グアンタナモ・ダイアリー(3)
■4月30日(金) 快晴 文化人類学者と戦争
昨夜は軍が設定したモンゴリアン・バーベキューでビールをたくさん飲みすぎたのと、ものすごくアグレッシブな1人の記者の言葉をシャワーのように浴びて、くたびれ切って、テントに戻ったら「青豆」のようなひとりぼっち感をもった。それで寝過ごしてしまい、テントのなかで午前8時にきっちりと流れてきたアメリカ国歌で目が覚めた。別のテントのシャワーを浴び、鬚を剃った。同行してきたSierra君は夜中の4時までテントに戻ってこなかった。彼もどこかで発散してきたのだろう。あとから聞いたらバーで知り合った兵士たちと一緒にビーチに繰り出して騒いでいただとか。兵士たちの本音が聞けたと言っていた。メディア・センターに行くと、午前中の法廷がすでに始まっていたが、カドル被告は出廷していなかった。おそらく健康状態のチェックを受けているのだろう。引き続きFBI尋問官に対する反対尋問。弁護側の追及はちょっと空回り気味だ。午後の法廷には、カドル被告を担当した軍の尋問官が登場した。まだ30代前半かと思われる若い女性だった。検察側の質問に淀みなく答えていた。拷問なんかしたことはないし、彼は非常に協力的でリラックスして、率直で、頭がよかったと証言していた。その女性はブロンドの混じった茶色の長い髪の白人女性で、文化人類学ANTHROPOLOGYと考古学ARCHEOLOGYを学んだあとに軍の尋問官になったのだと言っていた。冷たい感じの美人だと思った。こんな人物に尋問されていたのか、と思った。FBIの男性尋問官とはまた違った印象だ。だがどちらも諜報関係者特有の、どこかで妥協を許さないような冷たさが漂っている。ただ16歳(当時)というカダル被告の年齢を考慮して「頼りになる母親(Mother Figure)」のように振舞うように努めたと言っていた。おそらくその頃は彼女は20代だったはずだけれど。休憩後に今度は3人目の軍の尋問官が出廷した。その人物も女性だった。警察出身だという。40代の中ごろだろうか。カドル被告を取り調べていた当時、同じような年頃の息子がいたと言っていたので。この女性も検察側の質問に実にスマートに答えていた。強要とか不適切な尋問は一切なかった、と証言していた。女性が尋問官になるということの意味をいろいろ考えあぐねた。
文化人類学が戦争に対してどのようなスタンスをとるのかは、学問の在り方をめぐる根本問題のひとつとしてアメリカの学会でも話題になっていることのひとつだ。というのは、イラクやアフガニスタンの戦争遂行にあたって、文化人類学者が戦場に随行して軍に協力しているという実態があるからだ。だが文化人類学をおさめたあんな美人の女性が「敵性戦闘員=テロリスト」の尋問にあたっていたとは。「学問の自由」もえらいことになってしまったものだ。
きょうもまた、スペイン人の記者とワシントンポストの記者がアメリカに戻って行った。陽炎が立つテントまでの道を歩いていたら、トカゲが早足に走り抜けて行った。今日の夕方の段階で半分くらいのメディアが去って行ったか。








コメント (3)
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投稿者: 《THE JOURNAL》編集部 | 2010年5月 1日 20:03
「正義の戦争」 などという戦争はない。 「戦争は絶対悪」 である。 アメリカに限らず文化人類学者を名乗る者に対して, 日本国憲法第九条の非戦事項について, その考えを聞きたい。 本物か偽物か, 立ち所にわかるだろう。
投稿者: 良心派 | 2010年5月 2日 08:56
金平様
いつも、私たちの素朴な疑問を貴殿の深い問題意識で解き明かしてくれる報告に感謝してます。
アメリカに駐在するマスメディア関係者は数多いはずなのに、アメリカという国と社会の本質に迫る報告が得られない今の日本。メディア関係者の人間的な素養ばかりかその知識夜問題意識のお粗末さを露呈するものだと思います。
今回の文化人類学者の活用・協力、ぞっとします。日本でも心理学者という肩書きの人たちが自らの社会的責任を自覚しないまま、誤った世論誘導に「貢献」してきました。無罪をようやく勝ち取った菅谷氏をかつて法廷で、警察・検察官と一緒に犯罪者に捏造した人たちに、有名な犯罪心理学者がいたこと、そして、そうした捏造をマスメディアがもてはやしてきたこと。今回の報告は私の中で、その記憶とも結びつきました。
投稿者: さとあき | 2010年5月 2日 10:13