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金平茂紀:WikiLeaksをめぐる動きは現代版のペンタゴン文書事件だ。

ぼうかいへんし
茫界偏視 Vol.001

 みなさん、こんにちは。NYから「チェンジング・アメリカ」を発信していた金平です。今は東京を拠点に仕事をしています。9月に日本に戻ってからすぐさまアフガニスタンに出かけ、その後は日本にほぼ居続けているのですが、戻ってみたら、いやはや日本は何から何まですっかり壊れていました。報道を仕事とする者にとっては、このような時期こそ真価が問われるのですが、日本のマスメディア自身もさきほど言った「壊れている」ものの対象なので、今、求められているのは、解体と創造を同時にやれるしなやかでしたたかな想像力と体力なのでしょう。それで、このサイトでブログを再開します。タイトルは「茫界偏視」。これは大好きな小説家・藤枝静男の晩年の随筆集の題名です。今度の引っ越し作業で家の蔵書の整理をしていたら、この本の背表紙に遭遇して懐かしさがこみ上げてきました。この随筆集所収の、大原美術館に妻の遺骨を葬ろうとして藤枝が体験した実話をつづったエッセイがこころに沁みたことを、何故か急に思い出して、このタイトルを使おうと思ったのです。この作品の心象風景が、僕が今の日本や世界を取り巻く状況を考えたときになぜか重なってくるのです。さて、前置きはこのくらいにして(文体を変えるぞ)、

 WikiLeaks(以下WLと記す)である。この内部告発サイトについては、今年の4月にイラク・バグダッドでの米軍アパッチヘリからの民間人に対する無差別攻撃ビデオ映像が暴露された時から、僕はNYからその意義を評価する論評を発してきた。それから随分たって「チェンジング・アメリカ」でも今年7月27日に記事をアップしたが、今回の25万点にのぼる外交公電が暴露されるや、各国政府はパニックに陥っている。各メディアの論調も非常に微妙だ。WLの創設者ジュリアン・アサンジに対してはまるでテロリスト扱いしているメディアもある。笑ってしまうのは、アメリカ国務省が、職員に対してWLへのアクセスを禁じる通達を大真面目に出したことだ。自宅に戻ってからの個人のPCからのWLへのアクセスまでも禁じているとか。さらにさらに、僕が今年8月まで、客員研究員として在籍していたコロンビア大学のSIPA(国際関係・公共政策大学院)でも、大学当局から次のようなメールが在籍全学生に送られてきた。

The documents released during the past few months through Wikileaks are still considered classified documents. [The State Department] recommends that you DO NOT post links to these documents nor make comments on social media sites such as Facebook or through Twitter. Engaging in these activities would call into question your ability to deal with confidential information, which is part of most positions with the federal government. 

 要するに、学生に対してまでもWLにアクセスするな、ツイッターやフェイスブックでもコメントするな、そんなことをしたら国務省から睨まれますよ、と脅しているのだ。ボストン大学のロースクールでも同様の文書が全在校生に送付された。何という漫画的な光景か。ジョージ・オーウェルが生きていたら何と言っただろう。僕はこれまで国立公文書館所蔵の多くの外交公電を読んできたが、なかには何でこんなものが秘密扱いなんだと首を傾げたくなるようなものがたくさんある。権力者・権力機関というものは何から何まで秘密にしたがるものなのだ。例えば、1960年代にデビューまもない小説家の大江健三郎に米大使館員(おそらくインテリジェンス関係者だろう)が面談して当時の政治情勢などについて交わした会話が丁寧に記された外交公電を読んだことがある。そんなものがなぜ「取り扱い注意」なのか、今では理解に苦しむのだが、冷戦下のスパイごっこの世界は、まさに不条理劇を地でいくものとの印象をもったものだ。確実に言えることのひとつは、国民にウソをついている度合いが大きい政府ほど、秘密の暴露に脅える度合いが大きい、ということだ。1971年に米国防総省のベトナム戦争に関する機密文書を暴露したダニエル・エルズバーグ博士は、WLの活動を高く評価している。独立系のジャーナリスト、エイミー・グッドマンは、WLをペンタゴン文書事件の現代版だと言い切る。さて、日本のメディアは今後どのような報じ方をしていくのか。自分自身にも突きつけられた問題である。さまざまな評価を見極めるプロの目が必要になる。今後、東京の米国大使館発の公電5697点の内容が明らかになれば、日米関係の生々しい実相が明らかになる可能性がある。アメリカが鳩山政権をどう見ていてどうしたのか、菅政権をどう評価しているのか、普天間基地をめぐって何が行われていたのか、小沢一郎についてどう評価していたのか、またアメリカ大使館の「協力者」たちの顔触れがどのような人たちなのか等など。冷静に情報を見極めよう。すべてが始まる前に、国家安全保障とか、プライバシーとかを言いだしているあれらのジャーナリストたちの言動も僕らは注視しよう。


【編集部追記】
金平茂紀さんの新ブログ「茫界偏視」は、ブログページが完成するまでは NewsSpiral 欄で掲載します。ブログページ完成後、すべての記事とコメントを新ブログに移動します。

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 2枚舌、威圧と屈服、相手国への謀略、クーデターを仕掛けるなどの米国外交のこの数十年のあり方が、それに従事している公務員の倫理観に耐えないほどになってきているということでしょう。そんなことをするなら、つかまってでもリークする方がましだと思うようになっているということだと思います。また、それが、人間本来の実存的な欲求でもあり、逆に、米国のあり方が、人間の基本的な倫理観、実存的な欲求をへし曲げる存在になっていることの証でもあると思います。それに従い、犯罪行為を続けるなら、それを告発していくらでもどうにでもしてくれと一部の公務員が思うようになってきているのではないでしょうか。
 その米国の軍事帝国外交への抵抗を強烈に行なっていたのが、これまでは、イスラム過激派の自爆テロだったわけですが、それがいまや、米軍内部からテロ的な情報リークとなってきているといえます。日本でも同様な動きがあると思います。
 公務員、軍人であれば、ある程度汚いことであっても、機密は機密として守るでしょうし、これまでは、必死に悪いこと、馬鹿なことをしていると良心の呵責に耐えながら、守ってきたわけです。しかし、アメリカの蓄積してきた行状は、その公務員が規律を守ることを受け入れるための、一定限度を超えたのだと思います。自国の公務員に、危険を侵してまでリークをされるようなことを国家がしていないのか、真摯に各国は自問すべきなのですが、それに対してむしろ、自爆テロ犯と同じような対応を、今のところしているように見えます。それでは、流れは変わらず、いくらでも主催者や表現形を変えて、この告発行為は現れるのではないかと思います。
 

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