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北朝鮮に報復能力はあるのか?

 北朝鮮が打ち上げた「人工衛星」を日本が長距離弾道ミサイルと称して迎撃した場合果たして北朝鮮は報復するのでしょうか?

 朝鮮中央通信は昨日の論評で、北朝鮮が「人工衛星」と称して発射の準備を進めている長距離弾道ミサイルを日本が迎撃した場合、戦争行為とみなし、「最も強力な軍事的手段によってすべての迎撃手段とその牙城を無慈悲に粉砕する」と反発していました。3月9日にも陸海空を束ねる朝鮮人民軍総参謀部が同様の内容の声明を発表していました。

 人民軍総参謀部は声明の中では「平和的衛星に対する迎撃行為に対しては最も威力のある軍事手段により即時に対応打撃で応える」「我が革命武力は躊躇なく投入されたすべての迎撃手段だけでなく、迎撃陰謀を企てた日米侵略者と南朝鮮(韓国)の本拠地に対して正義の報復打撃戦を開始する」と迎撃を「宣戦布告」とみなし、攻撃を加えることを宣言していました。

 北朝鮮の威嚇が単なるハッタリか、実際に行動に移すのか、予測するのは難しいです。ただ気になるのは、米韓合同軍事演習を理由に全軍に発令した「戦闘動員態勢」を演習が3月20日に終了したにもかかわらず今なお解除されていないことです。迎撃に報復すれば、北朝鮮ミサイル基地への米国による猛烈な反撃は避けられず、それに応戦すれば、局地戦争、全面戦争に発展するとの想定しているからでしょう。

 しかし、日本による迎撃は、切り離されたブースターが誤って日本の領土、領海に落下する場合に備えての、国民の生命と安全を守ることを目的とした自衛隊法82条に基づくものです。「飛翔体」の落下は、厳密に言えば、領土、領海、領空侵犯に該当するので、迎撃は国際法的にも許されます。北朝鮮も、そのことは十分に認識しているはずで、従って北朝鮮による報復は、日本が検討している落下物への迎撃を指しているものではなさそうです。

 北朝鮮が言う報復とは、「人工衛星」が宇宙空間に向かって上昇中に迎撃された場合を指します。例えば、第一段のブースターが切り離される前後にイージス艦のSM-3で「人工衛星」が撃ち落された場合は、報復の可能性は極めて高いと思われます。

 報復の最大の理由は、「報復する」と大声をあげながら、実際に行動に移せないとなると、今後二度と日本や米国、韓国に対して威嚇や恫喝外交が通用しなくなるからです。同時に米国の軍事的圧力に屈すれば「100戦練磨の将軍様」と喧伝してきた金正日総書記の威信が完全に失墜するからです。弱腰、臆病とのレッテルを貼られれば、軍をこれ以上掌握するのは困難です。へたをすると、軍から見放されます。後継者問題にも影響を及ぼしかねません。

 まして、労働新聞は数日前(3月28日付)に「我々は勝つ」との見出しの長文の「正論」を掲げたばかりです。「正論」はその中でこれまでの対米外交戦の勝利は「敵が鉄砲を抜けば、我々は大砲で」と、強硬には超強硬で対処してきた金総書記の胆力があったからだと褒めたたいたばかりです。最高司令官兼国防委員長の威信を保つためにも報復に打って出ざるを得ないでしょう。金総書記としては引くに引けないということです。

 北朝鮮は過去に何度も一触即発の危機を経験してきました。古くは、1966年の「プエブロ号事件」、71年の「EC-121撃墜事件」、76年の「板門店ポプラ事件」から94年の「第一次核危機」、06年の「第二次核危機」と世界最強の米国とチキンゲームを演じてきましたが、その都度、北朝鮮は「報復には報復で、局地戦争には局地戦争で、全面戦争には全面戦争で応える」と応酬してきました。

 「報復には報復」という意味は、「やられたら同じようにやり返す」という意味で、迎撃されたら、迎撃したところを同じ手段を使って叩くという考えです。

 万一に備えたイージス艦による迎撃は、少なくとも北朝鮮の陸地から300km離れた日本海から行なわれます。ということは、海上のイージス艦に向けスカット・ミサイル(300-500km)が使われるものと思われます。仮に、日本本土の基地から迎撃された場合は、その基地に向けてノドン・ミサイル(1000―1300km)が使われることになります。艦艇とIL28爆撃を使えば、射程距離100kmの艦対艦、空対艦短距離ミサイルでのイージス艦への攻撃も可能です。

 北朝鮮は1984年以来14回ミサイル発射実験を行ってきました。1984年5~9月にかけてスカッドBを、1990年6月と91年7月にスカッドCを、93年5月にはノドン1号、そして98年8月にはテポドン1号の発射実験を行ってきました。

 韓国に亡命した北朝鮮ミサイル将校の安善国氏によれば、1993年に能登半島に着弾したノドン・ミサイルは「目標物と着弾地点との誤差が半径で500メ-トルと、基準に合格し、1回の実験で試射に成功した」そうです。大方の予想に反して、精度が高いとのことです。

 北朝鮮は2006年7月に東海岸でテポドン2号と同時にノドン・ミサイル、スカッド・ミサイルを連続して発射しました。また、07年6月には東海岸でKN-02反距離地対地ミサイルを発射実験を行い、昨年3月にも西海岸で3発から6発の短距離ミサイル発射実験を行なっています。射程距離46kmの艦対艦ミサイルと見られていますが、誘導弾の性能及び運用能力の向上が目的だったと言われています。

 北朝鮮は2007年4月25日に行なわれた朝鮮人民軍創建75周年の軍事パレードで新型中距離弾道ミサイル(IRBM)を初めて公開しました。「先進的な技術を使った全く新しいミサイルシステムである」と言われているこの新型ミサイルは、ソ連が潜水艦発射用として開発したSSN-6モデルを改造したもので、射程距離3000-4000kmとみられています。沖縄だけでなく、グアムまで射程圏内に入ります。新型ミサイルは舞水端里基地に配備されたことから米国は「ムスタン・ミサイル」と命名しているようです。すでに、昨年に実践配備されたとの情報もあります。

 北朝鮮はすでに1000基以上の弾道ミサイルを保有しています。昨年4月、英国の世界的軍事コンサルティング業者である「ジェーンズグループが発刊する「ジェーンズ国家別安保評価報告書」によれば、スカッド・ミサイルが600-800基、ノドン・ミサイルなど中距離ミサイルが150-200基、その他50の長距離ミサイルを含め1千基余りのミサイルがすでに実践配備されています。また、最近の米議会調査局の資料によれば、2006年までに20基のテポドン2を生産しているといっています。

 どうやら北朝鮮には報復の能力はあるようですが、後は、本気で報復するかどうか、金総書記の意思にかかっているようです。

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コメント (3)

とかく感情的になりがちな北朝鮮問題で、辺真一さんは冷静に分析される論者だと普段から思っていました。機会があればこのサイトで、今後日本の取るべき外交戦略を、長期・中期・短期に分けて分かりやすく解説して頂けたらと思います。

冷静な分析、大変勉強になります。上記にコメントされていたタブローさんがおっしゃっていたように、平和的解決に向けた外交戦略を解説してくださると大変ありがたいです。
いまの政府に、熟慮を求めさせるためにも、ぜひとも、お願いいたします。

【本当に誤報なの?】
本日、NHKをはじめ各マスメディアで一斉に北朝鮮が飛翔体を発射した模様と緊急放送されました。五分後ぐらいでしょうか、ご探知によるものでその事実がないと訂正報道がなされました。しかし、午前中にも秋田県で誤報があり、他の地域でも誤報騒ぎがあったようです。本当に誤報なのでしょうか?誤探知、通報システムの誤作動等、未確認の段階で憶測が飛び交いますが、午前中の誤報騒ぎは防衛省側からの情報で各自治体が対応し、後で確認もとったところ、誤情報とのこと。どういうことなのでしょうか?【これはシュミレーションではないのか?】そのそも今回の北の打ち上げ自体は日本そのものを狙ったものではないことは事前に報道されていました。したがって日本側のシステムのシュミレーション又は、日本国内の反応、対応も当然、シュミレーションのターゲットです。どこかでデータ化されていると考えるべきでしょう。かなり以前から各自治体で北からミサイル飛翔という防災スピーカーが流れて誤作動騒ぎがあったことを忘れてはいけません。軍事がらみの情報は、誤射といった場合もそれを鵜呑みにしてはいけないとを、イラク戦争での米軍報道から学んだ筈です。わざとに狙っておいて誤射でしてと報道する可能性だってあるのです。今回の誤報もそのまま、システム上の不備等による誤報だったと頭ごなしに信用しないように私はすることとします。【これはシュミレーションではないのか?本当にシステム上のご感知による誤報なの?】

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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