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2006年5月26日

南北鉄道と竹島

 ドタキャンとはまさにこのことを指します。北朝鮮は5月24日、翌日の25日に予定されていた南北鉄道連結による列車の試験運行を一方的にキャンセルしました。これにより遮断されていた55年ぶりの歴史的な列車運行は頓挫してしまいました。それにしても理解に苦しみます。4月の南北長官級会談で合意を見て、5月13日の鉄道・道路連結に関する実務協議で合意していたものをわずか、11日で「破棄」するとは誰が予想したでしょうか。これで、大韓民国民団と朝鮮総連の「歴史的和解」も一気に吹っ飛んでしまいました。直前になって北朝鮮の軍部が同意しなかったことが真相のようですが、一般に言われるように軍部の反発が米韓が定めた海上の北方限界線(NLL)をめぐる不満からくるものでなく、また、盧武鉉政権の足元を見ての援助の上積みでもなく、純粋に安全保障上の理由からのものであれば、6月下旬に予定されている金大中前大統領の列車による訪朝も実現は難しいでしょう。軍部にとっては核問題をめぐって米国の「脅威 」「圧力」が日増しに強まっている時に軍事要塞化された38度線周辺の「武装解除」はできないということなのでしょう。困ったのは、盧武鉉政権です。5月31日が投票日の全国地方自治体選挙ではそれでなくても与党・ウリ党が苦戦を強いられているのに北朝鮮による今回のドタキャンですからもはや敗北は必至です。野党・ハンナラ党は逆に勢いづいて、北朝鮮に対する政府の「太陽政策」を激しく批判しています。北朝鮮は盧武鉉政権の維持、継承を望んでいないのでしょうか。デタント、和解にに向かったかと思ったら、一転して緊張状態、対立に逆戻りする昔の悪い癖が出たようです。

 「竹島」(韓国名:独島)の領有権をめぐって対立していた日韓両国は23日の日韓外相会談を機に交渉に向けて歩み始めました。6月12日からは東京で日韓排他的経済水域(EZZ)境界線画定をめぐる交渉も再開されます。話し合いで円満解決が付けば良いのですが、事はそう簡単に運びそうにもありません。むしろ、難航が予想されます。現に韓国では万が一のため「独島防御特殊部隊」の創設が声高に叫ばれています。海・空軍から合同機動部隊を編成し、独島警備隊の場合は海軍の駆逐艦、護衛艦、上陸艦で編成し、上陸艦には海兵機動隊が乗務します。こうした声が海軍主催の「艦船討論会」で出ているのが何とも不気味です。今号で「日韓もし戦わば」という記事を掲載しましたが、日韓の海軍力は大人と子供ぐらいの差があります。何しろ、日本は世界で第3位の「海軍力」を誇っています。世界11位の韓国では歯が立ちません。それで、海軍力の増強や「独島」の防御に一段と力を入れているわけですが、日本もこうした動きに黙ってはいないでしょう。韓国の出方次第では、再び測量船による海洋調査の再開という「実力行使」も予想されます。韓国の国防長官は日本の防衛庁長官との会談を希望しているようですが、日韓の首脳が会談できない状況にあって軍のトップ同士が膝を交えて会談することの意味は大きいと思います。韓国政府は南北鉄道問題で北朝鮮に対しても国防長官会談を呼びかけていますが、北朝鮮が応じない以上、日本との会談が先かもしれません。

2006年5月12日

金英男を知る人物

 警察庁の拉致担当部長らが現在、訪韓中です。10日にソウル入りし、12日までの間、韓国側のパートナーと協議を行います。事は極秘裏に進められていますが、横田めぐみさんの夫、金英男(キム・ヨンナム)さんに関する情報交換がメインとなりそうです。日本側は金英男さんの拉致(1978年)に関わったとされる元工作員、金光賢(キム・グァンヒョン)氏の事情聴取を希望しているようですが、金光賢氏は1980年6月に韓国の西海岸に工作船で潜入したところ、韓国の警備艇に身柄を拘束された「北の人間」であることには変わりがありませんが、本人曰く、「当時、工作船で韓国に浸透したのは間違いない。しかし、自分は工作員を安全に送迎する戦闘員で、拉致などに直接関わる工作員ではなかった。従って、工作員が何をやったのか知らされてないし、従って、金英男さんの顔も知らない」と、拉致の事実を否認しております。日本では工作員と戦闘員を混同しています。金光賢氏の言うように双方の任務は明らかに異なります。1997年に韓国の東海岸、江凌に北朝鮮の潜水艦が浸透し、韓国軍に掃討された事件がありましたが、唯一生け捕りされた乗組員もやはり戦闘員で、工作員ではありませんでした。当時筆者へのインタビューでこの乗組員は「潜水艦には3人の工作員を送迎するため戦闘員のほか、船長や機関長ら乗務員が20人近くが乗船していた」と語っていました。もちろん、工作員のほうが戦闘員よりも格上です。ちなみに、拉致問題で日本のマスコミに登場している安明進氏も正確に言えば、工作員ではなく、戦闘員です。それを日本では勘違いされています。

 従って、金英男さんについては、金光賢氏よりも、むしろ、北朝鮮で金英男さんから直接「韓国人教育・指導」を受けた元工作員、崔正男(チェ・ジョンナム、44歳)氏を探し出して、事情聴取をすべきです。崔氏は金英男さんと同じ年で、1986年に高校卒業後に工作員に抜擢されています。1990年11月に結婚した妻(カン・ヨンジョ)とともに韓国浸透指令を受け、97年7月に韓国に潜入、スパイ活動をしていたところ、11月に摘発され、妻は供述を拒み、服毒自殺しました。夫の崔氏が韓国当局の事情聴取で金英男さんから直接「韓国人化教育」を受けたと自白したことから金英男さんが北朝鮮に拉致されていた事実がわかったわけです。崔氏は刑期を終え、現在は自由の身にあります。北朝鮮は金英男さんの妻、横田めぐみさんは1994年4月に「自殺した」と発表しているわけですが、仮に崔氏が1997年までに金英男さんから指導を受けていたならば、金英男さんについて相当のことを知っているはずです。

Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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