Calendar

2009年3月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

« 2009年2月 | メイン | 2009年4月 »

2009年3月30日

[速報]オバマの本気度。GMのCEOを辞任させる。

 アメリカ東部時間の日曜夜に大きなニュースが飛び込んできた。GM=ジェネラル・モーターズのリック・ワゴナー会長兼CEOが辞任するという。しかもオバマ政権が、経営難に追い込まれているビッグ3(自動車産業。実際はGMとクライスラーの2社に対して)への追加支援実施の条件として退陣を促したのを本人が了承したという。この絶妙なタイミング。あした30日の午前中に政府の追加支援策の内容が発表されるという矢先の政府高官からのリークである。オバマは本気である。政府の民間経営へのこれ以上ないほどの介入だ。第一報は今、評判がガタ落ちのCNBCが報じた。その後、ウォールストリート・ジャーナルやNYタイムズなどが続々「裏をとった」として後追いした。

 これまでの矢継ぎ早のオバマ政権の積極介入策を評して、アメリカの論壇では、右派からは「社会主義化」「Back in the U.S.S.A.」などという皮相な批判が出ている一方で、左派経済学者のポール・クルーグマン(08年度のノーベル経済学賞受賞者)や、ジョセフ・スティグリッツらからも痛烈な批判の声が出ている。特にポール・クルーグマンの批判は一貫していて、オバマ政権の景気対策法案の中途半端さを追及し続けており、ガイトナーらが打ち出した銀行救済策が「zombie idea」(死に体法案)だと酷評している。先のAIG幹部らへのボーナス支給問題でのオバマ政権の対応ぶりと言い、この政権の本気度が伝わってくることは確かだ。

 その背景として、オバマ政権特有の支持者向けポピュリズムを指摘することは簡単だが、もっと広く見れば、レーガン政権以来この国に根付いてしまった経済活動の根底にある考え方に対する「修正」が企図されているのではないか。

 いずれにせよ、この国は大きなチェンジを迎えている。

2009年3月20日

悪いのはAIGボーナスだけか?

090320_1.JPG
AIGのヘッドクォーターのビル(睥睨するような威容)

090320_2.JPG
テレビでおなじみのAIG本店

090320_3.JPG
カメラを直角に見上げないと写せない

090320_4JPG.JPG
ヘッドクォーターには立ち入れない

 AIGボーナス問題でオバマが大見えを切れたのは、結局は、世論の怒りをバックにして、AIGに対していわば「恥を知れ!」と断じたことなのだろうが、近年のこの国の経済発展は、そもそも恥を知らないところから生まれてきたのではなかったのか? 

 きのう、春めいてきた天気に誘われて、ウォールストリート近くのAIGヘッドクォーターや本店があるビルまで散歩した。AIGと言っても、オバマ政権から再建役として(報酬1ドルで!)送り込まれたCEOのエドワード・リディ以外に、顔が見えないから、テレビや新聞でみるAIGのイメージは、AIGのサインがみえるガラス張りのビルディングでしかない。このビルも商業地区の一等地に堂々と構えているが、その目と鼻の先にヘッドクォーターが入った馬鹿でかい高層ビル(通称アメリカン・インターナショナル)が聳え立っている。どちらのビルにもこのところ見物人やメディアの撮影部隊が来ている。特に、ヘッドクォーターの入ったビルは、頭を直角にして見上げてみないと全体がわからないくらい、その睥睨感、威圧感は圧倒的だ。つまり、「困っている」「破綻しかかっている」などというイメージは微塵も沸かない建物なのである。何と、18日になって、このヘッドクォーターのビルディングをAIGが売りに出すとの情報が入ってきた。なぜ、公的資金注入の前に、ビル売却が進められなかったのだろうか。(日本の東京にも皇居を見下ろす一等地にAIGビルディングがあるけれど、その所有権はどうなっているのだろうか。日本の現在の不況のもとでは、大手の不動産会社も買えないような金額がついているらしいのだが。)

 そうしたなかで、きのう下院の公聴会で、リディ会長が発言した。批判が集中しているボーナスについては、すでに数百人の幹部・社員に自主的に半額を返還させるプランを進めているという。これに対して、議会側は、何と90%の税率を課すというボーナス税法案を通してしまった(19日に下院で承認)。何だか漫画的な展開になってきた。ナンシー・ペローシ下院議長は「納税者にお金を取り返すのだ」と息巻いている。
 
 ことは、AIGだけで終わるのかどうか。他の金融機関はどうなのか。シティ・コーポレーション・グループやバンク・オブ・アメリカはどうなのか。そもそも、住宅金融のフレディ・マックやファニー・メイの幹部のゴールデン・パラシュートは、もう不問に付されるのか。リーマンブラザースはどうか。渦中のAIGを見ながら、密かにボーナス計画の発覚を恐れている幹部もいるかもしれない。
 
 一連のAIGをめぐる動きを論じるメディアの言葉のなかに、フランス革命やロシア革命、社会主義運動の語彙が登場しているのが何とも可笑しい。「AIG騒動で、革命が議会を席巻する」(ウォール・ストリート・ジャーナルのブログ・コラム)とか、例のCNBCのジム・クレイマーが、オバマのことをボルシェビキ、レーニン主義者とか言っていたのには、笑いを通り越して呆れるのだが、AIG批判の火付け役のひとりジョン・スチュアートの『The Daily Show』 は、今回の動きを「人民主義者の蜂起(Populist Uprising)」などとパロディにしていた。
 
 AIGをめぐる動きは単なるゲームではなく、今回の経済危機のある意味では本質に関わるストリーなので目が離せない。オバマは今夜のジェイ・レノのショーに出演するほか、来週火曜日のプライムタイムに国民向けの記者会見を行う予定だ。世論掌握を怠らないオバマの姿勢は何ともすさまじい。

2009年3月18日

AIGはPIGだという見出し

 朝方、Deliに立ち寄って、新聞スタンドをみたら、New York Daily Newsが大見出しで、「AIG is a PIG」(AIGは豚野郎だ)とデカデカと報じていた。キャピタリズムの総本山みたいなこの国で、公的資金(=国民の税金)を導入して一私企業を救済するという矛盾を棚上げしたとしても、その企業が尋常ならざるボーナスを受け取って恥じないとなると、それを知らされた国民のフラストレーションはとどまる所をしらない。もはや暴発状態になりつつある。このままだと、AIGは本当の意味での「存亡の危機」を迎えるだろう。規模は比較にならないけれども、かつての日本の長銀や山一と同じようになくなってしまうのではないか。17日、こちら時間の午後になって、ニューヨーク州のクオモ司法長官は、このAIGのボーナス支給の詳細を公表した。その内容がアメリカ国民の怒りの炎にさらに油を注ぐだろうことは容易に想像できる。それによれば、

▼73人が100万ドル(約9854万円)以上のボーナスを受け取っていた。
▼ボーナスの最高額は一人640万ドル(約6億3千万円)だった。
▼上位7人のボーナスは、400万ドル(約3億9400万円)以上だった。
▼上位10人だけのボーナス合計額は4200万ドル(約41億3800万円)にのぼる。
▼22人が200万ドル(約1億9700万円)以上のボーナスを受け取っていた。

 根本的な疑問は、何でこんな会社を救済しなきゃならないのか、ということだろう。オバマ政権は本気だ。

 さて、話題を変える。

検閲から自己検閲へーーー「反動」ということ

kane090318.JPG
シンポジウムで挨拶するドナルド・キーン教授

 ちょっと前のことになるが、今月の6日と7日に、コロンビア大学のドナルド・キーン日本文化センター主催のシンポジウムが開催された。テーマは、CENSORSHIP, MEDIA AND LITERARY CULTURE IN JAPAN: FROM EDO TO POSTWAR(日本の近現代における検閲)である。発表の分野は、文学や映画、ニュース映画、歌舞伎からはたまた紙芝居にまで及び、今の世の中の動向を考える上で示唆に富んだものだった。江戸期に、民衆娯楽の真ん中にあった浮世絵や歌舞伎の表現が、お上の意向によって自由を奪われていく過程や、戦争中の軍部による統制が文学者たちに及ぼした影響、アメリカ軍占領下でのGHQによるメディアへの検閲などを、アメリカ、フランス、カナダ、日本の研究者らがそれぞれのスタイルで発表していた。権力者らによる表現への外的な介入=検閲のちからが、いつのまにか表現者たちに内在化されてしまって、自己検閲(auto censorship)へと転化していくさまは、まるで今現在の僕らのおかれている状況を語っているように、発表を聞きながら、思っていた。つまり「反動」ということ。なかでも個人的に興味を引いたのは、戦時下で軍部の検閲を受けた川端康成の作中での伏字の使い方だった。これがとても可笑しくて、「○○○とは何だ!」などと記して、案外楽しんでいるのである。戦時中、『改造』誌上に発表された石川達三の小説作品は伏字だらけで、今から振り返ってみると、かえって検閲の実態を浮かびあがらせていた。GHQは、検閲した痕跡が残らないように発表せよというのが基本方針だったが、それに対するメディア側の抵抗の痕跡をたどるのは面白い作業だ。バージニア州メリーランド大学の「プランゲ文庫」に足を運べば、そのようなに痕跡に接することができる。発表のなかでは、何と言っても2日目の平野共余子さんの「占領期の日本映画に対するGHQの検閲」の話が圧倒的に面白かった。自己検閲の卑近なサンプルを、僕らは先日、ローマのG7財相会議の記者会見のあとにみたばかりだ。

2009年3月17日

AIGボーナス問題で世論に怒りの火がついた

 破綻再建中のAIG=アメリカン・インターナショナル・グループの幹部らに、巨額のボーナスが支払われた上に、さらに支払われようとしている問題で、ローレンス・サマーズ国家経済会議委員長が、言語道断(outrageous)と非難したのに続いて、16日になって、とうとうオバマ大統領自身が、ガイトナー財務長官に、1億6500万ドルの追加ボーナス支給を何とかやめさせるため、あらゆる法的措置を講ずる可能性を検討するように指示した。「現下の状況で、AIGのデリバティブ取引に関わった者たちが、いかなる理由でボーナスを受け取るに値するのか、理解に苦しむ。しかも特別の手当として1億6500万ドルもだ。彼らは、会社を生き延びさせようとしている納税者に対して、こんな言語道断のやり口を正当化できると思っているのか?」と、実に厳しい語り口で批判した。かねてから自分はウォールストリートを擁護する人間ではなく、メインストリート(大通りの一般の人々)を擁護する人間だと明言してきたオバマならではの発言だが。

 しばらく前から、破綻企業、特にシティ・バンク・グループなどの銀行・金融機関について、実質国有化に近い救済措置を打ち出しているオバマ大統領の姿勢に対して、「社会主義者」のレッテルを貼る向きがあったが、今回のAIGボーナス問題に関して言えば、民主党、共和党問わず、一様に強い非難の声が聞こえてくる。そう、ここのところ袋叩きにあっているCNBCでさえも、AIGのボーナス問題については、非難の声の広がりを受けて、刻々と細かく事実を報じている。
 
 AIGはどのような対応をとるのだろうか?

2009年3月16日

あきれて、ものも言えない。破綻AIGが巨額ボーナス支給。

THE JOURNALは随分と留守にしていた。一か月以上何も書かなかった。この間、アメリカでも日本でも相当にひどいことが起きていたが、何も書く気がしなかった。正確に言えば、書くことが何だか空しくなってしまったのだ。ひとつは、このTHE JOURNALも含めてだが、日本のメディアやジャーナリズムの水準がひどく劣化しているのを目の当たりにして、辟易したということがある。中川「もうろう」会見をめぐる絶望的な経緯は、僕らの国の政治、そしてそれ以上にメディアのあられもない姿を世界に露呈した出来事だ。また、これが東京地検特捜部かと見紛うばかりの、検察の歴史に●●を残すような●●●●●の●●をみるにつけ、それに異議を唱えようともしない日本のメディアのありように絶望的な思いを抱きながらも、●●●●の遺志を継ぐ●●や●●のことを考えながら●●●●●●●●●●●。大昔、僕も地検まわりの記者をしていたことがあった。安原美穂、伊藤栄樹や吉永佑介、堀田力、北島敬介といった人々が検察庁にいた時代である。秋霜烈日という言葉がまだ生きていた時代だ。「検察なんてつねに体制、権力の犬だったじゃねえか」と凄むような人たちがいることも僕は知っている。だが、「権力の犬」の方が、「犬の権力」よりはまだマシかもしれない。日本全体が犬のような存在になって、その権力そのものと一体化した司直がお犬様のために動く。それが妄想であれば、どれだけいいことだろうか。

アメリカもひどいことになっている。きのう、きょうのニューヨークタイムズやワシントンポストをみて、あきれて、ものも言えないような気分になった。破綻した大手保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)の幹部・社員に13日、総額1億6500万ドルを超えるボーナスが支給された。さらには契約上、今年中に2億3000万ドルが追加で支払われるという。1700億ドルの公金が救済資金として注入され政府管理下で再建されるはずのAIGが、このざまなのだ。とりわけ、巨額のデリバティブ商品を扱い、金融破綻の端緒となったAIGのFINANCIAL PRODUCTSという部署の幹部らにも960万ドルのボーナスが支給される(半分はすでに支給済み)という。日本には「盗人に追い銭」という諺がある。これは著しく社会正義に反する行為ではないのか。

「経済ニュース」を24時間体制で報じていた(とされる)アメリカのニュース・チャンネルCNBCが攻撃の矢面に立たされている。NY証券取引所の「現場」から記者たちが株価の推移を秒刻みで刻々と報じていたあのCNBCが、無謀な投資の先導役・チアリーダー役を果たしていたとして、今頃になって批判されているのだ。先週は、コメディ・セントラルの「The Daily Show」のジョン・スチュアートが、CNBCの「Mad Money」のホスト役のジム・クレイマーを「直接対決」でやっつけて、やんやの喝采を受けていた。アメリカのメディアもここまで堕ちている。実体経済と乖離した経済ショーを演じ続けてきたとの言われ方をしているCNBCの行状を糾弾できる資格が一体どのアメリカの主要メディアにあるだろうか。

アメリカでも、日本でも、中国でも、ロシアでも、ヨーロッパ諸国でも、健全な批判精神の土壌がメディアからなくなれば、司直と同様にメディアも、「権力の犬」どころか「犬の権力」に堕す。(注:●●は表現の手法として用いた。)

Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
↓ ↓ ↓

『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
↓ ↓ ↓

『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.