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<牛丼と貧困>(上) いつの時代も牛丼は貧しさの影を背負っていた

 牛丼の値下げ競争が止まらない。7月21日には吉野家が期間限定で牛丼並盛りを380円から270円に値下げすると発表。するとすかさず松屋フーズが「うちは250円だ」を対抗、牛丼チェーン「すき家」を展開するゼンショーも対抗の気配。昨年12月から始まった牛丼値下げスパイラルは、どうやら夏を通り越し、秋の陣にもつれこみそうな気配だ。その陰にはこれまた一向に止まる気配がない貧困のスパイラルがある。

■牛丼はそのうちタダになるらしい 遊魚亭釣楽

 バブルがはじけ、経済のグローバル化が進み、格差と貧困が拡大した。若者は正規の職に就けず、年収が200万円あればうらやましがられる時代。その先頭にいるのが、氷河期世代と呼ばれる、かつてのニューファミリーの子どもたちだ。牛丼チェーンは食の値下げ競争の先頭を走り、氷河期の若者はそれをかっ込んで餓えをしのぐ。

 4月11日の「よみうり時事川柳」を読んでいて「うまい!」と思わずうなった。「牛丼はそのうちタダになるらしい」という句である。作者は遊魚亭釣楽という人。そう、昔から安くてうまい牛丼は"貧乏人の友"だった。

 いまでこそ牛丼御三家が覇を競っているが、その先鞭をつけ、牛丼をラーメンと並ぶ日本人のC級国民食にまで広げたのは吉野家である。老舗とはいえいっかいの築地の牛丼屋だった吉野家が各地に店舗展開を始めたのは、定年を迎えた団塊の世代が結婚し世帯を持ち始めた70年代初めだ。

 彼らは2つの顔をもっていた。ひとつは経済成長をひた走る日本経済の最先端をになう企業戦士としての顔。もうひとつは郊外に一戸建ての洒落た家を構え、専業主婦の妻とマイホームを築く家庭の顔。高学歴どうしのカップル、子どもは1人か2人。ニューファミリーと呼ばれた。少子化時代の始まりでもあった。

 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とはやされた80年代前半には、郊外の戸建て住宅団地を舞台に、ニューファミリーの生態を描いたテレビドラマ「金曜日の妻たち」がヒットし、共同通信の花形記者斎藤茂男(さいとう・しげお)の取材グループが長期連載した「妻たちの思秋期―ルポルタージュ 日本の幸福」が評判を呼んだ。

■金曜日の妻たちを支えた牛丼

 ニューファミリーを主人公とするこれらの物語には、繁栄に酔いしれる日本の都市のくらしの足元に忍び寄る人びとの不安や孤独、そして貧しさが埋め込まれていた。郊外の瀟洒な戸建て住宅はしょせん借金の塊だったからだ。繁栄の負の部分の象徴が、C級国民食牛丼チェーンの繁盛だったのかもしれない。郊外のマイホームを拠点に,専用主婦の妻たちは、生活クラブ生協の活動に生きがいを見出し、夫たちは牛丼をかっこみながら働いてマイホームの借金を払い、妻の社会活動を支えた。

 時代の波にのって店舗拡大を続けてきた吉野家は1982年に倒産、83年にセゾングループが参加して現在に至る。倒産後、最初の社長に就任したのは大口債権者の新橋商事という会社の社長だが、その社長は債権者会議の席上、「これからは本物の牛肉を使いますから大丈夫です」と語ったと食品評論家の郡司篤孝さんは書いている(安達生恒・大野和興・西沢江美子編著『食をうばいかえす!―虚構としての飽食社会 (有斐閣選書 (460))』(有斐閣、1984年)。

 当時の吉野家のキャッチコピーは「うまい・はやい・安い」。時代の本質をずばりとついた実に秀逸なコピーである。だが、老舗の家業としてはともかく、大量生産・消費に乗った外食チェーンとして牛肉を素材に「うまい」と「安い」を両立させるには時代が早すぎた。当時牛肉は自由化されておらず、海外からの安い食材が輸入ができなかったからだ。質を落として乗り切ろうとしたが、客足も遠のいた。

■貧困と格差の時代へ

 1991年4月、アメリカの厳しい要求をしのぎきれず、政府は牛肉とオレンジの自由化に踏み切る。牛丼の材料となる下級肉が安く大量に手に入り時代の到来である。経営再建の終えた吉野家、60年代後半に中華と牛めし定食屋からはじまった松屋、80年代初めに開業したすき家といった牛丼チェーンが一気に店舗と売上げを拡大していった。牛丼黄金時代に始まりである。

 だが、牛丼黄金時代の始まりは、皮肉にも「貧困と格差」の時代の始まりと重なっていた。90年代に入ってバブルがはじけ、経済のグローバル化が進み、格差と貧困が拡大した。若者は正規の職に就けず、かつてのニューファミリーの子どもたちは氷河期世代と呼ばれ、値下げ競争の先頭を走る牛丼をかっ込んで餓えをしのぐ。(つづく)

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牛丼300円以下、不動産建売2,500~3,000万円、何か30年か35年タイムスリップしたのではないかと、勘違いしてしまう。
この間に、バブルがあり、バブルがはじけたわけであるが、日本の政治家特に自民党は何をしていたのだろうか?
はっきりしていることは、天文学的な借金を残してしまっていることである。また働く人たちの収入格差を広げてしまったのである。
すなわち、この国のあり方に大きな障害となっているのが、巨大な借金と大きな収入格差である。
かつての栄光ある英国をみる。当時出張時に見る英国に大英帝国の面影はなかった。
このとき、サッチャー首相は、大胆な政策を断行し、英国を復活させた。同じような困難なとき、政策が古いとか、いろいろ批判される人が多いが、「ねじれ」を乗り切って国を前に進めるためには、小沢氏の力を借りずして、その任をつとむられるひとがいるだろうか。菅氏は、まだ任につかれて間がないから、彼に任せるべきなどの誘導アンケートによって、続投させようとするマスコミには、怒りを覚える。菅氏がどういうことをしようとしているかを述べていて、合意が得られる内容であれば良いが、無内容で、ただ菅氏支持を民意とするのは、戦争に加担していったマスコミの救いようのない本質を見るような気がします。日本は落ちるところまで落ちないとだめなのでしょうか。アメリカに頼らなければ解決しないのでしょうか。若い人たちに対する「夢」を与えない社会なんて成り立つのでしょうか?

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Profile

大野和興(おおの・かずおき)

-----<経歴>-----

1940年愛媛県生まれ。
農業ジャーナリスト。
四国山地の真只中の村で育ち、農業記者として約40年を日本とアジアの村を歩く。
「日刊ベリタ」現編集長、「脱WTO草の根キャンペーン実行委員会」事務局長、「アジア農民交流センター」世話人、「国際有機農業映画祭」実行委員会代表。

BookMarks

-----<著書>-----


『食大乱の時代』
2008年7月、七つ森書館


『百姓が時代を創る』
2008年2月、七つ森書館(増補版)、共著

『日本の農業を考える』
2004年4月、岩波書店

『百姓は越境する』
1991年8月、社会評論社

→ブック・こもんず←



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