Calendar

2012年4月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

Recent Entries

Recent Comments

« 大山村塾「会場はこんなところでした」 ──結城登美雄の"あるものさがし"
メイン
仙谷・枝野の「再稼働前のめり」はヤラセ? ── だとしても国民愚弄に変わりはない »

ないものねだりよりあるものさがし ── 大山村塾第1回の結城登美雄講演の要旨

(※本記事は4月9日に配信された「高野孟のTHE JOURNAL」を掲載したものです)

 地域づくりというが、地域とは何か。個人があって家族があって、その家族の集まりが地域だ。家族のことを考えるのが地域づくりである。家族を英語でファミリーと言うが、その語源を辞書で調べるとラテン語のファミリアで、その言葉から英語のファーマー(農民)という言葉も派生したという。つまり、一緒に耕して一緒に食べるのが家族ということだ。日本でも100年前、いや50年前まではそうだったのに、耕すことと食べることが離れてしまったのが今の社会である。

●米と村

 従来、青森県に稲作が伝わったのは鎌倉時代とされてきた。ところが南津軽郡田舎館村垂柳遺跡の発掘で、弥生時代の畦で区画された水田の跡が発見され、2000年前からこの地で水稲栽培が行われていたことが明らかになった。私は司馬遼太郎が大好きで多くの影響を受けているが、彼が青森県など東北地方で米を作っていることについて「何でこんな寒冷地に本来は南方のものである米を無理矢理作るのか」と言っているのはどうかと思う。

 東北では、11月末から3月末、4月中旬まで5カ月間、雪に閉ざされて、その間は食物が採れない。その期間は縄文時代であれば南に移動したりして凌ぐのだが、いつも生きることへの不安に晒されていた。その人たちが米に出会って、美味しくて栄養価があり保存もきく米があれば長い冬を乗り切ることが出来ると思い、「希望の作物」として米を育てた。その東北の民の切実な思いを抜きに、経済効率だけで「こんなところで米を?」と言ってはいけない。

 田んぼがあって冬を越せるから「村」が生まれた。江戸時代に開墾が盛んに行われて、小さな村がたくさん出来た。当時は、補助金がないどころか、米に4割の年貢が課せられて、それでも村は潰れずに300年も400年も続いてきた。明治初めには、人口約3000万人の9割が村に住んでいて、7万1314の村があった。平均すると60〜70戸、370人の後に言う大字が村の原型だった。村は、自分たちで村をよくしようという力を持っていたが、この50年、カネに頼るようになり、補助金目当てに公民館を建てたり文化会館を建てたりして、それでもあれがないこれがないと、「ないものねだり」ばかりするようになった。特に男はそうで、自分らの住むところはダメだダメだと思ってきた。そうではなくて、この村にも大切なものがあると気付く「あるものさがし」は女が得意だった。

●7つの条件

 いい地域づくりのための7つの条件がある。

 第1は、いい自然の風土があること。3・11は、人工ではダメで、自然の上に暮らしを営んでいることを忘れるなという警告だった。もう一度、暮らしの土台を見直さなくてはならない。

 第2は、いい仕事の場があること。かつて農業はいい仕事であって、それは単にトーチャンが働いてカネを稼げるということではなくて、カーチャンにもジーチャンにもバーチャンにもそれぞれの役割があって、それでまずは自分のことは自分でやるという自立精神、足らざるところはお互いに助け合い融通し合う相互扶助、どうしても村の中では出来ないものだけを外からカネで買うという風にしてやってきた。それがこの50年は、何でも市場に丸投げして、カネに任せるようになってしまった。それを取り戻すことが、いい地域の条件である。

 第3は、いい居住環境があること。東北では、山奥や海辺の狭いところにも家があって、外から見ると何であんなところに住むんだとまで言われもしたが、3・11でそれが失われて、当たり前にあるものの大切さを思い知った。

 第4は、いい文化があること。文化とは何かと言えば「皆で楽しむこと」で、村が総出で行う祭りや芸能がそうだ。一人で楽しむのは文化ではなく、トーチャンがパチンコに行くのは文化ではない。

 第5は、いい仲間がいること。

 第6は、いい学びの場があること。昔は村があって寺子屋があって、そこで森や木や畑や土や花などを「生かす」ことを通じて「生きる」力を学ぶことが出来た。文部省が出来て学校が始まって、学びは単に「知る」ためだけの場になってしまった。

 第7は、いい行政があることである。

 この全部を一遍に満たすことは出来なくても、地域の人が「私はこれなら出来るぞ」ということを始めることである。

●村の誇り

 私が25年間通ってきた岩手県の山奥の5戸18人の村がある。行政は、こんなところに住んでいても仕方がないから山を下りろと勧告した。しかし彼らは留まることを決意し、「村の目標」を掲げた。「与えられた自然立地を生かし、この地に住むことに誇りを持ち、一人一芸何かを作り、都会の後を追い求めず、独自の生活文化を伝統の中から創造し、集落の共同と和の精神で、生活を高めようとする村である」と宣言した。

 今では、年に2000人から2500人の若者がその村に泊まって、ジーサンたちから昔ながらの手業を学ぶ場になっている。柳田國男が「美しい村などはじめからあったわけではない。美しく暮らそうという村人がいて、美しい村になるのである」と言ったが、ここはまさにそういう村である。

 沖縄のことに触れたい。国頭村の奥の集落に通って104歳のバーチャンに触れて、ここには村を成り立たせている4つの原理があることを知った。「あたい」「ゆんたく」「ゆいまーる」「てえげえ」である。

 「あたい」は辺りのことで、自分の家の周りに自給のための畑を持ちなさいということである。誰もが小さな畑を持っていて、自分のところで食べきれないものはお裾分けする。

 「ゆんたく」はお茶をしながらおしゃべりすることで、そのバーチャンのところには朝6時から村の26戸の人たちが集まってくる。「この機械のネジが緩んでいるようなんだが」「ああ、俺が直しておいてやるよ」とか、「キャベツの苗がないか」「ウチに余っているのがあるから後で持ってこよう」とか、大抵の悩みはその場で自分たちで解決してしまう。

 「ゆいまーる」は共同作業で、その究極の形が全村民出資の雑貨店というかコンビニである「共同店」。スーパーに比べて決して安くはないが、村民がこぞってそこで買い物をすることで利益を上げ、その資金で子弟のための奨学金や医療費の無利子貸与制度を作ったり、船やバスを買って公共交通を確保したり、泡盛工場を創設したり、発電所を建設したりして、それでも余った分を1億5000万円、行政に貸し付けたりしている。

 もう1つは「てえげえ」で、大概、まあアバウトでいいじゃないかという精神である。

●ここにあるもの

 生きる根本が食であるということを思うと、身近に農産物があり、あるいはそれを作っている人がいることがどれほど安心なことか。村にはあれがない、これがないと言うが、視点を変えればここにあるものが全部活きてくる。自然は時として牙をむくこともあるが、限りなく有り難いものでもある。

 地域というのは、中央に対する地方、地域ということではなく、自然の上に住むということである。その自然を生かす技を持っているのが地域である。▲


>>「まぐまぐ!」の「高野孟のTHE JOURNAL」の購読は下記URLをご参照ください
http://bit.ly/vmdxub

────────────────────────

■《THE JOURNAL》有料メルマガスタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では、サイトの運営を安定化させるため、2011年11月に有料メルマガをスタートしました。本記事も有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料メルマガの詳細と、ニコニコ動画の有料会員の方は下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2011/11/the_journal_2.html

※今月末までにお申し込みいただければ、今月配信済のバックナンバーはすべて無料で配信されます(申込月は無料)。詳しくは下記URLをご覧下さい
http://www.mag2.com/read/charge.html

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/8422

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

日々起こる出来事に専門家や有識者がコメントを発信!新しいWebニュースの提案です。

BookMarks




『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

→ブック・こもんず←




当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.