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2011年9月13日

福島原発事故で百万人が死ぬんだって──世界を駆け巡る報道を検証してみた

 福島第一原発事故で今後100万人が死亡―。そんなセンセーショナルな記事が英紙インディペンデント電子版で8月29日(現地時間)に報道され、複数の韓国メディアがそれを大々的に伝えた。さらに日本でこの報道がインターネットで脱原発の市民運動の間で拡散され、一部で騒ぎになっている。しかし、この報道、どう検証してもおかしい。

 アジアの経済情報を中心に情報を発信しているインターネット情報紙『サーチナ』は9月1日、「3月に発生した東北大震災時に起こった福島原子力発電所の爆発事故による死亡者数が、今後100万人に達すると英紙インディペンデント電子版が29日(現地時間)、報道した。複数の韓国メディアがこの報道に注目し、詳細を伝えている」という前文とともに、インディペンデントの報道を伝えた。

福島原発事故による死者は、今後100万人以上と英紙が報道―韓国(サーチナ・9月1日)

 インディペンデントの記事は「Why the Fukushima disaster is worse than Chernobyl」というタイトルで、相馬市からの特派員電として8月29日電子版に掲載された。

 同紙は現地ルポを混じえながら、福島事故がチェルノブイリより深刻な理由を複数の学者の証言でつづっている。中でも有力な証言が、7月に日本の市民グループの招きだ来日、被災地を回り、講演や記者会見を行ったクリス・バズビー博士の言葉である。次のような表現で書かれている。」

"Chris Busby, a professor at the University of Ulster known for his alarmist views, generated controversy during a Japan visit last month when he said the disaster would result in more than 1 million deaths. "Fukushima is still boiling its radionuclides all over Japan," he said. "Chernobyl went up in one go. So Fukushima is worse."

 ECRR(欧州放射線リスク委員会)の代表者で議長であるクリス・バスビー氏は、「内部被曝の世界1の権威です」と日本の市民運動で紹介されている。福島原発事故すぐ後の3月30日に博士は、事故の影響を計測、次のようなレポートを発表している。

ECRRクリス・バズビー論文「福島の破局的事故の健康影響」(Peace Philosophy Centre・7月23日)
『福島の破局的事故の健康影響 欧州放射線リスク委員会(ERCC)のリスクモデルに基づいた解析第一報 』(英語の原文pdf)

 以下、この論文の「結論と勧告」を抜粋します。
 「1.ECRRリスクモデルにより福島事故の100キロ圏の住民300万人に対する健康影響を検討した。100キロ圏内に1年居住 を続けることにより、今後10年間で10万人、50年間でおよそ20万人がガンを超過発病すると予測された。直ちに避難を行うことでこの数字は大きく減少 するだろう。100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人から、今後10年間で10万人、50年間で22万人が超過発ガンが発生すると予測された。これらの予測値は、ECRRリスクモデルおよびチェルノブイリ事故後のスウェーデンでの発ガンリスクに関する疫学調査に基づいて算定されたものである」

  博士は来日中、広範囲にわたって放射線量を計測すると当時に、講演会や記者会見を繰り返し行った。その一つ、7月18日に行った講演会で、博士は以下のように述べている。
(岩上安身オフィシャルサイト「2011/07/18 ECRR議長クリス・バズビー博士来日講演会」より)

「さらに100~200キロ圏内を、1μSv/hの平均線量だったと計算する。そうすると、ここでも同じような数字が出る。今後50年で200キロ圏内で合計40万人(通訳さんは22万人と仰ってますが、バズビー博士は、『four hundred thousand 』と仰ってます)の癌発生が増加する。これはあくまで予測だ。我々はこの予測を確認しなければならないだろう。だが我々はこの予測には自信を持っている。」

 福島原発事故によるガンを超過発病数が、3月の論文では200キロ圏内で22万人、来日後40万人に増えている。身近に調べてそれだけ深刻だったということだろうと解釈できる。しかし、いろいろ調べたが、博士が来日中、「100万人が死亡する」と語った記録は出てこない。だがインディペンデントの記事は、確実に「more than 1 million deaths」と述べている。それも癌発生数ではなく「死亡数」なのだ。

 それはまあ、人間、いつかは死ぬのだが、それにしてもこの記事、どう見てもおかしい。

Profile

大野和興(おおの・かずおき)

-----<経歴>-----

1940年愛媛県生まれ。
農業ジャーナリスト。
四国山地の真只中の村で育ち、農業記者として約40年を日本とアジアの村を歩く。
「日刊ベリタ」現編集長、「脱WTO草の根キャンペーン実行委員会」事務局長、「アジア農民交流センター」世話人、「国際有機農業映画祭」実行委員会代表。

BookMarks

-----<著書>-----


『食大乱の時代』
2008年7月、七つ森書館


『百姓が時代を創る』
2008年2月、七つ森書館(増補版)、共著

『日本の農業を考える』
2004年4月、岩波書店

『百姓は越境する』
1991年8月、社会評論社

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