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日誌 アーカイブ

2009年9月28日

鳩山「核廃絶演説」を聞いて

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ガラガラの国連メディア・センター(25日)

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核不拡散の安保理首脳級会合に出席していたキッシンジャー氏(24日)

 国連総会会期中は、NY市内の交通がマヒ状態になる。これは年中行事みたいなもんだ。理由は警備当局が国連本部に至る主要道路を各所でブロックし、また大変な数の国連代表団の車両を信号をとめて最優先に通すからである。僕は自分がかつて勤務していたソ連の末期やロシアの初期の交通事情を思い出す。クレムリンへの(からの)大統領の車列が通る時には、すべての交通が遮断され、その車列が一度もストップすることなく目的地点に導かれるのである。乗っていたのはゴルバチョフ、エリツィンだった。それと似たような現象が民主主義国家のNYで起きるのだ。やれやれ。今日現在(9月28日)、国連総会まだ続行中なのだが、NY市内は交通マヒもほぼ消えてなくなり、通常通りの交通の流れになっている。なぜならば、G20の金融サミットがピッツバーグで開催された24日の午後には、国連の先進主要国の面々は一斉にNYからピッツバーグへと移動してしまったからだ。同行記者団も同様。25日以降も国連総会の演説はちゃんと続いているのだが、メディアセンターにも議場にも人影が激減し、すーっと熱気が引いていったような状態になった。ちなみに僕は25日の午前中に国連総会をのぞいてみたが、演説国はこんなありさまだった。グアテマラ、パキスタン、中央アフリカ、ぺラウ、エストニア、ナウル、ブルキナファッソ、レバノン、トーゴ、ソマリア、マケドニア、キリバチ、ジンバブエ、パレスチナ、バーレーン、Antigua and Barbuda。正直に言って聞いたこともない国から代表が来て演説をしている。日本のメディアは28日最終日の午後の北朝鮮に一点集中で注目しているくらいで、あとは放置される。国連の取材はだいたいそんなものなのだ。

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2009年9月24日

反イラン・デモと鳩山首相の距離

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Japan Society前の反イラン・デモ

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デモでの死者を演じるパフォーマンス

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国連総会(一般討論演説)のオバマ

「国連にアメリカがやっと戻ってきた」。ここまで変わるものか、と思うほど国連総会でのアメリカの関与政策への方向転換は明らかだった。23日の国連総会でのオバマ大統領の一般討論演説を聴いての率直な感想だ。

僕はブッシュ時代のうんざりする国連総会での取材を思い出して、単独行動主義(unilateralism)というキーワードが飛び交っていた時代のことを思い出していた。イラク戦争に突き進んだあの政権は致命的な過ちを国連の場でも犯した。コリン・パウエルは悔やんでも悔やみきれないだろう。イラクが大量破壊兵器を保持している疑いが強いと国連で熱弁をふるったのだから。

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2009年9月23日

鳩山首相の外交デビュー、プレスセンターでの感想

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国連本部内のメディア・センター

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国連本部のそばで抗議するタミール人支援運動の人々

国連総会の時には、国連本部地下1階に大きなプレスセンターができる。そこにいろんな国からやってきた記者たちが集まって「メディア・サーカス」を演じる。

鳩山首相がせっかく国連で演説をするというので、大学には行かずに朝からプレスセンターにいた。僕の前には、ラジオ・ウガンダの人がおり、となり横には、BBCアラブの女性記者、反対隣りには、ラジオ・イスラエルの男の記者たちがいた。

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2009年9月21日

誰が核密約文書の破棄を命じたのか?

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沖縄への核兵器配備を記した米国防総省文書

 このところ米公文書館や議会図書館などに収蔵されている資料を読む機会があって、つくづく考えさせられるのは、「公文書は国民の財産である」というアメリカの確固とした理念と、記録をきちんと残すことによって「歴史の審判を仰ぐ」という公職に就く人間たちの職業倫理の潔さについてである。もちろん現在に至るまで所々が黒く消されて肝心かなめの箇所が隠されているという不満があることはあるのだが、一定の年数が経過すれば順次公開していくシステムが確立しているアメリカのありようは、日本の随分先を行っていることは確かだ。オバマ政権になり、前のブッシュ政権下での秘密主義の傾向が改められる傾向が出てきていることにも大いに勇気づけられる。

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2009年8月29日

ケネディ去りて、ハトヤマ来たる

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エドワード・ケネディ(公式HPより)

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NYタイムズ紙の日本の選挙報道

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同じ(鳩山党首の顔写真が掲載されている)

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カナダ・モントリオールの新聞にも


 エドワード・ケネデイ上院議員の死去(8月25日)は、アメリカのメディアでは格別に大きな扱いで今も報じられ続けている。王室や天皇家のないアメリカ社会のなかで、ブルーブラッド(高貴な血筋)の家系のひとつとして、ケネディ家は屹立している感がある。だから栄光と悲劇に彩られたケネディ家の歴史は、アメリカという国の歴史のさまざまな起伏を代弁しているかのような捉えられ方をしてきたのだ。兄のJ・F・ケネディ大統領は暗殺され、同じくもうひとりの兄のロバート・ケネディ元司法長官も大統領選挙運動中に暗殺された。エドワード・ケネディ自身も大統領をめざしたが、彼の運命を変えたのは、1969年、自らの運転で自動車事故を起こして、現場を立ち去ったことから通報が遅れ、同乗していた女性秘書を死亡させたことだった。この事故で彼の政治生命は致命的な打撃をこうむったと言われている。その後、彼は政治的な活動を地道に続けて復権を遂げ、80年の大統領選では大統領選挙に挑んだが、ジミー・カーターと民主党の候補者指名を争って敗れた。民主党リベラルの重鎮であり、オバマ政権の誕生の立役者である。彼がいち早く、ヒラリーではなく、オバマ支持を公表したことで大きな流れができた。彼の死去が今後のオバマ政権の行方に何らかの影響を与えるのではないか。これから注視すべき点だ。ボストン市内の葬儀会場には多くの市民が弔問に訪れている。

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2009年8月13日

2009年8月。異国から見えた日本の風景。

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 オバマ大統領が今年の4月にプラハで行った核廃絶演説に、本来ならば最も大きな反応が巻き起こっているはずの日本で、広島・長崎に原爆が投下された8月という月が、特別の意味合いをもっているだろうなどという甘い考えは、この際、放棄せざるを得ないのではないか。なぜならば、僕らの国のメディアは、酒井法子の逃亡・逮捕に「発情」し、押尾学の事件に「憤慨」し、だから芸能界の薬物汚染をもっときびしく取り締まらなければならないのだという「世論」を形成し、それに即応したかのようにネットを中心に反応が拡大し、さらにそれに負けじ、とテレビ・週刊誌・夕刊紙・新聞が再呼応している風景がはるか遠くにみえるからだ。見えてどうする。視聴率が跳ね上がり、夕刊紙・週刊誌が売れて、それで何が悪いのだ、と凄まれるのが関の山だ。

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2009年8月10日

オバマ・ヘイターたちの蠢動

 どうしてもオバマを好きになれない人々がいる。むしろ憎んでいる人々と言った方がいい。宗教右派やfar right(極右)、さらにはブッシュ政権を強烈に支持していた共和党支持者のコアな部分。オバマ・ヘイター(Obama Hater)たちの動きがこのところ活発化している。それがとても気になる。オバマが今年の内政問題の最重要課題と位置付けている医療保険制度改革が座礁しかかっている。今月中の関連法案の議会通過は不可能になり、年内の進展も果たしてどこまで行けるのか。この医療保険制度ほど、アメリカ社会の病根を象徴的に示している分野はない。それほど製薬会社や医療関連機器、保険業界、医師団体らの利害が強固に絡み合っている分野だ。国民の4700万人が無保険というひどい状態も、この国では弱者の嘆き程度にしか考えられていない。「医療の商業化」が行き着いた果ての姿が今のアメリカにある。オバマのめざしてるのは、実質的な国民皆保険制度の創設だが、この動きを「社会主義化」などと攻撃するあれらの人々がいる。医療保険制度改革をめぐって全米各地で開催されているタウンホールミーティングが荒れに荒れている。理由は先に記したオバマ・ヘイターたちが組織動員をかけて、議事を混乱させる「直接行動」の戦術をとっているからだ。これらの草の根右翼が作成した「タウンホール・ミーティングを混乱に陥れるマニュアル」なるものがある。下に掲げてあるのが、流出したそのメモの一部だが、内容を読むと、あきれ果てる。

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2009年8月 5日

クリントン電撃訪朝のインパクト

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↑ ニューヨーク・タイムズも1面トップの扱い(筆者撮影)
2ショット写真の拡大版はコチラ


 こういうことが実際に起きてみると、「実行力」という言葉のもつ意味が実感をともなって迫ってくるようだ。クリントン元大統領の北朝鮮への電撃訪問は、いま現在、この文章を書いている時点では、①クリントン元大統領とキム・ジョンイル総書記とのあいだで会談が行われたこと②拘束されている2人の女性記者に対して「特別恩赦」が実施されて身柄の解放が実現したこと③クリントン氏はピョンヤンをすでに離れたこと④クリントンの乗った機内に2人の女性記者が同乗していて、ロサンゼルスで家族との再会を果たすであろうこと。まずは困難な問題のひとつが終息に向かっていることだけは確実であろう。
 
 クリントン氏は、キム・ジョンイルがこれまでに会った人物のなかで最もハイランクにある人物であることは間違いない。第一次の朝鮮半島核危機の前にオルブライト国務長官をピョンヤンに派遣した際の米国大統領であり、キム・ジョンイル総書記が最も会いたがっていた人物とも言われている。2人の女性記者の問題解決には、これまでもこのテレビ記者たちの所属するカレントTVのオーナーであるアル・ゴア元副大統領やリチャードソン・ニューメキシコ州知事らの名前が交渉役として取りざたされていた。だがクリントン氏の登場で事態が一気に加速した。

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2009年8月 3日

核兵器なき世界への想像力

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オバマ大統領が学生時代に学内誌に寄稿した記事

 あっという間に8月を迎えてしまった。おそらく日本のメディアは総選挙一色なのだろう。マイケル・ジャクソンの死去以降、このブログの更新が滞ってしまったが、その間、NYからみていてもアメリカでは実に多様な動きがあった。オバマ・ヘイターたちの蠢動(中絶医の暗殺、ホロコースト記念博物館襲撃、オバマの「出自」騒動など)や、人種問題の台頭(ゲーツ教授の逮捕騒動など)、医療制度改革をめぐるオバマの苦闘、ウィグル問題をめぐる中国へのアメリカ政府の腰の引け方、伝説的なアンカーマン、ウォルター・クロンカイトの死去、イランのTwitter Revolution、ホンデュラスの政変などなど、書き出したらキリがないほど、いろいろな動きがあった。じっくりと見ておこう。
  
 今は、日米関係の戦後史資料(米公文書館のものなど)を読んでいる。実に面白い。特に、アメリカ政府の核兵器政策に関する文書は、日本の姿をいろいろな意味であぶり出してくる迫力がある。そのようなささやかな自分の作業を加速したひとつのきっかけは、オバマ大統領のプラハ演説なのだが、以下は、ずいぶん前に「沖縄タイムス」紙での連載によせたものだ。同紙の了解のもとにこのブログにも転載することにした。

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2009年6月27日

マイケル・ジャクソンの急死

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 「King of Pop」(ポップの帝王)と言われたマイケル・ジャクソンが急死した。まだ50歳だった。テレビもラジオも、ニューヨークでは25日の夕方以降は、ほとんどこのニュースで埋め尽くされた感がある。自宅に届いたニューヨークタイムズももちろん1面トップでこのニュースを報じている。アメリカのポップカルチュアにおいては、それだけ巨大な存在だったのだろう。その報じられ方も、生前の功績を称える一方で、私生活面では多くの問題を抱えて苦しんでいたことがきちんと伝えられている。ジャクソン・ファイブ時代から、彼の歌を聴いてきたことを考えると、ああ、走り続けていた人がまた一人逝ったのだな、という感慨にとらわれたことも確かだ。

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2009年6月23日

テヘランの天安門

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被弾したイランの若き女性Nedaの周りに集まる人々

 今、イランで進行中のことがらは、1979年のいわゆる「イラン革命」に匹敵するか、もしくはそれ以上の衝撃を世界に与え得る劇的な事態だろう。すぐさま現在のアハマディネジャド政権が崩壊に至るというストーリーにはならないにしても、現政権に対する不満がここまでイラン市民によって公然と意志表示された意味合いは途轍もなく大きい。つまり、今起きている事態は、より壮大な帰結に向けてのプレリュードとみてよいのではないか。日本の新聞やテレビの扱いがどのようなものなのか知らないが(どうせガイコクのことだろ! という反応になっていないように祈るが)、少なくとも、アメリカのテレビや新聞は、連日、かなりのエネルギーを割いてトップ級でこのイラン危機を報じ続けている。特に、こちらの主流メディアの多くは、今回の民衆による街頭直接行動が、新しい情報ツール、つまり、携帯電話の「トゥイッター(Twitter)」(140字程度の簡易メッセージ伝達システム。Tweet=鳥のさえずり、から派生した新語)や、携帯電話のカメラ、YouTubeなどによって、実に見事に組織され、さらに世界に発信されることで、情報統制の壁が次々に市民たちによっていわばゲリラ的に打破されていることを、非常に肯定的に評価している。いくつかのメディアでは「Twitter Revolution」などという言葉が登場している。

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2009年5月21日

オバマ政権・駐日大使人事から読み取れる「冷徹」

 本欄17日付けの駐中国大使人事の記事末尾で予告したように、20日になってからオバマ政権が、弁護士のジョン・ルース氏(54)を次期駐日大使に指名するとの情報が入ってきた。ルースという人物の名を聞いて、すぐにピンと来た人はオバマの大統領選挙に深く通暁していた人だろう。僕は知らなかった。恥ずかしい。ただ、ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授の指名を既定事実として報じることには抵抗感があった。知日派の人物から警告も受けていたからだ。「いくら何でもあのタイミングでのナイ報道はprematureだ」と。ジョン・ルース氏はオバマ選挙キャンペーンの大口寄付者の一人だ。本人はシリコンバレーをベースにしたIT企業のM&Aなどを手がける辣腕弁護士ということで、1980年にスタンフォード大ロースクールを卒業して、弁護士を開業。全米で最も有能な弁護士リストに2007年から3年続けて掲載されている。近い将来には中国、インド、イスラエルに事務所を拡張したいと豊富を語っていたそうだ。日本との接点をいくら探してもみつからない。本人に聞くしかないだろう。ただ彼がCEOをつとめるWilson Sonsini Goodrich & Rosatiのホームページには中国語版がちゃんとある。明らかに、これまでの駐日大使任命の系譜とは異なるようにみえる。敢えて言えば、シーファー前大使に近いとも言えるけれども、シーファー氏はオーストラリア大使を歴任している。全くの外交経験なしの人物の大使起用はいかにも大胆である。同じ年齢だが、駐中国大使のハンツマン氏(現ユタ州知事)のほうは中国との縁が深いし行政経験がある。この中国と日本とのコントラスト。

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2009年5月17日

オバマ政権・駐中国大使指名の巧みさ

 指名が遅れていたアメリカの駐中国大使に、共和党知事のホープ、現ユタ州知事のジョン・ハンツマン(49)が指名されることになった。オバマ大統領が16日の午前になって発表した。ハンツマンは先の大統領選挙ではマケイン候補支持で精力的に動き回り、2012年の共和党大統領候補にも名前が挙がっていたほどの人物だ。中国語に堪能で、オバマ大統領とともに会見場に姿をあらわしたハンツマンは挨拶を中国語でしめくくっていた。この指名についてオバマ大統領は、米中関係の「特異な重要性を熟慮した」結果と述べた。意表をついた人選である。オバマの巧みな人事戦略をみせつけられたような気がする。21世紀の地球規模の課題は、これからはアメリカと中国という「G2」が協力していかなければならないのだという覚悟が伝わってくるようだ。
 
 ハンツマンは、環境問題への取り組みや同性婚への理解も示している共和党内穏健派。経歴も変わっていて、化学工業大手のハンツマン創業家の御曹司だが、高校を中退してロックバンドを結成して演奏を続けていたり、モルモン教の布教で台湾に住んでいたこともある。夫人とのあいだに7人の子供がいるが、そのうちの一人が中国からの養女である。中国の文化への理解も深い。

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2009年5月 3日

速報:忌野清志郎さん、ありがとう

ニューヨーク時間の2日の朝、東京から一本の電話が入った。忌野清志郎さんのマネージャーの相澤さんからだった。「今日ね、清志郎がこの世からね、いなくなった」。絶句した。ガンと戦い続けて、ステージにも立ち続けた。最後の最後までロッカー、シンガーだった。かっこよかった! 忌野清志郎さん、たくさんの勇気を、ありがとうございました。同じガン闘病「仲間」の筑紫さんと、あちらで再会ですね。

2009年4月19日

NYタイムズ『劇画漂流』激賞の悦ばしさ

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『劇画漂流』を激賞したNYタイムズ紙記事

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プランゲ文庫所蔵の手塚治虫「Metropolis」など(筆者撮影)

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手塚の初期作品「ジャングル魔境」(筆者撮影)

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手塚初期作品のキャラクター(筆者撮影)

 このところ、日本からこちら(アメリカ)に伝わってくるニュースにはあまりいいものがない。特に政治や経済の分野でのニュースは、軒並み脱力感を抱かせるものが多いのだが、4月15日づけのニューヨークタイムズのART欄には驚かされた。

 日本の知る人ぞ知る劇画の生みの親、辰巳ヨシヒロの『劇画漂流』がとても大きな記事になって激賞されていた(Dwight Garner「Manifesto of a Comic-Book Rebel」《=漫画界の反逆児のマニフェスト》)。カナダの出版社(Drawn & Quarterly Publications)が辰巳の作品群に注目して、すでに英語版が出版されているのだが、この『劇画漂流』も『A Drifting Life』というタイトルで855ページという大部の一巻本になって出版された(オリジナルの青林工藝舎版は上・下の2巻本)。この『劇画漂流』は、僕自身も出版元の東京の青林工藝舎から送ってもらって読んだばかりだったので、なおさら嬉しさが募った。

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2009年3月30日

[速報]オバマの本気度。GMのCEOを辞任させる。

 アメリカ東部時間の日曜夜に大きなニュースが飛び込んできた。GM=ジェネラル・モーターズのリック・ワゴナー会長兼CEOが辞任するという。しかもオバマ政権が、経営難に追い込まれているビッグ3(自動車産業。実際はGMとクライスラーの2社に対して)への追加支援実施の条件として退陣を促したのを本人が了承したという。この絶妙なタイミング。あした30日の午前中に政府の追加支援策の内容が発表されるという矢先の政府高官からのリークである。オバマは本気である。政府の民間経営へのこれ以上ないほどの介入だ。第一報は今、評判がガタ落ちのCNBCが報じた。その後、ウォールストリート・ジャーナルやNYタイムズなどが続々「裏をとった」として後追いした。

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2009年3月20日

悪いのはAIGボーナスだけか?

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AIGのヘッドクォーターのビル(睥睨するような威容)

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テレビでおなじみのAIG本店

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カメラを直角に見上げないと写せない

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ヘッドクォーターには立ち入れない

 AIGボーナス問題でオバマが大見えを切れたのは、結局は、世論の怒りをバックにして、AIGに対していわば「恥を知れ!」と断じたことなのだろうが、近年のこの国の経済発展は、そもそも恥を知らないところから生まれてきたのではなかったのか? 

 きのう、春めいてきた天気に誘われて、ウォールストリート近くのAIGヘッドクォーターや本店があるビルまで散歩した。AIGと言っても、オバマ政権から再建役として(報酬1ドルで!)送り込まれたCEOのエドワード・リディ以外に、顔が見えないから、テレビや新聞でみるAIGのイメージは、AIGのサインがみえるガラス張りのビルディングでしかない。このビルも商業地区の一等地に堂々と構えているが、その目と鼻の先にヘッドクォーターが入った馬鹿でかい高層ビル(通称アメリカン・インターナショナル)が聳え立っている。どちらのビルにもこのところ見物人やメディアの撮影部隊が来ている。特に、ヘッドクォーターの入ったビルは、頭を直角にして見上げてみないと全体がわからないくらい、その睥睨感、威圧感は圧倒的だ。つまり、「困っている」「破綻しかかっている」などというイメージは微塵も沸かない建物なのである。何と、18日になって、このヘッドクォーターのビルディングをAIGが売りに出すとの情報が入ってきた。なぜ、公的資金注入の前に、ビル売却が進められなかったのだろうか。(日本の東京にも皇居を見下ろす一等地にAIGビルディングがあるけれど、その所有権はどうなっているのだろうか。日本の現在の不況のもとでは、大手の不動産会社も買えないような金額がついているらしいのだが。)

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2009年3月18日

AIGはPIGだという見出し

 朝方、Deliに立ち寄って、新聞スタンドをみたら、New York Daily Newsが大見出しで、「AIG is a PIG」(AIGは豚野郎だ)とデカデカと報じていた。キャピタリズムの総本山みたいなこの国で、公的資金(=国民の税金)を導入して一私企業を救済するという矛盾を棚上げしたとしても、その企業が尋常ならざるボーナスを受け取って恥じないとなると、それを知らされた国民のフラストレーションはとどまる所をしらない。もはや暴発状態になりつつある。このままだと、AIGは本当の意味での「存亡の危機」を迎えるだろう。規模は比較にならないけれども、かつての日本の長銀や山一と同じようになくなってしまうのではないか。17日、こちら時間の午後になって、ニューヨーク州のクオモ司法長官は、このAIGのボーナス支給の詳細を公表した。その内容がアメリカ国民の怒りの炎にさらに油を注ぐだろうことは容易に想像できる。それによれば、

▼73人が100万ドル(約9854万円)以上のボーナスを受け取っていた。
▼ボーナスの最高額は一人640万ドル(約6億3千万円)だった。
▼上位7人のボーナスは、400万ドル(約3億9400万円)以上だった。
▼上位10人だけのボーナス合計額は4200万ドル(約41億3800万円)にのぼる。
▼22人が200万ドル(約1億9700万円)以上のボーナスを受け取っていた。

 根本的な疑問は、何でこんな会社を救済しなきゃならないのか、ということだろう。オバマ政権は本気だ。

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2009年3月17日

AIGボーナス問題で世論に怒りの火がついた

 破綻再建中のAIG=アメリカン・インターナショナル・グループの幹部らに、巨額のボーナスが支払われた上に、さらに支払われようとしている問題で、ローレンス・サマーズ国家経済会議委員長が、言語道断(outrageous)と非難したのに続いて、16日になって、とうとうオバマ大統領自身が、ガイトナー財務長官に、1億6500万ドルの追加ボーナス支給を何とかやめさせるため、あらゆる法的措置を講ずる可能性を検討するように指示した。「現下の状況で、AIGのデリバティブ取引に関わった者たちが、いかなる理由でボーナスを受け取るに値するのか、理解に苦しむ。しかも特別の手当として1億6500万ドルもだ。彼らは、会社を生き延びさせようとしている納税者に対して、こんな言語道断のやり口を正当化できると思っているのか?」と、実に厳しい語り口で批判した。かねてから自分はウォールストリートを擁護する人間ではなく、メインストリート(大通りの一般の人々)を擁護する人間だと明言してきたオバマならではの発言だが。

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2009年3月16日

あきれて、ものも言えない。破綻AIGが巨額ボーナス支給。

THE JOURNALは随分と留守にしていた。一か月以上何も書かなかった。この間、アメリカでも日本でも相当にひどいことが起きていたが、何も書く気がしなかった。正確に言えば、書くことが何だか空しくなってしまったのだ。ひとつは、このTHE JOURNALも含めてだが、日本のメディアやジャーナリズムの水準がひどく劣化しているのを目の当たりにして、辟易したということがある。中川「もうろう」会見をめぐる絶望的な経緯は、僕らの国の政治、そしてそれ以上にメディアのあられもない姿を世界に露呈した出来事だ。また、これが東京地検特捜部かと見紛うばかりの、検察の歴史に●●を残すような●●●●●の●●をみるにつけ、それに異議を唱えようともしない日本のメディアのありように絶望的な思いを抱きながらも、●●●●の遺志を継ぐ●●や●●のことを考えながら●●●●●●●●●●●。大昔、僕も地検まわりの記者をしていたことがあった。安原美穂、伊藤栄樹や吉永佑介、堀田力、北島敬介といった人々が検察庁にいた時代である。秋霜烈日という言葉がまだ生きていた時代だ。「検察なんてつねに体制、権力の犬だったじゃねえか」と凄むような人たちがいることも僕は知っている。だが、「権力の犬」の方が、「犬の権力」よりはまだマシかもしれない。日本全体が犬のような存在になって、その権力そのものと一体化した司直がお犬様のために動く。それが妄想であれば、どれだけいいことだろうか。

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2009年2月11日

変わる、変わるよ、ホワイトハウス

 ハネムーン期間の100日と言われる時間の5分の1が過ぎたが、オバマ新大統領の実行力はやはりかなりのものだと思う。ニューヨークからみているだけでは細部まではわからないけれども、おそらく日常的に取材しているホワイトハウス詰め記者たちも、おちおち休みもとれないピッチで物事が進捗しているのではないだろうか。そこで何が変わっているのか、変わりつつあるのか。ここでは手法=スタイルという面だけに焦点をあてて、その変化のありようを確認しておこう。

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2009年1月24日

アメリカ新時代の幕開け

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就任式当日は、寒さと空腹で屋台が大繁盛(20日)

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早朝から人が沸くように押し寄せた。(20日)

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とにかく、寒かったなあ。(20日)

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大画面にオバマが映るだけで大歓声が(20日)

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市民派パーティー。ジョーン・バエズが『イマジン』を歌った。(20日)

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同パーティーにはエイミー・グッドマンもいたよ。(20日)

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ホワイトハウス前にはグアンタナモ閉鎖を訴える人々が(22日)

(いずれも筆者撮影)

 今、この時点で何を言うべきなのか。「新しい責任の時代」という見出しが21日付の日本の新聞で踊っていたようだが、寒空の下、モールに集った200万分の1としてオバマの就任演説を聞いていた限りでは(寒かった!)、ちょっとニュアンスが違っていて、「再生・再建」(Remaking of America)とか「新時代」(New era)という言葉が頭の中に残った。美辞麗句を連ねることよりも、オバマはこの厳しい現実を直視する道を選んだかのような演説だったと思う。これまでのブッシュ政権時代の誤りや負の遺産を背負い込んでの出発なのだから、そのような姿勢は多くの共感を国民から得たことだろう。さまざまな解説・論評・解釈がこの就任式・就任演説について語られるだろうが、僕が、今回の就任式をみてつくづく思ったのは、オバマという人物をトップに選んだアメリカという国の強靭さと、同時に世界の主導国であり続けようという「決意」に対する両義的な、複雑な思いである。熱狂的な礼賛は、批判精神の衰退の産物であることは、クリントンの時代においても、ブッシュの時代においても、オバマの時代においても変わらない。以下、いくつか思い浮かんだ語彙に従って記す。

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2009年1月20日

インターネット・ネーション

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ネット・ルーツ・ネーションの祝賀パーティー(1月19日)

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同パーティーで挨拶するハワード・ディーン民主党全国大会議長

(いずれも筆者撮影)

 オバマ大統領就任の祝賀会、パーティーが公式、非公式を問わず、草の根も含めて、ここワシントンDCで連日連夜行われている。その数も150を超えている。タキシードやドレスを着た人々が、街に繰り出している。警備とパーティーが同時進行していて奇妙な感じだ。前夜と当夜は、今度の大統領選挙の特色を物語るような異色のイベントをのぞいてみたいと思い、前夜の19日は、インターネットに集う人々の集合体である「Net Roots Nation Yes We Can Party」というのに参加してみた。高価なホテルを借り切って行われる大パーティーとは違って、ワシントン郊外のアーリントンのライブハウスに、インターネットでWEBサイトを運営する草の根レベルの人々や、ブロガーらが大勢集まっていた。なかなかセンスのいいパーティーで、生バンドが何とフェラ・クティの曲を延々と奏でていた。いいぞ! 何人かの参加者に話を聞いてみたが、オバマ選出でインターネットが果たした役割は、「革命的なものだった」と自讃していた。選挙資金集めの点でも、ネガティブ・キャンペーンへの反撃の武器という点でも、ブログやYouTubeの果たした役割は確かに驚くべきものがあった。人気サイトのHaffington Postは購読者が増すばかりだし(今夜、別の場所で彼女主催のパーティーがあった)、いくつかのブロガーの実力は旧来のメディアをしのぐ勢いである。

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2009年1月19日

オバマへの超熱狂とハドソン川の「奇跡」のかげで

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Amtrakに手を振る人々(1月17日)

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「ブッシュを逮捕しろ」Tシャツの人々がワシントンにいた。(1月17日)

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アジア・ソサエティ祝賀会のマイク・ホンダ議員(1月17日)

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就任祝いコンサートで歌うボノ(1月18日)

(いずれも筆者撮影)

17日からワシントンDCに来ている。NYから乗ったDCまで乗ったAmtrakが、たまたま「オバマ列車」の何本か前の列車だったので、線路の沿道には「オバマ列車」をみるために早々と集まった人たちが何を思っているのか、僕らの乗っているAmtrakに盛んに手を振ったりなんかしている。この超熱狂ぶりは一体何なのか。ユニオン・ステーション駅に降り立っても、もはや慶事の前哨戦が始まっている感じだ。先日のUSエアウェー機のハドソン川不時着の「奇跡」的な全員無事生還劇といい、何だか「いいことづくめ」のような空気に支配されている感じで、天の邪鬼な僕は、逆に危ないものを感じたりする。誰もオバマを批判できないような空気が醸成されるのは決してよくないことだからだ。ボルチモアでのオバマ歓迎集会には数万人の人が寒空の下でオバマ到着を待ちわびていた。アジア・ソサエティ等が主催したオバマ就任レセプションの盛り上がりも結構なものだった。18日の日曜日もモールでは50万人以上の人々が集まって、超大物たちが共演する無料祝賀コンサートが開かれていた。ブルース・スプリングスティーンやU2のボノ、スティービー・ワンダーやビヨンセといったセレブ歌手たちが歌っていたが、会場に行きつけなくて、モールの各所に設定されていた大スクリーンで我慢するしかなかった。なかでも、最後から2番目の「This Land Is Your Land」をB・スプリングスティーンと一緒に歌ったのは、何と今年89歳になるピート・シーガーだった。この曲に対する聴衆の喜び方は尋常ではなかった。踊りだす人が大勢いた。オバマ夫妻もとても楽しそうに体を震わせて手拍子をとっていた。まあ、ブッシュ、ローラ夫妻ならあり得ない光景だよなあ、と思いながらそれをみていたのだ。やはり、こういう所からしてアメリカは変わってくるのだ。聴衆にはこころもち黒人が多かったと思う。

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2009年1月15日

さすがに靴は飛ばなかったブッシュ最後の記者会見

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大通りに設営された就任式パレード見物席

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就任式間近の議事堂前

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ずらりと並ぶ仮設公衆トイレ

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どこに行ってもオバマだらけ

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ビレッジボイス紙の「ジョージ、行かないで!」

(いずれも筆者撮影)

一体、この8年間は何だったのだろうか。ジョージ・W・ブッシュ大統領(以下、Wと記す)のホワイトハウスでの最後の記者会見が1月12日の朝、開かれた。一番直近の会見は、電撃訪問したバグダッドでの例の「靴投げ会見」である。今回はさすがにホワイトハウス詰めの記者たちを対象にした最後の公式会見だったので、「不届き者」はおらず、Wに靴を投げつけるというような事態は想像の外の出来事である。だが、記者たちからのWに対する質問は容赦のないものだった。任期中の「業績」を問われる代わりに、この間の「過ち(mistakes)」は何だったと思うか、と聞かれると、Wはさまざまな表情を浮かべながら、質問に答えていた。だがWは、対テロ戦争の一環としてイラクとの戦争に踏み切った自らの決断を、決して間違いだとは認めなかった。Wがはっきりと間違いだったと認めたのは、フセイン政権が崩壊した直後2003年5月に「任務完了(Mission Accomplished)」の横断幕を掲げて空母リンカーンの上に戦闘機でタッチダウンした時のことで、「あの横断幕を掲げたのは明らかに間違いだった」と述懐していた。さらには、大量破壊兵器がみつからなかったのには「失望した」と弁明した。開戦の最大の大義が大量破壊兵器だったことを忘れたかのように。ほかにも、アブグレイブ刑務所での拷問やハリケーン・カトリーナへの対応などで後悔を滲ませていたが、基調は自らの「業績」を強調するものだった。「(ブッシュ政権が)国際社会におけるアメリカの道徳的な立場を傷つけたのではないか」との質問にはさすがに気色ばんでいたが、否定したわりには反論の中身はなかった。

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2009年1月 8日

歯切れの悪いオバマとヘレン・トーマスの記者魂

イスラエルのガザ侵攻に関する米主要メディアの腰抜けぶりを書いたら、すぐに知人からメールが入った。いやいや、なかなかどうして、アメリカのメディアだって捨てたものじゃない部分もあるにはあるんだよ、と。たとえば、エイミー・グッドマンの『デモクラシー・ナウ』で報告されている1月5日(月)のホワイトハウス定例記者会見でのベテラン記者ヘレン・トーマスとペリーノ報道官のやりとりは実に面白かった。ヘレン・トーマスが「この状況で米政府はなぜ殺戮を放置しているのか」と質したのに対して、ペリーノ報道官は「イスラエルには自己防衛する権利がある」などとしどろもどろになりながら答えていた。さらには、パレスチナの総選挙で選ばれたハマスの正当性を否定したばかりか、テロリスト集団と断じているあたり、あまりのコミュニケーションの行き違いの不条理さに、何だかジョージ・オーウェルの小説を読んでいるような気分になってしまう。翻訳するのが厄介なので、ヘレン・トーマス記者とペリーノ報道官のやりとりを英文のまま転写する。

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2009年1月 7日

変わらない米メディアのイスラエル擁護報道

せっかくの「Changing America」なのに、年明け早々、今回は変わらないアメリカの部分のご報告である。イスラエル軍によるガザ侵攻についての米主要メディアの報道ぶりと言ったら。どうしてこんなにイスラエル擁護の姿勢がはっきりしているのかと思わざるを得ない。1月6日付けのニューヨークタイムズ紙の社説は、ハマス殲滅を企図するイスラエルのゴール(目的)に十全な理解を示しつつ、イスラエルに対して、軍事一辺倒のみならず外交的手段をとる余地を残すことや、外国報道陣の取材を許可することを今更ながら求めている。「イスラエルは、アメリカ合衆国、ヨーロッパ諸国、穏健アラブ諸国の支援を受けているが、この紛争をできる限り早期に終決させて、広範な地域平和に向けた交渉の機会を増す努力をしなければならない」。もちろんハマスなどはテロ集団扱いである。ガザ侵攻作戦から11日も過ぎてこれだけ大量の死傷者がパレスチナ側に(しかも多くの市民に)出ている(NYタイムズ紙によれば、パレスチナ人550人、イスラエル人5人)にもかかわらず、同紙はこの日に至るまで、イスラエルの圧倒的な軍事侵攻を非難したことはなかった。

変わっていないのである。オバマが「チェンジ」を呼号しても、アメリカの主要メディアの親イスラエルの姿勢は変わっていないのだ。なぜそうなのかを、「米メディアを牛耳るのはユダヤ資本だ」などという皮相な「陰謀史観」的な見方に依拠することなく、しっかりと考究し尽くすこと。このことこそが、真の意味の「チェンジ」をもたらす一歩になると信じる。

2008年12月29日

極私的2008年重大ニュース

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写真:筆者撮影
1)演説中のオバマ候補    2)「Dr.Atomic」のフィナーレ
3)聴衆に応えるバレンボイム  4)ピナ・バウシュ舞踏団のフィナーレ(Bamboo Blues)


■極私的2008年重大ニュース

今年は、6月まで日本にいて、あとの半年はNYに移ったので、ニュースをまとめて概観するのがとても難しいが、それでも今現在の記憶だけに従って列記してみると、以下のようになる。

①新大統領に選ばれたオバマのシカゴ演説
②経済危機を呼号する人々の立ち位置の無自覚
③秋葉原・無差別殺傷事件での「派遣社員」という呼称
④漢字の読み書きが不自由な日本の首相
⑤防衛省幹部のトンデモ史観
⑥二代にわたり続いた「政権」放り出し
⑦テレビ製作者における灯火の消滅
⑧日本における集会・デモ表現の不自由
⑨光市母子殺人事件と三浦和義氏の自殺
⑩ブッシュに靴を投げつけた記者

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2008年12月15日

記者から靴を投げつけられたブッシューーCHANGING AMERICA(2)

 史上最低の大統領と評されているブッシュ(レイムダック)大統領が、イラクのテレビ記者から靴を投げつけられた。何を勘違いしているのか、任期切れ間近なブッシュ大統領は、今日(NY時間の14日、日曜日)、イラクを電撃訪問した。マリキ首相との共同記者会見(アメリカ・イラク間の安全保障協定に署名したという内容)の終り頃になって、記者席にいたイラク国営テレビのムンタダール・アル・ザイディ記者(カイロに本拠を置くテレビ局アル・バグダディアの記者)がいきなり靴をブッシュ大統領めがけて2回投げつけた。「これがお別れの挨拶だ、犬野郎!("This is a goodbye kiss, you dog,")」」「夫を失った女性、親を失った子どもたちからの贈り物だ」と叫びながら靴を投げつけたのだという。ブッシュ大統領には靴は命中しなかった。ブッシュ大統領は「(投げられた)靴のサイズは10インチだったな」などとジョークを飛ばしながら会見を続行したのだという。アメリカの各種の政治ブログは、すぐにこの映像を立ち上げた。(http://www.huffingtonpost.com/2008/12/14/bush-visits-iraq-for-fina_n_150832.html

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2008年12月12日

面白すぎるイリノイ・スキャンダルーーChanging America(1)

 オバマ大統領誕生の熱狂に浮かれている間にも、ビッグ・ブラザーはやはりずっと見続けていた。オバマの地元イリノイ州のブラゴジェビッチ知事が検察・FBIによって逮捕された。その逮捕容疑は、オバマが大統領に選出されたことで空席になったイリノイ州上院議員の議席を金で売ろうとしていたという、信じがたい、字句通りの「汚職」だという。アメリカでは、上院議員が大統領就任などで退任した後の後継を州知事が指名する権限がある。これをブラゴジェビッチは悪用して、私利を得ようとしたというのだ。驚くのは、捜査当局が、ブラゴジェビッチの電話をすべて盗聴していて、金で議席を売ろうとした決定的な通話内容を全部録音していたことだ。アメリカでは盗聴による証拠収集がアリなのである。逮捕の発表と同時にその通話内容も公表された。個人的には何という、おっそろしい社会なのかと思う。この州知事、名前からわかるように、セルビア人移民の製鉄工の息子としてアメリカで生まれ育った。「改革」を唱えて2002年に州知事に当選し2期目だが、金権体質で以前から悪い噂が立っていたという。

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Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
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『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
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『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

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