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温家宝訪朝で、6か国協議は? »

金正日の言う「多国間」とは「6か国」!?

金正日総書記が訪朝した中国の戴秉国国務委員との会談(9月18日)で核問題を「2国間および多国間の対話を通じ解決したい」と発言したことを受けて多くの日本のメディアは金総書記が「6か国協議への復帰を示唆した」と伝えていたが、早合点のような気がしてならない。多国間イコール必ずしも「6か国」とは限らないからだ。

周知のように中国は6か国協議の議長国である。戴国務委員の訪朝結果、金総書記が6か国協議復帰に同意したなら、新華社通信はなにも「多国間」という文言を使わず、ずばり「6者」とか「6か国」という表現を使い、外交成果を誇れば済むことだ。

もちろん、「二度と6か国協議には出ない」(北朝鮮外務省)とか「6か国協議は永遠に終わった」(金永南最高人民会議常任委員長)と言ってきた北朝鮮の立場や面子を考えて、配慮してあえて「多国間」という表現を用いた可能性も考えられる。戴国務委員は過去に2003年7月、2005年4月、2006年10月と3度訪朝し、その都度駄々こねる北朝鮮を説得して、6か国協議のテーブルに着かせた実績もあるだけに、今回も復帰への確約を取り付けたと言えなくもない。

しかし、その一方で、中国への配慮から金総書記の外交辞令、リップサービスの可能性も否定できない。金総書記が言及した「多国間」が3か国あるいは4か国協議を指す場合もある。6か国協議に替わる新たな多国間協議を念頭に入れての発言かもしれない。

 仮に本当に金総書記が6か国協議への復帰を示唆したならば、無条件ではないはずだ。必ず前提条件がある。それが、何か定かではない。単に米朝直接交渉だけなのか、それとも国連の制裁解除なのか、あるいは中国政府の経済援助なのか、それとも6か国協議ボイコットの原因となった人工衛星打ち上げの保証なのか、はっきりしない。

 実は、核実験の直後、中国の北朝鮮担当者の求めに応じ、北朝鮮の今後の出方について意見を求められたことがあった。その際、以下のような見通しを述べたことを記憶している。
 
 「当面は、オバマ政権を相手にチキンレースを仕掛けるが、北朝鮮の究極的な狙いは、米朝による外交決着にある。そのため米国に2国間協議を働きかけるだろう。仮に米国が直接協議に応じれば、米国への配慮から、韓国とも関係修復に乗り出し、南北対話を復活させるだろう。また、日本に対しても衆議院選挙後に交渉を打診するだろう。南北と日朝対話を同時進行させ、米国との交渉進展をはかるのでは。2国間による2+2+2の会談が北朝鮮の第一の狙い。2国間会談が進展すれば、第二段階として休戦協定を平和協定に変えるため米朝に中国と韓国を加えた4者会談か、北朝鮮の非核化と安全保障を担保するため米朝に中ロを交えた核保有国による4者会談を提唱するかもしれない。いずれにしても、6か国協議の再開は、2者や4者会談が進展してからの話となる。現状での6か国協議復帰は北朝鮮にとって外交敗北となるので、無条件、即戻ることはないと思う」

 中国にとって6か国協議の早期再開が望ましいが、平和協定締結当事国による4者会談であれ、核保有国による4者会談であれ、中国は米国と共にどちらにもコミットしているので、核問題の進展のためならば4者協議でも異論はないはずだ。前者ならば、日本とロシア、後者ならば、日本と韓国に資格がないことからオミットされる。米国が応じる可能性が極めて低いが、北朝鮮の非核化を実現させるためのオプションとしてゼロではない。

 中国も最終的には6者会談のための前段階として北朝鮮が求める2者あるいは4者会談を許容するのではないだろうか。国境を接している社会主義同志関係にある中国と北朝鮮との関係は何と言っても別格だからである。それだけに米朝協議促進のため中国による側面支援もあるかもしれない。

戴国務委員は今回、胡錦濤主席の特使として訪朝し、朝鮮半島の非核化の方策について金総書紀と話し合った。戴特使を通じて親書を伝達した胡主席は23日から始まる国連総会に出席し、オバマ大統領と会談の予定である。

金総書記が中国の協力を要請しているならば、胡主席がオバマ大統領に直接米朝会談を働きかけるだろう。金総書記との首脳会談に応じるよう説得することも十分考えられる。2004年5月に金総書記は再会した小泉純一郎総理に米朝橋渡しを依頼し、小泉総理は失敗に終わったが、ブッシュ大統領に金総書記との会談を働きかけたことがあったからだ。

米朝首脳会談の可能性については18日にジョンホプキンス大国際関係大学院で国務省の朝鮮半島担当官、国防情報局(DIA)や議会関係者、それに朝鮮半島専門家ら20数人が集い、開いた非公開会議でも取り沙汰されていた。イラクやアフガンの情勢次第だが、早ければ、来春の開催も考えられるとのことだ。

中国の外交もしたたかだ。経済制裁でも必ずしも国際社会とは足並みを揃えていない。そのことは今回、戴国務委員が日本では贅沢品として北朝鮮への輸出を禁じているワインを金総書記にプレゼントしていたことからも明らかだ。土産に頂戴したことがあるが、中国産のワインもなかなかのものだった。

 これでは日本がいくら経済制裁を律儀に履行しても、意味がなくなる。日本も米国や中国にしてやられないようもっとしたたかな外交が必要なのかも。

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大変勉強になります。

政権交代が実現し、新政権となった日本政府が、北に対し、どのような外交姿勢を見せるのか、たいへん興味津々です。

アメリカは東欧でのMD計画中止や、アフガンへの追加増派に消極的な姿勢を見せていますね。国連安保理では、核廃絶決議案に最終合意したようですね。いい流れです。

日本のMDはどうするのでしょうか。防衛省はPAC3追加要求したそうですが、新政権になったいま、どうするのでしょうか。航空幕僚監部はPAC3は消極的だったようですが、背広組は何の意味があって、そうするのか意味がわかりません。あの無意味なものに巨額を投資するなど、バカバカしいと思えます。

ところで、北の動きは、辺さんの見通しされていたとおりの展開となっていますね。すごいです。

「多国間」とは「6か国」を意味するわけではないのですね。ともかく、どのような形であれ、協議が行われていってほしいです。今後、話し合いが、ますます促進していくことを強く願っています。

 民主党政権になって岡田さん中井さんのコメントを聞いていても「拉致問題」がどうしても突出しているため北朝鮮に対し白紙から対応するという大胆な発想はないようです。或いは秘密裏に接触を行っているかもしれませんが(仮にそうであれば喜ばしいと思いますが)。
 中井さんを始め拉致問題で家族会とかかわっている人たちはどうしてもまず圧力ありきのようで彼らの意見を重用すればこれまで同様に交渉は一歩も前進できないでしょう。
 すでに米朝、韓朝は一部中国を巻き込みつつ北の体制保障を暗黙の了解の下に、北の核問題の解決に向け関係改善に動き始めています。
 このままでは日本は遅れを取ると同時に4カ国の交渉結果に基づき自分たちが知らないうちに取り決められた案件で大きな財政負担を強いられそうな予感がします。
 北朝鮮の核の問題が大筋で解決に向う時になって、日本は「拉致問題の解決なくして一切北朝鮮には何もしない。」ということができるでしょうか。
 日本の態度でこの交渉が不調に終われば核の廃絶を国際的に主張している根底が崩れ去ることになります。
 このパラドックスにちゃんとした答えが出せるのでしょうか。
 最終的に日本外しか、はたまた核廃棄に対する欺瞞性から国際的な非難を甘受する事が出来ず、最後は米国の後追いになるのではないか。
 米国の対北朝鮮政策の後追いではなく、米朝、韓朝と同時に日朝も早急にお互いの不信感を取り除く努力を払い、交渉により4カ国の同時国交正常化がはかれるようにすることが考えられる最善の方策ではないか。
 小泉訪朝で機能した田中均氏のルートはすでに機能しなくなったと聞き及びます。新たな秘密接触のルートは中、韓、米のルートを利用し接触をを試み政権与党の大物議員の中国訪問に合わせて北朝鮮との交渉のきっかけを作るのが良いのではと思う。
「核」か「拉致」か日本にとって大局的判断が求められる時期が遠からずやってくるのではないか。

辺さん
北朝鮮は中ロとは同盟国でありながらも、中ロ双方とは国防上の安全保障協定や日本でいうところの集団的自衛権なるものの公式的な締結をしていないとの観点から、労働党にとっては中・ロと同様の同盟的な契約、あるいは自主生存権の為の、核・ICBM開発・人工衛星打ち上げ等を認める事を含んだ米朝交渉が最優先事項になるのだろうと考えています。
この米朝交渉が実現化して、他に日韓に対し+2+2であるならば、6ヶ国協議自体無意味になりえる可能性も出てきませんか?
また、休戦協定を平和協定にと言う爆弾的ご見解については脱帽ですが、今や経済援助や制裁解除だけでは解決しない北朝鮮との問題は、休戦協定を平和協定に変える事があっても、内政的課題である核保持などは強盛大国化の必須条件ではないでしょうか?これについては韓国への軍事作戦統制権が返還される2012年と強盛大国および100年記念の年が重なっている事や今年あるいは来年にも返還される懸念をふまえれば、これも深く関係しているのではと思いますが。現状において北朝鮮にとっての平和協定化というのは韓朝との軍事バランスが均衡する事が前提ではないのではないでしょうか。
この作戦統制権の返還が関連しているという前提に立ち、万一、協議が4ヶ国間に向いこれが現実化し、北朝鮮がここで「極東アジアの安定という意味で休戦状態を最終決着させる為」に、長年に渡る休戦協定から念願の平和協定への代替案として「自主生存権の為の核保持」を従来通り主張した場合協議は難航しますね。仮に「核保時の認知」が、4ヶ国協議において妥協された場合、日本政府にすれば核廃絶運動は無意味になり、日朝間における「国交正常化」「拉致問題」については、「制裁解除」「戦後補償」「慰安婦補償」と抱き合わせになり、また「北朝鮮の核保持」については他国間協議(4ヶ国)によって認めざるを得ない結果になる事も否定できませんね。
いづれにせよ核問題については日本は除外されている感が出てきたのでは。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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