Calendar

2012年3月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

Recent Entries

Recent Comments

« あれから1年、3・11をどこでどう過ごすか ── 首都圏の皆さんは日比谷公園へ!
メイン
重慶市トップ解任でどうなる?習近平体制 ── 本質は「社会主義3.0」の方向性をめぐる確執 »

3・11から1年 ── 限りなく曖昧な日本の野田総理

(※本記事は3月12日に配信された「高野孟のTHE JOURNAL」の一部を掲載したものです)

 東日本大震災と福島原発事故の衝撃から丸1年を経て、なお瓦礫の撤去とその保管場所の問題1つとっても目途が立っていない有様で、さあ、気を取り直して、全国民一丸となって新しい日本の再生のために踏み出そうという気分からは懸け離れた、憂鬱な空気が列島を覆っている。

 地震と津波だけならまだしも、そこに人類史上最悪とも言える原発爆発事故が折り重なったことでとてつもない災禍が生じたことは言うまでもない。その事故そのものがいつ完全終息するのか分からない以上、どこをどれだけ除染すれば安心できるのかも分からないし、故郷を追われた何十万の避難者が戻れるのか戻れないのか、戻れたとして農業や牧畜や林業を再開できるのかどうかも分からない。

 その元凶である原発というものにどう向き合うのかについて、野田政権の姿勢が限りなく曖昧で、むしろ国民を騙し騙ししながら結局は安易な再稼働と恥ずべき原発輸出という方向ににじり寄って行こうとしているように見えることが、すべてが五里霧中のようになってしまう根本原因である。3月8日付の朝日川柳で横須賀市の女性が「核と手を切るまで描けぬ復興図」と詠んでいるのは図星である。

●まず再稼働を止めよう

 福島事故後、全国の商用原発54基のうち廃炉が決まったのは福島第一の1〜4号機、残り50基のうち過去のトラブルや定期点検で止まったまま再稼働していないものが48基で、現在は泊3号機と柏崎刈羽6号機の2基だけが稼働しているが、これも3月下旬と4月下旬に定期検査入りのためストップし、少なくとも一時的には「原発に頼らない社会」が実現する。

 さてそこが野田佳彦総理にとっての分かれ目で、彼が国民の心の叫びに耳を傾ける政治家であれば、次のように語るだろう。

「福島事故が完全終息せず真相解明も済んでいない中で、ストレステストの結果だけで簡単に再稼働を認めるわけにはいかない。国民の生命と生活に責任を持つ総理として、到底そんなことはできない。むしろこれを奇貨として、一日も早く『原発に依存しない社会』を作り上げるために政府として全力を挙げる。国民や民間企業の皆様には、より一層の節電、原発分を当面はガス・石炭火力発電の増強でカバーするためのコスト、その先の自然エネルギーへの転換などについて大きな負担を強いることになるが、一致協力、この大転換を支えて頂きたい」と。

 しかし残念ながら、彼がそう語る可能性はほとんど絶無で、それは彼が国民よりも官僚や経済界の声に耳を傾けることの多い政治家だからである。恐らく野田は、ストレステストの結果について保安院がOKし、それを原子力安全委員会が審査してパスすれば、淡々として関係閣僚を交えて再稼働は妥当との政治判断を下して地元自治体に了解を求め、地元も了解すれば最終的に政府として再稼働を決めるだろう。とはいえハードルもいくつもある。

 第1に、菅直人前総理が性急に導入を決めた欧州モデルのストレステストそのものに多くの専門家から疑問が投げかけられている。そのテストとは、本質的に電力会社が手持ちのデータを元にコンピューターの箱の中でだけ行うシミュレーションという名の数字合わせにすぎない。ところが保安院や安全委には少数ながら原子力ムラに批判や疑問を持つ人たちが含まれているから、その元データの妥当性そのものが問題視されるかもしれない。例えば、9日保安院で開かれた北陸電力志賀原発の耐震安全性をめぐる専門家の意見聴取会では、北陸電がこれまで建設の前提としてきた能登半島北岸の4つの海底活断層はそれぞれ別個に動いて連動することはないという評価について、複数の専門家から「根拠が薄い」との指摘があり、地震の揺れの計算を根本からやり直すよう保安院が北陸電に要請した。こんなごまかしはどこの原発でもあって、福島事故のきちんとした総括の上に立って、地震や津波の危険について基礎データから作り直さなければならないはずで、電力会社が持つ虚偽の設計データを元にしていくらシミュレーションをしても何の意味もない。

●工事や検査の手抜きが横行

 第2に、たぶんすべての原発で手抜き工事が行われていて、設計通りにはなっていない。これは昨年3月29日付のINSIDER No.561に詳しく書いたことだが、仮に各原発の設計が完璧であったとしても、原発建設には必ず地元の有力政治家が絡んで悪辣な"中抜き"をして大儲けしているのが普通で、私が昔、福島第二の工事に入った特殊塗装会社の社長に聞いたところでは、元請けのゼネコンは1平米当たり8000円でこれこれのスペックの塗料を2.5ミリ厚で施工するという予算で受けていながら、実際に施工を担当するその会社に下りてきたときには平米1600円の予算しかなく、調べると間に政治家の采配で地元の土建業者など7社が挟まって何もせずに"手数料"だけ取っていた。仕方なく、0.何ミリで色だけ付けて塗って、二度と原発の仕事はご免だと思って引き上げたという。こんなことは原発では日常茶飯である。

 また、これも同じINSIDERで書いたが、原発工事の現場監督として働いて後に内部告発者となった故・平井憲夫に聞いたところによれば、工事現場には原発の危険を知り尽くした監督がますます少なくなっていて、ズブの素人の作業員が溶接でも何でもいい加減にやるし、原子炉の中に針金を落としたままにするし、これは意図的な手抜き工事というのとは違って意図せざる無知・未熟のなせる業だが、これまたどこでも当たり前に起きている。さらに、完成後の検査や定期点検でこれをチェックする検査官は何の専門知識もない役人が多く、現場を見ても何も分からないから書類上で辻褄が合ってさえいればOKの判を押してしまう。そんな風にして建設し運営されている原発を、設計データの上だけでテストしてもますます意味がない。私の考えでは、福島事故の原因も本気で探究すればこの中抜き・手抜き・拙劣工事の問題に行き当たらざるを得ないはずで、しかしそうなると保安院や安全委そのものの手抜きというか怠惰の問題になるので、果たしてそこまで掘れるかどうか。そこに触れないと、原発の危険性の問題に本当に向き合うことは出来ないのではないかと思うが、野田や枝野にたぶんその問題意識はない・・・


>>ここから先は「まぐまぐ!」の「高野孟のTHE JOURNAL」に登録してお読み下さい(下記URL参照)
http://bit.ly/vmdxub


────────────────────────

■《THE JOURNAL》有料メルマガスタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では、サイトの運営を安定化させるため、2011年11月に有料メルマガをスタートしました。本記事も有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料メルマガの詳細と、ニコニコ動画の有料会員の方は下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2011/11/the_journal_2.html

※今月末までにお申し込みいただければ、今月配信済のバックナンバーはすべて無料で配信されます(申込月は無料)。詳しくは下記URLをご覧下さい
http://www.mag2.com/read/charge.html

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.the-journal.jp/mt/mt-tb.cgi/8403

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)

※[投稿]ボタンをクリックしてから投稿が完了するまで数十秒かかる場合がございますので、2度押しせずに画面が切り替わるまでお待ちください。

Profile

日々起こる出来事に専門家や有識者がコメントを発信!新しいWebニュースの提案です。

BookMarks




『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

→ブック・こもんず←




当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.