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« トロント・ダイアリー(3) ── G20の各国記者のわけのわからない迫力
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『Musashi NY Version』に大喝采をおくる »

トロント・ダイアリー(4) ── G20場所取り合戦と「記者会見クラブ開放以前の問題」

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↑ G20公式集合写真撮影時のビデオ(カナダ政府HPより)

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↑ オバマ大統領のサミット締めくくり記者会見(メディア・センターにて筆者撮影)

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↑ 菅直人首相の内外記者会見は、会見中、座席からの撮影は禁止だってさ。他の国だとあり得ないけど。(会見終了後に座席から筆者撮影)


 いまさら、トロント・ダイアリーでもないでしょう、と言われるのを承知の上で、敢えて「その4」を書く。もちろん僕はとっくの昔にニューヨークに戻ってきていて、これを記しているのだが、本当にG8とかG20とかいう国際会議の存在意義が今後もどれほどあるのだろうか、という念をいっそう強くした。NYタイムズの試算によると、今回のサミットの経費は1時間当たり1200万ドルかかっているそうだ。これを3日間にわたって続けたのだから、アメリカが、アフガニスタン戦争で使っている1年間の戦争費用とほぼ同じ額になったのだ、と。ほとんどセレモニーだけの話し合いの場にこれだけの巨額のお金をつぎ込む必要があるのかどうかの議論=サミット不要論が再燃する可能性があるのではないか。人気映画『ザ・ミリオン・ダラー・ベイビー』をもじって『The Billion Dollar Maybe』とか言われているし。

 だが、実に逆説的なのだが、国際社会の場からほとんど孤立して、ガラパゴス状態になってしまっている今の日本の位置を、日本のトップやメディア記者たちが体感する場所としてサミットは、またとない稀有な機会でもあるのだ。日本の存在感はいまやあらゆる国際会議において後退に後退を重ね、顔が見えない、自分たちの固有の主張をしない、外に対して開かれていない、という意味で、「みえない鎖国」をしているようにさえ思えるのだ。

 G20の集合写真を撮影するときのエピソードを聞いた。カナダ政府が配信した撮影の際のビデオをご覧いただきたい。第一列、二列目、三列目に各国の首脳がそれぞれ配されるのだが、おおよその位置は事前にそれとなく決まっていて、そのように並ぶことになっていた。第一列目の真ん中は主催国=カナダのハーパー首相、その隣は次回開催国のイ・ミョン・バク韓国大統領。その両隣りにオバマ・アメリカ大統領、中国のコキントウ国家主席までは、まあ何となく異論がないところなのだろう。ところがそれ以外の場所で「熾烈な」場所取りがあったのだという。第二列に並ぶことになっていたサウジアラビアのアブドゥラ国王が第一列の、もともとオバマが立つことになっていたあたりに歩いて行って、どっかりと立って動こうとしないのだ。それとほぼ同時にフランスのサルコジ大統領も第一列にひょこひょこ歩いて行って向って右端のあたりに陣取ってしまった。アルゼンチンの女性大統領も第一列の左端にちゃっかり並んだ。どうやらこれらの一連の動きによって第一列はきわめて右側があいたままの奇妙な配列になってしまったようなのだ。日本の菅直人首相は第三列のまんなか当たりに決められた通りに立っていた。随分昔、G7サミットの集合撮影で、当時の中曽根首相がレーガン・アメリカ大統領の隣を離れようとせずに、中央当たりに陣取っていたことを思い出す。

 さて、わざわざトロント・ダイアリー(4)を記す理由は、そんなバカバカしい話のためではなくて、締めくくりの菅直人首相による内外記者会見のことを書くためである。久しぶりに菅直人という人物を間近に見て質問もできるかもしれない、と思って会見場まで出かけてみた。ところが。一体、これが内外に開かれた記者会見なのだろうか? 時間がないとかの理由で、事務方が事前に記者会見の実施要領を日本語で行い、あらかじめ質問は、同行記者(NHK、幹事社か?)、主催国(カナダのThe Globe and Mailの若い女性記者)、そして再び日本に(読売新聞)、それ以外の外国メディア(日本から同行したBloombergの男性記者)から1問づつ、計4問に限らせていただきます、などと言う。何だい、そりゃ。その後にオバマ大統領の面会が控えていたとは言っても国際舞台でのデビューの場で何でそんなに臆病になるのだろうか。みると会見場は空席が結構目立ち、僕が数えたところ非日本人の記者は10人ほどしかいなかった。この各国首脳の内外記者会見は同時並行で進められていたのだが、何人かの記者は途中で退出して、サルコジとかベルルスコーニとかの方に流れて行った。さらに途中から参加しようとした外国人記者を締め出していた。一体何を恐れているのだろうか。笑ってしまったのは、質問した4人の記者はなぜか全員、スタンドマイクの前にあらかじめ着席していたことだ。こんなことまで事前に仕込まれていたのでは何があるかわからないのが本来の姿であるはずの記者会見の醍醐味は味わえないだろうに。この「4問方式」は、聞くところによると、小泉首相時代にから半ば定番化してしまっているとのこと。菅直人という人はコミュニケーターとしても魅力に欠けていて、たとえば、カナダ人記者が立って質問している時も、彼女の質問に答えている時も、相手の顔を正面から見ようとしないのだった。見ていてイライラした。それでインターナショナル・メディア・センターの席に戻ってみたら、オバマの内外記者会見がずうっと続いていた。そのありようの何と対照的なことだろうか。これは、記者会見クラブ開放以前の問題だ。

 「日本はみえない鎖国をしているんだな」。オバマ大統領の記者会見をずうっとウォッチしながらそう思った。あんなにたくさん集っていた中国人記者たちもいつの間にか姿を消し、メディア・センターは急に空きだした。僕もニューヨークが恋しくなった。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

菅首相の選挙応援の報道を見ていると、彼はすぐに、

・・・いかがですか、みなさ~ん!・・・

と声を張り上げて同調を求める。

一言一言を大事に丁寧に説明することのない、細かいことはごちゃごちゃ言うな、俺について来い式のまるっきりのアジ演説。

聞いている方としては、もっときちんと説明しなさいよ!と言いたくなるレベル。

昨日のテレビでの党首討論を見る限り、これでは選挙後の国会での論戦を乗り切ることは無理だと思った。

だから、海外メディアの厳しい質問に耐えられるはずもないと思う。

 菅直人は何も恐れてはいないはずです。原因はむしろマスコミ側にあると推測します。
 この1カ月の新聞、テレビの意図的とも思われる民主党叩き、菅直人叩きをみるにつけ、まともな質問、まともな報道をしないマスコミにはこの程度の対応で十分と思ったはずです。
 強行軍を続けている体を休ませるには記者会見も適当にして、早く部屋に帰って時差ぼけでも解消しようと思っても不思議ではないでしょうか。何を喋っても悪意をもって記事やらレポートにされるなら記者会見も時間の無駄でしょう。
 菅直人は元々話好き議論好きですから、まともな会見ができるならマスコミとのコミュニケーションも大歓迎と思います。
 「如何ですか、皆さん~?!」

国際会議にそんなに多額の費用が

かかってるのですか?

内容はともかく顔を合わせる事は

それなりに効果は有ると思えます

がそれに関わる経費が高額だと

考えものですね。 命を懸けて

任務にあたってる兵士と会社の

トップの報酬の落差に考えさせら

昨今! やっぱりドブに捨てるよ

うな金の使い方には一考が必要

です!


の報酬の落差に

金平さん

非常に含蓄に富んだレポートと共に、面白いVideoを戴き御礼申し上げます。

数日前にこのTheJournalの別板に投げたコメントを下記に再度Copy&Pasteします。
其処での国内経済にせよ此処での多国間外交にせよ、切り口は違っても菅総理に対する評価は共通している、
即ち「市民派や国民目線派には余程に頑張って政策的な面で高度化と進化を遂げないと、大国である国家の経営は荷が重過ぎるのかも知れませんね」。

-----記-----
今日(7/2)の日経電子版引用【首相が掲げる消費税率の引き上げについては「強い財政を作ることこそ、強い経済や強い社会保障を作ることになる。その道を超党派で相談を始めましょうと申し上げたが、理解頂けると思う」と述べた】由。

強い経済が最重要にして最優先されるべき課題だと確信している私には、各方面からの助言と批判にも拘らず、未だに強い財政から出発して残り二つの「強いXX」が造り出せると主張している菅さんには高いカテゴリーで要警戒だと思います。
市民派や国民目線派には余程に頑張って政策的な面で高度化と進化を遂げないと、大国である国家の経営は荷が重過ぎるのかも知れませんね、・・仮説に過ぎませんが。
頑張って欲しいが。

金平さん 
連投御免なさい。 

引用【「日本はみえない鎖国をしているんだな」】 全く同感です。

その鎖国も、江戸時代の鎖国は日本が自らが決定して決然と行ったものだが、現代の鎖国は決定するでもなく何とはなしに鎖国状態に流れているというもの。謂わば、不作為による鎖国。
言葉の障壁などという甘ったれた言い訳が聞こえて来る・・・。
一国民としては、国家の主体性の無さが哀しいですね。


追伸:江戸末期の志士達、明治初頭の為政者や経済人達と比較すると、日本人全般が劣化したという仮説が頭を過(よ)ぎる。
政だけには限らない、官も財も民も・・。頑張らないと!!

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Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

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