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2009年3月28日

金賢姫 政治に翻弄される人生

 「大韓航空機爆破事件って何?」「金賢姫って、誰?」

 今から22年前の1987年、クリスマスと正月を家族と共に過ごすのを楽しみに中東から帰国の途についていた115人の出稼ぎ労働者らが乗った大韓航空機858便に爆弾を仕掛け、空中爆破させた金賢姫元北朝鮮工作員が日本人拉致被害者の田口八重子さんの家族と面会したニュースが流れた時の韓国の若い世代の反応だ。「過去の出来事」として忘れ去られた事件が、日本人の拉致問題との関連で蘇ったのである。

>>続きは「THE JOURNAL×Infoseek」で

2009年3月26日

「人工衛星」を発射する朝鮮宇宙空間技術委員会とは?

 北朝鮮が公言したとおり、独自開発したロケット「銀河2号」で試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げに成功した場合、運搬ロケットの性能と、推進燃料の開発、衛星に使用される部品及び衛星管制能力などが改めて注目されることになります。人工衛星の打ち上げには、多段式(三段式)ロケットのブースター分離技術、固体(固形)燃料をエネルギーにしたロケットエンジン、数千度の高熱に耐えられる特殊金属やセラミック素材の製造技術等先端技術を要するからです。実際に人工衛星を独自開発できる技術を保有している国は世界には20数カ国しかありません。

 運搬ロケットの推進には固形燃料と液体燃料が使用されますが、前回の「光明星1号」の時は、第一、第二段には液体燃料が、そして最後の3段目には固形燃料が使われていました。液体燃料と違い、固形燃料を使用する場合は、ロケットを発射台に立てる必要がなく、移動も可能で、発射までの時間も大幅に短縮されます。そのため大陸弾道弾ミサイルなど軍事用には多くは固形燃料が使われています。今回、発射台に燃料を積んだタンクローリが見られないことから、独自に開発してきた固形燃料を使用するのではとの観測も出ています。

 また、人工衛星に使用される部品は極限の温度差や無重力状態に耐えられる精密性と強度が求められますが、現在の北朝鮮の軍事化学技術ではこうした部品の独自開発には限界があるとみられています。

 さらに、地球軌道を旋回している様々な人工衛星と軌道が重複しないよう固有の軌道を探す技術力も人工衛星開発に必要な分野ですが、北朝鮮がこうした技術を保有しているのかも疑問視されています。

 人工衛星は当然のことですが、科学者、技術者らエキスパートがいなければ、実現できるものではありません。労働新聞は1998年8月の「光明星1号」(テポドン1号)の試射の後、「金正日同志の指導で創設され、育成されてきた」と伝えていましたが、それが、まさに「4月4-8日までの間に人工衛星を打ち上げる」ことを公表した「朝鮮宇宙空間技術委員会」です。

 「朝鮮宇宙空間技術委員会」の存在が公になったのは、11年前の1998年8月31日のテポドン・ミサイルの時でした。北朝鮮の対南宣伝放送機関である「韓国民族民主戦線」が3か月後の1998年11月、「朝鮮の衛星が(地球を)正常に回っている」との番組放送の中でこの委員会が、労働党と内閣の指導を受け、ミサイル、運搬ロケット、衛星などの研究開発、製作、実験などを主管していることを明らかにしました。

 また、それよりも1ヶ月前の10月25日、中国の人民日報が発行する国際週刊誌「環球時報」に「光明星1号」の発射に携わった同委員会の金鍾成(キム・ジョンソン)技術局副局長ら専門家3人らの平壌特派員によるインタビューが掲載されたことがありました。ところが、同盟国である中国の記者であっても写真撮影も録音も一切許可されませんでした。

 インタビューで金副局長は、北朝鮮が80年代初期に衛星発射に使用される3段階ロケットを開発したこと、90年代初めにはすでに衛星発射のための一切の準備作業を完了していたこと、さらに、「先端技術専門人材の育成、発射場の建設、運搬ロケット及び搭載衛星に必要な技術と設備などを完全に自力で備えた」と誇らしげに語っていました。

 このインタビューから5日後の1998年11月30日、「光明星1号」の発射に貢献した科学者160余人が賞状され、学位を授与されていますが、中でも科学院土の肩書きを持つ権東煥(クォン・ドンファン)、姜海哲(カン・ヘチョル)、金幸京(キム・ヘンギョン)博士ら3人を含め7人が「英雄称号」を授与されていました。そして、彼らのトップに立つ人物が、金総書記の科学部門の諮問役として知られる徐相国(ソ・サングッ)博士です。

 徐博士は、北朝鮮国内では「科学の天才」として知られる人物で、ソ連留学中はあまりの優秀さに驚いた指導教官が、ソ連に留まるよう説得したとのエピソードがあるほどの秀才でした。

 帰国後、徐博士は国防科学院研究士を経て、金日成総合大学物理学部講座長に就任しました。また、1966年には「金日成勲章」を受章されています。

 今回使用される運搬ロケット「光明星2号」はテポドン・ミサイルを改良したものと推定されていますので、仮に宇宙軌道への侵入に成功すれば、北朝鮮は米本土に達する長距離弾道ミサイルの開発能力を保有することになります。長距離弾道ミサイルは弾頭に小型核兵器を搭載できるので「人工衛星」の打ち上げに成功すれば、核を運搬する戦略的手段を手にすることになります。

2009年3月23日

北朝鮮のミサイルは33分で米本土に着弾

 北朝鮮が発射するミサイルもしくは人工衛星を発射した場合、一段目のブースターは発射地点の舞水端発射場から650km(秋田沖130km)、二段目は3,600km(銚子沖2,500キロ)に落下すると、北朝鮮は通告してきました。米国の保守系シンクタンクとして知られるヘリテージ財団は今年3月にワシントンで記者会見を開き、ミサイルならば米本土に到着する時間が33分とみなし、この間に迎撃に備えなくてはならないと警告しています。

 迎撃については、米太平洋司令官が「オバマ大統領の許可があれば、いつでも迎撃の準備が出来ている」と語っていました。2月26日、ハワイ真珠湾で米国のABC放送とのインタビューに応じたカーチン司令官は「もし北朝鮮がミサイルを発射すれば、米軍は駆逐艦、イージス巡洋艦、レーザー、ミサイル防御システム、地上発射迎撃ミサイルなど5つのシステムで対応する」と語っていました。

 テポドン2号が発射されれば、米国は①高度30~40kmの上昇段階ではボーイング航空機に搭載したレーザー(ABL)で打ち落とす②大気圏を突破する高度100kmの中間段階ではイージス艦隊に装着された迎撃ミサイルSM―3(射程距離3百km)で迎撃する。仮に失敗した場合は、③地上からのパトリオット(PAC3)(射程距離15km)で迎撃することになっています。パトリオットは目標物に一定距離まで近づくと弾頭に装着された近接電波送信管が作動し、目標物を破壊します。また、大気圏外から進入する長距離ミサイルには地上発射型中間段階防御ミサイル(GMD=射程距離2,500km)で打ち落とす作戦のようです。

 パトリック・オライル国防省ミサイル防御局長は先月(2月25日)下院軍事委員会の戦略軍縮委員会が主幹するミサイル防御体制(MD)聴聞会に出席し、「制限的で、初歩的であるが、北朝鮮がミサイルを発射した場合、アラスカで応戦するシナリオを基に3度迎撃実験を行ない、成功した」と証言していました。

 米国は2004、2005年と二度続けて失敗した後、2006年9月に仮想の敵ミサイルを大気圏外で迎撃することに初めて成功しました。翌年の10月にもアラスカで南太平洋に発射された標的のミサイルを打ち落とすことに成功しました。また同年11月にはイージス艦級巡洋艦から迎撃ミサイルを発射し、標的ミサイルを2基同時に打ち落としたこともあります。さらに1か月後の12月にはF-16戦闘機からの空対空ミサイルによる大陸弾道弾ミサイルの迎撃実験にも成功しています。

 オライル局長によると、米国は相当数のミサイルを保有しており、これらを同時に発射すれば、迎撃の可能性はそれだけ高くなると語っていましたが、ミサイル1基に対して5基の迎撃ミサイルを同時発射するようです。アラスカ基地には100基の戦略迎撃ミサイルが配置されてあります。

 しかし、チャールズ・マッキャリー国防省作戦実験評価局長はミサイル防御体制(MD)前出の聴聞会での書面回答の中で短距離や中距離ミサイルを対象にしたイージス艦と最終段階のTHAAD迎撃実験では目標物を探知、追跡迎撃するうえで「能力」を見せたとしながらも、テポドン2号のような大陸弾道ミサイル(ICBM)を対象とした「地上発射型中間段階防御(GMD)迎撃にはまだ時間がかかると述べていました。

 米国はレーガン政権の1980年代からMD計画を続けてきました。これまでに1千億ドルという莫大な予算をつぎ込んできました。

 一方、北朝鮮がミサイルあるいは人工衛星にどれだけの予算をつぎ込んできたかは不明ですが、韓国航空宇宙研究院によると、発射推進体(ロケット)開発だけに500億円かかります。これに衛星制作費が約13億円程度ですが、宇宙センターの建設費に300億円の費用が必要です。

 打ち落とされれば、北朝鮮が、逆に迎撃に失敗すれば、米国が大損します。

2009年3月16日

1998年のテポドンの際の日本の国会論議(コリアレポ-ト 1998年10月号)

 北朝鮮は1998年8月31日に日本列島に向けて発射したテポドン・ミサイルを「人工衛星」と主張した。そして、今回も「人工衛星」を4月4―8日の間に日本海に向けて打ち上げると公言している。これに対して、日本政府はテポドン・ミサイルとの立場を崩していないどころか、迎撃さえ検討している。

 日本政府が発射した際に実際にどのような対応をするのか、参考として1998年の時の国会(衆議院外務委員会)論議を振り返ってみる。

●北の得にはさせない
〔1998年9月2日〕

 吉川貴隆議員: 民間機が7機飛行中だったとのことだが、本当にそら恐ろしい気がした このミサイルの発射がよくもこの民間機に当たらなかったという安堵感で一杯だ。北朝鮮に対する厳重抗議というよりも、2度とミサイルを発射させないことを考えるべきだ。いつまでも切り札として北朝鮮にミサイルを使わせるのは非常にまずいのではないか。

 高村正彦外相:ミサイルを発射したことによって、北朝鮮が得をしたという結果に絶対ならないように、国際的に許されないことをした時に、その結果が自国にとって不利になるということをわからせる対応をとる。 

 島聡議員:政府は今まで無条件に日朝国交正常化交渉には応じるとしてきた。外交方針を変えるということは、転換だと思う。日朝正常化の条件に関して、公式にこのミサイルの開発とか、配備の中止を北朝鮮に伝えたことがあるのか?

 阿南外務省アジア局長:外交関係がないので、公式的にではないが、先週末に非公式の協議の場で中止するよう強く申し入れていた。

 山中華子議員:北朝鮮のあり方というのは、旧時代の思考パタ-ンといえる。力を示せば多分うまくいくだろうと。北朝鮮に対しては北風と南風を両方使うべきだ。国連あるいは国際赤十字のコメ支援には日本は参加する。しかし、二国間の場合は、まず第一に拉致問題、第二番目が日本人妻とその家族が自由に行き来できるようにする。それから三番目がコメを含めて農業機構、農業ストラクチャーの改良をすることで日本が援助する。そういうことを言ってきたが、日本政府は全部出し、国会で拉致事件が問題になると、全部ストップした。だから、これからは両手を使った外交をすべきだ。

 高村外相:両手を使った外交、そういう言葉を使うかどうは別にして何が一番効果的かを考えて、プラグマッチな外交をしていく。

 東祥三議員:(日本政府の毅然とした態度とは)ミサイルを破棄するかあるいは開発を中止するか、そうでもしない限り、KEDO(朝鮮半島エネルギ-開発機構)を推進できなくなるということではないか。

 高村外相:ミサイル開発を中止しないからといって、KEDOの枠組を全部壊して、核開発をさせてしまうという状況を選ぶわけにもいかない。片方がだめだから、片方を壊してしまえということにはならない。

 古堅実吉議員:日本共産党は、北朝鮮の弾道ミサイル発射問題について昨日、志位書記長が厳しい抗議談話を発表した。外務大臣は昨日の安保委員会で北朝鮮とは課長級協議の場で発射中止を一度でなく複数回にわたって行ったと答弁しているが、いつ、どのようなメンバ-で行ったのか?

 高村外相:課長級協議の場でそういうことを言ったのは一回だ。前にもそういう懸念を相手方に伝えたことはある。

 伊藤茂議員:私も、私の党も、強く抗議をし、打開を求める、あるいは(北朝鮮に)反省を求めるという態度では全く同じだ。我々の国民的な気持ちを毅然と伝えなければならない。ただ、日朝関係がなぜ半年の間に難しくなってしまったのか。

 高村外相:日朝関係の中で日本側の対応にも問題があったということはない。

●ミサイル基地の攻撃は憲法で可能
〔1998年9月3日〕

 浅野勝人議員:ノドンから5年間、北朝鮮のミサイルシステム技術の進歩には正直のところ、目をみはるものがあり、北朝鮮の軍事技術レベルを侮っていた思いがする。北朝鮮はミサイルの配備と輸出を止めさせたいのなら、米朝関係を正常化し、中止に伴う補償をすべきだと主張し、輸出の拡張を表明している。とても国際社会の一員としての自覚など期待できない。

 小渕首相:ミサイル発射は極めて遺憾だ。さらに北朝鮮のアジア太平洋平和委員会スポ-クスマンが自主権に属する問題であると述べたことは極めて誠意のない見識である。このような状況にあって、これまで無条件で応ずる用意があるとしてきた国交正常化交渉や食糧等の支援は当見合わせる方針だ。また、KEDOについても、米韓両国と協議の上、当面進行を見合わせる。

 前原誠司議員:今まで政府は、第三国から誘導弾などを撃ち込まれた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の意味するところではないと解釈に基づいて、誘導弾を発射した敵基地に対する攻撃は憲法上でも認められているとされている。今回のミサイル発射が日本領土内に対して行われた場合、この解釈に従えば北朝鮮の基地を攻撃することが憲法上も認められる。

 小渕総理:誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地を叩くことは法理論的には自衛の範囲に含まれる、可能であると考えている。

 東順治議員:北朝鮮のミサイルが在日米軍三沢基地に着弾していれば米軍は自衛権を行使し、即座に北朝鮮への攻撃を開始していたかもしれない。こうしたミサイル発射は、我が国の安全保障上極めて由々しき事態であり、断じて容認できない。北朝鮮がその非を認めるまで、政府は一歩も退くことなく、ミサイルの実験、開発の中止へ毅然たる態度を貫き通すべきであると強く主張する。しかし、今回決定された北朝鮮への対応を見直すには、北朝鮮がミサイル実験の中止を明言することか、開発を中止することなのか明らかではない。北朝鮮への対応を見直すにはどのような条件が必要となるのか

 小渕首相:将来の対応にあたっては、北朝鮮の動き、とりわけミサイル発射についてのしかるべき説明、その開発、輸出についての動き等が重要となると考えている。

 中村鋭一議員:今回の出来事は、日本国民の生命が独裁国家北朝鮮の金正日という独裁者の掌中に握られているという、背筋が寒くなるような事態に立ち至っていることを我々に知らしめている。恫喝に対しては毅然として圧倒的な態度でこれに対応することが、無謀な暴力集団の暴走を止めることのできる唯一の手段だ。北朝鮮に対しては今回の暴挙についてははっきりと説明を加えさせた上で謝らせること、長年にわたる日本人拉致を認めて、我が国に一人の残らず帰国させる、それを実行しない限りは一切交渉には応じないと、しっかりした姿勢を示すべきだ。

 野中官房長官:北朝鮮の諸君が、恫喝すれば何かが来ると思っていたら間違いだ。我が国がそのような国でないことを私は痛感しながら、この問題に毅然として取り組むことにする。

 古堅実吉議員:日本海あるいは三陸沖海域は、漁船が多数操業し、民間航空機もイサイル通過時には7機が飛んでいたというように往来の激しいところである。そういうところに事前通告もなしにミサイルを発射するなど、危険極まりない暴挙だ。なぜ、政府はミサイル発射の動きを察知しながら、課長級協議に終わらせたのか。外交関係がない中だからこそ、外交上とることのできる方途をすべてとることが重要だった。

 小渕首相:北朝鮮当局とは最高レベルでの接触のチャンネルが残念ながら確立されていない。従って、これまで行われてきた課長級非公式折衝の機会に申し入れた。北朝鮮当局が本件ミサイル発射につきしかるべき説明を行うことを強く求め、効果的な方法を考え、あらゆる外交努力を傾けることにする。

 辻元清美議員:北朝鮮のミサイル発射についてはいなる弁明であろうとも、公正と信義を尊ぶ国際社会に受け入れられる行動ではなく、大量破壊兵器の拡散を防ぐ立場からも容認できることではない。

●送金停止の制裁も可能
〔1998年9月10日〕

 田村憲久議員:北朝鮮のミサイルの抑止力として、海外送金を停止ではなく、制限していくことを北朝鮮に情報発進したらどうか。

 黒田大蔵省国際局長:送金停止のような経済制裁を行うためには安保理決議などによる経済制裁など国際協調のようなものが必要だ。そういう制裁をする場合に部分的なことができるかとの質問については、結論から言うと、可能だ。

●ミサイル基地攻撃は自衛の範囲
〔1998年9月18日〕

 坂上善秀議員:北朝鮮から発射されたミサイルが我が国領土内に落下し、他に取り得る手段が認められない場合、政府は実際に北朝鮮のミサイル基地を攻撃する用意があるか

 近藤防防衛庁計画課長:法律上は自衛の範囲に含まれる。但し、現在の自衛隊は敵基地攻撃を目的とした装備体系になっておらず、これに適した装備品も有していないことから現時点では自衛隊が敵基地に対して軍事的に有効な攻撃を行うことは極めて難しい。

 藤田幸久議員:人工衛星ではなく弾道ミサイルという前提で流れているので政策転換は難しいと思うが、転換のきっかけにしたらどうか。日本だけが手詰まりの感がある。

 高村外相:何度も言っているようにたまたまそのロケットの一番先に衛星が付いていてもいなくても、我が国の安全、北東の安全、大量破壊兵器の拡散問題の関連からすると、実質的に同じことだ。「災い転じて福となす」ようにすべきだとのことですが、それは日本にとっては良いことだが、北朝鮮に福となったということであれば、将来にとって決して良いことではない。◆

2009年3月 2日

人工衛星でも国連決議違反の理由

 北朝鮮がテポドン・ミサイルではなく、試験通信衛星「光明星2号」の打ち上げを示唆していることについて米国務省は2月24日、「宇宙発射体であれミサイルであれ、宇宙発射体開発や長距離ミサイルの生産に向けた一部段階は似通っている」として、衛星打ち上げであっても、国連決議に違反するとの見解を示しています。

 韓国外交通商部も2日後の2月26日、「ミサイル発射にせよ人工衛星にせよ実行すれば、北朝鮮は国連安全保障理事会決議第1718号に違反する」と北朝鮮に釘を刺しました。ミサイルと人工衛星は同じ原理で発射されるもので、技術的に区分することは困難というのが理由のようです。

 日本政府も訪中した中曽根弘文外相が3月1日、「仮に人工衛星であっても、発射すれば国連安保理決議違反だ」と発言し、米韓両国と歩調を合わせました。2006年10月に北朝鮮が核実験を行った直後に採択された国連安保理決議第1718号は「北朝鮮が弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを決定する」と明記されています。

 具体的には、北朝鮮に対して①核実験または弾道ミサイルの発射を行わない。②すべてのその他の大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を完全で検証可能かつ不可逆な方法で放棄することを要求しています。

 この他にもテポドン・ミサイルならば「双方は、ミサイル問題の解決が米朝関係の根本的な改善とアジア太平洋地域の平和と安全に重要な寄与をすることで見解を同じくした。北朝鮮側は新たな関係構築のためのもう一つの努力としてミサイル問題と関連した会談が続いている間は全ての長距離ミサイルを発射しない」ことを約束した2000年10月の米朝共同コミュニケにもまた「北朝鮮は平壌宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降もさらに延長していく意向を表明した」と記した2002年9月の日朝共同宣言にも違反することになります。

 北朝鮮が主張するようにミサイル開発と発射は自主権及び自衛権に属しますが、北朝鮮は1987年に発効したミサイル技術統制体制(MTCR)に加盟していません。

 弾道ミサイル拡散を防止するためのMTCRの国際行動指針は北朝鮮など非加盟国がミサイル開発を放棄した場合、その代価を与えることも盛り込まれています。非加盟国である北朝鮮、インド、パキスタン、イラク、リビアなど弾道ミサイル拡散憂慮国を念頭に置き、弾道ミサイル(宇宙発射体)開発プログラム放棄国家に対するインセンチブとして協力措置を講じていることが特徴となっています。

 これら憂慮国が希望する民間宇宙航空技術に対する技術協力や安全保障の提供などについては具体化されていませんでしたが、「協力を要請する国家と提供する意思と能力のある国家間の事案別協力を斡旋する」と明記されています。但し、ミサイル問題の透明性を高めるための信頼構築措置としてこの指針を受け入れる国に対して 弾道ミサイル(宇宙発射体)開発プログラムに関する情報を毎年公開すること と発射関連情報を事前通告することを規定しています。

 従って、米国は1990年に制定したMTCR履行法に基づきMTCRに加盟しない国家間で射程距離300キロメートル、弾頭重量500キログラム以上のミサイル及び部品を輸出入した場合、双方の国に対して一方的な貿易制裁措置を講じています。テロ支援国指定が昨年10月12日に解除されたにもかかわらず経済制裁がいまなの科せられている理由の一つが、北朝鮮がMTCRに加盟していないことにあります。

 それだけではありません。北朝鮮は「人工衛星」の打ち上げ国が負うべき義務を果たしていません。例えば、1967年に発効した宇宙条約にも調印していません。同条約は発射した物体が他国に損害を与えた場合、打ち上げ国が国際的責任を負うことを定めていますが、北朝鮮は条約に加盟していません。従って、北朝鮮のような未加盟国には人工衛星の打ち上げ資格はないというのが米国の主張です。

 さらに、北朝鮮は国際電気通信連合(ITU)に衛星発射の登録申請をしていません。ちなみにイランは3月2日に人口衛星を打ち上げる前にITUに事前登録していました。事前に登録しないまま、発射すれば、衛星であっても国際法違反となります。ITUは衛星などに使用される周波数分配や調整の役割を担う国連専門機構で、加盟国は衛星発射2~7年前に衛星周波数、軌道などの計画を登録することになっています。衛星間の衝突を防ぐため事前登録手続きを経て周辺国との意見の調整を得る必要があるからです。

 北朝鮮は国際民間航空機構(ICAO)にも衛星やミサイル発射計画を通報していません。北朝鮮はICAOには加盟しています。加盟国には飛行中の他国の民間機に危害が及ばないよう空の安全を保障する義務があります。まして、日本の領空を飛来すれば、領空侵犯となります。

 ところが、北朝鮮はこうした国際社会の憂慮、批判に対して完全無視を決め込んでいます。金明吉駐国連公使は「国連安保理決議第1718号を認めていないし、念頭にもない」と言っていました。北朝鮮のウエブサイド「我が民族同士」(2月28日付)は、国際社会の憂慮に対して「一考の価値」もないと報じていました。

 北朝鮮の「衛星発射」が国連の制裁決議の違反となり、新たな制裁決議が科せられるかどうかは、中国及びソ連の対応にかかっています。しかし、中国は日中外相会談の場で「地域の平和と安全を脅かす行動をとるべきではない」と暗に北朝鮮に自制を伝えたと報じられていましたが、「国連決議違反」であるとの中曽根外相の見解に対しては明確な認識を示さなかった模様です。

 北朝鮮は1月23日に訪朝した王家瑞・中国共産党中央対外連絡部長に対してもまた、2月17-19日にかけて訪朝した武大衛外務次官に対しても「心配にはおよばない」「脅威とはならない」と答えたようです。

 また、ロシアに対しても最近、北朝鮮大使がロシアの外務次官との会談で同様の発言を行ったと伝えられています。ちなみに、ロシアは2001年7月に当時プーチン大統領が訪ロした金正日総書記との間で交わした「ロ朝共同宣言」の中で「北朝鮮のミサイル計画は平和的計画を帯びており、北朝鮮の主権を尊重する国には脅威とならない」と、北朝鮮のミサイル開発を擁護していました。

 日米韓3国が人工衛星であっても「国連決議に違反する」との立場から北朝鮮に自制を求めているものの、中ロが曖昧な態度どころか人工衛星ならば黙認するとの立場を取っており、また国連も先般のイランの人工衛星に対して非難決議も制裁決議もしなかったことからどうやら北朝鮮は既定方針とおり、強行する構えのようです。

Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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