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辺真一:後継者問題と今後の北朝鮮の対応 »

北朝鮮は日本の早期警戒管制機を撃墜できるか

 北朝鮮空軍司令部は6月27日に報道文を発表し、日本の偵察機が北朝鮮に対して空中偵察を行なっていると非難しました。

 偵察行為を行なっていると問題にされた日本の偵察機は航空自衛隊の早期警戒管制機「E-767」で、北朝鮮の発表では、6月24日、25日と二日間にわたって「元山(ウォンサン)東側海上上空から舞水端里(ムスタンリ)側上空まで長期間往復飛行し、北朝鮮の海岸と周辺地域への空中監視と電波探知を行なった」とのことです。

 その上で北朝鮮は「偵察行為」を「許しがたい軍事挑発である」とし「われわれの領空を0.001ミリでも侵犯すれば、容赦なく撃ち落す」と警告を発していました。

 「偵察行為を行なった」とされる南東部に位置する江原道の元山には旗対嶺(キッテリョン)ミサイル基地があり、5月25日には地対艦ミサイル2発が発射されています。また北東部の咸鏡北道の舞水端里基地からも4月5日にテポドンⅡが、また5月29日には地対空ミサイルが発射されています。いずれの基地も日本海(東海)を挟んで日本に面しているので、日本としては無関心ではいられません。

 特に北朝鮮は元山海域一帯を6月25日から7月10日まで航行禁止地域に設定し、軍事射撃訓練を予告してており、また舞水端里基地でもテポドンⅡか、その改良型の長距離ミサイルの再発射の動きが取り沙汰されているだけに安全保障上、日本が警戒するのは当然のことです。

 しかし、北朝鮮は日本国内で「敵基地攻撃能力保有」「核及びミサイル基地への先制攻撃」の議論が起きている最中に空中偵察行為が繰り広げられていることに神経を尖らし、「看過できない」として「迎撃する」と脅しています。

 単なる威嚇や、牽制ならば憂慮する必要はないのですが、北朝鮮が本当に迎撃するつもりなのか、意思があったとしても撃ち落せる能力があるのか、それが問題です。

 まず、迎撃の条件として「われわれの領空を0.001ミリでも侵犯すれば」と言っていますので、北朝鮮の領空を侵犯しない限り、軍事的アクションはないと思われますが、気になるのは、北朝鮮の領空の範囲が定かではないことです。

 一般的に海外線から12カイリまでのエリアが領空とみられています。しかし、北朝鮮は日本との中間線までを防空領域に指定しています。また、領空の範囲は大気圏に限られ、高度100km以上の上空を高速飛行する物体には戦闘機を発進させてはならないというのが国際法ですが、北朝鮮が「E-767」を偵察機とみなし、警告を発した以上、このまま手をこまねいているとは考えにくいです。実際に、北朝鮮には過去に偵察機を撃墜した前歴があります。

 米国の電子偵察機EC―121を1969年4月15日に撃墜しています。撃墜されたのは神奈川県厚木基地を飛び立った米軍機で、事件が起きる前の三ヶ月間に述べ190回も偵察活動をしていました。前年の米情報収集艦プエブロ号の拿捕に続く迎撃に米国は痛手を被りましたが、一方の北朝鮮は金日成主席誕生日に米軍機を撃墜したことで気勢が上がりました。

 また、1981年8月にも米偵察機「SR-71」が北朝鮮のミサイル攻撃を受ける事件が起きています。しかしこの時は、北朝鮮は「SR-71が領空を侵犯した」と非難したもののミサイルによる攻撃は否定していました。それでも米国は「攻撃を受けた」と北朝鮮を激しく非難しました。北朝鮮は命中しなかったので、失敗を隠すため発射そのものを否認したようです。

 当日沖縄の嘉手内基地から発進した「SR-71」は高度2万4千m、巡航速度マッハ3以上の性能を持つ当時米国が誇る世界最新鋭の偵察機でした。これに対して北朝鮮が当時保有していた対空ミサイルはソ連製のSA-2で、最高射撃高度は1万8千m。従って、2万4千mの高空を超音速で飛ぶ「SR-71」を狙うのは不可能に近いとみられていましたが、同機がSA-2の射程範囲ぎりぎりのところを低空で飛んでいたため狙われたのではないかとみられていました。

 北朝鮮は最大速度は800km/h以上,上昇限度が1万~1万2千mの「E-767」ならば迎撃は可能とみているのかもしれません。実際に先月29日に舞水端里基地から発射された地対空ミサイルは射程距離250kmの旧ソ連製SA-5改良型とみられ、韓国では米国のRC-135やWC-135偵察機を狙っているのではとの見方もありました。

 中国国際戦略学会の厳江楓副会長は自民党の加藤紘一元幹事長との会談(6月26日)で「国防委員会の呉克烈副委員長は人望があり、軍を統括している。呉氏の下で不協和音が生じることはあり得ない」と明言したそうですが、呉克烈副委員長は元空軍司令官でもあり、現在は党作戦部長を兼ねています。その彼が軍を統括しているというのは不気味です。ちなみに軍No1の趙明録国防委員会第一副委員長も空軍出身です。

 米国や国連による制裁強化への対抗手段として北朝鮮が日米韓を戦争瀬戸際まで追い込む戦法ならば①ICBMの発射、②西海での武力衝突、③日本の偵察機への迎撃などが検討されていても不思議ではありません。用心しなければ誤って軍事境界線を越えたばかりに北朝鮮に撃墜され、不時着した15年前の米軍ヘリの二の舞にならないとも限りません。

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辺さんのお考えは北朝鮮は可能であれば「空自機E-767(海自のUP-3電子偵察タイプ)」機の撃墜を意図しているとお考えだと思います。
 私もそのご意見に同意いたします。
 一般論で言えば細心の注意を払い日本側の制空権内で行動すれば問題はありませんし機体の飛行能力や情報収集能力から危険を冒す行動をとる必要は無いと思っています。
 しかし日本人として考えたくないことですが「空(海)自機を北朝鮮に撃墜させる(撃墜して欲しい)」という誘惑があるのも100%否定できない事実だと思います。
 日本北朝鮮のそれぞれの国内情勢が緊張を高め一触暴発寸前の状況を望んでいる人がいることも事実です。
 日本は「政権交代を阻止」するため、
 北は「後継者問題で強い後継者を国内にアッピール」し、「米国を直接交渉の場に引きずり出したい」。
 お互いの思惑が図らずも一致しています。また、難航する拉致問題を安全保障問題を優先することにより切り離すことも可能だと思います。
 AWACS機の撃墜事象は無いし、あってはならないことと思いますが「溺れる者は藁をも掴む」と言う諺がありますが日本、北朝鮮及び金融崩壊から経済的財政的に追い詰められ悩むアメリカの状況を見据えると何が起こっても不思議ではありません。

いつも拝見しております。詳しい解説、大変勉強になります。

北朝鮮は日本の航空自衛隊の早期警戒管制機「E-767」を迎撃可能とみているのかもしれないのですね。
北は領空を0.001ミリでも侵犯すれば迎撃すると言っているのですから、その条件を満たせば、やるのでしょう。

北は、アメリカと共謀し、われわれの平和的衛星打ち上げと核実験に対し国連で制裁決議を操る先頭に立った日本が、空中偵察することは軍事的挑発だと非難しているようですね。
日本が北のロケットに対し迎撃だとか、敵基地を先制攻撃すべきだとか、異常きわまりない、タカ派の強硬的姿勢が、いまのこのような北の姿勢を招いていることを政府与党は認識すべきです。その責任の自覚なしに、中国に何とかしてもらおうなんて、虫が良すぎます。自身でその危機を招くことをしておきながら、そんなことはなかったのように、われわれはしっかりこの国を守ります。野党にはその能力はないようだ、なんて言うのは、あまりにも国民をバカにしています。強気な強硬姿勢が国を守ることだと本気で考えているとしたら、あまりにも異常で、話になりません。もし、そうであるならば、この国の安全を任せておくわけにはいきません。

辺さんがおっしゃるように、北朝鮮が軍事射撃訓練を予告してており、ミサイルの再発射の動きが取り沙汰されているだけに安全保障上、日本が警戒するのは当然のこと、と私も思います。行き過ぎた偵察となってしまわないかが一番気になります。

>呉克烈副委員長は元空軍司令官でもあり、現在は党作戦部長を兼ねています。その彼が軍を統括しているというのは不気味です。

私は不勉強のため、その意味がわかりませんでした。要注意すべきということなのでしょうか。

辺さんのコメント始めて拝見いたしました。これからも勉強させていただきます。時にはコメントさせていただく事があるかもしれませんが、宜しくお願いいたします。

中国筋の情報等を見ていると北朝鮮の現在の姿勢については迷惑しているみたいですね。
世論でも賛否両論あるみたいです。

航自の「E-767」の飛行については防衛調査行動?抑止活動?か解りませんが、
北朝鮮の昔(ソ連が存在していた頃の金日成体制)における、領空侵犯即撃墜などはすでにないので、軍事行動が軍事広報になり、それが外交活動とイコールなってしまった北朝鮮ですから今のところ撃墜することはない可能性が高いのかもしれませんね。

妹尾さんの
・・・・・・・・・・
日本北朝鮮のそれぞれの国内情勢が緊張を高め一触暴発寸前の状況を望んでいる人がいることも事実です。
 日本は「政権交代を阻止」するため、
 北は「後継者問題で強い後継者を国内にアッピール」し、「米国を直接交渉の場に引きずり出したい」。
 お互いの思惑が図らずも一致しています。また、難航する拉致問題を安全保障問題を優先することにより切り離すことも可能だと思います。・・・・・・
というご意見はもっともだと思います。かなり憂慮し注意しなければならない情況ですね。もし北朝鮮が日本と韓国の分断を目的とし竹島にミサイルを撃った場合など・・・(荒唐無稽な想像ではないような気がしています。)日本政府はどのような対応を決断できるでしょうか・・・。タイミングよく新聞等で日米の核持込の密約関連の周知・確認を目的とした報道も始まっているように思えます。東アジアの緊張関係を北朝鮮の暴発により中国が制御不可能になった場合のシュミレーションは出来ているのでしょうか?

辺さま
こんにちは。もう選挙が近いですから、日本で飛行機を撃ち落とされたがっている人がいても、そうそう、変な行動をしている暇はないと思いますから、ひとまず安心でしょうか。しかし、北朝鮮は最近どうでしょうか。国内はうまく行っているのでしょうか。中国でも、韓国でもどこかで情報の出入りするパイプが有れば、考えが解りますから、それでも、国家同士の話し合いは何とかつづくような気がします。しかし、北朝鮮の一般の方達はどうなのでしょう。こうして私たちがミサイルの話をしていても、末端の人たちはご飯一杯でも、うどん一杯でも食べられているんでしょうか。都市部の方達はいわば特権階級の方達でしょうから、そうそう困るという事もないと思いますが。北朝鮮を見ていると、不満が多々あっても、こうして、文句をいいながら、政権を交代できる選挙が有る私たちは、幸せなのだと、つくづく感じます。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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