Calendar

2011年5月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

« 2011年4月 | メイン | 2011年6月 »

2011年5月27日

ウィキリークス TPP外交文書を全訳公開!

 環太平洋連携協定(TrancePacificPartnership、以下TPP)は海外でどう議論されているか。《THE JOURNAL》では内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した秘密公電を全文日本語訳で掲載する。今回の文書は在ニュージーランド米国大使館の秘密公電に記載されていたもので、今年2月に両国政府の交渉担当が話した記録だ。

 TPPはもともと2006年に4カ国で結ばれたP4協定(加盟国:ニュージーランド(以下、NZ)、シンガポール、ブルネイ、チリ)を土台に、米国主導で拡大してきた構想だ。2010年3月から始まったTPP参加表明国による協議は、NZ・米国会談の時すでに5回の開催を終えて焦点や問題点は見えていた模様だ。

 P4協定のメンバーであるNZとTPPを雇用改善の足がかりとしたい米国の会談は、参加国の狙いやTPP交渉の焦点を浮かび上がらせる。

☆ ☆ ★ ☆ ☆

米国務省リ-ド国務次官補、TPP、国連改革、環境問題での米・NZ間協力、フィ-ジ-問題、APEC、及び米/NZ2国間問題に触れる

(翻訳者:近藤康男)

原文:http://wikileaks.fi/cable/2010/02/10WELLINGTON65.html

1.(C)概略 (※1)

 2011年2月19日NZ外交通商省(or外交貿易省)の主催で行われた一連の会談で、米国務省の東アジア・太平洋地域担当フランキ-・リ-ド国務次官補は、TPP問題、国連問題、環境協力、フィ-ジ-問題、APEC関連そして米/NZの2国間関係を含む幅広い事項に触れた。
 ニュ-ジ-ランドのマーク・シンクレアTPP主席交渉官は、ニュ-ジ-ランドはTPPが将来のアジア・太平洋地域における通商に関する統合のプラットフォ-ムであると見ており、しかし、また米/NZ間の交渉過程では多くの重要関心事項(※2)があることを認識している、と述べた。
 ニュ-ジ-ランド外交通商省の国連・人権・英連邦部門ディレクタ-のジェ-ムズ・ケムバ-氏は、ニュ-ジ-ランドは引き続き国連改革を強く推し進める積りであると述べ、また米・人権報告及び米・人身売買報告におけるニュ-ジ-ランドに関わる内容についての米国の取り扱いに対する失望の意を表明した。
 同省の環境問題担当者は、EDIN/島嶼国クリ-ンエネルギ-開発機構の下でのより具体的な米国との協力への期待(※3)を表明すると共に、Global Alliance/国際的な連携への米国の支持を歓迎すると述べた。
 同省の太平洋地域ディレクタ-であるジョン・アダンク氏は、ニュ-ジ-ランドのフィ-ジ-との関係は依然不安定であると述べ、米国、その他国際社会が引き続きバイニマラマ体制(政権)の民主化を強力に促すよう求めた。
 APECについては、同省のアジア部門のディレクタ-であるステファン・ペイトン氏が、ニュ-ジ-ランドはボゴ-ル目標(※4)の点検をしており、2011年ハワイAPECでの成功に向けての準備に当たって米国と緊密に連携をすることを表明した。
 ニュ-ジ-ランドはまた、インドのAPEC参加に前向きである。同省の米国部門のディレクタ-であるデイビッド・テイラ-氏は、ニュ-ジ-ランドとの軍事協力を進めようとする米国政府の努力を評価すると共に、その他多岐に渡る両国間の諸課題について触れた。

2.(SBU)戦略分野(※5)毎の課題:TPPについて
-Gold Standard(黄金律/最高水準)を目指して

 TPPに関連するニュ-ジ-ランドの国内状況に関して、NZのマ-ク・シンクレアTPP主席交渉官は、ニュ-ジ-ランド政府にとって米国との自由貿易協定を決着させることが長年の懸案であり、それは産業界にとっては"エル・ドラド/理想郷"であるとの一般認識がある、ということを強調した。しかし、彼は、米国はすでにニュージーランドとの貿易・投資の面でかなり開かれており、現実は"エル・ドラド"という訳にはいかない、と述べている。シンクレア氏は、すでにニュ-ジ-ランドは多くの自由貿易協定を結んでいるものの、これほど政治的な(意味を帯びる)重要関心事項(sensitive issues)についての自由化交渉は初めてと述べた。彼は、ティム・グロ-ザ-通商相はこのことを充分承知しており、「米国をTPPに関わるようにすることは容易であるが、交渉の過程はまさに難物で特にgold standardを達成するのは大変なことだ」、と言っていると言及した。

3.(SBU)戦略分野毎の課題:多国間関係の課題について

 NZのシンクレア氏は、NZはTPPが将来のアジア・太平洋地域における通商に関する統合のプラットフォ-ムであると見ていることを強調した。
 もし最初の8ヶ国がgold standardに辿り着けば、TPPは日本や韓国、その他の国々に対する強力な圧力(put the squeeze)となり、まさに長期的な利益を得ることとなるだろう、と彼は強調した。更に、交渉過程におけるもう一つの重要な課題は、今の経済状況が国内課題に大変な難題を突き付けてしまっていることであると述べた。従って交渉担当者は、国内の雇用、賃金その他関連する事柄が受ける影響について深刻に認識しなければならないのである。
 新たなTPP参加国を加えることについてのスタンスを尋ねたところ、彼は現時点での交渉については少ないほど望ましいとの見解であった。しかし、もっと重要なことは米国議会における承認であり、最初の8ヶ国でcritical mass/量から質への飛躍が出来るかどうか、であると強調した。
 ニュ-ジ-ランドはもし最初の8ヶ国が、例えばマレ-シアを加えるなど加盟国が増える必要があれば、その時は前向きに捉えるだろう。

4.(SBU)戦略分野毎の課題:合意に到達するための重大な国内的障害について

 NZのシンクレア氏は、ニュ-ジ-ランドにとっての多くの重要関心事項について言及した。
 彼はまず、モンサント社がGMOに関するニュ-ジーランドの規制が好きでないという事実は誰も知ることであると述べた。知的財産権問題も眠れる障害であり、ニュ-ジ-ランドのディジタル生活を侵し始めれば懸念を呼び起こすだろう。シンクレア氏はまた、海外からの投資はニュ-ジ-ランドでは常に大衆の目を引き付ける問題で、特に土地取得や象徴的なニュ-ジ-ランドブランドに関わって来ると重要関心事項になり得ると付け加えた。更にNZのデイビッド・テイラ-氏は、資源採取のためにいくつかの保全地域を解放するという最近の政府決定を考えると、天然資源に関わる海外からの投資も重要関心事項になり得る、と 付け加えた。
 シンクレア氏によれば、製薬分野もまた争点になり得る分野である。

5.(SBU)戦略分野毎の課題:国連における多国間課題について

 NZの国連・人権・英連邦部門ディレクタ-のジェ-ムズ・ケムバ-氏は、国連改革、米国の人権報告書及び米国の人身売買報告書についても触れた。
 国連問題について言えば、彼は、ニュ-ジ-ランドはまだ国内での手続きなど整備すべき事項があるため、「先住民の権利宣言」に署名をしていないことに言及した。(注:ニュ-ジ-ランドの政府関係者は、彼らは採決において反対票を投じたと述べた。ニュ-ジ-ランドの憲法と法における整理との矛盾があるからである。)
 彼は前の日に前首相(現UNDP理事(※6))のヘレン・クラ-ク氏と会ったが、彼女はニュ-ジ-ランドはもっと幅広い意味での国連改革を推進すべきと言っていたとのことである。
 ケムバ-氏は、しかし、ニュ-ジ-ランドは引き続きその方向に進むものの、安保理の改革には概ね沈黙である、と付け加えた。安保理の拡大については、ニュ-ジ-ランドにとって賛成できない一線が存在している。拒否権を持つ理事国が増えることを望んでいないのである。ニュ-ジ-ランドは非常任理事をもう1期求めてもいて、米国がそれを支持することを期待している。

6.(SBU)戦略分野毎の課題:G20、国連などの多国間課題について

 NZのケムバ-氏はG20について、特にG77を排除していることから、それが実効性のある機関であるか疑問があるとしながらも、ニュ-ジ-ランドとしてはG20を信頼していると述べた。米国の主導力故にニュ-ジ-ランドのG20への直接の回路が担保されているからである。
 NZのテイラ-氏は、ニュ-ジ-ランドは米国が他の参加国の観点を把握することについて感謝しているが、他の参加国が加わることについては懸念を持っていると付けくわえた。参加国の数が増えれば、そしてニュ-ジ-ランドがそこに入っていなければ、穏やかな気持ちにはならないものである。
 改革が必要な国連の諸機関については、ケムバ-氏は、国連経済社会理事会(ECOSOC)やその中に設置された種々の地域機関は時代遅れとなっており、既に彼らの時代は終わっている、と述べた。
 国連人権理事会に関しては、ニュ-ジ-ランドは米国との緊密な協力に感謝しており、将来更に強化したいと考えている。
 UNDPの災害復興の様々な仕組みについてのヘレン・クラ-ク氏の見方に関しては、彼女はUNDPの仕事を大変褒め称えていてハイチでの仕事は厳しい条件下ではベストのものと評価している、とのことであった。その上で彼は、クラ-ク氏はUNDPを何かの実行主体ではなく影響力の行使者と見ており、物事の内側に深く入り込むのではなく、戦略構築と手助けに集中すべきと信じている、と述べた。

7.(SBU)戦略分野毎の課題:米国の人権報告書及び人身売買報告書について
-ニュ-ジ-ランドは好ましくないと感じている

 NZのケムバ-氏は報告書におけるニュ-ジ-ランドの扱いについて彼自身失望していることを強調した。
 彼は、ニュ-ジ-ランドは米国の報告書のために大量の情報その他必要な事項を提供したが、結果的にはそのことはほとんど反映されていない、と述べた。更に、この報告書に関して駐NZ米大使館がNZの政府の外交通商省と緊密に協力することを期待していると述べ、"その結果、より正確な報告書が作成される"ことを期待する旨表明した。
リ-ド国務次官補は、これに対して、米政府はNZ外交通商省の助力に感謝しており、最終報告書は大使館や国務省の地域部門より上位の部署に上げられる共通認識を反映したものとなることを指摘した。

8.(SBU)戦略分野毎の課題:環境問題に関する協力について
-具体化の時期に来ている

 環境問題について、NZ外交通商省の環境部門のディッレクタ-補ジャネット・ロウ氏と経済部門担当官のロ-ラ・ホッグ氏はリ-ド国務次官補に対し、EDIN/島嶼国クリ-ンエネルギ-開発協定及びGlobal Alliance/国際連携における両国の協力について概要の説明をした。
 ロウ氏は、島嶼国のクリ-ンエネルギ-プロジェクトに対する一層のニュ-ジ-ランドの支援と関与の重要性を強調した。彼女はマレイ・マッカリ-外相が2008年にNZ、アイスランド、米国の間で合意した内容を具体化することを求めており、それは島嶼国における持続可能なエネルギ-資源の開発に資するからだけではなく、米国との関係強化につながる分野であるからでもある、と言及した。外相は特に"具体的なもの"に注目しているとのことである。
 現在ニュ-ジ-ランドのエネルギ-の65%が再生可能な資源によるものであり、特に地熱発電の専門技術を有している。ロウ氏によれば、ニュ-ジ-ランドは既に20の島嶼国において地熱発電の実現可能性調査を終えている、とのことである。その調査によれば、20ヶ国の内5ヶ国において実現可能性ありとの結果であった。ニュ-ジ-ランドはこの結果を如何に次の段階に持って行けるかを研究中である。
 地熱発電に加え、ニュ-ジ-ランドはトンガにおける太陽光発電施設の立ち上げと運営をどのように支援できるか検討中でもある。またハワイにおける米国との共同の調査研究にも興味を持っている。
 ヒュ-ブナ-駐NZ米大使は大使館とNZ外交通商省とがこのようなプロジェクトにおいて更に緊密に協力する機会があることを歓迎する旨表明した。
 Global Alliance/国際連携については、ホッグ氏は現在の米国の支持を非常に感謝していると述べた。彼女はGlobal Alliance/国際連携は2つの点が重要である力説した。食料不足と温室ガスの放出への取り組みである。

9.(SBU)戦略分野毎の課題:フィ-ジ-問題について
-悲観的である

 NZ外交通商省太平洋地域部門ディレクタ-のジョン・アダンク氏は、近年のフィ-ジ-との不安定な関係について概説をし、ニュ-ジ-ランドはフィ-ジ-との外交関係回復のため最大限の努力中であることを強調した。
 彼は、2007年以来3人のニュ-ジ-ランド外交官(高等弁務官1名、臨時/代理高等弁務官2名)が国外追放されたことに言及した。彼によれば、このような事例は、バイニマラマ政権がニュ-ジ-ランドによる旅行制限にウンザリする度に起きているとのことである。
 ニュ-ジ-ランドの外交的足跡は後退を続けているものの、マッカリ-外相は両国の外交関係前進のための最大限の努力を続けている。本年1月の第1週に、外相はフィジ-のクブアボラ外相と会談し、ニュ-ジ-ランドとの外交関係回復の問題、太平洋島嶼国フォラムの担当者への気まぐれなやり方でのビザ発行を取り巻く諸課題を突き付けている。
 アダンク氏は、フィ-ジ-における情勢は過去1年更に悪化しており、米・NZ・豪、その他各国がフィ-ジ-に対し、民主主義を回復するよう圧力を掛け続けることが必要であることを強調した。更に彼は、フィ-ジ-の現政権が国内的にも対外的にも今のような状況を続けることは全く馬鹿げたことでしかないと付けくわえた。そして米国は自らがフィ-ジ-に関して下す決定に対する他の太平洋島嶼国の反応について配慮する必要があると促した。彼は、その場合、太平洋島嶼国間の分裂を回避すべく、"正しい情報"に基づき"注意深く"なされる必要があると述べた。

10.(SBU)戦略分野毎の課題:アジア地域のあり方について
-APECに関する3つのポイント

 NZ外交通商省アジア部門ディレクタ-のステファン・ペイトン氏とAPECに関連して3つの課題について簡単な意見交換をした。(※7)
 彼は、次回の横浜での会議に向けてニュ-ジ-ランドは米国と緊密に連携し、そして2011年ハワイでの成功のための舞台を準備する手助けをする積りであると述べた。2点目として、ペイトン氏は、現在ボゴ-ル目標(宣言)実行についての点検をしており、それに関連して重要関心事項がいくつかある、と述べた。彼はニュ-ジ-ランドがボゴ-ル目標(宣言)の内容の厳密な定義をまだ満たしておらず、これに関しては米国と共同できる領域がいくつかありそうである、と指摘した。最後の点は、APEC加入の件であり、ニュ-ジ-ランドはインドの加入を受け入れる用意がある、とのことである。

11.(C)米国との2国間関係について
-引き続き上向きの曲線にある

 幅広く2国間の問題に触れる中で、NZ外交通商省アメリカ部門ディレクタ-のデイビッド・テイラ-氏は何よりも先ず、軍事分野における関係見直し前進のための米国政府の努力に対するニュ-ジ-ランドの感謝の意を力説した。
 彼は米国リ-ド国務次官補及びデイビッド・シャ-国務次官補代理DASD(※8)との率直かつ温かい意見交換を歓迎し、NZ外交通商省は引き続き米国大使館と共同メッセ-ジ発信のため共に取り組むと表明した。
 テイラ-氏はまた、米国大使館の果たしている役割とNZ外交通商省との間での建設的で水平的な関係に感謝を示した。
 国務長官の訪問について、テイラ-氏は、ハイチの混乱に起因する去る1月の直前での延期は完全に理解できるものであり、再度の日程調整を楽しみにしていると言及した。ただワシントンからの出来るだけ早い事前連絡を希望した。訪問一般について、テイラ-氏は、ワシントンからの訪問客は重要な意味を有するものと見ており、その頻度も増加することを希望した。彼はまた、キ-首相の訪米についても強く勧め、出来れば6月が好ましいと言及した。最後の点についてリ-ド氏は日程調整の難しさはニュ-ジ-ランドとの間の関係に関わる事情を反映したものではなく、単に内部調整の問題であることを強調した。
 テイラ-氏はまた、NZ外交通商省における予算削減と人員の頭打ちに触れ、しかし駐米ニュ-ジ-ランド大使館の自分の部下について、政治部門担当1名とTPPを所管する担当の1名の増員を図れるかもしれないとの期待を表明した。

ヒュ-ブナ-Huebner作成(※9)

【訳者注】
※1)各番号に続く(C)の意味不明だが翻訳しなくとも本文理解には影響しないと判断。(SBU)は、Strategic Business Unitと思われるが、全体の話題を重点分野毎に区分するために記述されただけでやはり特に意味はないと判断、敢えて戦略分野毎の会談内容と理解し、Summaryとの区分を意味するのみと理解。

※2)"sensitive issue"は、文脈によって適切な日本語が異なってくるが、とりあえずは、WTO交渉などで使用されることの多い、"重要関心品目"に準じた翻訳をした。

※3)"appreciate"という単語が頻繁に使われているが、英語の文脈では大半が"今後そうなればappreciateだ=今後そうなることを期待する"というように"未来形"であることが分かるが、日本語では多少伝わり難くなる。

※4)ボゴ-ル宣言:94年11月インドネシア・ボゴ-ルでのAPEC首脳会議で先進国・地域は2010年、途上国・地域は2020年までに貿易・投資を自由化する。

※5)SBUを「Strategic Business Unit」として翻訳

※6)UNDP Administratorなどの国連の役職名も正式な用語が見つからず、とりあえず"理事"などを充てた。

※7)2011年でなく2010年秋横浜APEC以前の意見交換と推測

※8)米国務省の役職DASD不明⇒とりあえず次官補代理、とした。その他ニュ-ジ-ランドのDivisionは時に応じて部門、担当部門と翻訳、Directorは不明なのでディレクタ-、とする。

※9)大使の名前=作成者を意味するかどうかは不明

【関連記事】
■<TPP反対 ふるさと危機キャンペーン TPP"主導国">米国外交公文から読む 本音と現実(日本農業新聞)
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=6738
■TPPは11月すべりこみ参加!? 再出発の「TPPを考える国民会議」で反対論
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/05/tpp11tpp.html
■「喜ばしくない」TPP参加延期に米が強い不快感(テレ朝ニュース)
http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210524037.html
■25年までに再生可能電力の比率を90%に(オークランド発 JETRO)
http://www.jetro.go.jp/biznews/oceania/4cb41eeb3f7a0

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月25日

《第13回前半》陸山会公判傍聴記 ── 水谷建設元運転手が調書の内容を否定「ハラがたってます」

【お知らせ】
5月24日に行われた第13回公判についての問い合わせが多かったので、第11回と第12回をとばして、先に第13回の傍聴記をアップします。第11回と第12回は後日アップします。

5月24日雨。今日は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷するため、傍聴希望者がいつもより多い。約55席の傍聴席に対して、90人ぐらいは並んでいた。たしかに、水谷元会長は日本全国を揺るがせた陸山会事件のキーマンの一人で、ウラ金の実態をどう証言するかでこの裁判の行方が大きく左右されることは間違いない。

そのほか、水谷元会長の前には水谷建設の元専属運転手が弁護側の証人として出廷する。ウラ金を渡したとされる時期に社用車の運転手をしていたのは彼だけで、これもまた重要な証言となる。まずは午前に行われたこの元運転手の証言から報告する。

10時開廷。午前中は、水谷建設の元専属運転手が出廷。元運転手は、事情聴取のときに川村元社長が04年10月15日に石川知裕氏に5000万円を渡した際、受け渡し場所となった全日空ホテル(現・ANAインターコンチネンタルホテル)まで川村元社長を送ったと話し、その時の様子が調書にまとめられている。石川氏に渡したとされる5000万円については証言や物的証拠が極端に少ないので、運転手の証言は検察側の立証にとって重要な意味を持つ。まずは弁護人による尋問。
(──は弁護人、「」内は元運転手、※は筆者注)

── あなたは川村元社長を全日空ホテルまで車で送ったことはありますか

「1回か2回ぐらいあると思います」

── 時期についての記憶はありますか?

「会長(注:水谷功元会長のこと)が脱税事件で逮捕された以降だと思います」

補足。水谷功元会長が脱税容疑で逮捕されたのは06年7月。川村元社長がウラ金を渡したと証言しているのは04年10月と05年4月。つまり、元運転手はウラ金渡しの際に川村社長を社用車に乗せて全日空ホテルに行ったことはないと証言していることになる。

──そのことは検察官に説明しましたか

「はい」

── 検察官に何を聞かれましたか

「全日空ホテルで車を待機させるときのことを聞かれました」

── それは04年10月15日ではなく、全日空ホテルで車を停めるときの方法を聞かれたということですか

「はい」

── 車はどのように停めていたのですか

「川村社長だけではなく、会長を送るときも含め、2階のロビーで降ろして、ボーイさんに頼んでその近くで待機していました」

── 川村元社長の手荷物について聞かれましたか

「『覚えておりません』と答えました」

補足。「手荷物」とは川村元社長が届けたとされる5000万円入りの紙袋を指す。検察は、何としてもこの運転手に「川村社長は、全日空ホテルに送ったときに手荷物を持っていた」という調書をとりたかっただろう。というのも、石川氏に渡したとされる5000万円については川村元社長の証言以外に証拠はなく、当日に本当に川村元社長が全日空ホテルに行ったという証拠もないからだ。しかし、その調書は元運転手の記憶とは異なるものだったことが明らかになっていく。

── あなたは調書を訂正したいと思っていますか

「はい」

── 川村社長を全日空ホテルに送ったときは、出発の直前に指示されたとの供述がありますが

「日常的にどこに行くのかは直前に言われることもあったので、こういうことを言いました」

── ということは、特定の時期の話ではなくて、一般的な話だったということですね

「はい」

── 検事は、その説明を(特定の日付の話であるかのような)こんな書き方をしたのですか

「はい」

── 調書を訂正するのなら、どのように訂正したいですか

「この日の記憶がほとんどなかったので、(日付を)限定できるということはないと思います。(検事には)この当時の記憶がほとんどなかったので『送った記憶がない』と言ったのですが、こういう調書になってしまいました」

── 検事から手荷物について聞かれたことについては

「手荷物については一般的なことで言ったので、川村社長を全日空ホテルに送った時の話をしたわけではないです」

── 調書にサインを求められたとき、どのように感じましたか

「10月15日ということで限定していたので、不安を感じました」

── 検事にはどのように話しましたか

「10月15日について限定されていることを指摘して、『サインできません』と言いました」

── 検事はどう言いましたか

「『サインしてもらわないと困る』と。私が『10月15日に限定しているのは直せないのですか』と聞いたら『直せない』と言われました」

── サインをしなくちゃいけないとも言われたのですか

「『サインして下さい』と言われたので、『サインはできません』と申し上げたのですが、『これは今日あなたが話したことをまとめたものだ』と」

── なぜサインしてしまったのですか

「『サインをしなきゃいけない』と言われました」

── 当時はなぜ(10月15日のことについて)聞かれているのかわからなかったのではないですか

「はい」

── サインしたことで後悔はしていますか

「10月15日に限定されたことが、私には覚えがありませんので、こういう書き方をされたのは直してほしいとおもっています」

── こういう調書がつくられたことについては

「できるならば、日付は削除してほしいです」

── こういう調書ができたことについて、どのように感じていましたか

「多少、ハラがたっていますね」

── 04年10月15日に、川村元社長を全日空ホテルに送ったという記憶はないんですね

「はい」

── 川村社長はこの公判で、全日空ホテルへの交通手段について『社用車がタクシーで』と答えていますが

「タクシーであれば、会社に領収書があると思います」

弁護人の尋問終了後、検察側の反対尋問が行われる。運転手の調書否定証言に対し、検察側は川村元社長を議員会館の小沢事務所に訪ねていたことを尋問する。狙いがどこにあるかがよくわからなかったが、川村元社長が小沢事務所を訪ねていたことを証言させ、水谷建設と小沢事務所の関係の濃さをアピールしたかったのかもしれない。それに対し、元運転手は手帳に書かれているものは議員会館に行ったことを認め、一方で「日付はわかりませんが、手帳に書いた以外はないと思います」と答える。

最後に裁判官による尋問。
(──は裁判官、「」内は元運転手、※は筆者注)

── あなたが手帳をつけていた理由はなぜなのですか

「会社には日報があったのですが、私が行動していたことを自分で後で確認することも含めて、会社に聞かれたときのために書いていました」

補足。会社に提出していた日報は、手帳に書かれているものに比べればおおざっぱなもので、詳細は書かれていないという。

── 手帳はどういう時に書いていましたか

「その時に応じて書く場合と夕方に書いていました」

── 何日かまとめてということは

「それはほとんどないと思います」

── 書き漏らしはありますか

「(仕事が)重なった時などはあると思うんですが」

── もうちょっと具体的にお話いただけますか

「時間的に会長と社長がバッティングしてしまったりした時ですね」

── 書き漏らすこともあったということですか

「忘れることもあったと思います。その日、書くのを忘れて、そのまま書いていないということはあると思います」

── 手帳はあなたのスケジュール表としても使っていたのですか

「そうです」

── スケジュールはあらかじめわかっているものなのですか

「先にわかっているというのは少ないですね。(指示が来るのは)当日か前の日で、事前に連絡がきていれば手帳に書きますが、当日に書くことが多かったです」

── それが当日が前日に書くことが多かったということですね

「はい」

── 直前に言われて書き忘れるということは

「それもあると思います」

── 10月15日に川村社長を送ったかどうかですが、あなた自身は記憶がないのですね

「はい」

以上で午前の部が終了。裁判官も、04年10月15日に元運転手が全日空ホテルまで川村氏を送迎したかどうかに強い関心を持っているようだ。

元運転手が証言したように、川村氏が水谷建設東京支店で金庫から5000万円を引き出した後、全日空ホテルまでタクシーで移動したのであれば、領収書が何らかの形で残っている可能性が高い。しかし、それがないのであれば社用車で移動したことになり、それは元運転手の証言とは矛盾してしまう。川村氏の移動手段をどのように事実認定するかも、裁判の重要なポイントとなるだろう。

そのほか、元運転手の証言によって検察による調書の取り方の問題点がまたもや明らかとなった。おそらく、元運転手の聴取を担当した検事は、上司の思い描くストーリーのままの調書をつくったのだろう。しかも、検察はこの調書の内容を一部の記者にリークして、「石川有罪」の空気作りまでしていた。リークをした検察関係者が、このような杜撰な聴取で調書が作られていたことを知っていたかは不明だが、検察の情報操作の巧さを感じさせる。

引き続き、午後は水谷建設元会長の水谷功氏が出廷する。ここでも石川氏に渡したとされる5000万円の流れについて証言が行われる。

※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に主要部分を再構成したものです

(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

TPPは11月すべりこみ参加!? 再出発の「TPPを考える国民会議」で反対論

 5月24日、参院会館で「TPPを考える国民会議」(代表世話人:宇沢弘文 以下、国民会議)が開かれた。会場には赤松広隆元農水相、山田正彦元農水相、舟山康江元農水政務官など閣僚経験者をはじめとする国会議員のほか、学者、企業代表など約60名があつまった。国民会議は政府が進めるTPPに待ったをかけようと2月に設立した会で、以来全国各地で集会が行われていたが震災の影響で一時ストップ、3ヶ月たちいよいよ再スタートをする。

「止めなければ意味がない、どう止めるかが問題です。国会議員の皆さんには覚悟を決めてもらいたい」国民会議の世話人で東大大学院教授の鈴木宣弘氏は参加する議員にうったえた。

 政府は17日、震災後の政策方針となる「政策推進指針(pdf)」を閣議決定した。その中でTPPについては「総合的に検討する」と表現し、大手マスコミは「先延ばし」と報じた。しかし昨年11月以降「先延ばし」状態は続いており、実際のところその間も各国との議論、交渉は水面下で行われているのだ。

「今年の11月にすべりこませればいいという声がある。水面下に潜り込んで急に参加するようなことがあれば、あとで取り返しのつかないことになる」(鈴木教授)と11月に開催予定のAPEC直前に日本が参加表明する可能性があることを指摘した。

 米国、豪州、マレーシア、ベトナムなどTPP参加表明9カ国は19日閣僚級会合を開き「TPPが目指す高いレベルの基準に適合する限り、APECの全加盟国を対象に交渉参加受け入れの検討を続けることで合意した」などとする共同声明を発表、滑り込む窓口は用意されている模様で、日本が"その気"になればいつでも参加ができる状態だ。

 国内では震災以後、TPP推進論がますます加速している。4ヶ月ぶりに開かれた「新成長戦略実現会議」に参加した米倉経団連代表(住友化学会長)は、以下の文書を会議に提出し、TPP参加を強く求めた。
「重要な生産・技術開発拠点を国内につなぎ止めておくためにも、企業による グローバル・サプライチェーンの再構築を国として制度的に支援していく必要がある。TPP交渉への早期参加、日中韓FTAの早期交渉開始ならびに日・EU EPAの早期交渉開始などEPA/FTAを一層推進することは、震災を経て、むしろます ます重要となっている。『包括的経済連携に関する基本方針』、それを受けたAPEC横浜会合における 『国を開く』旨のメッセージ、ならびに6月を目途にTPP交渉参加について結論を出すとした『新成長戦略実現2011』は対外公約であり、これらを堅持すべきである」

また、読売新聞や、日経新聞はTPP推進社説を出しており、経済界と大手マスコミが「世論」の地盤を築こうとする構造は相変わらずだ。

「昨年11月に閣議決定した基本方針そのものは、その方向性を変えるということではありません」「若干の留保を置きましたけれども、基本的な姿勢は変えないで進めていく」(5月18日菅首相記者会見

 菅政権は18日の記者会見で、TPP推進の「基本的な姿勢」を継続すると宣言している。単純な「先送り」ではなく、11月の滑り込み参加に向けて着々とシナリオは進んでいる。

【関連記事】
TPP先送り「平成の開国」の看板が泣く (日経新聞社説5月22日付)
TPP参加判断、先送りに理解 米通商代表部次席代表(朝日新聞 5月22日付)

【TPPインタビュー】
山田正彦:TPPは農業だけの問題ではない!
舟山やすえ:米国基軸のTPPよりアジア中心の経済圏を
中野剛志:TPPはトロイの木馬

【TPPアーカイブ記事】
高増明:TPP内閣府試算の罠 ── 菅内閣がひた隠す"不都合な真実"
TPP推進派の根拠に落とし穴 ── 内閣府試算GDP3.2兆円増は10年間累積試算だった
TPP報告書を公開!
TPP「開国」報道に"待った"の動き
続・世論調査の「TPP推進」は本当?
TPP反対派に押される「開国フォーラム」とは?

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月23日

田中良紹:いまこそ日本人は政治の本質を学ばなければならない

tanaka110202.png
『裏支配』(田中良紹・著 500円[税込])
※購入方法は本記事の最後で説明しています。

 1976年のロッキード事件発覚時に、田中角栄元首相と東京地検特捜部の両方を密着取材した田中良紹さんが、事件の真相と日本政治の知られざる内幕を取材メモを元に再現したノンフィクション『裏支配』が 、今年1月に電子書籍で復刻発売された。復刻版では、2003年に単行本として出版されたものにさらに加筆し、2009年の政権交代までの日本政治の問題点を明らかにした論考も加えられている。

 『裏支配』を電子書籍版で復刻した理由とは?
 いま、日本の政治について考えなければならないこととは何か?

 日本政治の表とウラを取材してきた、著者の田中良紹さんにインタビューを行った。

▽    ▲    ▽

── 2003年に出版された『裏支配』が、03年以後の政治状況も加筆され、電子書籍化されました。この時期に電子書籍化しようと思った理由はなぜでしょうか?

私がこの本で言いたかったことは「政治は変わらない」ということです。政治とは所詮は人間のやることで、時代が変わっても、その本質はそれほど変わらないんですね。

それを実感したのは、この本を執筆中に取材メモをひっくり返していたときでした。いまになってメモを読んでみると、現役の記者として取材していた1980年代の半ばにはまったく意味の分からなかった話が、「なるほど」と感じることがたくさんあったんです。

たとえば「中曽根元首相を大勲位に」という話は、1984年に田中角栄がすでに言っている。これは『裏支配』にも書いていますが、角栄は84年の時点で86年に中曽根に衆参ダブル選挙をやらせて自民党を大勝させ、自民党の党則を変えて自民党総裁を3期つとめさせると話しているわけです。その結果、中曽根は佐藤栄作と肩を並べる長期政権となり、将来は大勲位を受ける。その話を聞いた時は、にわかに信じがたい話でしたが、今になってみるとそれがちゃんと実現しているわけです。

■みんな中曽根首相が嫌いだった

いまでこそ中曽根の評価は高いけど、当時は公明党も民社党もみんな中曽根のことが大嫌いでした。支えているのは田中角栄だけ。言うならば、田中角栄が手をひいたら中曽根政権が潰れてしまうわけです。だから、中曽根はこの本にも書いてあるとおり「私のような浅学非才の者が・・」などと地べたに頭をこすりつけんばかりにしながら、政権運営をしていく。そんな中曽根に角栄が「大勲位を与える」と話していたんだから、当時のほとんどの人が信じられなかった。

じゃあその中曽根をいつまでやらせるかとなったら、角栄はダブル選挙後の1年までと考えていた。そして、実際にその通りになった。政治のシナリオライターというのはすごくて、角栄が倒れたあとは中曽根が自力で政治をやるんだけど、シナリオはずっと後まで生きているわけです。

── そういうシナリオは、角栄の一番近くで取材していた当時の記者たちも気が付かなかったのでしょうか

政局の渦中にいる記者というのは、政治の流れはわからないんですよ。実際、私もわかりませんでした。後々になって理解できたことがたくさんあって、政治は一歩引いた場所から見ないとわからないんです。

■政治は繰り返す

その意味で「政治は繰り返す」ということも今になれば納得できます。

自慢するわけではありませんが、中曽根が後継首相を指名するとき、竹下登が指名されると予測した記者は私だけでした。新聞もテレビも、次期首相を安倍晋太郎だと思いこんでいて、全社が間違えました。それでも新聞が一面で恥をかかなくてすんだのは、夜中の12時ごろに中曽根裁定が下ったから朝刊の記事に間に合ったからなんですね。TBSでも、私が22時に出演した番組の時点では「竹下登」と言ったのに、その後の番組では当時の政治部長が「安倍で決まり」と言っていました。

なんで私だけ「竹下登」と言えたのかというと、それは「誰々が○○と言っている」という情報を集めてそこから予測するようなことはせず、過去の歴史を振り返って判断したからなんです。

当時、自民党の歴史で首相が禅譲された前例はひとつしかありませんでした。それは池田勇人が病気で倒れ、佐藤栄作を後継指名したときです。この一件しか政権の禅譲はなかった。そこで、池田勇人の秘書官だった伊藤昌哉さんに「なぜ、佐藤栄作を指名したのか」と聞いてみたんです。すると、彼はこのようなことを言いました。

「お前、後継指名なんて怖いことはできないよ。佐藤を指名したのは、佐藤派が最大派閥だったからで、もし違う奴を指名して自民党の中で波風が立ったらどうする。池田勇人は最悪の総理として歴史に残る」

私は「なるほど」と思った。となると、この理屈では当時の政治状況で中曽根が後継指名できるのは、自民党の最大派閥を率いる竹下登しかいないとなります。

ただし、簡単に最大派閥の領袖であることを理由に次の首相を竹下に決めてしまったら、政治にならない。だから、すぐに竹下に決定されないよう、いろんな仕掛けが出てくる。中曽根にとっても、最初から「後継は竹下」と言ってしまったら身もフタもない。「後継は竹下ではない」とみんなに思わせて、最後は竹下にするところに、政治的な意味があったわけです。

■ガセ情報もグルグル回ると真実になってくる

つまり、後継指名で流れてくる情報はすべて目くらましで、それに政治記者は全員踊ってしまって、政治家も一緒に踊ってしまった。「後継は安倍晋太郎」という情報が流れた後に「竹下派が祝賀会の予約をキャンセルした」という情報も流れると、それがまた永田町に流れて「後継は安倍に決まった」となるわけです。

おかしな話だけど、情報というのはグルグル回っているうちに、ガセ情報も本当になっていく。あの時はこのことを身をもって経験しました。でも、最後には収まるところに収まる。取材をしているときにはいろんな情報が流れてくるけど、そんな情報に振り回されず、どこかで全体の状況を俯瞰で見る目がないと政治は読めないということです。

■ロッキード事件で変質してしまった田中角栄

── 『裏支配』でも書かれていることですが、ロッキード事件が後々の政治に大きな影響を与えたということがよくわかります。これは現在でも続いているのでしょうか

日本の政治の混迷はロッキード事件からはじまり、それはいまでも続いていると思う。あの事件以来、日本はおかしな方向に狂い始めたのではないでしょうか。『裏支配』でもロッキード事件について、もう一度考えるべきだということを書いたつもりです。日本の政治がどんどんおかしくなっていくことは、事件発覚から田中角栄が倒れていく過程を見るとよくわかります。

その意味で検察の罪は重い。政治が検察権力からの介入を受け、国民生活にマイナスの影響を与えています。成熟した国家というのは、倫理の問題で国民生活を犠牲にはしないんですよね。倫理は倫理で大切なんだけど、それは別の場所でやればいい。少なくとも、政治は混乱させられることなく、粛々と進めなくてはいけないのです。司法の場で裁くなら裁けばいい。クリントン元大統領もホワイトウォーター疑惑で騒がれましたが、それで議会が停滞するようなことはありませんでした。一方、ロッキード事件のために日本の政治はどれほど停滞してきたか。本音では、政治家も「政治とカネ」の問題が大切だなんて思っている人はいません。

だからこそ、いまは「政治家に必要な資質とは何か」について考えないといけない。その点、田中角栄は有罪判決を受けたにもかかわらず、いまでも人気投票をやると上位になりますよね。その意味も考える必要がある。なぜ、角栄は人気があるのか。理由は様々だと思いますが、おそらく、インテリほどああいう人は嫌いで、庶民はそこはかとなく親近感を持つのでしょう。

私は、民主主義って不思議だなといつも思うことがあるんです。大衆って愚かなんです。テレビ局で仕事をしていたとき、クレームの電話を受けていると、建前で物事見て、「人間として許せない」みたいなことを言ってくるエセモラリストがたくさんいる。でも、選挙結果はすごい。それほど大きな間違いをしたことはなく、突拍子もなくヘンな結果は出ないものなんです。そういうものに触れるものを田中角栄は持っていたのではないでしょうか。

だから、かえすがえすも田中角栄という政治家を潰してしまったのは残念だったと思う。有罪になって世間がたたき続けたことで、そこで彼は逆に強くならざるをえなくなってしまった。田中角栄という人間も無理をしすぎて、ある意味で変質していく。これは悲劇としか言いようがありませんでした。

──自民党の凋落を背景に、2009年には政権交代がおきました。それから1年半が経ちましたが、新しい政治の流れはまだ見えてきません。はたして政権交代に意味はなかったのでしょうか

私は、政権交代の意味がまったくなかったとは思っていません。政権交代によって、今まで日本のどこに問題があるのかわからなかったものが、少しは見えてきたのではないでしょうか。たとえば、強すぎる参議院、アメリカと外交交渉できない政治家、司法とメディアの馴れ合い。政権交代後にこういったことがどんどん明るみに出てきていますよね。だから、いまの日本は、これまで隠されてきた問題点が「あぶり出し」されているんです。

だから、いまこそ日本人は「政治とは何か」を勉強するいい機会なんです。冒頭にも話したように、政治の本質はそれほど変わっていません。『裏支配』に描かれている80年代の政治の生々しい話を読んでいただければ、いまの政治の裏側で何がおきているかを理解し、「日本の政治をどうすればいいのか」を考えるための助けになるのではないかなと思っています。

(文中敬称略)


★   ★   ★

電子書籍版『裏支配』の購入方法

 電子書籍版『裏支配』は現在、電子書籍販売サイト「paboo」で発売中です。購入には「paboo」への会員登録が必要となりますので、下記のリンクより会員登録をした後、購入手続きを行って下さい。

■裏支配 電子書籍版
http://p.booklog.jp/book/18242

■電子書籍販売サイト「paboo」
http://p.booklog.jp/

【注意事項】
 電子書籍版『裏支配』は、PDF版とePub版があります。iPhoneやiPadで読む場合には、ePub版を電子書籍購読アプリ「stanza」に読み込むと、読みやすくなります。ePub版をstanzaで購読する方法は、下記のURLをご参考ください。
http://d.hatena.ne.jp/RyoAnna/20100318/1268930775

 もし、購入や購読方法でわからない部分などございましたら、「paboo」のお問い合わせ窓口までご連絡下さい。

■よくある質問
http://p.booklog.jp/about/faq

■お問い合わせ
https://p.booklog.jp/about/inquiry

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月22日

《録画放送中》原発報道を考える ── メディアは真実を伝えているのか

■第1部

■第2部

Video streaming by Ustream

【日時】
2011年5月22日(日)
開場18時20分 開会18時45分 閉会21時30分(予定)

【出演者】
神保哲生(ビデオニュース・ドットコム)
綿井健陽(ビデオジャーナリスト)
広河隆一(『DAYS JAPAN』編集長)
香山リカ(精神科医)
金平茂紀(TBS「報道特集」キャスター)
川村晃司(ジャーナリスト/テレビ朝日コメンテイター)
後藤政志(工学博士/東芝・元原子炉格納容器設計者)

【司会】
篠田博之(月刊『創』編集長)

※特別アピール
「布川冤罪事件再審判決直前!冤罪被害者の訴え」
 杉山卓男・他

2011年5月19日

黒井文太郎×高野孟:ビン・ラーディン殺害で世界はどう変わるのか?

 毎月、多彩なゲストを交えて世界や日本について語る『高野孟のラジオ万華鏡』。今月は、軍事ジャーナリストの黒井文太郎さんをお迎えし、ビン・ラーディン殺害で世界はどう変わるのかについて語っていただきました。

 ビン・ラーディンを殺害したアメリカ特殊部隊「シールズ」の「チーム6」とは?
 サダムフセインを拘束した「デルタフォース」とは何が違うのか?
 今後、アルカイダはどうなる?

 ビン・ラーディンを拘束ではなく殺害した理由などなど、今回の作戦を様々な角度から分析します。

※今回の放送は5月10日収録分です。

■ダウンロード(mp3)
http://podcast.jfn.co.jp/poddata/owj/tue_02/owj_20110517.mp3

2011年5月10日

「嘉手納統合」の振り出しに戻るか?普天間基地 ── 米前安保補佐官が「辺野古移設は想像外」と語る

takanoron.png 昨秋までオバマ政権の安保担当補佐官を務めたジェームズ・ジョーンズは5日、ワシントンを訪れた下地幹郎=国民新党幹事長らと会談し、普天間海兵隊航空基地を辺野古に移転する現行案について「日米政府が初めて合意したときから、計画が実現した姿を想像することすら出来なかった」と告白、「普天間は嘉手納空軍基地に統合する案が最良だ」とする持論を展開した。

 前補佐官はまた、6月末にペネッタ現CIA長官が国防長官に就任する機会に辺野古移設計画の見直しが生じる可能性があり、彼自身も自分の考えを次期国防長官に進言するつもりであることを明らかにした。彼は海兵隊総司令官、NATOの欧州連合軍司令官を経てホワイトハウス入りした経歴を持っており、軍・海兵隊とオバマ政権の両方に一定の影響力を持つと考えられる。

※共同電:http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-05-08_17506/

 そのため、長く膠着状態に陥ってきた辺野古移設計画は、急転直下、「嘉手納統合」を有力な一案として大幅に見直される可能性が出てきた。嘉手納では、沖縄県民が強く求める「県外」とはならないが、遠くない将来の海兵隊の全面撤退までの暫定措置という含みで、日米政府と沖縄県の合意が成り立つことはあり得るのではないか。その意味で、この問題は09年9月の鳩山政権発足時の振り出しに戻る、ということである。

●本論説が言っていたのに...

 「振り出しに」というのは、本論説は09年9月17日付「民主党政権の"対米対等外交"はすでに始まっている──普天間基地のシュワブ移転は中止か?」で、知人の米ジャーナリスト=ピーター・エニスの2つの記事と、当時来日したホワイトハウス中枢に繋がりを持つ米外交専門家からのインフォーマル情報を元に、米政府が辺野古計画を断念して嘉手納統合に切り替えることを真剣に検討していて、政権交代を機に日本側から積極的に働きかければその方向に動く可能性があることを指摘し、またその情報を私が直接、岡田克也外相(当時)に口頭で伝えてもいたからである。当時私は、ピーターと外交専門家の情報源がジェームズ補佐官で有ることを知っていたが、そのことは約束により漏らさなかった。

 その論説全文は、本サイトのトップ→右下の「INSIDER」→2009年9月→No.511で読むことが出来るが、一部を以下に要約する。

--------------------------------------------------
◆海兵隊航空基地は嘉手納へ?

 普天間移転問題は、10年以上にわたって日米双方にとって重荷となってきた。95年9月の米海兵隊員による少女暴行事件をきっかけに在沖米軍に対する怒りが高まる中、日米はSACO(沖縄に関する特別行動委員会)を設置して一部基地の条件付き返還を協議、その中で、海兵隊8000人のグアムへの移転と普天間基地のシュワブへの移転について合意したものの、シュワブについては新たな騒音被害やジュゴンやサンゴなどが生息する貴重な海洋環境の破壊などへの懸念から地元が反対し、未だに着工も出来ないままである。

 防衛省は4月に県に対して「環境に与える影響は少ない」とする出鱈目な環境アセスメント評価の準備書を送付、県知事が10月13日までにそれに対する意見書を出して着工を急ぐことになっている。自公両党の推薦で3年前に当選した仲井真弘県知事は、代替施設の建設場所を数十〜数百メートル沖合に移すことを条件に着工に同意しようとしているが、先の総選挙では沖縄の4つの小選挙区では基地建設推進派の自公候補が全滅、県内移転に反対する民主党県連が勢いづいて知事に翻意を迫っている。沖合に移したところで、騒音は多少軽減されるかもしれないが、海洋環境破壊はさらに酷くなる。

 こうした状況で、米政府内では、シュワブ移転を断念しようという空気が強まっている。理由の第1は、そもそも沖縄に海兵隊が駐留する主な目的は朝鮮半島で陸上戦闘が起きることに備えることにあったのだが、その可能性はほとんどゼロになっていて、だからこそ8000人のグアム移転の準備も進めているのであって、シュワブに何が何でもしがみつく根拠が薄まっていることである。

 第2に、逆にそれにこだわって県民感情が悪化し、それだけでなく日米関係そのものがとげとげしくなることのデメリットを無視できない。

 第3に、地元の「北限のジュゴンを見守る会」など日米の自然保護団体が米国でペンタゴンを相手取って行った「ジュゴン訴訟」で08年2月、サンフランシスコ連邦地裁は、ペンタゴンががジュゴンへの影響などを評価・検討していないことは米国文化財保護法に違反しているとして、基地建設による天然記念物ジュゴンへの影響の回避を求める判決を下した。ブッシュ政権はこれを無視する態度を採ったが、オバマ政権はこのことも考慮に入れなければならないという認識を持っていると言われる。

 そこで、嘉手納への移転という案が浮上するのだが、これについては、ワシントンの事情に明るいニューヨーク在住のジャーナリスト=ピーター・エニスが昨年と今年、2回に渡って週刊東洋経済への寄稿で十分に可能な解決策だと指摘している。嘉手納には余った広大な敷地があり、物理的にはヘリポート移転に何の問題もない。ただ空軍と海兵隊の縄張り争いがあって、空軍がそのようなものを持ち込まれることを嫌がっているという問題があるが、それは米政府内で調整すれば済むことである。他方、日本側では、自民党建設族に繋がる地元土建業界がシュワブ建設の巨大利権にしがみつこうとするだろうが、これも政権交代が実現すれば押さえ込むことが出来るかもしれない、と彼は言う。

 民主党はかねてから「県外移転」を掲げてきたが、県外と言ってもどこなのか、何の現実性もないという批判が党内からもあって、先の衆院選マニフェストではそれを外した。が、長島昭久衆院議員らが今年3月に設けた私的勉強会は7月、普天間ヘリポートを嘉手納に移転し、同ヘリ部隊の飛行訓練は下地島にある民間パイロット訓練用の既存飛行場で受け入れる----という一種の「県内移転」の妥協策をまとめて岡田克也幹事長(当時)に提出している。

 従って、民主党が「シュワブ断念・嘉手納移転」の方向を固めて"対等外交"に打って出れば、この問題は急転直下、解決する可能性が大いにある。最近東京を訪れた、米民主党中枢にパイプを持つ外交専門家は次のように指摘している。

▼シュワブ断念・嘉手納移転をホワイトハウスは真剣に検討している。SACOにこだわるのは日本では外務・防衛両省の官僚であり、米国では過去にこの問題を担当したことがあるカート・キャンベル国務次官補と海兵隊出身のウォレス・チップ・グレッグソン国防次官補の2人だが、ホワイトハウスは「こんな問題をいつまでも引き摺らないで早く決着したい」という考えだ。

▼鳩山がオバマと会った時に、日米双方とも政治主導で官僚の無能と惰性を押さえ込みましょうと持ちかければ、案外話は進むのではないか。愚かな米マスコミは鳩山が"反米"であるかのことを言い、日本のマスコミもそれに従って鳩山政権への"懸念"を書き立てているけれこも、むしろ鳩山のほうからそれを言い出せば、"対等外交"は米国のためにもなることが理解されるのではないか......。
------------------------------------------------

●官僚とメディアが潰した嘉手納案

 この中でも触れているように、嘉手納統合案の難点の1つは、米空軍側が固定翼機の飛行場に回転翼機が混じるのを嫌っているという問題があったが、これについて今回ジョーンズは下地らとの会談の中で、「空軍内に抵抗があったのは、技術力の伴わないパイロットらの意見であり、実際に多くの基地で回転翼機と固定翼機が統合運用されている」と実態を説明した。また嘉手納の住民側には当時、「これ以上騒音が増えるのは反対」という声もあった。これについてもジョーンズは、「現時点で移転するヘリコプターは30機未満のため、影響はほとんどない」との見方を示した。

 さらに、辺野古案が挫折した場合には普天間を恒久化するとの米軍関係者の脅しともとれる発言が出ていることについて、ジョーンズは「海兵隊はどこに移転しても構わない部隊であり、米軍全体の計画が在沖海兵隊の移転先に左右されることはない」「韓国移転などさまざまな選択肢がある」と語った。

 このようなベストではないがベターな打開策であった嘉手納統合案を握りつぶしたのは、日本の外務・防衛官僚である。上記の高野論説の中でも、米空軍の三沢撤退と嘉手納F15の一部削減の計画について、官僚たちが政府に情報を上げずに自分らだけの判断で米側に「計画の保留」を求めたことは「官僚による内閣に対する情報操作」であると指摘しているが、普天間問題でも同様であったことは、最近のウィキリークスによる日米関係外交文書によって赤裸々に暴かれた。

 「外務官僚暗躍、新たに判明」と題した琉球新報7日付記事によれば、「外務官僚が閣僚に対し、在沖海兵隊のグアム移転と普天間飛行場代替施設建設を切り離せないとさとしたり、外務省の"前担当者"が当時の鳩山政権の普天間問題に対する取り組みを批判し、米政府に対して公式に不満を表明するよう促していた」という。

 こうした売国的な外交・防衛官僚どもは、日米安保による既得権益を守ろうとする米側の安保マフィア官僚と結びついて日米政府を情報操作の網にかけ、旧い安保の枠組みとそれに基づくSACO合意を維持しようとして、かえって本当の意味での日米同盟の深化を妨げている。この連中を退治しない限り普天間問題の打開の道は見えてこない。

 蛇足ながら、この重要なジェームズ発言についての主要メディアの扱いは無視ないし軽視というに留まっている。それは、彼らが売国官僚どもの随伴者であって、官僚どもから「嘉手納統合なんて話にならないよ」と言われると素直にそう思い込んで、自分の頭で考えて取材をすることをしないからである。それで、官僚どもの陰謀が成功して鳩山外交が行き詰まると、一緒になってやいのやいのと囃し立てる。こういう退廃メディアも一緒に退治しないと日本の先行きは危ない。▲

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月 8日

《第10回》陸山会公判傍聴記 ── 水谷建設元社長のウラ金渡し証言は真実なのか?

 4月27日晴れ。今日は、石川氏と大久保氏にそれぞれ5000万円を渡したという水谷建設元社長が検察側の証人として出廷する。そのためか、久しぶりに傍聴券の抽選が行われた。といっても、一般傍聴席の数が50人強であるのに対して傍聴希望者は60人ぐらいなので、無事当選。東京地裁の中に入る。

 10時開廷。本日の証人である川村尚水谷建設元社長が入廷する。なお、石川氏はこれまで川村氏と会った記憶がなく、今日の公判ではじめて顔を確認するという。川村氏の着席後、検察側の尋問がはじまる。
(── は検察官、「」は川村氏、※は筆者の補足)

── (胆沢ダム関連では)どこに営業に行きましたか?

「受注元のゼネコンと小沢事務所です。(胆沢ダムでは)小沢事務所の影響が強く、嫌われると参入できないことがあると聞いたので、それを止めるために事務所に営業を行いました」

── 小沢事務所の誰に会いましたか?

「大久保氏です」

── 誰に紹介してもらったのですか?

「平成15年11月に、協力会社の社長に紹介してもらいました」

── 大久保氏の反応は?

「印象に残っているのは『他の業者より(あいさつが)遅い』と注意されました」

── その後の営業は?

「なんとか大久保さんに近づいて、会社を認知してもらって親しくなりたいと思いました」

── 大久保氏と親しくなるために何を考えましたか?

「平成15年12月31日にお歳暮のあいさつに自宅まで伺い、手みやげとして松阪牛と100万円を持参して年末のあいさつをしました」

── (大久保氏は)現金を受け取りましたか

「はい」

── 接待はほかにどのように行われましたか

「向島の料亭で4〜5回行いました」

── 大久保氏からの要求はありましたか

「16年9月に協力会社の社長と私とで小沢先生の事務所にお訪ねしたときに、具体的な指示がありました」

── 具体的には

「胆沢ダムのゼネコンが決まったときに5000万、工事の受注が決まったときに5000万の計1億円の要求でした」

── 要求には従いましたか

「はい。平成16年の10月15日に1回目の5000万、2回目は17年の4月中旬だったと思います」

── 1回目の受け渡しの様子は

「東京赤坂のホテルのフロントの前のロビーで、大久保氏がみえるはずでしたが、石川氏が来るとのことでした」

── あなたは石川被告人と面識がありましたか

「はい。パーティーにお邪魔した時や、議員事務所に行ったときに挨拶をしたと思います」

── 石川氏は来ましたか

「はい。石川氏に私の名刺を渡して、フロント前のロビーのソファーに座りました」

── どんな感じで座ったのですか

「フロントの前に椅子がありまして、私と石川氏ははす向かいのような形で座りました」

── その後は

「ご挨拶申し上げて『紙袋をお納め下さい』と言いまして、2〜3分だったと思いますけど、その場でお別れしました。先に石川秘書が出て行かれたと思います」

── 紙袋はどのように渡しましたか

「極力目立たないように紙袋をスライドさせてお渡ししました」

── あなたの行動を示すものはありますか

「JRの領収書とホテルの領収書です」

※検察側は証拠として、5000万円の受渡日前日に宿泊したホテルの領収書、東京─仙台間の新幹線の領収書、東京─名古屋間の領収書を提出。10月15日の仙台─東京間の領収書は、会社が準備したので証拠として提出できるものはないという。

── 次に平成17年4月にわたした5000万円についてお聞きします。受け渡しの日時は

「同じホテルの喫茶店です」

── 具体的には

「一度目(5000万円の受け渡しのこと)は中国出張があったので具体的な日時を思い出せましたけど、平成17年4月は覚えていません。(2度目の5000万円の受け渡しは)協力会社のA社長と行きました。朝、東京支店に出社しまして、A社長がきました。約束の時間に間に合うように(ホテルまで)車でいきました。フロントの出入り口の近くで大久保氏を待ち、3人とも喫茶店に座りました」

── 印象に残っているのは

「(大久保氏は)ヨーグルトを頼みましたので、私も同じものを頼みました」

── 5000万円はどのように渡しましたか

「『約束のものです』とテーブルの下から大久保氏に渡しました」

── 大久保氏の反応は

「『ありがとうございます』だったと思います」

── その後は

「私は30分ぐらいいたと思いますけど、先に大久保氏をお見送りして、私たち2人は東京駅に行きました」

── このようなことをお話しようと思った理由は

「今日お話ししたことは会社にとっても私にとっても都合の悪いことですので、思い起こすことを封印していたと今になっては思います。(証言について)いろいろ報道されていますが、事実でございます。そのために社長を辞任したわけですけど、我が社もお金で仕事を買うということをやめようと、社長時代にしたことを話しました」

続いて、弁護側の反対尋問。川村氏の証言には矛盾があるとして、問いただす。反対尋問の内容は、胆沢ダムの受注額、受注元のゼネコンとの関係、最終的に水谷建設が得た利益など多岐にわたったが、ここでは主なやりとりのみを掲載する。
(── は弁護人、「」は川村氏、※は筆者の補足)

── 金を渡す前に石川氏と面識があったということですが

「はい」

── (金を渡すときに)携帯電話の番号を聞いたりしなかったのですか

「そのような配慮をしたかどうかの記憶がございません」

── 石川氏とはどこで何回会ったことがあるのですか

「パーティーの席で挨拶したこともありますし、議員会館の事務所でもあいさつしたことがあります」

── 小沢氏のパーティーでは代理を出していたのではないですか

「2回は私が行きました」

── 議員会館で会ったのは何回?

「はっきりとは覚えていません」

── 議員会館以外の小沢氏の事務所に行ったことはありますか

「小沢氏の事務所で行ったことがあるのは議員会館のみです」

※ここで思わず吹き出しながら笑いをこらえる大久保氏の顔が目に入る。石川氏も「そりゃないでしょ〜」といった感じで、軽く笑みを浮かべている。その理由は・・

── それはおかしいですね。石川は秘書時代に議員会館の事務所には常駐していませんよ。何度も会えることはないはずですが

「それは私は存じ上げません」

※補足。現在の議員会館は建て替え工事が終了して部屋が広くなっているが、04年当時の議員会館はスペースが狭く、秘書をたくさん抱える政治家はスペースの確保に困っていたほどだった。そのため、「政界の実力者」と呼ばれる政治家は永田町の近辺に個人事務所を構えていた。小沢氏も議員会館以外に事務所を所有していて、弁護士は、石川氏は議員会館外の事務所で仕事することが多く、議員会館で何度も会ったという証言は信じられない、と主張した。

── 平成16年10月15日に石川氏に5000万円を渡したあと、大久保氏に石川氏に会ったという報告はしたのですか

「話したかどうかはわかりません。確認したかしなかったかの記憶はございません」

── 水谷建設はこういった裏金のやりとりはシビアだったのではないですか

「私はそういう経験が少なかったものですから・・」


 以上で午前の部が終了。

13時20分再開。引き続き、弁護側の反対尋問。

── 水谷建設のウラ金がいくらあったかは認識していましたか

「認識がありませんでした」

── それにもかかわらず、平成16年9月に大久保氏から1億円を要求された時にその場で承知したのですか

「はい」

── 裏金でいくら使えるかを知らずに、大久保氏とお金の約束をしたのですか

「はい」

── (大久保氏に渡した)2度目の現金の授受が4月中旬の9時〜10時となっていますが、4月15日以外に都内にいたことがわかる記載がスケジュール表にあるのですか

「(東京にいたことを)書いていない場合もあるので、この日とは限りません」

── ではあなたは時間はどのように確認したのですか

「レシートを見て確認しました」

── レシートではこの日だろうとわかっていたのに、記憶がないので4月中旬ぐらいだろうと思ってたということですか

「はい」

※補足。川村氏の証言では、大久保氏に渡したという2回目の5000万円の日付は「4月中旬」という曖昧な日付のまま、最後まで確定されなかった。疑問に感じたのは、川村氏は5000万円を渡した時期について「(大久保氏に5000万円を渡した喫茶店の)レシートで確認した」と証言しているにもかかわらず、日付を特定しなかったことだ。一般的なレシートであれば、レシートの発行日付も書かれているはずだが。

 その後、弁護側は水谷建設からの裏金は知人に貸し付けるために私的に流用したのではないかなどと問い詰めたが、川村証言を覆すような証拠は出なかった。

 以上で第10回公判が終了。印象としては、川村水谷建設元社長の証言は"陸山会裁判のヤマ場"と言われてきたが、検察側は決定的な証拠を提示することができず、衝撃度は思った以上に小さかった。特に、大久保氏に5000万円を渡したとされる日付は「4月中旬」と語るだけで、日付すら特定しなかったことには驚いた。

 おそらく、これまでの特捜事件では、この程度の証言でも「具体的かつ迫真性がある」として裁判所は事実認定してくれたのだろう。しかし、郵便不正事件で大阪地検特捜部の暴走が明らかになり、検察側が描いたストーリーがすべて作り話だったとわかってしまった以上、今回の裁判で裁判官が証人の法廷証言のみで事実認定するとは限らない。言い換えると、陸山会裁判を担当している3人の裁判官が、郵便不正事件で明らかになった特捜部の捜査手法の問題点をどのように評価しているかで、事実認定のされかたも変化してくるのではないか。

 なお、次回の公判は5月10日となる。

※一問一答は筆者の傍聴記メモを元に再構成したものです

(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月 6日

被災地支援活動に参加 at 宮城県岩沼市(二の倉海岸付近)

2011年5月2日(月)〜3日(火)、宮城県岩沼市(二の倉海岸付近)の被災地支援活動に参加しました。

深夜11時にバスで溜池山王を出発、途中休憩のため立ち寄ったドライブインや県内に入ってからの道路(高速)は、被災地に向かっていると思われる車で渋滞していました。

3日朝7時半に現地到着、ここでの活動は、地元の方々の指示で「海岸から押し寄せた津波によって墓地に積もった土砂を取り除く」ことです。

iwanuma110502_1.jpg

iwanuma110502_2.jpg

沿岸部のこの地域は、まだボランティアが入ったことがないということです。

iwanuma110502_3.jpg

iwanuma110502_4.jpg

民主党の森本哲生(もりもと・てつお)衆議院議員も同じ班で参加されていました。

iwanuma110502_5.jpg

iwanuma110502_6.jpg

現地の方々を含めて30数名での作業で、墓地に積もった土砂はほぼ取り除けました。

iwanuma110502_7.jpg

夕方、二の倉海岸に行きました、津波は、堤防を越えた直後、一旦地面をえぐるようにして、松の木を超える高さで街に入っていったそうです。

iwanuma110502_8.jpg

iwanuma110502_9.jpg

iwanuma110502_10.jpg

2011年5月2、3日、《THE JOURNAL》編集部取材&撮影

2011年5月 4日

ビンラーディン殺害は米国の"勝利"か?

takanoron.png パキスタン国内に隠れ住んでいたウサマ・ビン・ラーディンを海軍特殊部隊を投入して殺害したことを5月1日発表したオバマ米大統領は、「正義はなされた」と誇らしげに宣言し、ホワイトハウス前やニューヨークのグランド・ゼロには市民が集まって祝勝の声をあげた。確かに、アフガニスタンでの10年越しの戦争の目的の1つが彼の逮捕もしくは殺害であったことからすれば、米国の"勝利"には違いないが、果たしてこれはどういう勝利なのか。

●どうして容疑者を殺すのか?

 いくつもの疑問が浮かぶ。

 第1に、新聞各紙の見出しが示すように(読売は例外で呼び捨てだが)、ビン・ラーディンは「容疑者」であり、それを司法手続きも何もなしにいきなり頭を撃ち抜くのは、単なる殺人ではないのか。

 オバマに問えば、答えは「戦争だから当然だ」の一言に尽きるのだろうが、法政大学の多谷千香子教授(元国連旧ユーゴ戦犯法廷判事)は「米国にとって危険人物なら、誰でも殺して良いことになってしまう」と批判し、また早稲田大学の最上敏樹教授もアフガニスタンでの国際治安支援部隊の活動を認めた「国連安保理決議では、ビン・ラーディン容疑者を引き渡し、裁判にかける手順を想定していた。いきなり殺害してしまうのは同決議の精神に則したものなのかどうかの疑問が残る」と述べている(共に3日付朝日)。

 その通りで、西部開拓村の荒くれ保安官が、警察署長と税務署長と裁判長と死刑執行人を兼ねるほどの権限を一手に握って、悪漢や不審者を思うがままに撃っていた近代司法以前の野蛮が、帝国の黄昏の深まりと共にむしろ蘇っているのではあるまいか。

 第2に、そもそもビン・ラーディンが本当に「容疑者」なのかどうかについて、米国民も世界も一度も明証を示されたことはなく、そして彼が裁判の場に引き出されることもなく葬られたことによって、本人からその明証を得られる機会は永遠に失われた。これで、9・11事件は米権力深奥部による"自作自演"の陰謀であるという根強い風説は再び勢いを増すことになろう。

 私が2001年10月7日号のインサイダーで書いたように(高野著『滅びゆくアメリカ帝国』、P105)、「最初の段階でタリバン政権は、どれだけ真面目であったかどうかは別にして、『ビン・ラーディンが真犯人である証拠を示せば身柄を引き渡す』とワシントンに申し出た。ブッシュは『奴らと交渉などする余地はない』と蹴って、戦争に持ち込んだのだが、それはその時点で(今でも!)ビン・ラーディンの関与を示す明証が揃えられなかったからだろう」。

 証拠があって彼の身柄を押さえられる可能性があるのならそれを最大限追求するのは当然で、それがもし成功していれば、米国は10年間の歳月と1兆ドルの戦費と6000人の米兵の命を無駄にしてアフガニスタン、イラク両戦争を戦う必要がなかったことになる。「まあ、戦争をやりたいほうが先だったということだろう」(同上)。

●これは侵略ではないのか?

 第3に、アフガニスタンの基地を発した米特殊部隊のヘリが、パキスタン政府に事前通告すらなく同国に侵入して作戦を実施したのは、武力侵攻による「主権侵害」(ムシャラク前パキスタン大統領)に当たらないのか。前出の最上教授は、「パキスタン政府が同国内での米軍事行動に同意していたとすれば、国際法上はありえることだ。......一方で、同意がない場合、全く違法な武力行使したことになる。......同意していなければ、パキスタン政府はかなり強く抗議する可能性がある」と指摘している。

 実際にはパキスタン政府はフラフラ状態で、抗議するどころか、「ビン・ラーディン殺害は世界中のテロ組織にとって大きな挫折となった」との2日付の外務省声明に続いて、ザルダリ大統領が3日付米紙ワシントン・ポストに寄稿し「米国のいくつかのメディアは『パキスタンがテロリストを保護している』などと報じているが、事実は違う。ビン・ラーディン殺害は米パの長年の協力関係の賜だ」と弁解した。

 しかし、首都近くに堂々とビン・ラーディンが豪邸を構えているのを知らなかったことなどあるはずがなく、内外からのパキスタン政府不信は一気に深まっていて、米政府も今回の作戦による押収品の分析を進めるなど、潜伏にパキスタンの関与があったかどうか調査を開始する方針を決めている。それに対してザルダリ政権が頭を低くして擦り寄ろうとすればするほど、国内からは「米国の一方的な軍事行動は主権侵害を超えて屈辱的だ」との反米感情が高まることになる。

 すでにアル・カイーダ系の「パキスタン・タリバン運動」は報復テロを宣言しており、その矛先はまずザルダリ政権に向けられる可能性もある。

 元々パキスタンは、ムシャラク政権時代から、対米面従腹背というか、外交の表舞台では米国のテロ退治作戦に全面的に協力しながら、裏では軍の諜報組織である統合情報部(ISI)を通じてタリバンを育成しアル・カイーダを支援するというジキル&ハイドを演じてきた。米国はそのことに不信を抱きつつも、パキスタンの協力なしにはアフガニスタン戦争の遂行は難しいので、この10年間に200億ドルもの「テロ対策援助」をパキスタンに与えてなだめすかすようにしてきた。しかしブッシュ政権末期以降は、タリバン武装勢力にいよいよ手を焼いて、彼らが出撃基地にしていると言われるパキスタン北部の村々を無人爆撃機で爆撃、多数の一般住民をも巻き添えにして殺したので、米パ関係はますますディレンマに陥った。確かにこの侵略的爆撃は、何人かのタリバン幹部や司令官、それにアル・カイーダ残党を殺すことには成功したかもしれないが、反面、パキスタン国民の反米感情を掻き立ててテロがアフガンからパキスタンへと"輸出"されていく土壌を耕すことにもなった。

 今回の作戦で、米パ関係は二進も三進もいかなくなり、結果、ザルダリ政権が国内を統御できずに動揺、タリバンに親近感を持つイスラム原理主義的勢力が勢いを増すことにもなりかねない。オバマ政権が今後の米パ関係とパキスタン国内治安の確保について綿密な筋書きを持たずにビン・ラーディン殺害の功を焦って突出的な行動に出たのだとすると、核を保有するパキスタンが過激派の手に落ちるという最悪事態さえ起こらないとは言えない。

●国際テロは抑えられるのか?

 第4に、これはすでに多くの人々が指摘しているとおり、世界からテロをなくしていくという究極目標を達成する上でビン・ラーディン殺害が何らかのプラスになるのかと言えば、ほとんどなりそうにない。

 アル・カイーダはネットワーク型の国際テロ組織であって、その中でビン・ラーディンは神格化された精神的指導者ではあるが、すべてを計画し命令する中央司令官ではない。すでにイスラム世界から欧州はじめ全世界に分散して潜伏する集団や個人は、反米欧・反キリスト教の感情は共有するけれども、それぞれ独自にテロを実行する。また、パキスタンで生まれた過激派「ラシュカレトイバ(純粋兵団)」のように、アル・カイーダとむしろ対抗しながら世界中に勢力を広げている組織もある。第2の9・11があるとすれば「核テロ」の可能性が高いことが指摘されており、その危険は5月1日以後かつてなく増大していると言える。▲

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年5月 1日

《第9回・後半》陸山会事件公判傍聴記 ── 石川議員の女性秘書が出廷

昼休憩をはさみ、13時15分再開。午後は石川氏の秘書であるAさんが弁護側の証人として出廷する。Aさんは昨年1月26日に検察庁から証拠品の引き取りを理由に出頭を要請されたにもかかわらず、突然被疑者扱いされ、10時間に及ぶ「不意打ち事情聴取」を受けたことが週刊朝日で報じられて問題となった。午後の法廷では、問題となった事情聴取の様子を証言した。以下、おもなやりとりを中心に概要をまとめ、一問一答形式で掲載する。(── は弁護人、「」内はAさんの証言、※は筆者の補足)

── 聴取を受けた日は、何時に電話がかかってきましたか?

「9時半に電話がかかってきて、相手は民野と名乗りました」

── 職業は言いましたか?

「民野とだけ言いました」

── 民野氏は何と言いましたか?

「押収した資料を返却すると言いました」

── 取り調べについては言われましたか?

「言っていません」

── 確認はしたのですか?

「肩書きを名乗らなかったので心配になって、3回ほど確認しました」

── 出頭の時間の指示は?

「午後1時でした」

── あなたが出かけたときの服装は?

「すぐ帰れると思ったので、コートを着ないで出かけました」

── 持ち物は何か持って行きましたか?

「ランチバックみたいなものだけを持って行きました」

── 検察庁に着いて、民野氏は名乗りましたか?

「その時は身分証のようなものを見せました」

── その時、何を言われましたか?

「『何で呼ばれたかわかりますか』と聞かれたので、『資料の返却です』と答えたら『違います。○○の証拠隠滅で被疑者となりました』と言われました」

── 被疑者と言われてどう感じましたか?

「頭が真っ白になりました」

── 弁護士への連絡は?

「連絡をしようとしたら『その弁護士は選任の弁護士か』ときかれ、そうではなかったので『違います』と答えたら『電話してはダメだ』『弁護士が何になるんだ。石川が失敗したのは弁護士に頼ったからだ』と言われました。携帯電話も『音を消したらいいですよね』と言ったら、電源を切るように言われました」

── 取り調べでは何を言われましたか?

「『自分から話しなさい。こちらはあなたを逮捕できる情報があるのだから、自分から罪を認めなさい』と言われました。ずっと黙っていると『石川を守っているのなら愚の骨頂だ』『石川はすべての罪をあなたにかぶせようとしている』『石川の政治生命は終わる。石川を守る必要はない』などと言われました。

── そのときあなたはどのように思いましたか?

「この特捜部という組織は何をしようとしているんだろうと怖くなりました」

── 外部との接触をとろうと考えましたか?

「子どもの迎えができるかが心配になり、連絡を取ろうとしました。迎えは6時ですので、5時には帰らないといけないと思いました」

── 民野検事はそれを聞いて何と言いましたか?

「『あなた次第だ』と言いました。(帰る時間を)約束しようとしたら『そんなに人生は甘くない』と言われました。子どもの迎えにいけないことで、パニックになって泣いてしまいました」

── 証拠のようなものは見せられなかったのですか?

「通帳のコピーでしたが、誰のものかはわかりませんでした」

── 数字やお金の流れについては聞かれなかったのですか?

「日付と金額を言われたように思います」

── 事務官は証拠を取り出してきたことはありましたか?

「USBメモリーがありました。そのUSBメモリーは私のもので、プライベートの写真や家族の写真とかが入っていました」

── 民野検事はそのUSBメモリーをどうしましたか?

※Aさんは涙をこらえながら、震えた声で話しはじめる。

「内容を確認しながら『お子さんは女の子なんですね』『○○に旅行に行ったんですね』『この子は保育園で犯罪者の子どもって言われるんだろうね』と言いました・・・」

── 取り調べを受けているときに言われたことは?

「背もたれに背中をつけようとしたら、民野検事は机を叩いて『それが人の話を聞く態度か!』と言われました」

※その後、民野検事を振り切る形で弁護士と連絡をとったAさんは、午後11時ごろにようやく解放された。また、自宅に到着後、Aさんは右耳が聞こえなくなっていることに気づき、病院で「突発性難聴」と診断されたという。

── 取り調べに事務官はいましたか?

「はい。最初はPCを見ていたのですが、途中からその男性事務官は机の上に足を乗せて、寝ていました」

── それを見てあなたはどのように思いましたか?

「こういう人にも残業代が出ているのかなと思いました」(法廷で笑いがおきる)

── 取り調べの後に子どもたちに何か変化はありませんでしたか?

「子どもたちも急に母親が迎えに来なくなったので、私が朝、仕事に行こうとすると『ママ、いっちゃだめ!』としがみついてきたりしました」

── なぜ、あなたは取り調べを受けたのだと思いますか?

「いま思えば、私を長時間にわたって拘束することによって、石川にプレッシャーを与えようとしていたのだと思います」

引き続き、検察側による反対尋問。
(── は検察官、「」内はAさんの証言、※は筆者の補足)

── 1月26日の迎えは最終的に誰が行ったのですか?

「義理の母が行きました。午後8時ぐらいだったと思います」

── あなたは経理事務を担当していたのですか?

「はい」

── 1月26日の取り調べでは検察官に具体的に聞かれなかったということですけど、それは事実ですか?

「はい」

── 通帳を見せられませんでしたか?

「具体的な口座名などを言われなかったので、わかりませんでした。逆に私は(タミノ検事に)『見せてほしい』と言ったのですが、見せてもらえませんでした」

※検察側は、午前中の公判で吉田正喜検事が証言した、石川議員への1500万円のワイロの詳細がその通帳に書かれていて、それを質すためにAさんへの事情聴取を行ったと主張したいようだ

── 検察官に通帳の中身について聞かれませんでしたか?

「何も質問されていません。『自分から言った方が罪が軽くなる』と言われました。具体的なことを聞いてくれれば答えることができたのに、何も言ってくれませんでした」


※その後、検察官はAさんに対する2度目の取り調べについて尋問を始める。Aさんは1月26日の取り調べの後、1月末に2度目の取り調べを受けているのだが、Aさんと弁護側は検察から2度目の事情聴取について尋問を受けるとは予想していなかったようだ。検察側からは、2度目の取り調べの際に通帳や通帳をコピーしたものに書かれているメモの詳細について取調官から聞かれたことについて、「記憶にありません」などと答えに窮する場面が増える。Aさんは「2度目の事情聴取について聞かれるとは聞いていなかったので・・」と話すも、準備不足からか時おり弁護側の方に視線を向けるので、裁判官からも「弁護人を見ずに、記憶に従って答えてください」と注意される場面もあった。

最後に裁判官からの尋問。
(── は裁判官、「」内はAさんの証言)

── 午後1時に検察庁に入って、出られたのが午後11時だったのですか?

「はい」

── その間に具体的な質問はなかったのですか?

「はい」

── それでは取り調べの中身が何もないのではないですか?

「ですので、事務官が寝てました(法定内に小さな笑いがおこる)」

── それを午後1時から11時まで繰り返したのですか?

「はい」

以上で第9回公判が終了。いつものことだが、今回も密室で行われた取り調べの中身が問題になっているため、審理が「言った、言わない」の水掛け論に終始した。

以前にも述べたが、この裁判では供述調書以外の具体的証拠が乏しいため、検察側も弁護側も自分たちの正当性を裁判官に印象づける戦法をとっている。そのため、傍聴している限りでは公判で次々と出てくる事実についての認定が難しい。

ただ、ひとつだけ確かなことは、郵便不正事件で特捜部の強引な取り調べの実態が明らかになった以上、調書重視の日本の刑事裁判が転換点にきているということだ。今後の特捜部事件で「疑わしきは被告人の利益に」について日本の刑事裁判がどのように適用するかを決定づける意味でも、この裁判の行方が与える影響は大きいと思う。

※本記事に掲載されているやりとりは、筆者のメモを元に再構成したものです。

(《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

Profile

日々起こる出来事に専門家や有識者がコメントを発信!新しいWebニュースの提案です。

BookMarks




『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

→ブック・こもんず←




当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.