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ボールはどっちにある?6か国協議の行方 »

北朝鮮女子サッカー選手団の入国賛否をめぐって

  昨晩遅く、TBSラジオ番組の「アクセス」に出演した。北朝鮮女子サッカー選手の日本入国問題を急遽取り上げることになったからだ。スタジオ入りを求められていたが、風邪気味だったので、自宅からの電話出演となった。

 日本政府は昨日(5日)、東京で来月5日から開催される東アジア女子サッカー選手権大会への北朝鮮選手団の入国を認めた。苦慮の末の決断だったらしい。

 前政権の麻生政権がすでに許可していたことと、スポーツであることが許可の理由だ。聞き方次第では、「自民党政権が事前に許可を出していたので仕方がなかった」というふうにも聞こえなくもない。仮に、麻生自民党政権が許可していなかったら、鳩山民主党政権は不許可にしたのだろうか。また、これが、スポーツ行事でなく、文化イベントだったら、果たしてどう対応したのだろうか、興味があった。民主党政権になって何がどう変わるのか、判断材料となるからだ。

 勝手な推測だが、鳩山総理ならば、麻生政権が仮に不許可の方針を出していたならば、それを撤回し、同じように許可を出していただろう。その理由は、3年前の民主党幹事長の時の発言にある。京都で2006年8月に開かれた世界宗教者平和会議世界大会に北朝鮮代表団の入国が安倍政権下で拒まれた際、「平和を考える会だからこそ来られることに意味があった。入国を拒まれるのは極めて残念だった」と語っていたからだ。交流と親善の場でもあるスポーツ大会への参加を拒むことは鳩山さんの信条である「友愛精神」にも相反するからだ。


 番組のナビゲーターから電話口で「日本政府の決定をどう思われますか?」と聞かれたので、「極めて妥当な対応」と答えた。その理由をいくつか挙げた。

 一つは、スポーツに政治を持ち込むべきではないとの持論による。今どき、政治的な理由で、自国で開かれる国際スポーツ大会への参加を拒む国はない。仮に拒否すれば、国際的非難を浴び、日本のイメージの失墜につながるだけだ。北朝鮮の反発や東アジアサッカー連盟の対応次第では、大会返上も強いられるかもしれない。日本で国際競技を開催する資格、そのものを問われることになりかねない。仮に、これが日本、北朝鮮、中国、韓国4か国による東アジア女子サッカー選手権大会ではなく、五輪あるいは、サッカーW杯の開催ならば、どうだろうか?「制裁中」という理由で北朝鮮選手団の入国を拒否できるだろうか? IOCやFIFAから理解と支持を得られるのだろうか?おそらくやれないし、できないだろうし、理解も得られないだろう。

 次に、今大会の主催は東アジアサッカー連盟だが、同連盟はアジアサッカー連盟の一部であり、アジアサッカー連盟は国際サッカー連盟(FIFA)の傘下にある。FIFAはその憲章で「宗教や政治などによる国家、個人、グループへの差別を禁じる」ことやホストであるその国のサッカー連盟に対して「政府など再三者による影響を受けない独立した運営」を定めている。

 この憲章に従えば、ホスト役の日本サッカー協会は政府の「介入」を排除しなければならない。仮に、予選を勝ち上がって、本大会への出場を決めた北朝鮮の女子選手団の入国が政府によって妨害されれば、憲章違反となり、日本サッカー協会がFIFAの制裁対象となる。日本サッカー協会は2018年及び2022年のワールドカップの日本誘致に乗り出しているが、開催地は今年12月のFIFAの理事会で決まる。一歩誤れば、日本の招致活動にも悪影響を及ぼしかねない。

 日本人は「北朝鮮」となると「坊主憎けりゃ、袈裟まで憎い」とばかり、条件反射的に感情的になり、時にはエキセントリックになりがちだが、冷静に考えて欲しい。予選を勝ち抜いてきた北朝鮮女子チームは何も好き好んでアウエーの、それも「反北」の真っ只中にある日本に来て、本戦をやりたがっているわけではない。東アジアサッカー連盟の理事会で日本開催が決定したためにその決定に指示に従い、ホスト役の日本サッカー協会から招請されたので、日本に来ようとしているわけだ。にもかかわらず、入国を認めないとなると、それは抗議するのは当然ではないだろうか。日本が同じ立場に立たされたら、日本人も黙ってはいないだろう。

 三つ目に、入国を拒んだからと言って、拉致問題の解決に繋がるわけではない。逆に北朝鮮の反発を招き、解決の道がさらに遠のくだけだ。「核問題解決のための6か国協議開催に障害になりかねない」として、米国、中国、ロシア、そして韓国などからも賛同は得られないだろう。

 四つ目に、日本独自の制裁で日本政府は北朝鮮との人的交流を規制しているが、現在の国連の制裁対象には人的往来、交流までは含まれていない。米国や韓国をはじめ国際社会は北朝鮮に対して経済制裁を科しながらも、李根外務省対米局長の訪米や金基南党書記などの訪韓を受け入れるなど人的往来は継続している。昨年後半から米朝及び南北の関係が改善の方向に向かっているのは人的交流の賜物である。

 最後に、「ピンポン外交」という言葉があるようにこれを機に日朝をとりまく環境が好転すれば、日朝協議再開につながることもあり得る。凍結したままとなっている一昨年8月の日朝合意が復活し、北朝鮮による拉致被害者安否調査への道も開かれるかもわからない。政治的に対立している時こそ、人的、文化的交流を重ね、意思の疎通を図り、信頼を醸成することが大事だ。拉致問題の解決は最終的には対話と交渉しかない。対話と交渉とは簡単な話が、相手と会って、話し合うことである。人的交流を拒絶しながら、その一方で北朝鮮に対話と交渉を促すのはあまりにも矛盾していると言わざるを得ない。

 幸い、番組視聴者のアンケートでは、65%が今回の政府の決定を支持していた。このまま何事もなく、無事開催してもらいたいものだが、どっこいこ事はそう簡単ではない。

 北朝鮮の選手団には当然体育省の役員も同行してくるはずだ。2006年9月に横浜で開かれたシンクロナイズドスウィミングワールドカップでは北朝鮮選手団13人のうち3人が「政府関係者の可能性がある」との理由でビザを発給しなかったことから、北朝鮮が反発し、最終的に不参加となった経緯がある。

 また、その一ヶ月前に大阪で開かれた東アジア卓球選手権大会では「選手の身辺安全問題」を理由に北朝鮮が土壇場で参加を断念したケースもあった。

 仮に、日本政府が全員の入国を認めない場合、あるいは入国しても、一部反対派の抗議活動次第では身の危険を感じた北朝鮮選手団が「身辺の安全問題」を理由に途中帰国してしまうケースも考えられる。不祥事があれば、大変なことだ。

 アルカイダーによるテロの恐怖が囁かれているイエメンで岡田ジャパンは今日、イエメンを相手に戦う。日本選手団の心理的負担、重圧は半端ではないと思う。日本とイエメンの治安状況及び警備体制は天と地の差はあるが、国の違いはあっても、選手の立場に立てば、精神状態は同じかもしれない。

 日本政府も、日本サッカー協会も入国を認めた以上、日本の国際的威信をかけて安全な大会開催に努めてもらいたい。

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バーの階段から落ちて亡くなられた中島らもサンの「いいんだぜ」という歌を思い出します。その中で、「きみが北朝鮮人でも、イラク人でも、宇宙人でも…おれはいいんだぜ」と歌っています。性病を持っていてもいいんだぜ、と。
ある精神科医が、面白いことを言っていました。差別の裏側には、復讐心がある、と。それは、努力して努力して地位を手にした人に共通するものだそうです。おっとりと、競争社会にさらされることなく生きてきた人間には、わからない心情かもしれません。
白を黒と考えることができる「二重思考」も、復讐心のなせるわざかもしれません。知識が多すぎると、白も黒にしてしまうそうで。役に立たない知識が溢れているってことですかね。強欲という悪魔が、世界をコントロールしています。でもね、白は白でしかないのだから、いずれ歴史が証明するでしょう。何が間違っていたかを。

この件については「結果よければ」ではすまない話です。

私は、一度は拒否した理由を政府は明確に説明すべきです。

辺さんは遠慮しているのでしょうか。
こんな理不尽は看過できません。

スポーツがどうのこーのという以前の政府のモラルの問題でしょう。恥ずかしい限りです。

辺真一様
下記の報道がありましたが、この内容について、北朝鮮の真意をどのように考えられるか、近いうちにでも「コラム」を立ち上げていただければ幸いです。

【平壌、北京共同】北朝鮮の外務省は11日、朝鮮戦争休戦協定を平和協定に転換するための会談を「休戦協定の当事国に提起する」とした上で、会談は「6カ国協議の枠内で進めることも可能だ」と指摘、制裁が解除されれば「6カ国協議も直ちに開くことができるだろう」と条件付き復帰を表明する声明を発表した。

 昨年5月の2回目の核実験を受け強化された国連安全保障理事会の経済制裁の解除を条件としているものの、北朝鮮が「多国間協議」のようなあいまいな表現を排除し、6カ国協議復帰の可能性を公式に表明したのは初めて。協議復帰をカードに、平和協定会談を足場にまず米朝関係改善を図ろうとする思惑があるとみられる。

 休戦協定の調印国は、北朝鮮と中国、当時の国連軍を代表した米国の3カ国だが、今回の声明では具体的に言及しておらず、韓国を含む4カ国を想定しているかどうかは不明。

2010/01/11 17:22 【共同通信】 転記

中井大臣の安易な発言で、北朝鮮女子サッカーチームの来日が遮断されたことは、大変残念なことです。スポーツと政治は切り離して対応すべきなのに、ましてや政権中枢の大臣が来日を許可しないと発言したのですから、北朝鮮としては相当なショックで憤慨したのだと思います。
北朝鮮女子サッカーチームは東アジア最強のチャンピオンです。
そのチャンピオンが欠けた試合は面白くないでしょう。
日本としては、北朝鮮と直接接触出来るまたとないチャンスだったのです。
最近の日本の北朝鮮に対する対応は変な意地ばっか張って、大人げないです。岡田さんの対北外交はガチガチで、とても日朝の改善が進むようには感じません。困ったものです。
拉致の再調査をお互い約束したときは、日本の独自制裁なるものはなかったのですから、少なくとも独自制裁の国会議員の往来、貿易の輸出入の再開、郵便物の発送再開、在日同胞の現地親族に対する送金の再開をしなければ、北朝鮮は応じてこないでしょうね。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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