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小林恭子:ウィキリークス ニューヨーク・タイムズへの疑いの眼──ジグソー・パズルの一片

 告発サイト「ウィキリークス」の米外交公電の暴露(11月28日以降)を巡り、暴露の前に情報を渡されていたニューヨーク・タイムズ(米・NYT)、ガーディアン(英)、ルモンド(仏)、エルパイス(スペイン)、シュピーゲル(独)の5つの媒体による報道の中で、私が比較できたNYTとガーディアンの報道を見て、あれ?と思ったことを前回、書いた。

 やや情報を整理すると、外交公電のどれをどのように報道するかは、各媒体の編集部が決め、ウィキリークスとの約束は報道日の取り決めのみであったという(ガーディアン編集長記事29日付紙版、「Editor's note(編集長のノート)」)。

 これによると、ガーディアンを含めた5媒体は、外交文書のリークを報道することを事前に米政府に伝えていたため、どんなトピックがでるかのおおよそを米政府は予期できていた。米政府はまた、5媒体側に対し、特定の公電あるいはトピックに関して懸念を表明したという。

 報道直前までの細かな編集判断や米政府との行き来に関して、ガーディアンよりは明確に書いているのがNYTである。(前回紹介した「読者へのお知らせ」(NYT))

 ガーディアンの先の「編集長のノート」から読み取れるのは(繰り返しになるが)、米政府には「外交公電のリーク報道が出ること」が通知され、「米政府側は特定の項目に関して懸念を表明した」こと。ガーディアン側あるいは他の媒体が、米政府の特定の懸念を考慮に入れて、当初の編集判断を変えたのかどうかは、明確になっていない(その一方で、NYTは政府のアドバイスを受け入れて、変えたものがある、とはっきりと書いている)。

 ガーディアンは「名誉毀損で訴えられないように」、あるいは特定の項目の影響を考慮して、独自の判断で出さなかった、あるいはぼかした情報があったことを説明している。

 さて、「ニュース・スパイラル」さんに、日刊ベリタ掲載分から転載していただき、いくつかコメントをいただいた。(2010.12.1本誌掲載「ウィキリークスによる外交公電の暴露」)

 そのひとつは、

─WLは公表前にNYTには情報を流していません(投稿者:海水系日系地球人|2010年12月1日 10:36)

 ガーディアンを通じてNYTに情報が渡った...という話は私もどっかで(ガーディアンで?)読んだ記憶があるのだが、今、どの記事だったか見つからないので(!)、とりあえず、見つかってからまた考えようと思う。ただ、ガーディアンから渡ったにせよ、公表(28日)のだいぶ前に情報を得ていたということは、NYTやガーディアンの記事に書かれているのだがー?もし、ウィキリークス(WL)とニューヨークタイムズの関係が、何らかの意味でこじれている・こじれていたとすれば、これはこれで興味深い話である。

 もう1つのコメントは、情報リークの人物とされる、マニング兵の表記の英訳である。

─low-levelと云うのは「階級が低い」という意味で「無能」という意味ではない。 それにa security loophole云々は、彼が海外(敵?)の万全のセキュリティ・システムで防御されたコンピュータに侵入する技術を持っている情報分析の専門家だということです。 つまり現状に失望した若い有能なコンピュータ技術者だと云っているのでNYTが彼を「賤しめている」とは思えません。易しい英文なので英語の読解力の問題ではないでしょう。NYTの記事は必ずしも公平とは言い難いですが、小林さんの解説もNYTへの偏見をもって書かれているのでは? (投稿者:今井邦夫|2010年12月1日 15:03)

 「low-levelと云うのは『階級が低い』という意味」----ああ、そうか!と思った。そういう意味もあったな、と。軍隊の話である。

 ところが、たとえ「階級が低い」と訳・解釈したとしても、実のところ、私のNYTに関するマニング兵の紹介(この「読者へのお知らせ」の記事の中、という意味)が不当である印象は消えないのである。

「失望した(がっかりした)、階級が低い、セキュリティーの抜け穴に(不当に)侵入した」アナリストー。

a disenchanted, low-level Army intelligence analyst who exploited a security loophole

 一つ一つが、一定の(ネガティブな)価値判断をもって発せられている。個々の情報は事実といえば事実。中立とさえいえなくもない。しかし、問題は、「文脈に必然性がない」ことや、「当局側にたった視点」であること。これが気になるのです。この気になる感じ+胸がドキンとする感じは、もしこの兵士が自分の弟だったらどうか?と考えると、身近になるかもしれない。

 そこで、ガーディアンを見てみる。デービッド・リー記者の「いかに25万点の文書がリークされたか」という記事である。

■How 250,000 US embassy cables were leaked(Guardian 2010.11.28)
http://www.guardian.co.uk/world/2010/nov/28/how-us-embassy-cables-leaked

 ここでは、いかにマニング兵がたやすく外交情報を取得できたかが書かれている(7段落目から10段落目)。「例えばレディー・ガガと書かれたCD(書き込み可能)を手にし、音楽を消して、機密情報をこれに書き込んでいく」ーといったことが簡単にできたとするマニング兵のコメントが紹介されている。

 この情報自体はすでにほかで報道済みの話ではあるが、記者の立ち位置は「セキュリティーが甘い米政府の情報体制」への批判のまなざしである。

 マニング兵は、「情報は自由であるべきだ。公的空間に所属するべきだ」と述べ、「自由な情報の活動家たち」であるウィキリークスに情報を送ったという。

 同兵のコメントはこれまでにも何度も他の媒体が報道している。しかし、ここであえて入れたのは、リー記者はあるいはガーディアンは、マニング兵を情報公開の推進者として、つまりは一種のヒーローとして(勇気ある行為をした人物)、ポジティブに見ていることを示す。

 ...ということを読んで、私はNYTとガーディアンの立ち位置の違いを感じた。本当は、ここまで詳しく書くほどのことでもないのだろうが、あえて書いてみた。つまるところ、「ぴんときた」という話なのだが。

 また、前にも書いたが、この立ち位置の違い(と私が受け止めたもの)は、米国のメディアと英国のメディアの違いから来るかもしれない。つまり、米国メディアにとっては、米国の外交公電が及ぼすリスクを英国メディアよりは真剣に考えざるを得ない部分がある「かも」しれない。

 「NYTへの偏見をもって書かれているのでは?」という点だが、これはコメントを書かれた方だけではなく、私の前回のエントリーを読まれた方で、「ガーディアンに好意的過ぎないか?」と思われた方は結構一杯いらっしゃるかもしれない。

 私の結論は:確かに、今のところ、ウィキリークスとガーディアンの報道に関して、「ガーディアンはすごい!」と思っている。好意的過ぎるかもしれない。中立であろうとは思っていない。ただ、ウィキリークス及びウィキリークス的動き(告発サイト、流出)には問題もたくさんあると思う。公務員機密法はどうなるのか、情報の信憑性をどうやって確認するのか、そのほかにもあるだろう。 今は、「すごいなあ」と思うばかりだが、他の問題も考えるときだと思っている。「問題がある」と書くと、それ自体でネガティブな意味に取られそうだが(?)、そうではなく、「面白い課題がたくさん出てきたぞ」、という意味である。

 それと、NYTへの偏見だが、少なくとも「大いなる疑問」はある。大いなる疑いの眼(まなこ)がある。ただ、それは、いわばジグソー・パズルの一片である。あれ?と思ったら、これをメモり、自分の心に留めておく。そしてそのメモを自分なりに証拠をあげてブログなどに書いている。

 パズルの一片が「黒」であったとしても、全体が黒とは限らない。それでも、私が今持っている一片は「黒」なのである。テロの警告でいえば(!?)、黄色--注意、である。とりあえずはこの一片を宙に浮かせている状態である。

【関連記事】
■ウィキリークスによる外交公電の暴露──米ニューヨーク・タイムズは事前に政府に相談していた
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/12/post_705.html

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

小林さん、こんにちは(いま12月2日pm1:45頃です)

このデジタル化、インターネットの時代、秘密文書は存在しないといっていいのではないか?

先週のビデオニュースでもやっていたが日本においても「警察の秘密文書」をウィニーの投稿したということをやっていた。
まさしく内部情報流出の時代というべきでしょう。
僕は「尖閣ビデオ流出」については、法律的にはともかく、内規的にきびしく罰しないといけないと思った。
少なくても、自分の組織の機密(とされたいる)情報を、個人的な感情で公開するということが許されるなら、なんでも気に入らないことがあったら、投稿すればいいという世の中になってしまうと思う。
それでも、言いたいなら、職を辞する覚悟をもたなければならない。
ウィキリークスの場合もマスメデイアに相談するといっているが、その際に金銭的な取引はないのかも含めて考えてみる必要がありそうだ。
ほんとうに義憤に駆られてリークしようとする人が何人いるのか。
そんなことも含めて考えたい問題だと思う。

”新世界秩序にNo!と言おう”の著者であるゲイリー・アレンによれば、ニューヨークタイムズの経営理事会と編集委員会はCFR(外交問題評議会)のメンバーで占められているようです。CFRは米国の「既成の権力組織」と言われる団体の中心をなす集まりなのですから、小林さんが「大いなる疑問」をニューヨークタイムズに抱かれるのはむしろ当然のことだと思います。

9.11事件の真相は、ネット情報からも政府の説明とは異なり「米国とイスラエルによって緻密に遂行された自作自演のテロ擬装工作であった」ことは明らかなのですが、大手メディアはあくまでも米国政府の見解に追従するだけです。真相に迫ろうとした人の何人かは消されてもいます。

このように、世界はほんの一握りの"賢い人間たち”の貪欲な欲望によって勝手気ままに支配されつつあるというのが現実です。

ですから、そのような国家レベルの犯罪で多くの無実な人たちが大いに苦しめられている実態を考慮するときに、ジュリアン・アサンジ氏の正義感に裏付けられた、勇気ある行動は高く評価したいと思っています。

(小林さんが読んでくれていれば公表しなくてもかまいません。)
マニング兵を記述した英文の議論で言いたかった事はメディアの責任です。あの文は規範とすべき程良い文章です。
a disenchantedでこの兵の心情、(リークした動機)
low-levelで立場、
その後は職種と具体的仕事の内容、
人物紹介として無駄な部分は一つもありません。exploitも決してこの場合ネガティブな意味では使われていません。 人や組織を非難すれば傷つく人が出てきます。マスコミがすればその影響はとても大きくなります。それだけに報道には責任が伴います。NYTの記事を故意に捻じ曲げた解釈でNYTの記事の書き方が変だと言っても説得力がないのではないでしょうか。NYTに疑惑を持つのは良いが自分が非難している事を自ら進んでしたのでは何にもならない。
ご健闘をお祈りします。

<情報統制の終わりの始まり>
我々は、とてつもない時代に生きている。ウイキリークス経由でYouTubeから配信されたアメリカ兵のゲーム感覚で民間人を殺す映像は、頭で考えていたよりもリアルに大儀のない中東戦争の実態を教えてくれた。
もはや、一握りの権力者や「政府と一体」のメディアによる情報の独占はできない。
すでに外交文書について、外務省が恣意的な誤訳や加筆をしても英語版が瞬時に直訳され、ネット上に公開される。
いわば、情報の産直が起きていて、これこそがITによる情報革命の本質であり、もはや後戻りはできない。
例え、ウイキリークスが潰されても同様の試みがまた生まれる。
金融で世界を支配する一握りの人々にとって、世界中の罪なき人々の命と引き換えに強欲に金を得る事は不可能になるだろう。
我々は、その様な革命の時代に生きている事を喜びたい。
これから、インターネットの世界でも、情報統制により富を独占してきた勢力との壮絶な戦いが予見される。
独立型のプロバイダや検索サービスが必要になると思われる。我々が生み育てられるかが、ポイントになるだろう。
SF好きの私にとっては地球政府の樹立に向けた、一歩であり、胸が躍る。

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