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6か国協議延期の原因 »

米国が日本の訴えを「却下」する理由

 北朝鮮に対するテロ支援国指定の解除を取りやめるよう米国に働きかけてきた日本の外交努力はどうやら無に終わったようです。福田総理よりも先に訪米し、指定解除反対のロビー活動を展開していた拉致被害者家族会などは、首脳会談の場で福田総理が自らブッシュ大統領に直訴しなかったことをその原因の一つに挙げていましたが、強く要求したとしても結果は同じかもしれません。

 総理が誰であったとしても、ブッシュ大統領を再考させることはできなかったと思われます。現に、前任者の安倍さんでさえもブッシュ大統領を翻意させることができませんでした。町村官房長官が外相時の5月に訪米した際、「米国が北朝鮮をテロ支援国家の指定から解除するようなことがあれば、日本の人々は米国に見捨てられたと感じるだろう」と訴え、加藤駐米大使が「解除すれば、日米関係を損なうことになるだろう」と牽制してみても、どうにもなりませんでした。

 米国が耳を貸さないのは、一つは、グローバルな核問題に対して拉致は日朝間の地域問題であるとみなしていることです。実際には拉致は日朝間の二国間だけの問題ではありません。というのも、北朝鮮による拉致被害国は、日本以外にも韓国、タイ、ルーマニアを含め世界12か国(523人)に上ります。

 しかし、日本以外はどこもテロ支援国解除には反対していません。北朝鮮と国交を断絶した国は一カ国もありませんし、日本のように経済制裁を科している国もありません。タイにいたっては、前年よりも、北朝鮮との貿易を1億ドル増やし、気がつけば、4億ドルと、経済制裁の結果2001年の4億7千万ドルから1億2千万ドルに大幅減少した日朝貿易とは好対照です。

 次に、米国の安全保障上、国益上、核問題を優先させなければならないことです。将来、米本土に届くかもしれない北の核及びテポドン・ミサイルの開発・実験をこれ以上放置させるわけにはいきません。また、北の核問題の解決方式は、次に控えるイランの核問題を解決するうえでのモデルになると捉えています。

 さらに、指摘されていることですが、ブッシュ大統領が来年の任期中までに北朝鮮の核問題を解決することで外交成果を挙げたいとの個人的な野心もあります。まさかとは思いますが、北朝鮮の核放棄と米朝平和条約の締結をもって前任者のクリントン氏のようにノーベル平和賞を夢見ているのかもしれません。

 最後に、実はこれが、米国の本音かもしれませんが、ブッシュ政権は日本が期待している拉致問題の解決(全員生存)は容易ではないと考えているのかもしれません。ブッシュ大統領が横田早紀江さんと昨年会った時、「まだ娘さんは生きていると思っていますか」と無神経な質問をしたことはあまり知られていません。また、ヒル次官補も今年3月、下院外交委員会の公聴会の場で「解決は、愛する者を失った家族にとっては幸せでないケースもあるだろうが、家族は何があったのか説明を受ける権利がある」と「死亡」を前提とするような発言をしていました。

 換言するならば、米国は拉致被害者が全員生存しているとはみなしていないのかもしれません。従って、拉致被害者の家族らが「生存者の救出のため指定を解除しないように」と言ってもおそらく聞く耳を持たないのかもしれません。日本政府がブッシュ政権に生存を100%確証しない限り、核問題を犠牲にしてまでも拉致問題の解決の日まで待ち続けることはあり得ないでしょう。

 テロ支援国の指定を年内まで解除するには、ブッシュ政権は45日前、即ち16日までに議会に通告しなければなりません。すでに年内の解除は時間切れとなりました。議会は感謝祭のため19日から2週間休会に入りますが、会期再開となる12月3日頃には封印された核施設の無能力化と核計画の申告も終わっていることから、おそらくこの時点で議会への通告が行なわれるものと予想されます。

 すでに米朝間では、テロ支援国指定解除と敵性国家通商法(経済制裁)の解除を前提とした金融交渉も始まりました。国際金融機関(IMF)や世界銀行(WB)への加入や融資のための技術的な問題について米国が北朝鮮にレクチャーすることになっています。

 さらに、米国による食糧支援も再開される見通しです。米国務省を含め米国際開発庁(USAIDの支援を受けた米国の民間団体が、10月末に北朝鮮を訪問し、北朝鮮当局と支援食糧の配給モニタリング案について話し合っています。米国は1995年から2005年まで合計200万トン(7億ドル)相当の食糧を世界食糧計画(WFP)を通じて北朝鮮に支援しましたが、直接支援するのは初めてです。

 PL480(正式名称は農業輸出開発支援法)に基づき、食糧支援を検討しているようですが、PL480は無償もしくは無利子で食料難に喘いでいる第3世界に食糧、農産物を支援する法律で、議会の承認を必要としません。PL480による支援は1、350万ドルから2、800ドルまで可能です。北朝鮮は10年前からこのPL480によるコメ支援を要請していましたが、韓国が反対していたことや、北朝鮮がテロ国家のリストから外れていないこともあって米国はこれまで難色を示していました。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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