Calendar

2009年9月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30      

Recent Comments

鳩山「核廃絶演説」を聞いて
伊賀 敏 09/29
LEE 09/29
田中みち 09/29
satocotori 09/29
satocotori 09/29
金平茂紀 09/30
THE GUEST 09/30
satocotori 09/30
THE GUEST 10/01
Longo 10/01

« 反イラン・デモと鳩山首相の距離
メイン
「核なき世界」への想像力がオバマをノーベル平和賞に導いた »

鳩山「核廃絶演説」を聞いて

ny090928_2.jpg
ガラガラの国連メディア・センター(25日)

ny090928_1.jpg
核不拡散の安保理首脳級会合に出席していたキッシンジャー氏(24日)

 国連総会会期中は、NY市内の交通がマヒ状態になる。これは年中行事みたいなもんだ。理由は警備当局が国連本部に至る主要道路を各所でブロックし、また大変な数の国連代表団の車両を信号をとめて最優先に通すからである。僕は自分がかつて勤務していたソ連の末期やロシアの初期の交通事情を思い出す。クレムリンへの(からの)大統領の車列が通る時には、すべての交通が遮断され、その車列が一度もストップすることなく目的地点に導かれるのである。乗っていたのはゴルバチョフ、エリツィンだった。それと似たような現象が民主主義国家のNYで起きるのだ。やれやれ。今日現在(9月28日)、国連総会まだ続行中なのだが、NY市内は交通マヒもほぼ消えてなくなり、通常通りの交通の流れになっている。なぜならば、G20の金融サミットがピッツバーグで開催された24日の午後には、国連の先進主要国の面々は一斉にNYからピッツバーグへと移動してしまったからだ。同行記者団も同様。25日以降も国連総会の演説はちゃんと続いているのだが、メディアセンターにも議場にも人影が激減し、すーっと熱気が引いていったような状態になった。ちなみに僕は25日の午前中に国連総会をのぞいてみたが、演説国はこんなありさまだった。グアテマラ、パキスタン、中央アフリカ、ぺラウ、エストニア、ナウル、ブルキナファッソ、レバノン、トーゴ、ソマリア、マケドニア、キリバチ、ジンバブエ、パレスチナ、バーレーン、Antigua and Barbuda。正直に言って聞いたこともない国から代表が来て演説をしている。日本のメディアは28日最終日の午後の北朝鮮に一点集中で注目しているくらいで、あとは放置される。国連の取材はだいたいそんなものなのだ。

 さて、ここまでが長い前置き。今回の国連総会の成果の一つは、「核なき世界」をもとめる安保理決議が全会一致で採択されたことだろう。オバマ大統領が議長をつとめたその安保理首脳級会合で、鳩山首相が短いスピーチをした。中身のある演説だったと思う。とりわけ、CTBT=包括的核実験禁止条約に触れて、第五福竜丸事件に言及したことに大いに感心させられたのも事実だ。ただ、敢えて言うと、この種の演説を聞いていつも思うことがある。それは「唯一の被爆国」という表現に接するたびに感じる居心地の悪さ、と言うか、疑問なのだ。鳩山スピーチ中にあった、日本は「核兵器による攻撃を受けた唯一の国家」という表現はまさに事実だろう。だが、日本が「唯一の被爆国」と言及されたときには、僕は一応の留保を感じざるを得ない。それは、アメリカの原爆・水爆実験によって被害を受けた太平洋マーシャル諸島の人々の存在を考えるからだ。ビキニ、エニウェトクの2つの環礁で、アメリカは計67回の核実験を行った。甚大な被害を被った人々がいる。これは核爆弾による被害者である点で、広島・長崎の被爆者とつながっている人々ではないのか。フランスもムルロア環礁で同様の核実験を行い、島嶼の住民に被害が出た。さらに異和感の根拠の一部をなすのが、「唯一の被爆国」という表現によって、日本の被害者意識が前面に押し出され、あの戦争のもっていた日本の「加害性」が後方に退くeffectが生じているのではないか、という危惧である。そして、さらに附言すれば、広島・長崎で被爆した外国人の存在(在日韓国朝鮮人や中国人、オランダ人などの戦時捕虜たち)について、「唯一の被爆国」という表現では、こぼれてしまうおそれがあるのではないか、という点である。
 
 広島・長崎での2発の爆弾によって一瞬にして膨大な数の日本人の命が失われた事実に比べれば、それらは些事だろう、と思う人がいるかもしれない。だが、オバマの言う「核なき世界」のスケールは、これらの人々をも含みこんだ理念だと思う。
 
 ちなみにマーシャル諸島のリトクア・トメイン大統領は、日本と同じ24日の午後に国連総会で演説を行ったが、そこで「核なき世界」決議に、被爆国民としてそれほど勇気づけられたかを語っている。以下はその原文である。こちらもこころを打つ演説であることは論をまたない。

Mr. President, I now turn to a matter which is very dear to the heart of every Marshallese. We are deeply encouraged by the UN Security Council Session today, moderated by President Obama, on Nuclear Weapons Use and Testing. Nuclear weapon testing was conducted on our islands between 1946 "and 1958, at the time when we were a ward of the UN Trusteeship System.
Our first hand experience as victims of nuclear weapons testing on our islands, and the painful memories that continue to haunt us over six decades, are nightmares we would not wish on anyone. The toll on human sufferance and environmental damage has been devastating.
Sixty years now since the detonation of some 67 nuclear bombs, the Marshall Islands is still grappling with their after-effects. Complete recovery in terms of restoring affected islands to full economic productivity, and adequate compensation of the victims remain uncertain.
Mr. President, We have not come here to condemn or to point fingers. However, we are compelled by our moral duty to humanity to raise our voice in gatherings such as these, and to appeal to the conscience of the world community. We call for the formulation of a new perspective by which the specter of war and the use of nuclear weapons may forever be wiped off the surface of the earth. Banning nuclear weapons alone will not remove the root cause of war. Important as it may be, it does not exert an enduring influence. People are too ingenious to invent yet other forms of warfare. Political agreements or good intentions alone are not enough. The world craves for something much more deepseated than pure pragmatism. They yearn for permanent peace that springs from an inner state supported by a moral attitude.

 先に記したように鳩山演説でも、第五福竜丸事件のことが触れられていた。願わくば、日本の漁師ばかりか、そこに住む人々にまで言及があれば、私たちは結びついていける。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/5986

コメント (15)

■コメント投稿について編集部からのお願い

《THE JOURNAL》では、今後もこのコミュニティーを維持・発展させていくため、コメント投稿にルールを設けています。はじめて投稿される方は、投稿の前に下記のリンクの内容を必ずご確認ください。

http://www.the-journal.jp/contents/info/2009/07/post_31.html

ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

マスメディア、マスコミの中にも尊い事実・真実を伝えるジャーナリストがいることを確信する。

民主主義の価値「個人が自由にして立つことの尊厳が奪われてはならいない。」を今後も進化させて頂きたい。

核廃絶への道は遥か遠いが、人間の内にある不条理:非民主主義を克服するものとして歩みを進めねばならない。

金平さん

 「唯一の被爆国」の誤謬

1.成程、教えられました、有り難うございます。
翻って観ると、世界の被爆国の反核兵器運動に連携が取れているのでしょうか?私を含めて多くの人達が持っていたこの誤謬を根絶するには、被爆国の連携が世界の舞台で発揮されることが確実で早道だと思われますが・・、それだけでは十分ではないが。
夫々の国の個別の運動の単なる集積よりも、大きな力を生むであろうとも・・。
その連携を主導し大きな力を糾合して世界に「核廃絶」の声を発信することこそ、AmongOthers、「核兵器による攻撃を受けた唯一の国家」であり、経済大国であり、「核廃絶の先頭に立つ」と公言している日本の役割の一つだと思うのだが・・。

2.金平さんは勿論ご承知でしょうが、写真が掲載されていましたので思い出しての蛇足・・。
キッシンジャー氏はJanuary 4, 2007にthe Wall Street Journalに掲載されたHooverレポートで「核廃絶」を主張した著者4名の一人でもある。このレポート発表は、Obama大統領が今年4月に「核廃絶」を謳ったプラハ演説 に先立つこと2年以上前に行われている。
http://www.hoover.org/publications/digest/6731276.html(Digest版)
過去への無意味な「後悔」ではなく、将来に向けた建設的な「反省」として、07年当時を含めて「世界の核反対運動に於ける日本の存在の何と小さい」ことか・・。この観点からも、「日本が変わった」と実証的に確信し誇りとしたいものです・・言葉や演説だけではなく。

「唯一の被爆国」はニッポン人のゆがんだ特権意識・自己満足でしょう。

オバマ氏も鳩山氏も偽善はやめてほしいですね。

オバマ氏の「核のない世界」は、たんに核保有国の既得権益を守るためだけの方便にすぎません。安全保障理事会の常任理事国制度に守られている核保有国グループの言うことは、しょせんその程度のことです。泥棒が泥棒の取り締まりをやるような話。

日本人だけが被爆者ではないとの指摘、そのとおりです。広島、長崎でも被爆した日本人以外の方が多くいます。
イギリスは、核実験をオーストラリアの砂漠地域で行いましたが(サウスオーストラリア州マラリンガ)、兵士はじめ、事情を知らなかったアボリジナルの人々の中に被爆者が出ています。

Very good!

マーシャル諸島大統領は、自分たちのナイトメイヤーを責めに UN に来たのではなく、人間としての道徳的な義務の為に良心をアピールしたい、と言うような旨を演説され、世界はもう実益主義で判断するのではなく、人として内部から湧き出る人道的判断で「永久的な平和」を切望しましょうよ、と、地球人として生まれてきた事の哲学にも触れたようなスピーチをされたのですね。
過去 UN で「核」に関して、具体的に各国からどのようなスピーチがあったのかは定かではありませんが、やっとこれだけのこと(あたりまえのこと)が発言できる時代が来たのだなぁと実感しています。
どこかで「UN 総会は所詮“学芸会”なのだから、適当に拍手しておけばいい」というような意見を耳にしましたが、今、世界でそして日本で、何かが大きく変わろうとしている予感を私は信じてみたいと思います。「唯一の被爆国」も「拉致被害」も日本の「加害性」が後方に退く事の effect には決してならないよう、鳩山さんの言う「友愛」の真価が問われる時なんだと思うと、日本の過去の清算も含め、このスタートを静かにワクワクしている自分が居ます。

今夜は仕事をしながらたまたま聴いている CD の中の1曲を置いていきます。
全ての傷ついた人の「痛み」が消え去りますように。

http://www.youtube.com/watch?v=uVlJbcFD8Gk

このような編集を待っていました。

まだまだ怜悧な溶媒の役割は終わらない!

期待しています。

今年の原爆の日あたりにNHK特集で被爆国は日本だけじゃないというのをやっていました。なかでもロシアの核実験場だったカザフスタンを紹介していました。その事実をその時初めて知ったのですが、それまでカザフといえばウラン採掘で日本メーカーなどが契約したということを把握していました。カザフのウラン採掘現場についてはどういう状況かわかってないのですが、他国の現場では採掘者の被爆やその後も悲惨で、周辺の自然もたとえ美しくても人が立ち入ることの出来ない場所となってしまうと聞いていました。核実験された国からウランを採掘して、核兵器で降伏させられた国がそれを利用するって...なんだか本当に複雑な思いです。
そんな中、現環境大臣が原発積極推進的なニュースを目にしまして、またしても複雑な心境...小沢大臣にはいろいろな見方をしていただきたい。。これまでの推進派の見方だと原発以外の新エネだけではいくらがんばっても足しにならないみたいなものでしたが、私は違うんじゃないかと思っています。

それにしても、国連のメイン祭りが終わった後ってなんとも...まさに強い者のためのなんですね。

先のコメントで核爆弾と原子力発電同列に語ってしまいましたが、どちらも「被爆」するということで...

satocotoriさん。1993年ころ、僕はカザフスタン共和国のセミパラチンスクの核実験サイトに取材に行きました。全く無管理の状態だったので、核実験に使われた横穴のなかに入って行ったら、放射線の線量計が振り切れてダメになったことを今でも覚えています。「被爆」と「被曝」を厳格に分ける考え方の人もいますが、僕は本質的には同じことなのだという認識です。原子力発電所も核兵器も
使われている英語はnuclearです。全く言葉というのは厄介ですね。

なぜ、中国の、ウイグル核実験が出てこないんだろう??

金平さま
お返事ありがとうございます。
コメントを投稿してから、金平さん記事に無いカザフの話ばかりしてしまったことと原発の話まで出してしまったのが気になり、慌てて訂正したのですが、そこでもまた間違っていた...最初のコメントもずっと「爆」で全然気がつかなかったです。ありがとうございました。私も無意識的に感覚的に同じものという当然のごとく捉えていたので...爆弾は被爆で、それ以外に浴びる放射能は被曝ということですね。英語では両方ともnuclearとのこと。日本語も平仮名を生かし「被ばく」あるいは「ひばく」がいいですね。
カザフに、しかも93年と言ったら最後の核実験からあまり経ってない時に行かれたのですか。放射能の話恐ろしいです。他はどんな様子だったのか、また機会があったら教えてください。
それにしても、あの澄みきった青い海美しい自然の太平洋上の島々における核実験というのは、どうして思いついたのか...考えられない。もちろん他の場所でもそうですが...いずれにしても利用されるのは、国連で発言してもほとんど顧みられることの無い国や国連に行くことすらない国、民族、その他の生き物たちということでしょうか。

なぜ、中国の、ウイグル核実験が出てこないんだろう??

カザフスタンについての番組は、NHKスペシャルZONE [核と人間] でしょうか。これはお薦めです。アインシュタインが見つけた公式から日本に投下されるまでの流れ。放射能が染色体を切断し生命を破壊する過程。広島・長崎・東海村・チェルノブイリ・カザフスタンをリンクしてその実態を躊躇なく映します。中でも核実験で作られた核の湖チャガン湖で泳ぐ人には戦慄が走ります。事実の検証の中に、原民喜、オッペンハイマー、ブレヒト、井上ひさしの劇や詩を織り込んで、不滅のエネルギーを手にしたことへの恐怖を語る部分が胸に迫ります。本当によくできたドキュメンタリーです。環境に一番いいのが原発だという方向性がいかに危ないものか、これを何度も見ては心に刻んでいます。それにしても今回の採択は画期的。核の時計を戻して新たな一歩にしなければ。Nuke North Koreaなんて恐ろしいことが平気で言えるアメリカの極右なんかに負けません。(個人的な経験です。)

国連関連のニュースについてもうひとつコメントを。チャべスやイラン大統領の(名前が覚えられない)毒の強い演説は無視されますね。カダフィのoutrageousな演説は国連なんて外交ショーだと言わんばかりです。弱肉強食への批判演説を見るにつけ、似て非なるチェの国連演説を思います。植民地時代に見えなかったことが、自由になった目で見える。西洋の国々の文明の裏にハイエナとジャッカルが隠れている、と。搾取する側、される側、国連決議の公平性、チェの時代からどれほど解決されたのでしょう。今も中東の地では何万という人が殺されています。誤った単独行動に走ったからといって、アメリカに制裁が与えられる訳でもなく。しかも世界はさっさと未来志向にchangeして、破壊され尽した人々は置き去りにされています。マーシャル諸島からの演説を読ませていただき感謝。これからも弱者のかすかな声を拾い集めて伝えてくださいますよう。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
↓ ↓ ↓

『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
↓ ↓ ↓

『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.