きな衛星らしきものを打ち上げているのに、国連の制裁決議は行われていません。
最近の6ヶ国協議の流れを見ると米朝中の3ヶ国協議が主体で、6ヶ国協議はもう形だけになってるように見えます。
特に日本は人道的な万景峰号の入港を禁止し、輸入をストップし、日常使われるTVとか、CDプレーヤーとかカメラまでぜいたく品と称して輸出を制限し、これでも足らず、最後に残ったいくらにもならない食料品とか日曜雑貨品の輸出までもストップして、貿易の完全禁止、郵便物発送までも禁止したわけです。日本からの国会議員の渡航まで禁止しました。
こんな日本に対して、朝鮮が6ヶ国協議の同じテーブルに座って協議ができますでしょうか。
朝鮮新報によると、今北朝鮮では液晶TVの増産に拍車がかかり、近く訪れるディジタル化(いわゆる地デジ放送)にも対応したDVD内臓のTVも生産予定してるそうです。日本からのTV,DVDの輸出禁止しても、意味をなしません。
金正日総書記は8日、王家瑞・中国共産党対外連絡部長を現地視察中の咸鏡南道咸興市で会談して、「経済状況は総じて上向きに発展している。鉄鋼、機械、鉱業分野で生産力が上がっている」と述べ、余裕を見せました。
1月の内閣全体会議でも「09年工業総生産計画は前年比11%増」と総括しています。
圧倒的な軍事力と成長の続く経済で対米交渉においても余裕を見せてるように見えます。
ボールは北朝鮮ではなく、米国にあると見るべきだと思います。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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