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カンボジアで進む外国企業のプランテーション化

 いまアジア、アフリカ諸国で多国籍企業や産油国、食料不足国などによる農地の買い占めが進んでいる。そこに代々住み、耕して地域の人々の食料を作ってきた小農民が土地た水など地域の資源から引きはがされ,都市に流出と行った事態も目立ち,国連食糧農業機構(FAO)も「新植民地主義」と警告を発するほどだ。そうした実態の一端を、日本の国際協力NGO、日本国際ボランティアセンター(JVC)のカンボジア事務所代表としてカンボジアの農村で活動する山崎勝さんに聞いた。(聞き手:大野和興)

───────【インタビュー】───────

−カンボジアにおける土地問題をお聞きしたいのですが、農民が住み、耕していた土地から排除されるというような動きは

山崎:道ができると土地の値段が上がりますね。政府の高官とかそういう情報を持っている人が土地を買って高く売る。そういう事例はたくさんあります。また、大きな企業が入ってきて、政府の高官の一声でそうした土地が企業に囲い込まれる事例は多いです。農地だけでなく、みなが生活林として使っていた森がある日囲い込まれて住民がそこから追い出されるという例もたくさんあります。

−そうやって囲い込まれた土地は、その後どう利用されるのですか

山崎:多くはプランテーションに変わる。アグリビジネスの直営農場です。バイオ燃料用のキャッサバとか油やしとかが多いですね。カシュウナッツやゴム林もあります。森の場合も、焼かれてそういった農場に姿を変えています。

−そういう例は多いですか

山崎:あちこちに出ています。北のラオスに近いところでは中国の企業がだいぶ入ってきている。政府が土地提供を中国企業に約束しているということもあります。

−そうした場合、農民への補償はあるのですか

山崎:ない場合いが多い。二束三文で買い叩くというのもあります。最近は援助の関係で外からの目がありますから、お金を払い指したという形だけはとるという例が多い。

−そうしたことに対する抵抗はありますか

山崎:土地を取られた農民がプノンペンに出てきて国会前に座り込んだりというのはよく見ます。取られて土地に立てこもってという例もありますが、土地売買に絡んでいる有力者がボディーガードを送り込んで強制的に排除したりする。その際撃たれたり暴力を受けたりという事件が起こる。

−カンボジアの農業や農地への海外からの参入は

山崎:中国、韓国の企業がたくさん入っていますね。特にアグリビジネス関係がいっぱい入ってきている。今回の経済危機で撤退したところもありますが、目的は自国の食糧確保と、食料ビジネスへの参入の両方があるようです。カンボジアはコメはすでにアフリカに輸出を始めていますから。

−それは農地への進出と食料取引への参入という形ですか。そうなるとこれまで自分たちが食べていた食料が外国へ持ち出されるということになりますね

山崎:そうですね。コメの自給率は100%を超えているのですが、その一方でコメが食べられない農民も増えています。土地についても、農民の側も生活が苦しいですから、売値が安くても売ってしまう傾向がある。しかし一度手放すと、もう取り戻せないですから、土地なしになって、町に出てスラムに住むしかなくなります。カンボジアは人口の7割が農民で、いずれも小規模零細層です。そこが崩れてきている。
 今回の経済危機で、工場がたくさんつぶれました。働いていた人たちは、多くがふるさとの村に帰っていった。土地があって家があって貧しくても食べられるということの大事さもわかってきている。このとき、土地がなくて帰れない人が多くいて、困っていました。

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サトウキビ原料の製糖工場(ラオス・サワナケート周辺 2009.4 《THE JOURNAL》取材班撮)

−そこで大事になるのが、村で暮らしていける道を作り出すことですね

山崎 そうです。JVCがやっているように、零細農業でも食べていけるために、もうちょっと生産を上げていきましょうとか、そういう発想で考えたほうがいいんじゃないかと思います。

−国の農業政策はどんな方向を

山崎 大規模化して輸出していくという方針ですね。そのためには外国資本もどんどん入れて、農民は土地を売ってその企業に雇ってもらう。農民も、買ってくれるなら売りたいという人が多い。土地に値段がついたので、土地担保でお金が借りられるようになったので、多重債務者が増えています。JVCのプロジェクト地域でも多いです。

【関連記事】
■日・メコン首脳会議 現地で起こるゴムブーム(11/7)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2009/11/post_420.html

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「新植民地主義」という命名で、歴史の段階的多様性が思い起こされた。「東インド会社」「帝国主義的植民地主義」「アジアの農民的大家族主義の崩壊」「阿片戦争」「江戸幕府の鎖国主義の瓦解」「明治維新」「第一次、第二次世界大戦」「日本の敗戦」そして現代日本の第三次産業の高度資本主義消費経済下における民主党政治の問題。沖縄の米軍軍事基地をどうするか?

タイでも同様の事象が起こっていますね。最もタイの場合は、外国人、外国企業へ土地を売ることは、政府機関公認の工業団地以外は法律で禁止されていますから、タイ人の配偶者名義で買うというややこしいことになっていますが。
 またタイはある程度経済発展してきていますので、人々による自力の投資と活用も進んできています。
 それに比較すると、カンボジアは一人当たりの国民所得がタイの1/5以下で、食べるだけで精一杯の情況でしょうから、外国資本であれ、投資が行われるのが、歓迎されている面もあるのでしよう。
 フンセン首相は、タイのタクシン元首相を、経済顧問に任命しました。いろいろ思惑はあるのでしょうが、なんとか経済を伸ばしたい、「民の竈に煙を立てたい」ということもあるのではないでしょうか。

今日いきがい大学で講義を受けました。非常に興味深い話で、楽しくなりました。
教室では、メコンの質問をさせていただきました。いつか、ぜひ直接お話を伺う機会が持てればと思いました。
農業には大変強い関心を持っています。危機感も感じています。
佐々木進三

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Profile

大野和興(おおの・かずおき)

-----<経歴>-----

1940年愛媛県生まれ。
農業ジャーナリスト。
四国山地の真只中の村で育ち、農業記者として約40年を日本とアジアの村を歩く。
「日刊ベリタ」現編集長、「脱WTO草の根キャンペーン実行委員会」事務局長、「アジア農民交流センター」世話人、「国際有機農業映画祭」実行委員会代表。

BookMarks

-----<著書>-----


『食大乱の時代』
2008年7月、七つ森書館


『百姓が時代を創る』
2008年2月、七つ森書館(増補版)、共著

『日本の農業を考える』
2004年4月、岩波書店

『百姓は越境する』
1991年8月、社会評論社

→ブック・こもんず←



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