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「ジョンウン報道」で朝鮮半島の一年が始まった!1月8日もまた »

ボズワース訪朝で何が話し合われたのか

  
 オバマ大統領の特使としてボズワース特別代表が訪朝してから10日が過ぎた。ボズワース訪朝で米朝間で何が話し合われ、どのような暗黙の合意があったのか、おぼろげに見えてきた。

 当事者のボズワース特別代表は北朝鮮側との会談について「率直に話し合い、非常に有益だった」と語り、また、上司のクリントン長官も「予備協議としては、非常に建設的だった」と評価した。一方の北朝鮮側も「率直で実務的に話し合い、互いの立場への理解が深まった」(外務省報道官)と、ボズワース氏と口を合わせた。

 「率直に、かつ建設的に話し合った」結果、米朝両国は「6か国協議再開の必要性と2005年の6か国協議の共同声明の履行の重要性について共通の理解に達した」(ボズワース氏)ようだ。それでも、6か国協議の即再開の合意には到らなかった。その理由について、クローリー国務次官補は「解決すべきことが残っている」として、これを解決するため「6か国協議関係国と協議しなければならない」と語った。北朝鮮の外務省報道官も「残る相違がある」と認めた上で、「これを埋めるため、今後も引き続き努力する」と、これまた米国とほぼ同じ答えだった。米朝のやりとりを吟味すると、ボズワース氏は6か国協議再開までには「戦略的忍耐が必要である」と語っていたが、忍耐を要するほど6か国協議再開までにはそれほど時間を要さないかもしれない。

 では、解決すべきこと、残る相違とは一体何か?ずばり、北朝鮮が提示した6か国協議再開への前提条件に尽きる。その条件とは、金正日総書記が10月に訪朝した温家宝首相に対して言及した次の言葉の中に集約される。

 「米朝関係が敵対関係から平和的関係へと移行することを条件に6カ国協議を含む多国間協議を行いたい」

 

 北朝鮮はボズワース特別代表との間で平和協定に関する協議を行ったことを明らかにした。この件についてはボズワース氏も「我々は2005年9月の共同声明のすべての要素について議論した」と、否定しなかったどころか、むしろ前向きに話し合ったことを認めている。

 ボズワース氏が言及した6か国協議共同声明には核放棄への見返りとして米国が北朝鮮に対して核兵器又は通常兵器による攻撃又は侵略を行う意図を有しないこと、また、米国が北朝鮮の主権を尊重し、平和共存すること、及び国交を正常化するための措置を取ることが約束されている。また、「適当な時期に、北朝鮮への軽水炉提供問題について議論を行う」ことも約束している。

 ボズワース氏は「6者会談が開かれさえすれば、また非核化の論議が推進すれば、朝鮮半島の平和体制を論議する準備ができている」と語ったとされるがどうやら平和協定の問題では6か国協議と平行して、朝鮮戦争の当事国である中国と韓国を加えた4か国間で論議することで合意に達したようだ。

 北朝鮮の非核化問題は6か国協議の場で、平和協定の問題は4か国協議の場で話し合うようだが、6か国協議の一部として4か国協議が行なわれるのか、それとも6か国協議とは切り離して行われるのかは不明だ。どちらにしても平行に行われるのは間違いなさそうだ。

 米朝の関係正常化についても、米国側から6か国協議への復帰と北朝鮮の非核化の進展を条件に平壌に連絡事務所を開設することが提案された模様だ。米国は、北朝鮮の非核化の進捗と合わせて、利益代表部に格上げし、最終的に大使館級の外交関係を樹立する考えのようだが、速やかな国交正常化を希望する北朝鮮がこの案を受け入れるかどうかは微妙だ。クリントン政権の時も国交正常化への前段階として連絡事務所の提案があったが、北朝鮮は難色を示していた。

 また、ボズワース氏が「共同声明のすべての要素というのは朝鮮半島の非核化だけでなく、平和体制や6か国当事国間の関係正常化、さらには経済支援も含まれる」と語っているところをみると、軽水炉の提供以外にも経済支援の打診もあったようだ。

 経済支援との関連で注目されるのは、6か国協議ボイコットの直接的な要因となった「人工衛星」(テポドン・ミサイル)問題への米国の対応だ。北朝鮮が国連の非難決議に反発した最大の理由は「人工衛星発射の権利を奪われた」ことにある。北朝鮮は今でもこの問題では「我々の自主的な宇宙利用権利を引き続き行使する」と譲らない。

 北朝鮮は「人工衛星」についてはかつてクリントン政権時代に米国が北朝鮮に代わって打ち上げること、またテポドン・ミサイルについては「3年間で30億ドル相当の経済支援をすれば、開発や実験を中止する」と提案し、実際にクリントン政権と合意した経緯がある。オバマ政権に対しても同様の提案をした可能性が考えられる。

 問題は北朝鮮が要求している国連の経済制裁の解除である。米国は6か国協議復帰だけで制裁は解除しないとの立場だ。まして、コンゴやミャンマー、イランなど米国が問題にしている国々への武器輸出を国連の制裁決議に反し、続けている状態での制裁解除は米国としては容易には呑めない。

 一方、北朝鮮はブッシュ政権下でその存在を否認していたウラン濃縮問題でオバマ政権と協議することに同意したようだ。ブッシュ政権で合意した共同声明の履行が遅滞し、6か国協議が停滞した原因の一つが濃縮ウランに関する議論や検証を拒んだことにある。

 皮肉なことに、北朝鮮が核実験への国連安保理の制裁措置に反発し、6月13日にウラン濃縮作業の着手を宣言し、9月には国連安保理への書簡で「ウラン濃縮試験が成功裏に行われ、最終段階に入った」と公言したことが幸いしたようだ。北朝鮮がウラン濃縮開発を認めたに等しいからだ。

 さらに、米朝間で「共同声明のすべての要素について話し合った」(ボズワース氏)ならば、米国からは6か国協議問題以外に共同声明で約束したNPT(核不拡散条約)及びIAEA(国際原子力機構)への早期復帰を北朝鮮側に要求したことも十分考えられる。

 米国が主導したNPT体制の維持のためオバマ大統領としては来年5月にニューヨークで開かれるNPT再検討会議までには北朝鮮の復帰を取り付けたいところである。「核のない地球、世界」を公約したオバマ大統領とすれば、来年のNPT再検討会議は、核兵器廃絶への展望を切り開く重要な会議となる。北朝鮮の参加はその成否の鍵を握っているといっても過言ではない。この問題で北朝鮮がどのような言質を与えたのか、注目される。

 米政府は最近になってオバマ大統領の金正日総書記宛のメッセージをボズワース氏が持参したことを認めた。米国が認めるや北朝鮮も直ちにその事実を追認した。米朝間はまるでキャッチボールをやっているようでもある。

 メッセージの中身は明らかにされてないが、ボズワース氏によると「北朝鮮が非核化目標に向けて動く準備が出来ていれば、現在または過去とは全く異なる自らの未来のビジョンを目にするであろう」との内容になっている。

 北朝鮮にとっての未来のビジョンが何か、来年、その全容が見えてくるかもしれない。

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クリントン国務長官の在米大使の呼び出し報道。
この問題と関連させると、アメリカの国家戦略の1つの道が、見えてくる気がします。

鳩山首相は、このボール、どのような球筋で返すのだろうか?

不思議なのは、何故アメリカがこれほど焦っているのか?


少し、他人事みたいな投稿になりました。


二見さんの投稿の補強のような記事がここにあります。

そうなんですよ。
北朝鮮とアメリカの交渉は情報鎖国に陥っているマスコミが支配する我が日本では詳細が報道されず、普天間問題で米海兵隊が北朝鮮への遊撃が困難になるとの珍妙な意見に摩り替わってしまっているのです。

日本だけが東アジアのデタントに背を向け、相も変わらずとっくに愛想をつかされたブッシュ・ネオコン路線の残滓に振り回されているのです。
その旗振り役を自民党とマスコミが率先してやっている。
保守の名を騙った偏狭な文化人たちがオピニオンと称して「日本はシナとチョウセンに騙し取られる、アメリカを切るな」と喚き散らしているのです。

鳩山政権は北との交渉のまえに最も厄介なこの国内の脊髄反射脳の連中を相手にせねばならず、これでは徒労に追われ足元をすくわれかねません。
政権が変わって抵抗するものに官僚やマスコミが連なるだろうと予測はしていましたが、ここまでマスコミが劣化するとは思いも至りませんでした。

いや、劣化するのは勝手にやってればいいのですがここまで情報操作を露骨にやってくるとは思いませんでした。
北朝鮮のことをとやかく言う資格はありませんね。

<米国と中国を手玉に取る北朝鮮>

今まで米国は世界一の武力を背景に外交で相手国を恫喝し、交渉を有利に運ぼんできた。それに対し弱小国である北朝鮮が軍事大国である米国や中国の恫喝にもめげず粘り強く交渉している姿を見ると、凄まじい外交力だと変に感心してしまう。

今回の普天間問題に関し、鳩山首相の姿勢にマスコミは「はっきりしない」と批判的だが、米国の恫喝に対し案外、有効的な外交手法であるかもしれない。とにかく自民党政権のようなポチ外交からの脱却は必要だろう。

>北朝鮮にとっての未来のビジョンが何か、来年、その全容が見えてくるかもしれない。
辺さま
こんばんは。良い方向に向かうといいですね。正直、金正日氏の行った拉致事件は、日本人としては稚拙かつ許しがたいものではあります。しかし、大戦時には我が国の占領を受け、戦後大国の利害に翻弄され国を分断された人たちの歴史を鑑みるに、また現在の市民の飢餓状況を考えるに、同情を禁じ得ません。オバマ大統領の本音かどうか判らないが、なんちゃつて核の無い世界、の発言に乗れるなら、乗ってこの問題が進展打開出来ればよいことです。ただ、将来対日本間に横たわるこの問題は必ず解決して頂きたい。拉致の被害者はきちんと本国に戻して生存の有無ははっきりさせて、事実をつまびらかにして頂きたいと思います。そうでなければ、この問題はいつまでも尾を引き、日本の頭の悪い保守のよりどころとしていつまでもつつかれるでしょう。これは両国に取って利口な選択とは言えません。
アジアがともに繁栄するためには、お互いの信頼関係を築くのは不可欠かつ必要です。普通の日本の市民の、心の痛みを怒りに変えないようにしてください。外交にこれだけの交渉が出来るなら、難しい事ではないはずです。

 辺さんが述べられているように、北朝鮮は一気に米国にたいし、休戦協定から平和協定(条約)による米朝国交正常化を目的とするように感じています。
 核や弾道ミサイル等の脅威除去の代償をできる限りイニシアティブをとりながら如何に高く売りつけようかとアメリカとの2国間交渉の場を使いながら金総書記の指導の下で全力を挙げて行っているともの想像しています。
 北朝鮮から見れば中国はアメリカさえ取り込めば牽制できるし、日本、韓国はアメリカに従順な隷属国家と見ており金庫以外としては見ていません。
 アメリカは金体制については北朝鮮の国内事情であり、体制崩壊による混乱を最も忌避しているところでしょう。おそらく今交渉を始めたのは金総書記の健康状態を考慮し、威令が国内にいきわたっている段階で交渉を完結したいという希望と、核なき世界へというオバマ戦略とが相まっているものと想像します。
 北朝鮮の体制を受け入れることができず拉致問題にこだわり続ける一方、外交的には反中、朝、韓で親アメリカ(従属)を是とする安倍を中心とする右派、拉致被害絶対主義者及びマスコミにとってこの米朝2国間協議の状況をどのように見ているか注目しています。
 日本外交が現状のまま何も手を打たない場合、結果として日本が一カ国だけ外され米国始め他国の圧力の下、人道援助なる名目で都合の良い金庫番にされることを危惧しています。
 日本がこの流れから乗り遅れる(体制に従属、迎合する)ことなく東北アジアの安定下に貢献することが安全保障を始め国益に大きく貢献することになると思います。
 米朝の休戦協定から平和条約への変化は当然朝鮮戦争の当事者である韓国(中国)へも波及します。
 日本は米韓中と連携し北朝鮮と交渉を行い、日本は韓国と行ったものと同様の日朝条約締結による国交正常化という目標で日、米、中、韓、朝の同時決着を図るのが最善ではないかというのが私の考えです。
 北東アジアで大幅な緊張緩和ができれば普天間問題始め在日米軍基地のある程度の削減は可能になります。米国の世界戦略上必要だと思われるもに限り残す方向で検討すればよいと思っています。
 過去を見据えつつ、お互いに理性と相互理解の精神で未来を目指したいものです。

 

「全く異なる自らの未来のビジョン」

北朝鮮は意識改革したんでしょうか?それとも数年前からすでにできていたが、ほったらかしにされていただけなのか、これにいち早く気づいた米国。
経済協調にエネルギー分野での協調。そして、4ヶ国による平和協定案。米朝で利害一致すれば、先ず経済開放されるかもしれませんね。独り立ちできる国?、日韓とは違った、対等な関係を築けるのは、ひょっとして北朝鮮かもしれませんね。

私は、前前から北朝鮮政府(労働党)の思考回路がよく理解できていて、原則主義的な共産主義的発想にどちらかというといつも「安堵」している人間です。だから、「拉致問題」の解決も、その原則主義的発想があれば、解決は可能だと信じています。
 問題は、その発想に基づいて、「落としどころ」を考えようとしない、これまでの日本政府のほうこそ問題だ、と思っています。
 そもそも「冷戦終結」の総括もできないでいる日本の政治勢力には、到底無理な話なのですが、あの「拉致事件」を起こした世界情勢と政治情勢の総括を、北朝鮮がロジカルに進めていると仮定したときに、わが国政府が取るべき態度は何なのか、という発想すら目にすることもありません。
 政治経済的にも、社会的にも厳しい現実に直面している北朝鮮政府は必死に生き残りを掛けてあの手この手を使って、米中と交渉している姿勢とその気持ちがいやというほど伝わってくるので、本当に、日本の外交は情けないばかりです。何とかできないのか、といらいらが募るばかりです。その解決の道筋さえ示せれば、一日でも早く拉致被害者の帰国や拉致家族の方々への、安堵への可能性が開けるはずなのです。
 北朝鮮の核もミサイルもその「限界」を悟りながら、危機に瀕した小国が生き残りを欠けた外交手段でしかないと思っています。幾数百万の同胞が生活し、多くの財源を得ているわが国に、核を行使するほど、馬鹿げた発想はあるわけがないのです。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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