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2007年5月29日

中国の「拉致問題」協力の深層

 中国当局が拉致問題の解決に向けて安否不明の日本人拉致被害者や特定失踪者に関する情報を独自に収集することで日本への協力を検討しているとの読売新聞(28日付)の記事をご覧になって、「中国も本腰を入れて日本にいよいよ協力する気になったか」と多くの方々は受け止めたのではないでしょうか。温家宝首相が4月に訪日した際に「必要な協力」を約束していただけにそう考えても不思議ではありません。

 肝心の協力の中身ですが、金日成総合大学に在学中の横田めぐみさんの娘、キム・ヘギョンさんを北京大学に留学させることで、横田夫妻との面会を可能にさせ、さらに、めぐみさんの「遺骨」として日本側に渡された骨を、中国の専門家が再度DNA鑑定をやるとのことです。一見、中国が日本側の立場に立って動いているかのようにみえますが、必ずしもそうとは言えません。

 第一に、キム・ヘギョンさんを中国に留学させ、横田夫妻と会わせるということは、はっきり言ってめぐみさんの死を受け入れさせることに目的があります。中国留学は、北朝鮮の同意なくして不可能だからです。「めぐみさんは死亡した」と主張する北朝鮮がヘギョンさんにその逆のことを言わすために出国させるはずはありません。
 
 ヘギョンさんは北京留学が終われば、父親のいるピョンヤンに再び戻ります。横田夫妻には親権がなく、引き取ることもできません。従って、北京で会えたとしても、夫妻が期待しているような「吉報」はほとんど期待できないということです。そのことを誰よりも熟知しているからこそ、横田夫妻はこれまで第三国でのヘギョンさんとの対面に難色を示していたのでしょう。

 第二に、「遺骨」の鑑定を中国が行なうということですが、第三国による鑑定はこれまでの北朝鮮の主張です。日本は「DNA論争に入っていくと肝心の主張がぼやけてくる。これからどこかの外国の機関に委託して、再鑑定をやる考えは今のところない」(町村外相=当時)と、相手にしていませんでした。当然です。「私どもは、世界最高の水準の知見をもって行ったこの遺骨が横田めぐみさんのものではないということを明らかにした。この点についてはもう全く疑う余地はない。北朝鮮がいろいろ言っていることは承知しているが、その点についてはもう全く議論の余地がない」(町村外相)というのが日本政府の一貫した立場だからです。

 しかし、英国の科学雑誌からクレームを付けられている以上、この際に、第三国に鑑定させて、「鑑定論争」に決着を付けたらどうでしょうか。絶対的な自信があるわけですから、日本が主張するように「偽物」という鑑定が出れば、「めぐみさんは生きている」との日本の主張を国際社会に立証できます。中国が信頼できないならば、中国以外の国や国連機関に委託するのも手です。仮に日本が拒絶すれば、日本の「鑑定」に関する疑惑を助長するだけです。

 それにしても、中国自身がこの「仲介案」を純粋に考案したならば「中立的」なものとみなすこともできますが、日本と北朝鮮の誰かが秘かに中国に「打診」したものならば、拉致問題を早く終わらせる目的のための「策」以外のなにものでもありません。誰が考え出したのか、知りたいところです。

2007年5月21日

「カンヌ映画祭」と「パッチギ!」

 カンヌ映画祭が話題となっています。SMAPの香取慎吾主演の「孫悟空」や木村拓哉主演の「ヒーロー」が、さらにダウンタウンの松本人志が監督した「大日本人」が出品されたことでワイド番組を賑わせています。驚いたことに北朝鮮からも金正日総書記が直接指導したと言われている話題作「ある女学生の日記」が出品されています。「800万人の観客が見た北朝鮮映画」がキャッチフレーズです。今のところ賞とは無縁ですが、フランスの配給会社が買い付けたようで、11月にフランスで上映されるとのことです。

 日本国内では在日の家族愛をテーマにした「パッチギ!」パートⅡが公開されました。2年前に公開されたパートⅠも絶賛されましたが、続編も早くから話題を呼んでいます。この映画を製作したのは、シネカノンで、昨年上映し、大ヒットした「フラガール」の製作会社です。「フラガール」は今年4月の日本アカデミー賞選考会で06年度最優秀作品賞を受賞しました。

 最優秀作品賞を受賞した時には、テレビの前で思わず拍手してしまいました。というのも、何を隠そうシネカノン代表の李鳳宇さんとは20年来の付き合いなのです。

 李さんは、日本映画文化の発展に功績のあった人(団体)に贈られる「淀川長治賞」も合わせて受賞しています。早速、ヴェルディ川崎の李国秀元監督や読売ジャイアンツの元エース、新浦さんら在日の仲間と共に内輪で祝賀会をやりましたが、それにしても、大手でない、独立プロが、それも新興の製作・配給会社が、日本映画の頂点に立ったわけですからたいしたものです。

 しかし、李さんの映画に賭ける情熱や、シネカノンのこれまでの歩みからして、アカデミー賞受賞は時間の問題でした。14年前に在日コリアンドライバーとフィリピン女性の恋を軸に東京で暮らす在日外国人の生き様をエネルギッシュに描いた悲喜劇「月はどっちに出ている」は映画賞を総なめにしたことはまだ記憶に新しいです。また、西田敏行主演の「ゲロッパ」も評判を得ました。「パッチギ!」も大ヒットしました。これ以外にも「のど自慢」など自社製作したものはほとんど当たりました。

 配給した外国映画も数多く、中でも韓国映画「シュリ」は空前の大ヒットとなり、日本国内で韓国ブームを引き起こしました。その後も38度線での南北警備兵の葛藤をテーマにした「JSA」やペ・ヨンジュン主演の「スキャンダル」などを手がけ、「韓流」を定着させました。李さんは「韓流」の仕掛け人というか、元祖と言っても過言ではありません。

 でも、李さんが配給した外国映画は本数からすると、韓国ものはそう多くはありません。そもそも、最初に配給したのは、ポーランド映画でした。その後はアイルランドやイギリス映画を配給しています。大学で仏文を専攻し、パリに留学したこともあってJ.ベッケル監督の「穴」や300万人の観客を動員した「マルセイユの恋」などフランス作品も配給しています。

 とにかく、映画が好きでたまらない人です。7年前に出版した拙書「強者としての在日」の中で李さんについて記述していますので、参考までに一読ください。

「強者としての在日」から http://www.krp1982.com/kyousha.html

2007年5月20日

中韓が「拉致」で日本を支持?

 北京で行なわれた日中韓外務当局による初の高級実務レベル協議で中韓両国が、拉致問題の早期解決に支持を表明した、と出席した藪中三十二外務審議官が「成果」を強調していました。また、前日まで中国に滞在し、6か国協議の中国首席代表である武大衛外務次官と会談した中山恭子首相補佐官は「中国の皆さんが拉致問題をしっかり受け止め、日本の現状に理解が深まったと感じている。今後、どんな形で(中国が日本に)協力できるか、話ができる環境ができた」と、これまた自画自賛していました。

 中韓両国は具体的にどのような支持を表明したのでしょうか。ひょっとして「早期解決を願っている」と言ったことを、支持とみなしたのか、あるいは、日本政府が早期解決の手段としている「経済制裁」に支持を表明したのか、肝心のところが全く不明です。また、中国が拉致問題をしっかり受け止めたことで、理解が深まったとのことですが、何をどうしっかり受け止め、理解が深まったというのでしょうか。またその結果、今後どういうことが期待されるのか、あまりにも抽象的でわかりません。

 仮に両国が本当に日本の立場を支持するならば、北朝鮮との貿易量を少しは減らしてもよさそうなものですが、日朝貿易は相次ぐ経済制裁措置で2001年の4億7千5百万ドルから4分の1の1億2千万ドルにまで減少したのに、中朝は7億3千7百万ドルから2.3倍の16億9千万ドルに、南北は2億6千7百万ドルから約5倍の13億4千9百万ドルに急増しています。ミサイル発射と核実験があった昨年1年だけをみても、日朝は7千万ドルの減なのに、中国は約2億、ドル、韓国は約3億ドルも増やしています。日本にとって支持どころの話ではありません。藪中さんも、中山さんもこのことについて中国側に一言物を申したのでしょうか。

 藪中さんも、中山さんも、「成果」を誇示していますが、中韓のそれは、はっきり言って、単なる外交上のリップサービスに過ぎないと思います。中韓両国にとっての早期解決とは文字通り、「早く解決しなさい」ということです。6か国協議や核問題の進展のためにも「拉致問題は未解決」と主張する日本に対しても早期解決のため努力しなさいと注文を付けたということではないでしょうか。

 中国も、韓国も、米国も拉致問題が進展しないのは、日本が拉致問題進展の定義を明確にしていないからだと不満を抱いています。それで、米中韓の3か国は定義を明確にするよう日本に要求しています。
麻生外相が16日の衆院外務委員会で拉致問題「進展」の定義について言及したのはそのことと無関係ではありません。

 麻生外相は「『北朝鮮は(拉致問題は)解決済みで問題はない』と言っている。『ない』から『ある』に変わるだけでも進展だ。拉致問題が『ある』という前提で、(拉致被害者の)調査に協力してもらわなくてはならない」と答弁していました。拉致問題の存在を認めるだけで「進展」とは随分弱気になったものです。確かこれまでは「再調査に応じるだけでは進展とはみなさない」とし、「一人でも二人でも帰す」ことなどを「条件」としていたのではないでしょうか。

 拉致問題で誠意を示さなければ追加制裁をすると言いながら、行動に移せず、加えて拉致問題の「解決」から「進展」に表現を変えるなど後退する感のある日本に比べ、北朝鮮は訪韓中の洪仙玉・強制連行被害者保障対策委員会委員長の発言にみられるように「拉致問題はすでに解決済」との強気の立場を崩していません。北朝鮮のほうがむしろ、一貫かつ「毅然」としています。拉致問題の解決が遅れて困るのは北朝鮮の筈なのに、焦っているのはどうやら日本のようです。

2007年5月11日

駐韓米大使発言と中山訪中

 アレクサンダー・バーシュボウ駐韓米大使が9日、驚くべき発言をしていました。

 ピョンヤンを訪問し、帰国した韓国の政権党、ウリ党訪朝団と会った席で「今年9月までに朝鮮戦争終結宣言を行い、来年5月までに米朝国交正常化ができるようになればよい」と、米高位当局者として初めて米朝関係修復に向けてのロードマップを示しました。

 今年9月というと、オーストラリアでAPEC(アジア太平洋首脳会議)があります。また、北朝鮮にとっては9日が建国記念日にあたります。バーシュボウ大使は、「APECを前に戦争終結宣言を行い、平和協定を結びたい」と言っています。

 平和協定と米朝国交正常化は北朝鮮の長年の夢です。バーシュボウ大使は当然、「非核化と平和体制交渉は同時に進めなければならない」と、北朝鮮が非核化措置を履行することを条件としています。

 バーシュボウ発言が、米国の本音なのか、北朝鮮に核放棄を促す「誘い水」なのか、真意はわかりませんが、ブッシュ政権が任期中に、可能ならば来年11月の大統領選挙までに北朝鮮の核問題を決着付けたいとの意欲を持っていることは十分に推察できます。

 北朝鮮が仮にこれに供応し、その結果、米朝関係がバーシュボウ大使の示すスケジュールとおりに進めば、日朝間の拉致問題はどうなるのでしょうか。

 水面下では米国と中国を軸に、朝鮮戦争終結のための4者会談に向けての折衝が行なわれていますが、そうした中、中山恭子首相補佐官が今月中旬には中国へ、また下旬には米国を訪れ、米中両国に日本の立場を説明し、連携を求めるようです。

 安倍首相と共に制裁を軸に据えた「対北強硬策」主導してきた中山補佐官からすれば、拉致問題が置き去りにされた形の「米朝手打ち」は悪夢で、何としてでも避けなければなりません。妙案も、策も、打つ手もない日本にとっては、結局、頼りは大国の米国と中国ということなのでしょうか。

2007年5月 1日

テロ支援国指定継続へ

 米国は4月30日、2006年版のテロに関する国務省報告書を発表し、北朝鮮を引き続きテロ支援国に指定しました。米国がテロ支援国リストから解除しなかった理由として、報告書は二つの理由を挙げていました。

 一つは、拉致問題で「日本政府は北朝鮮の国家機関によって拉致されたとみられる日本人12人の消息の全面的解明を求め続けている」と指摘しました。
 もう一つは、「よど号」問題で「北朝鮮が1970年に日航機よど号乗っ取り事件を起こした元赤軍派メンバー4人をかくまっている」と非難していました。

 ブッシュ政権は、北朝鮮側のテロ支援国指定解除の要求を拒否し、拉致問題が進展しない限り、外さないでもらいたいとの日本側の要求を受け入れた格好となりました。訪米し、ブッシュ大統領に働きかけたばかりの安倍総理はホットしたことでしょう。

 しかし、気になることがあります。今回の報告書では日本人拉致以外韓国人拉致も含め他の外国人拉致については全部削除してしまったことです。また、昨年の報告書に比べて、日本人拉致に関する記述も著しく短縮していました。

 昨年は、「韓国政府は朝鮮戦争以後約485人が拉致、抑留されたと推定している」と韓国人拉致問題についても触れていました。
 また、他の国の拉致被害についても「他の国の国民も海外いたるところで拉致されたとの信頼すべき報道がある」と書かれていました。それが、今回の報告書では一言も触れていませんでした。

 さらに、日本人拉致についても前回の報告書では「北朝鮮は2003年に生存拉致被害者5人と2004年には大部分の子供ら8人の拉致被害者家族の日本帰国を認めた。他の拉致被害者の安否に関する問題が日本と北朝鮮との間で進行中の協議の主題として残っている。11月には北朝鮮が北朝鮮で死亡したと発表した2人の遺骸を日本に送還した。この問題はまだ残っている」と、長めに言及されていましたが、今回は「日本政府は北朝鮮の国家機関によって拉致されたとみられる日本人12人の消息の全面的解明を求め続けている」との一言で終わっています。

 また、昨年の報告書には2005年9月に核問題で合意した6か国協議共同声明については全く言及されていませんでしたが、今回の報告書では「2007年2月13日の(核合意の)初期措置により米国は北朝鮮をテロ支援国指定から解除する作業を開始することで合意した」との文言を挿入していました。意味深長です。

 また、昨年同様に「北朝鮮は1988年の大韓航空機爆破事件以後いかなるテロ支援活動も支援していない」とわざわざ付け加えています。これらは、今後、北朝鮮の態度いかんによっては解除する用意があることを暗に示唆したものと受け止めることもできます。

 今回の米国務省の発表に、北朝鮮は敵性国交易禁止対象の解除と同様にテロ支援国解除問題をブッシュ政権の対北関係改善の意思のバロメーターとして注視してきたが、どのような反応を示すのか、核合意の初期段階措置の履行と合わせて注目されます。

Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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