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2011年10月11日

TPPに前のめりの野田政権──肝心のTPP交渉の行方は霧の中

 野田首相は11月にホノルルで開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、TPP(環太平洋経済連携協定)参加を表明したいと前のめりだ。与党民主党の前原政調会長も張り切っている。一方で党内の慎重派は署名活動を展開して、執行部をけん制している。読売新聞や朝日新聞などマスメディアも、TPP推進のキャンペーンを張っている。だが、国内のこうした動きと、交渉をめぐる国際的な動きの間にはかなりの温度差がある。国際的にはTPP交渉の雲行きはなんだか怪しくなっているのだ。TPPをめぐる国内の状況は、メディアの報道を含め、日米同盟に縛られた内向きの議論という気がしてならない。

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2011年9月13日

福島原発事故で百万人が死ぬんだって──世界を駆け巡る報道を検証してみた

 福島第一原発事故で今後100万人が死亡―。そんなセンセーショナルな記事が英紙インディペンデント電子版で8月29日(現地時間)に報道され、複数の韓国メディアがそれを大々的に伝えた。さらに日本でこの報道がインターネットで脱原発の市民運動の間で拡散され、一部で騒ぎになっている。しかし、この報道、どう検証してもおかしい。

 アジアの経済情報を中心に情報を発信しているインターネット情報紙『サーチナ』は9月1日、「3月に発生した東北大震災時に起こった福島原子力発電所の爆発事故による死亡者数が、今後100万人に達すると英紙インディペンデント電子版が29日(現地時間)、報道した。複数の韓国メディアがこの報道に注目し、詳細を伝えている」という前文とともに、インディペンデントの報道を伝えた。

福島原発事故による死者は、今後100万人以上と英紙が報道―韓国(サーチナ・9月1日)

 インディペンデントの記事は「Why the Fukushima disaster is worse than Chernobyl」というタイトルで、相馬市からの特派員電として8月29日電子版に掲載された。

 同紙は現地ルポを混じえながら、福島事故がチェルノブイリより深刻な理由を複数の学者の証言でつづっている。中でも有力な証言が、7月に日本の市民グループの招きだ来日、被災地を回り、講演や記者会見を行ったクリス・バズビー博士の言葉である。次のような表現で書かれている。」

"Chris Busby, a professor at the University of Ulster known for his alarmist views, generated controversy during a Japan visit last month when he said the disaster would result in more than 1 million deaths. "Fukushima is still boiling its radionuclides all over Japan," he said. "Chernobyl went up in one go. So Fukushima is worse."

 ECRR(欧州放射線リスク委員会)の代表者で議長であるクリス・バスビー氏は、「内部被曝の世界1の権威です」と日本の市民運動で紹介されている。福島原発事故すぐ後の3月30日に博士は、事故の影響を計測、次のようなレポートを発表している。

ECRRクリス・バズビー論文「福島の破局的事故の健康影響」(Peace Philosophy Centre・7月23日)
『福島の破局的事故の健康影響 欧州放射線リスク委員会(ERCC)のリスクモデルに基づいた解析第一報 』(英語の原文pdf)

 以下、この論文の「結論と勧告」を抜粋します。
 「1.ECRRリスクモデルにより福島事故の100キロ圏の住民300万人に対する健康影響を検討した。100キロ圏内に1年居住 を続けることにより、今後10年間で10万人、50年間でおよそ20万人がガンを超過発病すると予測された。直ちに避難を行うことでこの数字は大きく減少 するだろう。100キロ圏と200キロ圏の間に居住する700万人から、今後10年間で10万人、50年間で22万人が超過発ガンが発生すると予測された。これらの予測値は、ECRRリスクモデルおよびチェルノブイリ事故後のスウェーデンでの発ガンリスクに関する疫学調査に基づいて算定されたものである」

  博士は来日中、広範囲にわたって放射線量を計測すると当時に、講演会や記者会見を繰り返し行った。その一つ、7月18日に行った講演会で、博士は以下のように述べている。
(岩上安身オフィシャルサイト「2011/07/18 ECRR議長クリス・バズビー博士来日講演会」より)

「さらに100~200キロ圏内を、1μSv/hの平均線量だったと計算する。そうすると、ここでも同じような数字が出る。今後50年で200キロ圏内で合計40万人(通訳さんは22万人と仰ってますが、バズビー博士は、『four hundred thousand 』と仰ってます)の癌発生が増加する。これはあくまで予測だ。我々はこの予測を確認しなければならないだろう。だが我々はこの予測には自信を持っている。」

 福島原発事故によるガンを超過発病数が、3月の論文では200キロ圏内で22万人、来日後40万人に増えている。身近に調べてそれだけ深刻だったということだろうと解釈できる。しかし、いろいろ調べたが、博士が来日中、「100万人が死亡する」と語った記録は出てこない。だがインディペンデントの記事は、確実に「more than 1 million deaths」と述べている。それも癌発生数ではなく「死亡数」なのだ。

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2011年7月29日

「水産特区」反対の動きが広がる 「漁業権と浜の集落は一体」

 村井宮城県知事が提唱し、首相の私的諮問機関である東日本大震災復興構想会議が提言で明記、国の政策に盛り込まれることになった「水産特区」に対し、批判が高まっている。

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2011年7月20日

浜と海は誰のものか──津波と原発の被災地の村と浜から

 菅首相の肝いりで発足した首相の私的諮問機関「東日本大震災復興構想会議」が6月25日、「復興への提言~悲惨のなかの希望~(pdf資料)」を題する答申を首相に提出した。いろいろ修飾語が並べられているが、それらを取り去っていくと、残るのは増税と効率優先の復興路線、という本質が見えてくる。新自由主義的復興とでも言うべき鎧が袖のしたからのぞいて見えるのだ。4月初め以来、原発被災地福島の村々を何度も訪ね、6月初めには法政大学サスティナビリティ研究機構の調査団に同行して、地震と津波の被災地三陸沿岸を北は岩手県宮古市から南は宮城県名取市まで歩いた。

◆日本の食を支えた三陸の浜と海
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岩壁に乗り上げ、めり込んだ船(釜石港)

 宮古、釜石、大船渡、石巻、女川、塩釜...。豊かな北洋を控えて名だたる漁港はどこも壊滅状態だった。防波堤、防潮堤は破壊され、漁船は陸地に打ち上げられている。沿岸に並んでいた水産加工場や魚市場はあとかたもない。岩手、宮城、福島の太平洋岸、いわゆる三陸沖は親潮と黒潮がぶつかる世界でも屈指の漁場である。複雑に入り組むリアス式海岸の入り江ごとに漁港があり、沿岸、沖合、遠洋そしてカキやホタテなどの貝類や、ワカメ、コンブ、ノリなどの養殖が盛んに行われていた。

 3月11日の津波はこれらすべてを飲み込んでしまった。漁船も養殖のいかだも漁港も水産加工場も卸売市場も、全てが消えてしまった。農林水産省の統計から漁獲高の順位をみると、サンマは1位北海道、2位宮城県、3位岩手県。サケ類1位北海道、2位岩手県、3位宮城県。サメ類1位宮城県、2位北海道、3位岩手県。養殖カキ1位広島県、2位宮城県、3位岡山県。養殖ワカメ1位岩手県、2位宮城県、3位徳島県。魚食を中心とするこの列島の食生活は三陸を除いてあり得ないことが分かる。

 被害額は今も正確な数字は把握できていないが、水産庁に報告された5月末までの数字を見ても、陸に打ち上げられてろして被災した漁船が1万8600隻、被害を受けた漁港3県の263漁港のうち258漁港、宮城では水産加工施設の7割が全半壊した。

 陸の施設だけではない。湾には大量のがれきが流出し、漁や養殖の再開を妨げている。日本一を誇った防潮堤がもろくも崩れた岩手県宮古市田老の漁港では、壊れた防潮堤の残骸がそのまま湾内に流入し、海を占拠している。

◆漁業権は「入り会い」の権利なのだ

 6月25日に出された復興構想会議の提言の柱に、かねて宮城県の村井嘉宏知事が提唱していた水産業特区構想が盛り込まれた。漁業権を外部資本に開放し、復興を推進しようという構想だ。宮城県の漁業協同組合は法的手段に訴えても漁業権は守るという立場を貫いているか、「復興のための有力な方法」とマスメディアを含め、この構想を支持する意見も多い。

 しかし、この構想が実際に適用された場合何が起こるかを危惧する漁業関係者は多い。まず起こるのは漁民の浜と海からの排除であろう。宮城県や構想会議の計画では、漁民は参入してくる企業に雇われるから安泰だ、と説明している。だが、漁業は潮の流れ、岩場、産卵場所など地元の海をよく知る手だれの漁師によって支えられてきた。そうした漁師は高齢者である場合が多い。高齢者をわざわざ労働者として雇用する企業があるとは思えない。結局ベテラン漁師から順に浜や海から排除され、働く場所を失った漁師は地域にも住めなくなる事態が起こることが予想される。

 参入してくる外部資本は果たして漁業・水産業をやるのかという疑問もある。世界でもまれなリアス式の風光明美な三陸海岸は、豊かな漁業の地であると同時に観光資本の垂涎の地でもある。これまで漁民は漁業権をたてにして開発を防ぎ、海を守ってきた。その漁業権を資本に開放するということは、海がどのように使われても防ぎようがないということを意味する。三陸の浜は外国資本を含む大観光資本に占拠され、海岸はホテルの占有地となって地元住民は締め出され、海はレジャーボートに遊び場となるという光景が浮かんでくる。

 もっと重大なのは漁業権という権利はいかなるものかが、まったく無視されていることだ。宮城県は構想会議のいう漁業権は、県知事により漁協に与えられる免許、というものとみなされている。しかし、本来漁業権は陸の入会権と同じく、その山や土地、海、川を利用する地域に生きる人々の「総有」の権利である。

 海や山や土地や川は本来誰のものでもない。その地域の資源を地域に生きる農民や漁民が自分たちの共同のものとして闘いとってきた権利なのである。それは生存権そのものといってもよい。

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2011年7月 6日

薪炭の里から"原発"へ──近藤康男『貧しさからの解放』を読み返す

「昭和」で言うと20年代、アジア太平洋戦争でドイツやイタリアと組んで侵略国側を演じた日本が負け、民主化の熱気が社会の各層に残っていた時代、農村でも青年や女性が主役の「農村民主化運動」が広がっていた。主役は「家からの解放」と「貧困からの解放」であった。後者を掲げた歴史的な出版物が2冊、1950年代に刊行された。『山びこ学校』と『貧しさからの解放』。2冊とも、日本の戦後出版史を飾るベストセラーとなった。日本の出版メディアは「農村の貧困」をどう伝えたか、『貧しさからの解放』を読み返した。

 農政学者安達生恒(1918~2000)がまだ愛媛大学の助教授だった時代、宇和島市と中心とする南予の農漁村で青年運動とかかわっていたときの話。当時、愛媛の青年運動はとても活発で、とくに南予の村々では古い家制度や村のしばりを打ち破って、新しい村づくりをやろうといろいろな試みが行われていた。

 安達さんは、そうした農村青年たちの相談役として村歩きを続けていた。その時の空気を、安達は「村の若い衆は左のポケットに毛沢東の『農村調査』、右のポケットに『貧しさからの解放』を忍ばせて村をかけまわっていた」と語っていた。青年たちは、こうした活動を通して自分たちの代表を県議会や国会に送り込む。地域に根ざした若い政治家の誕生である。彼らは初期の社会党(いまの社民党)を支えて活動した。

貧しさからの解放』の初版は、1953年(昭和28年)5月25日に中央公論社から刊行されている。2年後の55年に13版を数えているから、相当の売れ行きだったことがわかる。新書版よりやや幅が広い作りで、本棚にしまうのではなく、学習会などでいつも持ち歩いて使うことをねらったものだと思う。

 一人ではなく34人の共同の仕事である。そもそもは、52年4月に雑誌『中央公論』で掲載した共同研究が大きな反響を呼び、単行本として出版することになった、と編著者として名をだしている近藤康男(1899~2005)が「はしがき」に書いている。この本の正式名称は『共同研究 貧しさからの解放』である。

 106歳で大往生した昭和を代表する大農政学者の近藤は、このとき52歳、脂の乗り切った少壮学者だった。34人の共同研究者には、彼に連なる若手マルクス主義農業経済の研究者や農村社会学者、ジャーナリストが並んでいる。

 改めて読み返して、底に流れる熱い思いに圧倒される。「はしがき」で近藤は、日本のあらゆる矛盾、労働者の貧困などの背後には、「農民や漁民の貧困」が「横たわっている」と書いている。そして、「農村や漁村を貧しさから解放」するために、「貧しさを貧しさとして描き出すにとどめることなく、それが再生産されている経済的からくりから、意識や観念や宗教というような上部構造まで、できるだけ具体的に吟味した」と。

 本文は3部にわかれている。第1部は「農村」。「プロレタリアの貯水池農村」というタイトルがつけられ、当時大きな社会問題だった農村の二三男問題(失業問題)から始まり、低農産物価格とそれに連動する都市労働者の低賃金、不徹底な農地解放、供出などの収奪機構などが述べられる。第2部は「漁村」。「われは海の子」というタイトルがつけられている。ここでは遠洋にでる漁業労働者、沿岸の小漁民がおかれた構造がくわしく述べられる。第3部は「山村と林業」。タイトルは「山にあがる狼火」。メインテーマは、農地と違い解放がなかった山林を支配する地主と零細な山村農民との葛藤。伐採労働、炭焼き、薪だしなど、すべてが山林地主に牛耳られていると説く。

 時代の制約を考えなければ、本書の記述には、いくつもの批判がある。たとえば農地改革の不徹底という認識や山林地主の存在などについて、少し評価が過大すぎるのではないか、といったことだ。だが、経済が成長の軌跡に乗る以前の絶対的貧困ともいえる時代の農山漁村の現実と、その背景を描き、「貧しさからの解放」に方向をそれなりに示した本書は、成長の果ての貧困の時代に入ったいま、改めて読み継がれるべきものだろう。

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2011年6月29日

詩人の直感力と想像力が描き出す予言の書 ── 若松丈太郎著『福島原発難民 南相馬市・一詩人の警告』

 暴走を続ける福島第一原発に隣接する福島県南相馬市に一人の詩人がいる。若松丈太郎さん、76歳。海岸から4キロ、原発から25キロの地点に住む若松さんは、自らを原発難民と呼ぶ。長く高校教師を勤めてきた若松さんは、原子力発電所近傍に住む詩人として、自身の思いを詩やエッセイにして折にふれ発表してきた。本書は原発事故があった2ヵ月後の5月10日、それら原発にまつわる作品をまとめて上梓したものだ。一読して、詩人の直感力と想像力に驚嘆した。1971年、第一原発の建設が始まった段階で、詩人はこう記している。

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2011年6月 3日

市民メディアに何ができるか 福島原発情報共同デスクを立ち上げる

 福島原発暴走で何が出来るか市民団体で緊急会議をもつからと声をかけられ出かけたのは、確か3月28日であった。おりからこの問題についての政府の大本営発表への不信が高まっていた。政府が信用できないのだから、事故を起こした当事者である東電なぞもっと信用できないし、その政府・東電の発表をこだまのように増幅させる新聞、テレビなどマスメディアもまた信用できないものの対象に入っていた。この「信用できない」という気持ちのなかには、「自分たちは情報を操作されているのではないか」という疑問が含まれていた。緊急会議でも同様の意見が出された。

 そうしたマスメディア状況の一方で、インターネットの時代を反映して市民というか民衆というか、ただの人やら専門家、何か言いたい人やらが自ら発信したり、あるいは市民メディアとして組織的に発信する動きがここ何年かで急速に進んでいる現実もあった。グループや個人による、文章、映像、音声で発信されるさまざまの情報は、政府・東電の発表のぎまんを鋭くつき、マスメディアの怠慢を批判する内容であふれていた。
 同時にその内容には混交玉石、個々ばらばらの感があった。社会への影響力という面でも、マスメディアの圧倒的力には敵わないということ現実も存在した。そこで、いま具体的にやれることのひとつとして、こうした市民情報の共同デスクを立ち上げ、既成メディアへの対抗力をつくらないか、と提案した。「福島原発情報共同デスク」と名付けられたこの仕組みは、すでにサイトも立ち上がり、動き出している。

 共同デスクを提案するに当たっては、2008年のG8洞爺湖サミットで形が出来た市民メディア運動を、この際さらに大きな動きにできないかという思いもあった。その意味では、共同デスクの立ち上げは、課題である福島原発問題にとどまらず市民運動のこれからの動きにとっても、それなりの意味を持っていると考えている。

 とは思うものの、このごろ「市民による情報とはどういうものか」で考え込むことも多い。50年近く、メディアの周縁部でうろうろと記者をして生きてきた。70歳を過ぎるとそのメディアからもあまり相手にされず、このごろはもっぱらただ原稿を書いて発表の場を得ている状況なのだが、それでも自分で見聞きしたこと、確認したこと以外は書けないという50年叩き込まれた習性を捨てることが出来ずにいる。

 だが、とも思う。この「確認をとる」という、これまでごうも疑わなかった作業自体が権力なのではないか。既成メディアの権力の源泉はそこにあるのではないかというふうに言い方を変えてもよい。

 ネットにはデマやうわさ話が満開である。「だからネットは」いう人も多いが、実は、だからこそ体制はネットを恐れるのではないか。共同デスク立ち上げの議論のなかで、なんでも発信したらよいものでもない、ある程度の検証は必要ではないか、という話がでて、そうだなということになった。ぼくも実はそういう話をした。
 いま体制は震災に絡むデマ退治という名目でネット言論の規制に入っている。共同デスクの意味をこの観点から改めて検証、論議すべきなのだろうなと、いま思っているところだ。

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2011年5月18日

TPP参加へとまい進する「新自由主義的震災復興」のシナリオとどう対抗するか

 案の定出てきたな、というのが率直な感想だ。日本経団連が4月18日、日本の通商戦略に関する提言を発表した、その内容についての感想だ。提言は、大震災後、論議が停滞しているTPP(環太平洋経済連携協定)について、「早期参加は依然重要な政策課題」とそたうえで、「震災後の経済復興に向けたグローバルな事業展開、円滑なサプライチェーンの構築に不可欠」と主張。参加しなければ「国内生産拠点がTPP参加国に移転してしまう」と、脅しとも見える言及をしている。

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2011年5月 7日

消された村

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村と家族とコメを話す

 40年間、コメを作ってきた。借地10ヘクタールをいれ、12ヘクタールの稲作を手がけていた。安全なコメ作りをめざし、農薬,化学肥料は控える環境保全型農業を追求してきた。営々と土を作ってきた田んぼに、もうはいれない。まだ1000万円の借金が残る農機も流された。残ったのは、その日乗っていた軽トラだけ。これが全財産だ。

 はじめて会ったとき,志賀一郎さんは無精髭をなぜながら、以前ならこんなことはなかった、きれいに剃っていたんですが、と照れたようにいった。「以前」というのは2011年3月11日のことだ。東日本大震災が東北・北関東を襲い、福島第一原発が連続爆発を起こして、暴走をはじめた。

 この日、志賀さんはすべてを失った。妻、孫、自宅、田畑、そして63年間生きてきた故郷、双葉町。お孫さんは昨年11月に生まれたばかり、遅い初孫だった。携帯電話に写真が残っている。見せてくれた。まるまるとした赤ん坊が笑ってこちらを向いている。涙が溢れ出して話が聞けない。我ながら記者失格だなと思った。

 地震があった3月11日は志賀さんはイベントに野菜を運ぶために出かける途中だった。そこへ地震、引き返したが家は消えていた。息子夫婦も駆けつけ、探したが見つからない。そして原発爆発、退避指示。またすぐ探しに戻ってこれるつもりでそこを離れた。志賀さん自宅は海岸から500メートル、第一原発から3・5キロだった。

 軽トラにいつも乗せていたものがある。一昨年、大阪であったコメの食味品評会でもらった金賞の表彰状のコピー。大事そうに取り出して見せてくれた。40年の手だれコメ作り百姓の唯一の存在証明。志賀さんにはこれしかない。

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2011年2月 1日

TPP ニュージーランドでも市民、学者、労働組合が反対に立ち上がり、ネットでも訴え

 政府や経済界の主張、主要メディアの報道などをみていると、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に参加している九カ国では、国内に何の矛盾もなく貿易と投資の完全開放を目指すTPP参加を追求しているかに見える。だが、政府がTPPに積極的といわれるニュージーランドでも、有力政党の緑の党、学者、労働組合、市民グループなどが反対に立ちあがっており、その運動をネットで結び、情報を流しあり政府に反対の手紙を送るウェブサイト「TPP WATCH」が活躍している。

 ウェブサイト「TPP WATCH」はTPPについて次のようにいっている。

「この協定は単に貿易についてだけではない。外国人投資家の特権的権利を保障するものでもある。それは、わが国政府が次の世紀に向け採用する政策や法律制度を左右し、参加9カ国を貫徹する巨大な条約である。その中には遺伝子組み換え食品の表示、外国投資法、薬価、ぺテンがかった金融会社の公認といったことが含まれる」

 そしてTPP参加による影響の一部として、次のようなことをあげてる。
「土地やさまざまの資源が外国資本に移転される。その中には鉱業採掘権、メディア法、ローカルコンテンツのためのサポート、居住権、金融投機のコントロール、医薬品価格、食品表示の義務化、タバコの包装、水や刑務所、学校、病院など公的施設の民営化等々が含まれる」

 いずれにしろ、これまで公のものとして国の法律や制度で守られてきたものが、すべて民間に移され、外国資本に牛耳られるようになると警告しているのである。そして、進出してくる企業として、映画などエンターテイメントではワーナーズやソニー、タバコでフィリップモリス、小売業でウォルマート、金融でメルリンチやAIG,JPモルガン、アグリビジネスでカーギルヤモンサントな等々巨大多国籍資本の名前を挙げている。

 また、アメリカの狙いとして、第一に遺伝子組み換え食品の販売や生産、表示に関する制限の解除をあげているのが興味深い。

 同サイトには、識者や政治家へのインタビューの映像もある。TPP反対で論陣を張っている著名な学者であるニュージーランド・オークランド大学のジェーン・ケルシーさん、緑の党の共同代表のRussel Normanさんらが映像を通して話しかけている。

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Profile

大野和興(おおの・かずおき)

-----<経歴>-----

1940年愛媛県生まれ。
農業ジャーナリスト。
四国山地の真只中の村で育ち、農業記者として約40年を日本とアジアの村を歩く。
「日刊ベリタ」現編集長、「脱WTO草の根キャンペーン実行委員会」事務局長、「アジア農民交流センター」世話人、「国際有機農業映画祭」実行委員会代表。

BookMarks

-----<著書>-----


『食大乱の時代』
2008年7月、七つ森書館


『百姓が時代を創る』
2008年2月、七つ森書館(増補版)、共著

『日本の農業を考える』
2004年4月、岩波書店

『百姓は越境する』
1991年8月、社会評論社

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