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2011年6月22日

山田正彦(元農水大臣):「農政」大転換──大震災と原発事故からの農業再生

 3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島原発事故。その後メディアや経済団体の復興計画には「バラマキをやめて日本も『強い農業』にかえていかないといけない」「東北の農業再生計画には『強い農業』を」というの言葉が並ぶ。
「日本の農業の現場を知らないで、無責任な話はやめてほしい」(あとがきより)
 飯舘村をはじめ被災地を飛び回った山田正彦前農水相が「『農政』大転換」を執筆、震災後の日本農業の方向性やTPP問題、今後の政局についてインタビューで話していただきました。

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『農政』大転換」(2011年6月、宝島社新書)

*   *   *   *   *

山田正彦氏(前農水大臣・民主党衆院議員)
「大震災と原発事故からの農業再生」
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 食料の自給率は下がり続けて今では40%。コメの価格は1俵(60キロ)あたり24,000円が12,000円を切り、コメを作れば作るほど赤字の状態が続いています。経済界とメディアはこのままでは農家の高齢化が進み日本の農業が消えてしまうので、TPPに参加して「強い農業」づくりを急げと大合唱を始めました。

 本当にそれでいいのでしょうか。

 民主党が2009年に政権をとり、EUの制度を参考にしながら農家の赤字部分を定額で直接支払う「戸別所得補償」のモデル事業から始めて、これから本格実施に入ります。その内容がどのようなものなのか、私がいままで考えてきた日本農政のグランドデザインをあらためてまとめたい、とこの本を執筆しました。

─この本では東日本大震災からの復興計画に触れられています。各企業・団体からの復興計画を見てみると、「強い農業」とは大規模、効率化農業を目指す意見が多いです

 東日本大震災やTPPの動きを見ていると、いまだに規模拡大による構造改革、集中化など新自由主義的な発想で農林漁業をとらえようとする声がたくさんあります。私は大規模拡大さえすれば合理化され、利益をうみ、競争力が増すとはとうてい思えません。それは私自身が農畜産業で実践、失敗した実体験をもとにした意見です。

 米国も規模拡大したから競争力がついたわけではありません。トウモロコシは代表例で、米国がトウモロコシによって世界を席巻したのは、1973年から1エーカー(約0.4ヘクタール)あたり28ドルの補助金を生産者に助成して大量生産されたことに始まります。モンサント、カーギルなど大手の穀物メジャーの支配下で、種子、肥料、農薬すべてが系列化され、農家は大型トラクターなど設備投資に追われて膨大な負債を抱えています。補助金によって国際市場でもどこの国の生産物よりも安い価格が実現したのであって、自由競争で勝利したとは言えません。

 また、大増産されてあまったトウモロコシはその後どうなったか。近年放映されたドキュメンタリー映画「キング・コーン」をみるとよくわかります。トウモロコシは家畜のエサや甘味料「コーンシロップ」として大量に流通、加工食品や炭酸飲料となって一般家庭で消費されるようになります。そのトウモロコシのほとんどが遺伝子操作され安全性にも疑問があります。これらを本当に「強い農業」と言えるでしょうか。

 この本ではBSEや口蹄疫の問題にも触れておりますが、もし日本が自然に逆らって大資本のもとに効率だけを重視した「強い農業」の方向を進むことがあれば、いずれ食の安全・安心も損なわれることになると思います。

─食の安全・安心という点で、所得補償とセットに進めるのがトレーサビリティの推進でしょうか

 トレーサビリティを進め、すべての食品に原料、原産国、生産者の表示をすれば消費者が安心して食べられます。安心だけでなく、国産農作物の消費上昇が予想されます。

 私は5,6年前からすべての食品に原料原産国表示を求めて国会に2回も法案を出し、その都度その法案は葬られていました。「お茶飲料については原料原産地を表示すべきだ」と取り上げていたので、農水省は飲料用のお茶の缶にも5年前から表示するようになりました。それまで輸入のお茶を原料としていたのが、国産の茶葉にかわり、南九州はお茶の一大産地になりました。

 リンゴジュースにしても約9割は輸入果汁ですが、そのことをみんなが知らされていません。韓国に行けば原料、原産国が表示されています。日本がトレーサビリティを徹底すれば、海外産の果汁ではなく、青森県産のリンゴを使ったジュースを飲んでくれるようになるのではないでしょうか。きちんと食品表示され、消費者が見分けるようになれば、国産農産物の消費量は変わってくるでしょう。

─民主党農政については「バラマキ」という批判があり、特に戸別所得補償については自民党があらためるよう求めています

 農家への直接支払いは、今まで国から農業団体を通していたお金を直接農家の口座に振り込まれむ画期的なものでした。農家の約7割が支持しており、仮に自民党への政権交代が起こっても戸別所得補償をなくすことは難しいでしょう。バラマキと言われるが農業予算は自民党時代のままでシフトしております。

 日本は長いあいだの自民党政権の下で、戦後高度経済成長をとげて自動車や電気製品を輸出すれば、その大きな利益で安い食料をいつでも輸入できると「農林水産業の安楽死」を意図的に進め、その結果が農家の高齢化、自給率の低下という事態を招きました。

 EUやイギリスはかつて自給率が30%台まで落ち込んでいましたが、今では農家の平均所得の約8割は国の助成金で支払われ、自給率を回復しました。EUは農産物の関税を19%とし、日本の関税の倍ぐらいをかけてしたたかに食糧の自給を堅持しています。家族での農業を主体にして、農地法で企業、法人の大規模化は規制しています。米国ですら一戸の農家で平均193ヘクタールを耕しているが平均所得の3割は国からの補助金でまかなわれています。

 日本の水田稲作にしても、10町歩(10ヘクタール)以上を超えると規模拡大のメリットがないことがわかってきました。大規模化は必ずしも良くない。大規模化している法人は利益を上げているかというとそうとは限りません。小さく多品種を植えている農家がほとんどです。日本は日本なりのやり方があります。麦やコメ、蕎麦、大豆などを組み合わせて生産し、所得補償を受けながら4〜5ヘクタールでやっていけるような農家を大事にしたいという気持ちを持っています。

★ ★ TPPと政局 ★ ★

─「『農林水産業の安楽死』を意図的に進める」といえば、前原元外相の「1.5%発言」を筆頭に「農業vs輸出産業」の構図をつくったTPPが思い当たります。本書でも触れられていますが、TPPは今後どうなりますか

 TPPについて政府は6月を期限とするTPP参加判断の「先送り」を発表しました。しかし発表直後の5月26日、菅首相は日米首脳会談の席でオバマ大統領に「早期の判断」を約束したと報道され、無視できない動きを続けています。政府がハッキリと「TPPに参加しない」と言わない限りは予断を許さない状況が続きます。

 ようやく再開した「TPPを考える国民会議」では、7月にニュージーランドのジェーン・ケルシー教授(※)を招き、宮城県の被災地をまわって講演をしていただく予定です。国民会議の地方集会は8月から再開する予定です。

※「異常な契約─TPPの仮面を剥ぐ」(著 ジェーン・ケルシー/農山漁村文化協会)は近日発売予定です。予約はコチラから→http://shop.ruralnet.or.jp/b_no=01_54010308/

─自民党は3月までに党内で意見集約する方針だったTPPの結論を先送りしています。震災前後でTPPの情勢がかわってきました

 気になっているのは自民党と大連立を組むという話で、政策合意文書に「TPP推進」を盛り込む可能性があることを私は耳にしました。自民党はこれまで「民主党が進めるTPPには反対」と言いながら、谷垣総裁、石原幹事長、石破氏が基本的に推進の立場をとってきました。また自民党は農水委員会でTPP反対の決議をしようと言っていたがそれも中断、党内は二分されていることがわかります。現在自民党の山田俊男(やまだ・としお)氏と話し、自民党内のTPP反対グループと「国民会議」の役員同士の意見交換をしようとしています。

─TPPは民主党代表選にも影響があるのでしょうか

 民主党代表選の争点はTPPと増税でしょう。震災後、財務省はすでに国は800兆円の財政赤字があり借金でやりくりしている、他の予算を削るか増税をしなければならないと主張しています。いまは増税よりもお金をまわす政策が必要で、30兆円ほど復興のための国債を発行すべきです。政府が持っている預貯金、有価証券などの金融資産を財務省は公表しないが、700兆円はあるとみられ、米国の国債だけで100兆円を政府は保有しています。国債発行すれば金利が上がって大変といいますが、財務省の思い通りにさせたら日本はつぶれます。消費税増税をうたうような人がトップになってはいけません。

(取材日:2011年6月10日 / 《THE JOURNAL》編集部 上垣喜寛)

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2010年9月19日

【インタビュー】高野孟推薦!菅野芳秀氏の新刊『玉子と土といのちと』が発売

「土とは何かは日本文明論の大きなテーマだ」(「高野孟の遊戯自在録005(8月4日)」より)

 《THE JOURNAL》主宰・高野孟がブログで『土の文明史』(築地書館)とともに紹介したのは山形県の農家・菅野芳秀さんの著書でした。今回の著者インタビューのお相手は菅野さんです。

 菅野さんは山形県長井市で養鶏農家を営む一方、市内全世帯を巻き込んだ生ゴミ・リサイクルのシステム「レインボー・プラン」を実現して全国で名を知られた地域リーダーです。

 明治大学農学部時代は学生運動に明け暮れ三里塚闘争裁判の被告となり、「パトカーが自宅の前に常駐し、隣近所に迷惑をかけた」というほどの「活躍」ぶりだったようです。

 現在は息子さんとともに約1000羽のニワトリを放し飼いで育てています。ついつい忘れがちな「暮らし」の視点が、新著『玉子と土といのちと』(創森社)の中にたくさん散りばめられています。ぜひ手にとって一読下さい!

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玉子と土といのちと

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菅野芳秀氏(農家)
「暮らし」中心の農業を
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 ニワトリと共に暮らした30年間で目にした「ええっ!?そうなんだぁ」という驚きや発見、そこから見えたニッポンなどを百姓仕事の合間に書き綴ってきました。

 みなさんが読むときは肩の力をすっと抜いて、日本酒を口に含みつつ、ペラペラとページをめくってくれたらいいかなと思います。そんな気楽な本ですよ。

─菅野さんの生活と、土とのふれあいがよく描かれていますね

 人々は長い間、畑や田んぼに堆肥をまき、土の栄養分を使い尽くすことなく暮らしてきました。小さな日本の中で農業を通して人々が暮らせた背景には、こうした土との持続的なつきあいがありました。

 今は土が疲弊しています。作物を育てる農業に必要な資源は土。土なくして私たちは生き続けることができません。土は私たちだけでなく、はるか未来に向かって種を撒き続けていく人々との共有資源です。しかし今、最小のコストで最大利益をあげようとする農法のなかで土の使い捨てが繰り返され、まさに枯渇しようとしてると思います。

─農家人口の減少や高齢化などの問題が山積しています。未来の農業には何が求められますか?

  これからの農業の母体となるのは「暮らしとともにある農業」だと思います。
 「暮らしとともにある農業」は家族農業です。家族といっても血縁関係とは限りません。NPOや人々の寄合も含めた「暮らし」を中心とした家族"型"農業です。暮らしがある以上、そこには子どもや孫がいます。子ども達を常に見ながら畑を耕し土と関わっていけることがいいと思います。そうすれば自然に、土の持続性を考える農業になっていくにちがいありません。

(文責・構成:《THE JOURNAL》編集部)

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 『玉子と土といのちと』は創森社より好評発売中です。ぜひ一読下さい。

【関連記事】
■菅野芳秀:夢の続き (よろんず)
http://www.the-journal.jp/contents/yoronz/2010/05/post_75.html

■高野孟の遊戯自在録006(高野孟の「極私的情報曼荼羅」8月21日に著書紹介あり)
http://www.the-journal.jp/contents/takano/

【関連映像】

(「土はいのちのみなもと」by zachoice)

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2010年7月29日

〈著者インタビュー〉森功:『腐った翼─JAL消滅への60年』

 発売直後に増刷が決まった注目作品『腐った翼―JAL消滅への60年』の著者・森功(もり・いさお)氏が、JALが再生できなかった最大の理由や今後の課題などについてインタビューでたっぷり話していただきました。

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腐った翼―JAL消滅への60年』(2010年6月、幻冬舎)

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森功氏(ノンフィクションライター)
「JALが生まれ変われなかった最大の理由」
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2010年4月 3日

《編集長インタビュー》『季刊 地域』が創刊!「これからの地域は複業化の時代」

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 『増刊現代農業』が改題リニューアルされ、4月1日に『季刊 地域』が創刊された。今回は創刊記念インタビューとして、甲斐良治編集長に話を聞いた。

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2009年10月 1日

【著者インタビュー】辺真一:「中国は北朝鮮に影響力がある」は勘違い

《THE JOURNAL》のブロガーとしてもお馴染みの辺真一氏(「コリア・レポート」編集長)の著書『45分でわかる! 14歳からの北朝鮮のすべて。』がマガジンハウス社より出版されました。

「冷却化する日朝関係がいつか氷解しわかりあえる日が来る」ことを期待する辺氏に、著書にこめた想いを聞きました。

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『45分でわかる! 14歳からの北朝鮮のすべて。』
2009年8月、マガジンハウス

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2009年5月29日

【著者インタビュー】玉木正之:『ロマン派の交響曲~『未完成』から『悲愴』まで』

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『ロマン派の交響曲~『未完成』から『悲愴』まで』
2009年5月、講談社

■共著者の金聖響(きむ・せいきょう)さんとの出会い
玉木:金さんとは、かれこれ十年以上の付き合いになります。北海道でPMFが行われたときに、彼はアシスタントの指揮者として参加していて、そこから話をするようになって、すぐに意気投合しました。何より、彼も大阪人で阪神タイガースのファンですからね(笑)。まぁ、それで仲良くなって一緒に本を出そうと。彼は当時の演奏形態を再現する「ピリオド奏法」という昔の演奏法を用いてベートーヴェンやブラームスの録音を行っていて、06年にリリースされた『ベートーヴェン:交響曲第6番《田園》』を聞いたら、すごくおもしろくて、それに関する本を出さないかとなりました。

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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