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« あと3時間で終わる2009年を回顧する
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マサチューセッツの衝撃 »

チェンジから漂流へ? 私たちはどこへ向かうのか?

 JOURNALへのアップデートをサボっていたら、2010年になって、とんでもない出来事が次々と生起した。これは何かの予兆だろう。本質的な、根源的な変化に向けての。

 200年に一度という規模の大地震がハイチを襲った。死者の数は20万人説まで出ている(1月17日現在)。もともと政情不安定で、人口900万の最貧国である。首都ポルトープランスが瓦礫の山と化し、おびただしい数の遺体が放置され続け、なすべもないという現地からの映像をみるだけで、いかに壊滅的な被害かがわかる。インフラも壊滅、大統領府や国連事務所も崩壊した。僕らの同僚も現地入りして取材しているが非常に困難な状況にあるだろう。ハイチ大地震へのオバマ大統領の立ち上がりは迅速だった。地震発生の翌朝には食糧・医療品などの緊急援助措置を命じ、さらに翌日には1億ドルの緊急支援を表明した。インフラが壊滅しているので、軍の部隊を相当規模で投入して、医師や救助人員、支援物資の運搬から分配に至るまでを実行している。誰もが心のなかでひそかに思っているはずだ。アフガニスタンに軍を投入するよりも、よほど人道支援に役立つのが、こういう軍の機動力ではないのか、と。

 NYのタクシー・ドライバーにはハイチ出身の人が多い。彼らの言葉はクレオールのフランス語なのでタクシー無線のやりとりでわかる。故国がどうなっているのか気が気ではないだろう。アメリカのメディアもハイチ大地震にはいち早く対応した。なかでもCNNは現地入りも早く、アンダーセン・クーパーが時事刻々と状況を現地から報じ続けている。どのメディアも義捐金への寄付をこぞって呼びかけている。こういう時のアメリカは、実に寛容な顔が前面に出ている。もちろん、大地震直後に「ハイチは悪魔と取引してフランスを追い出して以来、呪われている」だのとテレビで愚説を披露したテレビ伝道師パット・ロバートソンや、「オバマはハイチを政治利用している」だのと言ったラッシュ・リンボーの毎度おなじみの発言が聞かれることも確かだ。ここはアメリカなのだから。反米派の大統領アリエスティドが、米ブッシュ政権下の諜報機関によって無理やり国外退去させられたのは2004年のことである。

 ヒラリー・クリントン国務長官は、夫のビル・クリントンが国連のハイチ援助特使であることもあって、目下のところハイチ支援に全力を注いでいる。その背景には、オバマ大統領自身の権勢の低下という現実があることを分析する、うがった向きもあるが、ひとつだけ確実なことは、ヒラリー長官には、普天間問題に絡んで、日本の駐米大使を「呼び付ける」暇などは全くないということだろう。

 さて、その日米関係の行方である。旧世代のジャパン・ハンドラーたちや一部メディアは「辺野古移転案が履行されなければ日米関係が崩壊する」との恫喝のような主張を繰り返している。普天間問題に日米関係のすべてが集約されているかのような主張は明らかに意図的な誇張である。挙句の果てが、例のクリントン長官による駐米大使「呼びつけ」報道だったのだが、呆れたことに、これらの恫喝的な物言いが一時、メディアの横並びの基本線となった。さすがに、ジョセフ・ナイ・ハーバード大学名誉教授でさえもが、6日付のNYタイムズのコラム欄に「An Alliance Larger Than One Issue(ひとつの問題よりもっと大きな同盟関係)」という記事を寄稿し、アメリカ政府が普天間問題であまりに鳩山政権をいじめるのは得策ではない、と警告していたのが目を引いた。鳩山政権のこの問題でのハンドリングは確かに痛々しいのだが、では、自民党政権時代と全く同じ思考枠組を押しつけるやり方が果たして妥当なのかどうか。

 日本の外務省は年初にあたって、2010年の日米関係のハイライトとなる3つのイベントを挙げている。①日米安保改定50周年②万延元年の遣米使節150周年③11月のAPEC首脳会議(横浜)へのオバマ大統領訪日。外務省は、なぜか①よりも②を積極的に寿ぎたい意向のようだが、肝心なのはもちろん①である。普天間問題も、外務省の密約問題も、すべて日米安保に直結することがらであり、本来、徹底的に論議されなければならないテーマである。50周年は、論議のための絶好のチャンンスのはずなのだが、とにかく厄介事は避けたいという旧思考がここでも働いている。③は、オバマ大統領が直前に中間選挙で有権者の審判を仰いだ直後の国際舞台だ。その頃までに、アフガニスタンの戦況はどうなっているのか。経済状況はどの程度、回復しているのか。最近、オバマ大統領に対するリベラル陣営からの手厳しい批判が目につくことが多い。支持率の低下が顕著だ。期待値が高かった分、失望の度合いとスピードも激しいということなのだろうが、2年目こそがオバマ政権の正念場となる。そして、何よりもAPECホスト国の日本の政治指導者の顔は、その時、つまり2010年の11月の段階で一体どうなっているのか。普天間も、気候変動対応も、東アジア共同体構想も、みんな吹っ飛んでしまうような政治状況の激変が、選挙という健全な形によらず、日本で起きる可能性さえも出てきたようだ。

 かなり脇道に逸れるが、個人的な記憶を記せば、僕は現在勤務している放送局に入社してから初めての大きなグループ取材の経験はロッキード事件の裁判取材だった。寝食を忘れたように夢中で取材をしていた記憶があるが、その時のことを実は今思い出している。それは検察という機関の意思と国家意思の関係について考える機会があるからだ。ロッキード事件当時、アメリカ政府は田中前総理の逮捕という事態をどのように捉え、分析していたのか。アメリカの公文書に目を通すと、そこには当時の僕には想像もつかなかったような冷徹な国際政治の構図があることを徐々に知ることになった。僕は、田中角栄という人物が「アメリカの虎の尾を踏んだ」だの「国際金融資本、東部エスタブリッシュメントの逆鱗に触れた」だのといった浅薄な陰謀史観的な見方に与するものではない。だが、今、日本で起きていることは、検察の歴史のなかでも尋常ならざることが起きていると思う。その意思はどこから来ているものなのか。何に依拠するものなのか。それが「秋霜烈日」とか「破邪顕正」といったスローガンとは異なる所にあることを恐れる。しっかりと事態を見据えなければならない。単なる「捕りもの帖」報道にしてはならない種類のことがらだと思う。そのことが、かえって外からの方がよく見える。

 正確な情報に基づき、深い歴史認識と地球的視野に立ちながら、ある時は虫の視点で、ある時は上空を旋回する鳥の視点で、ものごとをしっかりと見据えること。ジャーナリズム、メディアのありようも2010年は存在価値、真価が問われることになる。そして、そのこと自体は歓迎すべきことだ。本当に、チェンジのあとにやってくるのが漂流ということになるのかどうか。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

私は、氏が述べられている漂流ではないと思う。
新しい年(朝)の夜明け時期であろうと思う。
足元も薄明状態で、前に踏み出すには勇気もいる。
オバマ氏も日本政府もその中で、何ができるか模索しながら、前に進んでいると私は思っています。
それと同時に、私達も試されている。
賛同できれば、応援し、おかしいと感じれば、苦言を呈する。
誰かに託さざるを得ないのが、政治である。
けれど、私達一人一人の自覚も求められている。
私は、そう感じています。

---------------------------------
アメリカの公文書に目を通すと、そこには当時の僕には想像もつかなかったような冷徹な国際政治の構図があることを徐々に知ることになった。
---------------------------------
ここ、具体的に示してほしいですね。

>陰謀史観的な見方に与するものではない
と自覚しつつも、その方向に思うということなら、かなり確実な事実明記があるということでしょうから。

思わせぶりな記事ですが、示唆に富み興味深く読ませていただきました。

>正確な情報に基づき、深い歴史認識と地球的視野に立ちながら、ある時は虫の視点で、ある時は上空を旋回する鳥の視点で、ものごとをしっかりと見据えること。

特にこのくだりは情報の受け手である私たちにも求められる態度だと感じました。今後もご活躍を期待しています。

自らの国益を考え、世界の中でどう舵を取っていくのか、それを託することのできる政治家は誰か。歴史を鑑みて、ジャーナリズムはしっかりと、そのことを見据えてほしいと願います。

金平さん、こんにちは(いま18日pm1:45頃です)

そうですね。
僕たちは、小沢VS検察に目が行き過ぎてますね。

①ハイチの大地震。なんとも、いえない不条理を感じます。
ちょうど、15年前の阪神大震災と合わせ、痛切に無力感を感じてしまいます。そのなかで、できること、それはとても小さなことだけど、やらなくちゃいけないと思います。
鳩山政権もオバマ政権と連動して、ハイチのためになにかしようとしている。これが友愛政治を発揮するときでしょう。

②普天間問題と日米関係
金平さんの言われるとおり、「これが履行されなければ、日米関係が崩壊する」そんなことがあるはずない。
でも、アメリカはこの問題を高く売ってくることは間違いないでしょう。
それが冷徹な外交と思うからです。
しかたないかもしれないですね。高く買うことは、それが沖縄のひとたちのためとというなら、しかたないとも思う。だけど、専門家やマスコミや総ぐるみで、その構想を作り上げた面があるのが、ちょっとやりきれないですが・・・。

③「検察の狂気」とまでいっているメディアも現れました。
これほどまで、記者クラブメディアとインターネット、週刊誌などが対峙したことはなかったでしょう。どちらが正当な意見をもっているのか?
すこしでも、深く知りたい人に誘導しなければならないと感じます。そこでどう考えたのかは人それぞれであってかまわないけれど、その入り口への誘導はしないと!と感じています。

チャンジから漂流へ

現実を捉えよう。
でも、理想を手放してはいけない。
そのしたたかが求められているのだと思います。

>今、日本で起きていることは、検察の歴史のなかでも尋常ならざることが起きていると思う。その意思はどこから来ているものなのか。何に依拠するものなのか。

日本の大手マスメディアがこぞって検察の応援団にでもなってしまったかのような現実に、とてもげんなりしています。
検察のこの小沢潰し、意思はどこから、何に依拠するものなのか、そういうことを考えてしまいます。
普天間問題も関係しているように思えています。藤崎駐米大使の自作自演?も、大手マスコミはまるで追求する気配もなし。
普天間問題で外務省は何を目論んでいるのでしょうか。マスコミは外務省に睨まれるのが怖いのだろうなと思います。

政権交代が達成されて倒幕は終わったものかと思っていたらそうではなくて、旧権力者たちがまだ手元に残る権力を用いて、民主党政権に抗っていると思います。
冷静に考えてみれば、旧権力者たちが抗うのは当然のことで、こういったことが起きるのも予想ができたことかもしれないと思います。

日本という国が、ちゃんと変わっていけるのか、はたまた変われずに元の木阿弥となってしまうのか、今試されていると思います。
マスコミが悪い、何何が悪いと批判しているだけで物事は変わりはしないと考えています。

金平さん。あなたが大好きだった浅川マキさんが急死したみたい。悲しいね。東京からのお知らせね。

小論文でもTOP Heavyでお願いしたい。全部読まされた挙句に何が言いたいのかわからない文章ほど腹立たしいものはない。これが有料の文章であったなら、読者の貴重な時間を奪う殺時罪だ。

金平様

「なるほど」という感じで読ませていただきました。日本は国内のニュースが多すぎます。これからも海外から発信していただきますようお願いします。

「…浅薄な陰謀史観的な見方に与するものではない。だが…」の下りですが、戦後一貫して軍事力の行使を躊躇しないアメリカですから、他国に対する非軍事的影響力の行使はなおさら躊躇するわけがありません。表向きの場で陰謀という言葉を使うと白い目で見られますが、非軍事的影響力の行使には、友好的なお願い・提案・呼びかけもあれば、利益誘導・恫喝・宣伝・制裁・政府転覆まで様々な選択肢・パターンがあって、アメリカが常識的範囲でそれらをその場その場で使い分けてきた中には実質的に陰謀に当たるものがあっても不思議ではありません。角栄さんの失脚には多くの勢力から多様な手段による働きかけがあって、各陣営は半ば連携し半ば勝手な思惑で動いていたと想像しています。

岸信介、正力松太郎がアメリカのエージェントだったことがアメリカの外交文書から近年わかったそうですが、関西で育った私は小学生の頃に(昭和29年生まれ)誰かから聞かされていました。高校の頃には自民党が創価学会敵視をやめて将来過半数割れした場合の補完勢力として利用することに方向転換したという噂も聞きました。本音文化というのが情報を流したのでしょう。関西人は駅で並ばない、信号無視する、部落差別をやめない、ヤクザと仲が良すぎると悪いところだらけですが、昔は建前より本音でものを言う、日本人には珍しい長所も持ってたように思います。

「本質的、根源的な変化に向けての」の予兆なら、本当にうれしい限りなのだが。

鳥のように、物事を俯瞰して眺める事が出来るような知性が「日本」にどれだけあるだろうか。
不安だ。

日常の行動を変える気持ちは、今はない。
しかし、このままで7月を迎えた時。
大丈夫だろうか。

民主党は、戦いの雰囲気がなさすぎる。
ここで戦わないで、いったいいつ戦うのか。
昨年8月が、真夏の夜の夢になっていいのか。
云われっぱなしの民主党。
自分たちから、「メッセイジ」を出さなければ、道は開けないよ!!

ネットになど頼ろうとしてはだめだよ。
なんだかんだ言ったって、まだまだTV/新聞なんだから。

民主党殿へ

 田中角栄氏のロッキード事件は免責を受けたアメリカのこーちゃんが話したことを証拠とされたものですが、全くおかしな出来事でした。当時はトライスターより対潜哨戒機の後継機問題で本来はP3Cが本命でした。どちらにしろロッキードは田中失脚のための道具でしかなく本質はアメリカ国際石油資本等からの離脱を目的とした資源外交が彼らの琴線に触れたからです。
 このことは今週の朝日ニュースターの武田鉄也氏の番組でまさに田中資源外交のことが詳しく説明されていました。
 時間の経過とは言え、真実が徐々に明らかになってきているようです。

何だかんだいってもこういう時の(ハイチ地震)対応の素早さ、やっぱりアメリカはやりますね  このたびは中国も早かった。

さて我が国の今、検察VS小沢

無知な私には民主的な今日でも検察の横暴があるのでしょうか?

熱血感の記者、評論家まで今回の事には検察批判をしています。

おやおや? て思う事がいっぱい。 益々分からなくなりました

金平様自身は大丈夫なんですか?

金平様は一応、大マスコミの一員のTBSの社員。こういう反自民党的なブログに投稿しておられて大丈夫なんですか?それが心配です。
それと、この記事とは主旨が外れていますが、貴方のお師匠さんの故筑紫哲也さんの本が静かなブームになっているようですよ。やっと、筑紫さんが生前おっしゃっておられた事の意味、あの頃深く考えなかった日本人にもよくわかるようになって来た、という事だと思います。
又、生前、貴方が親しくしていられた米原万理さんの本も、不定期に書店でフェアが組まれています。米原さんが亡くなる直前までい続けたこの日本という国についても、段々理解が浸透し始めたという事だと感じています。
いずれにしても、筑紫さんや米原さんがご存命でいらしたのなら、現在の日本についてどのようなご意見を述べられていたでしょうか?大変興味がある所です。

一抹の懸念を今日感じる。
日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同声明です。

声明の詳細を知っていないのですが、既存の安保条約の深化と計るとの内容に私は聞こえる。

伺った見方をすれば、従来通りで、更にアメリカに追従していくとも取れる。

ハワイでの岡田ークリントン会談も外務省のお膳立てとの指摘も聞く。
官僚にいいようにあしらわれているのでないかとさえ、疑ってしまう。
どこに、日本の主張があるのだろうか。
沖縄の負担軽減だけが、主張であるなら、旧来となんら変わりがない。

親密な日米同盟と安保条約は、同一視するものでないと私は思っているのだが・・・。

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Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
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『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
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『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

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