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2011年6月 3日

「必策」に成功した菅総理、失敗した李大統領

 政局は筋書きのないドラマだけに、映画やテレビドラマを見るよりもはるかに面白い。

 野党が提出した不信任案が通り、菅総理が引きずり下ろされると思いきや、菅総理の「秘策」により、不信任案は否決され、総理の座に踏み留まってしまった。その「秘策」とは、辞任について不信任賛成派と反対派にどちらにも都合よく解釈できるような確認事項を鳩山前総理との間で交わし、また代議士会でそのようなニュアンスの言質を行なったことだ。

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2010年11月24日

まさか、島を攻撃するとは!

 なんともめちゃくちゃに忙しかった。夕方からテレビ局を梯子し、移動車の中で新聞や週刊誌等にコメント。帰宅したのは午前0時を回った。海上での南北砲撃戦のためだ。

 韓国哨戒艦が沈没した黄海(西海)上で韓国軍単独による朝鮮戦争以来最大規模の軍事演習を今年8月に韓国軍が「我が領海内で行なわれる防御訓練である」として実施した際、北朝鮮人民軍は「単純な訓練ではなく、われわれに対する露骨な軍事的侵攻行為である」とみなし、韓国が「不法、無法のNLL(北方限界線)」をあくまで固守しようとするなら「強力な物理的対応打撃で鎮圧する」と警告を発していた。が、現実には北朝鮮は手を出さず、傍観した。

 しかし、そのうち必ず行動に移すだろうとは予想していたものの韓国艦船への攻撃はあってもまさか延坪島(ヨンピョンド)を砲撃をするとは思ってもみなかった。北朝鮮最高司令部は韓国側が先に発砲し、砲撃したと説明しているが、それが事実であっても、だからと言っていきなり民間人が暮らす島を直接狙うとは信じられないことだ。無謀極まりない。

 韓国の哨戒艦事件に続き、またもや一方的にやられた韓国側の怒りは半端ではないだろう。まして、一般人が犠牲になったことは憤りを通り越し、北朝鮮に懲罰を求める雰囲気が高まるかもしれない。軍人にいたっては、再び報復を叫ぶ者も出てくることだろう。軍の士気にかかわるからだ。

 韓国国防部は3月の哨戒艦沈没事件後「やるならやってみろ。一発撃ったら、10発、100発でお返しする」と「報復」を誓っていた。北朝鮮がちょっとでも手を出せば、哨戒艦沈没の敵を打つ気構えでいた。

 李明博大統領は事態をエスカレートさせず、冷静に対応するよう訓令しているが、その一方で、今度挑発があったら容認せず断固対処し、砲撃基地をミサイルで叩いても良いと軍を鼓舞したそうだ。

 韓国がミサイルを使用すれば、北朝鮮もミサイルで応戦することは間違いない。大砲の打ち合いからミサイルの応酬ということになれば、局地戦争では済まなくなる。

 今回の南北交戦がこれで終息するのか、それとも拡大するかは、今日、韓国軍が計画通り軍事演習を再開するかどうかにかかっている。仮に中止ということになれば、北朝鮮の軍事的威嚇に屈したとの誤ったメッセージを与えかねないだけにイージス艦や駆逐艦を動員しても今日含めて予定とおり30日まで軍事演習を継続するのではないだろうか。

 そうなると、問題は北朝鮮の対応だ。「領土侵犯は容認せず、無慈悲な報復」を加えると言っている手前、韓国軍が北朝鮮が自らの領海と主張している現場で軍事演習を継続した場合、再び、砲撃することも考えられなくもない。南北双方にとって、これは言わば度胸ためしのようなものだ。ロシアンルーレットか、チキンレースか、とにかく、先に譲歩したほうが負けと考えているならば、再び衝突することは十分に考えられる。

 仮に、今回はこれ以上、衝突が起きなかったとしても、韓国軍がこれまで自制していた拡声器による対北非難宣伝放送を再開することになれば、北朝鮮は即座に軍事的対応をすると公言しているだけに海上から今度は陸上で交戦が発生する可能性も十分に考えられる。

 仮に、お互いがミサイルによる報復合戦となった場合、どうなるのだろうか。万一の場合に備えて、シミュレーションをしてみた。

 まず、北朝鮮側の戦法だが、韓国軍がミサイルを使用した場合は、西海岸沿いに配備してあるシルク地対艦ミサイル(10基以上)とSA5地対空ミサイル(数十基)で攻撃するだろう。シルクワームの射程距離は90km。SA5ミサイルは、射程距離250km。韓国の空軍力に致命的な打撃を与えることができる。

 
 北の西海艦隊所属の6戦隊が保有する艦艇は420余隻。SO1級警備艇は18隻。潜水艦は40隻。西海岸の3つの空軍基地には150余機の戦闘機が配備。離陸後5分でNLLに到着するとみられる。

 これに対して韓国側はどうか。

 北朝鮮のミサイル発射と同時にF-16(2個編隊)を出撃させ、ミサイル基地を爆撃する。続いて、韓国が実効支配している延坪島などに配置されてある射程距離130kmのハープーン・ミサイルで北朝鮮の海岸砲と地上砲基地を攻撃する。さらにNLL以南20kmに待機している駆逐艦に搭載されているハープーン・ミサイルで叩くことになるだろう。至近距離では哨戒艦の76mm砲で遠距離では65kmのミサイルで応戦する作戦だ。

 韓国は西海岸に2艦隊所属の戦闘艦160余隻を保有。潜水艦10余隻。射程距離130kmハ−プンミサイルを保有している。艦船の数では韓国が劣っているが、500トン以上の大型艦艇など性能で上回っている。

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2010年11月 4日

尖閣諸島、北方領土をめぐる日本の外交を考える

 文化の日の前日の2日、埼玉大宮で某銀行系のシンクタンク主催の講演会に呼ばれ、「日本を取り巻く国際情勢」をテーマに1時間半、語ってきた。

 副題は「日本と朝鮮半島の将来」であったが、中国漁船衝突事件や尖閣諸島、北方領土をめぐる日本の対中、対ロ外交の問題点やあり方について第三者の立場から私見を述べた。日本と韓国、北朝鮮との関係についても日本の国益上、将来どうあるべきか、多くの時間を割いた。

 日本の外交に求められているのは、何よりも中長期的な展望に立って地政学的、戦略的な見地から国益に則った実利外交を追及する必要性があるのではないかというのが話の骨格である。

 中国に続き、新たな火種を抱えたロシアとの関係ではメドベージェフ大統領の国後島訪問への対抗措置としてロシア駐在大使の一時帰国に続き、サハリン沖の原油・天然ガス資源開発「サハリン2」に対する融資の停止なども検討しているようだ。それも日本が取ることのできる一つの対抗手段なのだろう。

 しかし、対ロ経済制裁は、鬱憤晴らしや抗議の意思表示にはなるが、根本的な問題解決にはならない。日本一カ国では限界があるし、成果もほとんど期待できない。経済制裁したからといって、領土が帰ってくるという話でもない。拉致問題で北朝鮮に経済制裁を加えて8年も経つのに、今もって進展がないことをみれば錯覚であることがわかるというもの。経済制裁で領土が奪還できるならば、韓国に実効支配されている竹島問題でなぜやらなかったのか。やっても無駄であることがわかっていたからではないか。

 日本はロシアへの経済的影響力を過信しているようだが、日ロ貿易は08年現在298億ドル程度で、300億ドルにも満たない。ロシアの対外貿易からすれば、20分の1程度だ。経済パートナーとしての順位もドイツ、オランダ、イタリア、中国、ウクライナ、ベラルーシュ、トルコなどの国々に比べてもはるかに比重が低い。

 仮に、日本がロシアから撤退すれば、待っていたとばかり、日本のライバルである韓国、中国が乗り込んでくるのは目に見ている。日本が手を引くと、中国が入っているという図式は、イランの油田からの撤退で苦い教訓を得ているはずだ。

 例えば、イラン南西部の大型油田「南アサガデン油田」に対して日本は2004年当時は国際石油開発帝石が75%の権益を取得していた。しかし、イランの核疑惑が浮上してからは米国の圧力もあって06年には10%まで引き下げざるを得なかった。その隙間を狙って、食指を伸ばしたのが中国で09年1月に中国の国有石油大手、中国石油天然ガス集団がイラン開発コストの90%を負担する見返りとしてあっという間に70%の権益を手に入れてしまった。

 イランは世界の原油輸出量の5.7%を占める石油産出大国だけでなく、世界第二位の天然ガス埋蔵国である。中国はここでも昨年6月にサウスバースのガス田の権益取得に成功している

 日本がロシアから手を引けば、韓国も参入に手を上げるだろう。

 ロシアとの貿易は日本よりも100億ドル程度少ない181億ドル相当だが、国交を正常化した1992年の2億ドルからこの18年で90倍の伸長だ。投資の面では日本の317億円相当(08年現在)に比べて韓国の対ロ貿易は320億円と逆転している。

 韓国はロシアとの間で極東シベリア開発協力で合意し、サハリンや西カムチャカ油田とガス田開発に韓国ガス公社と石油公社が参入することになっている。

 またロシアのウラン鉱山開発や2014年のソチ冬季五輪建設事業にも参入する。さらにはウラジオストークと北朝鮮の羅先港を結ぶ450kmの輸送近代化事業にも積極的に関与している。将来、釜山港発のコンテナ船が羅先からロシアのハッサンを通ってシベリア鉄道に連結、欧州までの陸路を開く中長期的な構想に基づく。

 中国や韓国あるいは、欧州などが経済制裁に同調しない限り、拉致問題をめぐる対北朝鮮経済制裁同様に効果が薄いどころか、貿易立国から成り立つ資源のない日本に将来はブーメランとしてマイナス影響を及ぼす恐れもある。

 仮に経済制裁をするにしても、日本との経済断絶がロシア経済を直撃するぐらい大問題とならない限り、横柄なロシアは北方領土を返そうとはしないだろう。あれもこれも中度半端でとても無理だと思う。

 尖閣諸島の問題もそうだが、国際社会に訴えたらどうだろうとの声も政治家や識者から聞かれるが、どの国も、係争中の領土問題では一方の肩を持たないのが外交常識。首を突っ込んで、得することが何一つないからだ。ロシアからのガス供給に頼っているEU諸国の中にロシアとの関係悪化を覚悟し、遠く離れた日本を本気で支持する国が1カ国でもあるのだろうか?

 日本は米国が尖閣諸島では安保条約5条(防衛義務)適応すると言ってくれたと安堵しているようだが、米国が他国の領土問題で日本と一緒になって合戦してくれるとは俄に信じがたい。普天間の基地問題絡みのリップサービスに過ぎないことは明らかだ。

 現に、北方領土問題では日本の領土であることを認めながら、施政下(実行支配下)にないとの理由で第5条の適応から外している。仮に北方領土問題で日本とロシアが軍事衝突したとしても、助けないということだ。当然だ。米国がロシアと一戦交えるということは、キューバ危機のような事態を覚悟しなければならないからだ。他国のため米国はそこまでやってくれるだろうか?

 こんな時だからこそ、日米関係の強化が必要だと説くマスメディアは結果を恐れず一度、米国民を対象にアンケート調査をしてみたらどうだろうか?「尖閣諸島問題で日中が軍事衝突した場合、米国は日本のため中国と戦う用意があるか」と。おそらく「ノー」が圧倒的だろう。イラクやアフガンでもコリゴリなのに無人島のため、米国にとって大きな利害関係を持つ中国と一戦を交える選択肢は米国にはおそらくないだろう。

 また、いくら米軍の自動介入を担保する日米安保条約があったとしても、ベトナム戦争の時代とは違い、今の時代は、国連が「侵略」と認定、決議を採決しない限り、米国が勝手に単独では行動が取れない。

 湾岸戦争はイラクがクウェートに侵攻し、それを非難した国連決議あったからこと米国が軍事介入ができた。それでも国連軍ではなく、米国を中心とした多国籍軍であった。

 日本本土ではなく、係争中の、それも人の住んでない島を中国軍が上陸し、実効支配したことによりフォークランド紛争のような事態となった場合、中国とロシアが常任安保理事国となっている国連が果たして日本を支持する決議を採択できるだろうか? また、国連加盟国は中国との対立を覚悟して、日本に助っ人を出すだろうか? 答えは「ノー」だ。

 韓国哨戒艦沈没事件では他のどの国よりも日本はいち早く、韓国を支持し、北朝鮮非難の先頭に立ってくれたけど、尖閣諸島問題や、メドベージェフの国後島訪問をめぐる今回の日中、日露対立で、韓国が一言でも「日本の立場を支持する」と日本を応援してくれただろうか?

 アジアの隣国である韓国さえ味方にすることができないのに国際社会に訴えても所詮ヤボな話というもの。

 ロシアに対しては日本を頼りに、あてにしなければやっていけないような外交、経済的関係を構築すべきである。例えば、日本が支持しなければ、東アジアサミットにも加入できないし、世界貿易機構(WTO)にも加盟できないような状況をつくることも一つの方策である。

 それか逆に、ロシアとの間に日米同盟のような外交・経済関係を築くことだ。信頼関係の醸成なくして、日本の固有領土である北方領土は半永久的に戻ってこないのではないだろうか。

2010年10月 2日

北朝鮮報道に関する「メディアと誤報」の問題

 金正日総書記の後継者、ジョンウン氏の漢字表記が「正恩」であることが判明した。「正恩」と表記していたのでとりあえず安堵した。

 ジョンウンの「ウン」の表記について毎日新聞など一部メディアは「銀」を使っていたが、これには最初から疑問に思っていた。

 「銀」は女の子に付ける名前で、男の子にはめったに付けないからだ。そのことは漢字を使用していた頃の北朝鮮の人名録をみればわかる。

 もう一つの理由は、父親の「金日成」の名前から「日」と、母親の名前(金正淑)から「正」を取って「金正日」にしたのと同じように「正恩」の名前も、もしかしたら「金正日」の「正」と先代の金日成(キム・イルソン)主席が「恩恵ある太陽」と形容されていたことからその「恩恵ある太陽」の頭文字を取ったのではないかとみていたからだ。

 正確な名前が判明したのは、朝鮮総連系通信社の問い合わせに北朝鮮からやっと返事が届いたからだ。回答まで3~4日もかかったのは、名付け親の金総書記に直接聞いてみないとわからなかったからではないだろうか。母親の高英姫さんが亡くなった今、漢字表記は、父親の金総書記以外誰にもわからないからだ。

 金総書記からの担当の党宣伝局書記への返事が遅れたのも、金正恩氏への大将称号の授与を含めた軍の昇進人事に関する報道も、正恩氏の党軍事委員会副委員長就任に関する軍事委員会の人事発表も深夜にずれ込んだのも、すべては金総書記の許可を取れなかったことに尽きる。党代表者会が遅れようが、党人事の発表がずれ込もうが、今は、金総書記の健康が最優先されているのではないだろうか。

 ところで、「その後の取材で北朝鮮関係者の多くが漢字表記は『正銀が適切』と証言した」として昨年末から「正銀」を使っていた毎日新聞は昨日、「北朝鮮当局が公表していなかったため、ハングル音や北朝鮮関係者の証言などから『正銀』と表記していました。公式報道を受け、今後は『正恩』と表記します」とさりげなく「訂正文」を出していたが、鬼の首を取ったかのように「ジョンウンは正銀である」と自信満々報道してきたことへの読者へのお詫びが一言もない。

 「その後の取材」がいかにいいかげんだったか、取材した関係者が実にデタラメだったのか、反省があってしかるべきではないだろうか。

 北朝鮮報道に関する「毎日」の落ち度はこれだけでは済まされない。

 今年4月20日付の1面トップで「金正日総書記に寄り添い製鉄所視察 正銀氏 初の近影」と全くの別人を「正恩」であると写真入で大々的に報道したことも深く反省しなければならない。

 韓国からも直ぐに虚報であることが指摘されたにもかかわらず、今の正恩氏の顔を誰もわからないことをいいことに往生際悪く、4月21日夕方の段階でも坂東賢治外信部長は「記事は十分な取材に基づいており、内容は事実と確信しています」との談話を発表していた。「十分な取材」とはチャンチャラおかしい。

 この件についてはその日(4月20日付)のうちにブログで証拠写真を示して以下のように書いたことを思い出した。

 「『毎日』は朝鮮中央通信や労働新聞などが『3月初めにジョンウン氏の写真を報じていた』としてその写真が掲載された労働新聞のコピーを載せ、『金正日総書記に寄り添い、製鉄所視察』との見出しを掲げ、大々的に伝えていたが、これは完全に虚報である」

 「『毎日』は金総書記が3月初旬に金策製鉄所の工場を見て回っていた際の随行者の一人(上記写真の左側)をジョンウン氏であると決め付けていたが、全くの別人で、金策製鉄所の関係者であることがわかった。韓国政府も、韓国のマスコミも『ジョンウンではない』とし、『毎日』の記事を『誤報』と断じていた」

 「となると、『今日の労働新聞をしっかり見るように』3月5日、平壌のある衣類関連企業で、こんな指示が出された。職員の一人が上司に『何が載っているのか』と尋ねると、上司は『金大将(正銀氏の愛称)のお姿がたくさん掲載されている』と答えたという。指導部に近い関係者によると、この指示は朝鮮労働党の各機関を通して、幅広く伝えられ、『3月5日の新聞を探し求める人が相次いだ』とのことだが、この「北朝鮮指導部に近い関係者」や「韓国情報機関の関係者」の話に基づくこの記事は作り話ということになる』

 一昨日、本物の正恩氏の写真(上記写真の右側が北朝鮮から公開されたことで、毎日がスクープ扱いした人物が全くの別人であることがはっきりしたにもかかわらず、この件について「毎日」はまだ読者に謝罪していない。

 「毎日」は古くは一昨年の2008年9月25日付で「次男、正哲(ジョンチョル)氏(27)が同国の最重要ポストの一つである朝鮮労働党組織指導部副部長に抜てきされていたことが08年9月23日分かった。北朝鮮政権に近い複数の関係者が毎日新聞に明らかにした。正哲氏は金総書記と同じ『中央党本庁舎』に執務室を持ち、頻繁に金総書記の指示を受けているという。金総書記が組織指導部での政治活動を通して党組織を掌握し、故金日成国家主席の後継者となった経緯に加え、後継候補の兄弟2人に党要職が与えられなかったことから、金総書記の後継者として正哲氏が最有力となった」と報じていた。これもデタラメだったということだ。

 北朝鮮に関する誤報は何も「毎日」に限ったことではない。「朝日新聞」も同様だ。

 昨年6月16日付けで「金ジョンウンの極秘訪中」を一面トップで大々的に報じておきながら、正恩氏が後継者として登場したことに関する9月29日付の「正恩」の人物像に関する2~3面通し記事では「世紀のスクープ」として自画自賛していたはずの昨年の極秘訪中に関しては一言も触れてなかった。実におかしな話だ。

 内部的に誤報、いや誤報であることを認めたのだろうか?ならば、購読料を払って新聞を読んでいる読者に率直に謝罪しなければならない。誤報はどこも犯す。要は過ちを率直に認め、正すことが肝要だ。でないと、嘘を書いて、金を取るのは体の良い詐欺と変わらない。

 天下の公器である新聞媒体は政治家に「政治と金」に関する説明責任を果たすよう主張しているが、新聞社もまた「メディアと誤報」に関して説明責任を果たすべきではないだろうか。「政治と金」同様にうやむやにすることは断じて許されるべきではない。

 一昨日(30日)マスコミ倫理懇談会全国協議会の第54回全国大会が開かれ、「拉致問題とマスコミ」がテーマの一つに挙げられたとのことだが、併せて北朝鮮報道に関する「メディアと誤報」もテーマの一つに加えてもらいたかったものだ。

2010年9月 9日

拉致問題では「菅=安倍」「小沢=小泉」のねじれ現象


 拉致問題の解決は、菅さんか、小沢さんのどちらになるかわからないが、次の総理の外交手腕、政治決断にかかっている。14日の民主党代表決戦を前に二人の「北朝鮮観」を比較、検証してみよう。

 菅直人総理は革新・市民派出身ということから一般的なイメージとして「親朝派」とみられているようだ。

 訪朝歴はないが、日朝国交正常化推進議員連盟に属しているし、民主党代表当時の1999年には羽田孜最高顧問と一緒に訪朝を検討したこともあった。

  しかし、菅総理は党代表だった2003年の総選挙直前に韓国の刑務所に15年間収監されていた日本人拉致の実行犯の一人である辛光洙(シン・グァンス)長期死刑囚の釈放を金大中大統領に求める嘆願書に社民党の土井たか子党首(当時)らと共に署名したことを自民党から暴露された以降は国民感情を意識してか、一転北朝鮮に厳しい対応を取り始めた。

  この年の衆議院選(11月)では同党の西村真悟氏の応援演説で、サダム・フセイン元大統領の銅像が倒されたのを引き合いに「北朝鮮のあの(故・金日成主席の)銅像が倒れる日が来ると信じている」(神戸新聞、03年10月31日)と発言し、強硬姿勢を前面に打ち出した。この年の11月の小泉総理との党首会談では「北朝鮮をテロ国家に指定し、送金停止の措置を取るべきだ」と迫っていた。

 安倍晋三元総理は幹事長時代の03年10月に札幌市内のセミナーで「日本人の原敕晁さんを拉致した辛光洙を釈放しろと言った菅直人民主党代表がハト派なら、私はタカ派で結構だ」と語ったが、その後の菅さんの北朝鮮関連言動は安倍さん顔負けの「タカ」である。

 言葉だけでなく、総理になってからも、北朝鮮への厳しいスタンスには変わりなく、所信表明演説(6月11日)では韓国哨戒艦沈没事件について触れ「許し難いものであり、韓国を全面的に支持する」と発言し、G8では北朝鮮非難声明の採択に奔走した。また、拉致被害者の家族らとの首相官邸での面会(6月10日)の際には北朝鮮に対する制裁強化も約束している。こうしたことから北朝鮮は総理就任から僅か1ヶ月で労働新聞(7月9日付)を通じ「我々への敵対感を露骨に示している」と名指し批判をした。

 菅総理は民主党代表の2003年に中国の戴秉国外交部部長(現在国務委員)と会談した際に「拉致問題が解決しなければ国交正常化はない」と言明しており、総理になった今もこの原則には変わりがない。

 事実所信表明演説でも「拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決を図り、不幸な過去を清算し、国交正常化を追求する。拉致問題では、国の責任において、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国に向けて全力を尽くす」と決意表明しているが、これまた歴代の自民党総理の所信表明を踏襲している。

 唯一違うのは、2004年1月のNHKテレビでの討論番組では「思い切って、金正日総書記を日本に招請したらどうか。招請に応じれば、一つの打開になる」と「金正日招請」という大胆な提案をしたことがあることだ。

 この6年前の提案を除くと、韓国哨戒艦事件で北朝鮮批判の先鋒に立ち、大韓航空機爆破犯である金賢姫元工作員を日本に招請し、日韓併合100周年に際する総理談話で北朝鮮について一言も触れず、無視したことにみられるように基本的には圧力重視で、北朝鮮への対応では強硬派と称された安倍元総理とさほど変わらない。

 小沢一郎前幹事長は、自民党の幹事長時代の1990年に後見人である金丸信副総理に勧められ、一度訪朝(1990年)したことがある。しかし、小沢前幹事長の北朝鮮印象はよくない。特に北朝鮮の核開発には警戒心を露にし、対抗措置を取るよう提言したこともあった。

 また、民主党代表だった09年4月には北朝鮮のテポドンミサイル発射について「北朝鮮は絶対的な独裁制の下、人権はもとより国民の生活も確保できない政治体制にある。そのような国が弾道弾や核をカードにして、もてあそぶことは絶対に許してはいけない」と激しく批判していた。

 しかし、朝日新聞の9月4日付の2面の「分析 菅流と小沢流の遠近」という見出しの記事で、菅さんは「外国人の地方参政権には賛成」するなど「リベラル」で、小沢さんは「北朝鮮に対しては対話よりも圧力を優先させるべきだ」に賛成で「保守色が強い」と書かれていたが、むしろ菅総理よりは「リベラル」である。

 「外国人参政権」では賛成どころか、積極的な推進派であることは周知の事実である。また、北朝鮮問題でも基本的には制裁よりも対話重視派である。

 新生党代表幹事時代(1993年)は「核疑惑が解消されれば、日朝国交交渉の最も大きな障害が取り除かれるので、そうなれば、日本は北朝鮮と情報交換と人的交流をしながら、北朝鮮の生活水準を高めるための必要な協力はする」(韓国・東亜日報、93年12月29日付)と語っていた。

 また、今年1月3日付の産経新聞記事によると、拉致問題の打開をめぐり複数の民主党関係者が昨年夏以降、数回にわたって中国で北朝鮮側と極秘に接触し、拉致被害者の行方を確認するよう要求していたとのことだが、秘密接触の一つのルートは、小沢一郎幹事長に近いとされる人物である。

 幹事長だった昨年11月には韓国民主党の丁世均(チョン・セギュン)代表との会談で小沢氏は「個人的見解だと前置きし、『拉致問題の解決にこだわらず、日本と北朝鮮の関係改善について結論を出すべきだと考えている』と応じた」「『日本は拉致問題の解決に拘束されず(束縛を受けず)、日朝関係改善問題に結論を出さなければならない』と語った」と、朝鮮日報や中央日報など韓国の複数のメディア(11月13日)が一斉に伝えていた。

 韓国メディアの報道について会談に同席した民主党国際局長の藤田幸久参院議員は「実際には『拉致問題ばかりでなく、さまざまな観点から(日朝の)関係改善についてきちんとした対応をすべきだ』と小沢氏は述べた」と補足していたが、小沢発言が事実ならば、拉致問題解決の方策は、どちらかと言うと、小泉純一郎元総理の考え方に近い。

 総理を辞めた日朝平壌宣言の立役者である小泉さんは福田政権下の08年4月10日、当時盟友だった山崎拓自民党前副総裁らと懇談した際「日朝国交正常化の実現には首相が決着をつけるしかない。自分はもう行くつもりはなく、行くのは首相だ」と述べ、拉致問題解決のために思い切って国交正常化する以外ないとの主旨の発言をオフレコで行っていた。

 このオフレコには続きがあって小泉さんは「福田総理が行くべきだ」と促しながらその一方で「でも福田政権ではできないだろう。もっと強い政権でないと」と述べたと言われている。

 自分の手で拉致問題の全面解決も国交正常化も果たせなかったが、小泉さんは自他共に認める日朝国交正常化の推進論者である。

  一度目の訪朝の2002年9月17日の日朝首脳会談後の記者会見で「日本は正常化交渉に真剣に取り組む用意がある。私は、北朝鮮のような近い国との間で懸念を払拭し、互いに脅威を与えない、協調的な関係を構築することが、日本の国益に資するものであり、政府の責務として考えている」と述べていた。

 また、2年後の2度目の訪朝後の国会答弁(2004年5月22日)でも「私の一番重視している点はいかに日朝の不正常な関係を正常化するか、これにある」と語っていた。

 さらに、2005年の年頭記者会見でも「私は今の北朝鮮と日本の敵対関係を友好関係にすることが北朝鮮のみならず、朝鮮半島、世界の平和のために必要だと思っている観点から、できれば北朝鮮と日本との今の不正常な関係を正常化していきたいといつでも思っている」と、日朝国交正常化実現に最後まで執念を燃やしていた。

 小泉さんのオフレコ発言の本音は「国交正常化交渉の過程で拉致問題を解決する」にあるようだ。これ即ち、「拉致問題の解決なくして、国交正常化はない」との政策を修正し、国交正常化を優先させて総理が訪朝しない限り、拉致問題の解決は無理で、それをやれるのは「もっと強い政権」すなわち、小沢さんのような「豪腕」でないとダメとも聞こえなくもない。

 「日本は拉致問題の解決に拘束されず(束縛を受けず)、日朝関係改善問題に結論を出さなければならない」と小沢さんが考えているならば、同じ年の小泉さんと共通しており、拉致問題の解決策をめぐっては菅さんが安倍さんで、小沢さんが小泉さんということになる。

 事実、経済制裁についても「韓国や中国が経済的に支援しているなかにあって日本だけが経済制裁して効果があるとは思えない」(06年3月6日)と言っていた小泉さん同様に小沢さんもほぼ同じ時期に「日本が単独でやっても全く意味がない」と(『論座』06年9月号)と言っていた。

  「菅=安倍、小沢=小泉」とはこれまたねじれ現象である。

2010年9月 3日

小沢前幹事長の「普天間発言」と「韓国移転」

 民主党代表戦に臨む菅総理と小沢前幹事長の1日の共同記者会見を見た。

 記者会見では主に内政に質問が集中したが、日本国総理を選ぶ選挙であると同時にその一方で世界第3位の経済大国の主、アジアのリーダーを選ぶ選挙でもあるので外交についても質問があっても良さそうなものだ。

 外交問題が論点とならなかったことで外国特派員らの関心は半減したものの、それでも普天間基地の移転に関する質問があった分、記事にはなったようだ。

 この問題では菅さんは総理大臣としてすでに方針を打ち出しているので改めて聞くまでもないが、小沢さんがこの問題にどう答えるのか、大いに関心があった。

 この日の会見で小沢さんが「沖縄も米国政府も納得できる案は、知恵を出せば必ずできると確信している」と発言したので、菅さんならずとも「何か妙案でもあるのだろうか」と誰もが思ったはずだ。「今、この席で申し上げるわけにはいかない」と口をつぐみ、それ以上多くは語らなかったが、普天間基地の問題を円満解決できるなら、小沢さんに一度総理をやらしてみたらどうかと思ったりもした。

 ところが、昨日(2日)の日本記者クラブでの会見では「今、具体案を持っているわけではない、日米合意を原点として尊重していく」と答えていた。現状ではどうやら腹案は持ってそうにもないようだ。

 沖縄の県民の意思と日米合意は180度VS関係にある。双方を納得させることは現状では奇跡に近いと言えば大げさかかもしれないが、至難の業だ。

 沖縄県民の総意は、ずばり普天間基地の県外移転である。県外となると、これまでの日本での議論では本土か、グアムの二者択一しかなかった。

 この7月に、琉球新報とのインタビューで「日米安保と沖縄駐留米軍を韓国がどう見ているのか」を聞かれたことがあった。それで、「韓国では、政府も国民も、沖縄駐留米軍だけでなく、在日米軍を朝鮮半島有事の際の『助人』とみなしており、従って、撤収とか、国外移転には反対している。今、焦点となっている普天間飛行場がグアムなど国外に移設されれば、韓国の安全に深刻な影響が出ると韓国政府は不安に思っている」と、韓国政府及び一般の韓国人の声を代弁した。断っておくが、私個人の意見ではない。

 日本の新聞紙上にしばしば登場する知日派の尹徳敏外交安保研究院教授にいたっては「沖縄基地問題に関する限り、韓国は当事者だ」とまで公言していた。その理由について「グアムに移してしまうと、朝鮮半島との距離を考えた場合、沖縄の海兵隊が持つ有事の際の即応戦力の役割を果すことが難しいからだ」と言っていた。これが、おそらく、韓国政府及び国防部の公にしたがらない公式見解だろう。

 尹教授が言うように韓国も沖縄基地問題では当事者ならば、沖縄県民だけにリスクとコストを負わさず、韓国も当事者としてそれなりの責務を負うべきであると考えている。沖縄駐留米軍が日本の防衛よりも「朝鮮半島有事」のために必要不可欠とするならば、なおさらのことである。

 韓国人が「グアムは遠すぎるので反対」と言うなら、韓国、例えば済州島にもっていってもらうのも一つの手ではないか。何も沖縄が、台湾や韓国など他国の防御のためにいつまでも犠牲を払い続ける必要はない。

 沖縄島と済州島を比較すると、面積は1,845㎡と1,207㎡と沖縄のほうが広く、また人口も済州島(50万人)より2倍も多いが、済州島には飛行場もあるし、港もある。「韓国のハワイ」と称されていることもあって米海兵隊にとっても悪くはないだろう。グアムよりは、台湾海峡にはるかに近いので「台湾有事」の際にも便利である。米国に異論はないはずだ。

 調べてみたら、グッドタイミングにも済州島では現在、海軍が基地を建設中だ。基地完成後は、独島級揚陸艦と建設中の最新鋭潜水艦を集中配備するそうだ。どうやら機動艦隊用前進基地にする計画のようだ。ならば、もってこいではないか。

 まして、李明博政権は、哨戒艦沈没事件を機に米韓軍事同盟強化の必要性を強調している。現在2万8千5百人いる駐韓米軍は一兵たりとも撤収してもらっては困るし、できるならば軍備も増強してもらいたいと米国に懇願している。事実、2年後に韓国に委譲する予定だった戦時作戦統制権も拝み倒して、3年間延長させている。

 「北の脅威」が除去され、朝鮮半島に平和が定着するまでは米軍は韓国にとって「仏様、神様、米軍様」なのでこの機に普天間の飛行場も米海兵隊をそのままそっくり韓国に移転させたらどうだろうか。韓国政府が望むよう形の統一がいつ実現するかわからないが、なんだったらその日までリースしたらどうだろうか。

 平たく言えば、朝鮮半島有事の際に最も緊急に展開される米海兵隊の戦力がいなくなると困るというならば、それが理由で普天間基地のグアム移転に反対ならば、韓国は日本に安保タダ乗りせず、それなりのリスクとコストを払ってしかるべきではないだろうか。

 人のフンドシで相撲を取るほど、韓国はもう貧しくはないはずだ。中国に先駆けて、五輪も開催し、万博もやり、この秋にはG20を主催するほどの経済成長を遂げたと豪語しているわけだから、十分に余裕はあるはずだ。それでも財源が困難で無理と言うならば、日本が一部、あるいは全額肩代わりしてあげればよい。普天間にそのまま置いても、辺野古やグアムに移転させてもどっちみちコストは同じようにかかる。

 上記のインタビューでは「鳩山前政権も、菅政権も、この問題で随分と頭を痛めているが、今度李明博大統領に会ったら勇気を持って『いらない?』と打診してみたらどうだろうか?李大統領が何と答えるのか、興味がある。まさか、『ノー』とは言えないだろう」と半分冗談を言っていたが、驚いたことに李明博大統領にはどうやらその気があるみたいだ。というのも、今年6月にカナダ・トロントで開かれた米韓首脳会談の場で李大統領がオバマ大統領に普天間基地の韓国への移転を秘かに提案していたというのだ。

  この情報元は、「文藝春秋」9月号に掲載された記事(「オフレコ公開 李明博が『普天間韓国移設』を極秘提案」)だが、それによると、李大統領はオバマ大統領に普天間基地移転問題が米日同盟で最悪のシナリオとなった場合、普天間基地の代替敷地を韓国が提供できると提案していたそうだ。これが、事実ならば、普天間の基地問題は円満に解決できる。小沢さんの言う「三人集まれば、文殊の知恵」とは、ずばり日米韓3か国による協議のことではないのか。

 ところが、この話が韓国に伝わるや、野党民主党のキム・ドンチョル議員は先週「国際情勢と国益に全く符合しないような発言を一国の大統領がやったとの報道は大統領と大韓民国に対する大変な名誉毀損になる。事実でないならば、直ちに訴訟を起こして、正すべきだ」と青瓦台に迫っていた。民主党の実力者の1人であるパク・チウォン議員は「国政監査でこの問題を追及する」として、李大統領の「韓国移転話」に反発していた。

 騒ぎが大きくなるや大統領府(青瓦台)は「文藝春秋」の記事を「対応する価値もない、完全な小説である。必要な場合は訂正報道請求など措置を取る」(ホン・サンピョ広報首席補佐官)と述べ、鎮静化につとめているが、実際にはなんら措置も講じていない。

 李大統領が本当に提案したのか、しなかったのか、当人のみぞ知るだが、実は、李大統領には前科がある。

 大統領に就任した年の2008年7月の日韓首脳会談で福田康夫総理(当時)が中学校新学習指導要領解説書に竹島を表記することを通告した際、李大統領が「今は困る。待ってほしい」と要請したと、読売新聞(2008年7月15日付)がすっぱ抜いたことがあった。

 日本の主張を容認するような大統領の発言が明るみに出るや慌てた大統領秘書室長が「大統領はそのような発言はしていない」と弁明に追われていたが、これに納得しない市民らが「韓国国民の領土権が侵害された」として読売新聞を相手に損害賠償と訂正報道を求め集団訴訟を起こしたことがあった。

  裁判では市民らの訴訟は却下されたが、これまた青瓦台が読売新聞社にこの問題で訂正報道を求めたことはなかった。言うなれば、「読売」の報道が正しかったということだ。

 今回の李大統領の「発言」について韓国内では米韓FTA(自由貿易協定)に消極的なオバマ大統領を説得するための「切り札」として、普天間基地の韓国への移転を「手土産」にしたのではと見る向きも一部にはある。

 今回、仮に李大統領が言ったとすれば、単なるリップサービスなのか、それとも本気なのか、次期総理は今度李明博大統領に会ったらズバリ打診してみたらどうだろうか? 

 何しろ、南北関係では日本は戦後一貫して韓国の立場を支持し、今も長年の外交懸案である拉致問題よりも韓国の哨戒艦沈没事件を最優先し、韓国に同調し、北朝鮮との対話も、6か国協議の早期開催も拒んでいるわけだから、韓国から一度ぐらい「恩返し」があっても良さそうなものだ。

 仮に「ノー」と断れば、米軍は「北の脅威」に直面している韓国にとっても「招かざる客」「お荷物」ということがはっきりする。

 韓国にも歓迎されないのならば一体、誰のための、何のための沖縄米軍駐留なのか、日本人は一から問うべきではないだろうか。

2010年8月17日

米国の追加経済制裁の中身は?

 北朝鮮に対する米国独自の追加経済制裁が近々発表される。

 北朝鮮には現在、2006年と2009年の核実験への制裁として採択された国連安保理決議「1718号」と「1874号」に基づく制裁措置が取られている。

 昨年6月に発表された韓国現代経済研究院の報告書(「国連安保理制裁の影響」)によると、北朝鮮は国連による制裁で「少なくとも15億ドル相当、最大で37億ドル相当の経済的損失を被る」と予測されていた。北朝鮮の国内総生産(GDP)は195億ドル(2008年基準)。損失額はGDPの7.6%~18.9%を占める。

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2010年7月22日

金賢姫への日本政府の厚遇に異議あり

 大韓航空機を爆破した実行犯、金賢姫が20日来日した。なんと、日本政府は彼女のためチャーター便を用意し、避暑地、軽井沢の別荘にもてなし、22日には帝国ホテルに宿泊させた。軽井沢から都心まではヘリコプターに乗り、遊覧飛行したそうだ。本人が「富士山を見たい」というので希望を叶えてあげたようだ。

 都心のホテルでなく、郊外の軽井沢を滞在先にしたのは、警備上の問題かと思いきや、拉致被害者、田口八重子さんの家族に手料理を振るうためのキッチンが必要で、それで鳩山前総理の別荘を借りたようだ。日本の前総理が、元テロリストに別荘を貸すとは、他国ではまず考えられないことだ。

 金賢姫は、恩赦されたとはいえ、115人を大量殺害した元テロリストである。日本政府挙げての異例の厚遇は、どう考えても解せない。

 彼女の来日を歓迎する拉致被害者の家族の中には「金元工作員には罪はない。彼女もまた犠牲者である」との声も聞かれるが、こうした理屈がまかりとおるなら、「9.11」のテロリストも、自爆犯も、また現在イラクやアフガンなど世界中で囚われているテロリストも、金元工作員同様に体制や組織の命を受けた哀れな「犠牲者」に過ぎないということになる。

 昨年3月、田口さんの息子さんらと面会した際に当時の官房長官が「日本国民が皆、テレビを見て泣いたと思う」とコメントし、一躍「悲劇のヒロイン」として扱っていたが、実に軽率な発言だ。遺族や支援者から成る韓国の「KAL機858事件真相究明市民対策委員会」は「遺族の心を傷付けた。容認できない」と批判の声を上げていた。

 韓国の遺族との面会は拒みながら、日本の拉致被害者の家族とは積極的に面会すること自体に立腹している韓国の遺族らは「金賢姫はあたかも慈善を振りまく人道主義的人間であるかのごとく、政権から弾圧を受けている被害者のごとく振る舞い、国民を欺瞞している」と激怒していた。

 父親、夫、息子らの遺体がいまだ一体も発見されず、「行方不明」扱いにされ、保険金も手にできず苦しんでいるのにその張本人であるテロリストを人道主義者として、加害者を被害者のように扱う日本の対応に不満の声が上がるのは当然だろう。韓国では今度の来日の謝礼として数千万円を支払ったと報道されているが、金額の額にかかわらず礼金を払ったとするなら、これまた前代未聞である。

 大韓航空機爆破事件と言うと、翌年の1988年に英北部スコットランドで同じような事件が起きたことを思い出さずにいられない。乗客乗員259人の乗った米パンナム機が爆破された事件のことだ。この爆破テロ事件では、乗客乗員だけでなく墜落現場のスコットランドの住民11人も死亡している。

 実行犯の元リビア情報機関の工作員はスコットランドに引き渡され、終身刑の判決を受け、昨年まで服役していた。昨年、金賢姫と同じように恩赦で釈放されたが、米国人や英国人を中心とする犠牲者の遺族は、恩赦及びリビアへの送還に強く反発していた。

 米国もクリントン国務長官が恩赦に反対し、オバマ大統領もラジオ番組でこの工作員の釈放を「誤りだ」と批判していた。リビア政府に対しても身柄が移送された場合、「歓待するのではなく、自宅軟禁措置にすべきだ」と警告していた。恩赦されたとはいえ、元テロリストを自由にさせてはならないということのようだ。

 日本の法律(出入国管理、難民認定法)では、懲役・禁固1年以上の刑が確定した外国人の入国を認めていない。金賢姫も入管難民法上、当然入国拒否の対象となるが、「特別な事情がある」として特別に入国を許可した。過去にも麻薬所持で入国を禁止されていた歌手やタレントに特例として認めたケースがあるようだが、それでも元殺人犯に認めた前例はないはずだ。

 確かに過去に特例で元死刑囚の金大中元大統領が来日したことがあった。しかし、金元大統領の場合、冤罪で、時の軍事政権下での政治犯であった。冤罪でもない、刑事犯の金賢姫とはわけが違う。

 聞くところによると、滞在中、警察当局も、日本人を装うため偽造旅券を使い、爆破を実行した彼女を容疑者として事情聴取しない方針のようだ。これも法治国家としては解せない話だ。

 金賢姫は事件を日本の犯行に仕立てるため「蜂谷真由美」という名の偽造バスポートを所持し、かつ韓国での取調べでも「日本人である」と白を切っていた。仮に、彼女がバーレン空港で捕まらなかったら、爆破事件は日本人の犯行に仕立てられるとことだった。それほどの恐るべき事件なのにその犯人を事情聴取をしないとは、あまりにも寛大すぎる。

 このことについても、外国のケースをあてはめると、日本の対応がいかに甘すぎるかがわかる。

 中米のパナマの元指導者で、1980年代に政治的実権を掌握していたノリエガ元将軍のケースだ。

 ノリエガ元将軍はコロンビアの麻薬組織による米国への麻薬密輸に手を貸したとして1989年に米国のパナマ侵攻で捕えられ、1992年に禁固40年の有罪判決受け、アメリカ・フロリダ州にある刑務所に服役していた。

 服役態度が良好だったことから2007年に仮釈放されたものの当時麻薬組織から得た230万ユーロ(2億5千万円)を妻の資産などに偽造してパリの金融機関の口座に入金したとして、マネーロンダリングの罪で起訴していたフランスが身柄の引き渡しを要求していた。

 結局、米政府はフランスの要求に応じ、昨年4月にパリに移送。クリントン米国務長官が引き渡し命令に署名したからだ。

 フランスは彼を取り調べ、フランスの法の下でマネーロンダリング(資金洗浄)の罪で7月7日に禁固7年の有罪判決を宣告し、今年76歳と高齢のノリエガを収監している。フランスは法を厳格に遵守、適応したわけだ。

 北朝鮮に敵前逃亡し、重罪の身であった元駐韓米軍兵士、ジェンキンスさんを拉致被害者の曽我ひとみさんの夫であるとの理由だけで、一国の総理が「アイ・ギャランティ」(私が保障する)と言って「免罪」にさせたことを考えると、金賢姫の大罪も日本では拉致問題に比べると、たいした問題でなのかもしれない。

 今回の日本の対応を、テロと戦っている国々、国際社会はどう受け止めるのだろうか。

2010年7月10日

安保理の裁定は引き分け、ドロー

 哨戒艦沈没事件に関する国連安保理の議長声明についての南北の反応が実に面白い。南北双方とも歓迎を表明していたからだ。どちらも満足、歓迎とは意外だった。

 韓国外交部は安保理が北朝鮮の攻撃によって沈没したとの韓国の調査結果に触れ「北朝鮮を事実上非難した」として、評価している。

 一方、北朝鮮も議長声明が無関係であるとの北朝鮮の主張を明記し、かつ沈没の原因を「北朝鮮による攻撃」と定めなかったことを評価している。申善虎国連大使にいたっては「素晴らしい外交的勝利である」と高らかに宣言していた。

 今回の国連での南北外交戦は、ボクシングに例えれば、差し詰め引き分け、ドローというところだろう。

 事前の予想では、韓国の圧勝が予想されていたわけだからドローに持ち込んだ北朝鮮が喜ぶのはわからなくもないが、韓国はおそらく内心がっかりしていることだろう。

 今朝の朝日新聞の見出しに「安保理、議長声明を採択」「韓国艦沈没 北朝鮮強く反発」との見出しが載っていたので、安保理の議長声明を北朝鮮がいつものように拒絶し、口汚く非難したのかと思ったら、とんでもなかった。

 昨日のブログで「今回の議長声明が先のG8の共同宣言を下敷きにしているならば、冤罪を主張する北朝鮮は当然反発するだろう」と書いたが、反発しなかったということは、北朝鮮は今回の議長声明をG8宣言と同じとはみなしてていないのだろう。

 議長声明は①哨戒艦が攻撃によって沈没した②韓国の調査では北朝鮮の攻撃である③従って安保理は46人の人命損失を招いた攻撃を非難する④韓国はよく自制した⑤今後、韓国への攻撃や敵対行為を阻止しなければならないとの文脈になっているので韓国が「北朝鮮の仕業であることが受け入れられた」とそれなりに評価するのは当然である。

 だが、これが、北朝鮮側からみると、安保理は①「北朝鮮が攻撃した」とは言ってない②北朝鮮の魚雷によって沈没したとも明記してない③無関係であるとの北朝鮮の主張も言及している④北朝鮮が主張する問題解決のための南北直接対話の重要性を支持しているとして、大いに歓迎している。

 「ちょっとでも言いがかりを付ければ、武力で対抗する」と威嚇していた北朝鮮外務省は早速、声明を発表し「議長声明が朝鮮半島の懸案問題を適切なルートを通じ直接対話と交渉を再開し、平和的に解決するよう奨励したことに留意する」とG8宣言の時とは打って変わって柔軟な対応を見せた。

 客観的に見て、今回の議長声明も、G8宣言とさほど変わらないようにみえるのだが、申大使が「外交勝利宣言」まで出したのにはそれなりの訳があるようだ。

 韓国がこの事件を国連安保理に提訴したのは、李明博大統領が「北朝鮮は国連憲章に違反し、停戦協定を破った。国連安保理に回付し、国際社会と共に北朝鮮の責任を問う。韓国と国際社会に謝罪させ、責任者を直ちに処罰させる」との決意表明に基づく。

 韓国は李大統領を先頭に総力を挙げて経済制裁をさらに強化するための制裁決議か、拘束力のある非難決議を目指したが、結局、決議採択には失敗した。サッカーに例えると、反則を犯した北朝鮮に対戦相手の韓国はレッドカードを求めたのに、主審の国連はレッドカードを出さなかったわけだ。

 やむを得ず、韓国は要求を取り下げ、議長声明で妥協したが、議長声明でも「北朝鮮のファール」が認定されなかったことで結局、イエローカードも出せないままに終わってしまったことになる。

 これでは、北朝鮮に謝罪も、責任者の処罰も求めることができない。それどころか、G8の宣言にはなかった「無関係である」との北朝鮮の主張まで盛り込まれてしまったことは韓国にとって大きな誤算である。

 議長声明は今回の事件が国連憲章及び休戦協定の違反であるとも断定しなかった。これまた、韓国にとっては痛手である。

 韓国は北朝鮮に対して、謝罪のほか、被害者への賠償も要求しているが、国連安保理が「加害者」を特定できなかった以上、国際法上、北朝鮮に賠償も請求できない。

 ニューヨーク・タイムズ紙は今回の議長声明について「どちらも満足させることのできない結論が出た」と報じていたが、やはりドローなんだろう。

 ドローで終わっても、両者とも満足ならば、それはそれで望ましいことだ。ボクシングなら、お互い「よくやった」と健闘を称え、抱き合うものだが、そういうわけにはいかないだろう。

 決着が着くまでやろうということなら、近々「再戦」ということになる。不穏な事が起こらなければ良いのだが。困ったものだ。

2010年6月22日

菅政権のアジア外交

菅直人新総理は所信表明で鳩山前政権同様にアジア外交の重要性を強調していた。言葉の強弱の違いはあっても「日米同盟を基軸に、中国や韓国などアジア諸国との関係を強化する」との外交方針は、中韓との関係がギクシャクした小泉政権以後、安倍―福田―麻生と3代続いた自民党政権時代と大差はない。当然のことだ。

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Profile

辺 真一(ぴょん・じんいる)

-----<経歴>-----

1947年東京生まれ。
明治学院大学(英文科)卒業後、新聞記者(10年)を経て、フリージャーナリストへ。
1980年 北朝鮮取材訪問。
1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。現編集長。
1985年 「神戸ユニバシアード」で南北共同応援団結成。統一応援旗を製作。
1986年 テレビ、ラジオで評論活動を開始。
1991年 南北国連同時加盟記念祝賀宴を東京で開催。北朝鮮への名古屋からの民間直行便開設に助力。
1992年 韓国取材開始。(以後今日まで二十数回に及ぶ)
1998年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー。
1999年 参議院朝鮮問題調査会の参考人。
2003年 海上保安庁政策アドバイザー。
2003年 沖縄大学客員教授。
現在、コリア・レポート編集長、日本ペンクラブ会員。

BookMarks

オフィシャル・ウェブサイト
「辺真一のコリア・レポート」

-----<著作>-----


『「金正日」の真実』
小学館、2003年1月


『金正日「延命工作」全情報』
小学館、2002年11月


『強者としての在日』
ザ・マサダ、2000年11月


『「北朝鮮」知識人からの内部告発』
三笠書房、2000年1月


『北朝鮮亡命730日ドキュメント』
小学館、1999年6月


『北朝鮮100の新常識』
ザ・マサダ、1999年5月

『ビジネスマンのための韓国人と上手につきあう法』
ジャパン・ミックス、1997年12月

『朝鮮半島Xデー』
DHC、1994年8月

『表裏の朝鮮半島』
天山出版、1992年4月

-----<共著>-----


『読売 VS 朝日 社説対決 北朝鮮問題』
中央公論新社、2002年12月

『韓国経済ハンドブック』
全日出版、2002年3月

『一触即発の38度線』
飛鳥新社、1988年7月

-----<訳書>-----


『北朝鮮が核を発射する日』
PHP研究所、2004年12月

『凍れる河を超えて(上)』
講談社、2000年6月

『凍れる河を超えて(下)』
講談社、2000年6月

『私が韓国をキライになった48の理由』
ザ・マサダ、1998年9月

『潜航指令』
ザ・マサダ、1998年7月

『生きたい!』
ザ・マサダ、1997年7月


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