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2011年1月31日

山田正彦(元農水大臣):TPPは農業だけの問題ではない! ── 日本は米国の51番目の州になる

今回のTPPインタビューは前農林水産大臣の山田正彦氏です。山田氏はTPPを農業だけの問題に矮小化されないよう注意を呼びかけます。

国会議員、大臣、牧場経営者、弁護士と多様な視点を持つ山田氏から、TPPが他分野に及ぼす影響を伺うことができました。

*   *   *   *   *

山田正彦氏(元農水相・民主党衆院議員)
「TPPは農業だけの問題ではない!」
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TPPは"国の形が変わる"かどうかの大きな問題です。

TPP交渉では貿易はもちろん金融や知的財産などが協議されており、参加国は共通の制度で揃えるという動きのようです。制度を変えるということは国の形がかわるということです。極端にいえば、日本は米国の51番目の州になりかねない問題で、国民的議論が不可欠です。

しかし国民どころか、菅総理も実情をよくわかっていないように思えます。首相と動いている民主党議員が本当のことを伝えられているのでしょうか。

━国民に情報を出すはずの大手新聞社は「農業vs輸出産業」という対立構造で報じました

大新聞、何を考えてるんだという気分です。TPP交渉は24の作業部会で協議されており、人・モノ・金・サービスを自由にしていくものと考えられます。

例えば24作業部会には「政府調達」が入っています。地方自治体の公共事業は23億円以上の案件のみ外国企業が参入できます。TPPへの参加で公共事業の参入を自由にすれば、地方の土木会社は致命的な打撃を受けます。

「労働」について言えば、平均賃金1万5,000円のベトナム人労働者が自由に来れるようになったら日本の雇用状況はどう変化していきますか。

大手新聞が「農業が足を引っ張っている」と書いたことは大変残念です。インドとの2国間交渉では労働者の問題が最後まで残り、EUとのEPA交渉は自動車の安全基準が問題で進んでいません。ちなみに協定を結んでいるメキシコとの間でも、最後までもめたのは車の問題でした。それでも農業が自由貿易の足を引っ張っていると言えますか。国民は「TPPは農業の問題」と思い込んでしまいました。

─「自由化に反対するのは農業界」という報道の視点は相変わらずです。今回のTPP報道では毎度のことながら高関税率で「鎖国」する農業界というイメージが流されました

日本の農業は開国しています。EUの平均農産物関税率は19.5%ですが、日本は約11%で韓国の62.2%と比較しても相当低い方です。マスメディアがコメの関税だけをとりあげるので、国民は日本の農産物の関税は高いと思い込んでいます。

━農業政策と関税ゼロのTPPを同時に進めるべきだという意見があります

日本の農業は昨年から初めて戸別所得補償に取り組むことになりました。モデル事業を開始し、ようやく今年から本格実施という時に、TPPで関税をゼロするなんて誰が考えてもおかしいでしょう。

戸別所得補償と関税を下げるTPPはセットではありません。

現在世界中で食料危機が起こると言われており、ロシアやウクライナでは小麦など穀物の輸出を制限しています。一部の国では食料をめぐって暴動が起きているという時代です。食料は関税で守る部分は守り、自給率を確保することは当然のことです。

<米国の本当のねらい>

─TPP加盟国+日本のGDPを見てみると約9割が日米で占めます(参考:中野剛志氏インタビュー)。TPPは日米貿易の色が強く、「アジアの成長」との直接関係は薄いことがわかります

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日本はTPP参加表明9国のうち、すでに6カ国と2国間協定を結んでいます。結んでいない国はニュージーランド、豪州、そして米国です。

米国の本当の狙いはどこにあるのでしょうか。日米の2国間で交渉するのであれば、お互いにセンシティブ品目を設けてFTAやEPAで進めた方が両国にとって利益になります。

1,200兆円とも言われる民間預貯金やゆうちょ預貯金が米国の狙いではないでしょうか。米国は民間の医療保険を日本に押しつけようとしているように思えます。このことも24の作業部会で話されているはずです。

─1月13日、14日にワシントンで日米協議がありました

今まで民主党内で16回の議論を経てTPPへの見解をまとめました。TPPの協議は情報収集協議にとどめることとしました。事前交渉でありません。

協議の内容は催促しても出してくれません。われわれにとってみれば今、大事なことは交渉の中身です。政府はどういうことが話されているのか、情報をオープンにして国民的議論にしてもらいたいです。

内閣府が10月に出した試算の根拠についても「出せません」と言ってきました。TPPに参加すればGDPが増えるという試算で、輸入がどれだけ増えるのか、国内の生産構造がどれだけ変わるのかなど、"国家機密"か知りませんが根拠を出せないようです。

━山田議員は9月まで農水省の大臣でした。TPPを初めて聞いたのはいつのことですか

私がTPPの文言を初めて見聞きしたのは2010年の夏頃です。私が農水大臣だった時の閣僚懇で、アメリカや中国などとの間で関税が撤廃されたらどうなるかAPECに向けて議論していました。その時の配布資料で初めて目にしました。

私はTPPについて反対の立場でした。農業にとっては2国間交渉であるFTA・EPAを進めるべきだと思ったからです。2国間であれば除外品目を設けた上での交渉が可能です。当時はインドとのEPA交渉が進んでおり、私自身が大臣として中国・韓国とのEPA交渉に臨んでいました。

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米国のいいなりになるんじゃなくて、中国とのEPA・FTAを進める方が農業、中小企業を含めた産業界にとってメリットが大きいのではないでしょうか。私はある学者を通じて日中と日米でどちらの方がメリットがあるのかGTAP方式で試算してもらっています。日中間で協定を結ぶ方が得ではないかと思います。

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政府が根拠としているTPPのメリットと試算。山田氏はこの試算根拠の公表を求めたが断られた(EPAに関する各種試算(内閣官房)より)

中国には牛肉、コメ、野菜、果物を輸出でき、中国からは安いものが入ってくるので互恵関係がとれます。すべての品目を自由化することは中国が許しませんよ。しかし菅首相は施政方針演説で中国のことに一切触れていません。おかしいと思っています。

─民主党はかねてから東アジア共同体をスローガンに掲げてきました。日米基軸のTPPに参加表明するということは、路線の転換と考えていいのでしょうか

ガラッと新自由主義に舵を切ったかに見えます。私は東アジア共同体の路線に戻り、中国とも仲良くやっていくべきだと思います。我々は小泉時代の新自由主義との戦いから始めてきました。貧富の格差をなくそうと取り組んできました。民主党の立党精神に戻ってもらわないと困ります。

(取材日:2011年1月24日 構成:《THE JOURNAL》編集部・上垣喜寛)

【関連記事】
中野剛志:TPPはトロイの木馬(インタビュー)
TPP「開国」報道に"待った"の動き(NewsSpiral)
続・世論調査の「TPP推進」は本当?地方議会の反対決議(NewsSpiral)

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【プロフィール】山田正彦(やまだ・まさひこ)yamabiko110124_4mono.jpg
1942年、長崎県五島市生まれ。民主党衆議院農林水産委員会委員長・前農林水産大臣。

1966年、早稲田大学第一法学部卒業。牧場経営、弁護士を経て、1993年新進党から衆院選に出馬し当選。著書に「小説 日米食糧戦争-日本が飢える日」「中国に「食」で潰される日本の行く末」「アメリカに潰される!日本の食―自給率を上げるのはたやすい!」など。

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2011年1月30日

村上良太:米失業率9.4%──失業率9%以上が連続20ヶ月超は大恐慌以来

 中間選挙で破れた民主党のオバマ政権が時期大統領選で再選を果たすためには現在9.4%に上っている失業率を下げなくてはならない。1月22日--23日付けのニューヨークタイムズではピーター・ベイカー記者が米国の厳しい経済事情をレポートしている。

 失業率は昨年暮れの時点で9.4%だった。失業率が9%を越えるのは連続20ヶ月、1929年に起きた大恐慌以来だという。さらに正社員を希望しながらも一時的にパートでしのいでいる人や職を諦めた人を加えると、失業率は17%近くに達するというのだ。アメリカ経済は恐るべき状態になっているようである。

 そこで、元になっているアメリカ労働省の統計にあたってみた。昨年12月の段階で、アメリカの失業者は1450万人。失業率は確かに9.4%だ。

http://www.bls.gov/news.release/empsit.nr0.htm

 失業者の内訳を見ると、成人男性では9.4%、成人女性では8.1%。人種別に見ると白人は8.5%、黒人は15.8%、ヒスパニックは13.0%、アジア系は7.2%となる。年齢別では10代が25.4%とかなり高い。

 一方、こちらは米労働省のサイトで発表されたアメリカの消費者物価指数である。アメリカが一番恐れているのがバブル崩壊後の日本が陥ったデフレスパイラルだ。

http://www.bls.gov/news.release/cpi.nr0.htm

 統計では消費者物価指数は12月時点で前月比0.5%増となっており、6ヶ月連続で微細ながら+を連続している。過去に米国ではゆるやかにデフレが進行していると報じられていたが、1年前と比べると1.5%増となっており、この1年の全体の物価指数はプラスを保ったということになる。しかし、高い失業率から見て、デフレの危機はまだ回避できたとは言えないだろう。しかも、新たな雇用の多くは低賃金の職種だと聞く。

 オバマ政権は経済チームを入替え、後半に臨むことになる。大統領経済諮問委員会(Council of Economic Advisers)委員長はクリスチーナ・ロ−マー(Christina Romer)からオースタン・グースビー(Austan Goosbee)に、国家経済会議(National Economic Council)委員長は ローレンス・サマーズ(Lorence Summers )からジーン・スパーリング(Gene Sperling)に替わる。

 もし、このチームが2年の間に成果を達成できなければ、リベラル派が唱えてきた21世紀における国家観にも影が差すことになる、と記者のベイカーは指摘している。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2011年1月29日

山本謙治(やまけん):「日本の農業はもっと強くなれるから、保護は要らない」という欺瞞

TPPや、企業の農業への新規参入の話の中でよく出てくるのが「日本の農業はもっと強くなれる」というものだ。土地をまとめて規模拡大し、効率的な経営をすれば強くなれる、と。日経などの新聞ではこれまで何度もこうしたことを書いてきているのでそれが真実だと思わされている人もこの国では多いだろう。けれども、そんなことを本気で信じている農家はほとんどいない。

もしそれが可能なことだったら、農業がこんなにもゆっくりと着実に凋落していく過程で、誰かがそれを実現しているはずである。

■「大規模効率化」の夢はいい加減に捨てた方がいい

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土地をまとめるということが難しいのは、現状の農業者にとっても非常に難しい問題だ。細かく区切られてしまった日本の農地は、いろんな思惑でバラバラのままだ。純粋に農業を続けたい農家もいれば、よく批判されているように、いずれ道路拡張などで転用・転売できる日のことを夢見てとりあえず所有し続けている農家など、いろんな人によって区切られている。そうした所有の問題があることは事実。

しかし、それが農業の大規模化の阻害要因であるならば、まず既存の農業者に限定して、土地を流動化する施策をすればいい。彼らはこれまでプロフェッショナルの技術を持って営農してきているのだから。どこの馬の骨ともわからない他産業の素人軍団に貴重な農地を与える必要がどこにあるんだろうか?「農地の流動化」と「新規参入の促進」を無条件に結びつける人たちの言葉には、ここにひとつの論理的飛躍がある。

ちなみにいま、すでに一部では農地は大きく流動化している。茨城県稲敷市のとある米どころの集落には米農家が100軒以上あるが、そのうち実際に農機を動かして農業をしているのは何戸だかご存じだろうか?

答えは、たったの2軒の農家、である。じゃあその2軒は若い生産者がいるのかといえば、どちらも50代後半。数千万円の農機を購入して、中国人研修生の力を借りてやっとこさ50ha以上の広大な面積をてがける。とはいっても一枚一枚は小さな田んぼで集約されていないので効率は悪い。日本の国土は起伏に富んだ地形が多いので、平らにならすことなど不可能なのだ。

「大規模集約化すれば強くなれる」と言うのは簡単だが、これはあくまで「すれば」の仮定であって、現状ではほぼ無理。だって隣の田んぼとの高低差を、ブルドーザーやユンボを入れて平らにするだけで数百万。本当に「大規模」といえる規模といえば一枚の圃場が5ha以上となるだろうが、高低差のある圃場をつなげて平らにすれば数千万以上になるかもしれない。すでに採算のとれない米や、10kg箱ひとつ2000円程度の単価にしかならない野菜を何年作り続ければその初期コストをペイできると考えているのだろうか?

そういうことだ。

■所得保障制度はパンドラの箱だ

さて、実は昨年から農家に対する戸別所得保障制度というのが動き始めている。昨年度は「モデル事業」、そして今年度は本格実施の初年度となる。

戸別所得保障というのを簡単に説明すると「農産物の販売価格が標準を下回っている場合に、その差額を補填する制度」である。

これまではいわゆる「減反」のように、たくさん市場に出回ると安くなるから、作るのやめてください。作らなかったら補助金払いますという方式(生産調整という)の補助制度だったのが、その反対の「作って出荷した分の価格を支えます」という方式になったわけだ。前者が市場価格をコントロールするための調整であったのに対して、後者は生産者個々の業績に応じてダイレクトに支払われる補助になるので直接支払いとよばれる。

この補償制度も施行されたので農村はもう大丈夫、という言い方をする人が多いのだが、実はすでに問題が生じ始めている。

まずこの戸別所得補償でもっとも影響が大きいのは米なのだが、米の価格は下がりっぱなしである。この制度のことは買手である米穀卸や量販店などもよーくわかっているので、「米が安くなっても、補償金が入るから大丈夫でしょ?」といってどんどん買い取り価格を下げてくるのだ。直接所得補償制度が施行された品目については、市場価格は下がるのである。

そして一番の問題は、この制度ではしれっと書かれている「標準価格」のことである。何を持って「標準」とするのかは、生産者がどうこうできるものではない場所で決められる。生産費と標準価格の差額が補填されるわけだから、肝心の標準価格と呼ばれるものが下がっていけば、生産者は生活ができなくなる。

「やまけんさん、それはオーバーだよ、いくらなんでもそういうことにはならないでしょ?」

と考える人もいるだろう。でも僕はこの点については悲観している。

昨年度中に邦訳されて出版された農業関連の本でもっとも秀逸だった、「雑食動物のジレンマ」(マイケル・ポーラン著)の上巻を引用したい。

1970 年代に農務省の長官となったバッツが、コーンなどの基本的な穀物に直接支払い制度を導入したのだ。それまではかつての日本と同じく政府が買い上げての「価格を安定させる政策」をとっていたのだが、国の財政負担が大きいこともある、これを一気に直接支払いに変革した。

「農家は、融資から直接支払いへの転換を一大事だとは考えなかった。どちらにしろ、トウモロコシの価格が下がっても、政府が目標価格を保証してくれるのだ。だがその実、これは穀物価格の下限を取り除くという画期的な事件であり、推進者はそのことをわかっていたはずだ。

以前の融資・穀物制度の下では、価格が暴落すればトウモロコシは市場に出されなかった。けれども新制度の下では、トウモロコシがどのような価格でも、農家は売るように奨励され、政府がその差額を支払う。結局、政府が実際に支払うのは差額の内のいくらかだけとなったのだが。

以来、導入された農業法案のほぼすべてにおいて、世界市場でのアメリカ産の穀物の競争力を高めるという名目で、目標価格が引き下げられた。」

おわかりだろうか。補償があると思うから農家はどんどん作物を作る。結果、市場に出回りすぎて価格もどんどん下がる。そして差額補填の基準となる標準価格はどんどん下がっていき、農家は逼迫していくのだ。

この本ではネイラーというコーン農家が登場して、このような低価格スパイラルに陥って脱出できない農家の悲哀を語らせている。

「価格が下がった時に、生活レベルを変えずに月々の光熱費などを払い、借金を返し続けたいなら、一つの選択肢しかない。それは生産量を増やすことなんです」

農家が生計を立てるためには、一定のキャッシュフローが必要になる。トウモロコシ価格が下落した時に収支を合わせる唯一の方法は、さらにトウモロコシを売ることなのだ。

(中略)

これが、生産量を高く、価格を低く保つシステムなのだ。さらにこのシステムは、実は価格を下げ続けるようにつくられている。それは、農家に目標価格の不足分を支払うことは、できるだけ多くのトウモロコシを生産し、どんな価格であれ、市場にすべて出すことを奨励するからだ。当然、価格はさらに下がり、そうなるとネイラーのような農場主が収入を下げないためには、トウモロコシをさらに作るしかない。

こうしてトウモロコシの山は大きく鳴り続け、1970年の1億160万トンから、現在の2億5,400万トンへと増加した。この安価トウモロコシの山を動かすことつまりそれを消費する人間や動物、燃料とする車、吸収する新製品、輸入する国を探すこと が、工業化した食体系の重要な課題となった。トウモロコシの供給量は需要量を圧倒的に上回ってしまったのだ。」

後半部のくだりが、なぜ日本の畜産においてアメリカ産の餌用コーンが餌の50%以上を占めるのかを語っている。

それはともかく、直接支払制度はこうした諸刃の剣なのである。米の価格はこれからどんどんさがっていくだろう。

「でも、足りない分は補助が出るんでしょう?」

そうとは限らないということは、おわかりいただけただろうか。僕は個人的に、この記憶すべき転換を忘れない。

(この記事は1月27日付「やまけんの出張食い倒れ日記」を本人の許可を得て転載しました)

【関連記事】
■山本謙治(やまけん):TPP 「農業」を「たべもの」に置き換えて考えよう
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_7.html

■山下惣一:「自給率」より「地給率」──私がアジアの農村で得た教訓
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/cat627/

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【プロフィール】山本謙治(やまもと・けんじ)
1971年3月4日生まれ。株式会社グッドテーブルズ代表取締役。
慶応義塾大学院政策・メディア研究科修士課程卒業。株式会社野村総合研究所、ワイズシステム株式会社を経て現職。
主な著書に「日本の「食」は安すぎる」「日本の食力―国産農産物がおいしい理由」「日本で一番まっとうな学食」など。

2011年1月28日

小沢一郎緊急記者会見 「会場はこんなとこでした」

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1月27日(木)「フリーランス・雑誌・ネットメディア有志の会」が主催する小沢一郎衆議院議員の記者会見が開かれました。

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今回は原宿にあるニコニコ本社が会見会場でした

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この先には...

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受付で身分証明を見せ事前申込者と照合してもらい、名刺を渡す必要があります

110127_kaijo5.jpgのサムネール画像
《THE JOURNAL》からは2009.9.16の官邸締め出しメンバー西岡、上垣が参加しました。おそらく最年少コンビです

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本日の司会・上杉隆氏(フリージャーナリスト)も受け付けで名刺を渡してました

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会場では様々なメディアの方が参加していました。もちろんネットメディアだけではありません

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会場に余裕がでて、記者クラブ系メディアにも席を開放しようとしましたが手をあげる人はおらず

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しばらくすると個人資格で4名が会場入りしました

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一人がある番号4桁を呼び上げると。30秒後にはそのナンバーの車が到着。もちろん囲う対象は小沢一郎氏

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いよいよ小沢一郎氏の会場入りです

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司会・上杉隆氏で会見開始です

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この日はあくまで記者会見です

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ビデオニュースの神保氏

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弁護士兼ジャーナリストの日隅氏

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いまだに男性中心社会(?)と思える会場の中でしっかりカメラをまわすアワプラの白石氏

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大川興行の大川総裁

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そろそろ記者会見も終わりです

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お忙しいところありがとうございました

一部の報道機関からは「インターネット番組」との誤報があったようですが、この日はあくまで記者会見でした。

記者会見の後、「自由報道協会(仮)」の設立を目指した準備会が開かれました。今後は多くの方が賛同し、広がっていけるような活動をしていきます。

次回は来週2月3日(木)の午後を予定しております。

なお、音声は下記URLで配信中。会見の模様は参加者がそれぞれの手法で配信しています。ぜひ多様な報じ方をお楽しみ下さい。

■音声ダウンロード(mp3)
http://www.the-journal.jp/contents/voice/fpaj110127.mp3

■ニコニコ動画
http://live.nicovideo.jp/watch/lv38581875

■OurPlanet
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/802

■畠山理仁のブログ
http://hatakezo.jugem.jp/?eid=18

■岩上安身オフィシャルサイト
http://iwakamiyasumi.com/archives/6107

■田中龍作ジャーナル
http://tanakaryusaku.seesaa.net/article/182778133.html

■週刊・上杉隆
http://diamond.jp/articles/-/10911

(撮影・キャプション:《THE JOURNAL》編集部・上垣喜寛)

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【関連記事】
小沢氏、ネット番組また出演(日経新聞)
小沢氏「既存メディア」不信? フリー記者らに積極露出(朝日新聞)

フリー主催の小沢氏会見 記者クラブとは「会見する意味ない」(j-cast)

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山本謙治(やまけん):TPP 「農業」を「たべもの」に置き換えて考えよう

マスコミや政府がTPPを農業や貿易だけの問題としてとらえる中、自分達の身の回りにある「たべもの」から考え直すことをすすめるのは「日本の「食」は安すぎる」の著者"やまけん"こと山本謙治氏です。

2010年の口蹄疫騒動では現地レポートをするなど、「食」を軸に全国をまわり続けている山本氏から特別にブログの転載許可を頂き、加筆・修正した記事を掲載させていただきました。

■やまけんの出張食い倒れ日記
http://www.yamaken.org/mt/kuidaore/

*   *   *   *   *

山本謙治氏(農産物流通・ITコンサルタント)
「農業」を「たべもの」に置き換えて考えよう

なんだか、いや~な展開である。朝日新聞社や日本経済新聞社がそうがかりの農業「改革」論やTPP推進の論陣を張っている。どこのメディアもはためには推進・反対の両論を併記することで中立を装っているけれども、最後には「しかし変わっていかねばならない」的な書き方で、さらなる変革を要求することを忘れない。中にいる記者さんが「本当におかしい」と眉をひそめるくらいにね。

改めて強調しておきたいのだけど、TPPの議論をする際に「日本の農業は保護されすぎ」「農産物の開国をしなければ」とさも常識のように言う輩が多いが、大間違いである。一番基本的な部分を誤認している人が多すぎるので改めて書いておく。

日本の食料自給率はカロリーベースでたったの40%、すでに60%も輸入しており、先進国では最下位。ということは、もっとも食料を輸入している国なのだ。

(ちなみに最近、「食料自給率はまやかし」という論調の本が売れに売れているが、あれはとても極端な「農業左派」の論理だと思う。為替レートでくるくる変わるんだから、金額ベースでみるのは危険でしょ。「カロリーベース」「重量ベース」などの単位換算をきちんと明確にした上での自給率議論をするのが妥当と思う)(※1)

安い輸入品が入ってこないようにかけている関税が高いというのがメディアでよく言われる。たとえば米は490%、小麦は210%、バターが330%、牛肉は38.5%(※2)。推進派は「このあまりに高い関税を撤廃すればもっと消費者は安い食品を買うことができるじゃないか。」というわけです。一件もっともに見えますなぁ。

けれどもご存じだろうか、こうした高関税品目は日本ではわずかだ。米、小麦、砂糖原料、でん粉原料など、全農産物のたった1割だけが高い関税をかけているのだし、実はその関税率の平均をとれば11.7%(東大の鈴木宣広教授による)である。

そして他の9割の農産物は関税はないに等しい。つまりすでに開国しまくってる。だから中国から野菜があんなに輸入されていたし、今もされている。みなスーパー店頭では国産野菜ばかりならんでいるから気づかないだけで、飲食店や中食の業務用食材は半分以上が輸入品だ。それわかってないでしょ?

「農業」といってしまうとみな冷淡になるけど、これを「たべもの」に置き換えて考えようよ、というのが僕の言いたいことだ。日本人は、自分達の主要なたべものが他国産になることに非常にデリケートな民族だと僕は思っている。平成の米不足の年のこと、思い出してみて欲しい。中国餃子事件のことや、狂牛病問題の時のパニックも。みんなのど元過ぎれば忘れるけど、日本人ほど自国の食べ物にうるさい民族もいないはずだ。それを突くと国民感情が振れることをわかっているから、推進派はみな「保護されている農業VS他産業」という図式で話そうとする。これは策略である。

「農業が潰れる」ということと、「たべものがほとんど外国産になってしまう」というのでは国民の受け取り方が違うと思う。 「たべもの」を考えると、みんな危険性を感じませんか?

先の関税の話だが、日本では関税によって保護され生産が続けられている食品が非常に多い。例えば北海道で栽培される甜菜(てんさい)や沖縄・九州で栽培されるサトウキビから作られる砂糖。これも約200%程度の関税がかかっている。小麦も210%。これを、少し安くなるからといって関税撤廃したらどうなるか。農家が職を失うだけだと思っている人が多いけど違う。その流通をする業者さんなども含め、とんでもない人口が失業する可能性がある。その人達は、ただでさえ失業率の高い日本の市場にどっと出てくるのだ。日本の景気はさらに悪化する。それを支えるほどのメリットを本当にTPPで享受できるのかい?

関税は悪いもの、撤廃しなければいけないものというのはいったい誰が言っているのか。日本にモノを売ろうとしている国がそう言っているだけである。その言葉を「うん、たしかにフェアじゃないね」とすんなり受け入れようとしている日本という国は、本当に脳天気で人のよい国である。どこにそんな「他国に優しく自国に厳しい国」があるんだろう。

「世界の孤児になる」という言葉に躍らされるのは早計だ。どこの国も、自国を最優先に考えて、国際的にみれば反則気味の手を使って産業を守るのが普通なのだから。フランスやアメリカなどの農業国ではものすごい金額の直接所得補償で農家を守っていることはこれまでも書いてきたとおりだ。関税という収入源をもらえるのであれば、それは大切にしていった方がいい。それは日本の収入源なんだから。それを手放すなら、その関税分の収入を補完できる他の財源を明確に示して欲しい。

で本題だけど、アメリカの農業政策で、いまの日本の状況と似た状況にあった瞬間がある。それについて書こうと思ったんだけど、そろそろ飛行機に乗る時間なので後ほど。今日も宮崎です。口蹄疫の次は鳥インフルエンザ。鹿児島でも発生が確認されたが、この国の食のリスクが非常に高まってきている。

実は、一般の人がこういうことを「識る」ことと「あの報道おかしいんじゃない?」と疑問を持つことはとても強力なパワーになるので、ぜひ理解をいただきたいと思う。

(この記事は1月25日付「やまけんの出張食い倒れ日記」を一部修正、加筆しました。)

【編集部注】
※1 参考:食料自給率とは(農水省HP)
※2 関税率は算出する時期や方法などで変化があります

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【プロフィール】山本謙治(やまもと・けんじ)
1971年3月4日生まれ。株式会社グッドテーブルズ代表取締役。
慶応義塾大学院政策・メディア研究科修士課程卒業。株式会社野村総合研究所、ワイズシステム株式会社を経て現職。
主な著書に「日本の「食」は安すぎる」「日本の食力―国産農産物がおいしい理由」「日本で一番まっとうな学食」など。

2011年1月27日

小沢一郎緊急会見 主催は「フリーランス・雑誌・ネットメディア有志の会」

 民主党の小沢一郎氏は27日、東京・原宿のニコニコ動画スタジオで「フリーランス・雑誌・ネットメディア有志の会」主催による記者会見を行った。会見の模様はニコニコ動画やUstreamで生中継され、視聴者からの質問も行われた。

(当日の模様は「小沢一郎記者会見 会場はこんなとこでした」にて)

 音声は下記URLで配信中。録画放送もニコニコ動画が配信している。

■音声ダウンロード(mp3)
http://www.the-journal.jp/contents/voice/fpaj110127.mp3

【動画】
■ニコニコ動画
http://live.nicovideo.jp/watch/lv38581875

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2011年1月26日

冤罪であることが明白でも指定弁護士は小沢一郎を強制起訴できるのか

21日におこなわれた郷原信郎(名城大学教授・弁護士)氏による定例記者レクでは、石川知裕議員が取り調べの模様を録音していたことから、検事による威圧的な取り調べが発覚したことについて言及がありました。そもそも起訴後の取り調べの問題点とはなにか。また小沢裁判に与える影響はどのようなものか。郷原氏のコメントをテキスト化しました。

【構成・文責】《THE JOURNAL》編集部

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郷原信郎
(名城大学コンプライアンス研究センター長)

東京地検が検察審査会の1回目の議決に基づいて石川議員への再聴取を行った際、石川議員がICレコーダーを持ち込んで録音していたことがわかりました。その5時間に渡るボイスレコーダーが、石川氏の公判で証拠として提出されると報じられています。

この問題をどう考えるかということですが、この問題は今後、様々な影響を与えるだろうと思います。

まず根本的に考えれば、取り調べといっても、すでに起訴した後の取り調べだったということです。

通常取り調べというのは捜査段階で行うもので、起訴した被告人はもはや反対側の当事者ですから、原則として起訴した事件についての取り調べは許されません。起訴した事件について被告人を呼び出して調べをするのであれば、何か特別な事情がなければなりません。今回のケースでは、検察審査会で「起訴相当」という議決が出たため、小沢氏の事件の共犯者として、被告人ではない形で調べをしたということなのでしょうが、それでも、被告人の立場にある人間を検察官が調べるということに関しては慎重な配慮が必要です。間違っても、自分自身の犯罪行為についてそれを「認める」「認めない」といったところに介入するのは当事者の権利を害することで許されません。あくまで刑事事件の参考人的な立場で、今まで聞いてなかったことをちょっと追加的に事情を聞くことが、起訴後の取り調べとしてせいぜい許される範囲です。

■石川議員への取り調べは限度を超えたものだった

ところが新聞報道によると、詳細な中身はまだ明らかになっていませんが、これまで石川氏が小沢氏の関与を認めるような供述をしていたことについて、検察官が「これを維持しろ」「これをひっくり返したら検察審査会に対して影響がある」というようなことを言って、捜査段階の供述を維持するよう迫ったと報じられています。起訴後の取り調べからして問題ですが、これが事実だとすると大変な問題です。

まず、元々の供述に問題がないのであれば、なぜ、起訴後にもう一度呼び出して供述をひっくり返さないように言わなければならないのか。これを常識で考えれば、最初の供述は捜査段階の供述に問題があって、(裁判で)ひっくり返されるかもしれないから供述を維持するよう言ったのではないかと疑われます。ということは、石川氏の公判では捜査段階での供述調書の信用性にも大きな影響を与えます。それはひいては、小沢氏への公判にも影響を与えることになります。

■追い詰められた指定弁護士

そう考えると、なぜ(小沢氏の事件で検事の役割をする)指定弁護士がいつまでたっても小沢氏を起訴しないのかにも関わってきます。

検察審査会の起訴議決のデタラメについては前から言っている通りです。こんなものは起訴しても有罪にはなりません。それでも検察審査会の議決に基づいて裁判所が指定弁護士を選んだ以上は、指定弁護士はすみやかに起訴すればいいわけです。それがなぜ、いつまでたっても起訴しないのか。一部には政治的な意図があり、起訴のタイミングを政治的に一番影響の大きい時にぶつけようとしているという観測もありましたが、いまだに起訴されていない。その効果を狙うのであればもっと前に起訴されてるはずです。

だとすると、問題はそういうことではなく、どうも「起訴しようにも起訴できない」という状況にあるのではとも思えなくもありません。それはなぜか。そもそも証拠は石川氏の供述くらいしかありません。それが検審議決後の石川氏への調べでこういう不当なことが行われたことがわかった。これで証拠が何もなくなってしまった。「証拠もないのに起訴できるのか」と考え、悩みに悩んでいるのかもしれません。かわいそうな話ですね。「指定弁護士なんてやめときゃよかった」と思ってるんじゃないでしょうか(会場笑)

■冤罪事件でも検審の議決で起訴できるのか?

そもそも、議決が出ているのだから、捜査などしないでそのまま起訴すればいい。もし補充捜査をしているのなら、捜査というのは証拠を集めることです。証拠には積極証拠と消極証拠があります。時間をかけて捜査をすればするほど、積極的な証拠が出てくる場合もあれば、消極的な証拠も出てきます。今回の石川氏のICレコーダーは、小沢氏の裁判にさらに消極方向に働く証拠です。

これは重要なことですが、検審の議決後に、たとえば真犯人が現れて全く冤罪とわかった場合のように、無罪と判断せざるをえないような状況になったときに「指定弁護士はどうすればいいのか」という問題が生じるかもしれません。

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丸太関税ゼロで疲弊した中山間地域

篠原孝氏(農水副大臣、民主党衆院議員)

<小さすぎる林業の生産減少>

 2010年10月1日、菅直人総理は所信表明演説で、唐突に「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉への参加を検討」と表明した。
 TPPとは、人口に膾炙しているFTA/EPAとは異なり、10年後には例外なくすべての物品の関税をゼロにするというものである。日本も2国間のFTA/EPAは既に13か国と結んでいるが、いずれも米等の例外が設けられている。
 その折、農業への影響試算として農林水産省の出した、農業生産額4.1兆円減少が過大だと批判を受けた。1週間後、漁業4200億円、林業500億円と公表され、数字に強い人は、林業がなぜそんなに大きな影響を受けないのか疑問に思われたに違いない。答えは簡単。林業は既にとっくの昔から関税ゼロの影響を受けており、それ以上打撃を受けないところまでズタズタにされているだけのことなのだ。

<関税自主権を放棄する愚行>

 1951年、占領下で日本が関税自主権も失っている中で、丸太の関税がゼロにされた。サンフランシスコ講和条約が成立する直前の関税撤廃であり、北西部(ノースウエスト)から日本に木材を輸出せんとするアメリカの企てを感じざるを得ない。
 今は関税ゼロにするのが善で高い関税が悪のように言われているが、関税自主権こそ独立国家の証しである。明治政府が、江戸末期に押しつけられた関税自主権もない不平等条約を、必死で是正せんと外交を繰り広げたことを忘れているのである。更に、1964年、外貨割当制度がなくなり、製材の関税もゼロとなり、木材の完全自由化が完成し、今や合板の関税が5%残るだけとなっている。

<国の形を歪め、森を壊した丸太・製材関税ゼロ>

 この間の林業の疲弊、中山間地の崩壊にはすさまじいものがある。1970年から2000年までの30年の間に14万集落のうち5%の7,543集落が消え、限界集落が急増した。2010年の国政調査では、更に、3000集落が消えている。同じ間に、木材の自給率は95%から18%に下落した。
 木材の価格は最盛期の4分の1に下がっている。米価も最高値の2万4000円(60kg)から半分の1万円そこそこに下落したと問題にされるが、その倍の下落なのだ。同じ期期に高校や大学の新卒者の初任給が18~24倍になっているのと比べると、いかに採算が合わなくなっているか一目瞭然であろう。その結果、伐採しても赤字になるだけとなり、間伐等の手入れをしても採算が合わなくなってしまった。これでは山が荒れ、中山間地域に人が住めなくなるのは必定である。

<木材を必要としない国内事情>

 それではなぜ、林業では50年も60年も前に関税ゼロの自由化がなされたのか疑問に思われるはずである。前述の占領軍(アメリカ)の悪い意向という外からの圧力はあったものの、そうせざるをえない国内の事情もあった。
 戦後の復興で木材需要が急増し、あちこちの山の木が伐り出された。戦争中の無謀な伐採に拍車をかけたことから、日本の山村は禿山にならんとしていたのである。慌てた政府は、伐採した後の植林を奨励した。私の祖父母の世代が、急峻な傾斜地にもそれこそ必死で木を植えたのだ。しかし、木は伐採まで数十年かかる。今の今の需要には追いつかず、木材を自由化し、旺盛な建築需要に応えざるを得なかったのだ。ここまではやむをえないとして、ある程度許されることではある。

<木造建築を抑えた愚かな政策>

 そこに更に追い討ちをかけたのが、政府の間違った判断であり、誘導だった。1950年、火災を恐れて木材で公共建築物を建てるべきでないと言い出し、「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」(衆議院)をしている。1955年には森林過伐を抑えるため、「建築物の木造禁止の範囲を拡大する閣議決定(木材資源利用合理化方策)」までしている。森林退化を問題にしたのは、今の環境問題を考えると先見の明のある政策決定であるが、需要を押えるために木造建築を押えるというお達しは、明らかに行き過ぎである。
 同じ頃、米も自給できず、アメリカからMSA小麦という安い余剰小麦の輸入を迫られていたことから、池田勇人大蔵大臣は「貧乏人は麦を喰え」とのたまわった。米は生産者米価を高くし消費者米価を低く抑え、政府は逆ざやが発生していたのに対し、小麦は安い小麦を輸入し高く売って順ざやが発生したのである。今と同じく財政規律を重視した大蔵大臣は、学校給食にも輸入小麦を使ったパン食を導入するという世界でも稀に見る愚策に走り、日本の農業や日本人の食生活を歪める元凶となった。

<パン食とコンクリート校舎>

 今考えると、外国産木材、外国産小麦に頼り、国産材や国内農産物をないがしろにする区分けは、それこそ愚かな政策決定であった。しかし、素直な国民は、政府のお達しに従い、パンなどほとんど食べたことのない地域でもパン給食が始まり、田舎の校舎までコンクリートで造ることになった。
 一方で高度経済成長期を過ぎると、安い輸入木材に押されて国産材はさっぱり売れなくなった。こうして、多くの山林は、手入れの値打ちもなくなり、放置されることになった。その結果が、前述の限界集落化、山村の消失である。そうした中、小麦も大豆も輸入に任されてしまったが、一方、米だけは別格で生産奨励され優遇された。そして、皮肉なことに1970年代後半からは米余りとなり減反、転作を強いることになった。そして遅ればせながら、1990年代になってやっと米飯給食の声が上がり始めた。
 米は778%の高関税で守られ、いつも批判の対象となるが、この高関税故に農村が山村と同じにならなかったのである。

<当然の国産材利用、公共建築物の木造化>

 時は流れ、2010年、米飯給食に遅れること20年余、やっと公共建設物木材利用促進法により、低層の公共建築物はなるべく国産材を使うべし、と180 度方針が逆になった。日本の山には祖先の植えてくれた木が大きく育っている。合板技術も進歩し、間伐材も有効活用出来る形になりつつある。路網を整備し、製材工場を維持出来れば日本の木材はいくらでも使えるのだ。森林・林業再生プランで、民主党政権は林業活性化を成長戦略の一つと位置づけている。
 米の関税をゼロにして、農村までもズタズタにせんとする愚かな政策が急に走り出した。例のTPPである。これがいかに愚かな政策かは、林業の衰退、山村の荒廃をみれば明らかである。私は二度とこんな政策ミスは犯してはならないと肝に銘じている。

(「木造建築を禁止した政策ミスが災いした中山間地域の疲弊 - 長野建設新聞2011年1月1日寄稿」に加筆)

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※この記事は1月25日付「しのはら孝blog」より転載しました。

【関連記事】
■山下惣一:アメリカの食糧戦略(NewsSpiral)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/03/post_522.html
■中野剛志:TPPはトロイの木馬─関税自主権を失った日本は内側から滅びる(NewsSpiral)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_5.html

2011年1月25日

和田秀子:手放しで喜べないインドネシア人看護師候補生の「在留延長」 その裏側に何が?

 政府は18日、EPA(経済連携協定)により2008年に来日した第一陣のインドネシア人看護師候補生91人の在留許可を、一年間延長する方針を固めた。当初の予定では、看護師候補生は3年以内に国家試験に合格できなければ「帰国」と定められていた。しかし、この2年間で合格できたのは、インドネシア人2名を含むたった3名という低調ぶり。今回在留延長が認められそうな2008年来日組に関しては、今年2月の国家試験がラストチャンスとなるため、インドネシア政府からも在留延長の強い要望があったと見られている。

■残るのは半数か?

 しかし、候補生たち本人も受け入れ側の病院も、在留延長を手放しで喜んでいるわけではないようだ。
 「1年延長したって合格の見込みはないのだから、これ以上残ってもらっても...」と思っている病院関係者も少なくないという。

また、候補生たちの間でも、「病院との折り合いが悪いので、もう帰国したい」という者も一定数いるようだ。そのため、政府が在留延長を認めても全員が残るわけではなく、病院側と候補生との話し合いによって決定されることになるとの見方が強い。最終的に在留するのは、不合格者の半数ほどではないかということだ。

在留延長の報道を受け、ひとりの看護師候補生に感想を尋ねてみたところ、こんな答えが返ってきた。「政府が在留延長を認めても、病院側が延長を認めてくれるかどうか......。それが不安です」

■ムチャクチャだった教育体制

 そもそも、初めからきちんとした受け入れ体制を整えていれば、今回のように土壇場になって当事者がふりまわされることはなかったはずだ。
 EPAによる受け入れは今年で丸3年を迎えるが、少なくとも最初の2年間の受け入れ体制はムチャクチャだった。怖ろしいことに、その教育方法も費用も、すべて受け入れる病院に委ねられており、病院は自腹を切って、試行錯誤で教育を行ってきたのだ。当然病院側からは、「費用ばかりかさんで合格の見込みがない」という不満が高まっており、候補生たちの受け入れを希望する病院も激減していた。

 さすがに政府も「これではマズイ」と思ったのだろう。2011年度からは、インドネシアおよびフィリピン本国に日本語教師を派遣し、候補生たちが来日するまでの3ヶ月間を、日本語教育に充てるとの方針を定めた。

■早急に教育体制を整えるべき

 しかし、一部の日本語教育関係者からは、「現地で日本語研修を請け負う業者と、来日後に請け負う業者間で連携がとれていないため、成果は期待できない」と、懸念の声も上がっている。
 というのも、候補生たちに日本語を教える研修機関は、その都度入札で決められているため、いわばライバル同士。そのため、業者間での意見交換もなければカイゼンもない。これでは何年たっても、外国人看護師に対する適切な教育体制は固まらないのではないか。

 政府はすでに、平成23年度の外国人看護師・介護福祉士候補生受け入れ支援事業の概算要求として845,051千円の予算を計上しているが、果たして有効に活かされるのか疑問が残る。

 今回、在留延長が認められることに対しては、個人的にとても歓迎している。しかし、今後はベトナムやインドからも人材を受け入れる可能性があるだけに、一貫した教育体制を早急に整えなければ、同じ過ちを繰り返すだけではないだろうか。付け焼き刃の在留延長だけでは、焼け石に水だろう。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2011年1月24日

シリーズ小沢一郎論(12)── 民主党よ、統一地方選にもっと真剣に!

日本一新の会 達増拓也
(岩手県知事)

 春の統一地方選、知事選はあと9週間、県議選はあと10週間でスタートだ。民主党はもっと地方の問題に目を向け、地方に関する政策をアピールすべきではないのか。豪雪被害にも、もっと目を向けて欲しい。

 地方分権、地域主権のためにも、地方選挙が決定的に重要だ。伝統的に、日本の地方議員は、オール与党的に、国政に従属していた。無所属を名乗っていても、政権与党の選挙マシーンとなり、その代わり、農業施設や商店街の整備など、地方のあらゆる分野に国会議員を巻き込み、国の予算をつけてもらうことを求めた。政治が高度に中央集権的なので、行政の地方分権が進むはずがなかった。

 日本以外の国で、国と地方の権限争いの話を、あまり聞かない。それは、ほとんどの国では、地方自治にも政党政治が浸透しており、国と地方の役割分担が与党の中で決められているからではないか。

 日本では、分権問題は、中央と地方の役人同士の権限争いの構図となる。不毛なイメージが漂う。それを政治家は横目で見つつ、地方の細かいことも国の予算や法律で対応する、高度中央集権に精を出していたのだった。私がつらつら思うのは、与党の国会議員団と地方議員団(首長団も)で話し合い、ここまでは地方支部の政策範囲、ここからは党本部の政策範囲、と決めてしまえば、地方分権問題は一夜にして解決するのではないか、ということだ。

 そういう、まさに政治主導の分権化を成し遂げるためにも、民主党は地方議員団(首長団も)を強化しなければならない。というか、多くの(できればほとんどの)自治体において、議会の過半数を得て、首長も民主党系、というふうにならないと、国政との仕切りを確定させた上で地方自治を地方の自由に進めることは、まず、できない。国政と地方政治の両方で民主党が与党でないと、国と地方の役割分担を双方納得づくの政治主導で決めることは、そう簡単にできない。

 だから、民主党が日本を本質的に改革しようとするなら、地方選挙にもっと真剣にならなければダメなのだ。私は衆議院議員時代、自分が選対本部長になっていた地方選挙で、決起大会の会場の席が半分も埋まらなかった時、ステージ上で土下座したことがある。改革を志す国会議員ならば、そのくらいの覚悟を持って地方選挙に臨むべきだ、と思う。

 地方こそ、暮らしの現場、仕事の現場である。草の根の政治は、地方でしかできない。政治は本質的にローカル。世界は地方でできている。それぞれの地域の共同体の価値が互いに共存でき、その集合体がグローバルスタンダードとなる、というような世界秩序の再構築が必要なのではないか。それが民主党の生きる道ではないか。

 民主党よ、地方に目を向け、地方から再生せよ!地方から、真の改革を実現せよ!と、言いたい。

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「TPP反対!」地方紙からの声

14日の内閣改造はTPP慎重論の大畠前経産相が外れ、新たに海江田万里氏が就任した。改造後の記者会見で「広義の意味で国を開くことは歴史の必然」「アジアの成長を日本の成長に取り込んでいく」とTPPの必要性を説いた。

内閣改造翌日の主要新聞社説は年明けの紙面と同様に、
懸案に党派を超えて取り組め」(読売新聞)
TPP参加に踏み切れ」(産経新聞)
政権賭する覚悟を示せ」(毎日新聞)
「結果出していくしかない」(朝日新聞)
など、菅首相が掲げるTPP参加の実行を後押しする論を横並びに展開した。

そんな中で黙っていられないと言わんばかりの社説がいくつか上がってきた。前回の「続・世論調査の「TPP推進」は本当?」の議会に引き続き、地方からの声が強まっている。

「食糧安保の観点からも、"見切り発車"は、絶対に許されない」

18日の沖縄県・琉球新報は15年前のウルグアイ・ラウンド以降の農村の疲弊状況を取り上げた上で、「県の基幹作物のサトウキビや肉用牛、養豚、パイナップルなどが壊滅的な打撃を受けるのは確実」と政権交代以降も続く"農政無策"を批判しTPPへの不参加を訴えた。琉球新報は11月にも「行き当たりばったりで、先行き不透明、結論は先送り、決めた政策も朝令暮改の「決断なき内閣」では、国際交渉などおぼつかない」と菅首相のTPPに臨む曖昧な姿勢を厳しく批判してきた。

TPP"見切り発車"は許されない(2011.1.18 琉球新報)
TPP政府方針 玉虫色では論議もできない(2010.11.8 琉球新報)

「唐突に提示され「バスに乗り遅れるな」と猛スピードで突っ走る。これで国民合意は得られるか」青森県・東奥日報は20日の菅首相外交方針演説の翌日にTPPに慎重な対応を求める社説を掲載した。

あまりに議論が足りない/TPP参加問題(2011.1.21東奥日報)

「民主主義の観点からも異常」(中野剛志「TPPはトロイの木馬」)なTPP賛成一色の中で、市民との距離が近い地方紙は中央に向けたメッセージを投げかけている。

<大マスコミの反自由貿易論>

地方の動きに影響を受けたのか、取り上げざるを得なくなったのか、NHKや新聞社にもわずかな動きが出ている。

NHKは1月22日の「ニュース深読み」でTPPの議論を企画し、ゲストで登場した金子勝氏(慶応義塾大学教授)は「何が問題になるかをあらかじめわかった上でTPP交渉に入るならいいけど、わからないで入っちゃえというのは危ない」などTPP反対論を展開した。金子氏は番組終了後のTwitterで「物足りないと感じた方には力不足をお詫びいたします。これまでメディアで報道されていない本当の論点を幾つか提示できたのが最初なのでお許し下さい」とつぶやいていた。

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その「本当の論点」とはTPPの交渉は農業だけでなく24項目が交渉対象であること、TPPとアジアの輸出が直接関係ないことなど、今までの「開国」報道の影に隠されていたことだった。

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TPP交渉では24の作業部会が開かれる。そのうち関税に関わる部会は赤く塗りつぶした3作業部会のみで他の21部会は知財や投資など多分野にわたる。

また、船橋洋一元主筆(2010年12月退任)を筆頭に推進論を展開してきた朝日新聞の夕刊に「窓」(1月19日)には論説委員室から自由貿易に対する発言が掲載された。"食の工業化"をテーマにしたドキュメンタリー映画を取り上げ、「人間はほかの生物の生命を奪って生きている。映画に描かれる「食」には、そういうことへの畏れや感謝は見えない。日本の現状はまだましなのだろう。だが自由貿易が進めばそんな食品が入ってくるはず」と論説副主幹・真田正明氏はTPP議論が盛り上がる世相を意識したのか、自由貿易が関わる輸入食品の問題点を投げかけた。

「TPPを結べば関税が撤廃されて世界に開かれ、アジアの成長を取り込める。反対派の農業を説得し、ライバル国の韓国や中国に負けない通商大国を目指せ」という"イメージ"に対する意見や払拭する丁寧な議論が少しずつ出始めている。

【関連記事】
菅・再改造内閣 原点に立ち返り見直しを(1.15 北海道新聞社説)
中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる
海江田経産相、TPP「安定成長の原動力に」 (1.18 日経新聞)
施政方針原案:日米EPA推進 TPP批判回避(毎日新聞)

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2011年1月21日

石川知裕:私が事情聴取を録音した理由

 東京地裁は20日、小沢一郎元民主党代表の政治資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、石川知裕衆院議員が再聴取の様子を録音した記録や勾留中に弁護人に宛てた手紙について証拠採用することを決定した。

 同日、《THE JOURNAL》のインタビューに応じた石川氏は、昨年5月17日の事情聴取の録音を行った理由に作家の佐藤優氏の助言があったとし、その際の聴取で、調書の内容を変更しないよう圧力を受けたことを明らかにした。また、2月7日から始まる公判では、水谷建設から5000万円を受けとったとする検察側の主張も全面否認し、虚偽記載に問われている部分についても「違法性の認識がなかったことを主張したい」と語った。

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石川知裕氏(衆議院議員)

── 2月7日に初公判が開かれますが、現在の心境を

無罪を主張して頑張ります。ただ、年末から風邪をひいたりして体調を崩してますので、きちんと気力を保ちながら、公判に向けて頑張りたいと思います。

私自身は小沢一郎元民主党代表の秘書時代に処理した経理について罪を問われています。国民のみなさんに誤解されてるのは、私が秘書として行なった業務が小沢さんとの共謀とされ、検察審査会で2度の起訴相当の議決がされました。

一方、小沢さんについては世論調査で議員辞職すべしという割合が高まっているにもかかわらず、「次の総理は誰か」の質問では1位になっている調査もあります。これは、小沢一郎の政治手腕に期待するけれども(まずは裁判を)クリアしてくれという意味だと思うので、それがなければ菅さんに変わって小沢さんが首相になるべきだということだと思います。

その意味で、私の供述によって検察審査会で共謀があったとされ、「裁判で黒白をはっきりさせるためにお白州に引き出せ」ということになったわけで、誠に申し訳ないと思っています。

── 裁判で訴えたいことは

保釈後に水谷建設関係者の調書を読みました。そこで語られているのは、大久保(小沢氏元秘書)さんが水谷建設から現金5000万円を渡される直前になって「今日は忙しいから石川という者に行かせます」ということです。また、その供述をした川村という人は、調書の中で「石川さんはあまり顔に特徴がないから、会ったときにわかるかわからないか自信がありませんでした」と語っています。

しかし、小沢事務所では私の方が大久保さんより先輩で、大久保さんが私に金を受け取りにいかせるなどという人間関係はありえません。そういう事務所内の基本的な人間関係を無視し、川村氏が「大久保さんが石川に取りに行かせた」と供述していることがおかしい。ただ、私自身にその日に明確なアリバイがないというだけで検察側がタクシーチケットや新幹線のチケットで立証しようとしてますけれども、私もきちんと裁判長に訴えるだけの資料を提示し、そういう事実がなかったことを弁護団と一緒に証明したい。

── 弁護団の証拠資料として、小沢元代表の一度目の起訴相当議決の後に行われた再聴取(2010年5月17日)について、その様子を録音したICレコーダーの存在が明らかになりました。なぜ、録音を考えたのですか?

佐藤優さんから強い勧めを受け、レコーダーを持って行きました。佐藤さんに言われたのは、「検察も調書や証拠のリークを平気で行ってるわけだから、自分の身を守るという意味も考えて」と強く示唆され、持っていくことにしました。

最初に検事から「録音してないよね」と言われ、「していません」と回答しましたが、ものすごいプレッシャーでした。聴取の間も2〜3回はトイレに行ってますので、その間に検察官にカバンの中を確認されたら「なんだこれは」ということになります。その間も緊張しました。

── 勾留中に送った手紙の証拠申請を出されています

自分としては不本意な調書にサインしてしまったことが何回もありました。そうしたことを当時弁護団に加わっていた安田好弘先生からアドバイスを受け、手紙に書きました。回数と枚数は忘れましたが、勾留中に何度か手紙を書いて、安田先生に送っています。

──手紙を書いていたときは精神的にもつらかったのでしょうか

そうですね。これは経験した人でしかわからないと思いますが、毎日水谷建設の事について聞かれ、特捜部の副部長(編集部注:吉田正喜氏)から「石川さんは金を預かったけれども、忘れただけなんだ」ということを言われるわけです。そうすると私も感覚が麻痺してきて、「大久保さんに言われて預りに行ったけど、忘れたんじゃないか」と思えてくるんです。

また、これは不思議なことなんですが、日々接している検事と人間関係もできてくるんです。これは佐藤優さんとも意見が一致しました。最初の3〜4日間は調書をとられてないのですが、「そろそろ調書を取らしてくれ」と言われると、だんだん検事に対して「上の人に言われて大変なんだろうな」と思えてくるのです。こちら側も弁護士にいろいろと言われて大変に感じてくるので、共通の人間関係ができてくるんです。

そうした中、検事に調書の内容について「こんな強く書かれたら困ります」と言っても、「石川さん、ここまで強く表現しないと上が納得しないから」と言われ「大丈夫、小沢さんは起訴にならないから」ということを示唆されるわけです。

──5月17日の再聴取でもそういうやり取りはありましたか?

ある程度あったとは思いますが、実のところ、自分の事情聴取を自分で聴くのはいやなので、内容は聞いてないんです。記憶にあるものはお答えしていますが、あとは弁護団にお任せしています。

── 聴取の中で圧力を感じましたか?

検察としても、強制起訴になると検察官が不起訴としたものを審査会が強制起訴にするわけです。そうすれば検察批判もおきます。私としても小沢さんが強制起訴されない方がいいと考えている。そこで検察側と小沢さん側で利害が一致しているということです。だから「(調書の内容を)変えるのはよくない」ということは言われました。

── 公判では検事は収支報告書の記載の悪質性について主張してくると思いますが、石川さんは違法性の認識はなかったのでしょうか?

違法性の認識があれば立候補していません。検察側としては汚い金があったから隠したかったとしたいのでしょう。私は、不動産の登記をずらすことは司法書士に確認して「仮登記してから本登記したのならいい」ということを聞いた上で手続きを行っています。公判でも違法性の認識がなかったことを主張したいと思っています。

(構成・文責:《THE JOURNAL》編集部)
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2011年1月19日

中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる

TPP反対論を展開する中野剛志氏にインタビューを行いました。10月以降政府・大マスコミが「開国」論を展開する中、中野氏は「日本はすでに開国している」「TPPで輸出は増えない」「TPPは日米貿易だ」と持論を展開してきました。

TPPの問題点はもちろん、今までのメディアの動き、そしてインタビューの後半には、TPP議論の中で発見した新たな人々の動きについても触れていただきました。

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中野剛志氏(京都大学大学院助教)
「TPPはトロイの木馬」
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TPP問題はひとつのテストだと思います。冷戦崩壊から20年が経ち、世界情勢が変わりました。中国・ロシアが台頭し、領土問題などキナ臭くなっています。米国はリーマンショック以降、消費・輸入で世界経済をひっぱることができなくなり、輸出拡大戦略に転じています。世界不況でEUもガタがきていて、どの国も世界の需要をとりにいこうとしています。1929年以降の世界恐慌と同様に危機の時代になるとどの国も利己的になり、とりわけ先進国は世論の支持が必要なので雇用を守るために必死になります。

このような厳しい時代には、日本のような国にもいろいろな仕掛けが講じられるでしょう。その世界の動きの中で日本人が相手の戦略をどう読み、どう動けるかが重要になります。尖閣、北方領土、そしてTPPがきました。このTPP問題をどう議論するか、日本の戦略性が問われていたのですが、ロクに議論もせずあっという間に賛成で大勢が決してしまいました。

─TPPの問題点は

昨年10月1日の総理所信表明演説の前までTPPなんて誰も聞いたことがありませんでした。それにも関わらず政府が11月のAPECの成果にしようと約1ヶ月間の拙速に進めたことは、戦略性の観点だけでなく、民主主義の観点からも異常でした。その異常性にすら気づかず、朝日新聞から産経新聞、右から左まで一色に染まっていたことは非常に危険な状態です。

TPPの議論はメチャクチャです。経団連会長は「TPPに参加しないと世界の孤児になる」と言っていますが、そもそも日本は本当に鎖国しているのでしょうか。

日本はWTO加盟国でAPECもあり、11の国や地域とFTAを結び、平均関税率は米国や欧州、もちろん韓国よりも低い部類に入ります。これでどうして世界の孤児になるのでしょうか。ではTPPに入る気がない韓国は世界の孤児なのでしょうか。

「保護されている」と言われる農産品はというと、農産品の関税率は鹿野道彦農水相の国会答弁によればEUよりも低いと言われています。計算方法は様々なので一概には言えませんが、突出して高いわけではありません。それどころか日本の食糧自給率の低さ、とりわけ穀物自給率がみじめなほど低いのは日本の農業市場がいかに開放されているかを示すものです。何をもって保護と言っているかわかりません。そんなことを言っていると、本当に「世界の孤児」扱いされます。

「TPPに入ってアジアの成長を取り込む」と言いますが、そこにアジアはほとんどありません。環太平洋というのはただの名前に過ぎません。仮に日本をTPP交渉参加国に入れてGDPのシェアを見てみると、米国が7割、日本が2割強、豪州が5%で残りの7カ国が5%です。これは実質、日米の自由貿易協定(FTA)です。

TPPは"徹底的にパッパラパー"の略かと思えるぐらい議論がメチャクチャです。

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ニュージーランド、ブルネイ、シンガポール、チリの4加盟国+ベトナム、ペルー、豪州、マレーシア、米国の5参加表明国に日本を加えたGDPグラフ。日本と米国で9割以上を占める。(国連通貨基金(IMF)のHPより作成(2010年10月報告書))

─菅首相は10月当初、TPPをAPECの一つの成果とするべく横浜の地で「開国する」と叫びました

横浜で開国を宣言した菅首相はウィットに富んでいるなと思いました。横浜が幕末に開港したのは日米修好通商条約で、これは治外法権と関税自主権の放棄が記された不平等条約です。その後日本は苦難の道を歩み、日清戦争、日露戦争を戦ってようやく1911年に関税自主権を回復して一流国になりました。中国漁船の船長を解放したのは、日本の法律で外国人を裁けないという治外法権を指します。次にTPPで関税自主権を放棄するつもりであることを各国首脳の前で宣言したのです。

APECでは各国首脳の前で「世界の孤児になる」「鎖国している」と不当に自虐的に自国のイメージをおとしめました。各国は日本が閉鎖的な国だと思うか、思ったフリをするため、普通は自国の開かれたイメージを大切にするものです。開国すると言って得意になっているようですが、外交戦略の初歩も知らないのかなと。すでに戦略的に負けています。

世界中が飢餓状態にある今、世界最大の金融資産国である日本を鵜の目鷹の目で狙っています。太ったカモがネギを背負って環太平洋をまわっているわけで、椿三十郎の台詞にあるように「危なっかしくて見てらんねえ」状態です。

─TPPは実質、日米の自由貿易協定(FTA)とおっしゃいましたが、米国への輸出が拡大することは考えられませんか

残念ながら無理です。米国は貿易赤字を減らすことを国家経済目標にしていて、オバマ大統領は5年間で輸出を2倍に増やすと言っています。米国は輸出倍増戦略の一環としてTPPを仕掛けており、輸出をすることはあっても輸入を増やすつもりはありません。これは米国の陰謀でも何でもないのです。

オバマ大統領のいくつかの発言(※1)を紹介します。11月13日の横浜での演説で輸出倍増戦略を進めていることを説明した上で、「...それが今週アジアを訪れた大きな部分だ。この地域で輸出を増やすことに米国は大きな機会を見いだしている」と発言しています。この地域というのはアジアを指しており、TPPのGDPシェアで見れば日本を指しています。そして「国外に10億ドル輸出する度に、国内に5,000人の職が維持される」と、自国(米国)の雇用を守るためにアジア、実質的に日本に輸出するとおっしゃっています。

米国の失業率は10%近くあり、オバマ政権はレームタッグ状態です。だからオバマ大統領はどこに行っても米国の選挙民に向けて発言せざるを得ません。

「巨額の貿易黒字がある国は輸出への不健全な異存をやめ、内需拡大策をとるべきだ」とも言っています。巨額の貿易黒字がある国というのは、中国もですけど日本も指しています。そして「いかなる国も米国に輸出さえすれば経済的に繁栄できると考えるべきではない」と続けています。TPPでの日本の輸出先は米国しかなく、米国の輸出先は日本しかない、米国は輸出は増やすけれど輸入はしたくないと言っています。

米国と日本の両国が関税を引き下げたら、自由貿易の結果、日本は米国への輸出を増やせるかもしれないというのは大間違いです。米国の主要品目の関税率はトラックは25%ですが、乗用車は2.5%、ベアリングが9%とトラック以外はそれほど高くありません。日米FTAと言ってもあまり魅力がありません。

─中国と韓国がTPPに参加するという話が一部でありました

中国は米国との間で人民元問題を抱えています。為替操作国として名指しで批判されています。為替を操作するということは貿易自由化以前の話ですから、中国はおそらく入りません。韓国はというと、調整交渉の余地がある二国間の米韓FTAを選択しています。なぜTPPではなくFTAを選んだかというと、TPPの方が過激な自由貿易である上に、加盟国を見ると工業製品輸出国がなく、農業製品をはじめとする一次産品輸出国、低賃金労働輸出国ばかりです。韓国はTPPに参加しても利害関係が一致する国がなく、不利になるから米韓FTAを選んでいるのです

日本は米国とFTAすら結べていないのに、もっとハードルが高く不利な条件でTPPという自由貿易を結ぼうとしています。戦略性の無さが恐ろしいです。

<関税はただのフェイント 世界は通貨戦争>

米国は輸出倍増戦略をするためにドル安を志向しています。世界はグローバル化して企業は立地を自由に選べるので、輸入関税が邪魔であればその国に立地することもできます。現に日本の自動車メーカーは米国での新車販売台数の66%が現地生産で、8割の会社もあります。もはや関税は関係ありません。それに加えて米国は日本の国際競争力を減らしたり、日本企業の米国での現地生産を増やしたりする手段としてドル安を志向します。ドル安をやらないと輸出倍増戦略はできません。

日米間で関税を引き下げた後、ドル安に持って行くことで米国は日本企業にまったく雇用を奪われることがなくなります。他方、ドル安で競争力が増した米国の農産品が日本に襲いかかります。日本の農業は関税が嫌だからといって外国に立地はできず、一網打尽にされるでしょう。グローバルな世界で関税は自国を守る手段ではありません。通貨なんです。

─関税の考え方をかえる必要がありそうです

米国の関税は自国を守るためのディフェンスではなく、日本の農業関税という固いディフェンスを突破するためのフェイントです。彼らはフェイントなどの手段をとれるから日本をTPPに巻き込もうとしているということです。

─農業構造改革を進めれば自由化の影響を乗り越えられるという意見はどう思いますか

みなさんはTPPに入れば製造業は得して農業が損をすると思っているため、農業対策をすればTPPに入れると思うようになります。農業も効率性を上げればTPPに参加しても米国と競争して生き残れる、生き残れないのであれば企業努力が足りない、だから農業構造改革を進めよと言われます。

それは根本的に間違いだと思います。関税が100%撤廃されれば日本の農業は勝てません。関税の下駄がはずれ、米国の大規模生産的農業と戦わざるを得なくなったところでドル安が追い打ちをかけます。さらに米国は不景気でデフレしかかっており、賃金が下がっていて競争力が増しています。関税撤廃、大規模農業の効率性、ドル安、賃金下落という4つの要素を乗り越えられる農業構造改革が思いつく頭脳があるなら、関税があっても韓国に勝てる製造業を考えろと言いたいです。

自由貿易は常に良いものとは限りません。経済が効率化して安い製品が輸入されて消費者が利益を得ることは、全員が認めます。しかし安い製品が入ってきて物価が下がることは、デフレの状況においては不幸なことなのです。デフレというものは経済政策担当者にとって、経済運営上もっともかかってはいけない病だというのが戦後のコンセンサスです。物価が下がって困っている現状で、安い製品が輸入されてくるとデフレが加速します。安い製品が増えて物価が下落して影響を受けるのは農業だけではありません。デフレである日本がデフレによってさらに悪化させられるというのがこのTPP、自由貿易の問題です。

農業構造改革を進めて効率性があがった日には、日本の農家も安い農産物を出荷してしまうことになり、さらにデフレが悪化します。デフレが問題だということを理解していれば、構造改革を進めればいいなんて議論は出てきません。

こういう議論をすると「農業はこのままでいいのか」ということを言い出す人がいます。しかし、デフレの時はデフレの脱却が先なのです。インフレ気味になり、食料の価格が上がるのは嫌なので農業構造改革をするということはアリだと思います。日本は10年以上もデフレです。デフレを脱却することが先に来なければ農業構造改革は手をつけられません。

例えばタクシー業界が競争原理といって規制緩和の構造改革をしました。デフレなのに。その結果、供給過剰でタクシーでは暮らせない人が増えて悲惨なことになりました。今回は同じ事が起ころうとしています。

─TPP参加のメリットを少しだけ...

デメリットは山ほどありますが、メリットはないんです。

米国が輸出を伸ばし日本が輸入を増やして貿易不均衡を直すこと自体は、賛成です。ところが、関税を引き下げて輸入をすると物価が下がるので、日本はデフレが悪化します。経済が縮小するので、結局輸入は増えません。農産品が増えれば米国の農業はハッピーですが、トータルで輸入は増えません。

本当は日本がデフレを脱却して経済を成長させれば、日本の関税は低いんだから輸入が増えるんです。実際に米国はそれをしてほしかったのです。ガイトナー財務長官は昨年6月、日本に内需拡大してくれという書簡を送りました。ところが日本は財政危機が心配だと言って財政出動をしないので、内需拡大をしようとせずに輸出を拡大しようとするので、米国は待ち切れずにTPPに戦略を変えたのでしょう。米国は「とりあえずTPPを進めれば農業は儲かるからいいや」となったのでしょう。

デフレを脱却し、内需を拡大し、経済を成長させれば、関税を引き下げることなく輸入を増やすことができます。環太平洋やアジアの地域は、例えば韓国がGDPの5割以上、中国も3割以上が輸出に頼っており、シンガポールやマレーシアに至ってはGDPよりも輸出が多いです。つまり輸出依存度が高く、その輸出先となっていた米国が輸入したくないと言っているので環太平洋・アジアの国々は困っていることと思います。

今、東アジアが調子が良いのは、資金が流入してバブルになっているからで、本当はヤバイ状況です。環太平洋の国々は経済不況に陥った米国やEUに代わる輸出先を探しています。日本は世界第2位のGDPがあり、GDPにおける輸出の比率は2割以下という内需大国です。その日本が内需を拡大して不況を脱し、名目GDP3%程度の普通の経済成長をしたとすれば、環太平洋の国々は欧米で失った市場の代わりを日本に求めることができるので、本当の環太平洋経済連携ができます。これなら、どの国も不幸になりません。

─あえてTPPを推進する狙いをあげれば、TPP事態は損だとしても今後FTAやEPAなど二国間貿易を進めるきっかけにしたいということなのでしょうか

それも無理筋ですね。自由貿易を進めている国として韓国をあげ、日本はFTAで韓国に遅れをとっているという論調があります。しかしFTAは、一つ一つ戦略的に見ていくべきもので、数で勝ち負けを判断すべきではありません。韓国はGDPの5割以上が輸出で得ており、自由貿易を進めなければ生きていけません。韓国人はやる気があるとか、外を向いているとかいった精神論ではありません。しかし、自由貿易は格差を拡大するものであり、それが進んでしまったのが韓国なのです。

韓国がなぜ競争力があがったかのでしょうか。韓国はこの4年間で円に対するウォンの価値が約半分になっている。韓国の競争力が増したことはウォン安で十分説明できます。日本がTPPで関税を引き下げてもらったとしても、韓国のウォンが10%下がれば同じ事ですし、逆にウォンが上がれば関税があっても十分戦えます。

グローバル化の世界は関税じゃなく通貨だということがここでも言えます。なんで全部農業にツケをまわすんだと言いたいです。とっちにしたって世界不況ですから海外でモノは売れませんよ。失業率が10%の米国で何を売るんですか。

<TPP議論の女性の反応>

─中野さんがおっしゃるような問題点が出されないままに大マスコミが一斉に推進論を展開し、有識者も賛成論がほとんどでした

外国から見ればこんなにカモにしやすい相手はいません。環太平洋パートナーシップ、自由貿易、世界平和など美しいフレーズをつければ日本人はイチコロなんです。

なぜこんなにTPPが盛り上がってしまうのでしょうか。TPPは安全保障のためだという人がいますが、根本的な間違いです。まずTPPは過激な自由貿易協定に過ぎません。軍事協定とは何の関係もありません。

米国はかつての黒船のように武力をちらつかせたり、TPPに入らなければ日米安全保障条約を破棄するなどと言ったりしていません。日米同盟には固有の軍事戦略上の意義があり、経済的な利益のために利用するためのものではありません。さすがに米国でもTPPで農産物の輸出を増やしたいので、その見返りに日本を命をかけて守れと自国の軍隊を説得できませんよ。TPPを蹴ったから日本の領土が危なくなるなんてことはありません。

それにも関わらず日本が勝手にそう思い込んでいるのです。尖閣や北方領土の問題を抱え、軍事力強化は嫌だなと思っているときにTPPが浮かび上がってきて、まさに「溺れる者は藁をもつかむ」ようにTPPにしがみつきました。でもこれにしがみついたって何の関係もないです。もし米国が日米同盟を重視していないのであれば、TPPに入ったって日本を守ってくれません。

その中で無理に理屈をつけようとするから、アジアの成長だの農業構造改革だのと後知恵でくっつけるからきわめて苦しくなるのです。TPP参加論は、単なる強迫観念です。

─推進派が根拠にしているのは経産省が算出したデータです(※2)。どこまで信用できるものなのでしょうか

経産省はTPPに入らなければ10兆円損をするというデータを発表しました。その計算方法は、日本がTPPに入らず、EU、中国とFTAを締結せず、韓国が米国、韓国、EUとFTAを結び発効した場合は10兆円の差が出るというものです。

なぜ中国とEUを入れているのでしょうか。おそらくTPPに加盟しても本当は経済効果がないことがわかったからでしょう。反対派の農水省と賛成派の経産省は数の大きさで争っているので、試算自体に水増しがあります。もっと言えば、なぜTPPとFTAが混ざった試算をするのかが疑問です。日本がTPPで韓国がFTAと試算していることを見れば、韓国がTPPに興味がないことを政府が知っていることがわかります。こんな不自然な試算を見ていると、TPP参加の理屈をつけるのはさぞかし大変だっただろうなと同情したくなります。

─理屈が通らずに「平成の開国」というフレーズに飛びついた

「黒船の外圧でも、幕末・明治は変にナショナリスティックにならなかったからうまくいき、戦後はGHQによって屈辱的に占領されたものの日米安保を結び平和になり経済が繁栄した」ということをみんなが思っているから、今回も「開国」と聞いた瞬間に飛びついたのではないでしょうか。それまでは尖閣の問題できわめて「攘夷」の雰囲気がありましたから「開国」のフレーズに心理が動いたのでしょう。

しっかりと考えて欲しいのは、幕末・明治の開国がそのイメージと違うことです。富国強兵をして戦争に進み、関税自主権の回復を目指した、つまり開国した後の日本は独立国家になるために戦い抜いた歴史があるんです。それ以前に開国したのは江戸幕府であり、外圧になすすべなく国を開いた幕府の方が倒されたんだよ、と。そこからしてもう歴史観が間違っているんです。

─TPPの議論は「思考の停止」が起きているように見えました

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議論が複雑でやっかいかもしれませんが、せめてGDP比を見て「TPPは日米貿易に過ぎない」とか、米国が輸出拡大戦略をとろうとして輸入しないようにしているということぐらい知ってもらわないと、戦略を立てようがありません。推進派の人たちが国を開けとか、外を向けとか言っていますが、本当に外を向けば、TPPでは何のメリットもないことがわかるんです。そういう意味では推進派の頭の方が鎖国しています。

この程度の議論は、私みたいな若輩者が言わなくても、偉い先生が言うべきなのに誰も声を上げません、もはや民主主義国家じゃないですよ。

─「反対」はもちろん「わからない」と言いづらい雰囲気がありました

一般の人の方が正常な感覚を持っていたのですが、偉い先生が賛成しているから反対する自信がなかったんだと思います。それこそ下級武士が目を覚ませということで、それにかけるしかない状況です。

私は今回のTPPを見ていて女性の反応に驚きました。男どもが開国ごっこ、龍馬ごっこをやっていて、その安っぽいロマンチシズムのせいで自分たちの大事なものが奪われるかもしれないと不安に思っているのでしょうか。

「明治の開国は関税自主権の回復であり今回はそれを放棄しようとしている」と言うと、多くの女性がまさにその通りと言ってくださいました。女性の方が戦略性というものには敏感なんでしょう。

─日本史を教えている高校教師が「幕末・明治の開国を教えるときは、1911年・小村寿太郎をセットにして教えるほど関税自主権は基本的で大事なこと」と言いました。関税をゼロにするという話に飛びついた政府やマスコミは歴史に何を学んでいるのか疑いたくなります

幕末の開国はペリーが武力で迫ったものですが、今回はそんなことはありません。世界第2位のGDPがあり、何度も言っているようにすでに開国しています。なぜ自爆しようとするのでしょうか。こんな平成の開国の歴史を、僕らの子どもや孫にどうやって教えますか。雰囲気で決めるようなこの時代を、将来、歴史の教科書でどう教えるのですか。

─私は欧米に輸出している液晶モニターメーカーの営業経験がありますが、社員の関税に対するイメージが悪かった思い出があります。EUが関税を引き上げる度に域内の製品価格が上がり売上やマーケットに直結するため非常にセンシティブになります。関税に対するイメージの悪さが、関税撤廃を後押しする雰囲気につながっていることはありませんか

あるかもしれませんね。EUは関税が高いし、戦略的に関税をつかっていますし、そもそもEUはそのための関税同盟です。でも思いだして欲しいのは、TPPはEUと関係ないんです。日本はEUとFTAを進めたいけどフラれています。それはEUにとって得にならないからです。どの国もひとつひとつ損得を考えて進めているんです。

<迫り来る食糧危機と水不足>

─結局TPPで困る人は?

国民全体です。農業界だけじゃありません。あるいは日本でデフレが進行すれば日本が輸入しなくなり、世界全体も困ります。

心配なのは食料価格の上昇です。世界各国がお金をジャブジャブに供給していて、お金の使い道がないから金や原油の価格が上がっています。食料価格は豪州は洪水と干ばつなどの影響ですでに上昇しており、投機目的でお金が流れてくるとさらに上がることが予想されます。

─TPPの問題は家庭の食卓にも迫ってくるわけですね

1970年代の石油危機がありましたよね。石油の問題はみなさん心配されますが、石油よりも危険なのは食料です。中東の石油は生産量のほとんどを輸出用に回していて、外国に買ってもらわないと経済が成り立たないため、売る側の立場は意外と弱いものです。ところが穀物の場合は、輸出は国内供給のための調整弁でしかなく、不作になれば売らないと言われかねません。

穀物はまず国内を食わせて余剰分を輸出します。当然不作になれば輸出用を減らして国内へまわすものです。もともと農業は天候に左右されるため量と価格が変動しやすく、特に輸出用は調整弁なので変動が大きいのです。変動リスクが大きいから、穀物の国際先物市場が発達したのです。

日本のトウモロコシはほぼ100%米国に依存しているので、僕らは米国の調整弁になっているということです。不作になったら安く売ってもらえなくなります。そのトウモロコシの大生産地である中西部のコーンベルトで起こっていることが、レスター・ブラウンが警告する地下水位の下落です。水不足の問題です。

米国は水不足がわかっているから、ダムのかさ上げ工事を始めています。例えばサンディエゴ市に水を供給するダムは、将来の水不足に備えて市民の1年分の水が追加的に貯められるようになる計画が進められています。米国のフーバーダムひとつで、日本の約2,700のダムの合計貯水量を上回ります。ところが日本は「ダムはムダ」とか言っています。世界が水不足になる中で、日本の水源地はどんどん買われていると聞きます。本当におめでたい国です。

このようにして国は外からでなく内側から滅びるんです。カルタゴを始め、歴史上別に滅びなくてもいいような国がバカをやって滅んでいきました。日本もそういうサイクルに入ったということかもしれませんね。

欧州では「トロイの木馬」の教訓があります。それは「外国からの贈り物には気をつけよう」という言い伝えです。外国から贈り物を受け取るときはまず警戒するものですが、日本はTPPという関税障壁を崩すための「トロイの木馬」を嬉々として受け入れようとしているのです。

<TPP問題の側面にある世代抗争>

こんな状況が広がっている中で、TPP推進派が「日本には戦略が必要だ」と言いながら米国に依存しようとしています。

米国の庇護の下で経済的な豊かさだけを追って、何をしても成功し、ちょっとバカをしても大した損はしなかった世代の人々が90年代以降に企業や政府のトップになり、それ以降日本のGDPが伸びなくなりました。この世代の人たちが「日本の改革のためには外圧が必要だ」「閉塞感を突破するためには刺激が必要だ」という不用意な判断をするので、ものすごい被害を及ぼすことになるのです。

例えば日本は13年連続3万人の自殺者がいます。その前までは、日本は先進国の中でも自殺率が低い国として有名でした。バカなことをすると一気に転げ落ちてしまうんだという真剣さに欠けている人たちが、今の日本を牛耳っているんです。「最近の若者は元気がない」と言う人たちが元気だったのは、彼らが若いころはバブルだったからです。愛読書は「坂の上の雲」と「竜馬が行く」のこの世代は、「開国」と聞くと条件反射的に興奮するようです。

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先日朝日新聞社から団塊の世代の方がインタビューに来た時に、彼らの世代の口癖を指摘しました。このままでは日本が危ないという話をすると必ず「そんなことでは日本は壊れない」という口癖です。しかし、日本はもうすでに壊れているんです。政界はもちろん、私も含めた官僚、財界そして知識人は、毎年3万人の自殺者の霊がとりついていると思うぐらいの責任感をもって、もっと真剣に国の行く末を考えないといけません。

私は1996年に社会人になり、以来、一度も名目GDPの成長を経験していません。私より下の世代はもっとひどい。この世代は「いい加減にしろ」という気持ちになっているのでしょうけど、へたっている上、少子高齢化で上の世代が多すぎて声が出ないんです。でも「最近の若者は元気がない」などと偉そうに言わせてる場合じゃないんです。

今回は地べたを耕している農家、ドブイタ選挙をやっている政治家、女性、この人たちの「危ない!」と思った直感を大切にしなければいけません。全体が賛成派の中で黙っていた人、発言の機会さえ与えられていない人、真剣に生きている人たちに声を上げてもらいたいと思います。(了)

※インタビューの内容は中野氏個人の見解です。

2011年1月14日《THE JOURNAL》編集部取材&撮影 

【関連資料】
■(※1)オバマ大統領、TPP推進の決意を示す(AFP)
■(※2)EPAに関する各種試算(pdf・経産省HP

【TPP関連記事】
山田正彦:TPPは農業だけの問題ではない!
舟山やすえ:米国基軸のTPPよりアジア中心の経済圏を
TPP報告書を公開!
TPP「開国」報道に"待った"の動き
続・世論調査の「TPP推進」は本当?
怪談! TPPって何?(TOKYO MX)

+ + + 著書紹介+ + +

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中野剛志:「TPP亡国論」発刊にむけて

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110114_nakano4.jpg【プロフィール】 中野剛志(なかの・たけし)
1971年、神奈川県生まれ。京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)助教。
1996年、東京大学教養学部教養学科(国際関係論)を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。2000年より3年間、 英エディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年、同大学院より優等修士号(Msc with distinction)取得。2003年、同大学院在学中に書いた論文がイギリス民族学会(ASEN) Nations and Nationalism Prizeを受賞。2005年、同大学院より博士号(社会科学)を取得。経済産業省産業構造課課長補佐等を経て現職。
著書に「考えるヒントで考える」「成長なき時代の「国家」を構想する」「自由貿易の罠 覚醒する保護主義」「恐慌の黙示録―資本主義は生き残ることができるのか」など。

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2011年1月17日

続・世論調査の「TPP推進」は本当?──地方議会の反対決議

NHKや大マスコミが発表する「TPP推進」の世論調査と逆の動きがまた一つ発表された。

全国の都道府県と政令指定都市の66議会のうち46議会がTPPに関する意見書を11日までに可決し、TPP反対は14議会、「慎重対応」を求めるものが32議会にのぼっている結果を共同通信がまとめた。

「慎重」な意見を出したのは秋田県や神奈川県など27県と仙台など5市の議会で、その内容は「国民的議論」なしに協定締結をしないことを訴えたものだ。反対決議を明確にしているのは山形県や北海道など11道県と、3政令市の議会となっている。

13日に掲載した「世論調査の『TPP推進』は本当?」のコメント欄には、「高知の芸西村(人口4000人)にいますが、ここの村議会はいちはやくTPP反対の決議文を国会につきつけたそうです」(投稿者: 隷属国家の末路 | 2011年1月15日 00:28)と地方議会の動きを伝えるコメントが寄せられている。全国941の市町村をカバーする全国町村会は昨年の所信表明演説直後の10月と12月に2度にわたる反対決議を行っており(『TPP反対の大義』)、国や大マスコミの大きな流れに対して村や町の声が待ったの声をあげていることがわかる。

「地方議会から意見書をバンバン出すことです」

自由貿易の罠」の著者・中野剛志氏(京都大学大学院助教)は14日の《THE JOURNAL》の取材で、地域の声を国に反映させる手段として意見書の存在をあげており、これからTPPに関する審議をスタートする議会の意見書の結果にも注目していきたい。

(中野氏のインタビュー全文は近日中に掲載予定です)

【反対決議の一例】
■高知県議会によるTPP意見書
http://www.pref.kochi.lg.jp/~gikai/info22-11.html

【関連記事】
■TPP「反対」「慎重」7割 都道府県と政令市議会(中日新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011011702000032.html

■世論調査の「TPP推進すべき」は本当?
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_3.html

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シリーズ小沢一郎論(12)── 与謝野入閣は政権交代民意の否定

日本一新の会
達増拓也(岩手県知事)

■与謝野入閣は政権交代民意の否定

 政権交代が実現した前回衆院選において、敗北した麻生内閣の経済財政担当大臣そして財務大臣、金融担当大臣を務めたのが与謝野馨氏である。その与謝野氏を菅内閣に入れるということは、政権交代の民意を否定することなのではないか。

 私が昨年「シリーズ小沢一郎論10」で「亡国の菅政権三大失策」として挙げた消費税、TPP、小沢外し、の三つを、菅首相は新年の記者会見で今年の三大重点として挙げた。これら三つは、自民党がやろうとしていたことを自民党以上に徹底的にやるということで共通している。

 格差社会化を一層促す路線でもある。与謝野入閣は、この「自民党化」路線と軌を一にする。

 民主党が、小沢代表の下での参院選で参院第一党になり、鳩山代表の下での衆院選で政権交代を実現したのは、格差社会化をくい止めよう、との民意を反映したものだったはずだ。景気・雇用の低迷の中で、貧困問題が拡大し、希望が持てない社会になっていく、そして生活が崩壊していくことに対し、「生活が第一」というスローガンが支持を得たのだ。自民党政権は左右対立の冷戦思考にとらわれて、セーフティネットの充実に対し、社会主義的政策であるとして反発していた。そもそも格差問題があるということを認めようとしなかった。自民党が政権を失った本質的な理由は、現実を見据え未来を拓く理念・政策を持ちえなかったことだと思う。

 野党時代、菅、岡田、前原と代表が続いた頃の民主党には、経済政策や財政再建、安全保障問題などで、自民党がやろうとしていることをより徹底してやればよいのだ、という傾向があった。それが、小沢代表になって、自民党との対立軸を明確にした。自民党が無視した国民生活の実態に目を向け、セーフティネット充実の上に個人の自由を実現しようという、左右対立の冷戦思考を超えた新しい理念・政策を提示し、マニフェストにもした。それを国民が支持して、政権交代が実現した。

 菅政権は、米国に従属し、経済団体におもねり、格差社会化を一層深刻にするような路線を進めようとしている。去年の参院選でその片鱗を見せたことに国民が反発して、民主党は大敗したのではなかったか。

 なぜ、このような、民意に反する「自民党化」を徹底的に進めようとするのか。それは、権力の掌握が最終目的になっているからではないか。官僚のみこしに乗り、米国や経済団体にほめられながら、権力の座に居座り続ける、それが目的ならば、「自民党化」に邁進する理由が分かる。与謝野入閣の先には「小沢抜き大連立」が視野に入っているのだろうが、かつて、細川非自民政権を誕生させた民意にそむき、反小沢を旗印にして自社さ政権が作られたことを思い出させる。「小沢抜き大連立」というのは、長いものに巻かれあう、大勢順応、なれ合い・野合の、政権居座り自己目的体制を目指すものなのではないか。

 政権交代の大義は、政権居座り自己目的体制を打破し、21世紀グローバル時代にふさわしい新たな理念・政策を推進できる体制を作ることだったはずだ。賢明な日本国民は、そういう民意を明確に示したのだ。民意に従うべきである。

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2011年1月13日

世論調査の「TPP推進すべき」は本当?

 NHKは11日世論調査を発表し、TPP(環太平洋経済連携協定)について、「交渉に参加すべきだ」が47%で「交渉に参加すべきでない」の9%を大きく上回った結果を報じた。調査は8日から3日間、全国の20歳以上の男女を対象に行ったものだ。

 これまでもTPPについてはマスコミ各社がアンケートを行っており、11月の読売新聞社の全国世論調査では参加すべきだと思う人は61%、12月の産経ビズは「『参加すべきだ』が7割」と見出しを掲げて推進派が上回っていることを報じてきた。

一方、「大マスコミの情報洪水の中で賛成か反対かを問われれば賛成と言わざるを得ないけど、知っているか知らないかと聞けば半数は知らないと答えるでしょう」と指摘するのは《THE JOURNAL》ブロガーでもお馴染みの甲斐良治氏。甲斐氏が参考例にあげたのは宮崎日日新聞社が12月末に県内有権者1146世帯に実施した電話世論調査の結果だ。

■TPP反対28% 宮日世論調査
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/index.php?itemid=34056

 調査からは「TPPを知らない」21.3%、「どちらでもよい」25.3%で、両方をあわせると全体の約半数が賛否に至っていないことがわかる。

 日本は現在TPPに参加"検討中"で今まで計4回開かれた交渉会議にも参加しておらず、マスコミはもちろん政府、官僚も十分な情報を得られていない。情報不足の推進論に対する反対論と、「知らない」「わからない」に意見が集約される流れは当然の結果だろう。

 世論調査についてはリベラルタイムが特集「『世論調査』の研究」(2011年1月号)を組むなど様々な視点から疑問が投げかけられている。

 「輿論と世論」の著者で京都大学大学院の佐藤卓巳教授は「現行世論(セロン)調査は『国民総感情』調査である」(リベラルタイム)の中で、「このセロン調査が現状では「ヨロン」という理想的響きを帯びて、あたかも国民投票のごとく、政治的正当性の裏付けに利用されている」と警鐘を鳴らしている。佐藤氏は「明治維新の『公議世論』に私たちはいま一度思いを致すべきだろう。公に熟議する時間の中で生まれる輿論は、電話調査の数値とは別物である」と続ける。

 冒頭のNHK調査でも37%が「どちらともいえない」と答えている。TPP推進で一色に染まる大手メディアが、今後「知らない」「わからない」という意見をどのように調査・分析・報道するのか。TPP問題でも"ヨロン調査"の意義が問われている。

【関連記事】
現行世論(セロン)調査は「国民総感情」調査である(内憂外患)
NHK調査 内閣支持率29%(NHKニュース)

【TPP記事(NewsSpiral)】
中野剛志:TPPはトロイの木馬
山本謙治:TPP 「農業」を「たべもの」に置き換えて考えよう
山田正彦:TPPは農業だけの問題ではない!
舟山やすえ:米国基軸のTPPよりアジア中心の経済圏を
金子勝:歴史の中の「自由貿易」 錦の御旗を立ててみたけれど...
TPP報告書を公開!
続・世論調査の「TPP推進」は本当?

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2011年1月12日

印鑰智哉:モンサント、ブラジルの遺伝子組み換え大豆「開国」の手口

ブラジルがいかに遺伝子組み換え大豆栽培の「開国」を迫られたか、そのプロセスを今ここでまとめておきたいと思う。

それは、WikiLeaksが暴露した米国政府へのEUへの恫喝よりもおぞましいやり方と言わざるをえない。交渉での威嚇というレベルどころか一国の法律も主権も無視した非合法手段を使ったものだからだ。しかし、違法な手段で開国させてしまったからといって、ブラジルの民衆はおめおめとそれを受け入れたわけではない。さまざまなレベルで闘いが繰り広げられた。そして今なお闘っている。ただし、その犠牲はあまりに大きいものであるが。

EUそしてブラジルでの遺伝子組み換え技術に対する抵抗を見る時、今の日本の民主党政権の遺伝子組み換え大豆栽培の承認に向けた動きを見せていることがいかにも異様に見えてくる。

このまとめが日本の遺伝子組み換え技術に対して取るべき選択について考える一つの材料となれば幸いである[注1]。

* * * * *

世界最大の非遺伝子組み換え大豆の輸出国が狙われたー非合法活動で強引に既成事実化

ブラジルはかつて世界最大の非遺伝子組み換え大豆の輸出国だった。遺伝子組み換え大豆の耕作は禁止されていた。しかし、現在ブラジルでは75%ほどの大豆が遺伝子組み換えとなってしまった。

遺伝子組み換え大豆の栽培はルラ前大統領の前のフェルナンド・エンヒキ・カルドーゾ(FHC)政権時代の1998年にアルゼンチンから遺伝子組み換え大豆の種子が国境沿いのマトグロッソドスル州に非合法に持ち込まれることで始まった。

持ち込まれた遺伝子組み換え大豆はいわば密輸品であり、FHC政権は持ち込まれた大豆を即時に処分し、持ち込んだ関係者の処罰をする義務があるにも関わらず、実際には遺伝子組み換え大豆の耕作実態をつかむ調査すら十分には行わなかった。そのためにどれだけ広範囲に遺伝子組み換え大豆が持ち込まれたのか正確につかむことができない。

この事態を理解するにはブラジルの地方の政治状況を知る必要があるだろう。ブラジルでは軍事独裁政権との闘いの中で民主化運動が大きく成長し、その中心にあった労働者党のルラ大統領が選挙で選ばれるまでに至っている。しかし、その一方で、農地はごく一部の大土地所有者に握られ、極端な富の偏在がまだ残っている。地方では大土地所有者の力は強く、マトグロッソドスル州では特にその傾向が強い。行政の力は時に弱く、地方の権力者の協力を得てしまえば、非合法行為もなかなか処罰されない傾向がある。

こうして大土地所有者への密輸という方法を通じて、モンサントはブラジルを遺伝子組み換え大豆生産国に強引に変えて、それを既成事実化してしまったのだ。

政治をめぐる攻防ー憲法を無視する法案

同時にモンサントが試みたのは強力なロビー活動を通じての法律の変更だ。1998年、モンサントは除草剤Roundupに耐性のある種子Roundup Ready大豆のバイオ食料国家技術委員会(CTNBio) による承認を勝ち取った。

しかし、これに対して、GreenpeaceブラジルとInstituto de Defesa do Consumidor (消費者保護協会、IDEC)はモンサントとブラジル政府を相手に訴訟を起こし、この承認の取り消しを求めた。この訴訟はGreenpeaceらの側の勝利となり、1998年から2003年まで、遺伝子組み換え大豆の栽培はモラトリアム(停止処分)となった。

2002年、大統領選挙で労働者党のルラは「環境と生活の質」をテーマに掲げ、非合法の遺伝子組み換え大豆の耕作の停止を公約した。大統領選でのルラの勝利で、環境問題、農業問題に取り組む広範な人びとから、遺伝子組み換え作物の栽培禁止の継続の期待が高まった。しかし、議会で影響力を強く持つ大土地所有者、アグリビジネスの利益代表者に対して、ルラ政権は妥協を重ねた。

2003年、政権が発足すると、ルラは遺伝子組み換え促進派を農務省大臣に据える一方、環境大臣には遺伝子組み換え技術に対して予防原則の適用の立場から反対するマリナ・シウバを起用した(後に大臣を辞任、緑の党の候補として2010年大統領選挙で善戦する)。

大統領に就任するやいなやルラは難問に直面する。すでに非合法に植えられていた大豆の収穫期が迫っており、モンサント、リオグランジドスル州政府、非合法に大豆を植えた大土地所有者からその収穫される大豆を承認するように大きな圧力を受けたからだ。

その結果、ルラ大統領は2003年3月に人や家畜への遺伝子組み換え大豆の 2004年1月までの利用を承認する暫定措置令を出した。これはルラの選挙公約に反したものだった。この暫定措置令は連邦地方裁判所の決定を無視し、この種の決定には環境影響調査が必要とする憲法に反するものだった。

この暫定措置令に対しては、遺伝子組み換え大豆に反対する大多数の農民、消費者、社会運動や環境保護運動から大きな反対が起こり、80の団体が反対する声明を出したが、政府はこれを無視した。

2番目の暫定措置令は2003年9月に出され、これは2003/2004の収穫に遺伝子組み換え大豆を承認するものだったが、この承認は遺伝子組み換え大豆の種子をすでに確保していた農家に対してのみ適用されるもので、2004年2月初めまでに8万1612農家が申請を行った。これに対して公共省が連邦最高裁判所にこの遺伝子組み換え大豆の承認は憲法違反であるという訴えを起こしている。しかし裁判所は未だ何も応えていない(2005年4月時点)

遺伝子組み換え大豆を連邦政府が承認する決定を行った後、ブラジルで2番目の大豆生産量を誇るパラナ州政府が、遺伝子組み換え大豆の州内栽培、輸送、船積みを禁止する法律を制定した(パラナ州はリオグランジドスル州に近隣州)。それに対して、リオグランジドスル州政府は最高裁に、パラナ州政府を訴え、パラナ州政府の遺伝子組み換えを禁止する権限は否定されてしまった。

一国の主権が、憲法が骨抜きに

モンサントのまったくの非合法な行為がブラジルの地方寡占勢力と結びつくことで、なし崩し的に承認され、その後のバイオセキュリティ法の成立過程で憲法が次々に骨抜きになっていく様がはっきり見える。

2004 年2月、バイオセキュリティ法案が下院で承認された。この法案はバイオ食料国家技術委員会のみが遺伝子組み換え作物の実験農場での評価をするというものだが、この時点ではバイオ食料国家技術委員会だけでなく、関係省庁も審議会とは別途、評価を行うことになっており、モンサントの遺伝子組み換え大豆は 2005年末までの耕作と期限付きで使用が許された。

8ヶ月後、法案がさらに改訂される。今度はバイオ食料国家技術委員会は遺伝子組み換え作物利用承認の唯一の機関となり、関係省庁の権限は削除された。憲法に規定された環境許可に関してはまたしても無視された。

2005 年3月、ルラ大統領が署名し、成立したバイオセキュリティ法では、遺伝子組み換え作物を栽培したり、商業化したい企業は、バイオ食料国家技術委員会に請求を出せばよく、委員会が承認の評価をすればバイオ食料国家審議会が最終判断を行うというものとなり、最終的に憲法で規定された環境や人間の健康に与える影響調査の義務も不要とされてしまった。この法の下では保健省と環境省は以前持っていた遺伝子組み換え種の自由化に対してそれぞれの領域で調査を行い、影響を評価する権限も失われた。

ブラジル社会の反応とブラジルにおける遺伝子組み換え食品表示規定

2003年12月の調査によるとブラジル社会は92%が遺伝子組み換え食品の表示は必要と考え、74%は遺伝子組み換え食品を食べたくないと考え、73%が遺伝子組み換え作物の自由化に反対であるとなっており、遺伝子組み換え技術に対しては強い反対がある。

遺伝子組み換え問題は98年以来、ブラジル社会での大きな論争点であり、前述の通り、大統領選での大きな争点にもなった。遺伝子組み換え大豆のモノカルチャーの拡大は環境問題のみではなく、農地改革や地方の人権問題にも密接に関わるため、広範な社会運動団体やNGOが取り組んでいる。土地なし地方労働者(農園労働者)運動(MST)は遺伝子組み換え大豆問題を大きくとりあげ、非合法に植えられている遺伝子組み換え大豆畑の大豆を破壊する直接行動にも訴えている。

2004年3月26日、遺伝子組み換え食品の表示規定を定めた政令が有効になり、1%を超える遺伝子組み換えの原料を含む人あるいは家畜用の食品には遺伝子組み換えの表示をすることが義務づけられた。これは日本の表示基準よりもはるかに厳しいものだ[注2]。しかし、ブラジル政府はこの政令の完全な実施をする具体策を示していない。

広がる不安−大豆モノカルチャーの拡大、除草剤被害、そして狂豆病

遺伝子組み換え大豆の生産が本格的に始まり、おりしも、気候変動問題でバイオ燃料の採用を先進国が決めたため、バイオ燃料の原料としての大豆の需要が伸びている。 現在(2010/11)では75%程度が遺伝子組み換えとなっているとされるが、さまざまな問題が持ち上がっている。

大豆増産のための農地開拓の矛先は森林の破壊であったり、先住民族や小農民の土地からの追い出しであったり、さまざまだ。また、大規模な大豆農場は軽飛行機で除草剤を撒き、大型コンバインで収穫するため、広大な土地で生まれる雇用はわずかだ。モノカルチャーは自然と同時に社会を破壊する。追い出された先住民族と小農民は日雇い労働者として劣悪な労働条件で働くか、都市スラムへと流れ込むか、選択は限られてしまう。

さらに追い打ちをかけるのが、遺伝子組み換え大豆の導入と同時に増加したモンサントの猛毒除草剤(その起源はベトナム戦争時の枯れ葉剤だろう)の使用である。除草剤に汚染された水を飲む周辺住民からベトナム戦争の時にたくさん生み出された先天性欠損症などの健康被害が続発している(それはアルゼンチンのレポートと共通する症状だ[注3])。

また、遺伝子組み換え大豆に狂豆病と名付けられた、狂牛病と同様に治癒不可能な病気が広がっているという[注4]。

大豆生産農家からも非遺伝子組み換え大豆を求める動き

遺伝子組み換え大豆は遺伝子組み換え種子と除草剤を売る遺伝子組み換え企業には利益を与えるが農家にとっては除草剤の負担や種子のロイヤルティの支払いなど負荷が大きい。Roundup Ready大豆の除草剤が結局効果を発揮しないという大きな問題も発生している。しかも、消費者が求めるのは、非遺伝子組み換え大豆であり、遺伝子組み換え大豆を一度選択した農家も非遺伝子組み換え大豆を要望するようになってきている。

しかし、大豆種子の流通を独占するようになったモンサントは非遺伝子組み換え大豆の供給を制限し始めて、農家から不満が高まっている。

この声に押されるようにブラジル政府はSoja Livre(自由な大豆)計画を2010年に発表した[注5]。これは遺伝子組み換えでない大豆の栽培を後押しするもの。

ヨーロッパから遺伝子組み換えでない大豆をブラジルに求める市場の要求は実はかなり高い。決して、ブラジルは遺伝子組み換え大豆にそまったわけではなく、非遺伝子組み換えに活路を求める農家も存在している。

結語

昨年の大統領選挙と同時に行われた総選挙では大土地所有層、アグリビジネスの利益代表者は相次いで落選した。ブラジルの民主化はルラの着任時よりもさらに進んでいる。

この遺伝子組み換えの「開国」はブラジルの民主化の進みきらない過程の中で、モンサントと寡占大土地所有者の連携によってぎりぎりのところで生み出されたクーデタのようなものといえよう。実際に検証すれば、この過程は法的プロセスとしても整合性を持たず、抜け駆け的な動きの連続でしかない。

正当に真正面から国会審議で検討され、しかるべき公聴会などで市民の参加も得て議論されていれば、現在のような形で遺伝子組み換えが合法化されることはありえなかったであろう。

ルラ政権はブラジル政権として始めて反貧困に積極に取り組んだ政権であり、評価されるべき部分も少なくないが、モンサントと大土地所有者に対しての妥協は後世に残る汚点となったといわざるをえない。

そして、その結果、モンサントの開発した大量の猛毒グリフォサートがブラジルの大地にまかれ、環境を汚染し、社会的にも先住民族や小農民に大きな苦しみを生み出すことになってしまった。この解決はさらに長い時間を必要とするだろう。

日本は果たしてこの「開国」要求に対して、どう対応すべきだろうか?

日本の農林水産省は12月24日から遺伝子組み換え大豆栽培の承認を前提としたパブリックコメントを始めている。これに対して、アジア太平洋資料センター(PARC)が市民からコメントを集めるオンラインキャンペーンを開始している。多くの方にご注目をよびかけたい。

この問題などのフォローはTwitterでも書いています。

http://twitter.com/tomo_nada

【注・出典】

1.このまとめの多くは Greenpeace Brasil "O CONTEXTO POLÍTICO DOS TRANSGÊNICOS NO BRASIL Abril de 2005" (原文、ポルトガル語)によっている(pdfファイル)

http://www.greenpeace.org/raw/content/brasil/documentos/transgenicos/greenpeacebr_050430_transgenicos_documento_contexto_politico_port_v1.pdf

2.日本での遺伝子組み換え表示は、原材料欄に記載されている原料の3番目まで、少なくとも原材料の重量に占める割合が5%以上であることという緩いものだ。遺伝子組み換えを使っていても表示しなくていいケースが多いことに注意が必要

参考: あいまいな日本の遺伝子組み換え表示(なお、残念ながらグリーンピース・ジャパンの遺伝子組み換えに対する取り組みは中断されている)。

http://www.greenpeace.or.jp/campaign/gm/basic/label_html

3.「南米を襲う遺伝子組み換え大豆と枯れ葉剤」参照

http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201101060905584

4.狂豆病について:Brazil battles spread of "mad soy disease" (英語)

http://www.gmwatch.eu/latest-listing/1-news-items/12554-brazil-battles-spread-of-qmad-soy-diseaseq

5.ブラジル政府 Aprosoja, Abrange e Embrapa lançam Programa Soja Livre (ポルトガル語)

http://www.embrapa.gov.br/imprensa/noticias/2010/novembro/1a-semana/aprosoja-abrange-e-embrapa-lancam-programa-soja-livre/

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2011年1月11日

TPPをめぐる俗論を反証する──緊急出版『TPP反対の大義』より

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 昨年の10月以降「TPP推進」報道で一色に染まる中、反対の一石を投じた農文協の「主張」を転載許可を頂いた上で一部を掲載いたします。

*   *   *   *   *

 マスコミのTPP(環太平洋経済連携協定)報道は下火になっているが、政府は今年(2011年)11月に開かれるAPEC(アジア太平洋経済協力)の前に基本方針、行動計画を定めることにしており、TPP問題はむしろこれからが本番である。

 農文協ではこの度、『TPP反対の大義』を緊急出版した。「国益VS農業保護」「このままでは世界に乗り遅れる」といった論調をふりまく大マスコミの不見識を糺し、「反対の大義」を明らかにしたいとの考えからである。研究者から生協などの団体関係者、農家まで25名の方々が執筆、いずれも大義にあふれる主張を展開している。その中から、TPPをめぐる「わかりやすい」がゆえに世間を惑わす議論や論調のおかしさ、そのトリック性についてまとめてみた。

<横行する数字のトリック、おかしな議論への反証>

(1)前原「1.5%」発言のトリック

 今回のTPP論議では、数字を利用した「わかりやすさ」が横行し、それが一定の効果をあげているようである。その象徴が、前原誠司外相の「(GDP)1.5%を守るために98.5%を犠牲にして良いのか?」発言である。これに対し「TPP論議と農業・農山村--前原外相発言を批判する」で小田切徳美氏(明治大学教授)は、「この発言以降、堰を切ったように、テレビ、全国紙において、『農業保護が国益を損なっている』『TPPに参加しなければ二流国家に凋落する』という主旨の言説が流れており、今回のTPP論議において重要な役割を果たす発言となっている」としたうえで、この「1.5%」発言のおかしさを次のように述べている。

「第一に、第一次産業のGDPシェア1.5%という数字の取り上げ方自体が問題である。例えば、産業区分を細かくしていけば、産業界が誇る自動車を中心とした『輸送用機器』でも、そのシェアは2.7%である。それどころか、製造業全体でも実は19.9%と既に2割を切っている。そして、『犠牲』の対象と示唆されている輸出であるが、それもGDPの17.5%にすぎない。仮に数字で議論するのであれば、こうした全体の状況とともに取り上げられるべきであろう。

 第二に、農業の関連産業の広がりや農業の多面的機能に関する認識がない発言である。よく知られているように、食品産業全体(農漁業+食品工業+関連流通業+飲食店)のGDPシェアは9.6%であり、また農漁業を除く食品産業の就業者は775万人にも達する。TPP参加の影響は、その業種や立場により様々であろうが、何らかの形で及ぶことは意識されなくてはならない」

 そのうえで小田切氏は、「1.5%」発言が及ぼす精神的な影響に注目して議論を展開。こうした発言が「誇りの空洞化」を促進し、地域で動き出した新たな挑戦をおこなう人々の出端をくじいてしまうことの罪を糾弾している。

(2)白を黒といいくるめる「鎖国か開国か」論

 菅直人首相が、TPP参加に向け「関係国との協議開始」を表明した際に、「日本は今再び大きく国を開く決断をした」と発言したため、「鎖国か開国か」という「わかりやすい」話がマスコミを賑わすことになってしまった。これこそ、白を黒といいくるめるもので、鈴木宣弘氏(東京大学教授)・木下順子氏(コーネル大学客員研究員)による「真の国益とはなにか--TPPをめぐる国民的議論を深めるための13の論点」では、アメリカの手厚い農業保護(輸出補助金)にふれたうえで、以下のように述べている。

「日本はWTOルールを金科玉条のように守り、課された農業保護削減義務を世界で最もまじめに実行してきた『優等生』である。政府の価格支持政策をほとんど廃止したのは日本だけであり、農産物関税も平均で11.7%と低く、農業所得に占める財政負担の割合も15.6%で、欧州諸国が軒並み90%を超えているのに対してはるかに低い。それにもかかわらず、いまだに日本は最も過保護な農業保護国、しかも、価格支持政策に依存した遅れた農業保護国だと内外で批判され、国内世論の支持が得られないため、農業関連予算も減額され続けているのが現状である」

(3)吹っ飛んでしまった「自給率50%」

 食料自給率をめぐるおかしな議論状況も生まれている。

 TPP参加で自給率が40%から14%に激減するという農水省の試算に対し、TPP推進派は、関税がゼロになるまでの猶予期間のうちに構造改革で「強い農業」づくりを進めれば、自給率はそこまでは下がらないと反論している。こんな議論をしているうちに、政府目標の「自給率50%」が吹っ飛んでしまったのも、一種のごまかし、トリックである。谷口信和氏(東京大学教授)は「食料自給を放棄した例外国家への道を突き進むのか--TPPへの対応で問われるニッポンの国家の?かたち?」で、この点を鋭くついている。

「注意を要するのはTPPに対する賛成・反対の立場を超えて、日本がTPPに参加した場合、(1)自給率が現在よりも向上することはありえない、(2)自給率向上への強力な政策対応の程度に応じて低下が抑制されるが、自給率は低下して40%から14%の間のどこかに落ち着くだろうという見方については暗黙の合意が存在しているようにみえることである。だが、そこには、(1)そもそも40%という現在の水準をどのように理解すべきか、(2)これがさらに低下するという事態をどのようにみるか、という根本問題が存在している」

 こうして、谷口氏は現状の自給率40%、しかも、人口一億を超える大きな国で40%は世界広しといえども全くない超異常な事態であることを明らかにし、飼料イネなどを生かした「水田活用新時代」をひらくことの重要性、大義を浮きぼりにしている。

(4)地域発のまともな試算

 こうしたおかしな議論が横行するなかで、地域ではリアリティのある数字で問題に迫る動きが生まれている。本書では「TPP激震地」として北海道と沖縄の状況を紹介しているが、北海道では「地域別試算」という従来にない取り組みが進んでいることを、東山寛氏(北海道大学助教)が「道経連を含む『オール北海道』で反対する」で紹介している。

「地域別試算の取り組みは『TPP問題』を農業も含めた地域の産業・経済全体の問題として捉え返すためのリアリティを提供している。表示した2地域を見比べてみると、農業生産への影響では地域間の基幹作目の違いが鮮明に表われていると同時に、オホーツク地域では製糖・澱粉製造・乳製品工場、上川地域では精米業といったように、地域によって特色ある立地が進められてきた関連産業への影響もまた甚大であることが明らかである。『地域経済』で括られている商工業等への影響はさらに大きいものがある」

 北海道では、記事の見出しにもあるように、農業団体、経済団体・消費者団体が足並みをそろえて反対しており、道経連は、TPP推進の中央(経団連)と一線を画する構えを鮮明にしている。輸出大企業とアメリカにしか目をむけない「中央」発のおかしな議論をまともな議論にしていく力は地域・地方にある。

<「国益VS農業保護」論は、国益に反する>

 TPPをめぐって大マスコミは「国益VS農業保護」という「わかりやすい」構図を描き、それが農家も含め、少なくない影響をもたらしているが、この「国益」は「国益にあらず」として本書の多くの執筆者が問題を提起している。先に紹介した鈴木宣弘氏らは、「『農業保護をとるか、TPPの利益をとるか』ではなく、『一部の輸出産業の利益のために失う国益の大きさ』を考えなくてはならない」ことを実証的に示したうえで、「国益」の基本である「食料供給」についてページを割いて論じている。

「2007年から2008年にかけて起こった世界食料危機は、日本が現在の経済力を維持し続けることができたとしても、食料輸入の安定的保証を取り付けることがいかに難しいかを明らかにした。諸外国と広く協定関係を結べば、輸出規制の禁止も含めて優先的な食料供給を確保できるとの見解もあるが、仮に輸出禁止などの条項を加えることができたとしても、いざというときに自国民の食料をさておいて海外に供給してくれる国があるとは思えない。不測時においてはどの国も、まず自国民の食料確保や自国の市場安定を図るという、国家として最低限の責務を果たさなければならないからである」

「米国の都合に振り回された典型例がメキシコである。メキシコでは、NAFTA(北米自由貿易協定)で主食のトウモロコシ生産農家が潰れ、米国から安く買えばいいと思っていたら、こんどは価格暴騰で輸入も困難な事態に追い込まれてしまった」

<「貿易を拡大しないとやっていけない」論のまちがい>

 日本は貿易立国だから、貿易を拡大しなければやっていけないというのも、TPPやむなしの風潮を支える「わかりやすい」話である。しかし、本当にそうなのか。この点を本格的に論じているのが、関曠野氏(評論家・思想史家)の「世界貿易の崩壊と日本の未来」である。そこでは、「WTOやTPPの論理でもある『世界貿易』は常識的な意味での貿易とは別のもの」であり、それは、「米国が第二次大戦後に世界に強要した通商システム」であり、それが今、危機を深め、この延命のための「体制の危機の輸出」こそ、グローバリゼーションの本質だとしたうえで、その崩壊を予測している。だから、「TPPに参加しないと日本は国際的に取り残される」という風潮に対し、「何から取り残されるのか。タイタニックに乗り遅れるのは結構なことだ」ということになる。

<雇用は守られず、逆に破壊する>

 この雇用の問題について、「TPPと日本農業は両立しない--TPPは日本を失業社会にする労働問題でもある」と森島賢氏(立正大学名誉教授・元東京大学教授)が述べている。

「農家の若い人の兼業について、一つつけ加えたいことがある。それは、TPPに乗り遅れると、日本農業は生き残れるが、日本経済は沈没する。そうなれば、農村の若い人の兼業する機会がなくなり失業する、それでいいのか、という脅しについてである」

「TPPは、いうまでもなく、農産物貿易の自由化だけを目的にしている訳ではない。特に問題なのは、EUのように、労働者の、国境を越えた移動の自由化を重要な目的にすることである。とりあえずは、そのための突破口として介護などの特殊な労働者の移動を取り上げるだろうが、こうした政治哲学を容認するなら、やがて、普通の労働者の移動も認めることになる。そうなれば、自由貿易圏内の労賃は同じになる」

「この主張の行きつく先には、これまで先人たちが培ってきた失業率の低い、安定した、安全な日本の社会を根底から覆し、某国のように、わが身は自己責任で守る、という銃社会に変えようという主張が待っている」

 本書は、書名のように批判の書であるが、すべての書き手に共通するのは、「地域の再生」への、そして地域を基礎として、ずいぶんゆがんでしまった「この国のかたち」をまともにしていくことへの、熱い思いである。だから、地域に生き、地域をつくる農家にこそ読んでいただきたい。(農文協論説委員会)

※全文をご覧になる場合は「農文協の主張」から閲覧下さい。

【関連記事】
■TPP「開国」報道に"待った"の動き(NewsSpiral)
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_2.html

■TPP 前原外相「日米関係強化の一環」 (Newsi 2011.1.7)
http://news.tbs.co.jp/20110107/newseye/tbs_newseye4618487.html

■世界の食料価格が高騰 異常気象、新興国の需要拡大で過去最高に(産経新聞 2011.1.10)
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/110110/fnc1101102029001-n1.htm

2011年1月 9日

TPP「開国」報道に"待った"の動き

「平成の開国元年としたい」

菅首相は4日の年頭記者会見で、国の在り方の理念を3つ掲げ、その第1に「貿易の自由化の促進」をあげた。翌日5日に都内で開かれた新年祝賀パーティー(日本経団連・経済同友会・日本商工会議所主催)の挨拶でも「開国」を強調し、昨年10月以降議論が沸いたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)は2011年も引き続き主要テーマの1つになりそうだ。

年明けの新聞メディアには「開国」のフレーズでTPPの重要性を訴える社説が並んだ。

「世界の荒波にひるまぬニッポンを 大胆な開国で農業改革を急ごう」(読売新聞1月1日付社説
「経済開国と国内の改革。それはまさに明治期の人が挑み、なし遂げたものだ」日経新聞1月1日付社説)

早期参加を呼びかけるメディアとそれに応えようとする菅首相の流れがある一方で、"農水省vs経産省""1次産業vs製造業""開国か鎖国か"といった単純議論とは一線を画した多様なメディアの動きがある。

「増刷することになった。正直驚いている」(農文協・甲斐良治氏)

農文協から昨年末に出版された『TPP反対の大義』(農文協ブックレット)が発売後約2週間で7,000部増刷することになった。農家だけでなく政治・経済学者、哲学者、農学者、生協、漁協、自治体関係者など総勢26名を執筆者に迎えて編まれたブックレットで、TPPを商工業、消費者も含むすべての国民の問題として重層的に論じられている。農家、農協、生協などから10部〜250部の注文が入り、学習用に購入するケースもあるという。

また、ブログやTwitterなどネット上で注目を浴びているのは、12月18日放送の「西部邁ゼミナール─怪談TPP」に出演した中野剛志氏(京都大学大学院工学研究科助教/経済産業省)の発言だ。

中野氏は番組の中で「日本の関税率は低い」「製造業がTPPに参加して輸出を拡大することはできない」といった持論を展開する。「 日本は幕末明治の開国以降、"関税自主権"の回復の為に戦った。TPPは逆。関税自主権を失うためにやっている」と「開国」の中身の違いを指摘する。日本は1858年の日米修好通商条約で関税自主権を喪失、それによって失った経済的独立を取り戻すまでに約50年の歳月を要したという歴史的な教訓を思い起こさせる。

「国民の理解と協力がないと進めない。6月か、秋なのかは状況による。いつかは明言できない」(5日閣議後の会見より)
菅首相が「6月がメド」としているTPP交渉の参加判断時期について、旗振り役であったはずの大畠章宏経産相は慎重姿勢を見せている。所信表明からTPP推進論で染まっていた議論は、3ヶ月の間で少しずつ変化が起きつつある。

【TPP記事(NewsSpiral)】
中野剛志:TPPはトロイの木馬
山本謙治:TPP 「農業」を「たべもの」に置き換えて考えよう
山田正彦:TPPは農業だけの問題ではない!
舟山やすえ:米国基軸のTPPよりアジア中心の経済圏を
金子勝:歴史の中の「自由貿易」 錦の御旗を立ててみたけれど...
TPP報告書を公開!
続・世論調査の「TPP推進」は本当?

【関連記事】
怪談!TPP環太平洋連携協定 TPPって何?(TOKYO MX)
菅政権への「実行力」を問う声相次ぐ(FNNニュース)
経産相「6月か秋かは状況による」(日経新聞)

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2011年1月 7日

高野孟の炉辺閑談 ── 2011年新聞各紙の元旦号を読み解く!


前半《再生時間:12分30秒》

1月5日千葉県鴨川市の高野孟邸で、《THE JOURNAL》主宰・高野孟が2011年の新聞各社の年明け紙面を解説しました。


後半《再生時間:11分39秒》

2部構成になっており、前半は政治を中心に、そして後半は企業や人を取り扱った記事を選び紹介しています。高野のマインドマップ式原稿とともにどうぞお楽しみ下さい。

2011年も引き続き《THE JOURNAL》をよろしくお願いいたします。
(取材日:2011年1月5日)

<高野孟のマインドマップメモ>
takanomemo1.jpg

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シリーズ小沢一郎論(11) ── 小沢一郎の「自由」

日本一新の会 達増拓也
(岩手県知事)

 私が小沢一郎氏と政治行動を共にするようになったのは、外務省を辞めて衆議院議員選挙に出馬宣言(新進党公認)した、平成7(1995)年の12月だ。15年間一緒にやってきて、小沢イズムの肝(キモ)だと思うのは、「自由」である。

 小沢氏は、まず政治家、そして国民に、自立や自己責任を求める。それは、自由がなによりもかけがえがないと確信しているからである。誰かを選挙に擁立する時、あくまで本人の意志で出馬するのが大原則で、「頼まれたから立候補する」というのは認めない。選挙では、組織の論理や金の力で票を集めるのではなく、有権者一人一人に働きかけて、自分の意志で自発的に支持してもらうように運動する。選挙運動の担い手になるのは、自分の意志で応援する後援会員の皆さんである。

 小沢氏が選挙で団体を重視することを「組織選挙」と言って批判する人がいる。しかし、団体というものは、その成員の自由意志に基づいて動くはずである。その団体が、成員の意志を尊重しながら民主的な機関決定をして、政治家なり政党なりの応援を決めれば、それは自由の発露である。だから憲法は結社の自由を定めている。

 人は、特に日本では、人のせいにして行動することが多い。「つきあいで、しょうがない」とか「立場上、やるしかない」とか。これに対し、小沢イズムの大原則の一つは「人のせいにしない」だ。何かやるときは、自分の意志でやる。「自分がそうすると決めたからやる」でなければならない。組織選挙批判をする人は、組織は強制と服従の世界だという前提なのだろう。その人はそういう組織しか経験していないのかもしれないが、立憲主義国家における組織とは、自由と民主主義の世界でなければならない。ただ、確かに、日本の組織は非民主的で不自由な組織が多く、さらには非人道的な場合もあるという実態はあるかもしれない。

 小沢氏から学んだことと私が自分で経験したことから言えるのは、人間、自らの自由意志で行動する方が、大きな力が出せるし、いろいろと知恵も湧くという事である。「自由っていいぜ」と、経験から言える。今までできなかったことができるようになり、成長していく実感が得られる。いろんな問題も、解決することができる。「人のせいにしない」という事を守るだけで、人生はとても豊かになる。

 小沢イズムは、まず自分が自由に行動することから始まる。そして、他者の心に働きかけ、その人の自由意志に基づく協力を取り付ける。自分の自由意志と相手の自由意志を、シンクロさせるのである。こうして人と人、心と心をつなぎ、多数を形成し、自由意志に基づく公の決定をしていく。民主主義的な意志決定で、集団を守り、育てるのである。

 小沢イズムの核心は、人と人との直接的な触れ合いによる意志の合致である(ネット上のやりとりでもいいと思う。「通信」の本質は一対一の人間関係だ)。それを拡大して、政権を獲得し、国の舵取りをする。個々の政治家が「俺が俺が」のバラバラ状態で、世論調査の数字を見ながら右往左往するのとは、全然違う。民意は、世論調査の数字ではなく、人と人とのつながりの中で形成される共同意志であり、最も明確には、選挙における投票行動として示されるものである。

 共同意志としての民意に基づいて政治が運用される時、その政治は強く、創造的である。政治とは、人それぞれの自由をつないでいくことだと思う。小沢氏は、その達人、自由の達人である。今の日本では、人の自由を封じようとする勢力、人と人をバラバラにして、バラバラな個人個人を誘導して儲けようとする勢力、それらの勢力に便乗して得をしようとする勢力に未だ勢いがあるが、長くはないだろう。

 自由は強い。自由は勝つ。

★   ★   ★

◎日本一新の会事務局からのお願い

「日本一新運動」の原点として連載している論説は、「メルマガ・日本一新」の転載であり、日本一新の会が、週一で発行しています。配信を希望される方は http://www.nipponissin.com/regist/mail.cgi から、仮登録してください。折り返し案内メールが届きます。

 相変わらず不着メールがあります。メールボックスの管理や、アドレスのタイプミスもあるようですから、各自で対応をお願いいたします。

2011年1月 5日

平田伊都子:UN脱植民地化50周年アルジェ国際会議 ── 西サハラ民族自決権行使を目指して

  2010年12月13日午前8時30分、北アフリカ.アルジェリアの首都アルジェにあるシェラトン.ホテル。そのロビーへ突然、ドドドッと日本人約30名の集団がなだれ込んできた。その真ん中に前原誠司外務大臣の姿があった。「おはようございま〜す。日本人で〜す」と、筆者はおもわず大声をかけた。「ご苦労さん」と、大臣が答えた。

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↑ アルジェのシェラトン・ホテルで調印式にのぞむ前原誠司外務大臣とメデルシ・アルジェリア外務大臣

 ご一行さまは、そのまま特別室に向かう秘密階段を駆け上って行く。ナンでそんなに慌てているのかなと、首を傾げながら筆者も一緒に走った。走りながら前原外務大臣に封書を渡した。「何これ?」と前原大臣、「後で読んでください」と筆者。それは、「アフリカ最後の植民地.西サハラ紛争解決に向けて、日本で両当事者交渉の場を作る事を求める要望書」だった。要請者はSJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)である。

◆まずは西サハラ難民キャンプへ

 成田空港を出発して18時間後、アルジェリアの首都アルジェに12月10日午後7時に到着した。その日の夜11時にアルジェから約2000キロ離れた、アルジェリア最西端の軍事基地チンドゥーフに飛ぶ。さらにその軍事基地から約50キロ、西サハラ難民亡命政府が回してくれたトヨタ・ランドクルーザーに揺さぶられて暗闇のサハラ砂漠に入って行く。目的地の西サハラ難民キャンプに着いたのは、翌日の早朝5時だった。

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↑ 砂嵐で埋まってしまうのは車だけではない。厳しい砂漠気候にさらされて35年間耐えてきた西サハラ難民キャンプ

 仮眠を取る間もなく、7時には薄明るくなった西サハラ難民亡命政府の日干しレンガ小屋群を撮影する。8時に友人のハトリがゲスト用食堂に案内してくれる。壊れた長机と簡易椅子、メニューは砂混じりの硬いパンと援助物資のチーズ、相変わらず殺風景で貧しい朝食だ。 が、寒い冬の砂漠では暖かいミルクとコーヒーがなによりのご馳走になる。

 8時半には難民亡命政府が用意してくれたランドクルーザーで、4つある難民キャンプ群の内、一番ゲストハウスに近いスマラ難民キャンプに向かう。

  1998年には、このスマラ難民キャンプで「国連西サハラ住民投票」に向けての投票人認定作業が行われていた。投票箱も投票用紙も用意されプレスも難民もやっと「国連西サハラ住民投票」で西サハラ人自ら西サハラ独立かモロッコ帰属かを選べると、大いに盛り上がった。しかし、投票はなかった。なぜなら、西サハラを占領支配するモロッコが、国連の投票人認定基準ではモロッコに勝ち目がないと判断したからだ。かって1991年に国連が「西サハラ住民投票」を提案してモロッコ軍と西サハラ難民軍の両紛争当事者は停戦した。その後モロッコは投票に勝つためモロッコ占領地.西サハラにモロッコ人入植者を大量に送り込んだが、国連基準では彼ら入植者たちが投票人と認められなかったのだ。

 1990年代後半になって西サハラに石油、天然ガス、ウランなどの鉱物資源が確認され、ますます西サハラを手離せなくなったモロッコは2000年に入ると「国連西サハラ住民投票」を拒否し、「西サハラは先祖代々モロッコ王のもの」という主張をし続けている。

◆西サハラ難民亡命政府大統領

 12月11日正午に、西サハラ難民亡命政府大統領アブド・ル・アジズから会いたいとの連絡を受けた。撮影を中断して大統領舎に車を走らせる。

 応接室には、アメリカの西サハラ支援団体が詰めかけていた。オバマ政権になってから、アメリカ人が西サハラ難民キャンプに頻繁に出入りしている。

 以下、大統領とのインタヴューをQ(筆者)とA(大統領)の形で展開していく。

Q:大統領も12月13日と14日の「国連脱植民地化50周年会議」に出席されますか?

A:勿論、チンドゥーフとアルジェ間のフライトを予約したところだ。

Q:会議のテーマはなんですか?

A:勿論、アフリカ最後の植民地.西サハラだ。アフリカ最後の植民地が開放されるためには「国連西サハラ住民投票」以外にないということを再認識する会議だ。

Q:何故、西サハラ住民投票が速やかに行われないのですか?

A:勿論、モロッコが投票を拒否しているからだ。

 「勿論」と言う言葉は大統領の口癖だ。国連が提案し、占領国モロッコが呑み、国際社会が認めている「国連西サハラ住民投票」は当たり前の話であり早急に実施されるべきものだという思いと焦りが、この「勿論」という言葉に籠められている。

Q:日本にとって西サハラは地球の反対側にある遠い所なんですよ、、

A:勿論、承知している。しかし、西サハラには石油、天然ガス、ウランといった鉱物資源が眠っているんだ。それに日本人が大好きな魚が多数、悠悠と泳いでいる。現時点では国連が西サハラを未確定地域に指定していて漁業も採掘も禁じられているが、西サハラが独立したら、真っ先に、日本に声をかけるよ。

Q:「国連西サハラ住民投票」の可能性はあるのですか?

A:勿論、11月8日にモロッコ占領地.西サハラで、西サハラ被占領民による2万人の抗議キャンプをモロッコ治安部隊が大弾圧し活動家たちを虐殺したのを知っているだろう?あの事件以降、国際社会がモロッコ占領地.西サハラにおけるモロッコ占領当局の残虐で非人道的な行為を非難するようになった。そして西サハラ問題を解決するには「国連西サハラ住民投票」以外にないということを認識し始めたんだ。

◆西サハラ難民、35年間のテント生活

 大統領と「国連脱植民地化50周年会議」での再会を約して、12月初旬に放映を開始した西サハラ難民衛星テレビ局を訪ねる。「これからは西サハラ難民キャンプやモロッコ西サハラ占領地で何が起こっているのかを、世界中の人々に発信できる」と、ムルード・キャスターは目を輝かせる。「日本でも見れる?」という筆者の問いに、「今は無理だけど将来はOKだ」とキャスター。スタッフ一同の笑い声に送られてスタジオを出た。

 午後4時、冬の砂漠ではもう陽が傾き始めた。急いでスマラ・キャンプの小学校に駆け込む。二部制になっている小学校では、午後の部で国語のアラビア語を勉強していた。数学、理科、地理、歴史などのほかにスペイン語やフランス語や英語も学んでいる。

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↑ イスラム世界では珍しい男女共学の西サハラ難民キャンプ小学校

 中学校でフランス語と英語を教えている友人のムハンマド(27)の一家は父母と兄弟姉妹合わせて9人家族だ。西サハラ人の習慣で甘茶を立ててくれながら、ムハンマドは前より明るい表情で能弁に語り出した。「やっと独立の希望が見えてきた気がする。砂漠気候は厳しいし、食料は不足しているし、キャンプ内での仕事は殆ど無料奉仕に近い。しかし、独立という目標があれば耐えることができる」

 モハンマドはキャンプで生まれキャンプで育った。故郷西サハラをまったく知らない。

 モハンマドの両親は35年前にモロッコ軍の銃で故郷西サハラを追われ、以来、他の西サハラ難民と同様にこの難民キャンプで暮らしている。

 日没の祈りを告げる声が礼拝所から流れてくると、難民たちは夫々の場所で祈り始める。祈りが終わると友人や親類のテントを訪ね、甘茶をたてながら祖国や将来の話しに花を咲かせる。「今度くるのは国連投票の時だね」と、筆者は約束してキャンプを後にした。

◆国連脱植民地化50周年アルジェ国際会議

 2010年12月13日午前11時、「国連脱植民地化50周年アルジェ国際会議」は1時間遅れで始まった。

 ひな壇には今会議の議長オバサンジョ元ナイジェリア大統領、ゼリホウン国連事務総長代理、ムーサー・アラブ連盟事務局長、ジャン・ピン・アフリカ連合議長、メッサール・マグレブ・アフリカ・アルジェリア担当大臣などが並ぶ。それに対じした半円形の来賓席には、ムベキ元南アフリカ大統領、カウンダ元ジンバブエ大統領、ベンベラ初代アルジェリア大統領などアフリカ諸国独立の志士たちが坐る。そして、その真ん中に西サハラ難民亡命政府大統領アブド・ル・アジズがいた。

 しかし、その日の朝に会議への参加をお願いした前原誠司外務大臣の姿はなかった。が、前原外務大臣は午後にブーテフリカ・アルジェリア大統領と3時間にわたって会食したという。ブーテフリカ現大統領は1975年に西サハラ難民の面倒をみた外務大臣だった。アフリカ最後の植民地解放に向けての大統領の熱意が前原外務大臣にも伝わったと思う。

 この日の午後には、ワークショップNO1で国連決議1514「植民地独立付与宣言」の意義と適用が検討され、ワークショップNO2で「国連脱植民地化運動」を巡るプレスの役割が討議された。ワークショップNO2で、アルジェリア政府は招待したプレス関係者に発言を強制した。筆者も飛行機代や宿泊費を支払ってもらった手前、スライドショーを見せながら日本での西サハラ問題を巡る動きを報告する。そして、「日本ではほとんどの人が知らないアフリカ最後の植民地.西サハラ解放運動のことを伝え続ける。そのためにはどんな手段が一番有効なのかを模索していく」と、結んだ。

◆アルジェ宣言そして国連西サハラ住民投票

 1960年12月14日、国連総会は植民地独立付与宣言を採択した。その要旨を次に記す。

「非自治地域、またいまだに独立を達成していないすべての地域において、これらの住民が自由に表明する意思と希望に従い、人種、信条あるいは皮膚の色による差別なく完全な独立と自由を享受できるようにするため、一切の条件あるいは留保なしに、すべての権限を彼らに委譲するための手段が直ちに講じられねばならない」

 50年後のアルジェ宣言では、植民地独立付与宣言に基づく脱植民地化を鼓舞している。

 「被植民地の住民が独立を目指す、脱植民地運動を支援していこう。1514国連決議の枠内で、民族自決権の行使を求める被占領民に連帯の意を表そう。プレスや映像制作者たちは植民地支配下にある人々の姿をありのままに伝えていこう、、」と、謳っている。

 この会議を受けてロス国連西サハラ担当事務総長特使は、12月17、18,19日とニューヨークのマンハセットで西サハラとモロッコ両当事者にアルジェリアとモーリタニアを加えた非公式会談を催した。が、「国連西サハラ住民投票」早期実現を迫る西サハラと、西サハラの領有権を主張するモロッコとの溝はまったく埋まらなかった。

「アメリカは西サハラ紛争に注視し続け、1514決議に基づく国連の仲介で、西サハラ民族が民族自決権を行使することを支持する」と、クローニー米外務次官が表明した。

 モロッコと友好関係にある日本は今こそモロッコに働きかけて国際社会の土俵に帰ってくるよう説得すべきだ。そしてアフリカ最後の植民地を開放し、アフリカ諸国の信頼を勝ち取り、国連安保理常任理事国入りのアフリカ53支持票を得て、さらなる国際貢献への足がかりにして欲しい。前原誠司外務大臣殿、よろしくお願いします。

写真構成:川名生十

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

2011年1月 4日

《有料会員限定》田中良紹:メディアの読み方

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→ http://www.nicovideo.jp/watch/1294103475 ←

 ジャーナリストの田中良紹さんが、長年の記者生活と歴史に関する豊富な知識から分析した「永田町のカラクリ」と「これからの世界と日本」について参加者と語り合う『居酒屋田中塾』。

 今回のテーマは「メディアの読み方」です。

 メディアから流れる情報を読むとき、どのような視点を持って分析すべきか。記者時代の経験談を交えながら、田中良紹さんがメディアの表とウラから政局の大胆分析まで、縦横無尽に語ります。

 現在、下記URLで公開中です。有料会員に登録されていない方は、この機会にぜひご登録下さい!

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■田中良紹:政治の読み方(3月31日まで配信)
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2011年1月 3日

山下惣一:「自給率」より「地給率」──私がアジアの農村で得た教訓

国の食料自給率は、需要に対して国内生産で賄うことのできる割合のことで(自給率=国内生産量÷国内仕向量×100)で算出される。数多くの食材を品目別に表示するのは不都合なため価値を統一して計算する。一般に使用されているのが「カロリーベース」と「金額ベース」である。

40%と公表されているのはカロリーベースの自給率だ。ところがこれも必ずしも実態を示すとはいい難い面がある。日本の農業は穀物(主に飼料主体)を輸入して単価の高い果実や野菜類に特化しているため、サクランボ、イチゴ、ミニトマト等をいくら生産しても自給率には寄与しない。そのために日本農業の実力を過小評価しているとの批判から金額ベースの自給率も同時に示されることになった。これは(国内消費仕向額÷食料の国内生産額)で算出され平成20年度は65%となっている。

しかし、これも誤解を招きやすい。カロリーベースで40%なのに金額ベースでは65%というのはいかにも日本の消費者が不当に高いものを買わされている印象を与えるからだ。ひとくちに自給率といっても一筋縄ではいかない。が、ともかくカロリーベースでは昭和40年の73%から50年には54%へ、そして現在40%。国民の6割が外国の食料で生きていることになる。生産農家からいえばその分職場を失った勘定である。

十数年前、アイガモ交流のメンバーにくっついてベトナムへ行った。当時のベトナムの食料自給率は70%と公表されていた。ところが南のメコンデルタを除けばきわめて零細で1農家あたり20アール、30アールの規模なのだ。米の2期作でかろうじて食いつないでいる状態だった。それでも国民の7割が農民なら自給率は70%になる。

次に大野和興さんに誘われて北朝鮮へ行った。「ちょっと国に残ってください」といわれるのが怖くて写真もメモも一切とらなかった。少し馴れてきたころ偉い人との会見があったので思い切って「共和国の食料自給率はいかほどですか?」と質問してみた。相手は笑って答えなかったがそばにいた通訳兼工作員が「100%に決まっているじゃありませんか」という。「へぇーそうなんですか」と言ったら「そうですよ。外国からは一切入ってきていないんだからすべて国内産ですよ」「なるほど。100%では餓死者が出るんですね」「そうです」

食料自給率が高いことがかならずしも国民の豊かさや幸せを意味するものでないことは事実だ。

日本では国内農産物の値段が高く、その分消費者の家計負担が重く、食品加工業などの国際競争力の桎梏になっている等の経済界からの批判が強く、農政は「規模拡大」「コスト低減」「国際競争力の強化」の路線を推進してきた。周知のように日本は国土の7割近くが山で耕地は13%しかない。いかに無謀な政策であるかは小学生にもわかる道理だ。農業、農村の現状はその結果である。

たとえば1ヘクタールの水田を耕作する農家が100戸あったものを1戸で100ヘクタール耕作したところで自給率が高まるわけがない。99戸の農家が駆逐されるだけだ。

また、「規模拡大」「コスト低減」でもっとも成果をあげたのは採卵鶏をはじめとする畜産でこれらは農業から独立した「畜産業」となっている。飼料の自給率は24%である。自給率が高いのは酪農だが豚、ニワトリなどはほとんど輸入飼料に頼っており、豚肉の場合国内生産量は50%を維持しているが、国内飼料による生産はわずか5%だ。つまり、食料自給率を向上させようと国内産の豚肉や卵を食べるほど飼料の輸入が増えて逆に自給率が低下するという構造になっている。さらに集中化、大規模化が口蹄疫や鳥インフルエンザの被害を集中させ、対策としては外界との遮断、抗生物質等の多様が必須となり、生産する側も消費する側も文字通り「命がけ」である。

私は以前から「自給率」ではなく「地給率」を提唱してきた。それぞれの地域で足元の地給率を高める方向で農業は考え直すべきだと主張してきた。これはアジアの農村を訪ねる旅で得た教訓でもある。アジアの村々を訪ねての農民同士の交流の中で、彼等がどのような農業を営み地域社会を作れば生き延びられるのか、それを考えることは、とりも直さず日本の百姓の来し方、行く末を考えることでもあったのだ。
アジアの先頭に立って近代化を推進してきたこの国の農政はもはや破局であり、それがひとり農業だけの問題にとどまらないことは誰もが感じていることだろう。やがて市民皆農の時代がくる。

(「アジア農民交流センター」会報(2010年10月号)より本人の許可を得て転載しました)

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DSC_9965.jpgのサムネール画像【プロフィール】 山下惣一(やました・そういち)
1936年佐賀県唐津市生まれ。
農民作家。中学卒業後、家業の農業を継ぐ。
生活者大学校」教頭、「農民連合九州」共同代表、「アジア農民交流センター」共同代表。1969年「海鳴り」で第13回農民文学賞、1979年「減反神社 」(1981年)で第7回地上文学賞を受賞。著書に「惣一じいちゃんの知っているかい?農業のこと」「直売所だより」「安ければ、それでいいのか!?」など。

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『知らなきゃヤバイ!民主党─新経済戦略の光と影』
2009年11月、日刊工業新聞社

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