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根本行雄:布川事件と袴田事件で新しい展開 証拠の全面開示の重要性を示す

 9月10日、水戸地裁土浦支部で開かれた布川事件の再審第3回公判において、43年前の目撃証人として利根町の女性(77)が出廷し、当時の記憶を証言した。9月13日、「袴田事件」の第2次再審請求で静岡地検は、公判に未提出の証拠7項目を弁護団に開示した。布川事件と袴田事件、どちらにも新しい展開があり、冤罪の発生を防止するためには、検察に対して証拠の全面開示を義務付ける必要があることが明白になった。

◆布川事件─被告に有利な証拠を隠した検察─

 以下に、毎日新聞の記事を引用する。

「布川事件」の再審第3回公判が9月10日、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)で開かれた。強盗殺人罪で無期懲役がいったん確定した後、仮釈放された杉山卓男さん(64)と桜井昌司さん(63)の無罪を立証するため、事件当時に現場近くで人を見たという女性(77)が弁護側の証人として出廷し、「当時見たのは杉山さんではなく、近所に住む知人の男性」と別人の名前を挙げた。
 杉山さんと桜井さんや弁護側からは、不利な証拠を開示しない検察の姿勢に怒りの声が相次いだ。
 今年、再審の手続きに入ってから検察側は、事件発覚当日に女性から話を聞いた捜査員の捜査報告書を初めて開示した。この報告書でも、女性は事件現場で犯行時間帯に杉山さんと異なる特徴の男を見たと証言していた。が、これまで弁護側の要請に対し、検察は「不見当」と報告書の存在を否定し続けてきた。
 再審請求審で一度開示した女性の供述調書についても、検察は再審の法廷で証拠として調べることを拒否。10日の公判になって、ようやく証拠として採用することに応じた。桜井さんは「もっと隠している証拠があるだろうと言いたくなる」と検察の証拠の取り扱い方に怒りをぶつけた。

 今回の証拠開示で、杉山さんと桜井さんの無罪方向の証拠(女性の証言)が隠蔽されていたことが明らかになった。検察は過去の冤罪事件においても、無罪方向の証拠を隠すという不正を行っている。事実審である一審において、全面的な証拠開示が行われていれば、冤罪事件は大幅に減少させることができるはずだ。

 検察には、被告人が有罪であると立証する責務がある。しかし、無罪を示す証拠を隠したり、証拠を捏造したりする責務はない。下村幸雄(元裁判官)さんは『刑事裁判を問う』(勁草書房)のなかで、「刑事裁判の目的は無実の発見である」と述べられている。検察の存在とその責務は、犯罪者を処罰することを最優先の目的にはしていないのである。刑事裁判もまた、主権者である国民の基本的人権を擁護し、公共の福祉を保持するための方策なのである。

*過去の冤罪事件については、拙著『司法殺人―「波崎事件」と冤罪を生む構造』(影書房刊)205〜210ページを参照していただきたい。

◆袴田事件−検察、未提出の証拠の一部を初めて開示−

 9月6日、毎日新聞の報道で、「袴田事件」で、無実を訴えている袴田巌死刑囚(74)の第2次再審請求をめぐる静岡地裁、静岡地検、弁護団の3者協議で、検察側は13日の次回協議で証拠を一部開示する方針を固めたという毎日新聞の報道があった。9月13日、「袴田事件」の第2次再審請求で静岡地検は、公判に未提出の証拠7項目を弁護団に開示した。

 以下は、毎日新聞からの引用である。

 昨年7月から始まった三者協議で弁護団は、▽犯行時の着衣とされる5点の衣類が発見された、みそタンクに当時残っていたみその量▽みそ工場の捜索時の写真や報告書─など13点の証拠開示を検察側に求めてきた。
 これに対し検察側は5月の前回協議で「3カ月ほど検討する時間がほしい。任意で開示できるものは開示したい」と述べ、開示の可能性に初めて言及していた。
 3者協議の関係者によると、検察側は6日、開示予定の証拠一覧を弁護団側に提示した。その際、一覧には当時の捜査報告書のほか、衣類5点の捜査にかかわった警察官、衣類の製造元や販売者の調書などが含まれ、事件当時の工場を撮影した写真なども項目に含まれていたという。
 弁護団関係者は「これまで検察側は一切、証拠の開示に応じてこなかった。証拠が開示されれば、内容から捜査当時の工場の様子が明らかになる可能性があり、再審に向けて大きな前進になる」と話した。

 9月13日、静岡地裁・地検・弁護団の非公開の3者協議で開示された。弁護団が求めた26項目の一部で▽犯行時の着衣で被害者の返り血が付いたとされるズボンなど衣類5点の発見時のカラー写真や捜査報告書▽事件当時に現場のみそ工場を写した写真18枚─など7項目29点。弁護団は「衣類のカラー写真は血液の付着状況などを明らかにする有益な資料」と述べた。

 今回の開示で再審の門が開けるかどうかは、依然として不明である。しかし、弁護団は引き続き、証拠の全面開示を要求していくことで、再審の門が開く日は確実に近づいていくだろう。
 袴田事件については、『はけないズボンで死刑判決―検証・袴田事件 (GENJINブックレット (37))』(現代人文社)がおすすめである。とてもわかりやすいブックレットである。

◆波崎事件─「物証がないのは完全犯罪の証拠」なのか─

 波崎事件対策連絡会議の発行している「波崎事件 再審運動ニュース」第40号(2010年9月10日発行)より、内藤武さんの書かれた「波崎事件 第3次再審(死後再審)請求の主旨」の一部を抜粋する。

 第2次再審請求棄却決定に対する異議申立て審半ばで冨山常喜死刑囚は無念にも獄死した。第3次再審(死後再審)請求ではこれまで解明してきた全ての問題点を出し切る。市民参加の裁判員制度の開始により、もはや職業裁判官が事実認定を独占する時代は終わった。証拠の裏づけがない「仮定」・「可能性」・「推断」などによる事実認定は「刑事訴訟法違反」に当たる。もはや、裁判官は自由心証主義を大義名分に、市民常識や論理法則、人間の経験則を無視した恣意的事実認定の世界に安住することはできない。第3次再審請求(死後再審)では市民感覚・市民の経験則(常識)から納得のいかない点(合理的疑い、非科学的証明、違法捜査)を取り上げて冨山さんの無実を証明する。「夫は亡くなる前に箱屋(冨山常喜さん)に薬を飲まされたと言った」(伝聞証言)のみを警察・検察が根拠無しに100%信じたところから出発している。市民感覚からして、保険金の受取人であるN子の伝聞証言を鵜呑みにした警察・検察の不公平な捜査のあり方(初動捜査)は認めることはできない。この点を批判する。
 冨山被疑者の自白が得られない中、警察・検察は「保険金目的の毒入りカプセルを利用した自動車事故死偽装殺人」と勝手な想像でストーリーを考え、この筋書きに合う情況証拠のみを集め、物証のないのは被疑者が完全犯罪を計画したからだと冨山被疑者に全責任を押し付け逃げた。「青酸化合物の入手経路、その所持の事実、これらを証かすべき証人、これを与えたとの目撃者等のいずれもが不明であるが、それでも被告人を有罪とするのを妨げない」と恐るべき論理で死刑判決を下した。自らの推論で描いた犯罪ストーリーに対してすら立証責任を一切果たしていない。これは裁判ではない。市民が参加する裁判員裁判で審議したなら「疑わしきは被告人の利益に」の原則が100%適用され、完全無罪が勝ち取れる内容である。起訴は明らかに刑事訴訟法違反、憲法違反である点を批判する。
 死後再審請求で取り上げる項目でなによりも最優先するのは、
①権利書の行方と
②石橋康雄の経済状態である。次に
③謎の多い死因の鑑定書の問題、
④石橋康雄の妻N子証言の信用性、
⑤石橋康雄の冨山宅12時15分辞去、12時20分帰宅の疑問と目撃証言の矛盾である。そして、過去の裁判闘争の中で一度も行ってこなかった
⑥証拠開示請求を提出する。

※「波崎事件 再審運動ニュース」第40号(2010年9月10日発行)を入手を希望される方は、波崎事件対策連絡会議の代表である、篠原道夫さんまで、お問い合わせください。ニュースは、カンパをいただいたことがある方にはお送りしています。
住所:郵便番号203−0044 東京都東久留米市柳窪1−10−37 篠原方
電話:0424−73−9782 篠原方です。
カンパは下記の郵便振替口座へ
00130−3−400650 波崎事件対策連絡会議

◆検察は証拠を全面開示すべきだ

 過去の冤罪事件においては、無罪を示す証拠が意図的に隠されたり、証拠や証人を捏造したりしている。検察は、被告人が有罪であると立証する責務を担っている。しかし、無罪を示す証拠を隠したり、証拠を捏造したりする責務はない。 警察官も、検察官も、当然のことながら、「公務員」である。公務員だということは、その給与は税金であるということだ。そして、捜査等の活動のための費用もまた、税金で賄われているということである。

 税金によって支えられている捜査活動によって獲得された証拠は、有罪方向の証拠も、無罪方向の証拠、どちらの証拠も、全面的に開示されるべきなのだ。検察には、すべての証拠を全面的に開示することを義務付けるべきである。これもまた、冤罪の発生を防止するためには不可欠の方策である。

(この記事は「日刊ベリタ」から許可を得て転載しました)

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【プロフィール】
根本行雄(ねもとゆきお)
1953年、千葉県銚子市に生まれる。1976年、龍谷大学文学部哲学科哲学専攻卒業。1979年、「松岸学習塾」を開設し、近隣に住む小学生に算数と国語(作文)、中学生に英語と数学と作文などを教えながら、哲学および文学(創作行為)の研究と市民運動をしている。『科学の本っておもしろい2003‐2009』(連合出版)第3集、第4集、『新 科学の本っておもしろい』(連合出版)に執筆、著書に『司法殺人―「波崎事件」と冤罪を生む構造』(影書房)がある。

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ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。

皆さん、おはようございます(いま22日4:50頃です)

>過去の冤罪事件においては、無罪を示す証拠が意図的に隠されたり、証拠や証人を捏造したりしている。検察は、被告人が有罪であると立証する責務を担っている。しかし、無罪を示す証拠を隠したり、証拠を捏造したりする責務はない。

まさに今度の大阪地検検事の逮捕と同じ構図である。
そういう意味では、これ以前にどのくらいの冤罪があったのか?
人を人とも思えなくなった検察組織というものを問わなければならない。

だから、今度の村木さんの事件および検事証拠改ざん事件を契機に、第3者機関を設置し、徹底的な検証を行なうべきである。それととも、検察情報をほぼそのまま報道してきたマスメディアも自らの姿勢を問い直すべきだと思います。

良い傾向だと思います。

検察内部で改革派が強くなってきているイメージがある。もう少しです。

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