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「ミサイル発射」から1ヶ月、これからの展開は? »

二度目の核実験に突き進む北朝鮮

 国連安保理議長声明への北朝鮮の反発は、大方の予想を上回る速さで、収まる気配がありません。

 「北朝鮮の発射」を非難する安保理議長声明が4月14日に採択されるや間髪を入れず、北朝鮮は6か国協議からの脱退と核開発の再開を宣言しました。2日後の16日には早くも国際原子力機関(IAEA)の監視チームに核施設の封印と監視カメラを撤去させたうえで国外退去させ、同時に核無能力化作業を監督していた米国の専門家らも寧辺から追放しました。

 濃縮ウラン疑惑が浮上したブッシュ政権下の2002年の時も、同様のことがありましたが、それでも一気にではなく、監視カメラ撤去まで10日間、IAEA職員の追放まで15日間かけて順次行ないました。また、昨年もテロ支援国指定を解除しないことに苛立ち、一時期核施設の無能力作業を中断させたことがありましたが、それでも封印と監視カメラの撤去及び3人のIAEA監視要員の追放までに1ヶ月近く間を置きました。過去のケースと比べようもないほど今回の北朝鮮の行動は迅速で、尋常ではありません。

 極め付きは、「使用済み核燃料棒の再処理を開始した」と25日に発表したことです。北朝鮮が現在保有している8千本の使用済み燃料棒を再処理するには再処理施設を修復しなければなりません。無能力化の段階にあった再処理施設の修復には1~2ヶ月、そして貯蔵プールに保管されてある使用済み燃料棒を取り出し、再処理するまでには3ヶ月間は要すると見られていました。従って、「核開発再開宣言」から僅か10日後の再処理着手には「本当だろうか?」との疑問の声がIAEAなど関係者の間で上がっていますが、いずれにせよ仮に8千本の使用済み燃料棒が完全に再処理されるようなことになれば、北朝鮮は秋までに新たに核爆弾5個分のプルトニウム25~30kgを手にすることとなります。

 ウォルター・シャープ駐韓米軍司令官は4月22日、韓国商工会議所での講演で「北朝鮮は少なくとも核兵器を6個製造できるプルトニウムをすでに保有している」と言っていました。また、オバマ大統領は昨年7月23日、大統領選挙遊説で北朝鮮は「核兵器を8個持っている」と公言していました。

 北朝鮮がプルトニウムとして保有しているのか、あるいはすでに核爆弾化させたのか、正確なことは米国にもわからないようです。また、保有数についても駐韓米軍司令官と最高司令官の見解は分かれています。しかし、プルトニウムにせよ、核爆弾にせよ、北朝鮮が新たに再処理して、プルトニウムを抽出すれば、二桁にのることだけは間違いありません。さらに北朝鮮には未使用の燃料棒が貯蔵所に1万5千本程度保管されたままにあります。破壊された冷却塔など原子炉の施設が復旧されれば、来年にはさらに10個分の量のプルトニウムが追加されることになります。

 北朝鮮外務省の「再処理開始宣言」は安保理議長声明の勧告により国連制裁委員会が北朝鮮企業3社を制裁対象に指定した直後に出されています。制裁に対する「対抗カード」として北朝鮮が予め用意していたことは明白です。前日の23日に韓国の柳明桓外相が「北朝鮮が再処理すれば、非核化への公約を全面的に違反することになる。国連安保理決議1718号をより厳格に執行しなければならなくなる」と北朝鮮に警告していましたが、北朝鮮は全く意に介していませんでした。

 北朝鮮の相次ぐ強硬姿勢には韓国のみならず、友好国の中国もロシアも完全にお手上げのようです。北朝鮮の説得に失敗したロシアのラブロフ外相は「北朝鮮はまるで孤立した要塞のようだ」と、北朝鮮の印象を語っていましたが、中国やロシアが北朝鮮の傍若無人な態度にあっけに取られるのも無理ありません。

 今回は、3年前とは違い、中国とロシアの両国は日米主導による決議を阻止しました。拘束力のない議長声明に格下げさせました。国連制裁委員会による資産凍結指定企業も日米が提出していた11~14企業から大幅にカットし、日米両国がすでに制裁を実施している「朝鮮鉱業開発貿易会社」(弾道ミサイル関連装置輸出)、「朝鮮嶺峰(リョンボン)総合会社」(武器輸出)、「端川(タンチョン)商業銀行」(弾道ミサイルや通常兵器の取引決済)の3企業だけに限定させました。日本が強く求めていた金正日総書記ら党幹部の専属病院「烽火病院」も対象リストから除外させました。

 また、制裁対象企業についても国連加盟国には制裁実施が義務付けられていますが、履行しなくても罰則はありません。制裁するかどうかは各国の自主的な判断に任されています。強制力と罰則が伴わない限り、制裁効果は期待できません。従って、北朝鮮にとっては大きな痛手とはならないと、中国もロシアも判断したから同調したわけです。

 また、核問題解決のため6か国協議を優先する立場の米国も早くから「ミサイルと核問題は別問題」として6か国協議とは別個に北朝鮮との対話にも応じる意向を表明していました。クリントン米国務長官自身はミサイル問題についても北朝鮮と交渉する用意があることを強調していました。韓国も米国と同じスタンスで、安保理議長声明を一区切りに北朝鮮との対話再開に乗り出す意向を表明していました。しかし、どの国も6か国協議のボイコット宣言ぐらいは想定していたとしても、北朝鮮がIAEAの職員追放から再処理再開へと矢継ぎ早に事態をエスカレートさせるとは予期していなかったようです。

 中国に続きロシアまでもが「衛星打ち上げをもっとも多く行った国が常任理事国として居座っている国連安保理が、国際法の手続きを経て正々堂々と行ったわれわれの平和的衛星打ち上げを上程、論議したこと自体、わが人民に対する耐えがたい冒とくであり、永遠に許しがたい犯罪行為である」(外務省声明)と怒り心頭の北朝鮮を宥めることに手を焼いている以上、米国が直接乗り出すほかはありません。6か国の関係国とも米国の対応を注目しています。

 その米国ですが、北朝鮮の再処理着手の報道にクリントン米国務長官は「北朝鮮の脅しにはのらない」と、断固たる対応を取ると言っています。北朝鮮の暴走を阻止するため、中国、ロシア、日本、韓国やその他の同盟国と連携して、制裁をさらに強化する意向を明らかにしています。

 但し、中国とロシアが制裁の強化に反対している以上、制裁は日米中心となります。問題は米国が日本と同様に単独の制裁に踏み切るか、あるいは逆に米朝対話に乗り出すのか、これが、今後の焦点となりそうです。一昨年までマカオの銀行に対して行なっていた北朝鮮金融制裁や一旦解除したテロ支援国指定を復活させるかどうかで米国の「真剣度」を測り知ることができます。

 仮にオバマ政権が再処理開始報道に反発し、制裁、圧力を強化すれば、「強硬には超強硬で」対処すると言っている以上、北朝鮮の次のカードは、おそらく核実験でしょう。それも当初の予定を1ヶ月早め、朝鮮戦争勃発日の6月25日に向けて再度強行すかもしれません。

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コメント (5)

相当、先を焦っているようですね。裏でメッセージ出しているのだろうか?その様な事やると、最低でも二年は物事が動かなくなるよ。嫌だったら、そのような事でなく、裏で交渉に乗ったほうがベターだよと、中国を巻き込んで何かできる事があるような気がする。北朝鮮側はこちら以上に考え過ぎているような気がしてならない?まあ、それ以上に、こちら側の交渉体制に問題があるのだが…。
 それより女性記者拉致はどうなったのだろう?この問題の方が危ないような気がする。相手側に交渉する玉がないからなんだろうけれど?テポドンや核実験より気になるのだが…。

中国もロシアも完全にお手上げなのですか。困りましたね。
中国とロシアが制裁の強化に反対している以上、制裁については、日米中心。あるいは逆に、対話路線では米朝ということなのですね。北朝鮮は日本に対し、かなり怒り心頭なようですね。日本は厳しい立場にいるようで、お手上げ状態。アメリカを頼りにするほかないのではと思ってしまいます。

辺真一さんにお伺い致します。北朝鮮は核兵器を保有していると思いますか?私は保有しているのだと思います。だとしたら絶対に核の放棄などはしない。国の大小に限らず、民主国家だろうが独裁国家だろうが、その意味において核保有国は対等の立場を有しているのだから。中国にしてもロシアにしても、それぞれの利害関係の上に立っての北朝鮮になる。拉致問題を抱えている日本との交渉は、それをカードとする援助金の獲得しかない。日本の外交そのものが北朝鮮に限らず「お金を出すから」交渉だから、お金以外相手にされないのではないか。全く情けない話である。軍事的バックの無い交渉の現実かもしれないが、頼りにしている米国が、日米安保条約があるからといって軍事的バックにはならないと思う。極論で単純な意見ですが、北朝鮮に、「いくら援助すれば拉致した日本人を返してくれるのか。返してくれるんだったらいっぱい援助するお金を出しますよ」と言うしかないのではないでしょうか。経済的制裁をしたって、中国とロシアが援助しているのだからそれも交渉の武器にはなり得ない。あとは軍事的に対峙するしかないのだから。日本政府が国民を守る、拉致された国民の命を助けるという、当たり前のことが出来ない政府の悲しさをそこに見るのですが。平和的解決のためには、やはりお金なんでしょうね。国民の借金を増やし無駄なお金を使いまくっている官僚の皆さん、政治家の皆さん、北朝鮮に潜入し拉致被害者を救出してきて下さい。国を守るためと言っての防衛予算は、国民を守るための物では無いのだと言う事は良く解っているつもりですが。

米国の突出した軍事力を脅威と感じる日本人は少ないと思う。
米国が日本を攻撃する意図(メリット)を感じないからだ。
米国は「年次改革要望書」のような洗練された形で影響力を行使する方がコスト・パフォーマンスが高いことを知っている。
そこには、<民主化>された国を軍事的に脅迫するような行為は世界の首脳国としてあるまじき態度だ、というコンセンサスもある。
軍事力と脅威度は単純には比例しない。

では、北朝鮮から見た米国はどういう国だろう。
イラク戦争を振り返ってみる。
イラクはテロ支援国として名指しされ、大量破壊兵器の査察に応じない場合は先制攻撃を行う、と通告された。
査察団は「もっと時間が欲しい」と要望したが、ブッシュは聞き入れず、フセインは48時間以内の国外退去を命じられた。
そして、予告どおりの先制攻撃。
しかし、米国は大量破壊兵器が存在する可能性は低い(あったとしても化学兵器)ことを知っていたからこそ、先制攻撃できたのではないか。
結局、大量破壊兵器は見付からず、開戦理由は途中から「独裁者からのイラク国民の解放」すなわち<民主化>へと変わった。
北朝鮮から見た米国は、間違いなく脅威だ。

北朝鮮が多数の在日同胞が住む日本にミサイルを打ち込むとしたら、そのことで何を得て、何を失うのか。
実は、北朝鮮が核で脅しているのは日本ではなく、米国ですらない。
(米国を核攻撃しようとする構えを見せただけで、北朝鮮は地上から消える)
北朝鮮はNPTという不拡散の枠組みを脅して米国を交渉のテーブルに着かせ、核保有国としての地位を手に入れようとしている。
これには各国と歩調を合わせ対処しなければならないが、いたずらに脅威を煽り、先制攻撃を唱える人が(自民党だけでなく、民主党にも)いるのは残念だ。

テポドンの大騒ぎは日本国民に取って意味はなく長い目で見ればマイナスでしょう。内政問題に利用した政治家にとっては大いに意味があったのでしょうが。

北も日本をつつけば直ぐに過剰反応することを見越しているのではないでしょうか。

核施設の廃棄についてもこの辺りで反古にしてリセットしたい思いが強かったのではと推測しますね。長距離ミサイルの実験に託けて過剰反応をすればそれを口実に廃棄のプログラムを破り捨てて六ヶ国協議をシャットアウトする。
そして、新たな条件を引き出して交渉のテーブルにつく。
当面、この繰り返しで、その間にプルトニュウム備蓄は進んで行くのではないでしょうか。

日本は余りにも拉致に拘りすぎたような気がしますね。
六ヶ国協議の目的はあくまで核施設の廃棄でありそれが最優先のはずでしたが、日本は拉致を最優先として足並みが揃わず時間だけが過ぎ去り、みすみす核の保有を許してしまったと言えるのでは。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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