Calendar

2008年10月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

Recent Trackbacks

メイン | 2008年11月 »

2008年10月31日

そして、最後は「反ユダヤ=親パレスチナ→ネオ・ナチ」?

081031_3.png

 投票日まで秒読み段階になった。こちらのメディアでも「地滑り的」(landslide)勝利という文字が頻繁にみられるようになった。けれどもまだ本当のところ、どうなるかはわからない。追い詰められれば、人間、ホンネが出てくるものだ。マケイン/ペイリン陣営の中傷攻撃も、これまでオバマに対して「社会主義者」「親テロリスト」のレッテル貼りを続けてきたが、ここに来て「反ユダヤ=親パレスチナ→ネオ・ナチ」という、かなり危険なレッテル貼りがみられるようになった。きっかけは、『ロサンゼルス・タイムズ』が「隠している」とされている2003年のある夕食会のビデオテープをめぐってのことだ。右派メディアやブロガーが『ロサンンゼルス・タイムズ』がそのテープを公表しないとして騒ぎだしたのだ。問題の夕食会は、コロンビア大学・中東研究所所長の歴史家、ラシッド・ハリディ教授を讃える夕食会で、その席でハリディ教授がイスラエルの政策を批判するスピーチをしたというのだ。マケイン/ペイリン陣営は、ハリディを「PLOの代弁者」であり「反イスラエル主義者」だと断罪し、挙句の果てには彼を「ネオ・ナチ」と譬えたりしている。右派メディアによれば、その夕食会にはオバマも出席していて、彼を讃えるスピーチをしたという。さらには、その夕食会には元ウェザー・アンダーグラウンドのビル・エイヤーも出席していた、などと内容がどんどんエスカレートしてきた。

 「反ユダヤ」のカードはアメリカ社会では影響力が大きい。さすがに31日づけの『ワシントン・ポスト』紙が、「愚かな風」と題して社説で、マケイン/ペイリン陣営のこの攻撃を「恥ずべき中傷(veil smear)」と批判していた。ラシッド・ハリディ教授はワシントンポスト紙の問いかけに対して「愚かな風は吹き過ぎるがままにしておくのが自分の流儀だ」と答えたそうだ。エドワード・サイードもコロンビア大学で教鞭をとっていたが、いくつもの中傷攻撃(中には学生からのものまであった)に敢然とたたかっていた。
 
 いくつかのブロガーたちがこうした「愚かな風」に対して、その愚かぶりをさらす作業を続けている。オバマの支持集会に「奴はイスラムだ」という看板を持ち込んでいた男が論駁されるシーンがUPされていて実に面白い。ブロガーの機能が実にさまざまな展開をみせているのが今回の選挙だ。(http://link.brightcove.com/services/player/bcpid1417423198?bctid=1890029878
 
 最新のギャロップの調査では、オバマ52%:マケイン41%となって11ポイントもの差が開いた。

3360万人が昨夜のオバマ選挙Informercial をみていた

IMG_2055.JPG

IMG_2057.JPG

IMG_2063.JPG
1)ケネディ・ニクソンのテレビ討論を新型テレビで! という広告
2)不人気のマケイン等身大写真
3)人気のオバマ写真
(筆者撮影)

 なんだかんだ言っても、オバマの勢いは止まっていないようだ。昨夜のオバマの30分選挙CM番組は、ニールセンの調査では3360万人もの視聴者がみていた計算になるという。もっとも7局ものチャンネルが放送していたのだから、視聴者数が多いのは当然だといえば当然だ。しかし、ワールド・シリーズ最終戦の視聴者数を70%以上も上回っていたというのは、かなりのことがらではないだろうか。ニールセンの推計では、視聴者の71%は白人、17%が黒人、15%がヒスパニックだったという。3大ネットワークのなかでは、ABCが放送を見送って、通常の番組『Pushing Daisies』を放送したが、これも先週より21%も視聴者数が増えたという。オバマ陣営がこの時間帯を巨額の資金で買い取ったという事実がどこかに消し飛んだしまった感がある。

 さて、折から、ニューヨーク市立博物館で、歴代大統領選挙キャンペーンの展覧会があったので、ちょっとのぞいてみたが、これが思いのほか面白いのだった。ニクソンとケネディが争った時代の選挙キャンペーンで使われたポスターやバッジ、その他の細かな小道具などが所狭しと展示されている。オバマとマケインの等身大の写真も置かれていたが、見学客に人気のあるのは圧倒的にオバマの方だった。気の毒になるほどマケインの写真には寄って行く子供たちが少ない。http://www.mcny.org/exhibitions/current/campaigning-for-president-new-york-and-the-american-election.html

 きょう現在の、ギャロップの調査ではオバマ50%対マケイン45%と5ポイントの差である。
 
 ちょっと古い話になってしまったけれど、プレイム・ゲート事件に絡み、法廷での証言を拒否して収監されたことのある元NYタイムズの記者ジュディス・ミラーが、FOXニュースに雇われるという記事が、1週間ほど前のワシントンポストにあった。8年に及ぶブッシュ時代のさまざまな傷が収まるべき所に収まっていくような気がする。

2008年10月30日

社会主義者の次は秘密共産党員?

IMG_2048.JPG
↑29日のテレビ欄に「オバマの政治メッセージ」とある

 投票日まであと6日。激戦州のひとつ、ノースキャロライナ州での遊説で聞かれたオバマの演説からは、余裕のような空気さえ漂っているように感じられた。マケイン/ペイリン陣営から浴びせられているオバマへの「社会主義者」攻撃に対して、彼はこんなことを言ってのけた。「今週末には、彼(=マケイン)は私のことを秘密共産党員だとか言って非難しだすんじゃないか。幼稚園でオモチャを共有してたとか、ピーナッツ・バターやジャム・サンドイッチを分け合っていたとか文句をつけてね」。聴衆の笑いを誘っていたけれど、こういうマケイン側の中傷のやり口は、明らかに今では時代遅れじゃないのか。あらゆる事前の調査がオバマ優勢を伝えるなかで、増長は禁物と警告を発している人も少数だけれどもいる。

 こんな中で、期日前投票や有権者登録名簿で奇妙な動きが出ているというリポートが目についた(Ammy Goodman のDemocracy Nowをたまたまみていた)。アメリカの選挙では電子投票システムがかなり導入されているので、何があってもおかしくない。2000年のフロリダ州の例だってある。今年の場合、オハイオ州の20万人の新規登録者について、共和党側が、政府のデータベースと合致していないとして投票権を停止するように要求した。州の裁判所はこの要求を退けたが、ホワイトハウスは司法省に調査を求めているという。コロラド州のデンバーでは、期日前投票の投票用紙11000枚が発送されないというトラブルが起きているという。何があってもおかしくないのだ。こういう組織的な工作が不可能ではないという実例が、アメリカではあったのだから。
 
 さて、問題の今日午後8時からの30分間におよぶオバマのテレビ選挙CM。 informercial、つまり情報(information)と宣伝(commercial)の合体、というイメージだけれど、そういう新造語が使われている。オバマが番組全体のキャスター=ナレーターになっていて、いかにもホワイトハウスを彷彿させる部屋から語りかけている番組の作りを見ていて、こりゃあ途轍もないことが起きているのだな、という思いを再認識させられた。オバマ陣営にとって、今夜の選挙CMは決してマイナスにはなっていないと思う。もともと見たくない人は見ないのだし。

2008年10月28日

プライムタイムに30分の選挙CMを買ったオバマ

2094557220_372e7a998e.jpg
バラク・オバマHPより

 Too much is as bad as too little. 過ぎたるは及ばざるがごとし。大統領選挙の最終局面で、あらゆる調査で優勢に立っているオバマ陣営は、あした(29日)のテレビのプライムタイム(午後8時)から何と30分間の選挙キャンペーンCMを流すという。商業放送なんだから、テレビ局が売ると決めれば、それで何の問題もないとされるのが、ここアメリカという国だ。日本の「常識」にがんじがらめになっている僕は、こういう事態を目の当たりにすると、冒頭に記したような心配を抱いてしまうのだ。やり過ぎるとかえってマイナスだよって。CBSとNBCはこのオバマ陣営の提案にすぐに乗っかったが、ABCはずっと態度を保留していた。それがFOXやMSNBCといった他局の動向を横目に見ながら、27日になって、オバマ陣営に「やっぱり放送しようかな」と再交渉の意思を示したという。でも、遅すぎるよ。ワシントンポストは皮肉をこめてこの出来事を報じている(ABC Jumpes Too Late On Obama’s ‘Buy’)。夜のプライムタイムに30分も自分たちの選挙CMを流す時間を買うなんて、さすがにチカラが正義なり、というこの国のありようをよく示している、と僕は思ってしまう。ちなみに、購入額は1局あたり、およそ100万ドル(9800万円)だという。ネットなどを通じて、国民がオバマ陣営に寄付した資金がこういうふうにテレビ局に還流する。それで何が悪いの?と問われれば、うまく説明ができない。当日は大リーグのワールドシリーズの試合があるが、試合の開始時間を15分遅らせることで、試合を中継するFOXも「買い」に踏み切ったようだ。オバマ陣営がテレビCMに費やした額は、とんでもない金額に達しているという。マケイン陣営を大きく引き離している。問題は、このCMをアメリカ国民がどのように見るのか、受け止めるのかということである。

 ここで全く論議されていないことは、日本の「常識」で言われる、放送の「公正・中立」といった原則との関連である。何が「公正」か。商業放送の時間帯は誰でもお金さえあれば購入できる。ただ、日本ではどうだろう。たとえば、特定の宗教団体がお金にものを言わせてCM時間帯を大量に買ったらどうなのか。たとえば、「問題企業」がお金にものを言わせてCM時間を買ったらどうなのか。「中立」の概念は、さらに混み入っている。大金持ちと貧しい候補が同等に扱われるなんてことはあり得ない、この国では。日本でよく言われる「イコール・タイムの原則」なんて、選挙CMに限って言えば、机上の空論である。唖然とするしかない。もっともこういう議論自体が一部の人から言わせれば「社会主義」的だと言われかねない。
 
 ギャロップの最新調査では、56%対43%でオバマが優勢。期日前投票で投票を済ませた人のなかでも、オバマが優勢という結果が出ている。

2008年10月27日

度し難い女性がいる。もちろん度し難い男も

IMG_2028_2.JPG
↑オバマ支持ステッカーをよく見ます(筆者撮影)

 いよいよ最終局面に入った。今朝のNYタイムズの予測では、現時点での予想獲得選挙人の数は、オバマ286人:マケイン163人:五分五分の州89人という数字を掲載している。CNNは、オバマ277:マケイン174:五分五分の州87人という数字。いずれの数字もオバマは、当選に必要な選挙人270人をすでに超えている。これがどのようにこの8日間で変わるのか。遊説先での演説にも相当な熱が感じられる。

 CNNを見ていたら、フロリダの放送局WFTVのバーバラ・ウエストなる女性キャスターが、副大統領候補のバイデンに対して真顔で、カール・マルクスの一文を引用しながら「オバマの社会主義的な原則についてどう思うか?」と聞いていた。するとバイデンが彼女の質問を一笑に付して「冗談言ってんの?(Are you joking?)」と切り返していた。女性キャスターはムッとしていたが、こういう頭の構造の、度し難い女性がいるものだ。WFTVという放送局はそういう放送局らしい。

 また、テレビのトークショウ番組の司会者をつとめるエリザベス・ハッセルベックという女性がいる。このところ、1500万円余りの衣装代を使っているとメディアで叩かれているサラ・ペイリンを擁護して、マケイン/ペイリンの支持集会で、「そんなことを言う人は、悪意のある女性差別主義者よ!」と言ってのけていた。ここでも度し難い女性をひとりみたような気がした。マルクス主義者だとか女性差別主義者だとか、レッテル貼りが彼女たちのやり口である。
 
 まあ、度し難い男も同じようにいっぱいいるわけだから、別にどうということもないのだが、度し難い彼女らの堂々とした態度にいかにもアメリカを感じてしまう。ちなみに、ペイリン陣営のスタッフの9月の俸給で一番の高額者は、ペイリン専用のスタイリストが22800ドル/月、ヘアカットが10000ドル/月とのこと。
 
 イラク・シリアの国境を越えてアメリカ軍が、シリア領土内で軍事行動を起こした。これが大規模な軍事行動だったら、一気にアメリカの空気が変わってしまうほどのインパクトがある、と思うとおそろしくなる。

2008年10月26日

新聞社が社説でどの候補者を支持するかを表明すること

081027.JPG
↑バンパーに貼られたオバマ支持ステッカー(筆者撮影)

 日本の新聞社の「常識」が海外で全く通用しないことは普通にあることだ。というのは、日本の主要メディアが(新聞・テレビ・雑誌も含めて)かなり特異な環境に置かれていることもあるし、それとは逆に、海外のメディア環境にかなり奇妙なところがあることも事実だからだ。アメリカの大統領選挙で新聞各社が社説で支持候補を堂々と書き立てることに、日本の新聞読者はちょっと奇異な感じを抱くかもしれない。それって、報道機関としての「客観・公正・中立」の原則と相容れないんじゃないの? どっちかの立場に立っちゃったら、読者からみると、記事の中立性や正確さが信用できなくなっちゃうんじゃないの? 僕自身もかつてはそんなふうに思っていた時期もあった。今は違う。それは、記事の「公正・中立」という基準と社説が求められている機能が異なると思うからだ。さらにもっと原理的なことを言えば、「公正・中立」という基準はアプリオリに(所与のものとして)存在しているのではないということだ。「客観」基準については、「主観―客観」図式を根源的に疑っているからである。ここではこのことに立ち入らない。いつか別のところで記す。

 アメリカの新聞各紙は社説で投票日前に、社説でどの候補を支持するかを堂々と表明する。この大統領選挙の場合、NYタイムズ、ワシントンポスト、LAタイムズ、シカゴトリビューン、ボストン・グローブ、サンフランシスコ・クロニクルなど有力紙は雪崩をうつようにオバマ支持を表明している。マケイン支持を表明している新聞は、ニューヨークポスト(マードック系のタブロイド紙)とか、ボストン・ヘラルド(イラク従軍記者が米軍とともにイラク兵と戦ったことを得意げに記事にしていたクリッテンデン記者のいるあの新聞だ!)くらいで数では3倍以上の差がついている(リストはここ)。面白いのは、ここにきてサラ・ペイリンの地元アラスカ州の最大新聞『アンカレッジ・デイリー・ニューズ』紙が、オバマ支持を表明したことだ。同紙は社説で、「ペイリン(アラスカ州知事)の登場は我々のこころを魅了したが、国家は着実な手腕を求めている」。「ペイリン知事の副大統領候補指名で、大統領選の風景はくっきりと変化を遂げた。けれども、すべての判断を変えさせるまでには至っていない。結局のところ、この選挙は、サラ・ペイリンに対する選挙なのではない。冷静に見れば、彼女の伴走者=マケイン上院議員は、国家危急の時の大統領としては誤った選択である」。「もっとも重要なことがらは、オバマ上院議員が賢明な選択であるということだ」。

 こういう書き方を仮に、日本の朝日新聞や読売新聞などが社説で展開したらどのようなことになるのだろうか。ただ、日本の場合、議院内閣制で、国会の首班指名で首相が決まる仕組みなので、やりにくい面があるだろうが、言論・報道機関として、誰がいまの国政を率いていくリーダーとしてふさわしいのか、その理由はなぜなのか、ということを展開できる「言論の自由」が、日本にあるのかないのか。そのあたりは考えられて然るべきだと思うのだ。

 投票日まであと9日。全体状況に変化が生じる兆しは見えない。

2008年10月25日

笑いのめすチカラ・その2

 マサチューセッツ州にあるノーマン・ロックウェル美術館(ストックブリッジ)で開催されているスティーブ・ブロドナーの政治風刺漫画展をみた。あまりにも強烈な政治風刺漫画の毒気にかなり当てられてしまった。これこそがきのうも書いた「笑いのめすチカラ」のひとつなのだろうけれど、デフォルメの度合いがちょっとばかりきつ過ぎるようにも感じた。だから、あんまり笑えないのだ。同美術館で展示されている作品はこのウェブでみることができる。http://www.nrm.org/page283

 また、彼のホームページをチェックするとその作品のごく一部に触れることができる。相当な毒でしょ。http://www.stevebrodner.com/

 アメリカの政治風刺漫画は大統領選挙の年には元気になる。今年も先週木曜日にワシントンのナショナル・プレスクラブで毎年恒例の風刺漫画のオークションが開かれた。僕は残念ながら行けなかったが、これがなかなかの作品がそろっていたという。オバマやペイリンが描かれた漫画がたくさんあったそうだ。風刺漫画といえば、雑誌『NewYorker』の表紙に描かれたオバマ&ミシェル夫人のイラストが問題になったことがあった。風刺としてはあまり趣味のよくない表紙だった。日本でも、かつて宮武外骨が主宰していた『滑稽新聞』では、当時の水準としてはかなりの所まで風刺の実験を敢行していたが、戦後も赤瀬川原平の傑作『櫻画報』がある。今の日本では残念ながら、かつての笑いのめすパワーがすっかりナリを潜めて、風刺が成り立ちにくくなっているのではないだろうか。社会に柔軟性というか余裕、遊び心がなくなってきているのだろう。

 さて、投票日まであと10日を切った。今回の大統領選挙では期日前投票(日本で不在者投票と言われているもの)の割合が過去最高を記録しそうで、全体の30%近くに達する勢いだ。ギャロップの調査(10月24日づけ)では、すでに投票を済ませた登録者は11%、また近く投票をする予定だと答えた登録者が19%に及んでいるという。また、11月4日の投票日当日に投票をすると答えた登録者は69%。すでに投票を済ませた人の答えでは、オバマとマケインがほぼ拮抗しているという。ちなみにブッシュ大統領はすでに投票を済ませ、マケイン候補に投票したという。ホントかな。ボストン市内では、やたらと車のバンパーなどに「オバマ/バイデン」のステッカーが貼られているのが目につく。

2008年10月24日

笑いのめすチカラ

r-SANCHEZ-large.jpg

 数少ない、尊敬できる先輩のひとり、斉藤道雄さんの著書のタイトルは『悩む力』(みすず書房)だった。アメリカのTVメディアで今起きていることのひとつは、このタイトルをもじって言えば『笑いのめすチカラ』だ。ストレートなニュースがちっとも想像力を喚起しない、真実を伝える気迫を失っている。それに比べて、時事ネタで笑いをとるトークショー、風刺ニュース、パロディ・ニュースが思いっきり力を発揮している。『サタデー・ナイト・ライブ』(SNL)の政治パロディの人気沸騰ぶりは、現実の政治のウソ臭さにウンザリしている国民に大受けだし、政治家を鋭い皮肉で風刺するジョン・スチュアートやビル・マーのショーは本物のニュースよりも真実を伝えているとさえ思われている。今年のエミー賞でも、ジョン・スチュアートの『The Daily Show With JonStewart』が作品賞(バラエティ部門)を受賞した。昨夜、放送されたSNLの木曜版では、冒頭に超不人気のブッシュ大統領(のそっくりさん)が登場し、嫌がるマケイン(そっくりさん)やペイリン(おなじみティナ・フェイ!)に無理やり支持表明をするというパロディを流していて、こんなのが日本でもできれば本当に面白いのになあ、と思ってしまった。そういうビデオクリップが、ウェブ上の特定サイトにすぐにアップされて、かなりの人がそれをみている。もう何でもありの世界に近い。近い将来、ネット空間の重要な機能のひとつに、映像資料のアーカイブスが加わることはどうも止められない勢いなのではないのではないだろうか。
http://www.huffingtonpost.com/2008/10/23/will-ferrell-back-as-bush_n_137399.html

 さて、大統領選挙報道でかなりの人気を集めているのが、リベラル系の『Huffington Post』(インターネット新聞:NEWS BLOGS VIDEOコミュニティ)だ。これが本当に面白い。情報も早いし、かなり正確だ。ニュースセンスが良くて、かなり腕利きのジャーナリストが作っていることがわかる。きょうの話題をさらっていたのが、ペンシルベニア州ブルームフィールドで起きたとされる「事件」の顛末である。マケイン陣営の20歳の女性運動員が、ATMから現金を引き出そうとしていたところ、黒人の大男に襲われて金を奪われケガをしたとして警察に届け出た話が、まったくの作り話であったことが発覚したのだ。最初の話では、彼女の車に、マケイン・ペイリン支持のステッカーが貼られていたのに男が腹を立てて犯行に及んだとされていた。これがまったくのでっち上げだったというのだから、追いつめられるとここまでやるのか、という類の話である。しかもこの女性は顔に殴られた跡までしっかりと残っていた。FOXニュースや極右系のトークラジオは、このネタを繰り返し放送していたけれど、どう落とし前をつけるのだろうか。投票日までのあと11日のあいだに、この種の企てがいくつ起こることか。「彼ら」はあきらかに焦っている。

2008年10月22日

ペイリンの選挙用服装は15万ドル(=1500万円あまり)

081024_palin2.jpg
サラ・ペイリンの七変化(New York Daily News)

 アメリカの大統領選は総力戦である。政策内容を競うだけではなく、時にはイメージ戦略の優劣が勝敗に決定的な影響を及ぼすことがある。依然としてオバマ優勢という状況に変わりはないと思うが、今日になって、ペイリンの選挙キャンペーン用服装の費用が15万ドル(=1500万円あまり)にも達していることをメディアが報じ始めた。勤労者の味方だという主張をしていたのに、こんな高額な服装はちがうんじゃないの、と毒づくような調子が多い。『NYタイムズ』も一面から詳報している。ペイリンがこのほぼ1カ月余りのあいだに費やした服装の費用は、ニーマンマーカスに7万5千ドルあまり、サックス・フィフス・アヴェニューに4万9千ドルあまりだったという。気候風土の違う50州を遊説するのにさまざまな服装が選挙用装飾品(campaign accessories)として必要だというが、「Joe the Plumber(配管工のジョー)はManolo Brahniks(著名な高級靴デザイナー)の靴なんか履かないよ」と皮肉たっぷりのコメントを掲載していた。金融危機で苦しんでいる有権者の神経を逆なでするようなストーリーである。大衆紙の『New York Daily』でさえ、ペイリンの七変化ファッションを大きな写真で紹介しながら、共和党大会の際にペイリンが身につけていたジャケットはヴァレンティノ製で2500ドル(25万円あまり)だったと報じていた。まあ、派手さが売り物のペイリンのことだから、地味な安い服よりはアピールしたのだろう。有権者もそのことを十分に意識していて、派手さを楽しんでさえいるような向きも感じられる。大体、共和党の支持者のなかにも、セレブが高価な服装を身につけてアピールして何が悪い?という人々がいることは確かである。問題は、こういう情報がメディアの俎上に登場してくるタイミングや扱われ方である。ちょっと前には、ペイリンの国内出張の航空機使用の公費に、彼女の子供たちの分まで含まれていたとの情報が出ていた。明らかに彼女の「資質」に対して拒否反応が起き始めているのだ。

 きょう発表されたCBS/NYタイムズの調査では、オバマ52%対マケイン39%という大差がついている。日報ベースで連続支持率調査を行っているギャロップの最新調査では、オバマとマケインの支持率は、50%対43%。今回初めて投票に行く有権者は13%で、そのうちの65%がオバマに投票すると答えているそうだ。新しい風は明らかにオバマに有利に吹いている。この風向きが容易に変わるとは、現時点では考えにくいのだが……

 23日の夜になって、とうとうNYタイムズが社説でオバマ支持を公式に表明した。

文化・芸術・芸能は圧倒的にオバマ支持

1022.bmp

 オハイオ州グリーンの遊説集会にペイリンとともに姿を現したマケイン候補の演説をCNNライブで聞いていると、この人物の戦争観が如実に伝わってくる。アメリカに栄光をもたらす唯一無二の方法こそがどうやら「戦争」ということらしい。なかでも、ハ゛イテ゛ンの言葉を引き合いに出して、アメリカの大統領が外交で「試練(テスト)を受ける」なんて、ハ゛イテ゛ンは言っているが、冗談じゃない、偉大な国の大統領が何でテストされなきゃならなんだ、と、ほとんど苛立ちを隠していない。スピーチの最後でマケインは「Fight! Never Give up」を繰り返していた。この「強さ」という価値への揺るぎない信仰こそがマケイン=共和党の神髄なのだ。イラク戦争を勝利と言い切る。民主党支持のS君に感想を聞いたら「勝手に滅びろ!だね」と冷たい。

 さて、この種の集会の締めくくりでは、大体は景気づけでロックやポップスが会場に流れるのだが、ミュージシャンや音楽家、芸能人・映画俳優らのなかには、オバマ支持かマケイン支持かをはっきり表明している人たちが多い。日本だとなかなか考えにくいことだが、アメリカではふつうのことだ。日米の違いでどっちがマシかは即断しにくい。ただ、オバマVSマケインでいえば、文化・芸術・芸能では圧倒的にオバマ支持者が多い。オバマ支持者のセレブ・リストから名前を拾ってみると、映画俳優では、ブラッド・ピットやウィル・スミス、ジョージ・クルーニーとか、ベン・アフレック、ロバート・デ・ニーロ、レオナルド・ディカプリオ、ジョディ・フォスター、リチャード・ギア、 ショーン・ペン、スーザン・シャランドン、スパイク・リーら数の上でもセレブ度でもマケインを圧している。長年、共和党を支持してきたデニス・ホッパーも今回はオバマ支持を明言した。『W』でブッシュ役を演じたジョシュ・ブローリンもオバマ支持だ。ミュージシャンに至っては、ボス、こと、ブルース・スプリングスティーンをはじめ、このあいだNYでオバマ支持のコンサートをボスとともに開いたビリー・ジョエルや、スティビーワンダー、バート・バカラック、ボブ・ディラン、シャキーラなど大物が目白押し。テレビ司会者のオプラ・ウィンフリーもオバマ支持をはっきり打ち出している。それで番組を降りるとか全然ない。さきにも記したように、文化風土が日本とは違うのだ。マケイン支持のセレブ・リストはオバマに比べると寒々としているが、クリント・イーストウッドが目立つ程度。なぜかアーノルド・シュワルツェネガーとかブリットニー・スフィアの名前がない。芸能・文化の世界はもともと民主党が強いと言われているが、この選挙戦でもその傾向がよりはっきりしているようだ。
  
 今日も、NY株式市場は、500ドル以上下がり、また9千ドルの大台を割った。有権者の不安心理が広がり、雇用、生活水準、社会保障といった身近な問題が、これからの選挙戦の行方を大きく左右するだろう。その時に、「Joe the Plumber=平均的な勤労者象」をどこに定め、彼らにどのような未来像を提示できるか。このことが最終的に有権者の判断基準になるのかもしれない。

2008年10月21日

「アカ」とか「邪教」というレッテル貼り

IMG_1978.JPG

 どうみても、オバマの優勢が動かないとなると、投票日まで、この後はlandslide victory(地滑り的勝利)か、それともdramatic upset victory(劇的な逆転勝利)のどちらかということになる。インディアナやフロリダで開かれたオバマの支持者集会には記録的な数の人々が押し寄せていた。劣勢に立たされた候補者マケインの側は、焦ってなりふり構わずの戦術をとる傾向がますます顕著になる。だから、ネガティブ・キャンペーン(中傷攻撃)に走る。

 CNNやWebサイトで今日、話題になっているのは、ヴァージニア州のウッドブリッジという町で行われていたマケイン支持者の集会での1シーンだ。一部の熱狂的なマケイン支持者が、ステッカーを配りながら「オバマは社会主義者で、イスラム過激派ともつながりがある」とガナっていた。その語り口があまりにも露骨で、取材記者がその男性に食い下がって説明を求めていたところ、穏健派とおぼしきオバマ集会責任者らがやって来た。彼らは「お前らは憲法を理解していないのか。イスラムもキリスト教も信教の自由があるんだ」とか非難し始めて、結局は社会主義者とか言っていた連中がすごすごと退散していった一部始終が撮られている。
http://www.huffingtonpost.com/2008/10/20/muslim-mccain-fans-confro_n_136203.html
 
 つくづく、どこの社会でも同じだと思う。社会主義者? 昔の日本だったら「アカ」という言葉がこれにあたるのだろう。オバマの一体どこが社会主義者なのか。今、もっとも「社会主義的」なのは、金融危機に際して、末期ブッシュ政権がとった破綻金融機関の買い取り=国有化、公的資金注入を柱とした金融安定化法であるというのに。サラ・ペイリンも、CNNの単独インタビューに答えて、オバマが社会主義的だという主張を繰り返しているのだ。

 イスラムというレッテル貼りにしても、オバマはキリスト教徒であって、イスラム教徒というのは根も葉もない話だ。マケイン陣営は、こういう狭隘な戦術をとることによって、決して数の少なくないイスラム教徒を敵に回したことになるのだ。「アカ」と「邪教」というレッテル貼りは、21世紀のアメリカにおいて、まだ威力を保っていると思われている。もっとも日本でも、こういうダーティーな戦術がまだ有効らしいが。
 
 しばしば足を向けているコロンビア大学のキャンパスでみつけたスティッカーがこれである。いわく「カール・マルクスは正しかった」と。アメリカにおいては、おそらく1%にも満たない少数派の人間たちが、この国にもまだ生き残っているらしい。

2008年10月20日

オバマが優勢なのだけれど

IMG_1887.JPG

 「こもんず」からの読者の皆様。お久しぶりです。「業務外日誌」はいったん閉じましたが、まだまだいろいろ言いたいことが山積しているのです。そう簡単には黙りませんので(笑)。

*       *         *

 今日から米大統領選挙の日報を連続して記していきたい。と言うのは、これはかなり根源的な変化がこのアメリカで起きるかもしれないという予感があるからだ。そのことを見越しているから、この2週間あまりの空気は、メディア上の些事まで含めて、記しておく価値があると思うのだ。

 日報ベースで連続調査をしているGallupの調査では、オバマとマケインの差は、52%対41%と11ポイントまで広がった。この週末は、例の共和党副大統領候補サラ・ペイリンが、NBCの夜の人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演していた。この番組では、女優のティナ・フェイが彼女の物真似(しかも皮肉たっぷりに)をしていたのが大いに受けて、一種の名物コーナーになっていたのだ。そこに本物が登場したとあって、何とその夜の視聴者数は過去最高を記録し、1400万人もの視聴者数を獲得したそうだ。僕もその夜の番組の後半をみていたが、彼女は政治家というよりもエンターテイナーとしての才能の方が豊かだと確信して、なかば呆れた。彼女のパフォーマンスがどの程度、マケイン陣営にプラスに働いたのかはわからないが、番組が終わってからも、インターネットで彼女の出演ぶりを検索した人たちの数が幾何級数的に増えていたのだという。

 また、きのう日曜日の朝には、コリン・パウエル元国務長官がオバマ支持を表明した。NBCの朝の「ミート・ザ・プレス」に出演してトム・ブロコウのインタビューに答え、オバマ支持を表明したのである。彼はブッシュ政権の国務長官を務めた人物である。同じ黒人というファクターを割り引いてみても、彼が共和党のマケインではなく、民主党のオバマを支持したインパクトは相当に大きいと言わねばならない。パウエルは「我々は、転換期にふさわしい人物(transformational figure)を求めている。世代交代(generational change)を促す大統領が必要なのであって、だからオバマを支持する」と明言したのだ。

 メディア・イベントとしては、これら2つはとても面白い出来事なのだが、肝心のNY市場の動きは、月曜日ごとの暴落というサイクルが今日のところは起きていない。バーナンキFRB議長やポールソン財務長官の前向きの発言によって株価はあがって、心理学のゲームのような形で、株式市場が形成されているのである。

 まだまだ、この2週間のあいだに何が起こるかわからない。しかし、オバマの優勢は現時点ではゆるぎない現実である。オハイオ州の「Joe the Plumber」(配管工のジョー=アメリカ人の典型的な労働者像)や、「ブラッドレイ効果」といわれる人種ファクターのありようを見据えながら、この2週間を見ていかねばならない。

 先週の金曜日からは、人間ブッシュを描いたとされるオリバー・ストーン監督の『W』が公開されたばかりだが、集客数は4位と客の入りはあまりよくないようだ。国民のブッシュ離れが映画においても顕著だ。つまり、ブッシュ政権に国民はうんざりしているのだ。このことは民主党にとっては追い風であり、マケインにとっては、いくら「一匹狼」とは言っても不利に働くのだろう。僕もこの『W』はみてみたが、チェイニーに操られるおバカさんのブッシュ、その実像は父親に対するコンプレックスに突き動かされた哀れなものだ、との描き方には、ちょっと不満が残る。オリバー・ストーンはどうしちゃったんだろう?

Profile

金平茂紀(かねひら・しげのり)

-----<経歴>-----

1953年北海道旭川市生まれ。1977年に在京の民間放送局に入社、以降、一貫して報道局で、報道記者、ディレクター、プロデューサーをつとめる。「ニュースコープ」副編集長歴任後、1991年から1994年まで在モスクワ特派員。ソ連の崩壊を取材。帰国後、同局で筑紫哲也氏がアンカーマンをつとめるニュース番組のデスクを8年間つとめる。2002年5月より在ワシントン特派員となり2005年6月帰国。報道局長を歴任後、2008年7月よりニューヨークへ。

BookMarks

-----<著書>-----

ブログが本になりました!
↓ ↓ ↓

『報道局長業務外日誌』
2009年6月、青林工藝舎


『米原万里を語る』
2009年5月、かもがわ出版、共著


『テレビニュースは終わらない』
2007年7月、集英社

人気のWeb日誌、出版!
↓ ↓ ↓

『ホワイトハウスから徒歩5分』
2007年6月、リトル・モア


慶應義塾大学出版会、部分執筆


『ジャーナリズムの条件4』
2005年5月、岩波書店、部分執筆


『従軍のポリティクス』
2004年7月、青弓社、部分執筆


『二十三時的』
2002年11月、スイッチパブリッシング

『電視的』
1997年12月、太田出版

『ロシアより愛をこめて』
1995年3月、筑摩書房

『世紀末モスクワを行く』
1994年12月、パルコ出版

→ブック・こもんず←



当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.