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オバマ大統領当選から1年後の現実を直視する(3)── 医療保険制度改革

 220対215。辛勝のようにみえるが、このオバマ政権の勝利の意味はきわめて大きい。オバマ大統領が国内政策の最重要課題に位置付けていた医療保険制度改革法案が、アメリカ下院をついに通過した。CNNで深夜に及んだ審議の模様が生中継されていたが、ナンシー・ぺローシ議長は、220対215の投票結果を告げて、ほっとした表情で「法案は可決されました」と宣言した。「歴史的」という形容詞が一々つけられているのには理由がある。アメリカの議会史のなかで、他の先進国ではごく当たり前の「国民皆保険制度」導入をめざした法案が、これまでことごとく頓挫してきた長い歴史があるからだ。これでアメリカ国民の96%は何らかの形での医療保険でカバーされることになる。ぺローシ議長は会見で、「Oh! What a night!」(何という素敵な夜!)と興奮を隠さなかったが、今夜の法案の議会通過を、1935年の社会保障法通過や、その30年後のメディケア法案の通過といった歴史的出来事に比していた。オバマ政権が当初目指していた国家運営の医療保険はさまざまな修正を迫られて妥協に妥協を重ねてきた経緯がある。特に年初以来のタウンホール・ミーティングで、国家運営の医療保険のあり方について、共和党陣営の草の根保守や医療・製薬業界からの抵抗にあい、「オバマ=社会主義者」といった中傷まで飛び交った。そして、きわめて強力なネガティブ・キャンペーンがはられてきた結果、法案は妥協と修正を迫られて大きく変容した。民主党内や進歩陣営には、譲歩しすぎて法案の意味が失われているとの声もある。

 無保険者4700万人という現実を前に、今日の法案の下院通過をどのように評価するかは今後の動きをつぶさに見なければならない。だが、これは長い射程で見た場合、アメリカ社会の大きな変化の第一歩と位置付けられることは間違いないだろう。

 共和党の下院議員からはただ1票のいわゆる「造反」が出た。ルイジアナ州のアン・ジョセフ・コー下院議員が民主党案に賛成の票を投じた。と言っても、アメリカでは投票が政党によって拘束されることはないので「造反」の意味合いが日本とはまるで違うのだが。現に39人の民主党下院議員が今日の投票で反対票を投じている。コー議員はベトナムの旧サイゴン市で生まれ、8歳のときにボートピープルとしてアメリカに辿りついた苦学の人物である。父親は南ベトナム軍にいたため投獄された。コー氏は、ニューヨークのフォーダム大学で哲学を学び、ルイジアナ州に戻り、難民や貧困層を支援する政治活動に入った。2007年以来下院議員をつとめているが、ハリケーン・カトリーナの被害をまともに被って事務所が破壊された経験が大きかった。

 このところ勢いを盛り返しているようにみえる保守層は、ティーパーティーなどを断続的に開催して、オバマ政権の医療保険制度改革に真っ向から反対する姿勢をみせているが、下院での法案通過の意味は時間が経過するにつれてますます重みを増してくるだろう。

 オバマ大統領はただちに声明を発表し「年末までに法案に署名したい」と表明した。舞台は今後上院へと移る。先週の木曜日には、リーバーマン上院議員の医療保険制度改革に対する姿勢に抗議して、彼の議会事務所前に座り込んだ市民ら9人が逮捕された。リーバーマン上院議員は、法案に国家運営の保険制度が含まれていれば、共和党の「filibuster」(議事進行妨害行動)に加わるとの意向を表明している。

 オバマの挑戦はさらに続く。

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「医療保険改革とアフガン増派」

最近、医療保険改革に対する共和党の反対キャンペーンでオバマ大統領の支持率が低下してきている。下手をすると来年の中間選挙で民主党が破れオバマの政権運営が行き詰る恐れもある。

オバマにとって医療保険改革を成功させるためには、共和党右派やその背後にいる軍産複合体の主張する「アフガン増派」を決断しなければならないかもしれない。


国営医療保険なんて実施したらアメリカが日本みたいな社会主義国になってしまいます。

自由のともしびを消さないでほしい。

頑張れGOP!!

「国民皆保険制度イコール社会主義」という単純な批判は的を得ていない。

そもそも国家は病める人、弱き人たちを救い、ともに歩んでゆく制度を保障するものでしょう?そこに保険会社や医療従事者の利益主義は根本的に相容れないため国家(政府)の調整が必要なのでは?

いつから国家が「健康で、不足のない人たち」の物になったのですか?

オバマさん、きわどい闘いに勝利しましたね。歴史的出来事、すごいです。やりましたね。よかった。よかった。

オバマさんと支持する皆さんには、盛り返しを見せる保守層に負けずにがんばってほしい!
何が何でも、医療保険制度改革を実現してほしい!
他国のことですが、地球に生きる市民の連帯の気持ちから、エールを送りたい。がんばってほしい。

今回通過した医療改革法案の内容は私たち日本人が考える「国民皆保険」とは違うので、手放しで喜べません。シングルペイヤーではないので、結局医療破産は減るどころか増えるのではないでしょうか。現地で医師をしている友人に聞いたのですが。

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金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

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