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2008年11月20日

オバマ政権の外交ブレーン、オルブライト元国務長官の「北朝鮮観」

 クリントン政権下で国務長官を務めたマデレーン・オルブライト・ジョージタウン大教授が先にワシントンで開かれた金融サミットではオバマ次期大統領の外交代理を務めていました。と同時にオルブライト氏は民主党大統領候補予備選の際にヒラリー・クリントン候補の外交顧問を担っていたほど次期国務長官が有力視されているヒラリー上院議員とも非常に緊密な関係にあります。

 そのオルブライト氏は今年1月に出版した著書「大統領当選者宛に送るメモ」の中で北朝鮮問題について触れ「ブッシュ政権は北朝鮮との対話を拒否しつづけ、北朝鮮の核実験に衝撃を受けた後、外交を再開し、ようやくクリントン前政権が成し遂げた核凍結に戻ってきた」と米朝直接交渉に消極的だったブッシュ政権の対応を批判していました。 その上で「次期大統領は、北朝鮮との交渉を断れば、米国の安全保障と北朝鮮の人権改善いずれも逃してしまうとの点を肝に銘じるべきである」と米朝対話の必要性を強調していました。

 オルブライト氏は2000年10月23日に平壌を米国の現職閣僚としては初めて訪問し、金総書記と会談。その結果として「安保と経済支援が保障されれば、金総書記が軍事的に譲歩する準備ができていることが分かった」と断言していました。また「米国には人命損失の負担を抱えてまで北朝鮮を攻撃できる力がない」とし「結局(交渉を通じ)北朝鮮を『以前よりは脅迫的でない存在』に作るのが最善」との考えを表明していました。

 金総書記個人についても「合理的かつ知的で、情報を熟知している人物である」と評価していました。さらに「金委員長は晩さん会の途中、ワインをつぐウエーターに出て行くよう注文し、酒を競争的に飲む北朝鮮の風俗から私を保護してくれた思いやりのある人」とまで持ち上げていました。

 以下は、米朝関係のキーマンと目されるオルブライト元国務長官の訪朝後に出演したABC放送とPBS(2000年10月30日)での発言です。

 ▲ABC「グッドモーニング・アメリカ」

Q:クリントン大統領に北朝鮮を訪問するよう進言するのか?

A:クリントン大統領と話し合ってみなければならない。北朝鮮で話し合ったミサイル問題と関連してどのような進展があるのか見守る必要がある。ミサイル問題は我々にとって重大な懸案だ。北朝鮮訪問は本当に重要だった。北朝鮮は米国にとって非常に脅威の存在だったので、脅威を減少させる可能性を模索するのは非常に重要なことだ。

Q:ワシントン・ポストが社説で(貴方の訪朝を)痛烈に批判していた。北朝鮮が民間機を爆破し、115人の命を奪い、15万人の政治犯を収容するなどテロに関連していること、国民の一挙手一投足を統制していることは知っている筈だ。この点について(北朝鮮に)指摘したのか?

A:私は色眼鏡でものを見ないことにしている。北朝鮮が独裁政権であることは認識している。しかし、北朝鮮によるミサイル開発による米国への脅威を削減できれば、それは非常に価値のあることだ。10万人が動員された公演(マスゲーム)には本当に驚いた。政府が国民を徹底的に統制していることを見せ付けているからだ。

Q:金正日は依然としてテロリストか?

A:北朝鮮がテロリストの名簿から外れるために何をすべきかを、彼はよく知っている。私が見た限りでは、彼と会ったことがない人が言うような特殊な人間ではない。討論してみると、非常にロジカルで、現実主義者であった。しかし、彼が意図するものが何かを試す必要がある。

 ▲PBS「レラー・ニュースアワー」

Q:金正日はミサイルについて何を言っていたのか?

A:米国が北朝鮮に代わって平和利用のための衛星を発射できるかというアイデアを、プーチン大統領を通じて提案してきた。金正日は基本的にそれを条件に何かを交換することを考えているようだ。私が思うには、彼は幾つか重要なことを準備しているようだ。確認する必要がある。

Q:金正日とは12時間も一緒に過ごしていたが、彼は今後、何をしようとしているのか?

A:彼に関する情報はこれまで散発的であった。金正日と会った金大中大統領の話では、彼は合理的で実用的な人物だと言っていた。私も同じようなことを感じた。彼については怪しげな話が多かったが、今回は非常に重要な討議を行なった。

Q:金正日は対話の相手にはならない、非常識な人間だと言われていたが?

A:答えにくい質問だ。いずれにしても彼は非常に慎重に語っていた。私に講義(レクチャー)するようなことはしなかった。私は言うべきことを言ったが、彼は合理的に考えていた。実用的な人物だった。

Q:金正日は本当に米国との関係を良くしようと思っているのか?

A:そのように思えた。

Q:なぜ米国との関係を良くしようとしているのか、聞いてみたのか?

A:基本的に米国を重要な国とみている。しかし、我々としては韓国と歩調を合わせることが重要だ。金大中大統領とも日本とも歩調を合わせることだ。それぞれの利益を念頭に置きながら、非常に慎重に話すべきだ。

Q:韓国についても何か話していたか?

A:私が感じたところ、明らかに韓国を競争相手とみなしているようだ。金正日は敵対的人間ではない。米国に対しても敵愾心を持っていなかった。彼は、米国を東アジアから切り離すことのできない国とみなしていた。

Q:金正日がミサイルを開発している間、200万人が餓死したと推定されている。このことについても話し合ったのか?

A:北朝鮮の経済についても話し合った。今、何か措置が必要であると思っているようだ。彼は、干ばつのため国民が苦しんでいると言っていた。私が見るところ、それが自分の責任だとは思っていないようだ。しかし、経済が動かないということは十分に認識していた。世界食糧計画(WFP)の支援を要請していた。

2008年11月 8日

オバマ当選で米朝はどうなる

 オバマ候補が次期大統領に当選したことで核問題と米朝関係は新たな局面を迎えそうです。米民主党の大統領選挙公約には北朝鮮の非核化、南北関係改善支持、そして北朝鮮人権などが「米国の新たな約束」として盛り込まれています。中でも最優先課題は、核問題です。オバマ次期大統領自身も選挙期間中に核問題を重視する発言を繰り返してきました。

 北朝鮮のシリアへの核拡散疑惑が浮上した際には「北朝鮮と直接対話しないブッシュ政権下で進行した出来事」(4月25日)とブッシュ大統領の失態と批判しました。北朝鮮が核施設の無能力化作業を始めた時は「我々が対話しない間、北朝鮮は核を8個持ってしまった。対話を開始すると、核兵器システム解体の可能性に到達した」(7月23日)と対話の重要性を強調していました。そして先のテロ支援国指定の解除についても「核兵器計画放棄に向けたステップである」(10月13日)と評価していました。

 オバマ氏は昨年7月、「大統領になれば、最初の年にイラン、シリア、キューバ、ベネズエラらの指導者と会う用意があるか」との質問に「会う用意がある」と語っていました。大統領に当選すれば、「首脳間の対話にも積極的に、かつ無条件応じる」と、核問題の早期解決のために金正日総書記と会談する用意があることを何度も鮮明にしています。

 オバマ氏の判断は「2000年に平壌を訪問し、金正日と会談した結果、北朝鮮の安保と経済支援が保障されれば、金正日が軍事的に譲歩する準備ができていることがわかった」とのクリントン政権の外交政策推進者だったオルブライト元国務長官の進言に基づいています。このようにオバマ次期大統領は対話重視の穏健路線を取っていますが、それでも今年2月、上院外交委員会の場で「北朝鮮に幻想は抱いていない。我々は朝鮮半島の非核化を守るため断固でなければならないし、そのためには譲歩してはならない」とも語っています。

 「オバマ外交」の政策を立案し、推進するのは副大統領となるジョセフ・バイデン上院議員です。ブッシュ大統領の右腕であるチェイニー副大統領が圧力政策を主導してきたとすれば、バイデン次期副大統領もオバマ氏同様に対話重視派です。

 例えば、北朝鮮が一昨年、ミサイル発射(7月)と核実験(10月)を強行し、危機が高まった際には「圧迫を強化するだけでは不十分だ」として北朝鮮担当調整官を復活させ、米朝対話の道を模索すべきだと主張し、国防権限法案(国防予算案)修正案を通過させ、北朝鮮特使の任命を法制化させました。また、ブッシュ政権が北朝鮮に圧力政策をとっていた最中の2004年にはホワイトハウスを説得し、ニューヨークの国連本部から25マイル離れた場所への移動が禁じられていた北朝鮮の韓成烈公使のワシントン訪問を実現させました。2001年には金総書記のロシア訪問で流れたものの自ら平壌を訪問し、金総書記と会談する計画を立てていました。

 現在は、バイデン氏の補佐官のフランク・ジャヌーチ氏が民主党と北朝鮮のパイプ役を担ってきました。オバマ氏の東北アジア政策顧問のドナルド・グレッグ元駐韓米大使と並んで北朝鮮と太いパイプのあるジャヌーチ補佐官は2004年に核施設がある寧辺を視察し、6か国協議代表の金桂寛次官とも会談しています。今年3月にもカール・レービン軍事委員長補佐官と共に訪朝し、米朝安全保障問題、朝鮮戦争時に失踪した米軍兵士の遺骨発掘作業の再開、在米韓国人離散家族の再会問題などについて協議しています。

 オバマ陣営で朝鮮半島政策チームリーダーとなっているジャヌーチ氏は先月2日、「オバマは北朝鮮との関係改善のため高位級会談を含むあらゆる外交代案を考慮している」と語っていました。そして、ジャヌーチ氏と親しい関係にある米ジョージア大のパク・ハンシク教授が10月28日から11月1日まで訪朝し、北朝鮮側と協議してきました。ジャヌーチ氏は、パク教授が2003年11月に主催した米朝フォーラムに参加してから接触を続けており、パク教授が今回訪朝する前にも接触していました。

 パク教授は帰国後の会見で「オバマ陣営の外交政策、特に対北政策については正確に北朝鮮側に伝達してある」と語っています。その上で「北朝鮮はオバマ政権が発足すれば、米国との関係改善を望んでいた。オバマ政権が発足すれば、半年から1年の間に朝鮮半島に大きな転機が訪れる」と予言しています。

Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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