Calendar

2011年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

« 2011年2月 | メイン | 2011年4月 »

2011年3月30日

《第7回》陸山会事件公判傍聴記 ── 録音テープの内容と矛盾する検事の主張に鋭くツッコむ裁判官

3月23日くもり。11日に発生した地震の影響もあってか、今日は傍聴希望者にメディア関係者が少ない。ということで、7回目の公判で初の抽選なし。

なお、岩手県釜石市に居住している大久保隆規氏は、地震による被災を受け、現在は出廷が困難な状態にあるという。そのため、今回からは大久保氏だけ審理が別に行われ、石川氏と池田氏の2人が被告人として出廷することになった。

今回から、陸山会に関係する事件を捜査した検事が証人として出廷する。トップバッターは田代政弘検事。田代検事は主に石川氏への事情聴取を担当し、また、検察審査会が昨年5月に小沢一郎氏に一度目の「起訴相当」の議決を下した後に行われた石川氏への再聴取(以下、「再聴取」とは2010年5月17日のことを指す)も担当している。報道されているとおり、この再聴取の様子を石川氏が録音していたことが昨年末に明らかになっていて、裁判の行方を左右する重要な証拠となっている。

10時開廷。まずは検事による尋問。ここは想定通り、田代検事は取り調べの正当性と調書の任意性を主張。概要は下記の通り。

※以下の概要は傍聴人のメモから主要部分のみを抜粋して再構成したものです。

・石川氏が特捜部からの事情聴取で「この事件はどうおさめるかだ」と言われたと主張していることについて
「そのようなことを言った覚えはありません。(思い当たることとすれば)こちらからすると説明があいまいで、合理的な説明をしてほしいという話をしました。あなたが不合理な説明をすると、捜査が進むことになるので、本当のことを話してほしいといいました。石川氏におびえた様子はありませんでした」

・同じく、「特捜部は恐ろしいところだ」と言われたと石川氏が主張していることについて
「そういった類のことを言ったことはありません」

・石川氏への事情聴取で得た印象
「石川被告は本当のことを話していないという心証がありましたので、『暴力団の子分が親分をかばうようなことでいいのですか』という話をしました」

・石川氏が弁護人に送った手紙について
「石川被告が供述調書に署名して以降のことです。(弁護人が石川氏に)『取調べで黙秘したり署名を拒否することが難しいのであれば、手紙を送ってほしい』と言われたとのことでした。石川氏は私に、『弁護人を無下にするわけにはいけないので、取調べを批判するようなことも書きますが、気を悪くしないでくださいね』ということでした」

・再聴取で水谷建設の5000万円のウラ金について聞かなかった理由
「最初は、相手がどういう答えをしようとしているかを考えました。話すうちに、これは(水谷関連の供述をすることは)無理だろうと思いました。この日の取調べは任意でしたので、石川被告の言い分にも理解をしているという態度で聴取にのぞみました。ある意味では、石川被告のご機嫌を取りながら、取調べを進めたということです」


田代検事の受け答えは冷静かつ淡々としていて、法廷でのやりとりにおける模範的回答といった印象。大久保氏、石川氏、池田氏の3人は、弁護側の尋問でも緊張している様子が伺えたが、やはり検事の方が「場なれ」しているようだ。

昼休憩をはさみ、13時15分再開。続いて弁護側の尋問。以下は、法廷で行われた主なやりとりは下記の通り。(──は弁護人、「」は田代検事、※は筆者の補足)

■特捜部の「脅し」について

── 石川氏は、2009年12月27日にあなたから事情聴取を受けた時に「この事件はどうおさめるかだ」」、2010年1月14日には「特捜部は恐ろしいところだ」と言われたことに「一番恐怖を感じた」と何度も話していますが、本当に言っていないのですか?

「何度も申し上げておりますが、そういう発言はしていないと思います」

── 「小沢さんは石川さんをかばうつもりはないよ」と言ったことは?

「そういうことは言っておりません」

── 2010年1月26日に取調べ調書ができていますね。このとき、石川議員の女性秘書が取調べを受けたことを知っていましたか?

「石川議員から翌日頃に聞いたと思います」

── なぜ、秘書を呼ぶんだと石川氏に言われませんでしたか?

「抗議を受けたようなことを言われました」

── その時、「石川さんにスキがあるからだ」と覚えはありませんか?

「石川被告が悪いから調べられるんだという話はしていないと思います」

── なぜ、秘書が事情聴取に呼ばれたのですか?

「私は全然存じ上げません。今でも、なぜ呼ばれたかはわかりません」

── 石川氏にプレッシャーを与えるためだったのでは?

「私は全然知りません」

■再聴取の際のやりとりについて

── 再聴取のとき、あなたは石川氏に「あ、そうそう、それ(※大久保氏が石川氏から収支報告書の報告を受けていたとする供述調書)に合わせたんだこれは」「その時は、『何にも具体的なことは説明しませんでした』と言ってるんだから、いいんだよ」「(小沢氏に報告したのは)12月だろうが3月だろうが変わんねえからさ。変わるとなんで『変わっちゃったの』となって面倒くさいからさ」と言ってますが、どういうことですか?

「大久保氏の調書を石川氏に伝え、大久保氏が『平成17年3月に4億円についての報告を記載しない』という報告を受けたという調書があることを聞きました。石川被告に事情を聞いたところ、小沢氏が関与していたことを認めることを渋っていたから、石川さんの認識にしておきましょうとということでの発言です」

2010年5月17日の録音テープの中には、2010年1月に石川氏が逮捕されてから保釈されるまでの取調べの調書の作られ方も入っていて、弁護人はそこを攻める。田代検事は淡々と受け答えをするものの、若干早口になり、回答に苦労しているようだ。弁護人が交代して、さらに田代検事を攻める。

── あなたは再聴取のときに、石川氏に「『特捜部は恐ろしい組織だぞ。何されるとわからないぞ』と(田代検事が)さとしてくれたじゃないですか」と言われて、あなたは「うんうん」と答えていますよね

「取調べ時間が4時間を過ぎてましたので、そういうことを返事もしたのかなと思います」

── 心ここにあらずということで言ったということですね。弁護人からはこれで終了します

■裁判官の鋭い質問に、防戦一方になる田代検事

弁護人からの尋問終了後、裁判官から尋問が行われる。主なやりとりは下記の通り。(──は裁判官、「」は田代検事、※は筆者の補足)

── あなたは再聴取の時に「石川さんに対して技を授けて調書にした」と発言していますよね。これはどういうことですか?

「小沢氏の関与については石川氏が供述を渋ったので、そこで、石川氏の認識としてまとめますからということで調書にしたということです。石川氏は勾留中、自分の調書で小沢氏が不利になることを心配していました。そこで、石川さんの立場からすればいい調書になって、私としては残念でしたが、そういう話になりました」

── 再聴取にある「いまのところの作戦」とは何ですか?

「石川氏は小沢氏の起訴を避けたかったので、それに同調して『我々の作戦』と言って、その結果、石川氏が望む調書にしたということです」

── 石川氏に「特捜部は恐ろしい組織だぞ」と言われて、あなたが「うんうん」と答えているのはどういうことですか?

「神経を研ぎ澄ましていれば、その場で反論したかもしれませんが・・」

── だけど、別のところで「特捜部は恐ろしい組織」と言われたところでは、「そんなことないじゃん」と否定してますよね

「はい。特捜部としては(石川氏に)恐怖を与えるようなことはしていないつもりでしたので、そう答えました」

── 気が抜けたということですか?

「おそらくそういうことだっただろうと思います」

── 上の空だったということですか?

「・・そうですね」

── だけど、この「特捜部は恐ろしい組織だと言われた(石川氏)」「うんうん(田代検事)」というのやりとりの前の水谷建設の話では、話がかみあってますよね

「そうですね。水谷建設の件の話だったので、そこはピンときたのではと思います」

── もう一度説明してもらえますか?

「最後のやりとりにで(水谷建設の裏金の)5000万円について否定していることが出てきますので・・」

以上で第7回公判が終了。午前中の田代検事は検事からの尋問に順調に答えていたが、午後に弁護人の尋問で録音テープを引き合いに出されてからは若干早口になり、回答に困っているように見えた。とはいっても、これはあくまで筆者による主観。裁判長が田代検事の一連の反応をどのように評価するかが注目される。

※第6回は後日アップします。

〈構成・文責:《THE JOURNAL》編集部 西岡千史〉
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年3月29日

東電:計画という名の無計画、安全という名の手抜き

takanoron.png 「計画停電」と言いながら、やったりやらなかったり、直前で止めたり、(出来るだけやらないように頑張っているのは分かるが、結果的には)単なる「無計画停電」で、生活と産業を混乱させるばかりの東京電力と国(原子力行政)だが、原発そのものについても同じで、「絶対安全」を謳い文句にしているのに、設計段階から建設、運転、日常検査、事故対応、廃炉の各段階に至るまで、常識では考えられないような「手抜き」をして、安全神話を自ら掘り崩してきたのが彼らである。

●津波の危険を軽視

 第1に、設計段階での重大な疑問の1つは、津波の危険をはとんど無視もしくは極度に軽視してきたのではないか、ということである。

 福島第一原発の大惨事の直接原因は、5メートル程度の津波しか想定しておらず、推定14メートルの津波の来襲で非常用電源がひとたまりもなく奪われたことだったが、よく知られているように、1896(明治29)年の明治三陸大地震の際には、スイス地震局の記録によると、最大38.2メートルの大津波で2万2000人の死者が出、また1933(昭和8)年の昭和三陸大地震では同じく28.7メートルの大津波で3064人の死者が出た。福島第一が計画された1960年代から遡れば、約30年前と50年前にそれほどの大津波が起きた海岸沿いに、どうして5メートル程度の津波しか来ないという前提で設計をしたのか、完全に理解不能である。

 これは福島だけのことではない。26日付毎日新聞の調査によれば、東電以外の全電力会社の原発でも、少なくとも14基が津波による浸水を全く想定しておらず、今回の事態を見て慌てて対策を講じ始めているという。

 静岡県御前崎の浜岡原発は、計画発表当初から、東海大地震の予想される震源域の真ん中に乗っかっているような立地に強い不安が指摘され、反対運動が今なお続いているが、その浜岡原発について中部電力は、非常用電源を敷地内の高台に設置し、またすでに運転終了となっている1号機・2号機についても「9メートルの津波に対処できる堤防を2〜3年かけて建設する」との方針を明らかにした。

 第2に、仮に設計が「絶対安全」だったとしても、施工が設計通りに行われているとは限らない。私は日本の原発の恐しさについて過去何度か取材をしているが、その中で出会った或る特殊塗装の高い技術を持つ企業の社長は、こう語った。

▼私は或る原発の塗装を請け負ったが、元請けの某ゼネコンが受け取った1平米当たりの塗装予算は8000円なのに、間に何と7社が入って、末端で実際に施工するうちに来るのは1600円。到底採算に合わないので、設計では2.5ミリ厚で塗らなければいけないのを1ミリ以下の0.何ミリでやるしかなかった。

▼他の下請けもみな同じで、鉄筋だって仕様通りのものなど入れられないから、既定の何分の1の細いものを使うしかないと言っていた。

▼間に入る5社とか7社というのは、地元の自民党代議士やそれに連なる有力者で、彼らが割り振って中抜きをする。馬鹿馬鹿しいのと、仕事へのプライドから、一度だけで原発の仕事はやらなくなった......。

 こんなことは、昔、あらゆる公共工事で当たり前に行われてきたことで、驚くには当たらないが、それにしても、本来は8000円の価値のある仕事が現実にそれを実施する8次下請け会社には1600円しか届かないということを、一体、国や東電はどう認識してきたのだろうか。

 そういうことは世の中にたくさんあって、私が何十年か前に直接経験した例で言えば、或る週1回の民放テレビ番組でスポンサーが払っている1本当たりのコマーシャル料は1000万円で、それを電通、テレビ局が抜くのはまだ分かるとして、その下に金丸信の関係会社とか(何でここに金丸が出てくるのか?)聞いたことも見たこともない会社が3〜4社も入ってきて、それぞれ何もしないでマージンだけを取って、結局、制作現場には400万円ほどしか下りてこない。それでやり繰りして、外注に出す取材映像も値切り倒すから下請け会社は、手抜きとかやらせとかで誤魔化すしかなくなる訳で、そうやって現場を犠牲にしながらプロデューサーとかは間に入った幽霊会社からバックマージンを得て私腹を肥やしている。そういう悪しき慣習がテレビの衰退を招いているのである。

 テレビなんぞは観なければいいのだが、原発となると手抜きや中抜きは国民の命に関わるはすで、そこでもこんなことが日常横行してきたというのはおぞましいとしか言いようがない。

●熟練した建設職人がいない

 第3に、意図的な手抜きがなかったとしても、原発建設現場には原発の危険を知り尽くした熟練した現場監督がおらず、ズブの素人がいい加減な工事をしている。

 私は、阪神大震災の1年ほど後だったか、原発の工事の現場監督として働いていて後に公然たる内部告発者に転じて有名になった故・平井憲夫にインタビューした際に、その事実を知って驚愕した。今はその記録も所在不明なので、彼が残したHPから要点を引用する。

★平井憲夫「原発がどんなものか知ってほしい」
http://www.iam-t.jp/HIRAI/index.html#about

▼世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは官庁検査によって、きびしい検査が行われていると思われています。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。

▼なぜ、このような事が起きてしまったのでしょうか。その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いていて、現場の施工、管理を怠ったためです。それが直接の原因ではなくても、このような事故が起きてしまうのです。

▼原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故、ヒューマンエラーがあまりにも多すぎます。それは現場にブロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていないからです。机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどうなっているのかという議論は一度もされたことがありません。

▼原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。

▼日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。

▼仮に、自分の家を建てる時に、立派な一級建築士に設計をしてもらっても、大工や左官屋の腕が悪かったら、雨漏りはする、建具は合わなくなったりしますが、残念ながら、これが日本の原発なのです。

▼ひとむかし前までは、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。職人は自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。それが十年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。全くの素人を経験不問という形で募集しています。素人の人は事故の怖さを知らない、なにが不正工事やら手抜きかも、全く知らないで作業しています。それが今の原発の実情です。

▼例えば、東京電力の福島原発では、針金を原子炉の中に落としたまま運転していて、1歩間違えば、世界中を巻き込むような大事故になっていたところでした。本人は針金を落としたことは知っていたのに、それがどれだけの大事故につながるかの認識は全然なかったのです。そういう意味では老朽化した原発も危ないのですが、新しい原発も素人が造るという意味で危ないのは同じです。

▼現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。マニュアル化というのは図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていくんです。そうすると、今、自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。こういうことも、事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。

▼また、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。これではちゃんとした技術を教えることができません。それに、いわゆる腕のいい人ほど、年問の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。だから、よけいに素人でもいいということになってしまうんです......。

●原発を知らない検査官

 第4に、仮に設計も施工も完璧であったとしても、原発のような何が起きるか分からない悪魔のエネルギーを制御するには徹底的な日常検査が不可欠である。ところが、これも平井から聞いて驚いたのだが、無知な役人や天下りが行う検査はデタラメである。同じく上記HPより要約。

▼出来上がったものを見てもダメで、検査は施工の過程を見ることが重要。検査官が溶接なら溶接を、自分でやって見せる技量がないと本当の検査にならない。そういう技量の無い検査官にまともな検査が出来るわけがないのです。メーカーや施主の説明を聞き、書類さえ整っていれば合格とする、これが今の官庁検査の実態です。

▼原発の事故があまりにもひんぱんに起き出したころに、原発の新設や定検(定期検査)のあとの運転の許可を出す役人を運転管理専門官として各原発に置くことが閣議で決まりました。私もその役人が素人だとは知っていたが、ここまでひどいとは知らなかった。というのは、水戸で講演をしていた時、会場から科技庁の者だと名乗って発言した人がいて、「自分たちの職場の職員は、被曝するから絶対に現場に出さなかった。折から行政改革で農水省の役人が余っているというので、昨日まで養蚕の指導をしていた人やハマチ養殖の指導をしていた人を、次の日には専門検査官として赴任させた。そういう何にも知らない人が原発の専門検査官として運転許可を出した。美浜原発にいた専門官は三か月前までは、お米の検査をしていた人だった」と、その人たちの実名を挙げて話してくれました。このようにまったくの素人が出す原発の運転許可を信用できますか。

▼東京電力の福島原発で、緊急炉心冷却装置(ECCS)が作動した大事故が起きたとき、読売新聞が「現地専門官カヤの外」と報道していましたが、その人は、自分の担当している原発で大事故が起きたことを、次の日の新聞で知ったのです。なぜ、専門官が何も知らなかったのか。それは、電力会社の人は専門官がまったくの素人であることを知っていますから、火事場のような騒ぎの中で、子どもに教えるように、いちいち説明する時間がなかったので、その人を現場にも入れないで放って置いたのです。

▼そんないい加減な人の下に原子力検査協会の人がいます。この人たちは通産省を定年退職した人の天下り先ですから、全然畑違いの人です。この人が原発の工事のあらゆる検査の権限を持っていて、この人の0Kが出ないと仕事が進まないのですが、検査のことはなにも知りません。ですから、検査と言ってもただ見に行くだけです。けれども大変な権限を持っています。この協会の下に電力会社があり、その下に原子炉メーカーの日立・東芝・三菱の三社があります。私は日立にいましたが、このメーカーの下に工事会社があるんです。つまり、メーカーから上も素人、その下の工事会社もほとんど素人ということになります。だから、原発の事故のことも電力会社ではなく、メー力−でないと、詳しいことは分からないのです......。

 福島の大惨事は、起こるべくして起こったとしか言いようがない。そしてこのような仕組みの下では、役人も東電の社長はもちろん社員も被爆することはありえず、子会社やメーカーの社員や下請け労働者が犠牲になるに決まっている。そして、これだけ海水を被った1〜4号機は廃炉となるに決まっているが、さて、どうやって廃炉にしたら安全なのかは実は誰も分からない。酷いことになったものだ。▲

2011年3月25日

地震と原発について補足

takanoron.png 前論説で、米ウォール・ストリート・ジャーナルの地震・津波の危険と原発立地についての分析を紹介したが、他方、英ガーディアンは3月22日付で、原発と地震地帯の世界地図を掲げている。

★ガーディアン「地震と原発の世界地図」:http://maptd.com/map/earthquake_activity_vs_nuclear_power_plants/

 これは、米地質調査所のデータに基づいて、1973年以降に起きた約17万4000回のM4.4以上の地震の分布に、IAEAのデータに基づいて248カ所の原発サイトの立地を重ねたもの。地図はグーグル・マップを利用したインタラクティブなもので、青丸で示された原発サイトをクリックすると、そこの原発群の稼働中、建設中、閉鎖済などの基数が吹き出しで示されるようになっている。▲

地震と津波に弱い原発の9割が日本にある

takanoron.png 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)3月19日付のデータによると、全世界400以上の稼働中の原発のうち中程度以上の地震危険地帯に設置されている原発は56基あり、そのうち海岸から1マイル(1.61キロ)未満にあって地震にも津波にも弱い原発は39基だが、そのうち9割超の35 基は日本にあり、残りの4基は台湾にある。同地帯内で建設中・計画中なのは13基で、そのうち日本は6基、そのうち海岸から1マイル未満は5基である。

 今回の東日本大地震・大津波で津波は最大で海岸から5キロほどにも達した(浸水範囲概況図を参照)ことを考えると、1マイル未満という線引きは甘すぎるだろう。せめて2マイル(3.22キロ)未満で線引きすると、日本の地震にも津波にも弱い稼働中の原発は41基となる。日本の原発の4分の3は、いつ福島第一のようなことになってもおかしくないということである。

★国土地理院・浸水範囲概況図:http://www.gsi.go.jp/kikaku/kikaku60003.html

 WSJは、ロンドンに本拠を置く世界原子力協会のデータに基づき、世界の400以上の稼働中の原発と100の建設中・計画中の原発の立地を調べ、それを米地質調査所とスイス地震局が合同で1999年に実施した世界地震被害調査のデータに照らして、各原発を地震高危険(High Activity)区域、中危険(Eleveted Activity)区域、少危険(Moderate Activity)区域、低危険(Low Activity)区域に4分類した。

★WSJ「地震地帯の原発の評価表」:http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703512404576208872161503008.html?mod=googlenews_wsj
(記事中の《View Interactive》をクリックすると一覧表が見られる)

 そこから日本関係の稼働中・建設中のみを抜き出し、マイルをキロに換算し、さらに所在県、営業開始年、事業者を補うと以下のようになる。並び順は基準不明だが、ほぼ原表のままにしてある(建設中=※、停止中=★、計画中と閉鎖済は除外)。

takano110325.jpg

 高危険区域に25基、中危険区域に25基、低危険地区に7基で、すべての商用原発54基、研究用高速増殖炉もんじゅ、建設中の2基の計57基がこの3つの区分に含まれる。そのうち中危険以上の区域にある稼働中の原発で海岸から3.22キロ以内にあるものだけを取ると、上述のように41基である。逆に言うと、女川と大飯以外はみな海に近いということである。

 さらに、ここでは除外したが、すでに閉鎖となった炉でも全く安心とは言えず、日本には現在、ふげん(福井、2003年に閉鎖し廃炉作業中)、浜岡1・浜岡2(静岡、2009年に運転終了、11年3月16日に2〜3年内に12メートル以上の防波壁を建設する計画が発表された)の3つがあり、海岸からの距離は前者が1.24キロ、後者が1.66、1.61である。

 首都圏では、放射能被害を恐れて西へ西へと脱出する人が増えているが、静岡県に逃げるなど愚の骨頂で、活断層の真上に乗っていて日本で一番地震に弱いことで有名な浜岡原発がある同県に、しかも静岡沖地震が起きている状況では、首都圏に残っている方が安全かもしれない。大阪に逃げた人も多いが、原発が14基も並ぶ福井県が地震や津波に襲われたら関西圏はひとたまりもない。沖縄ならいいだろうという人もいるが、台湾の原発が近い。日本ではどこへ逃げても原発爆発の恐怖から逃れることは出来ない。▲

【速報】石川議員の女性秘書の証人採用が決定

 陸山会事件の公判で、石川知裕衆院議員の女性秘書が弁護側の証人として採用されることが決まった。出廷は4月下旬の予定。

 女性秘書については、昨年1月に検察から受けた「不意打ち10時間監禁聴取」が問題となっていて、法廷でもその一部始終を語るものと思われる。

【参考記事】
■石川知裕議員女性秘書が語った「不意打ち10時間取調べ」の全貌
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/02/post_730.html

2011年3月23日

台湾でも反原発運動が盛り上がる──「福島原発被災者に思いをはせ...」と呼びかけ

110321_beritataiw.jpg
↑台湾で反原発行動。福島原発被災者に思いをはせ、祈る参加者

現在6基の原発が稼働中の台湾でも反原発運動が盛り上がっている。3月17日には、台湾第四原発に反対する地域住民らが、福島原発の被災者に思いをはせ、新たに建設中の第四原発の建設を中止する陳情行動を行った。以下は行動の呼びかけを紹介する。また20日には、3000人規模の反原発デモがおこなわれた。

《日本の原発事故の被災者を祈り、危険な原発を止める》

日本の宮城県沖地震による福島原発の事故は、この数日の間にも悪化の一途たどっており、爆発事故の映像、通常の数十倍を上回る数値を計測した被災地域の放射線汚染量、原発職員、消防や警察、そして庶民が放射線被害を受けたというニュースに世界中は驚愕した。

原発のリスクはコントロール不可能であり安全神話は破綻した

これまで胸を叩いて安心だと言ってきた電力会社、政府、官僚、技術者の全員が、今回の事故に対してなんらなすすべを持っておらず、「被害状況を抑制し改善した」といったそのすぐあとから被害が拡大している。福島第一原発一号機の反射炉内の気圧が高まり水素爆発を起こした後、三号機でも冷却システムがコントロール不能におちいり爆発に至った。その二日後には、二号機の圧力室でも爆発が発生して建屋を破壊した。四号機の使用済み核燃料プール、五号機、六号機でも異常が発生している。これら一連の事態から言えるのは、発電機をもうすこし増設しておけばよかったとか、あと何メートルの津波対策が必要だったなどという問題ではなく、現在の科学技術では原発のリスクをコントロールすることは不可能であるという真実を証明している。幾重にも積み重なったうえにきわめて脆弱なその仕組みによる不具合の連鎖に、技術専門家が束になっても太刀打ちすることができない。

台湾の状況を顧みれば、貢寮の第四原発に関して、台湾電力と政府は30年近くもの時間を費やして、第四原発がいかに安全を宣伝し、最新の設備とハイレベルの警戒システムを導入すると言ってきた。だが、第四原発建設に関する台湾電力と政府の長年にわたる成績表は、ミスの積み重ねと度重なる変更によって作られた事故が多発する「ツギハギ」原発であることを物語っている。去年だけでも10数回の工事ミスと稼働事故が発生した。先週には、台湾電力が700項目もの違法設計を隠していたことを週刊メディアが明らかにした。そのうちの数十項目が重要な安全システムに関わるものだった。この20年来にわたる市民社会による憂慮と警告がひとつひとつ現実になりつつあることを目の当たりにしている。

貢寮の住民は長年にわたって建設されてきた第四原発の隣で生活してきた。住民たちは長年にわたって低品質の建設工事や近年では多発する事故やミスを見てきた。この数日、メディアかな流れてくる福島原発の写真やニュースをみるにつけ、驚きとともに今まさに放射線汚染を受けている被害者や住民らへの憂慮と不安を感じずにはおかれない。また今回の事故によって、長年訴え続けてきた第四原発の安全性に対する危惧が、大げさではなく、自分たちのふるさとでも発生する可能性があり、安らぎある生活をしたいという希望を打ち砕くものであることを改めて認識した。

台湾原子力政策の誤りを正すギリギリの機会

馬英九台湾総統は数日前にメディアで次のように語った。「福島原発の事故を理由に原子力エネルギー政策を見直している国はない。だから台湾の原発政策も変更する必要はない。第四原発の建設は続ける」。しかし馬総統の情報には誤りがある。すでにEU内の幾つかの国であわてて原発政策を転換してるところがあるからだ。

スイスではすでに新しい原発の計画を凍結し、ドイツでは古い7基の原発を閉鎖した上で他の原発の運転延長についても一時中止することを決めた。EUでは地震や高波による損傷リスクの評価をふくむ域内のすべての原子炉の圧力測定を行う。タイでも原発建設計画の中断の声が上がっている。

馬政権は今年末に第四原発一号機にウラン燃料棒を装てんするという計画に変更はないとしている。つまり、その際には、ツギハギ第四原発の放射線の脅威とリスクが貢寮と台湾全土を覆い、日夜台湾の人々の心に影をさすことになるだろう。

塩寮反核自救会および原発を憂慮するすべての市民団体は、先週スクープされた第四原発における700項目もの安全設計の違法改ざん事件をうけて今週台北の行政院への陳情抗議行動を予定していたが、先週末に不幸にも発生した福島原発の事故の影響範囲が現在も拡大し続けるなかで、予定を変更して、福島原発事故と震災・津波の被害者に祈りをささげる行動とすることにした。震災・津波被災者や放射能汚染の被害者の一日も早い回復と放射能被害からの決別、そしてふるさとの再建を祈りたい。

また台湾政府の原子力エネルギー政策に対する我々の訴えを行政院に提出し、馬政権が慎重に検討を行い、正しい決定を行うよう次のように求める。

1.日本政府および台湾政府に対して、現在の被害の状況および原発の危険性を明らかにし、無辜の民衆を放射能汚染の脅威にさらすことのないよう求める。

2.多くの国々で原発政策の見直しがすすんでいる。馬政権は危険な原発政策を中止し、迅速に「核のない世界」(非核家園/No Nuke)を実現すること。

3.近年多発している第四原発での事故によって、人々の安全性に対する信頼は失墜している。このように危険な原発にウラン燃料棒を装てんし、台湾民衆の生命を危険にさらすことに反対する。

【呼びかけ団体】
塩寮反核自救会、緑色公民行動連盟、ノーニュークス行動団隊、台湾環境保護連盟、台湾緑党、主婦連盟環境保護基金、緑色消費者基金会、台湾生態学界、台湾ウォッチ協会、台湾ワイルドハート生態協会、人民火大連盟、全国自主労工連盟、労災協会...ほか拡大中。

【スポークスパーソン】
緑色公民行動連盟 洪申翰
塩寮反核自救会  呉文通

【解説】
台湾では現在、6基の原発が稼働中である。台湾電力は「第四原発」と呼ばれる次の原発施設を、新台北市貢寮郷に建設した。台北の中心地から東へ電車で1時間30分ほどの場所にあるこの地は、海岸線が美しい、風光明媚な場所である。
1980年代半ばに明らかになった第四原発の建設計画に対して、地元住民は「反核自救会」を結成し、原発の安全性、環境(とくに漁場の)破壊、先住民の土地の権利の理由から抗議行動を続けてきた(現地の反対運動に関しては、チェ・スーチン監督の『こんにちは、貢寮』のDVDに詳しい)。第四原発の受注に東芝と日立製作所が関わっていたこともあって、日本の脱原発運動の人々も多数、この地を訪問している。
第四原発は中華民国100年の記念である2011年中の稼働を目指していたが、試験運転中に事故が頻発したため、目標の達成は難しいとみられている。しかし現地の住民は、原発の脅威にさらされたままである。

【関連記事】
■記事原文
http://www.coolloud.org.tw/node/58024
■2月20日の反原発デモについて
http://www.coolloud.org.tw/node/58330

(翻訳:稲垣豊、解説:安藤丈将、この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2011年3月20日

日本は「核なき世界」への先導者となるべきだ

takanoron.png 米ネーション研究所特別研究員で『核の危険の70年間:その新しい姿』の著書があるジョナサン・シェルが、3月17日付NYタイムズ国際版に「ヒロシマからフクシマへ」と題して寄稿し、「問題は、非常用発電機や安全基準などではなく、人間はその本質として誤りを犯しやすい存在だということである」と、要旨次のように書いている。

▼原発は複雑な高度技術だが、その異常は、例えば1人の作業員がスイッチの前で居眠りしていたといった、取るに足らないレベルで起きる。こうした予測が可能であったり不可能であったりする誤謬は、作業のあらゆる段階で発生する。現に日本の原子力産業では、隠蔽工作や安全規制逃れなどがさんざん行われてきた。しかし、どの巨大官僚組織がそういうことをしないのか。そして、地球上で最も秩序立っていて効率的な国である日本でそういうことが起きるのであれば、どの国で起こらないのか。

▼問題は、もう1つの非常用発電機が必要だとか、安全基準が十分に厳しくなかったとか、核廃棄物の置き場が間違っていたとかいったことではない。頼りなくて不完全な創造物である我々人類は、核分裂や核融合によって太陽のエネルギーを使いこなすのには向いていないということである。自然が攻撃する時、なぜ人類はそのトラブルと折り合いを付けなければならないのか。地球には原初的な破壊力が十分に備わっていて、我々が手助けしてもっと多くの破壊力を導入することなど必要としていない。そのような破壊力は母なる自然に任せておくべきである。

▼この新展開に照らして、原子力発電を止めるべきだという人もいる。私の提案は違っていて、この危険の特別な性質ともっと付き合っていこうというものだ。一休みしてこの問題を研究しよう。どのくらい長く?核廃棄物の一部であるプルトニウムは2万4000年の半減期を持つ。慌てることはない。その半減期のほんの半分の期間、この問題を研究すればよい。その期間中に、我々は新しい安全なエネルギー源を探すことも出来るし、また核分裂を上手に扱う知恵も湧くかもしれない......。

●当面の危機の克服の先に

 もちろん喫緊の課題は、大地震・大津波の犠牲者の救援と同時に、すでに部分的な炉心溶融を起こした福島第1原発4基の連鎖事故を何としても抑え込んでチェルノブイリのような炉心爆発を阻止することである。

 原発事故の深刻さを表す国際基準は0〜7までの8レベルがあり、過去最悪は86年ウクライナのチェルノブイリ原発の爆発で、直接の死者は作業員・救急隊員数十名だが、放射性物質の拡散によるガンなどによる間接被害は数十万人に及ぶとされ、これがレベル7である。

 次は、これも旧ソ連ウラル地方のクイツシムの軍事用原子炉及び再処理施設の廃棄物貯蔵タンクの爆発による放射性物質の大量飛散で、これがレベル6である。79年の米スリーマイル島原発での部分的な(と言っても約半分の)炉心が溶融した事故は、住民や環境への被害は少なかったとされるが、これがレベル5である。

 今回の福島の事例は、当初はレベル4とされていたが、1号機と3号機の水素ガス爆発、2号機の燃料棒露出によると見られる格納容器下部の爆発、さらに3号機と停止中だった4号機の使用済み核燃料プールの爆発・火災----という連鎖的・複合的な危機の深刻さを受けて、日本政府は18日、レベル5のスリーマイル並みと評価を改定したが、それより数日前に国際的な専門家たちはすでにレベル6に達していると見ており、ということは、我々はもはや、チェルノブイリ寸前という史上2番目クラスの原発事故に直面している訳である。

 広島、長崎、スリーマイル、チェルノブイリ、そして福島を、仮にこれまで人類が体験した最悪の世界5大核惨事と呼ぶとすれば、そのうち3つまでも日本人が引き受けたということである。まさに「ヒロシマからフクシマへ」という文脈で事の本質を捉えて、核兵器も原発もない世界の実現に向かって先導役となることこそ、次に我々がなすべきことである。

●砕け散った原発「安全神話」

 我々一般人には何をすることもできない福島の事態が、現場作業員と自衛隊・警察の命を顧みない献身的な活動によって制御に成功するよう祈るしかない。が、成功したとしても、そして成功しなければなおさら、日本人の誰もが、世界の地震の2割がここで起こるというこの列島に54基もの原発を並べた中で暮らしていこうとは思わないだろう。

 推進側の論理は、まず「絶対安全」で、それで事故や異常が起これば「想定外」と言う。しかしシェルが言うとおり、自然も、その一部である太陽エネルギーも、所詮は人間にはすべて「想定外」であって、「絶対安全」など哲学的レベルから言ってあり得ない。そのような根源的な疑念を抱く人々に向かって推進側が繰り出す最近流行の搦め手は、「原発はCO2を出さず究極のクリーン・エネルギーだ」というものだ。結構じゃないか、放射能を吸い込むくらいならCO2などいくらでも吸ってやる。

 もう1つのやや旧式な搦め手は、「そんなことを言っても、原発は日本人が使う電力の4分の1から3分の1近くを賄っていて、今の便利で快適な文明生活には不可欠だ」というものだ。結構じゃないか、原発を全部止めて貰って、その是非を1万2000年間じっくり研究することにして、取り敢えずは電力消費を4分の1か3分の1減らそうではないか。

 06年度の総発電量は1兆1611億万kWhで、そのうち原発が3034億、26%を占めている。原発分を引くと、8592億で、これは1990年の総発電量8573億とほぼ同じ。何も困ることはないのではないか。もちろん、90年当時になかったか、もしくは余り普及していなくて、今は不可欠、もしくはあれば便利という電動器具はたくさんあって、携帯電話、インターネット、IHヒーター、床暖房、温水洗浄便器、電気自動車など様々だが、その中には本当は要らないもの、他に代替可能なもの、別のエネルギー源で賄えば済むものもたくさんあるだろうし、また技術的発達で急激に電力使用量を低減させつつあるものもある。と言っても、電力を使うのは主に家庭用である民生用が3分の1で、44%が産業用、24%が運輸用。運輸用は電車や新幹線など公共交通機関だから減らすのは難しいし減らさないほうがいい。とすると、家庭と産業で使用量を4分の1減らせば、ほぼ原発なしの暮らしが実現する。

 原発が26%というのは総電力量に占めるシェアで、一次エネルギー供給全体の中では05年で11.2%にすぎない。そう考えると、原発を止めるのはますます簡単そうだが、一方ではピーク・オイルという問題があって、その分、化石燃料への依存を増やすのではお話にならない。

●食料もエネルギーも出来るだけ自給

 より根本的な問題は、食料だけでなく電力はじめエネルギー供給においても、地産地消、自給自足を目指すという文明論的な課題が、これでますます切迫することである。

 原発を止めて、その分を他のエネルギー源に代替するというだけでは、根本的な解決にはならない。電力が東京電力はじめ10電力によって"中央集権的"なネットワークを通じて供給されるのは当たり前だと思っている常識がそもそもおかしいのであって、例えば地域では、水車の復活、ミニ水力発電や風力発電や太陽光発電の建設、あるいはバイオマス循環システムの構築で電力・エネルギー需要を賄うおうとする試みは、世界でも日本でも色々始まっている。

 個人・家庭レベルでも同じで、かつての里山の主要なエネルギー源であった薪や炭の復活、風力・太陽光発電の導入など、可能な限り"中央集権的"なエネルギー・ネットワークに依存しないで暮らしを成り立たせようという挑戦が増えている。

 と、偉そうなことを言っても我が家の場合はまことに中途半端で、(1)水は隣地の湧き水を水源として借りて、それを落差を利用して浄化装置を通じて8トンのステンレスタンクに貯め、それをポンプアップして使用し、排水は大きなコンクリート槽にバイオチップを満たした中を通して真水に還元するという、一応敷地内完全サイクルを実現しているのだが、上水のポンプアップと下水の浄化のためのエア注入と汚水循環には電力を使わざるを得ない。(2)ガスはプロパンで、これも外部から配給されるには違いないが、中央集権的な都市ガスに比べれば災害等には強い。(3)メインの暖房は薪ストーブであるけれども、(4)それだけでは不安なので、電気床暖房と冷暖房兼用のエアコンは設置してある。今は1日1〜2回、1回に3時間40分の計画停電があり、そうでないとしても節電を心掛けて薪ストーブだけで暖をとっているが、こうなってみると、薪ストーブと約2年分の薪ストックという暖房方式の超アナログ性が心の支えにさえなることが分かる。

 実は5年前、今の鴨川山中の家を建てる際に、大型の太陽光発電装置を設置して電気も出来るだけ自給して、電力ネットワークへの依存を減らすことを検討した。が、すでに建物の着工後で、それだけの重量のものを屋根に乗せるには構造上、心配があると建築家から指摘され、さらに屋根が西向きで、南向きの場合と比べてだいぶ発電効率が落ちるので、設置コストとの見合いで余りお勧めしないと太陽光の専門業者から言われて、断念した経緯がある。今になれば、設計段階からコスト増は覚悟で太陽光を導入しておけばよかったと悔やまれる。

 1つの技術的な希望は、すでに普及が始まっている燃料電池である。電池と言うがこれは水素発電機で、プロパンと同様、水素ボンベそのものは外部から配給を受けなければならないとはいえ、電力ネットに繋がっている訳ではないので、遥かに自立性は高い。家庭だけでなく事業所も病院も公共機関も、すべて1軒に1台の水素発電機を保有することになれば、格段に災害に強い町や村を作ることが出来る。

●金さえ出せば何でも手に入る?

 食料も同じで、大規模流通機構に依存している限り安心はない。TPPに関連して最近ますます国の食料自給率が大事だと叫ばれているが、第1に、そもそも農水省がカロリー・ベースで計算して「39%」と言っているのがおかしくて、金額ベースでは現在でも70%の自給が確保されている。第2に、大都会、例えば東京都の自給率はカロリー・ベースで1%、大阪府2%、神奈川県3%で、これは仮に国の自給率が100%になっても変わることがない。ほとんどすべての食料を他県か他国の生産とそれを途切れることなく運び込んでくれるはずの大規模流通に委ねていることになる。昨日も鴨川市内のスーパーで、商品棚が空になるのも構わず、1人で40個ほどの缶詰を籠に入れてウンウン言ってレジに運んでいるオジサンがいたが、都会ほどそのような醜い買い占めが起きるのは、足が地面に着かないような暮らしの中で食という命の根源を他者に任せていることへの潜在意識的な不安があるからだろう。

 我が家は、肉や卵や魚は店で買うし、時にはネットでお取り寄せなどして小さな贅沢も味わうけれども、米は20年来自分で作っているし、もし不足すればどこで分けてもらえるか分かっている。味噌は鴨川自然王国で大豆から植えて毎年醸造しているし、年にもよるが、気が向けば自分で酢や醤油も作る。家ではそこまではやらないが、近所には海の水を汲んで自分で塩を作っている人もいたりする。野菜は王国からの宅配と自家用の小さな畑で大半は賄えるし、それ以外にも、庭の蕗の薹がそろそろ食べ飽きたという今頃は野蒜やクレソンも延びてきて到底食べきれない。今年は椎茸もたくさん出た。冬の間に淡竹の竹林もだいぶ綺麗にしたので、5月後半になると筍がたくさん獲れるだろう。一度、近所の人に「天麩羅パーティー」に招かれて、エビもアナゴもなくて、「何の天麩羅ですか?」と訊ねると、「今日はこの庭の葉っぱを片端から食べる」という。20種類ほどの葉っぱがみな食べられて、中でもスギナの天麩羅のおいしいのに驚いて、「そうか、人間、こうやって生きていくことが出来るんだ」としみじみと思ったこともあった。なので、食料に関しては、いざとなれば肉と卵と魚をしばらく我慢すればいいという程度で、全くと言っていいほど不安がない。

 もちろん誰もが大都会を離れて暮らせる訳ではない。が、金さえ出せばエネルギーも食料も手に入って当たり前という常識の嘘を取り払わない限り、安全安心な暮らしはいつまでも手に入らない。まず原発を止めることが、そのことを考え始めるきっかけになるのではないか。▲

2011年3月14日

原発に関するQ&Aまとめ

 科学技術情報を伝える「サイエンス・メディア・センター・ジャパン(SMCJ)」が、福島第一原発の事故について、科学者の分析や解説をまとめたサイトを公開している。情勢の変化に応じて随時更新されており、原発事故に関する疑問について回答されている。

■原発に関するQ&Aまとめ(SMCJ)
http://smc-japan.sakura.ne.jp/?p=752

2011年3月13日

小林恭子:地震発生で日本を励ます英フィナンシャルタイムス

kobayashi110313_2.jpg
小林恭子氏のTwitterはコチラ

 海外メディアは今回の地震をどのように取り上げ、報道しているか。「日本人が知らないウィキリークス」共同著者の一人である小林恭子氏から情報が届きました。英国メディアチェックのから転載です。

☆ ☆ ☆

 日本は国外でどう見られているか?

 これは本来はあまり気にするべきことではないだろう。新聞は、何か事件があったとき、国外の見方を紹介する記事を良く作るけれど、これはあくまで「参考」であって、その見方は当たっているかも知れなし、当たっていないかもしれない。ステレオタイプかもしれない。

 それでも、もし英国での今回の日本の地震と津波発生の報道を紹介するとすれば、大体共通しているのが、

1)非常に報道が詳しい─地理的な説明、何故地震や津波が起きたのか、何故原発が日本にとって大事なのかを、ありとあらゆるコメンテーターや情報を使って英国民に説明している。テレビのニュースは時間を目一杯とり、新聞もたくさん紙面を使っている。

2)主眼になっているのは、これほど大きな自然災害であったことへの驚き、犠牲者への大きな同情、原発の事故の可能性でどれだけ被害が出るかへの高い関心など。サン紙は、1面に、大きな写真に、一言、「黙示録」とつけた。
■「APOCALYPSE JAPAN─Thousands feared dead in tsunami」(英・The SUN)
http://www.thesun.co.uk/sol/homepage/news/3461355/Japan-Thousands-feared-dead-in-tsunami.html

3)報道のトーンとしては、日本に対する敬意がいろいろな箇所ににじみ出ている。「地震がたくさん発生する国日本で、今回これほどの地震と津波が起きた」「地震に対しては準備万端だったろうけど、津波は防げなかったーでも仕方ないだろう」「地震対策はすごいはずだが」「私たち英国人のアドバイスなどは、あまり参考にならないだろうが(日本には相当な知識と技術があるのだから)」-という表現をよく聞いた。「敬意」というのは、もしかしたら、やや「劣等感」あるいは「気後れ感」もあるかもしれない。何せ、ちょっとしたことで電車が止まり、交通状態が麻痺してしまったり、郵便が届かなくなるのが英国だから。2012年のロンドンオリンピックも、まともに交通機関が動くと信じている人は少ない。必ず何か失策が起きそうである。

 地震発生2日目に犠牲者が数百人規模で出ていることが分かったので、明日以降の新聞はまた別のトーンになると思うが、とりあえず、発生の夜に作った、本日付の各紙は6ページほどの特集がザラだった。

 英・フィナンシャル・タイムズは、希望的観測の論考が多い。神戸の地震(1995年)と比較して、当局が着々と救済策に力を入れていることを誉め、「日本はこれをきっと乗り越える」という結末など。例えば社説の見出しは「日本は自然災害を吸収する」である。

 論説面の記事の一つが、日本在住のピーター・タスカ氏の論考、「日本は回復力が豊かな国(Japan is rich in resilience)」。自分の体験を書き、後半が日本を励ますような記事。

 やや拾ってみると、
 「表面的には、日本はひどい状況だ。管首相は低下する世論調査の数字や金融スキャンダルの餌食になる、幾人もの首相の一人だ」「経済はG7の中でももっとも大きく打撃を受けている」「東証トピックスは1985年レベルで止まっている」

 「日本の隠された資産は、国民からだけでなく、十分に高く評価されていない」、例えば「2007年夏から円は対ユーロ、ポンド、ドルなどで急激に上昇している。それでも、上場企業は来年には利益のピークに至るだろう。これは現状では、本当にすごい業績だし、1990年代以降、日本の経営がいかに大きく変わったかの証拠でもある」

 「日本では急速に高齢化が進んでいるが、これが良いか悪いかは別として、大量の移民労働者に対し、門戸を開いていない」「その代わり、日本の勤労者は長い年月を働きつづける。労働市場の20%以上が65歳以上なのだ。欧州では5%以下だ」

 「80代の人でも警備員やレストランで働いている。しかも意気揚々としている。年金だけにたよるのは昔から軽蔑されている」「日本は電化製品ではトップの座にはないかもしれないが、リアリズムでは世界の先駆者だ」

 「若者たちは、無関心や政治への関与をしないことを高齢者たちから批判されているが、神戸大地震の副産物の1つはボランティアが広まったことだ」「100万人がボランティアに従事している」「(当時は)日本のやくざでさえも、生存者たちに無料で食べ物を配った」「互いに助け合うネットワークが自然にできた」

 「危機や自然災害は前向きの変化を引き起こすかもしれない」「ニーチェがいったように、あなたを殺さないものは、あなたを強くするのだ」「この災害は日本を殺さない。日本は心理的により強くなるかもしれないー地震の処理がうまくいけば」

 「なまずに石を戻してくれる神がいるとは誰も思っていない(※1)」「自分たちでやらないとだめなのだ」

 「日本に対して楽観的になる最大の理由は、厳しい20年間をかいくぐった、社会資産(ソーシャル・キャピタル(※2))があるからだ」。

 日を追うごとに暗いニュースになるだろうし、海外のニュースを読んでいる気持ちの余裕はなくなるだろうけれど、とりあえず、紹介してみた。

【脚注】
※1 前の文章に、なまずと地震の話がある
※2 ソーシャル・キャピタルは、人的資源、助け合うネットワーク、80代になっても嬉々として働く人々のことを指していると思われる。

☆ ☆ 海外メディアの地震記事 ☆ ☆

Japan Struck by One of Biggest Earthquakes(「Democracy Now!」─インデペンデントメディア)
JAPAN EARTHQUAKE(「Newser」─ニュースアグリゲーター)
Don't give up, Japan. Don't give up, Tohoku(「The Independent」)
Powerful Quake and Tsunami Devastate Northern Japan(「NewyorkTimes」)
Japan earthquake and tsunami(「Guardian」)

☆ ☆ 著書紹介 ☆ ☆

kobayashi110313.jpg
「日本人が知らないウィキリークス」

2011年3月11日

「調書にサインしたことは私の人生最大のミスだった」中司宏元枚方市長が語る

newsspiral110309.JPG
↑ 中司宏元枚方市長(左)と佐藤博文弁護士(右)

→→ 会見の音声をダウンロードする(mp3) ←←


 大阪府枚方市発注の清掃工場建設工事をめぐる談合事件で、競売入札妨害(談合)の罪に問われ、二審で執行猶予3年(求刑懲役2年)の判決を受けた中司宏・元枚方市長が9日、都内の自由報道協会で記者会見を行った。

 大阪府枚方市の談合事件では、当時副市長だった小堀隆恒氏にはすでに無罪判決が確定しるが、中司元市長は調書に一度サインしてしまったことが証拠となって、一審と二審で有罪判決となった。

 この事件を巡っては、逮捕された小堀元副市長に対し、大阪地検特捜部が7時間以上のぶっ続け聴取を行ったことが問題視されている。腎臓ガンで右腎を摘出していた小堀氏は、勾留中に排尿障害となり、医務室のずさんな処置により血尿が止まらなくなった。にもかかわらず、大阪地検特捜部は小堀氏に大人用のオムツを付けて、聴取を続けたという。

 中司氏も大阪地検特捜部に最初にストーリーありきの聴取を受けたが、最後は周囲の人達に迷惑をかけたくないとの思いから、調書にサインしてしまったと語る。会見では、「(サインしたことは)私の人生最大のミスをやってしまった。何が一番悔しいかというと、自分でやってないことを自分がやったと書かされたことが悔しい」と語った。中司氏は現在も最高裁へ上告中だ。

 なお、事件の経緯については、中司氏が月刊誌『正論』に寄稿した「『改革』を掲げた私はいかにして罪に陥れられたか」が詳しい。8日の会見の詳細は、下記URLから聴くことができる。

■中司宏元枚方市長記者会見(mp3)
http://www.the-journal.jp/contents/voice/nakatsuka110309.mp3
※音声の一部にノイズがまじっております。あらかじめご了承のほどお願いします

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年3月10日

TPP推進派の根拠に落とし穴 ── 内閣府試算GDP3.2兆円増は10年間累積試算だった

「日本のGDP における第一次産業の割合はどのぐらいだと思われますか」「1.5%を守るために,98.5%という大部分のものが犠牲になっているのではないか」(2010年10月19日「日本経済新聞社−CSIS共催シンポジウム」)

 前原元外相の発言に代表されるように、TPP推進論者はGDPを物差しに「農業 vs 輸出産業」の対立軸で語ってきた。だが、TPPによってGDPが増加するとの内閣府試算については、4ヶ月経った今でも疑問点が多い。

 今週発売の「週刊東洋経済」では、内閣府の試算を担当した川崎研一氏(野村証券金融経済研究所 主席研究員) がインタビューに応じ、

「私が算出した政府試算は、関税撤廃等の自由化を10年やった場合の累積だ。TPP参加、不参加で3兆〜4兆円差がつくとみているが、1年で3000億〜4000億程度、GDPなら0.1%相当にしかならない」

 と語っている。しかし、10月27日に内閣府が公表した「包括的経済連携に関する資料」には、「10年間の累積」ということはもちろん、試算の前提となる基礎情報についてはほとんど書かれていなかった。

 当時(10月末)のメディアを見てみると、「政府試算:TPP参加なら実質GDP2.4兆-3.2兆円増」(Bloomberg)「GDPを最大3.2兆円押し上げ TPPの経済効果公表」(テレビ朝日)と、「3.2兆円」がTPP推進の根拠として報じられ、またたくまにこの数字が一人歩きを始めた。各新聞社の社説が推進論を展開した時期とも重なる。

 TPP参加による影響の試算は各省庁から出され、すでに疑問点も指摘されている。追い打ちをかけるように、内閣府の試算が10年間の累積であることがわかったことで、賛成派の論拠が弱まることは必至だ。

 政府公表の資料に、欠落した情報が多数あることを問題視していた「TPPを慎重に考える会」会長の山田正彦前農水相は、1月に行われた本誌のインタビュー「TPPは農業だけの問題ではない! 」で、こう語っている。

「TPPに参加すればGDPが増えるという試算で、輸入がどれだけ増えるのか、国内の生産構造がどれだけ変わるのかなど、"国家機密"か知りませんが根拠を出せないようです」

 以来、山田氏は内閣府に試算方法などの基礎情報の公表を求めているが、いまだに回答はないという。

【TPP関連記事】
山田正彦:TPPは農業だけの問題ではない!
舟山やすえ:米国基軸のTPPよりアジア中心の経済圏を
TPP報告書を公開!
TPP「開国」報道に"待った"の動き
続・世論調査の「TPP推進」は本当?

────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年3月 8日

《第5回》陸山会事件公判傍聴記 ── 検事は作家!? 前田元検事が大久保氏についた重大なウソ

3月1日小雨。石川議員の証人尋問が終わったためか、今日は傍聴希望者が少ない。公判も第5回ともなると、報道関係者以外で毎回傍聴しているのも雑誌やフリーランスの記者がほとんどで、くじ引きまでの待ち時間や休憩中に雑談を交わす人も増えてきた。雑談のなかで裁判の行方が話題になることもあるが、媒体によって陸山会事件に関する報道スタンスは様々でも、今後の展開はまだまだ予測不可能という意見が多い。

10時開廷。第5回公判午前の部では池田光智元秘書が検事から反対尋問を受けた。

検事は、政治資金報告書の記載について石川氏や大久保氏と共謀があったとする質問を続けるが、池田氏はさらりと否定。どうも尋問のやりとりが噛み合わず、退屈である。

というのも、検察側の描いている構図は「小沢事務所は完全なタテ組織で、すべて上からの命令で動いている」というものだが、池田氏の証言では、現実の小沢事務所は会計業務の引き継ぎすら最低限の部分しか行われておらず、しかも、石川氏が小沢事務所を退職後に北海道で立候補したので、問題となっている4億円についても詳細は知らなかったという。一連のやりとりを聞いていると、第4回までと同じくように検察側の描いた構図と小沢事務所の実態の格差に驚く。

13時15分、午後の法廷が再開。

大久保隆規元秘書が証言台に立ち、弁護側から質問を受ける。ここでも大久保氏は石川氏や池田氏との共謀を否定。その後、水谷建設の裏献金について聞かれた大久保氏は「断じてありません」と回答。弁護人が「何か言いたいことがありますか」との問いかけに、「水谷建設の社長の尋問があると思いますので、それを聞いてからお話したいと思います」と答える。水谷建設関連については、検察側による水谷建設関係者の証言が終わった後に反論し、それまでは何も答えないようだ。

引き続き、大久保氏が2010年1月の逮捕時に受けた前田恒彦検事(当時)による取り調べの様子を語りはじめる。

ご存じのとおり、前田検事とは郵便不正事件で証拠資料であるフロッピーディスクの更新日付を改ざんして逮捕され、懲戒免職された検事だ。以下、大久保氏と弁護人のやりとり。
(──は弁護人、「」内は大久保氏の発言、※は筆者の補足)

※以下の概要は傍聴人のメモから主要部分のみを抜粋して再構成したものです。

── これまでの公判で石川氏や池田氏の調書を見てどう思いましたか?

「まったく私のときもそうだったなと思いました」

── 石川さんの供述に「大久保さんがそう言っているのであれば、そうかもしれない」とあるが、それを読んだとき、どう思いましたか?

「前田検事にだまされたなあと思いました」

── だまされたとは?

「私は1月30日の調書で石川氏が私に会計について報告していると言われ、前田検事に『その話を受けてあげないと』と言われ、私は石川氏がしのびないとおもって調書のサインに応じたわけです」

── 報告された事実はなかったのですか?

「私はまったく知りませんでした。しかし、(前田検事が)『大久保さんが受けてあげないと』と言われ、1月30日の調書になりました」

── 1月23日の取り調べ報告書には、午後8時〜9時まで中断されています。それはなぜですか?

「その日は、小沢氏の事情聴取がありました」

── (聴取後の小沢氏の会見の)テレビを見るために中断したということですか?

「はい」

── 午後9時から前田検事と何を話しましたか?

「怒気を持って『小沢さんは嘘をついた。小沢さんの無事を祈るよ』と言われました」

── それを聞いてどう思いましたか?

「今回は小沢先生は逮捕されませんでしたけど、これから逮捕されるのではないかと思いました」


ここで検事が異議申し立てをする。

検事:前田検事の調書は証拠採用されておらず、任意性を争うことになっていません。

弁護側もすかさず反論。

弁護人:これまでの証言にあるように、「切り違え尋問」が行われています。最低限、明らかにしないといけない範囲で認めていただければと思います。

捕足。「切り違え尋問」とは、たとえばAとBの両方が否認しているのにAに対して「Bは認めてるぞ」と嘘を言ってAの供述を取り、その後にBに「Aは認めたぞ」といって供述調書を取ること。こういった手法を用いて得られた供述調書は証拠能力が否定される。弁護側は大久保氏、石川氏、池田氏の事情聴取のなかで切り違え尋問が行われていたと主張。大久保氏に前田検事の事情聴取の様子を明らかにさせ、石川氏、池田氏の「切り違い尋問」によってサインを迫られたもので、任意性がないと主張するつもりのようだ。

その後、弁護人と検事の応酬が続く。

そこで裁判官が「いったんお待ち下さい」と言って、裁判官3人が退廷する。検事の異議について協議するつもりのようだ。少しざわつく法廷。

5分後、裁判官3人が法廷に戻ってくる。全員起立し、裁判官に一礼。着席後、裁判官が検察官の異議について発言。

「異議を棄却します」

裁判官は、公判前整理手続きに提出されていた資料でないことをふまえ、最低限の範囲で前田検事の調書について質問することを認めた。

引き続き、大久保氏と弁護人の尋問。

── 小沢氏への捜査を避けたかったのは、どんな理由からですか?

「我々秘書が小沢先生から任されたいたにもかかわらず、こういう事態になったことを申し訳ないと思いました。小沢先生が逮捕されれば重大なことになると思いました」

思わず大きな声になる大久保氏。それに対して弁護人が「ちょっとテンションを抑えて・・」と注意。

── 前田検事の取り調べの時、事務官は同席していましたか

「事務官は席を外していました」

── 前田検事と1対1で事情聴取をしていたのですか

「はい。1対1です」

── びっくりしたことはありましたか?

「ご自身でPCを使って、『これ作家の時間だから』『司馬遼太郎みたいなものだよね』と言っていました。その時に突然『ここで大久保さん登場!』『これはあなたの発言!』と、私の方を指さして発言しました」

前田検事が調書を一人で造りあげていたことを証言する重要な場面なのだが、大久保氏がジェスチャーを交えながら証言するので、法廷に笑いをこらえる声がもれる。大久保氏を最も近い位置で見ていた石川氏も池田氏も、笑いをこらえているようだ・・。一方、裁判官は冷静に「このしぐさが記録に残るようにしてください」と書記官に指示する。

── そのほか、あなたは前田検事にどのようなことを言われたのですか

「『石川さんは大久保さんに累が及ばないようにと話しているのに(大久保氏への報告・了承を認めているということ)、あなたもそうしないといけないでしょ』と言われました」

── 石川さんが大久保さんへ報告したことを認めた調書にサインしたのは2月2日です。大久保さんは、1月30日に調書にサインしたときに前田検事からはそう言われたのですか

「はい。間違いありません」

── 1月30日の調書では、平成17〜19年の報告書については、東京に行った折りに、もしくは盛岡にいたときにFAXなどで池田さんから報告を受けたとなっています

「そのような事実はありません」

── そのような事実がないのに、なぜ調書にサインしたのですか

「『池田さんがそう言っているのであれば、そうなんでしょう』と言いました」

捕足。大久保氏が収支報告書について石川氏と池田氏から報告を受けていたとの調書にサインしたのは1月30日。一方、池田氏は1月29日に「大久保氏に報告していた」との旨の調書にサインしているが、このとき、池田氏は「石川も大久保も報告していたことを認めている」と言われ、サインしていた。つまり、池田氏が調書にサインした時点では、実際には誰も共謀について認めておらず、池田氏の担当検事がウソをついていたということになる。

ちなみに、石川氏が調書にサインするのは2月2日で、前田検事が大久保氏に語った「石川も認めている」という言葉もウソだったということだ。これが、冒頭の大久保氏の発言である「前田検事にだまされた」につながる。この後、さらに前田検事の奇行が証言される。

── 前田検事の聴取で、記憶に残っていることはありますか

「いつもは朝から取り調べがあるのですが、刑務官の呼び出しが遅い日がありました。11時すぎに呼ばれた日のことです。その時、前田検事は目が真っ赤で、お酒に酔っているような感じだったので、『検事さん、どうしたんですか』と聞いたら『朝5時までやっちゃった』と。『大阪から一緒に応援に来ている若い検事と虎ノ門の寿司屋で朝5時まで飲んでいた』と言っていました」

── その後輩とは(池田氏の取り調べをしていた)花崎検事のことですか

「後輩とは言っていましたが、花崎検事とは言いませんでした。大阪から一緒に来た検事ということでした」

── その時、何を言われましたか

「『あなたも大変だね。あなたの子どもも犯罪者の子どもということで、結婚もできないかもね』と」

── そのほかの話は?

「身の上話を始めて、『私もやっちゃいけないことをやってしまいました。私はこの事件で検事を辞めようと思っています』と話しました」

捕足。村木事件での前田検事のフロッピーディスク改ざんが大阪地検内で最初に問題になったのは2010年1月のちょうどこの頃。前田検事は陸山会事件の応援で東京にいるとき、上司から改ざんについて問い合わせがあった。この日の深酒の理由がそこにあるかどうかはわからないが、大久保氏の証言は注目に値する。

続いて、2009年3月に大久保氏が逮捕された西松事件に尋問が移る。

── 西松事件で逮捕されたとき、調書にサインしていますね

「平成21年3月3日に逮捕されて、こういうことになった。何とか私だけで終わらせたいということで、調書にサインしました」

── 裁判官調書にはどう答えたのですか?

「西松建設から(違法な)献金を受けたのではなく、西松建設に関連する政治団体に寄付を受けたと話しました」

── それなのに、検察官の調書ではそうなっていません

「私は、他の人に事件が広がることを避けるため、本当のことが言えませんでした」

── 調書には「西松側」から献金を受けたという言葉があります。この「側」とは何ですか

「(西松建設に関連する)政治団体も含まれているので、西松建設ではなく、西松建設側の『側』という字を入れるよう、山本検事に言ったためです」

── 「側」という字にこだわった理由は

「『側』というところを強調して、調書のなかにある『やましいところ』という部分は後でわかってもらえると思いました。西松建設からの献金であれば、企業団体献金を受けることのできる政党支部で受ければいいからです」

大久保氏は、事件が他の事務所関係者や小沢氏に波及することを怖れ、検事が望む調書にもサインしたという。だが、大筋では検事の調書を受け入れながらも、『側』という一字に自らの本心を残し、裁判で証明するつもりだった。

そのほか、西松事件での大久保氏の調書では、収支報告書の署名を自分で行ったと証言するものもあるが、大久保氏は否定したにもかかわらず、最後にはサインしてしまった。こんなものは検事が筆跡鑑定をすれば、大久保氏以外のサインだとすぐにわかりそうなものだが、検事はそういった基本的な捜査もしてなかったようだ。

弁護人の尋問が終わったところで休廷。休憩をはさんで、15時25分再開。続いて、検事が大久保氏に反対尋問を行う。

大久保氏は石川氏や池田氏に比べて声が大きく、饒舌な印象。秘書寮のための土地を購入した理由については「若い秘書が結婚適齢期になり、家族と一緒に住まわせることがないということで、(小沢氏の自宅の近くで)条件に合う土地が見つかった」からだという。また、水谷建設に関する質問には、弁護人からの質問と同じく、「公判前整理手続きで弁護士が話された最低限のレベルで、話をしたいと思います」と回答を拒否。水谷建設関係者の証言の後で、話をするものと思われる。

なかでも大久保氏の声が大きくなったのは、検事に「あなたが罪をかぶることのメリットは?」と聞かれたとき。大久保氏は怒気も交えながら返答する。

「私としては、罪をかぶるという気持ちはありませんでしたが、たとえ無実であっても、次々に関係者が逮捕されれば、小沢先生だけではなく国会議員の先生や支持者の方々に多大な影響を受けますので、私だけで止めたいと思いました。無実なのに、どういうわけなのかこういう事件になった。政権交代のためにがんばってきたのに、なぜこんなことになるのか。これは謀略だと思いました。だから、私だけで止めたいという気持ちでした」

だが、大久保氏の饒舌が続いたのはここまで。検事が東北ゼネコンの小沢事務所担当者を事情聴取した際に集めた調書をもとに、大久保氏による政治資金を依頼したときの様子を聞かれると、一転して声が小さくなる。以下、検事と大久保氏のやりとり。
(── は検事、「」内は大久保氏の発言、※は筆者注)

── 平成16年のパーティー券のことで、前年より購入額を減らしたA建設の担当者に「手のひらを返すのか」と大声で言ったのか

「そういうことを言った覚えはないのですが、「今まで通りお願いします」ということを言ったと思います」

── 『たったの20万円ですか』ということは言いましたか?

「『たった』という言い方をしたかどうかは覚えていません」

 
一問一答では伝わりづらいが、実際の大久保氏の回答は、あっちにきたり、こっちにきたりで内容もあいまい。検事にも「できるだけ《はい》か《いいえ》で答えてください」と促されるも、声は小さくなり、「え〜」や「あの〜」といった言葉が急に多くなる。記憶を探っている部分もあるのだろうが、強い態度で政治献金を要求していたことを聞かれる部分については歯切れが悪い。引き続き、検察から複数の建設会社に献金要求をしていたことを追及され、談合への介入についての尋問に移る。

── B建設の担当者の供述に、談合では小沢事務所の意向に従ったとの供述がありますが

「そういった事実はないと思います」

── 担当者がウソを言っている?

「事実と違うところがあります」

── 西松建設から陳情を受けたことは?

「あります」

── ダムの発注についての力添えについて依頼されましたか?

「そういう主旨のことは話されたと思います」

── 『西松にしてやる』ということは言いましたか?

「そういう虚勢をはって言ったことはあるかもしれません」

── わからないように献金を受けていたのはなぜですか

「そういうことではないと思います」

── ゼネコンの下請け業者から50万円ずつという方法で献金を受けていた理由は

「そういう献金をしてくださる方が、そういう形の献金の形を希望されたのでは・・」

── どうしてそういうことをしていたのですか?

「どういう形でお願いをすれば献金していただけるのではということで、そういうお願いをしていました」

法廷ではじめて証言台に立った大久保氏は、前田検事の取り調べの様子を明らかにすることで、特捜部の捜査手法の問題点を浮き彫りにさせた。もちろん、この証言は弁護側の尋問で明らかになったことであり、検察側はまだ反論を行っていない。第7回公判以降で取り調べ検事が出廷することになっているので、その際にも「切り違え尋問」について弁護側は追及する可能性が高い。

一方、攻守変わって、検察から東北ゼネコンについて聞かれた大久保氏は、守ることで精一杯。これまでの公判で精彩を欠いていた検察側にとってみれば、はじめて攻勢に出ることができたともいえる。

とはいえ、東北ゼネコンに関する事実は本裁判の罪状である政治資金規正法とは直接関係なく、あくまで背景事実にすぎない。それでも検察が繰り返し背景事情に言及するのは、背景事情と小沢事務所の政治資金管理の複雑さを五月雨式に示すことで、裁判官に3人の被告人に対する心証を悪くする狙いがあるようだ。

【追記】
第6回公判は3月2日に行われました。傍聴記は近日中にアップします。

←前回(第4回)を読む

〈構成・文責:《THE JOURNAL》編集部 西岡千史〉
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

2011年3月 2日

《第4回》陸山会事件公判傍聴記 ── なぜ、池田元秘書は調書にサインしてしまったのか。なぜ、心が折れてしまったのか

2月25日晴れ。第4回公判は検察側による石川知裕議員への反対尋問と、池田光智元秘書への弁護側の尋問が行われた。

10時開廷。石川氏に対する検察側の反対尋問からはじまる。昨日の石川氏はかなり緊張した様子で、質問と答えが合っていないこともあったが、今日はしっかりと声が出ている。2日目で法廷の証言に慣れてきたのかもしれない。以下、午前中に行われた石川氏への反対尋問の主なやりとり。
(──は検事、「 」内は石川氏の発言)

※以下の概要は傍聴人のメモから主要部分のみを抜粋して再構成したものです。

■調書の任意性について

昨日から引き続き、争点となっている調書の任意性について検察側が質問を重ねる。まず、石川氏がサインした調書の中で、赤字で石川氏自身が訂正した調書が証拠として提示される。

── 調書について訂正申し立てをしたことがありましたね。(調書を指しながら)この下に手書き部分がありますが、あなたの字ですか?

「私の字です」

── これはあなたが訂正したものですか?

「検事さんは、私の意見が通って調書が訂正されていることを示したいのだと思いますが、これは(取り調べ時に検事が)『さすがにこれは無理か』と言われて訂正したものですので、たしかに私が訂正したものですが、そういう経緯だけはご説明させてください」

と強く語る。石川氏の発言にあるように、検事は「赤字の訂正=石川氏の意向は調書に正しく反映されている」と示したいようだが、検事の攻めはあまりうまくいっていない。

■2004年10月の土地取引に至るまでの経緯

問題となっている2004年10月の土地取引の経緯について、検事から繰り返し質問がくる。石川氏は質問に対して慎重に答える。途中、回答が長くなりがちな石川氏に、検事が具体的な事実についてできるだけ「はい」か「いいえ」で答えるよう求めるが、思わず「そうやって検事に言われて、調書取られましたので」と弁明する石川氏。法廷に少しだけ笑いがおこる。

以下、石川氏の主張。

(4億の資金を複数回に分けて入金したことについて)

「一度に4億円を入金すると、当時問題となっていたマネーロンダリングを疑われて、いろいろ聞かれたらわずらわしいと思った。5000万円程度なら、片手にカバンを持っても1回で運べると思って、分散して(複数回にわけて)入金した」

(本登記を翌年の1月4日にするよう不動産会社に言ったのは誰か)

「不動産会社とのやりとりは大久保さんが行っていたので、私が大久保さんに頼んで、不動産会社に打診してもらった」

(本登記を遅らせた理由である2005年の民主党代表選について)

「2004年10月当時、郵政解散があって自民党が勝てば、当時の岡田代表が辞任して、臨時の代表選が行われる可能性があった。次の定期の代表選は2006年10月だったが、岡田さんの前に代表をしていた鳩山さんも菅さんも途中で辞任していたこともあり、臨時の代表選もありうると思った」

(預金担保融資について大久保氏に相談したか)

「していない」

(収支報告書に本登記の日に支出したことについて)

「本登記が正式な取得日だと司法書士にいわれたから」


以上で午前の部は終了。石川氏は検事の問いに一つ一つ慎重に答えているのが印象的だった。

続いて午後の部。池田光智元秘書が証言台に立ち、弁護側の質問を受ける。池田氏の証言については、報道では「4億円の認識食い違い 陸山会事件公判で元秘書側」(共同)とも書かれていたが、池田氏の主張では、石川氏が小沢事務所を離れた直後に北海道で衆院選に立候補したため、引き継ぎ不十分だったとのこと。

そのほか、石川氏の後に会計担当となった池田氏も、石川氏と同じく大久保氏へ会計報告していたことを否定。検察側が主張する虚偽記載の共謀も否定した。

問題は、なぜ大久保氏への報告の事実がないにもかかわらず、事情聴取ではそのように答えてしまったのかだ。そのやり取りを一問一答形式で紹介する。
(── は弁護人、「 」内は池田氏の発言)

■1月14日の逮捕直後に大久保氏の関与を否定していたのに、調書をサインするにいたるまで

── 12月の任意の事情聴取では大久保氏の関与を認めていたのに、逮捕後に否認に転じた理由はなぜですか

「大久保さんは収支報告書の作成に関係なく、報告もしていないのですが、(池田氏が2010年1月に逮捕される前に12月に任意で行われた)事情聴取の際に『報告した』ということで逮捕されたのであれば、それは真実でないので否認しました」

── その後、検事はどのように言いましたか

「今までの供述を維持しろと言いました」

── 弁護人については何か言われましたか

「弁護人の言うことを聞いているとロクなことにはならないと言われました」

── 蜂須賀検事の取り調べはどのようなものでしたか

「『可能性を否定することは、ウソを言っていることになる』と言われました。私が『100%言い切れない』と言うと、可能性の話が事実として断定された話になっていました」

── あいまいな記憶のとき、どう思いましたか?

「『あなたに記憶がないのに付き合ってられない。あなたの記憶を埋めることが私の仕事だ』と言われました」

── 小沢氏への(不記載についての)報告は

「報告したことはないと思います」

── ではなぜ、小沢氏に報告したような調書になっているのですか

「小沢さんと一緒にいたのに報告しないのは不自然だと言われ、具体的に報告したかのような調書ができました」

── びっくりしませんでしたか?

「びっくりしました」

── 訂正の申し入れはしなかったのですか?

「訂正は何度も言いましたが、可能性の話を蒸し返されて、聞き入れてくれませんでした。後で記憶がはっきりしたら訂正すると言われましたが、訂正されることはありませんでした」

── 検事が交代した後も申し入れましたか?

「花崎検事にも言いました」

── 2011年1月に逮捕されたとき、大久保さんの関与は否定したのですか

「私のミスであれば責任を取りますが、大久保さんは関係なく、自分の供述で逮捕されたのであれば申しわけなく思い、否認しました」

── それで花崎検事にはどういわれましたか

「花崎検事には『蜂須賀が正しい。(逮捕前の2009年12月の)供述を維持しろ』と言われました」

── 大声をあげられたことはありますか?

「『担当官が変わったので供述が変わるのか。俺をナメてるのか』と怒鳴られました」

── 28日には調書のサインを拒否しているが、29日にはサインしているが

「28日は拒否したが、29日には心が折れてしまいました」

── 29日の検事の様子は

「前日までは厳しかったのですが、29日はかまえるような感じで『認めろ』と迫られました」

── 他の人の調書について聞かれたことはありませんでしたか

「『大久保も(池田氏が大久保氏に報告したことを)認めている。石川も小沢に報告したと話している』と言われました」

── それを聞いてどう思いましたか

「他の人と同じように認めろという意味だと思いました。大久保さんは私をかばうためにそういう供述をしているのなら、大久保さんに甘えていいのかなとも思いました。(自分だけが否定することで)他の人に迷惑がかかることを気にしていたので、サインしました」

【追記】
以上が第4回の概要。前回の傍聴記の最後に「前半戦のまとめを書く」と言ってしまいましたが、第5回公判で大久保氏が重要な証言をしたので、今回も概要のみとしました。第5回公判では、大久保氏が前田検事の取り調べの様子を語ります。近日中にアップします。

(構成・文責:《THE JOURNAL》編集部 西岡千史)
────────────────────────

■有料会員制度スタートのお知らせ

《THE JOURNAL》では10月に有料会員制度をスタートしました。本記事も、有料会員の皆様の支援によって制作されたものです。有料会員制度の詳細については下記URLをご参照下さいm(_ _)m
http://www.the-journal.jp/contents/info/2010/10/post_66.html

Profile

日々起こる出来事に専門家や有識者がコメントを発信!新しいWebニュースの提案です。

BookMarks




『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

→ブック・こもんず←




当サイトに掲載されている写真・文章・画像の無断使用及び転載を禁じます。
Copyright (C) 2008 THE JOURNAL All Rights Reserved.