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オバマへの超熱狂とハドソン川の「奇跡」のかげで

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Amtrakに手を振る人々(1月17日)

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「ブッシュを逮捕しろ」Tシャツの人々がワシントンにいた。(1月17日)

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アジア・ソサエティ祝賀会のマイク・ホンダ議員(1月17日)

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就任祝いコンサートで歌うボノ(1月18日)

(いずれも筆者撮影)

17日からワシントンDCに来ている。NYから乗ったDCまで乗ったAmtrakが、たまたま「オバマ列車」の何本か前の列車だったので、線路の沿道には「オバマ列車」をみるために早々と集まった人たちが何を思っているのか、僕らの乗っているAmtrakに盛んに手を振ったりなんかしている。この超熱狂ぶりは一体何なのか。ユニオン・ステーション駅に降り立っても、もはや慶事の前哨戦が始まっている感じだ。先日のUSエアウェー機のハドソン川不時着の「奇跡」的な全員無事生還劇といい、何だか「いいことづくめ」のような空気に支配されている感じで、天の邪鬼な僕は、逆に危ないものを感じたりする。誰もオバマを批判できないような空気が醸成されるのは決してよくないことだからだ。ボルチモアでのオバマ歓迎集会には数万人の人が寒空の下でオバマ到着を待ちわびていた。アジア・ソサエティ等が主催したオバマ就任レセプションの盛り上がりも結構なものだった。18日の日曜日もモールでは50万人以上の人々が集まって、超大物たちが共演する無料祝賀コンサートが開かれていた。ブルース・スプリングスティーンやU2のボノ、スティービー・ワンダーやビヨンセといったセレブ歌手たちが歌っていたが、会場に行きつけなくて、モールの各所に設定されていた大スクリーンで我慢するしかなかった。なかでも、最後から2番目の「This Land Is Your Land」をB・スプリングスティーンと一緒に歌ったのは、何と今年89歳になるピート・シーガーだった。この曲に対する聴衆の喜び方は尋常ではなかった。踊りだす人が大勢いた。オバマ夫妻もとても楽しそうに体を震わせて手拍子をとっていた。まあ、ブッシュ、ローラ夫妻ならあり得ない光景だよなあ、と思いながらそれをみていたのだ。やはり、こういう所からしてアメリカは変わってくるのだ。聴衆にはこころもち黒人が多かったと思う。

さて、実はここで記しておきたいのは、こういう通り一片の「変化」についての表層的な記述ではなく、1月16日づけの「ニューヨークタイムズ」紙の1面に載った、とても衝撃的な日本に関する記事についてである。おそらく日本のメディアの多くは(自分の所属しているところも含めて)この記事を黙殺しているのだが、ある意味でとても強いインパクトを与える記事だった。それは政治家・野中広務氏の「出自」=被差別部落出身という、いまだ日本社会でタブーとなっている現実にあえて触れた記事だった。ノリミツ・オオニシ東京特派員の記事である。『日本にとっては、野中広務を政治の最高指導者に頂くことは、アメリカの選挙で黒人を大統領に選んだことと同じくらい意義を有することだったはずであろう』。こういう刺激的な書き出しで始まるこの記事は、小渕内閣で官房長官を務めた野中広務氏について、次のリーダーを論議する2001年当時の自民党の秘密会議において、麻生太郎・現首相が「本気であんな人間たち(Those people)に日本国の指揮をとることを委ねるつもりなのか」と声高に発言して潰した経緯を、実名入りの政治家からの取材をもとに記しているのだ。記事は日本における被差別部落の歴史やタブーの現実を記しながら、日本にオバマが生まれない理由の一端を探ろうとしているようにみえる。オバマ登場の歴史的な文脈を考えるうえで、この記事のようなアプローチも十分にあり得るのである。ニューヨークタイムズ紙は、ガザ報道なので失望させられることも多いが、こういう記事も1面に掲載することを心にとめておきたい。

さて、就任式がいよいよ目前に迫ってきた。この出来事から日本は何を学びとるべきかを考えたいのだ。

Amtrak
全米を走る旅客鉄道のこと。"Amtrak(アムトラック)" という名前は "American" と "Track" の合成語であると公式サイトに載っています。正式名称は National Passenger Railroad Corporation といいます。車社会のアメリカではマイナーな交通機関と認識されているようです。

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この一覧は、次のエントリーを参照しています: オバマへの超熱狂とハドソン川の「奇跡」のかげで:

» オバマ就任直前のニューヨーク・タイムズ 日本の差別を撃つ;北口学 送信元 journalist-net
 ちょっと旧聞ですが、1月16日付の「ニューヨークタイムズ」紙の1面に載ったオバマ大統領就任直前の記事は刺激的な内容ですね。 「・・・ノリミ... [詳しくはこちら]

コメント (14)

ヒーローになったあの機長さんが就任式に招待されたんですって!!

日本では、黒人のように、部落出身者だから選挙権を与えられぬ歴史もないし、同じバスに乗れなかった時代もない。すくなくとも私が育った地域では…。

日教組の組合員だった歴史教師は、中学校の歴史の時間に、士農工商を教えるときに、その下に部落民がいることを囁きました。その意図は何だったのでしょうか。今思えば、自虐史観そのものですね。

野中さんのように立派になった人について、差別的なことを指摘する・煽ることに意味があるのでしょうか。同様出身者は芸能界にも多いようですが、世の中に受け入れられているのが当然な素晴らしい人たちです。

とはいえ、タブーに戦う妙な男気で、実力もない人権的被差別関係者をヒーローに祭り上げることもあった。そういうマスコミの過去の歴史こそ、反省すべきではないですか。

ニューヨークタイムズのノリミツ・オオニシといえば反日で、日本を貶めることを目的に記事を書くことで有名な人ですよね。

彼がどういう意図で今回の記事を書いたのか、よく考えてみる必要があるのではないでしょうか。

>スポンタ中村さんへ

あなたの地域でどうなのか知りませんが、事実を知った上で書いて欲しいものです。

”次のリーダーを論議する2001年当時の自民党の秘密会議において、麻生太郎・現首相が「本気であんな人間たち(Those people)に日本国の指揮をとることを委ねるつもりなのか」と声高に発言して潰した経緯”

とありますが、麻生氏がこのように言っているのは野中氏の政治的手腕や能力を否定して言っているのではありません。ただ、彼がその地域で生まれ育ったということのみを持ってこういうことを言っているのです。これが差別でないとおっしゃるのでしょうか?

こちらの日記で突っ込まれてますよ。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090121

コメント欄に書いてありましたが、私も日本の部落差別は黒人差別とイコールにはならないと思います。

「こちらの日記」を見ましたが、正視に堪えないものでした。「自虐史観」という言葉が好きな方特有の強引な牽強付会ですね。

部落差別など存在しないのだというのならそれも一つの意見としては聞きますが、事実に基づいて考えていただきたいものです。

この麻生氏の発言が事実あったとして再度お聞きしたいのですが、この発言は野中氏の出自を指して「あんな人間たち」と言っていると私は思うのですが、あなたはそうは思わないのですか?そしてそれが差別だとは思わないのでしょうか?

>tooruさん

僕も「こちらの日記」とやらを読みましたが、書き方は鼻につくものの(笑)、そこで書いていること自体はさほど信憑性を欠くとは思いません。
やはり、この記事だけでは、麻生氏の発言が出自のことを指しているのかどうか定かではありませんよね。
そのサイトでは、どちらかというと記事がもう一歩踏み出して信憑性を確保しなかったことが残念であるといった論調であったと思いますが。


>スポンタ中村さん

その歴史教師の発言が「自虐史観」となぜ結びつくのか分かりません。
部落民のような存在は士農工商の時代には世界的にもめずらしくないですし、部落があったからといって日本だけが悪いという根拠にはなりませんよね。
その教師は世界にはそういう悲しいこともあったけど、そういう歴史を乗り越えてきたんだとポジティブな意味で言ったのではないですか?


若者の間では、部落差別なんて日本には存在しない、実感がないと思っている人が大多数だと思うのですが、こういうのもマスコミでタブー視されているからなんですかね?

>ハヤタさん

どこの地域に住んでおられるのか知りませんが、一度「被差別部落」と呼ばれる地域に住んでいて、現実に就職等の差別を受けた人に「若者の間では〜」という質問をされてみてはいかがですか?

知らないのならそれでいいですが、自分が知らないからといって、そういう事実が存在しないわけではないということを知って欲しいと思います。また、知らないのなら、昔と違って今はネットという恵まれた環境があるのですから、せめてある程度の事実を調べた上で発言して頂きたいと思います。

知った上で、スポンタ氏なり、貴殿なりがそうおっしゃるのなら、私はそれ以上言うことはありません。

別に被差別部落出身だから殊更に保護しなければならないというつもりはありませんが、「差別はない」とか、「あんな人間は、」とか言うこと自体が差別に加担している者の言い方であると知ってほしいと思います。

>tooruさん

返信が遅くなりました。
誤解されているようで、別に差別を肯定したり、その存在を否定したりしているわけではないのですよ。
不勉強なのは事実ですが。

タブーとか、秘密会議とかというものに関する情報は全体として信頼性が低いので、しっかり検討する必要があるというだけです。

麻生さんがもし本当にそういう主旨で「あんな人間」という発言をしたのだとすると、能力面だけでなく倫理面でも首相失格だと思いますよ。


例えば、ずっと東京に住んでいる20代の若者の一体何%が部落差別に対する知識や問題意識を持っているのでしょうか。
残念ながら、僕の近くを見る限りでは、ほとんどいないと思います。

ご批判などありがとうございます。ただ、活発な意見の応酬はすばらしいことなのですが、記事を書いたご本人が加わっていないことが、私はとても残念です。私が指摘しているのは、部落問題の重要度の勘案であって、その真実性ではありません。米国に新大統領が誕生するについて、日本人が読み取るべきは、差別の歴史なのだろうか。というのが、私の問題意識です。さらにいえば、米国紙がそのようなことを書く意図を慮るべきです。

「弱者・差別者を無くすこと」が日本社会に求められていること。だから、「弱者救済」の言葉のもとに「弱者温存」はダメ。2009年において、マスコミ者が喧伝すれば、「弱者温存」につながる。戦後日本、私たちは人権団体の要求にしたがって「弱者救済」をしましたが、様々な歪みを生みました。そのことを私は指摘したいと思います。

さらにいえば、マスディストリビューションのメディアで伝えるべきことと、P2Pのコミュニケーションで達成するべきことは別なのです。

この案件に発言すればするほど、当該案件の重要度を増すことになるので、真実性の議論には私は参加いたしません。

労働も就職も流動的になっており、被差別出身でなくても、それぞれの出自がその選択を制限する場合もあることは自明なことです。不自由な部分をことさら取り上げて暗くなるよりも、自由な部分を広げていく。それが前向きということではないでしょうか。

>ハヤタさん
以前野中氏自身が週刊誌に対して単独インタビューでこの件に関して発言されていました。それも野中氏のうそだと言われたらそれまでですが、そこで野中氏は出自について「あんな人間に...」ということを言われた。麻生氏が総理大臣になることだけは命を賭しても阻止する(阻止できませんでしたが。)とありました。

ハヤタさん、確かに「東京に住む20代の若者」が持つ問題意識はそんなものかもしれませんが、だから「部落差別なんて日本に存在しない」わけではないということだけ理解していただきたいです。
現実にこの麻生氏の発言が部落差別そのものですからね。

>スポンタ中村さん
オバマ新大統領の何が斬新的なのか、特徴的なのか、と言えば彼が「60年前にはレストランで給仕を断られた男の息子」であることには異論がないと思います。このことでアメリカが黒人差別を完全に克服したとは言えませんが、少なくともこういった出自の人間を大統領に選んだことは非常に意義があると思います。

その点と対比して日本には日本独特の差別があり、この野中氏に対する麻生氏の発言とそのような意識の人間が総理大臣になっている日本の現状を問題提起することは意義のあることだと思います。

なお、あなたの”「弱者・差別者を無くすこと」が日本社会に求められていること。~”以下の文章の意味が私には理解できませんでした。

最後の段落について一言申し上げますと、あなたがどこのなんという町で生まれたのか知りませんが、あなたの履歴書を見て、あなたがどれだけ優秀であろうとも、「あなたは○○町出身だから採用しません。」「あなたは○○町出身だから総理になんかさせません。」といわれて、それでも”不自由な部分をことさら取り上げて暗くなるよりも、自由な部分を広げていく。それが前向きということではないでしょうか。”と言えるのでしょうか?

意見の応酬が生産的に展開されることは、それ自体、よいことだと思います。アメリカの歴史における黒人大統領誕生の意味を考える上で、日本の被差別部落の例を出してきた視点に、意外というか、虚を突かれた感覚を持ったことから記事を書きました。差別の根源に潜む「優越者」観や、それを克服していく歴史的な過程に何か共通点があるのではないか、とも考えました。こういう議論のなかで「自虐史観」とか「反日」というタームが、レッテル貼り以外の何者でもないような使われ方で登場してくるのは危険だと思いました。少なくとも、オバマが「セルマの橋」や「モンゴメリーのバス」という言葉を使うことに対して、アメリカでは「自虐」とか「反米」などという言葉は絶対に聞かれないでしょう。不都合な史実に向き合う勇気を感じたことは事実です。もっともアメリカの教科書でも、原爆投下に対する記述は納得がいかないこともありますが。

自民党の党員が自民党に投票しない人には部落差別するぞといって選挙対策のツールに組み込んでふれまわる地方のなんと多い事か、自民党上層部の意識が下層におりてくる,いつまでもその意識のなかで暮らしていたいかい選挙権をもつみなさん 
WE CAN

一番上のコメントのような「自虐史観」と称し、自らの歴史の過ちから目を背ける連中の「恥知らず史観」が日本のネットにも蔓延していますね。少しは歴史を勉強しなさい。被差別部落の問題にしても、在日朝鮮人に対する差別と迫害の歴史についても日本ではタブーとされています。あるいは現在進行形で米国務省から人身売買と名指しで非難されている日本の18万人に及ぶ中国人留学生強制労働問題などなど・・・。そんな民族が中国あたりの人権侵害を非難したりしているのですから笑止千万です。日本人という人種は今も昔も恥知らずな点は変わっていないようです。

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Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

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『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
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『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

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