青西靖夫:気候変動 最後までカンクンの合意文書に抵抗したボリビア──その主張を読み解く
メキシコのカンクンで開催されていた国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP16)は、結論を先送りする「カンクン合意」をもって12月11日に閉幕しました。しかしこの合意に対してボリビアは最後まで反対する一方、ALBA参加国であるベネズエラ、キューバ、エクアドルもボリビアの支持にはつかず、最終的にボリビア政府が唯一反対する中で、合意文書が全会一致という原則を放棄して、採択されるものとなりました。日本においては、ごく一部のメディアが「ボリビアが最後まで合意案に反対した」と伝えるのみにとどまり、ボリビア政府の主張の内容は全く報道されていません。
ボリビアは なぜ反対していたのか、何を要求していたのか、そういう声が全く伝えられないままに、「経済界の安堵の声」だけが伝えられているのが、日本の報道かと思います。ボリビアの主張にっては[1]を参照してください。
国内のこの状況では、「ボリビアの主張もまっとうじゃないか」、「ボリビアの主張にも一理あるじゃないか」という世論は生まれることはできず、ひいては政策に反映させることもできません。このようなお互いの「声が届かない」ところで行われている国際会議に対して、真っ向から取り組んだのがボリビア政府だったと思います。ボリビア多民族国は、12月11日に声明文を発表して、次のように述べています。[2]
「ボリビアは、カンクンに未来のための希望をもたらすしっかりとした提案を携えてきました。この提案は2010年4月にコチャバンバで開催された歴史的な世界民衆会議に参加した3万5 千人の合意で生み出されたものです。この提案は気候変動に対する正当な解決策を探すものであり、またその根本的な原因に取り組んだものなのです。コペンハーゲン以来、この提案は締約国による交渉文書に取り入れられてきました。しかしカンクンの文書においてこれらの声は、体系的に排除されたのです。民衆を代表してきている私たちは、その信念を、私たちの信念を放棄することはできません。気候的な正義を獲得するまで、私たちは世界で影響を受けているコミュニティの人々とともに戦い続けます。」
「ボリビアはこの交渉に、誠実に、気候のための有効な合意を得るという希望をもって参加していました。民衆の生命に関わるのでなければ、多くの点で譲歩もするつもりでした。しかし、残念なことに世界中の豊かな国々が求めていたのは、民衆の生命に関わる点での譲歩だったのです。いくつもの国が私たちを孤立させようとしました。しかし私たちは、人類と母なる大地の未来を守るために、真摯で有効な取り組みを求める世界の人々と社会運動を代表してここに来ているのであり、私たちを導く支援を感じているのです。歴史がカンクンで起きたことを裁くこととなるでしょう。」
私たち自身が、世界の各地で生きている人々の声を聞き、考え、判断をし、それが私たちの代表として派遣されているはずの政府代表団にも届き、議論が行われる。そういうプロセスをすべて欠いたままに、気候変動に関する議論が行われているのではないでしょうか。現在の先進国での生活を享受している私たちは、これだけのややこしい、大変な取り組みを引き受ける責任を負っているのです。
今回のボリビア政府の抵抗は、私たちにも無関係ではない、大きな問いかけなのです。
また、最終的にボリビア政府が唯一反対する中で、合意文書が全会一致という原則を放棄して、採択されるものとなりました。こうした形での締約国会議の議事進行が、今後どのような問題を引き起こすことになるかは注視していく必要があります。
【関連記事】
[1]ボリビア政府の言及するコチャバンバ会議の合意文書などはカテゴリー「気候変動から」
http://cade.cocolog-nifty.com/ao/cat22466627/index.html
[2]カンクン合意に関するボリビア政府の声明
■Bolivia Decries Adoption of Copenhagen Accord II Without Consensus
http://pwccc.wordpress.com/2010/12/11/bolivia-decries-adoption-of-copenhagen-accord-ii-without-consensus/
■Bolivia denuncia la adopción del Acuerdo de Copenhage II sin consenso
http://cmpcc.org/2010/12/11/bolivia-condena-la-adopcion-del-acuerdo-de-copenhage-ii/
(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)
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2010年12月21日 15:01